説明

被覆光ファイバおよび光ファイバの被覆に好適な硬化性組成物

本発明は、光ファイバの二次被覆、または接続された光ファイバの接続部の再被覆としての使用に好適な材料を提供する。後者の使用に関して、本発明の被覆材料は、好ましくは、ヤング率が少なくとも約1200MPaであり、ロッド・アンド・チューブ法で測定した界面強度が25MPaを超えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2003年6月4日に出願された米国特許出願第10/454984号明細書(この記載内容全体を参照により本明細書に援用する)の一部継続出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に光ファイバに関し、特に、光ファイバのための被覆、および光ファイバの被覆に使用するための硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバは、電気通信分野で次第に重要な役割を獲得するようになっており、既存の銅線と置き換えられることも多い。この傾向は、電気通信のすべての分野において大きな影響を与えており、伝送されるデータ量が大きく増加している。増加し続ける容量のオーディオ、ビデオ、およびデータ信号を家庭の顧客と商業上の顧客に送達するようにローカルファイバネットワークが推進されているので、特に、地下鉄用途および各家庭までの光ファイバー化(FTTH)において、光ファイバの使用がさらに増加することが予測されている。さらに、内部データ、オーディオ、およびビデオの通信のための家庭と商用の構内ネットワークにおいてファイバの使用が始まり、これらも増加が予測されている。
【0004】
光ファイバは、典型的にはガラスでできており、通常はポリマーの一次被覆およびポリマーの二次被覆を有する。通常、一次被覆(内部一次被覆とも呼ばれる)がガラス繊維に直接適用され、硬化すると、軟質で弾性で適合性の材料を形成してガラス繊維を封入する。この一次被覆は、屈曲、ケーブル化、または巻き付けの間にガラス繊維への衝撃を吸収し保護するための緩衝材として機能する。二次被覆(外部一次被覆とも呼ばれる)は一次被覆の上に適用され、加工、取り扱い、および使用の間にガラス繊維の損傷を防止する強靱な保護外層として機能する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバ中に従来使用されている二次被覆は、通常、オリゴマー(たとえばウレタン(メタ)アクリレート)と少なくとも1種類のモノマー(たとえば(メタ)アクリレートモノマー)との混合物を硬化させることによって形成される架橋ポリマーである。一般に、保護材料の硬度を増加させるためには、ヤング率が高いことが望ましい。しかし、一般にはヤング率が増加すると材料の脆性が増加し、それによって使用中に亀裂が生じやすくなる。したがって、現在の光ファイバ二次被覆は、必要な強靱さを得るために望ましいヤング率よりも低いヤング率を有する傾向にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、被覆光ファイバであって:第1および第2の光ファイバセグメントであって、それぞれが少なくとも1つの被覆を上に有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆はそれらの末端部分から除去されており、第1および第2の光ファイバセグメントの末端部分は互いに端どうしが当接している、第1および第2の光ファイバセグメントと;硬化接続部被覆であって、上記末端部分を封入し、第1および第2の光ファイバセグメントの少なくとも1つの被覆と接触している、硬化接続部被覆とを含み、上記接続部被覆が、
ヤング率が少なくとも約1200MPaであり、ロッド・アンド・チューブ法(rod and tube method)で測定した界面強度が約25MPaを超え、より好ましくは35MPaを超えることを特徴とする、被覆光ファイバに関する。
【0007】
本発明の別の実施形態は、接続部において光ファイバを再被覆する方法であって:第1および第2の光ファイバセグメントを提供するステップであって、それぞれが少なくとも1つの被覆を上に有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆はそれらの末端部分から除去されており、第1および第2の光ファイバセグメントの末端部分は互いに端どうしが当接しているステップと;第1および第2の光ファイバの末端部分に被覆組成物を適用することによって、被覆組成物が上記末端部分を封入し、第1および第2の光ファイバセグメントの少なくとも1つの被覆と接触するステップと;上記被覆組成物を硬化させて、
(i)少なくとも約1200MPaのヤング率、および
(ii)ロッド・アンド・チューブ法で測定した界面強度が約25MPaを超え、より好ましくは35MPaを超えることを特徴とする硬化接続部被覆を形成するステップとを含む方法に関する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、被覆光ファイバであって:
第1および第2の光ファイバセグメントであって、それぞれが少なくとも1つの被覆を上に有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆はそれらの末端部分から除去されており、第1および第2の光ファイバセグメントの末端部分は互いに端どうしが当接している、第1および第2の光ファイバセグメントと;
上記末端部分を封入し、第1および第2の光ファイバセグメントの少なくとも1つの被覆と接触している、硬化接続部被覆とを含み;
上記接続部被覆が、
(i)少なくとも約1200MPaのヤング率、および
(ii)グラムの単位における耐破壊性yが約0.0019x+11.255を超えることを特徴とし、
上式中、x=上記被覆の(マイクロメートル)の単位における断面積である、被覆光ファイバに関する。
【0009】
本発明の別の実施形態は、接続部において光ファイバを再被覆する方法であって:
第1および第2の光ファイバセグメントを提供するステップであって、それぞれが少なくとも1つの被覆を上に有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆はそれらの末端部分から除去されており、第1および第2の光ファイバセグメントの末端部分は互いに端どうしが当接しているステップと;
第1および第2の光ファイバの末端部分に被覆組成物を適用することによって、被覆組成物が上記末端部分を封入し、第1および第2の光ファイバセグメントの少なくとも1つの被覆と接触するステップと;
上記被覆組成物を硬化させて、
(i)少なくとも約1200MPaのヤング率、および
(ii)グラムの単位における耐破壊性yが約0.0019x+11.255を超えることを特徴とし、
上式中、x=上記被覆の単位平方マイクロメートルにおける断面積である、硬化接続部被覆を形成するステップとを含む方法に関する。
【0010】
本発明の光ファイバ、方法、および硬化性組成物は、従来技術の装置および方法に対して多数の利点が得られる。本発明の光ファイバは、高ヤング率の二次被覆を有するため、環境乱用から十分に保護され、マイクロベンドに対して低い感度を示す。同時に、本発明の光ファイバは、二次被覆が高破壊靱性および高延性であるために改善された取扱性を示す。本発明による光ファイバは、欠陥の形成に対する感度が低い二次被覆を有することもできる。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明で説明しており、一部はこれらの説明から当業者には容易に明らかとなるであろうし、あるいは、記載の説明および特許請求の範囲で説明され、添付の図面に示されるように本発明を実施することによって理解できるであろう。
【0012】
以上の概略的説明および以下の詳細な説明の両方は単に本発明の例であり、請求される本発明の性質および特徴を理解するための外観または構成を提供することを意図しているものと理解されたい。
【0013】
添付の図面は、本発明の理解を深めるために含まれており、これらは、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成している。これらの図面は必ずしも一定の縮尺であるわけではなく、種々の要素の大きさは明確にするために変更されている場合がある。これらの図面は、本発明の1つ以上の実施形態を示しており、本発明の記述とともに本発明の原理および作用を説明する役割を果たしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態は、被覆光ファイバに関する。被覆光ファイバの一例を、図1の概略断面図に示している。被覆光ファイバ20は、一次被覆24および二次被覆26によって取り囲まれたガラス光ファイバ22を含む。二次被覆は、ヤング率が少なくとも約1200MPaであり破壊靱性が少なくとも約0.7MPa・m1/2である硬化ポリマー材料から形成されている。
【0015】
ガラス繊維22は、当業者には周知のコアとクラッドを含む未被覆光ファイバである。未被覆光ファイバは、シングルモードファイバでもマルチモードファイバでもよい。光ファイバは、データ伝送ファイバとしての使用に適合させることができる(たとえばSMF−28(登録商標)、リーフ(LEAF)(登録商標)、およびメトロコル(METROCOR)(登録商標)、それぞれニューヨーク州コーニング(Corning,NY)のコーニング・インコーポレイテッド(Corning Incorporated)より入手可能)。あるいは、光ファイバは、増幅、分散補償、または偏光維持の機能を果たすこともできる。本明細書に記載される被覆は、環境からの保護が望まれる実質的にあらゆる光ファイバへの使用に適していることが、当業者には分かるであろう。
【0016】
被覆光ファイバ20において、ガラス繊維22は一次被覆24によって取り囲まれている。一次被覆24は、低ヤング率(たとえば25℃において約5MPa未満)および低ガラス転移温度(たとえば約−10℃未満)を有する軟質の架橋ポリマー材料から形成されている。光ファイバコアを離れる逸脱した光信号を除去できるようにするため、一次被覆24は、望ましくは光ファイバのクラッドよりも高い屈折率を有する。一次被覆は、熱的および加水分解的エージングの間にガラス繊維への適切な接着を維持すべきであるが、接続の目的のためにはそれらから剥離可能となるべきである。通常、一次被覆は25〜40μmの範囲内(たとえば約32.5μm)の厚さを有する。通常、一次被覆は、ガラス繊維に液体として適用されて硬化させられ、以下により詳細に説明する。一次被覆の形成に使用されている従来の硬化性組成物は、オリゴマー(たとえばポリエーテルウレタンアクリレート)、1種類以上のモノマー希釈剤(たとえばエーテル含有アクリレート)、光開始剤、およびその他の望ましい添加剤(たとえば酸化防止剤)を使用して配合される。光ファイバ用一次被覆は、これまでに十分開示されており、当業者には周知である。望ましい一次被覆は、米国特許第6,326,416号明細書、第6,531,522号明細書、および第6,539,152号明細書、米国特許出願公開第2003/0049446号明細書、および米国特許出願第09/712,565号明細書、第09/916,536号明細書、および第10/087,481号明細書に開示されており、これらの記載内容全体が本明細書に援用される。別の望ましい一次被覆は、52重量%のBR3741(ボマー・スペシャルティーズ(Bomar Specialties))、25重量%のフォトマー(PHOTOMER)4003(コグニス(Cognis))、20重量%のトーン(TONE)M−100(ダウ・ケミカル(Dow Chemical))、1.5重量%のイルガキュア(IRGACURE)819(チバ(Ciba))、1.5重量%のイルガキュア(IRGACURE)184(チバ(Ciba))、1pphの(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(ゲレスト(Gelest))、および0.032pphのペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(アルドリッチ(Aldrich))を含む一次被覆組成物の硬化反応生成物である。
【0017】
被覆光ファイバ20において、一次被覆24は二次被覆26によって取り囲まれている。図1中、二次被覆は一次被覆に直接適用されているように示されているが、当業者には理解されているように、一次被覆と二次被覆との間に1つ以上の中間被覆層が配置されていてもよい。二次被覆26は、硬化ポリマー材料から形成されており、通常20〜35μmの範囲内(たとえば約27.5μm)の厚さを有する。二次被覆は望ましくは、光ファイバを保護するのに十分な剛性を有し;取扱、屈曲、または巻き付けを行うのに十分な可撓性であり;取扱が可能になり、スプール上の隣接する巻きが互いに固着するのを防止するために低い粘着性を有し;水、および光ファイバケーブル充填用化合物などの化学物質に対して抵抗性であり;適用されている被覆(たとえば一次被覆)に対して十分な接着性を有する。
【0018】
光ファイバ20の二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約1200MPaのヤング率を有する。本発明の望ましい実施形態においては、二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約1500MPaのヤング率を有する。本発明の特に望ましい実施形態においては、二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約1900MPaのヤング率を有する。本発明の望ましい実施形態においては、二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約30%の破断時伸びを有する。本発明の特に望ましい実施形態においては、二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約40%の破断時伸びを有する。本発明の望ましい実施形態においては、二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約48MPaの平均引張強度を有する。本発明の特に望ましい実施形態においては、二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約60MPaの平均引張強度を有する。本明細書において使用される場合、硬化ポリマー材料のヤング率、破断時伸び、および引張強度は、引張試験機(たとえばシンテックMTS引張試験機(Sintech MTS Tensile Tester)、またはインストロン万能材料試験システム(Instron Universal Material Test System))を使用して、直径が約0.0225インチ(571.5μm)でゲージ長さが5.1cmの円柱ロッドに成形した材料の試料に対して、2.5cm/分の試験速度で測定される。
【0019】
不安定で重大な亀裂成長に対する材料の抵抗性は、破壊靱性K1cとして知られる材料特性で表される。材料の破壊靱性は、材料中の亀裂を広げるために必要なエネルギーと関連している。光ファイバ20の二次被覆26の硬化ポリマー材料は、少なくとも約0.7MPa・m1/2の破壊靱性を有する。本発明の望ましい実施形態においては、二次被覆の硬化ポリマー材料は、少なくとも約0.9MPa・m1/2の破壊靱性を有する。本発明の特に望ましい実施形態においては、二次被覆の硬化ポリマー材料は、少なくとも約1.1MPa・m1/2の破壊靱性を有する。本発明のある実施形態においては、二次被覆の硬化ポリマー材料は、少なくとも約1.3MPa・m1/2の破壊靱性を有する。本明細書のいて使用される場合、破壊靱性KICは、フィルム試料に対して測定され、Yσ√zと定義され、式中、Yは形状因子であり、σはフィルム試料の引張強度(破断時)であり、zはノッチ長さの半分である。破壊靱性は、中央に切り込まれたノッチ形状を有するフィルムで測定される。図2は、破壊靱性の測定に使用される試料の形状の概略図である。フィルム試料80は、幅が約52mmであり、厚さは約0.010インチ(254μm)である。ノッチ82は、当業者に周知の方法を使用し鋭い刃を使用して、フィルム中央に切り込まれる。18mm、24mm、および30mmの長さを有するノッチが、異なる試料中に切り込まれる。試料の引張強度(破壊時)σは、前述のような引張試験機(たとえばシンテックMTS引張試験機(Sintech MTS Tensile Tester)、またはインストロン万能材料試験システム(Instron Universal Material Test System))を使用して測定される。試料は、ゲージ長さが75mmとなるように引張試験機のジョー84に挟まれる。移動速度は2.0mm/分である。引張強度は、破壊時に加えられた荷重を無傷の試料の断面積で割ることによって計算することができる。上記の試料の場合、引張強度は次式を使用して計算することができる。
【数1】

【0020】
取扱および欠陥の形成に対する二次被覆の硬化ポリマー材料の感度は、その延性を反映している。材料の延性は次式で定義される。
【数2】

【0021】
大きな延性は、取扱および欠陥の形成に対する二次被覆の感度が低いことを示す。降伏応力は、ロッド試料に対して、前述のようにヤング率、破断時伸び、および引張強度と同時に測定することができる。当業者には周知であるように、歪み軟化を示す試料の場合、その降伏応力は、応力対歪み曲線の第1極大値によって求められる。より一般的には、降伏応力は、ASTM D638−02(この記載内容を本明細書に援用する)に示される方法を使用して藻解けることができる。本発明の望ましい実施形態においては、二次被覆の硬化ポリマー材料は、少なくとも約314μmの延性を有する。本発明の特に望ましい実施形態においては、二次被覆の硬化ポリマー材料は少なくとも約376μmの延性を有する。本発明のある実施形態においては、二次被覆の硬化ポリマー材料は、少なくとも約471μmの延性を有する。
【0022】
本発明の一実施形態による被覆光ファイバは、より低い破壊靱性を有する二次被覆を有する光ファイバと同等の、単一ファイバ剥離力(single fiber strip force)を示す。本発明の望ましい被覆光ファイバは、23℃の温度において約1重量ポンド未満の単一ファイバ剥離力を有する。本発明の特に望ましい被覆光ファイバは、23℃の温度において約0.8重量ポンド未満の単一ファイバ剥離力を有する。剥離力は、FOTP−178(この記載内容全体を本明細書に援用する)による方法を使用して測定される。被覆ファイバをロードセルに取り付け、続いて0.847cm/秒の速度において23℃および相対湿度50%の環境条件下で剥離する。
【0023】
本発明の光ファイバの二次被覆中に使用される硬化ポリマー材料は、オリゴマーと少なくとも1種類のモノマーとを含む硬化性組成物の硬化した生成物であってよい。従来通り、二次被覆の形成に使用される硬化性組成物は、光開始剤、酸化防止剤、および当業者に周知のその他の添加剤も含むことができる。本発明の望ましい実施形態においては、硬化性組成物はオリゴマーおよびモノマーは、エチレン系不飽和である。本発明の特に望ましい実施形態においては、硬化性組成物のオリゴマーおよびモノマーは(メタ)アクリレート系である。本発明のオリゴマーは、たとえばウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってよい。しかし、当業者であれば理解しているように、エポキシ、ビニルエーテル、およびチオール−エンなどの他の硬化化学反応に適合したオリゴマーおよびモノマーも、本発明により使用することができる。
【0024】
望ましくは、本発明の硬化性組成物のオリゴマーは、硬化ポリマー材料に高弾性率および高破壊靱性の両方を付与するように選択される。本発明者らは、硬質のポリオール由来サブユニット、複数の官能基、および/または結晶性部分を有するオリゴマーが、本発明の硬化性組成物中への使用に特に望ましいと判断した。本明細書においてオリゴマーは、それらの平均構造によって表される。たとえば、1.0当量のHO−R−OH;2.0当量のOCN−R−NCO;および2.0当量のCAP−OHから調製されるオリゴマーは、平均構造CAP−OOC−NH−R−NH−[COO−R−OOC−NH−R−NH]1.0−COO−CAPを有する。オリゴマーは、実際には、複数の成分の混合物であり(たとえば、あるものは2つのジオールブロックを有し、あるものは1つのジオールブロックを有し、あるものはジオールブロックを1つも有さない)、オリゴマーの平均構造は、これらの成分の加重平均である。反応物質を化合させてオリゴマーを形成し、その後の精製は行わない場合、平均構造は、その形成に使用した反応物質の化学量論によって好都合に決定することができる。
【0025】
本明細書に記載されるオリゴマーは、コーディ(Coady)らに付与された米国特許第4,6087,409号明細書、およびビショップ(Bishop)らに付与された米国特許第4,609,718号明細書(これらそれぞれの記載内容全体を本明細書に援用する)に記載されるような、当業者に周知の方法を使用して合成することができる。通常、ポリイソシアネートは、ポリオールと反応させて、イソシアネート末端ウレタンオリゴマーを生成し、次にこれを反応性末端(たとえば(メタ)アクリレート、エポキシ、ビニルエーテル)を有するヒドロキシ官能性キャップ剤でキャップする。あるいは、ポリイソシアネートとポリオールとの間の反応によって、ヒドロキシ末端オリゴマーを生成し、これは、反応性官能基を有する酸塩化物またはイソシアネートなどの適切なキャップ剤を使用してキャップすることができる。当業者であれば、ジオールまたはポリオールの一部またはすべての代わりにジアミンまたはポリアミンを使用することで、尿素結合部分を有するオリゴマーを得ることができる。
【0026】
本明細書に記載される実施例において使用されるように、ポリイソシアネートは構造R(NCO)を有し、式中のRはポリイソシアネートコア部分である。このポリイソシアネートはオリゴマー構造中に組み込まれて、ウレタン(−NH−COO−)結合または尿素(−NH−CO−NH−)結合によってコア部分Rはオリゴマー内で結合する。本発明の硬化性組成物中に使用することが望ましい場合があるポリイソシアネートの非網羅的な一覧を以下の表1に示す。
【表1】

【0027】
本明細書に記載される実施例においては、キャップ剤は構造CAP−OHを有し、式中のキャップ部分CAPは反応性末端(たとえば(メタ)アクリレート、エポキシ、ビニルエーテル)を含む。これらの実施例において、キャップ剤はウレタン結合によってオリゴマー構造内に結合している。本発明のアクリレート系硬化性組成物中に使用することが望ましい場合があるキャップ剤の非網羅的な一覧を以下の表2に示す。
【表2】

【0028】
本発明の一実施形態によると、本発明のオリゴマーは、ウレタン結合を介して2つのキャップ部分に結合したジイソシアネート由来コアを有する。本発明の硬化性組成物中に使用すると好適なオリゴマーの種類の一例は、以下の構造
CAP−OOC−NH−R−NH−COO−CAP
を有し、上式中、CAPは反応性末端を有するキャップ部分であり、Rはウレタン結合を実質的に有さない。望ましくは、配合物の全オリゴマー含有量の少なくとも50重量%が上記構造を有する。望ましくは、本発明のこの実施形態によるオリゴマーは約1600ダルトン未満の数平均分子量(M)を有する。本発明の特に望ましい実施形態においては、このオリゴマーは約1200ダルトン未満のMを有する。このようなオリゴマーの例としては
CLA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−CLA;
CLA−OOC−NH−IPDI−NH−COO−CLA;および
CLA−OOC−NH−TMXDI−NH−COO−CLAが挙げられる。当業者であれば理解できるように、これらのオリゴマーのHEAでキャップされた種類のものも使用することができる。
【0029】
本発明の別の実施形態によると、本発明のオリゴマーは、約1600ダルトン未満の数平均分子量(M)を有する。低分子量オリゴマーの例としては
[HEA−OOC−NH−TDI−NH−COO−PO2NPG−OOC−NH]TDI
CLA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−CLA;
CLA−OOC−NH−IPDI−NH−COO−CLA;および
CLA−OOC−NH−TMXDI−NH−COO−CLAが挙げられ、
上式中、PO2NPGは、平均構造(CHC[CHOCHCH(CH)−]を有するプロポキシル化(1PO/OH)ネオペンチルグリコール由来部分である。
【0030】
本発明の別の実施形態によると、本発明のオリゴマーは、2.2を超える平均官能価(すなわち反応性末端の平均数)を有する。望ましくは、本発明のオリゴマーは少なくとも約3の平均官能価を有する。本発明の硬化性組成物中に使用すると好適な種類のオリゴマーの一例は、平均構造
[OOC−NH−R−NH−COO−CAP]
を有し、上式中、Rは多官能性コア部分であり、nは2.2を超え、CAPは反応性末端を有するキャップ部分である。本発明のある実施形態においては、Rは、ウレタン結合を実質的に有さないイソシアネート由来コア部分Rである。本発明の別の実施形態においては、Rは、構造−R−(NH−COO−R−OOC−NH−R−を有し、式中、Rはポリオール由来コア部分であり、およびtは0〜約4の範囲内の平均値を有する。本発明のこの実施形態に使用すると好適なある望ましいオリゴマーは、約3000ダルトン未満の数平均分子量を有する。この種類のオリゴマーの好適な例としては、
フォトマー(PHOTOMER)6008;
GlyPO(725)[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−HEA]
GlyPO(725)[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−CLA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TMXDI−NH−COO−CLA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TDI−NH−COO−CLA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TDI−NH−COO−PETA]
PertPO(426)[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−CLA]
UMB2005[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−HEA]2.4
TMPPO[OOC−NH−IPDI−NH−COO−PPG(425)−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA];および
TMPPO[OOC−NH−IPDI−NH−COO−T(650)−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA]が挙げられ、
上式中、UMB2005は、エスプリクス・テクノロジーズ(Esprix Technologies)より入手可能なM≒2600ダルトンを有するヒドロキシ官能性(平均2.4OH/分子)ポリ(アクリル酸ブチル)の残基であり;PertPO(426)は、平均構造C[CH(OCHCHCH−]を有するプロポキシル化ペンタエリスリチル部分であり;GlyPO(725)は、M≒725ダルトンおよび平均構造
【化1】

【0031】
を有するプロポキシル化グリセリル部分であり、TMPPOは、平均構造
【化2】

【0032】
を有するプロポキシル化(1プロポキシ/OH)トリメタノールプロパン部分である。フォトマー(PHOTOMER)6008は、コグニス(Cognis)より入手可能な脂肪族ウレタントリアクリレートオリゴマーである。当業者であれば、この種類のオリゴマー中にR、R、およびCAPの他の組み合わせを使用できることが理解できるであろう。
【0033】
多官能価は、実質的に線状のオリゴマー主鎖にPETAなどの多官能性キャップ剤を使用することによっても実現することができる。たとえば、多官能性キャップ部分を含む好適なオリゴマーの1つは、PETA−OOC−NH−TDI−NH−COO−PETAである。
【0034】
本発明の別の実施形態によると、本発明のオリゴマーは、その構造中に結晶性ポリオール由来ブロックを含む。本明細書において使用される場合、結晶性ポリオールは約0℃を超える融点を有するポリオールである。結晶性ポリオールの例としては、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont de Nemours and Company)よりテラタン(TERATHANE)として入手可能なポリ(テトラメチレンオキシド);およびポリ(カプロラクトン)ジオールが挙げられる。本発明の硬化性組成物中に使用すると好適な種類のオリゴマーの一例は、平均構造
CAP−OOC−NH−R−NH−[COO−R−OOC−NH−R−NH]−COO−CAP
を有し、上式中、wは0を超え、CAPは反応性末端を有するキャップ部分であり、Rは少なくとも1つの結晶性ポリオール由来部分を含む。結晶性ポリオール由来部分を有するオリゴマーの平均構造の例としては、
CLA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−T(1000)−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−CLA;
TMPPO[OOC−NH−IPDI−NH−COO−T(650)−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA];および
[HEA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−EO8BPA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO](1000)が挙げられ、
上式中、EO8BPAは平均構造
【化3】

【0035】
を有し、T(1000)は、Mn≒1000ダルトンを有し、平均構造
−(CHCHCHCHO)(CHCHCHCH)−を有する。T(650)は、Mn≒650ダルトンを有し、T(1000)と類似の構造を有する。当業者であれば、この種類のオリゴマー中にCAP、R、およびRの他の組み合わせを使用できることが理解できるであろう。
【0036】
本発明の別の実施形態によると、本発明のオリゴマーは、その構造中に硬質サブユニットを含む。望ましくは、この硬質サブユニットは、オリゴマーのポリオール由来部分中にある。硬質サブユニットの例としては、
【化4】

【0037】
などの環状部分が挙げられる。
【0038】
本発明の硬化性組成物中に使用すると好適な種類のオリゴマーの一例は、平均構造
CAP−OOC−NH−R−NH−[COO−R−OOC−NH−R−NH]−COO−CAP
を有し、上式中、wは0を超え、CAPは反応性末端を有するキャップ部分であり、Rは少なくとも1つの環状硬質部分を含む。たとえば、Rは部分−(RCO)−R−CORを含むことができ、式中、Rは硬質環状サブユニットであり、Rはエチレン、プロピレン、またはブチレンであり、vは0〜7の範囲内にある。硬質サブユニットを有するオリゴマーの平均構造の例としては、
[HEA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−PO2BPA−OOC−NH]H12MDI;
[HEA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−EO8BPA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO](1000)
[HEA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO]PPG(425)
[HEA−OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI−NH−COO]PPG(425)
[HEA−OOC−NH−IPDI−NH−COO−BPA−OOC−NH]IPDI;
[HEA−OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH]TDI;
[HEA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−BPA−OOC−NH]H12MDI;
[HEA−OOC−NH−TDI−NH−COO−CHDM−OOC−NH]TDI;および
[PETA−OOC−NH−TDI−NH−COO−PO2BPA−OOC−NH]TDIが挙げられ、
上式中、PO2BPAは、平均構造
【化5】

【0039】
を有し、T(1000)は、M≒1000ダルトン、および平均構造−(CHCHCHCHO)(CHCHCHCH)−を有し;PPG(425)は、M≒425ダルトンおよび、平均構造−(CHCHCHO)(CHCHCH)−を有する。当業者であれば理解できるように、本発明のオリゴマー中にCAP、R、およびRの他の組み合わせを使用できる。
【0040】
本発明の別の実施形態によると、本発明のオリゴマーは、硬質ポリオール由来サブユニットと、多官能価との両方を含む。本発明の硬化性組成物中に使用すると好適な種類のオリゴマーの一例は、平均構造
[OOC−NH−R−NH−(COO−R−OOC−NH−R−NH)−COO−CAP]
を有し、上式中、wは0を超え、nは2.2を超え、CAPは反応性末端を有するキャップ部分であり、Rは少なくとも1つの環状硬質部分を含む。この種類のオリゴマーの平均構造の例としては、
GlyPO(725)[OOC−NH−IPDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA]
GlyPO(725)[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−HEA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI−NH−COO−HEA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TDI−(NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI)−NH−COO−HEA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TDI−NH−COO−CHDM−OOC−NH−TDI−NH−COO−HEA]
GlyPO(725)[OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI−NH−COO−CLA];GIyPO(1500)[OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI−NH−COO−HEA]
PertPO(426)[OOC−NH−IPDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA]
PertPO(426)[OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI−NH−COO−HEA]
PertPO(426)[OOC−NH−TDI−(NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI)−NH−COO−HEA];および
TMPPO[OOC−NH−TDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−TDI−NH−COO−HEA]が挙げられ、
上式中、GlyPO(1500)は、Mn≒1500ダルトンを有するプロポキシル化グリセリル部分である。当業者であれば理解できるように、本発明のオリゴマー中にCAP、R、R、およびRの他の組み合わせを使用できる。
【0041】
当業者であれば、本発明の硬化性組成物中に他の従来のオリゴマーを使用することができる。たとえば、このオリゴマーは、ヒドロキシ基を2つ有するポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネートと、脂肪族または芳香族のジイソシアネートとの反応によりキャップされた生成物であってよい。耐湿性の向上が望ましい場合、当業者は、飽和脂肪族ジオールなどの非極性ジオールを主成分とするオリゴマーを使用することができる。本発明の硬化性組成物中に使用すると好適な市販のオリゴマーの例としては、ボマー・スペシャルティ・カンパニー(Bomar Specialty Co.)のBR301およびKWS4131;コグニス・コーポレーション(Cognis Corp)のRCC12−892およびRCC13−572;コグニス・コーポレーション(Cognis Corp)のフォトマー(PHOTOMER)6010;ならびにUCBラドキュア(UCB Radcure)のエベクリル(EBECRYL)8800、4883、8804、8807、8402、および284が挙げられる。
【0042】
本発明の硬化性組成物は、オリゴマーの反応性末端と反応するように選択された反応性末端を有する1種類以上のモノマーも含む。一般に、約80%を超える転化率が可能な個別のモノマーが、より低い転化率を有するモノマーよりも望ましい。硬化性組成物中に転化率の低いモノマーを導入できる程度は、所望の硬化ポリマー材料の具体的な要求に依存する。通常、転化率が高いほど、強靱な硬化生成物が得られる。
【0043】
本発明の硬化性組成物中に使用すると好適な多官能性エチレン系不飽和モノマーとしては、アルコキシル化ビスフェノールAジアクリレート、たとえば、エトキシル化が2以上、好ましくは2〜約30の範囲であるエトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、およびプロポキシル化が2以上、好ましくは2〜約30の範囲であるプロポキシル化ビスフェノールAジアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)(ペンシルバニア州アンブラー(Ambler,PA))より入手可能なフォトマー(PHOTOMER)4025およびフォトマー(PHOTOMER)4028;アルコキシル化を有するおよび有さないメチロールプロパンポリアクリレート、たとえば、エトキシル化が3以上、好ましくは3〜約30の範囲であるエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)4149、およびサートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR499)、プロポキシル化が3以上、好ましくは3〜30の範囲であるプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)4072)、およびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)4355);アルコキシル化グリセリルトリアクリレート、たとえば、プロポキシル化が3以上であるプロポキシル化グリセリルトリアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)4096);アルコキシル化を有するおよび有さないエリスリトールポリアクリレート、たとえば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)(ペンシルバニア州ウエストチェスター(Westchester,PA)より入手可能なSR295)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR494)、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)4399、およびサートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR399);適切なシアヌル酸とアクリル酸または塩化アクリロイルとの反応によって形成されるイソシアヌレートポリアクリレート、たとえば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR368)およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート;アルコキシル化を有するおよび有さないアルコールポリアクリレート、たとえば、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のCD406)およびエトキシル化が2以上、好ましくは約2〜30の範囲であるエトキシル化ポリエチレングリコールジアクリレート;アクリレートをビスフェノールAジグリシジルエーテルなどに付加させることによって形成されるエポキシアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)3016);ならびに単環および多環環状芳香族、または非芳香族のポリアクリレート、たとえば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジシクロペンタジエンジアクリレート、およびジシクロペンタンジアクリレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の硬化性組成物中に使用する場合、ビスフェノールA系モノマーが特に望ましい。
【0044】
本発明の硬化性組成物中に多官能性チオールモノマーが含まれることが望ましい場合がある。多官能性チオールモノマーは、フリーラジカルチオール−エン反応を介して重合に関与することができ、チオエーテル部分と架橋したポリマー網目が得られる。望ましくは、多官能性チオールは、少なくとも約3チオール/分子のチオール官能価を有する。好適な多官能性チオールの例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート);およびコグニス(Cognis)より入手可能なキャプキュア・ロフ(CAPCURE LOF)が挙げられる。多官能性チオールモノマーは、望ましくは、約2重量%〜約20重量%の間の量で硬化性組成物中に存在する。ある望ましい硬化性組成物においては、多官能性チオールモノマーは、約5重量%〜約15重量%の間の量で存在する。
【0045】
ある量の一官能性エチレン系不飽和モノマーを使用することが望ましい場合もあり、これは、硬化生成物の、水の吸収、他の被覆材料への接着、または応力下の挙動の程度に影響を与えるために導入することができる。代表的な一官能性エチレン系不飽和モノマーとしては、アクリル酸ヒドロキシアルキル、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、およびアクリル酸2−ヒドロキシブチル;アクリル酸長鎖および短鎖アルキル、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸オクタデシル、およびアクリル酸ステアリル;アクリル酸アミノアルキル、たとえば、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、およびアクリル酸7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル;アクリル酸アルコキシアルキル、たとえばアクリル酸ブトキシルエチル、アクリル酸フェノキシエチル(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR339)、およびアクリル酸エトキシエトキシエチル;単環および多環環状芳香族または非芳香族のアクリレート、たとえば、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジシクロペンタジエン、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸トリシクロデカニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸イソボルニル(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR506)、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR285)、アクリル酸カプロラクトン(たとえば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(Sartomer Company,Inc.)のSR495)、およびアクリロイルモルホリン;アルコール系アクリレート、たとえばポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ならびに種々のアルコキシル化アルキルフェノールアクリレート、たとえばエトキシル化(4)ノニルフェノールアクリレート(たとえば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corp.)のフォトマー(PHOTOMER)4003);アクリルアミド、たとえば、ジアセトンアクリルアミド、イソブトキシメチルアクリルアミド、N,N’−ジメチル−アミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、およびt−オクチルアクリルアミド;ビニル系化合物、たとえば、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタム;ならびに酸エステル、たとえば、マレイン酸エステルおよびフマル酸エステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
大部分の好適なモノマーは、市販されているか、当技術分野において周知の反応スキームを使用して容易に合成されるかのいずれかである。たとえば、上述の一官能性モノマーの大部分は、適切なアルコールまたはアミンを、アクリル酸または塩化アクリロイルと反応させることによって合成することができる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、硬化性組成物の全オリゴマー含有率は約25%未満である。本発明の特に望ましい実施形態においては、全オリゴマー含有率は約15%未満である。本発明の望ましい実施形態においては、硬化性組成物の全モノマー含有率は約65%を超える。本発明の特に望ましい実施形態においては、硬化性組成物のモノマー含有率は約75%を超える。比較的少ない量のオリゴマーを使用することで、当業者は望ましい粘度を有する硬化性組成物を容易に配合することができる。通常、オリゴマーは組成物の中で高価な材料であるので、オリゴマー量を最小限にすることによって、当業者は硬化性組成物の費用、およびそれが被覆された光ファイバなどの物品の費用を削減することができる。低オリゴマー含有率の二次被覆組成物は、米国特許出願第09/722,895号明細書により詳細に記載されており、この記載内容全体を本明細書に援用する。オリゴマーは、少なくとも約1重量%の濃度で硬化性組成物中に存在することが望ましい。
【0048】
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤を含むことができる。開始剤は、望ましくは、硬化性組成物の重合を開始するのに有効な量で存在する。本発明の望ましい硬化性組成物は、化学線による硬化に適合しており、1種類以上の光開始剤を含む。ほとんどの(メタ)アクリレート系硬化性組成物の場合、ケトン系および/またはホスフィンオキシド系開始剤などの従来の光開始剤を使用することができる。一般に、本発明の硬化性組成物の全光開始剤含有率は、約0.1〜約10.0重量パーセントの間である。より望ましくは、本発明の硬化性組成物の全光開始剤含有率は、約1.0〜約7.5重量パーセントの間である。好適な光開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY))より入手可能なイルガキュア(IRGACURE)184)、(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)の市販の混合物のイルガキュア(IRGACURE)1800,1850、および1700に含まれる)、2,2−ジメトキシル−2−フェニルアセトフェノン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)のイルガキュア(IRGACURE)651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)のイルガキュア(IRGACURE)819)、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)の市販の混合物のダロキュア(DAROCUR)4265に含まれる)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(たとえば、チバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)の市販の混合物のダロキュア(DAROCUR)4265に含まれる)、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な表面硬化および材料全体の適切な硬化の両方を得るために、α−ヒドロキシケトン光開始剤(たとえば、イルガキュア(IRGACURE)184)とビス(アシル)ホスフィンオキシド光開始剤(たとえば、イルガキュア(IRGACURE)819)との併用が望ましい場合がある。米国特許出願第10/086,109号明細書(この記載内容全体を本明細書に援用する)に記載されているように、光ファイバ中の二次被覆として使用される硬化性組成物は、一次被覆組成物中に使用される光開始剤の吸収スペクトルとは完全には重ならない吸収スペクトルを有する光開始剤を配合することができる。他の光開始剤も絶えず開発されており、ガラス繊維上の被覆組成物中に使用されている。あらゆる好適な光開始剤を、本発明の組成物に導入することができる。
【0049】
上述の成分以外に、本発明の硬化性組成物は、場合により、1種類の添加剤、または複数の添加剤の組み合わせを含むことができる。好適な添加剤としては、酸化防止剤、触媒、潤滑剤、低分子量非架橋性樹脂、接着促進剤、カップリング剤、着色剤、および安定剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある添加剤は、重合プロセスを制御するように作用することができ、それによって組成物から形成される重合生成物の物理的性質(たとえば、弾性率、ガラス転移温度)に影響を与えることができる。その他のものは組成物の重合生成物の完全性に影響を与えることができる(たとえば、解重合または酸化的分解を防止する)。望ましい酸化防止剤は、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシヒドロシンナメートである(イルガノックス(IRGANOX)1035としてチバ・スペシャルティ・ケミカル(Ciba Specialty Chemical)より入手可能)。好適な接着促進剤は、UCBラドキュア(UCB Radcure)より入手可能なエベクリル(EBECRYL)170などのアクリル化酸接着促進剤である。チタンおよびジルコニウム系カップリング剤、ならびに米国特許出願第09/726,002号明細書および第09/747,480号明細書(これらそれぞれの記載内容全体を本明細書に援用する)に記載されるような蛍光増白剤も、本発明の硬化性組成物中に使用することができる。チバ(Ciba)より入手可能なユビテックスOB(UVITEX OB)などの蛍光増白剤も、本発明の硬化性組成物中に使用することができる。
【0050】
二次被覆材料中に使用される他の好適な材料、およびこれらの材料の選択に関連する考慮事項は、当技術分野において周知であり、チェーピン(Chapin)に付与された米国特許第4,962,992号明細書および第5,104,433号明細書に記載されており、これらの記載内容全体を本明細書に援用する。本発明の組成物に混入される上述の添加剤などの、被覆の1つ以上の性質を向上させる種々の添加剤も存在することができる。
【0051】
本発明の硬化性組成物は、実質的に均一な形態を有する硬化ポリマー材料が得られるように硬化させることができる。3つの硬化ポリマー材料のAFM相マップを図3に示す。これらのAFM相マップは、スキャンサイズ1μm、およびスキャン速度1.485Hzでデジタル・インストルメンツ・ナノスコープ(Digital Instruments Nanoscope)を使用して作成した。上のAFM相マップは、実質的に不均一な形態を示しており、暗い背景中に大きな(長さ>30nm)明るい白色の粒子を有する。このAFM相マップは、相分離した硬質(白色)領域を有する硬化ポリマー材料によるものである。下の2つのAFM相マップは、本発明の硬化ポリマー材料(以下の実施例2のそれぞれ硬化性組成物36および2)によるものである。これらのAFM相マップは、非常に小さい灰色がかった粒子のみを有し、(存在するとしても)相分離はわずかである実質的に均一な形態を示している。
【0052】
本発明の別の実施形態は、本明細書において前述した二次被覆を含む光ファイバの製造方法に関する。この方法は、一般に、本発明の組成物を使用する標準方法によって行うことができる。簡潔に述べると、この方法は、ガラス繊維を製造するステップ(当業者に周知の方法を使用)と、一次被覆組成物をガラス繊維に適用するステップと、一次被覆組成物を重合させて一次被覆材料を形成するステップと、本明細書において前述した硬化性組成物を、被覆されたガラス繊維に適用するステップと、硬化性組成物を重合させて光ファイバの二次被覆としての硬化ポリマー材料を形成するステップとを含む。場合により、一次被覆組成物を重合させる前に被覆されたファイバに二次被覆組成物を適用することができ、この場合1つのみの重合ステップが使用される。
【0053】
一次被覆組成物および二次被覆組成物は、線引き塔上などの従来方法を使用してガラス繊維上に被覆される。約2000℃などの温度に局所的および対称的に加熱された、特別に製造された円筒形プリフォームから、ガラス繊維が引き抜かれることはよく知られている。プリフォームを加熱炉に通すことなどによってプリフォームを加熱し、溶融した材料からガラス繊維が引き抜かれる。プリフォームから引き抜いた後、好ましくは冷却直後のガラス繊維に、1種類以上の被覆組成物が適用される。次に被覆組成物を硬化させることで、被覆光ファイバが形成される。被覆組成物の性質、および使用される重合開始剤に依存して、ガラス繊維上に適用した(未硬化の)被覆組成物の紫外光、化学線、マイクロ波放射、または電子ビームへの曝露など、硬化方法は、熱的、化学的、または放射線によって誘導することができる。引き抜きプロセスの後に一次被覆組成物および任意の二次被覆組成物の両方を連続して適用することが好都合である場合が多い。移動するガラス繊維に被覆組成物の二重層を適用する方法の1つが、テイラー(Taylor)に付与された米国特許第4,474,830号明細書に開示されており、この記載内容全体を本明細書に援用する。ガラス繊維上に被覆組成物の二重層を適用する別の方法が、ラネル(Rannell)らに付与された米国特許第4,581,165号明細書に開示されており、この記載内容全体を本明細書に援用する。当然ながら、一次被覆組成物を適用し、硬化させて一次被覆材料を形成することができ、次に本明細書において前述した硬化性組成物を適用し、硬化させて二次被覆の硬化ポリマー材料を形成することができる。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態は、光ファイバリボンに関する。このリボンは、複数の光ファイバと、複数の光ファイバを封入するマトリックスとを含む。このマトリックスは、本明細書において前述した本発明の硬化性組成物の硬化生成物である。
【0055】
本発明のリボンの一実施形態を図4に示している。この図に示されるように、本発明の光リボン90は、互いに実質的に平面の関係で実質的に位置合わせされマトリックス94によって封入された複数の単層または多層の光ファイバ92を含む。当業者であれば理解できるように、光ファイバ92は、二重層被覆系(たとえば、本明細書において前述した一次被覆および二次被覆)を含むことができ、マーキングインクで着色することができる。光ファイバ92は、その直径の約半分を超える距離で共通面から離れないことが望ましい。実質的な位置合わせとは、光ファイバリボン90の長さに沿って、光ファイバ92が、他の光ファイバとほぼ平行となることを意図している。図4において、光ファイバリボン90は、16本の光ファイバ92を含んでいるが、しかし、当業者には明らかなように、あらゆる数の光ファイバ92(たとえば、2本以上)を使用して、特定の使用のために配列された光ファイバリボン90を形成することができる。
【0056】
本発明の光ファイバリボン中の光ファイバは、光ファイバリボンの従来の製造方法によって、あらゆる周知の構成(たとえば、端部が接合されたリボン、薄く封入されたリボン、厚く封入されたリボン、または多層リボン)で、マトリックス94によって封入することができる。
【0057】
本発明の硬化性組成物を使用してマトリックス材料を形成して、従来方法によって光ファイバリボンを作製することができる。たとえば、マイヤー(Mayr)に付与された米国特許第4,752,112号明細書およびエストライヒ(Oestreich)らに付与された米国特許第5,486,378号明細書(これらの記載内容全体を本明細書に援用する)に記載されるような光ファイバリボンの製造方法により、複数の実質的に平面状の光ファイバの位置合わせの後、本発明の組成物を適用し、硬化させることができる。
【0058】
本発明の硬化性組成物は、光ファイバ用マーキングインクの配合物中に好都合に使用することもできる。したがって、本発明の別の実施形態によると、被覆光ファイバは、光ファイバと、光ファイバを封入するための被覆系(本明細書において前述した被覆系など)と、被覆系の外部に付着させたマーキングインクとを含む。たとえば、図5は、ガラス光ファイバ102と、一次被覆104および二次被覆106を含む被覆系と、マーキングインク108とを含む、マークされた光ファイバ100の概略図を示している。マーキングインクは、本明細書において前述した本発明の硬化性組成物の硬化生成物である。通常マーキングインクは、光ファイバの二次被覆の外面上に、着色された被覆の薄層として形成される。当業者は、本発明の硬化性組成物に顔料および/または染料を加えることで、好適なマーキングインクを得ることができる。米国特許第6,553,169号明細書(この記載内容全体を本明細書に援用する)に記載されるようなチタネートまたはジルコネートカップリング剤をマーキングインク硬化性組成物中に含めることが望ましい場合がある。
【0059】
本発明の硬化性組成物および硬化ポリマー材料は、光ファイバの二次被覆と関連させて本明細書において前述している。しかし、本明細書に記載の硬化性組成物および硬化ポリマー材料が、非常に硬く強靱な被覆を必要とする他の被覆用途においても有用となりうることが、当業者には分かるであろう。したがって、本発明の別の実施形態は、ヤング率が少なくとも約1200MPaであり、破壊靱性が少なくとも約0.7MPa/m1/2である硬化ポリマー材料に関する。本発明の硬化ポリマー材料は、光ファイバの二次被覆の硬化ポリマー材料に関して本明細書において前述した他の望ましい性質を有することができる。たとえば、本発明の硬化ポリマー材料は、少なくとも約38μmの延性を有することができる。本発明の硬化ポリマー材料は、本明細書において前述した本発明の硬化性組成物の硬化反応生成物であってよい。
【0060】
光ファイバを装置または別の光ファイバに連結するためには、通常、光ファイバの一部から二重被覆系を剥離する必要がある。本発明の硬化性組成物は、接続接合部または接続部などにおいて剥離した光ファイバを再被覆するのに有用な場合がある。このポリマー被覆は、本明細書において前述したいずれかの二次被覆であってよく、本明細書において前述したいずれかの硬化性組成物を使用して形成することができる。接続部被覆は、好ましくは厚さが約40〜約260マイクロメートルの間であり、より好ましくは約40〜125マイクロメートルの間である。
【0061】
より具体的には、図6を参照すると、接続によって形成される光ファイバ200が、第1および第2の光ファイバセグメント201、202が互いに接続されている接続部において再被覆されている。前述したように、これらのセグメントのそれぞれは、その上に少なくとも1つの被覆203、204を有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆は、その末端部分201’、202’から除去されている。これらの第1および第2の光ファイバセグメントの末端部分は、端と端を接して互いに接続されており、これは突き合わせ接続と呼ばれている。接続部を形成した後(すなわち、2つの突き合わせ端部を互いに配置することによって)、第1および第2のセグメントの末端部分を封入し、第1および第2の光ファイバセグメントの被覆と接触するように(すなわち、被覆が剥離されたときに露出する被覆面において)、接続部を被覆組成物と接触させる。次に、被覆組成物を硬化させて、再被覆205を形成することで、本発明の再被覆光ファイバ200が得られる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、本発明の再被覆光ファイバは、ヤング率が少なくとも約1200MPaである硬化接続部被覆(すなわち再被覆)を含む。前述したように、被覆のヤング率が高いほど、再被覆としての使用に好ましい。好ましくは、再被覆は、少なくとも約0.7MPa・m1/2の破壊靱性も有する。
【実施例】
【0063】
以下の非限定的実施例によって本発明をさらに説明する。
【0064】
実施例1−オリゴマーの合成
実施例のオリゴマー1〜33を以下のように合成した。特に明記しない限り、減圧下で行ったプロセスは、1Torr程度の圧力で行った。ジブチルスズジラウレート、4−メトキシフェノール(MEHQ)、フェノチアジン、および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)は、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.)より購入した。オリゴマーの調製に使用したポリオールは、一般に、使用前に減圧下で40〜50℃で12時間加熱して、微量の水を除去した。他のすべての材料は入手したままの状態で使用した。
【0065】
平均構造CLA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−CLAを有するウレタンアクリレートオリゴマー1は、35.0g(0.133モル)デスモジュールW(DESMODUR W)(H12MDI(NCO)、バイエル(Bayer))と、91.8g(0.266モル)のカプロラクトンアクリレート(Sartomer、SR495)とを、190mgのジブチルスズジラウレート、および190mgのBHTとともに20℃で混合することによって調製した。この混合物をこの温度で1.5時間撹拌した後、75〜85℃で3時間加熱した。
【0066】
平均構造GlyPO(725)[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−HEA]を有するウレタンアクリレートオリゴマー2は、75.2g(0.648モル)のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(アルドリッチ(Aldrich))を、611mgのBHTおよび611mgのジブチルスズジラウレートを含有する170.0g(0.648モル)のデスモジュールW(DESMODUR W)の氷冷混合物にゆっくり加えることによって調製した。添加後、この混合物を75〜80℃で1時間加熱した。この混合物を65℃未満まで冷却し、および156.60g(0.216モル)のプロポキシル化グリセロール(M=725、アルドリッチ(Aldrich))を1.5時間かけて加えた。この混合物を75〜80℃で1時間加熱して反応を完了させた。
【0067】
平均構造UMB2005[OOC−NH−H12MDI−NH−COO−HEA]2.4を有するウレタンアクリレートオリゴマー8は、11.07g(0.0.095モル)アクリル酸2−ヒドロキシエチル(アルドリッチ(Aldrich))を、144mgのBHTおよび144mgのジブチルスズジラウレートを含有する25.0g(0.095モル)デスモジュールW(DESMODUR W)の氷冷混合物にゆっくり加えることによって調製した。添加後、この混合物を75〜80℃で1時間加熱した。この混合物を65℃未満まで冷却し、60.13g(0.023モル)のUMB2005(エスプリクス・テクノロジーズ(Esprix Technologies)、M約2600のヒドロキシル官能性[2.4当量/鎖]ポリ(ブチルアクリレート))を45分かけて加えた。この混合物を75〜80℃で1時間加熱して反応を完了させた。
【0068】
平均構造TMPPO[OOC−NH−IPDI−NH−COO−PPG(425)−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA]を有するウレタンアクリレートオリゴマー9は、最初に、40.0g(0.094モル)のポリ(プロピレングリコール)(アルドリッチ(Aldrich)、M=425)を、150mgのBHT(アルドリッチ(Aldrich))安定剤および150mgのジブチルスズジラウレート(アルドリッチ(Aldrich))を含有する41.84g(0.188モル)のイソホロンジイソシアネート(アルドリッチ(Aldrich))の氷冷混合物に1.5時間かけて加えることによって調製した。添加後、この混合物を75〜80℃で2時間加熱した。熱源を取り外し、混合物を102.4gのフォトマー(PHOTOMER)4028(エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、コグニス(Cognis))で希釈した。混合物の温度が55℃未満となってから、10.93g(0.094モル)のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(アルドリッチ(Aldrich))を15分かけて加えた。この混合物を75〜80℃で2時間加熱し、続いて70℃未満まで冷却した後、9.66g(0.031モル)のプロポキシル化(1PO/OH)トリメチロールプロパン(アルドリッチ(Aldrich)、M=308)を10分かけて加えた。この混合物を75〜80℃で2.5時間加熱して反応を完了させた。最終生成物は、オリゴマー9とフォトマー(PHOTOMER)4028との1:1混合物であった。
【0069】
平均構造PETA−OOC−NH−TDI−NH−COO−PETAを有するウレタンアクリレートオリゴマー11は、61.7g(0.207モル)のペンタエリスリトールトリアクリレートと120mgMEHQとを、120mgのフェノチアジン(アルドリッチ(Aldrich))と混合し、これを減圧下で75〜80℃に1.5時間加熱することによって調製した。減圧を開放し、混合物を窒素下に置き、20℃未満まで冷却した後、18.0g(0.103モル)のトルエンジイソシアネートを5分かけて加えた後、160mgのジブチルスズジラウレートを加えた。次にこの混合物を75〜80℃で2.5時間加熱して反応を完了させた。
【0070】
平均構造[HEA−OOC−NH−TDI−NH−COO−PO2BPA−OOC−NH]TDIを有するウレタンアクリレートオリゴマー14は、40.0g(0.116モル)のプロポキシル化(1PO/OH)ビスフェノールA(アルドリッチ(Aldrich))を130mgのBHTと混合し、これを減圧下で75〜80℃に1時間加熱することによって調製した。減圧を開放し、83.85gのフォトマー(PHOTOMER)4028を加えた。その混合物を20℃未満まで冷却し、30.35g(0.174モル)のトルエンジイソシアネート(アルドリッチ(Aldrich)、2,4および2,6異性体の混合物)を加え、続いて130mgのジブチルスズジラウレートを加えた。20℃において撹拌を1時間続けた。次に混合物を75〜80℃で1時間加熱した。この混合物を70℃未満まで冷却し、13.50g(0.116モル)のアクリル酸ヒドロキシエチルを15分かけて加えた。その混合物を75〜80℃でさらに2時間加熱して反応を完了させた。最終生成物は、オリゴマー14とフォトマー(PHOTOMER)4028との1:1混合物であった。
【0071】
平均構造[HEA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO−EO8BPA−OOC−NH−H12MDI−NH−COO](1000)を有するウレタンアクリレートオリゴマー15は、60.0g(0.103モル)のエトキシル化(4EO/OH)ビスフェノールA(アルドリッチ(Aldrich))を260mgのBHTと混合し、これを減圧下で75〜80℃に1時間加熱することによって調製した。減圧を開放し、178.0gのフォトマー(PHOTOMER)4028を加えた。その混合物を20℃未満まで冷却し、54.3g(0.207モル)デスモジュールW(DESMODUR W)を加え、続いて260mgのジブチルスズジラウレートを加えた。20℃において撹拌を20分間続けた。次にこの混合物を75〜80℃で1.5時間加熱した。混合物を70℃未満まで冷却し、51.7g(0.052モル)のテラタン(TERATHANE)1000(アルドリッチ(Aldrich))を20分かけて加えた。その混合物を75〜80℃で1.5時間加熱した後、12.0g(0.103モル)のアクリル酸2−ヒドロキシエチルを加え、続いてさらに75〜80℃で1.5時間加熱して反応を完了させた。最終生成物は、オリゴマー15とフォトマー(PHOTOMER)4028との1:1混合物であった。
【0072】
平均構造GlyPO(725)[OOC−NH−IPDI−NH−COO−BPA−OOC−NH−IPDI−NH−COO−HEA]を有するウレタンアクリレートオリゴマー23は、最初に、67.8gのフォトマー(PHOTOMER)4028、15.0g(0.066モル)ビスフェノールA、および100mgのMEHQ安定剤の混合物を75〜80℃において減圧下(1mm)で1時間加熱することによって調製した。減圧を開放し、混合物を窒素下に置き、20℃未満まで冷却した後、29.25g(0.132モル)のイソホロンジイソシアネートを加え、続いて100mgのジブチルスズジラウレートを加えた。この混合物を75〜80℃で1.5時間加熱した後、65℃未満まで冷却し他後、7.64g(0.066モル)のアクリル酸2−ヒドロキシエチルを5分かけて加えた。その混合物を75〜80℃で1.5時間加熱した後、再び65℃未満まで冷却し、続いて15.90g(0.022モル)のグリセリンプロポキシレート(アルドリッチ(Aldrich)、M=725)を5分かけて加えた。その混合物を75〜80℃で2時間加熱して反応を完了させた。最終生成物は、オリゴマー23とフォトマー(PHOTOMER)4028との1:1混合物であった。
【0073】
ウレタンアクリレートオリゴマー3〜7、10、12、13、16〜22、および24〜34は、上述の方法と実質的に類似の方法を使用して調製した。これらのオリゴマーの構造は表3に示しており、オリゴマー番号の後のアステリスクは、オリゴマーとフォトマー(PHOTOMER)4028との1:1混合物としとオリゴマーを調製したことを示している。
【表3】

【0074】
実施例2−硬化性組成物の配合
高速混合機を使用して70℃に加熱したジャケット付きビーカー中で硬化性組成物1〜37を配合した。それぞれの場合で、成分は、天秤を使用してジャケット付きビーカー内に量り取り、固体成分が完全に溶解して混合物が均一に見えるようになるまで混合した。硬化性組成物は、オリゴマー、モノマー、および光開始剤の量が合計で100重量%となるように配合し、酸化防止剤などの他の添加剤はpphの単位で全部の混合物中に加える。オリゴマーとモノマーとの1:1混合物として提供されるオリゴマーの場合は、そのオリゴマー成分のみをオリゴマーとして計算する。たとえば、オリゴマー9とフォトマー(PHOTOMER)4028の1:1混合物を20%使用して調製される硬化性組成物は10%のオリゴマーを有する。表4は、各組成物の組成の詳細を列挙している。各組成物は、1.5%のイルガキュア(IRGACURE)184、1.5%のイルガキュア(IRGACURE)819、および0.5pphのイルガノックス(IRGANOX)1035も含んでおり、これらはそれぞれチバ(Ciba)より入手可能である。ブランコホルKLA(BLANKOPHOR KLA)は市販の蛍光増白剤である。
【表4−1】

【表4−2】

実施例3−硬化したポリマー材料の性質
実施例2の硬化性組成物1〜37を使用して、引張試験用のロッド試料を作製した。内径約0.025インチのテフロン(登録商標)管材料の中に硬化性組成物を注入することによってロッドを作製した。これらの試料は、フュージョンDバルブ(Fusion D bulb)を線量約2.6J/cm(インターナショナル・ライト(International Light)のライト・バグ・モデルIL390(Light Bug model IL390)によって225〜424nmの波長範囲にわたって測定)において使用して硬化させた。硬化後、「テフロン」管材料をはがすと、直径約0.0225インチの試料が残った。硬化させたロッドは、23℃の制御された温度および50%の制御された相対湿度の実験室内で終夜コンディショニングを行った。シンテックMTS引張試験機(Sintech MTS Tensile Tester)を使用して各試料のヤング率、引張強度、およびパーセント破断時伸びを測定した。ある材料の他の引張データと同時に降伏応力を測定した。ゲージ長さは5.1cmであり、試験速度は2.5cm/分であった。報告するデータは10試料の平均であり、報告する不確かさは標準偏差である。
【0075】
実施例2の硬化性組成物1〜35を使用して、破壊靱性試験用のフィルム試料も作製した。0.010インチのドローダウンバーを使用してガラス板に硬化性組成物をキャストすることによってフィルム試料を作製した。これらのフィルムは、フュージョンDバルブ(Fusion D bulb)を線量約1.4J/cm(インターナショナル・ライト(International Light)のライト・バグ・モデルIL390(Light Bug model IL390)によって225〜424nmの波長範囲にわたって測定)において使用して硬化させた。硬化させたフィルムは、23℃の制御された温度および50%の制御された相対湿度の実験室内で終夜コンディショニングを行った。破壊靱性K1Cは、本明細書において前述した方法を使用して硬化したフィルムに対して測定した。それぞれ3つの異なるノッチ長さで3つの試料の測定を行い、報告する値および不確かさは、全6回の試験の平均および標準偏差である。前述のようにK1Cおよび降伏応力の平均値から、多くの材料の延性を計算した。
【0076】
表5は、硬化性組成物1〜37を硬化させることによって作製した硬化ポリマー材料の引張および破壊靱性データを示している。
【表5】

【0077】
実施例4−被覆光ファイバの剥離力
以下に詳述する一次被覆組成物の1つと、二次被覆を形成するための本発明の硬化性組成物とを使用して、光ファイバを被覆した。一次被覆組成物Aは、52重量%のBR3731(ボマー・スペシャルティーズ(Bomar Specialties)より入手可能);45重量%のフォトマー(PHOTOMER)4003(コグニス(Cognis)より入手可能);1.5重量%のイルガキュア(IRGACURE)184および1.5重量%のイルガキュア(IRGACURE)819(それぞれチバ(CIBA)より入手可能);1pphのイルガノックス(IRGANOX)1035(チバ(Ciba)より入手可能);2pphのビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン;および0.3pphの(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランを含んだ。一次被覆組成物Bは、52重量%のBR3741;25重量%のフォトマー(PHOTOMER)4003;20重量%のトーンM−100(TONE M−100);1.5重量%のイルガキュア(IRGACURE)819;1.5重量%のイルガキュア(IRGACURE)184;および1pphの(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシランを含んだ。表6は、本発明による5つの光ファイバの23℃における平均ピークファイバ剥離力を示している。
【表6】

【0078】
実施例5−再被覆強度に対するヤング率の影響
硬化後に直径が約22〜23mmとなる被覆ロッドを作製することによって、ヤング率値を求めた。これらのロッドは、内径25mmの「テフロン」管材料の中に再被覆配合物を注入することによって作製した。次に、Dバルブ(D bulb)を有するフュージョンUVシステム(Fusion UV system)を線量約2400mk・cm−2で使用して、これらのロッドを硬化させた。硬化後、「テフロン」管材料をはがし、次に、得られたロッドを湿度50%および23℃の制御された環境中で終夜コンディショニングした。シンテックMTS引張試験機(Sintech MTS Tensile Tester)を使用してこれらの試料の試験を行った。試料のゲージ長さは5.1cmであり、試験速度は2.5cm/分であった。各再被覆配合物について、破壊するまで引っ張ることによって10試料の試験を行った。以下の表7に報告する結果は、これら10試料の平均である。
【0079】
「テフロン」管材料の中に挿入したガラスのロッドを使用して、前述と類似の方法で突き合わせ接続試料を作製した。充填した「テフロン」管材料を切断して10個の試料(それぞれが突き合わせ接続を有する)を作製し、次に、前述のように硬化させた。再被覆部分から「テフロン」管材料を除去し、その界面を顕微鏡下で検査し、(マーカーを使用して)いずれかの側にマークした。ゲージ長さを0.5cmまで減少させて同じ装置を使用して、突き合わせ接続の引張値を求めた。試料は破壊するまで引っ張ったが、界面で破壊しなかった試料はすべて、計算に含めなかった。
【表7】

【0080】
DSM−200は市販の再被覆配合物であり、DSM−105は市販の二次被覆配合物であり、どちらもDSMデソテック(DSM Desotech)製である。DSM−200は、低ヤング率を特徴とし、接続部に応力が作用すると、再被覆ファイバ界面において間隙が形成されやすい。DSM−105は、高破壊靱性の二次被覆である。配合物101は、DSM−200とDSM−105との80:20混合物である。ロッド・アンド・チューブ引張強度値は、接続接合部の再被覆材料と、光ファイバ上の被覆との間の界面強度を定量化するために開発された方法を使用して求めた。市販の切断工具などを使用して、被覆を通して被覆光ファイバを切断し、それによって被覆がガラス末端と同じ高さになる端面を形成する。この方法で作製した2つの被覆ファイバ末端を、従来のファイバ接続再被覆装置に入れ、ファイバ末端間の間隙が約1〜2センチメートルになるようにする。この間隙に所望の接続再被覆材料を充填し、通常の方法で硬化させる。この試験体を再被覆装置から取り出すと、図9に示されるように、2本の被覆光ファイバ203および204からなり、それらの末端201’および202’は、それらの本来の被覆201および202が剥離されている。これらのファイバは、ある長さの固体再被覆材料205によって接続されている。次に、再被覆材料を一方のファイバの端面付近(たとえば被覆202の近く)で切断し、ファイバ202’をそこから引き抜くことによって、この一方のファイバ(204および202’)を再被覆材料205から分離する。これによって、末端上に再被覆材料205のロッドを有する被覆ファイバ203が残る。次に、他方の光ファイバ203を被覆ジャケットから取り外すと、被覆のチューブが残る。たとえば、被覆ファイバを液体窒素に入れてファイバを一時的に硬化させ、ファイバから被覆を除去しやすいようにして、その後、剥離工具(たとえば保護被覆を電線から除去するのに使用される道具)を使用して被覆をガラス繊維から押し出すことによって、光ファイバ上の被覆を他方のファイバから除去ことができる。言い換えると、ファイバが内部に適合するのにちょうどいい大きさの孔に通してファイバを引き抜くと、被覆は他方の側に止まる。この方法でファイバを除去することによって、得られた試験体は、本来の被覆ファイバからのポリマー被覆の中空チューブと、それに付いた再被覆材料のロッドからなる。このようにして、再被覆材料とファイバ被覆との間の接着力を試験することができ、たとえば、試験体は、インストロン(Instron)、MTSなどの万能試験機上で張力の強度試験を行うことができる。
【0081】
上記データから、1200MPaのヤング率を有する高強度のコーティングが、改善された引張強度、および間隙が形成されるときの改善された応力を示した。驚くべきことに、DSM−105は、再被覆として使用すると、ヤング率が1200MPa未満であるにおも関わらず高強度を示した。再被覆配合物38は高ヤング率を特徴とし、高ヤング率であると通常は配合物は非常に脆くなる。驚くべきことに、この場合は異なり、この再被覆配合物は、引張強度と、再被覆およびファイバ被覆の間に間隙が形成されるときの応力との両方で非常に優れた性能を示した。
【0082】
実施例6−間隙性能(gap performance)に対する光開始剤および硬化度の影響
1重量%のイルガキュア(Irgacure)819光開始剤(BAPOを含有する)を加えることによってDSM−950および配合物101を改質した。次に、被覆間隙性能を、それらの元の配合物と比較した。通常の引張試験機(インストロン(Instron)、MTSなど)上の中央に接合され再被覆された部分が配置されるようにある長さのファイバを置くことによって、間隙性能を測定した。再被覆材料とファイバ被覆との間に間隙が形成されるまで荷重を増加させる。間隙の形成は目視で検出する。間隙が形成されたときのファイバのガラス部分の荷重を記録し、応力に変換する。試験結果を以下の表8に示す。
【表8】

【0083】
DSM−200の被覆を使用した場合、光開始剤を使用しても使用しなくても、観察された結果に有意差はなかった。配合物101では、イルガキュア(Irgacure)819を加えることによって、9秒の硬化速度において、間隙が形成されるときの応力の試験において改善を示した。イルガキュア(Irgacure)を加えることによって、被覆は、ファイバ界面で間隙が形成されるまでに約2倍の応力に耐えることができた。
【0084】
以下の方法で耐破壊性を測定した。長さ4センチメートルのファイバを厚さ3mmのスライドガラスの上に置く。ファイバの一端を、制御しながらファイバを回転できるように装置に取り付ける。このファイバを、透過光の使用により100倍の倍率で検査して、二次被覆の肉厚が両側で等しくなるまで回転させる。その位置で、二次被覆上部または底部において最も厚く、両側で等しくなる。図7にはこのことを誇張して示している。ファイバ両端をスライドガラスにテープで留めることによって、この方向に固定する。万能試験機のクロスヘッドの下に配置した倒立顕微鏡を使用して押し込みを行う。75°ダイヤモンドウェッジインデンターのすぐ下に顕微鏡の対物レンズを配置する。ファイバを有するスライドガラスを移動式顕微鏡ステージの上に置き、ウェッジの幅方向がファイバ方向と直交するように、インデンターのすぐ下に配置する。インデンターチップを下げてファイバとともに視野に入るようにし、続いてステージ上のスライドを移動させてファイバを位置合わせすることによって、正確な位置合わせを行う。
【0085】
ファイバを所定の位置に合わせた後、被覆表面にちょうど接触するまでダイヤモンドウェッジを下げる。次に、0.1mm/分の速度で被覆の中にウェッジを押し込む。荷重は増加した後に急激に低下し、それによって被覆が破壊されたことが分かる。顕微鏡で観察すると、荷重の低下は、被覆の破壊が視覚により確認できたことに対応している。破壊時のピーク荷重を、このような測定10回について記録し、次にファイバを180°回転させることで、第2の肉厚の他方の極値を同じ方法で試験することができる。したがって、ファイバの特定の断片について20回の測定が行われる。
【0086】
図8に示す結果は、ガラス直径および一次被覆の存在とは無関係に、耐破壊性が、二次被覆の断面積に直線的に依存していることを示している。図8中の線は、イリノイ州エルジンのDSMデソテック(DSM Desotech,Elgin,Il)より市販される被覆であるCPC−6の単層の線形の耐破壊性を示している。この線はグラムの単位における耐破壊性yとして表すこともでき、これは0.0019x+11.255(式中、x=(マイクロメートル)の単位における被覆の断面積である)に等しい。どちらも本発明による被覆であるSC 89およびSC95は、CPC−6の線上のいずれの点よりも高い耐破壊性を示している。言い換えると、この実施形態における本発明のコーティング(たとえば38および40)は、グラムの単位における耐破壊性yが約0.0019x+11.255(式中、x=(マイクロメートル)の単位における被覆の断面積である)を超えることを示している。より好ましくは、本発明のコーティングは、0.0019x+11.255(式中、x=(マイクロメートル)の単位における被覆の断面積である)を3グラム超える耐破壊性を示す。
【0087】
図8中の白い正方形は、DSM製の一般的な再被覆材料の耐破壊性である。この材料は、CPC6データ線より高い耐破壊性は示していないことに注意されたい。
【0088】
図8中の白い三角形は、CPC6に非常によく似た組成物である。本発明の被覆(たとえば表4中のすべての被覆)は、CPC−6を超える耐破壊性を示すだけでなく、好ましくは少なくとも約1200MPaであり、より好ましくは約1400MPaを超え、最も好ましくは約1800MPaを超えるヤング率も示す。
【0089】
本発明の意図および範囲から逸脱することなく、本発明の種々の修正および変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にある本発明の修正および変形を、本発明が含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態による被覆光ファイバの概略図である。
【図2】破壊靱性の測定に使用されるフィルム試料の概略図である。
【図3】一連の原子間力顕微鏡法(AFM)相マップである。
【図4】本発明の一実施形態による光ファイバリボンの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態によるマーキングインクを含む光ファイバの概略図である。
【図6】下にある接続部を露出させるために、硬化した再被覆の一部を破壊して除去した再被覆光ファイバの側面図である。
【図7】前述の耐破壊性試験のためのファイバの位置合わせを示している。
【図8】種々の被覆の断面積に対する破壊荷重を示している。
【図9】前述の接着試験に使用される試験体を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆光ファイバにおいて、
第1および第2の光ファイバセグメントであって、それぞれが少なくとも1つの被覆を上に有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆はそれらの末端部分から除去されており、前記第1および第2の光ファイバセグメントの前記末端部分は互いに端どうしが当接している、第1および第2の光ファイバセグメントと、
硬化接続部被覆であって、前記末端部分を封入し、前記第1および第2の光ファイバセグメントの前記少なくとも1つの被覆と接触している、硬化接続部被覆と、
を有してなり、
前記接続部被覆が、
(i)ヤング率が少なくとも約1200MPaであり、
(ii)ロッド・アンド・チューブ法(rod and tube method)で測定した界面強度が約25MPaを超えることを特徴とする被覆光ファイバ。
【請求項2】
前記接続部被覆が、少なくとも約1500MPaのヤング率を有することを特徴とする請求項1に記載の被覆光ファイバ。
【請求項3】
前記接続部被覆が、少なくとも約0.7MPa・m1/2の破壊靱性を有することを特徴とする請求項2に記載の被覆光ファイバ。
【請求項4】
前記接続部被覆の厚さが約40マイクロメートル〜約125マイクロメートルの間であることを特徴とする請求項1に記載の被覆光ファイバ。
【請求項5】
接続部被覆が、少なくとも1種類のモノマーと、少なくとも1種類のオリゴマーと、少なくとも1種類の重合開始剤とを含む組成物の硬化ポリマー生成物であることを特徴とする請求項1に記載の被覆光ファイバ。
【請求項6】
接続部において光ファイバを再被覆する方法であって、
第1および第2の光ファイバセグメントを提供するステップであって、それぞれが少なくとも1つの被覆を上に有する光ファイバを含み、その少なくとも1つの被覆はそれらの末端部分から除去されており、前記第1および第2の光ファイバセグメントの前記末端部分は互いに端どうしが当接しているステップと、
前記第1および第2の光ファイバの前記末端部分に被覆組成物を適用することによって、前記被覆組成物が前記末端部分を封入し、前記第1および第2の光ファイバセグメントの前記少なくとも1つの被覆と接触するステップと、
前記被覆組成物を硬化させて、
(i)ヤング率が少なくとも約1200MPaであること、および
(ii)ロッド・アンド・チューブ法で測定した界面強度が約25MPaを超えること
を特徴とする硬化接続部被覆を形成するステップと、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項7】
被覆組成物が、少なくとも1種類のモノマーと、少なくとも1種類のオリゴマーと、少なくとも1種類の重合開始剤とを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の重合開始剤が光開始剤であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記硬化ステップが、前記被覆組成物をUV源に曝露するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ロッド・アンド・チューブ法で測定した前記界面強度が35MPaを超えることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−527420(P2008−527420A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549585(P2007−549585)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/047237
【国際公開番号】WO2006/073992
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】