説明

補強キャリア及びその製造方法

【課題】 損傷しやすい被搭載物品を適切に輸送等することのできる製造の容易な補強キャリア及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 基板収納容器に収納される基材31に、半導体ウェーハを着脱自在に粘着保持する保持層34を変形可能に積層被覆するとともに、基材31の表面から保持層34の裏面に接触する複数の突起33を突出させてこれら保持層34と複数の突起33との間に区画空間36を形成し、基材31に、区画空間36に連通する取り外し孔37を穿孔し、各突起33の平坦な先端面と接触する保持層34の接触部表面35を粗く形成する。脆い半導体ウェーハを容器本体に直接収納するのではなく、補強キャリア30に保持させて間接的に収納するので、他の工場に安全、かつ適切に輸送できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハや石英ガラスに代表される基板等を着脱自在に保持する補強キャリア及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハの口径は200mmから300mmに拡大してきているが、この
300mmタイプの半導体ウェーハは、表面に回路が形成され、積層構造のパッケージ要
求等を踏まえて裏面がバックグラインドテープを介し薄くバックグラインドされた後、ダ
イシングテープが粘着される。
こうしてダイシングテープの粘着された半導体ウェーハは、他の工場に輸送されてICチップ化され、専用のキャリアに搭載された状態でボンディングや封止等の加工が施される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭59‐227195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における半導体ウェーハやチップの加工は以上のようになされ、バックグラインドされた半導体ウェーハが非常に割れやすく、反りやすいので、他の工場に傷付けることな
く適切に輸送することがきわめて困難であるという大きな問題がある。この問題を解消す
る手段としては、上記した専用のキャリアを使用するという方法が考えられるが、このキ
ャリアはあくまで工場内の搬送に使用される専用品であり、過酷な輸送条件等を何ら考慮
したものではない。したがって、工場から工場への長時間の輸送に使用することはできな
い。
【0004】
さらに、従来においては、工場から工場への輸送時にダイシングテープが長時間粘着し
ていると、回路のバンプにダイシングテープの粘着剤が転写してしまうおそれが少なくな
い。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、損傷しやすい被搭載物品を適切に輸送等することのできる製造の容易な補強キャリア及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、基材に、被搭載物品を着脱自在に保持する保持層を変形可能に積み重ねたものであって、
基材から保持層の裏面に接触する複数の突起を突出させてこれら保持層と複数の突起との間に区画空間を形成し、基材に、区画空間に連なる取り外し孔を設け、複数の突起の先端部と接触する保持層の接触部における表面を粗く形成したことを特徴としている。
【0007】
なお、保持層をエラストマーとし、被搭載物品をバックグラインドされた半導体ウェーハとすることができる。
また、基材の取り外し孔にバキューム装置を接続し、このバキューム装置により保持層を変形させて保持された被搭載物品を取り外すことができる。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基材に複数の突起を形成するとともに、取り外し孔を設ける工程と、基材に変形可能な保持層を重ね設けて複数の突起の先端部と接触させ、複数の突起と保持層との間に区画空間を形成する工程と、基材の取り外し孔にバキューム装置を接続して保持層を変形させ、複数の突起の先端部と接触する保持層の接触部における表面を粗く形成する工程とを含んでなることを特徴としている。
【0009】
さらに、基板収納容器に収納される基材と、この基材に変形可能に積み重ねられて被搭載物品を着脱自在に保持する保持層とを含み、基材から保持層の裏面に接触する複数の突起を突出させてこれら保持層と複数の突起との間に区画空間を形成し、基材に、区画空間に連なる取り外し孔を設け、複数の突起の先端部と接触する保持層の接触部における表面を粗く形成したことを特徴としても良い。
【0010】
さらにまた、基板収納容器を、フロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の正面を開閉する蓋体とから構成し、容器本体の両側壁内部に、基材又は補強キャリアを略水平に支持する複数のティースを形成し、各ティースを、基材の側部周縁に沿う平板と、この平板の前部内側に形成されて基材を支持する略平坦な前部中肉領域と、平板の後部に形成されて基材を支持する後部中肉領域とから形成することが好ましい。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における基材や補強キャリアは、平面略円形、略楕円形、略矩形、略多角形等に形成することができ、基板収納容器の容器本体に収納されるものでも良いし、そうでなくても良い。また、被搭載物品には、少なくとも単数複数の精密基板、液晶ガラス、石英ガラス、フォトマスク、回路基板、検査用のリードフレーム、各種の用紙、薄い電子部品等が含まれる。この被搭載物品が精密基板の場合には、口径300mm、400mm、450mmの半導体ウェーハ(SiウェーハやGaPウェーハ)が含まれる。
【0012】
突起は、円柱形、角柱形、円錐台形、角錐台形等に形成することができる。また、取り外し孔は単数複数いずれでも良い。保持層には、各種のエラストマーやゴムを用いることができる。この保持層の接触部における表面を粗く形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えばグラインダ、切削盤、砥石ローラ、やすり等を使用した平面研磨、切削等があげられる。さらに、本発明に係る補強キャリアは、工場から他の工場への輸送の際だけではなく、工場等で被搭載物品を搬送する場合等にも使用することができる。
【0013】
本発明によれば、補強キャリアの保持層に被搭載物品を搭載して押せば、保持層に被搭載物品を保持させることができる。被搭載物品は、補強キャリアに密着するので、例え薄くても下方に撓んで反ることが少ない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、損傷しやすい被搭載物品を適切に移動、運搬、搬送、輸送等することができるという効果がある。また、補強キャリアを容易に製造することができるという効果がある。
また、高性能の研磨装置や切削装置等を使用すれば、保持層の接触部表面を高精度に加工することができるので、保持層に高精度の平面性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における補強キャリア30は、図1ないし図12に示すように、基板収納容器1に収納される平面円形の基材31に、半導体ウェーハ40を着脱自在に粘着保持する薄膜の保持層34を変形可能に積層被覆するとともに、基材31から保持層34の裏面に接触する複数の突起33を突出させてこれら保持層34と複数の突起33との間には区画空間36を形成し、基材31に、区画空間36に連通する取り外し孔37を穿孔し、各突起33と接触する保持層34の接触部における接触部表面35を面粗らしするようにしている。
【0016】
基板収納容器1は、図1等に示すように、補強キャリア30の基材31を収納する容器本体2と、この容器本体2の正面を開閉する着脱自在の蓋体20とを備えたフロントオープンボックスタイプに構成される。容器本体2は、ポリカーボネート等からなる所定の樹脂を使用して透明のフロントオープンボックスに成形され、複数枚(25枚又は26枚)の基材31を上下方向に並べて整列収納するよう機能する。
【0017】
容器本体2の開口した正面は、図2ないし図4に示すように、外方向に断面略L字形に屈曲形成されて横長のリム部3を形成し、このリム部3の内周面の上下両側には、蓋体施錠用の係止穴4がそれぞれ凹み形成される。容器本体2の背面壁の内面には、基材31の後部周縁を保持溝を介し保持する複数のリヤリテーナ5が所定の間隔をおいて上下方向に並設され、容器本体2の両側壁の内面には、基材31を水平に支持するティース6がそれぞれ突出形成されており、この左右一対のティース6が所定の間隔をおいて上下方向に並設される。
【0018】
各ティース6は、図5等に示すように、平面略く字形あるいは半円弧形に形成されて基材31の側部周縁に沿う平板7と、この平板7の前部内側に一体形成されて基材31を支持する略平坦な前部中肉領域8と、平板7の前部外側に一体形成されて前部中肉領域8の外側、換言すれば、容器本体2の側壁寄りに位置する前部厚肉領域9と、平板7の後部に形成されて基材31を支持する後部中肉領域10と、平板7の後部に形成されて後部中肉領域10の前方に位置し、容器本体2の側壁寄りに僅かな面積で位置する平坦な後部厚肉領域11とを備えて形成される。
【0019】
ティース6の前部中肉領域8と前部厚肉領域9との間には、基材31の側部周縁に接触する垂直の段差12が僅かに形成される。前部厚肉領域9は、補強キャリア30の厚さ相当の高さ、具体的には0.3〜2.5mm程度の高さに形成され、蓋体20の取り外し時に基材31が容器本体2から前方に飛び出すのをストッパとして防止するよう機能する。また、前部中肉領域8と後部中肉領域10との間には、僅かに凹んだ薄肉領域が形成され、この薄肉領域が基材31の側部周縁に僅かな隙間を介して対向する。このような構成のティース6は、平坦な前部中肉領域8と後部中肉領域10とに、基材裏面の側部周縁を高精度を維持しつつ水平に支持する。
【0020】
容器本体2の底面の前部両側と後部中央には、基板収納容器1を搭載する加工装置の位置決めピンに嵌合する位置決め具13が配設され、容器本体2の底面の後部中央には、平面略U字形あるいは略Y字形のボトムプレートが着脱自在に装着されており、このボトムプレートに着脱自在に嵌合された識別体が加工装置のセンサに検知されることにより、基板収納容器1の種類や半導体ウェーハ40の枚数等が把握される。
【0021】
容器本体2の天井の中央部には、自動搬送機に把持される平面略矩形のロボティックフランジ14が着脱自在に装着され、容器本体2の両側壁外面には、肉厚の円柱形あるいは略U字形のハンドルがそれぞれ着脱自在に装着されており、この一対のハンドルが作業者に握持されることにより基板収納容器1が搬送される。
【0022】
蓋体20は、容器本体2のリム部3に着脱自在に嵌合される断面略皿形の筐体と、この筐体の表面を被覆する正面略矩形のカバーと、これら筐体とカバーとの間に介在され、容器本体2の正面に嵌合された蓋体20を施錠する左右一対の施錠機構とを備えて構成される。
【0023】
筐体は、四隅部が面取りされた正面略矩形に形成され、裏面の中央部には、基材31の前部周縁を挟持溝を介し挟持する弾性のフロントリテーナが上下方向に並設される。この筐体の周壁には、容器本体2のリム部3に圧接されるエンドレスのシールガスケットが変形可能に嵌合されるとともに、周壁の上下両側には、容器本体2の係止穴4に対応する貫通孔がそれぞれ穿孔される。
【0024】
各施錠機構は、例えば筐体の表面側部に支持されて加工装置の蓋体開閉装置のカバーを貫通した操作キーにより回転操作される回転プレートと、この回転プレートの外周に穿孔された一対の溝孔に挿入され、回転プレートの回転に伴い蓋体20の内外上下方向に直線的にスライドする一対の進退動プレートと、各進退動プレートの先端部に設けられ、回転プレートの回転に伴い蓋体20の貫通孔から出没して容器本体2の係止穴4に嵌合係止する係止爪とを備えて構成される。
【0025】
補強キャリア30の基材31は、図7や図9に示すように、基板収納容器1の容器本体2に確実に収納することができるよう所定の材料を使用して剛性を有する薄板に形成され、周縁部32を除く表面が浅く凹み形成されるとともに、この凹んだ表面から複数の突起33が間隔をおき上方に突出してその先端面を保持層34の裏面に接触させており、これら複数の突起33と保持層34の裏面との間には、空気流動用の区画空間36が形成される。
【0026】
基材31は、航空機輸送に伴う気圧変化等にも耐えることができるよう、アルミニウム合金、ステンレス、マグネシウム合金、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂、強化ガラス等を使用して半導体ウェーハ40と同じ大きさか、あるいは僅かに大きい径の円板に形成される(図6、図8参照)。
【0027】
複数の突起33は、基材31の周縁部32と略同じ高さに揃えられ、各突起33が剛性の円柱形に形成されており、半導体ウェーハ40を保持層34を介して支持する。また、基材31の厚さ方向には、区画空間36に連通する半導体ウェーハ40用の取り外し孔37が貫通して穿孔され、この複数の突起33間に位置する取り外し孔37には、図9に示すバキューム装置38が着脱自在に接続される。
【0028】
そして、このバキューム装置38が動作し、保持層34が複数の突起33のパターンに応じて凸凹に変形するとともに、この凸凹の保持層34と半導体ウェーハ40との間に空気流入用の隙間が発生することにより、保持層34に粘着保持された半導体ウェーハ40が取り外し可能となる(図11、図12参照)。
【0029】
保持層34は、例えば可撓性、柔軟性、耐熱性、弾性、粘着性等に優れるフッ素系やシリコーン系の薄いエラストマーを使用して基材31と略同径の平面円形に形成され、基材31の表面の周縁部32に接着剤を介して貼着されており、薄い半導体ウェーハ40の裏面を着脱自在に粘着保持する。この保持層34のエラストマーには、補強性フィラーや疎水性シリカ等が必要に応じて添加される。
【0030】
保持層34の各突起33の先端面と接触する接触部表面35は、砥石ローラ39等により物理的に粗く形成されて非粘着面とされ(図12参照)、JIS B0601‐2001に規定されている表面の算術平均粗さRaが1.6a以上、好ましくは1.6〜12.5aの範囲とされる。保持層34の接触部表面35の算術平均粗さRaが1.6a以上、好ましくは1.6〜12.5aの範囲なのは、この範囲の粗面化であれば、保持層34の劣化を招くことがなく、非粘着面とすることが可能で、しかも、半導体ウェーハ40の取り外しの容易化を図ることができるからである。
【0031】
補強キャリア30の全体の厚さは、0.3〜2.5mmの範囲、好ましくは0.5〜1.2mmの範囲が良い。これは補強キャリア30の厚さが係る範囲内であれば、バックグラインドされた半導体ウェーハ40の補強性を十分に保持しつつ、基板収納容器1に収納したり取り出す際、ロボットのフォークの挿入間隔を十分に確保することができるからである。また、軽量化をも図ることができるからである。
【0032】
半導体ウェーハ40は、図10に示すように、基本的には丸いシリコンウェーハからなり、鏡面である表面に回路が形成され、裏面がバックグラインドテープを介し薄くバックグラインドされており、ロボットにより保持層34に保持される。この薄い半導体ウェーハ40の周縁部には、図12に示すように、結晶方位の判別や位置合わせ用のオリフラ(orientation flat)41やノッチ42が適宜形成される。
【0033】
次に、補強キャリア30の製造方法について説明すると、先ず、用意した基材31の周縁部32を除く表面に、複数の突起33を高さ0.2mm以上に形成するとともに、基材31の所定の箇所に取り外し孔37を厚さ方向に穿孔する。複数の突起33の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば電鋳法により金属を所定の形状に析出させる方法、エッチングにより金属製の基材表面を、突起予定部分を残して侵食除去する方法、サンドブラストにより基材表面を、突起予定部分を残して除去する方法、スクリーン印刷により形成する方法、基材31にフォトレジスト材を積層し、露光、現像を通じて突起33を形成する方法等があげられる。
【0034】
次いで、基材31の表面の周縁部32に保持層34の裏面を接着して複数の突起33を覆わせ、これら複数の突起33と保持層34との間に区画空間36を形成する。保持層34の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えばカレンダー法、プレス法、コーティング法、印刷法等により層を成形し、この層を基材31の周縁部32に貼着して製造する方法等があげられる。
【0035】
次いで、基材31の取り外し孔37にバキューム装置38を接続して吸引動作させ、保持層34を複数の突起33に応じて凸凹に変形させ、その後、各突起33の先端面と接触する変形した保持層34の接触部表面35を砥石ローラ39により大きく粗らして非粘着処理すれば、補強キャリア30を製造することができる。
【0036】
上記において、バックグラインドされた半導体ウェーハ40を他の工場に輸送する場合には、先ず、補強キャリア30の保持層34に半導体ウェーハ40をロボットにより押圧して密着保持させ、この補強キャリア30を基板収納容器1の容器本体2にロボットを介して収納し、容器本体2の正面に蓋体20を嵌合し、その後、施錠機構を作動させて蓋体20を施錠すれば、バックグラインドされた半導体ウェーハ40を他の工場に輸送することができる。上記収納の際、半導体ウェーハ40は、補強キャリア30に隙間なく搭載されているので、薄くても下方に撓んで反ることがなく、基板収納容器1の容器本体2に確実に収納される。
【0037】
次に、輸送された半導体ウェーハ40を取り出してボンディングや封止の加工を施したい場合には、先ず、蓋体20の施錠機構を解錠作動させて容器本体2から蓋体20を取り外し、容器本体2から補強キャリア30をロボットを介して取り出した後、補強キャリア30の取り外し孔37にバキューム装置38を接続して吸引動作させれば、補強キャリア30の保持層34から半導体ウェーハ40をロボットにより簡単に吸着して取り外すことができる。
【0038】
上記構成によれば、割れやすく、反りやすく、脆い半導体ウェーハ40を容器本体2に直接収納するのではなく、補強キャリア30に保持させて間接的に収納するので、他の工場に安全、かつ適切に輸送することができる。特に、補強キャリア30が強度や剛性に優れ、気圧変化等の過酷な輸送条件にも十分耐えることができるので、例え工場から工場への輸送に長時間を要しても、安全に輸送することができる。
【0039】
また、ダイシングテープの粘着時間を短縮したり、省略することも可能であるから、回路のバンプにダイシングテープの粘着剤が転写してしまうおそれが実に少ない。また、ティース6の前部中肉領域8と後部中肉領域10とに補強キャリア裏面の側部周縁を高い精度を維持しつつ水平に支持させるので、補強キャリア30が上下方向に傾斜してロボットのフォークによる出し入れが困難になるのを防止することが可能になる。また、補強キャリア30やその基材31が半導体ウェーハ40と略同サイズで薄いから、バックグラインドされていない半導体ウェーハ40の収納を前提とした既存の基板収納容器1の寸法や形状等を特に変更することなく、自動的に収納したり、取り出すことが可能になる。
【0040】
さらに、複数の突起33の先端面と接触する保持層34の接触部表面35をコーティングやUV処理により非粘着面とする場合には、突起数(例えば、口径300mmの半導体ウェーハ40の場合には、突起数が約7万個にもなる)に応じてマスクの製造コストが向上し、しかも、マスクの位置決めがきわめて困難であるが、本実施形態によれば、保持層34の接触部表面35を砥石ローラ39により大きく粗らして非粘着面とすることができるので、マスクの製造コストを低減したり、マスクの位置決め作業を省略することができ、あらゆる突起33のパターンに対応することもできる。
【0041】
さらにまた、バックグラインド工程で半導体ウェーハ40に補強キャリア30を使用する場合、補強キャリア30の保持層34に高精度の平面性が要求されるが、保持層自体や接着剤の厚さばらつきにより高精度の平面性を維持することは実に困難である。この平面性を確保するためには、保持層34をきわめて薄くすれば良いが、そうすると、保持層34の耐久性が著しく低下したり、基材31の周縁部32に保持層34を接着する際の作業性や加工性が大幅に悪化するという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0042】
これに対し、本実施形態によれば、高精度の砥石ローラ39等を使用し、保持層34の接触部表面35を高精度に加工することができるので、耐久性を維持しつつ保持層34に高精度の平面性を簡単に付与することができる。
【0043】
なお、上記実施形態の基材31と保持層34とは、同径の大きさでも良いし、そうでなくても良い。また、基材31と複数の突起33とを一体化したが、何らこれに限定されるものではなく、基材31に別体の複数の突起33を配設しても良い。また、基材31の周縁部32と複数の突起33の先端面とに保持層34を接着しても良い。さらに、保持層34は、微粘着性でも良いし、そうでなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態における基板収納容器を示す正面説明図である。
【図2】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態における基板収納容器を示す断面側面図である。
【図3】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態における基板収納容器に補強キャリアを収納する状態を示す断面説明図である。
【図4】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態における基板収納容器を示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態における基板収納容器のティースを示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る補強キャリアの実施形態における使用状態を示す平面説明図である。
【図7】本発明に係る補強キャリアの実施形態を示す断面説明図である。
【図8】本発明に係る補強キャリアの実施形態を示す平面説明図である。
【図9】本発明に係る補強キャリアの実施形態におけるバキューム装置との関係を示す断面説明図である。
【図10】本発明に係る補強キャリアの実施形態における半導体ウェーハを示す平面説明図である。
【図11】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態を示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る補強キャリア及びその製造方法の実施形態における突起の先端面と接触する保持層の接触部表面を砥石ローラにより粗らして非粘着面とする状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板収納容器
2 容器本体
6 ティース
7 平板
8 前部中肉領域
9 前部厚肉領域
10 後部中肉領域
11 後部厚肉領域
12 段差
30 補強キャリア
31 基材
33 突起
34 保持層
35 接触部表面
36 区画空間
37 取り外し孔
38 バキューム装置
39 砥石ローラ
40 半導体ウェーハ(被搭載物品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、被搭載物品を着脱自在に保持する保持層を変形可能に積み重ねた補強キャリアであって、
基材から保持層の裏面に接触する複数の突起を突出させてこれら保持層と複数の突起との間に区画空間を形成し、基材に、区画空間に連なる取り外し孔を設け、複数の突起の先端部と接触する保持層の接触部における表面を粗く形成したことを特徴とする補強キャリア。
【請求項2】
保持層をエラストマーとし、被搭載物品をバックグラインドされた半導体ウェーハとした請求項1記載の補強キャリア。
【請求項3】
基材の取り外し孔にバキューム装置を接続し、このバキューム装置により保持層を変形させて保持された被搭載物品を取り外すようにした請求項1又は2記載の補強キャリア。
【請求項4】
基材に複数の突起を形成するとともに、取り外し孔を設ける工程と、基材に変形可能な保持層を重ね設けて複数の突起の先端部と接触させ、複数の突起と保持層との間に区画空間を形成する工程と、基材の取り外し孔にバキューム装置を接続して保持層を変形させ、複数の突起の先端部と接触する保持層の接触部における表面を粗く形成する工程とを含んでなることを特徴とする補強キャリアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−303228(P2006−303228A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123714(P2005−123714)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】