説明

補強ゴム製筒体の製造方法及び補強用線材の巻付装置

【課題】耐圧性や、耐座屈性等の曲げ特性に優れ、製品寿命を延ばすことが可能な補強ゴム製筒体の製造方法及びその際に用いる補強用線材の巻付装置の提供を目的とする。
【解決手段】未加硫ゴム製筒体3の外周面に補強用線材4を螺旋状に巻付けた後、加硫処理を施す補強ゴム製筒体の製造方法であって、前記未加硫ゴム製筒体3に前記補強用線材4を巻付けるに際し、前記補強用線材4を予め所定の曲率半径に曲げて巻き癖をつけた後、該補強用線材4を前記未加硫ゴム製筒体3に巻付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強用線材によって補強された補強ゴム製筒体を製造する方法及びその際に未加硫ゴム製筒体に補強用線材を巻付けるための巻付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧ゴムホースなどの耐圧性を備えたゴム製筒体として、筒体の長さ方向全体にわたってコイル状の補強用線材を埋設した補強ゴム製筒体が知られている。具体的な補強ゴム製筒体の構成としては、例えば、特許文献1に示すように、内面ゴム層と、外面ゴム層との間に、未加硫ゴムとコイル状の補強用線材とからなる線材補強層が形成された構成とされている。
【0003】
線材補強層と内面ゴム層との間、及び、線材補強層と外面ゴム層との間には、それぞれ繊維コードで補強された繊維補強層が介在されており、線材補強層及び繊維補強層によってゴム製筒体として良好な耐圧性及び耐摩耗性を発揮するようになっている。
【0004】
上記構成の補強ゴム製筒体を製造するには、先ず、マンドレルに未加硫状態の内面ゴム層、繊維補強層及び線材補強層を構成するゴム単体の層(以下、ゴム単体層)をこの順に形成し、次いで、補強用線材を屈曲させつつゴム単体層の表面に強制的に巻付ける。このとき、補強用線材は、ゴム単体層に食い込んだ状態となり、補強用線材とゴム単体層とによって線材補強層が形成される。
【0005】
補強用線材を巻付けることにより形成された線材補強層の外面に繊維補強層及び外面ゴム層をこの順に形成した後、加硫処理を行なうことにより、補強用線材によって補強された補強ゴム製筒体を得ることができる。
【特許文献1】特開2006−292095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補強用線材は、それ自身が有する剛性による反力に抗しながら、ゴム単体層に強制的に巻付けられるため、補強用線材の巻付速度の変化や、ゴム単体層の径の変化によって、補強用線材のゴム単体層への食い込み量にバラツキが生じ易く、これによりゴム製筒体の耐圧力の低下を招いたり、座屈が生じ易くなって屈曲性が低下する等の不都合を招く原因となっていた。
【0007】
また、補強用線材をゴム単体層に強制的に巻付ける場合、最終的に得られるゴム製筒体内部の補強用線材に残留応力が生じるため、ゴム製筒体の外面が一部でも損傷すると、その部分から補強用線材が飛び出して使用不能になりやすく、製品としてより寿命の長いものが望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、耐圧性や、耐座屈性等の曲げ特性に優れ、製品寿命を延ばすことが可能な補強ゴム製筒体の製造方法及びその際に用いる補強用線材の巻付装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、未加硫ゴム製筒体の外周面に補強用線材を螺旋状に巻付けた後、加硫処理を施す補強ゴム製筒体の製造方法であって、未加硫ゴム製筒体に補強用線材を巻付けるに際し、補強用線材を予め所定の曲率半径に曲げて巻き癖をつけた後、該補強用線材を未加硫ゴム製筒体に巻付けることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、あらかじめ所定の曲率半径に曲げて巻き癖をつけた補強用線材を未加硫ゴム製筒体に巻付けることにより、補強用線材の残留応力(反力)を抑制することが可能になるとともに、未加硫ゴム製筒体への補強用線材の食い込み量のバラツキを抑制することが可能となる。したがって、加硫処理後のゴム製筒体の外面が一部損傷した場合でも、補強用線材が外に飛び出して使用不能になるおそれがなく、製品としての寿命を延ばすことができる。
【0011】
また、巻き癖をつけた補強用線材の曲率半径は、未加硫ゴム製筒体の半径よりも小さくなるように設定することにより、未加硫ゴム製筒体において補強用線材を適切な深さに揃えて埋設することができる。これによって、補強ゴム製筒体の耐圧性や、耐座屈性等の曲げ特性を良好に維持することが可能となる。
【0012】
補強用線材を未加硫ゴム製筒体に巻付ける際、巻き癖のついた補強用線材をいったん伸ばして(曲率半径を大きくして)未加硫ゴム製筒体まで導くことが必要とされる。このとき、補強用線材の巻き癖が緩みやすくなるため、線材を曲げて巻き癖をつける際の曲率半径は、予め大きくなることを見越した上で未加硫ゴム製筒体の半径よりも小さくなるようにするのが好ましい。
【0013】
未加硫ゴム製筒体が、筒軸方向に半径が異なるように設定されている場合には、曲率半径は、未加硫ゴム製筒体の半径の変化に応じて調節するのが好ましい。具体的には、未加硫ゴム製筒体の半径が大きくなるにしたがって、曲率半径も大きくなるように調整する。これにより、未加硫ゴム製筒体の半径が変化しても、補強用線材の残留応力を効果的に抑制することができ、未加硫ゴム製筒体への補強用線材の食い込み量のバラツキを抑制することができる。
【0014】
また、未加硫ゴム製筒体の半径が変化する場所では、補強用線材の残留応力が大きい場合には、補強用線材を強制的に巻付けることによって、巻き位置のズレが生じやすいが、本発明によれば、補強用線材の残留応力を抑制することができるため、巻き位置のズレを防止することが可能となる。
【0015】
上記補強ゴム製筒体を製造するための補強用線材の巻付装置としては、外周面に未加硫ゴム製筒体が形成されたマンドレルと、該マンドレルに補強用線材を供給する線材供給手段と、マンドレルを中心軸周りに回転させながら中心軸方向に移動させる移動手段と、線材供給手段とマンドレルとの間に設置され、補強用線材を所定の曲率半径に曲げる線材曲げ手段とを備えたものを用いることができる。
【0016】
線材曲げ手段は、円周に沿って配置された複数のガイドローラから構成し、ガイドローラのうちの少なくとも一部の位置を調整することにより線材の曲率半径を変化させるようにしたものを用いることができ、これにより一つの線材曲げ手段によって、補強用線材の曲率半径を調整することができる。補強用線材は、線材曲げ手段から送り出されると、連続したループ形状、すなわち、コイル形状となる。
【0017】
ここで、円周に沿って配置するとは、必ずしも円周の全周にわたってガイドローラが配置されている必要はなく、ガイドローラが円周の一部に沿って配置され、それにより線材を所定の曲率半径に曲げることができればよい。
【0018】
線材曲げ手段は、補強用線材の移動方向下流側に位置する複数のガイドローラを位置調整可能とすることにより、その他のガイドローラの位置を変更することなく、曲率半径を調整することが可能となる。
【0019】
具体的には、すべてのガイドローラを同じ円周上に配置しておき、曲率半径を小さくする場合には、線材の移動方向下流側に位置する複数のガイドローラを他のガイドローラよりも円周半径方向やや内側寄りに配置する。このとき、位置調整するガイドローラについて、下流側に位置するガイドローラほど、円周中心からの距離が短くなるように配置すれば、スムーズかつ確実に曲率半径を小さくすることができる。
【0020】
補強用線材は、線材曲げ手段のガイドローラに内接するように線材供給手段から送り出すことによって、整った螺旋形状に成形することができる。このとき重要となるのは、補強用線材は線材供給手段から押し出しながら線材曲げ手段において成形することである。
【0021】
これにより、補強用線材を一定の曲率半径で形の整ったコイル状に成形することが可能となり、これによって補強用線材が未加硫ゴム製筒体に食い込み過ぎるのを防止することが可能となる。従って、線材供給手段から送り出される補強用線材の送り出し速度と、マンドレルに巻付ける補強用線材の巻付け速度とは、同じ速度になるように調節するのが望ましい。
【0022】
補強用線材は、剛性を有するものであれば特に制限なく使用することができ、具体的には硬鋼線を挙げることができる。また、本発明における未加硫ゴム製筒体は、表面に未加硫ゴム単体からなる層(未加硫ゴム単体層)を備えたものであって、補強用線材を巻付けたときに該線材が未加硫ゴム単体層に食い込んで加硫処理後に線材補強層を形成するものであればよい。
【0023】
したがって、未加硫ゴム製筒体全体が未加硫ゴム単体層で構成されていてもよいが、耐圧性や耐摩耗性等を考慮すれば未加硫ゴム単体層中に繊維コードで補強された繊維補強層が埋設された構成のものを用いるのが好ましい。
【0024】
補強用線材を巻付けた後の未加硫ゴム製筒体は、そのまま加硫処理を行なうことによって、補強用線材が埋設されたゴム製筒体を得ることができる。また、補強用線材を未加硫ゴム製筒体に巻きつけた後、未加硫ゴム製筒体の表面に未加硫ゴム層を形成することもできる。この場合、未加硫ゴム層は未加硫ゴム単体から構成してもよいが、前述と同様に、耐摩耗性等を考慮すれば、内層側に繊維コードで補強された繊維補強層を形成し、外層側に未加硫ゴム単体層を形成した積層構造とするのが好ましい。
【0025】
以上のようにして筒体の長さ方向全体にわたってコイル状の補強用線材が埋設された未加硫ゴム製筒体は、加硫処理を施すことにより、補強ゴム製筒体を得ることができる。補強ゴム製筒体の具体例としては、コンクリートポンプ車のブームに取付けるドッキングホース等の高圧ホースを挙げることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、補強用線材を予め所定の曲率半径に曲げて巻き癖をつけた後、補強用線材を未加硫ゴム製筒体に巻付けるようにしたため、補強用線材の残留応力(反力)を抑制することが可能になるとともに、未加硫ゴム製筒体への補強用線材の食い込み量のバラツキを抑制することが可能となり、耐圧性や、耐座屈性等の曲げ特性に優れ、製品寿命を延ばすことが可能な補強ゴム製筒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を基に本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る補強用線材の巻付装置を示す概略図であり、図2は巻付装置の一部を示す斜視図である。補強用線材の巻付装置1は、マンドレル2の外周面に形成された未加硫ゴム製筒体3と、未加硫ゴム製筒体3に補強用線材4を供給する線材供給手段5と、マンドレル2を中心軸6周りに回転させながら中心軸方向Aに移動させる移動手段7と、線材供給手段5と未加硫ゴム製筒体3との間に設置され、線材4を所定の曲率半径に曲げて巻き癖をつける線材曲げ手段8とを備えている。
【0028】
線材供給手段5は、補強用線材4が巻き付けられたボビン9と、ボビン9から補強用線材4を引き出して線材曲げ手段8に送り出す送り出し装置10とを備えている。なお、本実施形態においては、補強用線材4として、硬鋼線を使用している。
【0029】
送り出し装置10は、補強用線材4を挟み込む複数対の送り出しローラ11,11から構成され、本実施形態では、3対の送り出しローラ11,11が線材の移動方向Bに対して直列的に配置され、各送り出しローラ11,11が図示しないモータによって回転駆動することにより、補強用線材4を移動方向Bに送り出すようになっている。
【0030】
線材曲げ手段8は、円周に沿って配置された複数のガイドローラから構成されており、線材移動方向Bの上流側から順にガイドローラ12、13、14、15、16及び17が配置されている。各ガイドローラ12〜17は、回転軸20が平行になるように配され、外周面に環状溝部18が形成されており、この環状溝部18に補強用線材4が保持されるようになっている。
【0031】
補強用線材4は、ガイドローラ12〜17に押し付けるように内接させてループ状に曲げて巻き癖をつける。図1においては、補強用線材4の曲率半径がRになるように設定されている。なお、本実施形態では、補強用線材4が緩やかな曲線を描いてスムーズにガイドローラ12〜17に導入されるようにするために、ガイドローラ12の上流側に導入ローラ19が配置されている。
【0032】
ガイドローラ12〜17は、同一平面上に配置するとループ状に曲げられた補強用線材4が接触するため、本実施形態においては、図3に示すように、ガイドローラ12〜17は、ガイドローラ回転軸20方向に少しずつずらして配置されている。
【0033】
ガイドローラ12〜17のうち、線材移動方向Bの下流側に配置されているガイドローラ16及び17の2つは、円周Cの径方向に位置調整可能とされている。具体的に、ガイドローラ16及び17の回転軸20は、長孔21内をスライド可能に設置され、回転軸20は位置調整手段22によって位置調整可能とされている。なお、本実施形態では、位置調整手段22として調整シリンダが用いられている。
【0034】
図4は、位置調整手段22によってガイドローラ16及び17を他のガイドローラ12〜15よりも円周Cの半径方向内側寄りになるように配置した状態を示している。これにより、線材曲げ手段8によって曲げられた補強用線材4の曲率半径は、図1に示す曲率半径Rよりも小さいR2となる。すなわち、ガイドローラ16及び17の位置を調節することで補強用線材4の曲率半径を調節することが可能となる。
【0035】
上記ガイドローラ12〜17の配置について図5及び図6を基に詳述する。図5は、図1におけるガイドローラ12〜17の拡大図であり、図6は、図4におけるガイドローラ12〜17の拡大図である。
【0036】
先ず、図1におけるガイドローラ12〜17は、図5に示すように、回転軸20方向から見て、円周Cに沿って配置されている。すなわち、ガイドローラ12〜17は、円周Cの中心から等距離Rになるように配されている。
【0037】
次に、図6に示すように、図4では位置調整手段22によってガイドローラ16及び17を他のガイドローラ12〜15よりも円周Cの中心に近くなるように位置調整をしている。すなわち、円周Cの中心からガイドローラ12〜15までの距離Rよりも円周Cの中心からガイドローラ16及び17までの距離が短くなるようにガイドローラ16及び17の位置を調整している。これにより、線材移動方向Bの下流側において、線材4の曲率半径を小さくすることが可能となる。
【0038】
さらに、本実施形態では、円周Cの中心からガイドローラ16までの距離R1よりも円周Cの中心からガイドローラ17までの距離R2の方が短くなるように、ガイドローラの位置を調整している。すなわち、線材移動方向Bの上流側から下流側になるほど、円周Cの中心からガイドローラまでの距離が短くなるようにガイドローラ12〜17を配置することで、ガイドローラを通過する補強用線材の曲率半径を徐々に小さくすることができ、スムーズかつ確実に線材4の曲率半径を小さくすることが可能となる。
【0039】
線材曲げ手段8によって巻き癖がつけられた補強用線材4は、マンドレルに形成された未加硫ゴム製筒体3に巻きつけられる。このとき、小径のループ状に巻き癖がついた補強用線材4は、緩やかな(大きな曲率半径の)曲線を描いて未加硫ゴム製筒体3まで導かれる。ところが、未加硫ゴム製筒体3まで導かれた補強用線材4は、もとの小径のループ状に戻ろうとする力が強いため、補強用線材4を直接未加硫ゴム製筒体3に接触させると、もとに戻ろうとする力によって未加硫ゴムに深く食い込むことになる。また、巻付位置が不安定になるおそれも生じる。
【0040】
そこで、本実施形態では、線材曲げ手段8と未加硫ゴム製筒体3との間に、大きく伸ばされた補強用線材4を支持し、補強用線材4を未加硫ゴム製筒体3に対して適度に押圧するように導く案内ローラ23を設け、この案内ローラ23を介して補強用線材4を未加硫ゴム製筒体3に巻きつけるようにしている。
【0041】
上記巻付装置1を用いて補強ゴム製筒体を製造する方法について説明する。なお、本実施形態では、補強ゴム製筒体がコンクリートポンプ車のブームに取付けるドッキングホースである場合について説明する。
【0042】
先ず、ドッキングホースの構成について説明する。ドッキングホースは、図7に示すように、ホース本体29が、内面ゴム層24と、外面ゴム層25との間に、コイル状の補強用線材によって補強された線材補強層26が形成された構成とされている。線材補強層26と内面ゴム層24との間、及び、線材補強層26と外面ゴム層25との間には、それぞれ繊維コードで補強された繊維補強層27が介在されている。そして、ホース本体29の両端には、口金具31が嵌合されている。
【0043】
上記構成のドッキングホースを製造するには、先ず、マンドレル2に口金具を外装した状態で、マンドレル2の外周面に未加硫状態の内面ゴム層24を形成する。次いで、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、カーボン等の有機繊維やガラス、スチール等の無機、金属繊維からなるコードに未加硫ゴムをトッピングしたトッピングコードを、内面ゴム層24の周面に、ホースの軸線Dに対して所定の成形角度で交差するように、交互に偶数プライ巻きつけることによって繊維補強層27を形成する。
【0044】
さらに、繊維補強層27の外周面に線材補強層26を構成するゴム単体層28をこの順に形成することにより、図8に示すように、補強用線材4を巻き付けるための未加硫ゴム製筒体3が形成される。なお、未加硫ゴム製筒体3は、筒体両端部が口金具31の基部31aを被覆するようにしておく。
【0045】
上記構成の未加硫ゴム製筒体3に補強用線材4を巻付けるには、巻付装置1によって巻き癖がつけられた補強用線材4を、中心軸方向Aに対してほぼ直交する方向にマンドレル2まで導く。そして、マンドレル2を移動手段7によって中心軸6まわりに回転させつつ中心軸方向Aに移動させ、そこへ補強用線材4を巻付ける。
【0046】
補強用線材4は、未加硫ゴム製筒体3の半径よりも小さい曲率半径で巻き癖がつけられているため、案内ローラ23によって未加硫ゴム製筒体3に対して軽く押し当てるように導くことで、ゴム単体層27に適度に食い込ませることができる。このように補強用線材4を螺旋状にゴム単体層27に食い込ませることにより、中間層26を形成することができる。
【0047】
このとき、曲率半径と未加硫ゴム製筒体3の半径との関係が重要となる。すなわち、補強用線材4は、線材曲げ手段8から未加硫ゴム製筒体3までの間を曲率半径が大きい曲線として導かれるため、線材曲げ手段で付けられた巻き癖が緩むことになる。従って、巻き癖が緩むことを見越して線材曲げ手段8の曲率半径は未加硫ゴム製筒体3の半径よりも小さくなるように設定することが必要とされる。未加硫ゴム製筒体3の半径に対して曲率半径をどの程度小さくするかは、線材曲げ手段8を運転して適宜調節すればよいが、おおよそ10%〜20%程度径を小さく設定すればよい。
【0048】
このとき、補強用線材4は、線材供給手段5から押し出しながら線材曲げ手段8において成形する。これにより、補強用線材4が未加硫ゴム製筒体3に食い込み過ぎるのを防止することができる。したがって、本実施形態では、巻付装置1は、線材供給手段5から送り出される補強用線材4の送り出し速度と、未加硫ゴム製筒体3に巻付ける線材4の巻付け速度とが、同調するように両者の速度を制御するようになっている。
【0049】
口金具31の基部31aは、中央部がバレル状に拡径した形状となっており、未加硫ゴム製筒体3は口金具31の基部31aを被覆する際に、その半径が筒軸方向に変化することになる。従来のように補強用線材4を強制的に巻付ける方法では、このように未加硫ゴム製筒体3の半径が変化する場所では、図8に示すように、ゴム単体層28に対して補強用線材4の食い込み量が多すぎたり、または食い込み量が不足することがあった。
【0050】
さらに、補強用線材の巻きピッチに乱れが生じることもあった。そして、これらの問題によって、最終的に得られたゴム製筒体の耐圧性や屈曲性が低下するという問題が生じていた。
【0051】
これに対して、本発明に係る補強ゴム製筒体の製造方法によれば、未加硫ゴム製筒体3に補強用線材4を螺旋状に巻付けている途中で、線材曲げ手段8の位置調整手段22によって曲率半径を変更することが可能であるため、未加硫ゴム製筒体3の半径が変化する箇所においても、補強用線材4を未加硫ゴム製筒体3に適正に巻付けることができる。
【0052】
未加硫ゴム製筒体3のゴム単体層28に補強用線材4を巻付けることにより、中間層26を形成した後は、中間層26の外周面に繊維補強層27を形成し、さらにその外周面に外面ゴム層25を形成する。その後、加硫処理を施すことにより、耐圧性、屈曲性及び耐摩耗性に優れたドッキングホースを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る補強用線材の巻付装置を示す概略図
【図2】図1の一部を示す斜視図
【図3】図1のガイドローラの配列を示す概略図
【図4】図1においてガイドローラの位置調整をした状態を示す概略図
【図5】図1の部分拡大図
【図6】図4の部分拡大図
【図7】本発明に係る巻付装置を用いて製造したドッキングホースの構造を示す断面図
【図8】未加硫ゴム製筒体に巻付けた補強用線材の食い込み程度を示す断面図
【符号の説明】
【0054】
1 巻付装置
2 マンドレル
3 未加硫ゴム製筒体
4 補強用線材
5 線材供給手段
6 中心軸
7 移動手段
8 線材曲げ手段
9 ボビン
10 送り出し装置
11 送り出しローラ
12〜17 ガイドローラ
18 環状溝部
19 導入ローラ
20 回転軸
21 長孔
22 位置調整手段
23 案内ローラ
24 内面ゴム層
25 外面ゴム層
26 線材補強層
27 繊維補強層
28 ゴム単体層
29 ホース本体
31 口金具
31a 口金具基部
A 中心軸方向
B 線材移動方向
C 円周
D ドッキングホース軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴム製筒体の外周面に補強用線材を螺旋状に巻付けた後、加硫処理を施す補強ゴム製筒体の製造方法であって、前記未加硫ゴム製筒体に前記補強用線材を巻付けるに際し、前記補強用線材を予め所定の曲率半径に曲げて巻き癖をつけた後、該補強用線材を前記未加硫ゴム製筒体に巻付けることを特徴とする補強ゴム製筒体の製造方法。
【請求項2】
前記曲率半径が、前記未加硫ゴム製筒体の半径よりも小さくなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の補強ゴム製筒体の製造方法。
【請求項3】
前記未加硫ゴム製筒体が、筒軸方向に半径が異なるように設定され、未加硫ゴム製筒体の半径の変化に応じて前記曲率半径を調節することを特徴とする請求1又は2記載の補強ゴム製筒体の製造方法。
【請求項4】
外周面に未加硫ゴム製筒体が形成されたマンドレルと、該マンドレルに補強用線材を供給する線材供給手段と、前記マンドレルを中心軸周りに回転させながら中心軸方向に移動させる移動手段と、前記線材供給手段とマンドレルとの間に設置され、前記補強用線材を所定の曲率半径に曲げる線材曲げ手段とを備えたことを特徴とする補強用線材の巻付装置。
【請求項5】
前記線材曲げ手段は、円周に沿って配置された複数のガイドローラから構成され、前記ガイドローラのうちの少なくとも一部の位置を調整することにより補強用線材の曲率半径を変化させることを特徴とする請求項4記載の補強用線材の巻付装置。
【請求項6】
前記線材曲げ手段は、補強用線材の移動方向下流側に位置する複数のガイドローラが位置調整可能とされたことを特徴とする請求項5記載の補強用線材の巻付装置。
【請求項7】
前記線材供給手段から補強用線材を送り出しながら前記ガイドローラに内接させることによって、補強用線材に巻き癖をつけることを特徴とする請求項5又は6記載の補強用線材の巻付装置。
【請求項8】
前記線材供給手段から送り出される補強用線材の送り出し速度と、前記マンドレルに巻付ける補強用線材の巻付け速度とが同じ速度になるように調節することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の補強用線材の巻付装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−194862(P2008−194862A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29973(P2007−29973)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】