説明

補強フラップを折り曲げ重ねた緩衝面を有する包装用箱

【課題】包装用箱に収納されたアンプル等の外部衝撃による破損及び散逸を効果的に防止し、包装資材コストの低減化、ケース詰め作業の容易化を図る。
【解決手段】包装用箱Sは、外箱部10の筒状部10aとその内周に沿って設けられた筒状の内箱部20によって、包装用箱Sの天面と底面に緩衝二重構造が形成されている。この包装用箱Sは、1枚の箱形成基板1を折り曲げ組み立てて形成されている。この緩衝二重構造は、天面板13の内周側に設けられた天面側緩衝板21に補強フラップ21a,21bが折り曲げ重ねて接合され、底面板14の内周側に設けられた底面側緩衝板22に補強フラップ22a,22bが折り曲げ重ねて接合されている。このようにすると、物品を当接支持する緩衝面の強度が基板を2枚重ねることにより向上されるため緩衝面が撓みにくくなる。従って、緩衝空間を狭くしても十分な緩衝効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割れ易いアンプル等を収納するための包装用箱に係り、特に、外部衝撃によるアンプル等の破損及び散逸を防止することが可能な緩衝構造を備えた包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装用の紙箱等にアンプル等の割れ易い内容物を収納する場合には、内容物を外部衝撃から守るため、紙箱と内容物との隙間に発泡部材やエアーキャップなどの緩衝材が充填されていた。また、内容物の形に合わせて成形された緩衝材からなる成形品に内容物を収めてから、紙箱の中に収納することが行われていた。
【0003】
このような包装方法では、紙箱とは別体で緩衝材を準備する必要があり、また、包装工程が煩雑化されるため、包装コストがかかるという問題点があった。
そこで、箱の内周面に沿って緩衝二重構造を設けた紙製の包装箱が知られている。単純な緩衝二重構造では、緩衝面を紙製等の基板1枚によって構成し、その両端が箱の側面で支持されていた。しかし、基板1枚からなる緩衝面は撓みやすいので、このような構成では図10、図11に示すように緩衝面121または緩衝面122に撓みが生じることがあった。そして、緩衝空間が大きくとられていない場合には、箱外部からの衝撃によって物品102が破損するという問題点があった。
また、基板1枚からなる緩衝面は、物品を挿入する前の空箱の状態でも緩衝面に撓みが生じる可能性があり、撓んだ緩衝面に物品が引っ掛かって破損する可能性があった。従って、箱詰め工程において歩留まりが低下するという問題点があった。また、スムーズに箱詰め作業を行うことができず、作業効率が低下するという問題点があった。
そこで、緩衝面の中央部に支持部を設けて撓みにくくした包装箱が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−152131号公報(第5−6頁、図1)
【0005】
特許文献1の緩衝材付き包装箱Cは、内周面に沿って板状の緩衝材13が設けられたものである。特許文献1では、緩衝材13は両端部が支持されており、包装箱Cの側面板3または側面板4との間に所定の緩衝空間を有している。また、緩衝材13には、中間部の撓みを防止するために中間支持部40が設けられている。この中間支持部40は、緩衝材13の中間部に切り込みを形成し、この切り込み部をL字状に折り曲げて切り起こし片とし、その先端を側面板3または4に連結固定することにより、緩衝材13の中間部を支持するように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1の緩衝材13は、中間支持部40により中間部が支持されているので、中間部に撓みが生じることがない。しかしながら、特許文献1の構成では、緩衝材13の一部を切り欠いて中間支持部40を形成しているので、緩衝材13の一部分に開口や切り欠きが形成されている。従って、この緩衝材13は、開口あるいは切り欠きが形成された部位では、物品を支持することができないという問題点があった。
また、緩衝材13に開口や切り欠きが形成されていると、包装箱に物品を出し入れする際に、物品が開口や切り欠きに引っ掛かる可能性がある。従って、箱詰め時や出し入れ時に物品が破損する可能性があった。例えば、物品102を載せたロンドレーション103の底面には多少の凸凹やたわみが発生する。従って、図12に示すように緩衝面122を切り欠いて支持部122aを形成した場合には、ロンドレーション103の底面や端部が、この切り欠きに引っ掛かかる可能性がある。従って、物品の箱詰め作業や出し入れ作業に手間を要し、生産効率が低下するという問題点があった。
さらにまた、緩衝面として強度が高い基板を用いることにより緩衝面の撓みを防止しようとすると、箱全体を1枚の基板を組み立てて製造する場合には、緩衝面のみならず不必要な他の部位まで強度が高い基板が用いられてしまう。従って、資材コストの削減を図ることができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、緩衝面の撓みが効果的に防止され、十分な緩衝性が得られる緩衝二重構造を備えた包装用箱を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、出し入れ時に物品が引っ掛かりにくく、物品の箱詰め作業や出し入れ作業が容易な包装用箱を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、1枚の箱形成基板から製造可能であり、資材コストの削減と製造工程の簡易化が可能な包装用箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の包装用箱によれば、略平行に配設された底面板および天面板,該底面板と該天面板をそれぞれ接続する第1側面板および第2側面板,を有する筒状部と、該筒状部の一端側の開口を塞ぐ正面側蓋板と、前記筒状部の他端側の開口を塞ぐ背面側蓋板と、を有する外箱部と、前記筒状部の内周に沿って設けられた筒状の内箱部と、を備え、前記外箱部と前記内箱部が1枚の箱形成基板を折り曲げ組み立てて形成された包装用箱であって、前記内箱部は、前記天面板との間に所定の緩衝空間を有する位置に設けられた天面側緩衝板,前記底面板との間に所定の緩衝空間を有する位置に設けられた底面側緩衝板,前記天面側緩衝板と前記底面側緩衝板をそれぞれ接続する第1支持板および第2支持板,を有し、前記第1支持板は前記第1側面板に接合され、かつ、前記第2支持板は前記第2側面板に接合されて前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板が所定の位置に支持されるように構成され、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の各々には、前記箱形成基板の一部を形成する補強フラップが重ねられ面接合されたこと、により解決される。
【0009】
このように、本発明の包装用箱は、外箱部の筒状部とその内周に沿って設けられた筒状の内箱部によって形成された二重構造部を有している。また、外箱部は、筒状部の両端の開口をそれぞれ閉鎖する正面側蓋板と背面側蓋板とを有しており、このような外箱部と内箱部からなる包装用箱が1枚の箱形成基板を折り曲げ組み立てて形成されている。
そして、本発明では、筒状の二重構造部の天面と底面において、外箱部と内箱部との間に所定の緩衝空間が設けられている。すなわち、内箱部は、天面板および底面板の内周側に設けられた面が、それぞれ天面側緩衝板および底面側緩衝板となされ、これにより、包装用箱の天面と底面が緩衝二重構造とされている。そして、天面側緩衝板と底面側緩衝板とを接続する支持板は、外箱部の側面板に接合されている。
このような構成により、本発明では、天面または底面の内周側に設けられた緩衝板(天面側緩衝板または底面側緩衝板)が、天面または底面との間にそれぞれ所定の緩衝空間を有する位置に支持されており、内部の物品を支持する緩衝面として機能する。従って、外部からの衝撃に対して緩衝効果が得られ、物品の破損を効果的に防止することができる。
【0010】
また、本発明では、天面側緩衝板および底面側緩衝板にそれぞれ補強フラップが重ねられ面接合されている。従って、緩衝空間の内部側にあって物品に当接される面が、それぞれ基板を少なくとも2枚重ねた状態となり、多層状をなすように組み立てられている。
このように、緩衝空間の内部側にあって物品に当接される緩衝面を、緩衝板と補強フラップとを重ねて多層状とすることができれば、基板1枚分の厚みとした場合と比較して強度が高くなり、衝撃によって撓みにくくなっている。
衝撃時に緩衝面に大きな撓みが生じる場合には、緩衝面と外箱部との間の緩衝空間が撓み寸法以上に確保されていないと十分な緩衝効果を得ることができない。すなわち、緩衝空間を大きくとらないと十分な緩衝効果を得ることができず、包装用箱の外形寸法が大きくなってしまう。これに対し、本発明では、緩衝二重構造において、物品に当接される緩衝面が多層状とされ強度が高いため撓みにくい。従って、緩衝空間を狭くしても十分な緩衝効果を得ることができる。従って、包装用箱の小型化を図り、かつ、物品の破損を効果的に防止することができる。
【0011】
そして、本発明において、この補強フラップは、上述した箱形成基板の一部として構成されている。つまり、本発明では、1枚の箱形成基板を折り曲げ組み立てることにより、物品に当接される面が多層状で撓みにくく、緩衝空間を狭くしても十分な緩衝効果が得られる緩衝二重構造を天面と底面に備えた包装用箱を形成することができる。
また、補強フラップで緩衝面を二枚貼りにすることによって緩衝面の強度向上を実現しているため、箱形成基板それ自体として強度の高いものを使用する必要がない。従って、強度の高い箱形成基板を使用して不必要な部分まで補強してしまった場合と比較して、箱全体の坪量(単位面積あたりの重さ)を減らすことができるので、資材コストが増加しない。
【0012】
また、本発明では、前記箱形成基板は、前記外箱部を形成する外箱形成部と、該外箱形成部の一端に折れ線を介して連設された内箱形成部と、を備え、前記外箱形成部は、前記天面板,前記第1側面板,前記底面板,前記第2側面板,の順に折れ線を介して連設されると共に、前記天面板,前記第1側面板,前記底面板,前記第2側面板,の端部のうち、前記筒状部の一端側の開口の縁を形成する端部に前記正面側蓋板が折れ線を介して接続され、かつ、前記筒状部の他端側の開口の縁を形成する端部に前記背面側蓋板が折れ線を介して接続され、前記内箱形成部は、前記天面側緩衝板,前記第1支持板,前記底面側緩衝板,前記第2支持板,の順に折れ線を介して連設され、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の各々には、前記第1支持板または前記第2支持板に接続されていない端縁から前記補強フラップが折れ線を介して延出された構成とすることができる。
【0013】
このように、本発明では、天面板,第1側面板,底面板,第2側面板,の順に折れ線を介して連設し、その一端から天面側緩衝板,第1支持板,底面側緩衝板,第2支持板,の順に折れ線を介して連設しているので、折れ線を同一方向に折り曲げることにより筒状の外箱部と内箱部を容易に形成することができる。
また、補強フラップは、天面側緩衝板および底面側緩衝板の各々の端縁のうち、第1支持板または第2支持板に接続されていない端縁から折れ線を介して延出されている。従って、補強フラップを折り曲げて面接合するという容易な構成により、物品に当接される緩衝面を、基板を少なくとも2枚重ねた多層状にすることができる。
このように、1枚の箱形成基板の折り曲げにより、撓みにくい緩衝二重構造を容易に形成することができる。従って、外部からの衝撃に対して十分な緩衝効果が得られ、かつ、物品の破損を効果的に防止することが可能な包装用箱を、低コストで、かつ、簡易な製造工程により提供することができる。
【0014】
また、より具体的には、前記補強フラップは、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の少なくともいずれかの互いに対向する端縁からそれぞれ反対方向に延出されて先端同士が互いに対向するように折り曲げられ、かつ、対向する先端間の隙間が略同一となるように寸法設定すると好適である。
このように、補強フラップを対向する辺から延出し、その先端同士が互いに対向するように折り曲げられるようにし、さらに、対向する先端同士の隙間が略同一となるように寸法設定されていることにより、複数のフラップを、天面側緩衝板または底面側緩衝板に、互いに重ならないよう折り曲げ重ねて撓みにくい緩衝二重構造を形成することができる。
【0015】
また、より具体的には、前記補強フラップは前記内箱部の内周側に折り曲げられ、該補強フラップの先端は、前記内箱部が筒状に組み立てられた状態において、前記第1支持板または前記第2支持板の面方向に対して所定角度傾くように斜めに形成することができる。
このように補強フラップを内箱部の内周側に折り曲げると、補強フラップが箱内部の物品に当接される当接面となる。従って、補強フラップの先端と天面側緩衝板または底面側緩衝板との段差部には、物品を内箱部に沿って箱内に出し入れしたときに物品が引っ掛かる可能性がある。しかし、物品の出し入れ方向に対してこの段差部が斜めに形成されていれば、出し入れ方向に対して垂直に形成されている場合と比較して物品が段差部に引っ掛かり難くなり、箱詰め作業や出し入れ作業が容易となる。
すなわち、物品は、箱内部空間の側面となる第1支持板や第2支持板に沿って出し入れされるので、補強フラップの先端が第1支持板や第2支持板の面方向に対して斜めに形成されていれば、物品の出し入れ方向に対してこの段差部が斜めに形成されることとなり、物品が段差部に引っ掛かり難くなるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明では、前記補強フラップは、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の略全面を覆うように寸法設定されている。
このようにすると、補強フラップに覆われた面が面一となり段差を有しないので、物品を出し入れするときに段差等に引っ掛かることがない。また、天面側緩衝板および底面側緩衝板が全面多層状となるので、撓みにくい緩衝二重構造を形成することができる。
【0017】
また、本発明では、前記天面板および前記底面板の少なくともいずれかには破断可能な切り込みが形成され、該切り込みの破断により、前記天面板または前記底面板に所定形状の開封口を形成可能に構成され、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板には、前記開封口と前記緩衝空間を介して対向する位置に前記開封口の形状に対応する形状の切り欠き部が設けられると共に、前記補強フラップは、折り曲げられた状態において前記切り欠き部を覆わないように形成することができる。
このように、二重構造部に開封口を設ける場合には、内箱部の緩衝板(天面側緩衝板または底面側緩衝板)にも予め開封口に対応する形状の切り欠き部を設け、さらに、この緩衝板に折り曲げ重ねられる補強フラップも、予め切り欠き部を覆わないように形成しておくことにより、外箱の切込みの破断作業及び開封作業を容易に行うことができ、好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の包装用箱によれば、以下のような効果を生ずる。
(イ)包装用箱の天面と底面に、外箱と内箱との間に所定の緩衝空間を有する緩衝二重構造を設け、天面板と底面板の内周側にそれぞれ設けられた天面側緩衝板と底面側緩衝板には、それぞれ補強フラップが重ねられ面接合されている。これにより、物品に当接される緩衝面は、基板を少なくとも2枚重ねた多層状となり強度が向上されるので、衝撃や荷重による撓みが生じにくい。よって、緩衝空間を狭くしても十分な緩衝効果を得ることができ、包装用箱の小型化を図りつつ物品の破損を効果的に防止することができる。また、強度の高い箱形成基板を使用して撓みを防止する場合と比較して資材コストが増加しない。
(ロ)補強フラップを内箱部の内周側に折り曲げると共に、補強フラップの先端が、組み立てたときに箱内部空間の側面となる第1支持板や第2支持板の面方向に対して斜めとなるように形成する。これにより、補強フラップの先端に形成される段差部が物品の出し入れ方向に対して斜めとなる。従って、段差部が出し入れ方向に対して垂直に形成されている状態よりも物品が出し入れ時に引っ掛かりにくく、包装作業や物品の出し入れ作業が容易となる。よって、歩留まり及び作業効率が上昇し、包装コストを低減化させることができる。
(ハ)1枚の箱形成基板を折り曲げ組み立てることにより、天面または底面に沿って緩衝二重構造を有する包装用箱を立体的に立ち上げることができる。また、補強フラップを重ねて面接合するという簡易な構成により、物品に当接する緩衝面を多層状にしてその強度を向上させることができる。従って、外部からの衝撃に対して十分な緩衝効果が得られる包装用箱を、低コストで、かつ、簡易な製造工程により提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜図8は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は開封前の包装用箱の外観を示す斜視図、図2は包装用箱に収納される物品の斜視図、図3は図1のA1−A1断面図、図4は図1のB1−B1断面図である。また、図5は包装用箱を組み立てるための箱形成基板の展開図、図6は補強フラップによって緩衝面を補強した状態を示す説明図、図7は箱形成基板の内箱形成部を組み立てた状態を示す説明図、図8は開口を閉鎖していない包装用箱を示す説明図である。
また、図9は落下試験の試験体の構成を示す説明図、図10〜図12は従来例の緩衝二重構造を示す説明図である。
【0020】
(包装用箱の構成)
本例の包装用箱Sは、アンプル等の物品を収納するための直方体状の箱であり、図1に示すように、略矩形状断面の筒状部10aを有する外箱部10と、筒状部10aの内周に沿って設けられた筒状の内箱部20と、筒状部10aの一端側の開口を閉鎖する蓋部材としての正面側蓋板11と、筒状部10aの他端側の開口を閉鎖する蓋部材としての背面側蓋板12と、を備えている。
この包装用箱Sは、外箱部10と内箱部20によって形成された二重構造の筒状体を備えており、内箱部20に囲まれた空間が物品を収納するための収納空間とされている。そして、正面側蓋板11または背面側蓋板12を開封することにより、正面または背面から物品を出し入れすることができるように構成されている。
また、本例では、包装用箱Sの天面部と底面部において、それぞれ、外箱部10と内箱部20との間に所定寸法の緩衝空間が設けられている。すなわち、包装用箱Sの天面と底面は緩衝二重構造とされている。一方、包装用箱Sの左右の側面部にはいずれも緩衝二重構造は設けられていない。すなわち、本例では、外箱部10の側面に内箱部20の側面が内接するように構成されている。
【0021】
本例では、包装用箱Sに収納する物品としてアンプル2を例にとって説明する。アンプル2は、図2に示すように、アンプル2の外形に合わせた保持部を有し、この保持部が隣り合うアンプル同士が接触しないように略等間隔で形成されたトレー型のロンドレーション3の上に並べて保持される。そして、この状態で包装用箱Sの内部に収納される。このようなトレー型のロンドレーション3は、公知の緩衝材として広く用いられているものである。アンプル2を横一列に並べたロンドレーション3は、包装用箱Sの内部に上下に複数層積層して収納することができる。本例では、図2に示すように、5層積層して収納されている。なお、アンプル2とロンドレーション3は、図2の矢印y方向に挿入される。
【0022】
図3、図4はそれぞれ包装用箱Sの断面図であり、図3は図1のA1−A1断面図、図4は図1のB1−B1断面図である。
外箱部10の筒状部10aは、略長方形の天面板13及び底面板14と、天面板13と底面板14の長辺側の端縁同士をそれぞれ接続する一対の対向する側面板15,16を有している。天面板13と底面板14、及び、側面板15と側面板16は、それぞれ略平行に配設されている。
内箱部20は、天面板13の内周側に設けられた天面側緩衝板21と、底面板14の内周側に設けられた底面側緩衝板22と、天面側緩衝板21と底面側緩衝板22とをそれぞれ接続する一対の対向する支持板23,24と、を有している。
【0023】
外箱部10と内箱部20は、内箱部20の天面側緩衝板21が、外箱部10の天面板13から図3、図4に示す寸法X1だけ離間され、かつ、内箱部20の底面側緩衝板22が、外箱部10の底面板14から図3、図4に示す寸法X2だけ離間されるように組み立てられている。なお、本例では、X1とX2は略同一寸法とされ、天面側と底面側の緩衝空間は略同一寸法とされている。
また、外箱部10と内箱部20は、上述のように側面板15,16の間に支持板23,24が丁度内接するように寸法設定されている。すなわち、側面板15と支持板23、側面板16と支持板24、がそれぞれ丁度面接触するように寸法設定されている。
【0024】
そして、以上のような内箱部20と外箱部10において、内箱部20の支持板23が外箱部10の側面板15の所定位置(本例では、略中央)に接着材等により接合されると共に、内箱部20の支持板24が外箱部10の側面板16の所定位置(本例では、略中央)に接着材等により接合されている。従って、内箱部20が外箱部10に固定され、支持板23、24によって、天面側緩衝板21が天面板13から寸法X1の位置に支持固定されると共に、底面側緩衝板22が底面板14から寸法X2の位置に支持固定される。このようにして、包装用箱Sの天面と底面に、緩衝二重構造が形成される。
【0025】
次に、本例の緩衝二重構造の特徴的な構成について説明する。
本例では、緩衝二重構造の箱内部空間側の面、すなわち、天面側緩衝板21と底面側緩衝面22には、各々の端部から延出された補強フラップ片(後述する補強フラップ21a,21b及び補強フラップ22a,22b:図5参照)が、その基端部を折り曲げることにより重ねられて面接合されている。これにより、緩衝二重構造の箱内部空間側の面は、外箱部10および内箱部20を形成する箱形成基板1(図5参照)を形成する紙材を2枚重ねた構成となっている。
そして、この補強フラップ片は、箱形成基板1の一部をなすように形成されている。従って、包装用箱Sを製造する際に、この補強フラップ片を箱形成基板1とは別体の基板として準備する必要がない。
なお、折り曲げた補強フラップ片をさらに折り畳んでから天面側緩衝板21や底面側緩衝面22に接合すれば、基板を2層よりもさらに多く重ねた状態とすることができ、これにより、さらに強度を向上させることも可能である。このように、緩衝面を多層状に形成することも可能である。
【0026】
本例では、このような緩衝二重構造を設けることにより、従来品と比較して以下のような効果を奏する。
天面側緩衝板21および底面側緩衝板22がその両端で支持され、中間部に支持部が設けられていない構成では、天面側緩衝板21と底面側緩衝板22が撓みやすい1枚の基板のみで形成されていると、従来技術の欄で説明した図10、図11と同様に、衝撃や荷重によって大きく撓んで物品の破損が発生する。つまり、このような構成において十分な緩衝効果を得るためには、緩衝空間の寸法を撓み量よりも大きく設定しなければならない。従って、外形寸法の小型化を図ることができない。
【0027】
また、アンプル2などの物品をトレー型のロンドレーション3の上に並べたものを箱詰めする工程は、包装用箱Sの内周面(例えば底面側緩衝板22や支持板23、24)に、アンプル等の物品を並べたロンドレーションやトレー等を当接させ、この面に沿ってロンドレーションやトレー等を摺動させ挿入することによって行われる。
しかし、天面側緩衝板21と底面側緩衝板22が撓みやすい1枚の基板のみで形成されていると、物品を挿入する前の空箱の状態でも緩衝面に撓みが生じる可能性があり、撓んだ緩衝面に物品が引っ掛かって破損する可能性があった。従って、従来技術の欄で説明したように、生産効率が低下するという問題点があった。また、アンプル2やロンドレーション3が撓んだ層に引っ掛かって破損が生じた場合には、生産工程において歩留まりが低下する。
【0028】
これに対し、本例の緩衝二重構造のように、天面側緩衝板21や底面側緩衝板22が、包装用箱Sを形成する基板の一片を折り曲げ重ねて接合することにより2層あるいは多層状とされていると、荷重や衝撃が加えられても撓みにくいので、緩衝空間の寸法X1、X2を小さく寸法設定しても十分な緩衝性能を得ることができる。従って、包装用箱の小型化を図ることができる。よって、完成品の収納時の占有空間を小さくすることができ、保管コストや運搬コストを低減化することができる。
また、包装用箱Sを形成する基板を薄くすることにより資材コストの低減化を図り、かつ、強度が必要な天面側緩衝板21や底面側緩衝板22については補強フラップ片を重ねて必要な強度を得ることができる。
また、撓みが生じにくいことにより、物品が出し入れ時に引っ掛かりにくくなるので、生産効率の低下を防止すると共に、生産工程における物品の破損を防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0029】
なお、上記効果のうち、高い緩衝性能と小型化は、従来技術の欄でも説明したように、緩衝面の中間に支持部を設けることによっても達成可能である。しかし、支持部を緩衝面の中間に設けると包装用箱の構成及び箱を形成するための基板の構成が複雑化され、組み立てに手間を要する。また、緩衝面の一部を切り欠いて支持部を形成すると、切り欠きにアンプル2やロンドレーション3が引っ掛かる可能性があり、歩留まり及び生産効率の向上という課題を達成することができない。
さらにまた、緩衝面として強度が高い基板を用いることにより緩衝面の撓みを防止しようとすると、箱全体を一枚の基板を組み立てて製造する場合には、緩衝面のみならず不必要な他の部位まで強度が高い基板が用いることになってしまう。従って、資材コストの削減を図ることができない。
以上のように、本例では、緩衝二重構造の箱内部側の面すなわち緩衝面を、補強フラップ片を折り畳んで重ねるという簡易な構成により2層または多層状とし、これにより、緩衝面の衝撃時における撓み量を減少させるものである。そして、これにより、包装用箱の小型化、資材コストの削減、保管コスト及び運搬コストの削減、生産効率及び歩留まりの向上、等を実現するものである。
なお、上記実施形態では補強フラップにより補強された緩衝板は包装用箱の天面と底面の両方に設けられた緩衝二重構造部分を形成していたが、このような緩衝二重構造が、包装用箱の側面、正面、背面に設けられていても良い。要は、緩衝二重構造部分の箱内部側の面を補強フラップによって補強すればよい。
【0030】
(箱形成基板の構成)
次に、本例の包装用箱Sを組み立てるための基板の構成について説明する。
本例の包装用箱Sは、空白紙(ブランクシート)を打ち抜いて形成した一枚紙からなる箱形成基板1を折り曲げ組み立てることにより形成されている。
箱形成基板1は、図5に示すように、一端側に内箱部20を形成する内箱形成部1aが設けられ、他端側に外箱部10を形成する外箱形成部1bが設けられており、内箱形成部1aと外箱形成部1bとは折れ線を介して接続されている。
【0031】
内箱形成部1aは、略同一幅の底面側緩衝板22,支持板23,天面側緩衝板21,支持板24,の4片の板状の紙片を、この順に、それぞれ折れ線b,c,dを介して一列に連設して形成されている。また、底面側緩衝板22には、支持板23が接続された側と反対側の端縁に、折れ線aを介して固定用フラップ25が延出されている。
内箱形成部1aには、天面側緩衝板21の対向する2つの短辺、言い換えれば、内箱形成部1aを折り曲げて筒状の内箱部20を形成したときに、両端の開口の縁部となる対向する2辺から、それぞれ補強用フラップ21a,21bが反対方向に向かって延出されている。また、同様に、底面側緩衝板22の対向する2つの短辺から、それぞれ補強用フラップ22a,22bが反対方向に向かって延出されている。
【0032】
補強フラップ21a,21b及び補強フラップ22a,22bは、折れ線で折り曲げると天面側緩衝板21及び底面側緩衝板22に重ねることができ、天面側緩衝板21及び底面側緩衝板22にそれぞれ面接合することができる。図6は、補強フラップ21a,21b及び補強フラップ22a,22bを、それぞれ天面側緩衝板21及び底面側緩衝板22に折れ線で折り曲げ重ねた状態を示している。このとき、天面側緩衝板21と底面側緩衝板22は、基板を形成する紙片を2枚重ねた状態となり、強度が向上されている。
【0033】
また、図6に示すように、反対方向へ延出された補強フラップ21a,21bは、各々の先端が対向するように折り曲げられているが、本例では、補強フラップ21a,21bの先端はそれぞれ略同一角度で斜線状に切断されている。従って、折り曲げられたときに補強フラップ21a,21bの先端が略平行となっている。そして、この先端同士が丁度接するか、またはわずかな隙間を介して対向するように寸法設定されている。補強フラップ22a,22bについても同様とされている。
【0034】
外箱形成部1bは、図5に示すように、略同一幅の底面板14,側面板15,天面板13,側面板16,の4片の板状の紙片を、この順に、それぞれ折れ線f,g,hを介して一列に連設して形成されている。また、底面板14の一端が、内箱形成部1aの支持板24の一端に折れ線eを介して接続されている。
外箱形成部1bは、上記折れ線e〜hを上記折れ線a〜dと略同一の折り曲げ方向に略直角に折り曲げると共に、側面板15を内箱部20の支持板23の外側面に接合し、さらに、側面板16を内箱部20の支持板24の外側面に接合することにより、内箱部20の外周側に固定された略矩形断面の外箱部10を形成することができる。
【0035】
また、外箱形成部1bには、底面板14の一方の短辺から、折れ線を介して正面側蓋板11が延出されている。また、正面側蓋板11と共に筒状部10aの一方の開口を閉鎖するためのフラップ13a,15a,16aが、天面板13,側面板15,側面板16,の短辺から、それぞれ折れ線を介して延出されている。そしてさらに、正面側蓋板11の先端には固定用フラップ11aが延出されている。
また、同様に、天面板13の一方の短辺から折れ線を介して背面側蓋板12が延出されている。背面側蓋板12は正面側蓋板11とは反対側に向かって延出されている。また、背面側蓋板12と共に筒状部10aのもう一方の開口を閉鎖するためのフラップ14b,15b,16bが、底面板14,側面板15,側面板16,の短辺から、それぞれ折れ線を介して延出されている。
【0036】
また、内箱部20を組み立てる際には、まず、図6に示すように、補強フラップを折れ線で折り曲げて天面側緩衝板21と底面側緩衝板22に重ねて接合し、緩衝面を2枚重ねとする。そして、この状態から、内箱形成部1aの上記折れ線a〜d(図5参照)を全て同一の折り曲げ方向(図7に示す矢印x)に略直角に折り曲げると共に、固定用フラップ25を支持板24の内側面に接合する。これにより、図7に示すように略矩形断面の筒状の内箱部20を形成することができる。
このとき、補強フラップ21a,21b,22a,22bは、いずれも筒状の内箱部20の内周面側に折り曲げ重ねられている。すなわち、図3、図4の断面図に示されているように、補強フラップ21a,21b,22a,22bは、天面側緩衝板21および底面側緩衝板22の箱内部空間側の面に接合されている。
また、上述したように補強フラップ21a,21bは、先端が斜めにカットされて斜線状となっている。そして、内箱部20を筒状に組み立てた状態において、この先端同士が所定幅の隙間を介して突き合わせられている。そしてこの隙間のラインは筒状の内周面に対して垂直ではなく斜めとなっている。つまり、補強フラップ21a,21bの先端を突合わせた突合せ部の隙間のラインが、筒状の内周面に沿って物品が出し入れされるその出し入れ方向に対して斜めとなっている。そして、補強フラップ22a,22bについても同様の構成となっている。
【0037】
このように、補強フラップ片の先端同士の突合せ部の隙間のラインを物品の出し入れ方向に対して斜めとなるように構成したのは、以下の理由による。
補強フラップ21a,21bを天面側緩衝板21の箱内部空間側の面に貼り付けて接合すると、突合せ部の隙間は段差部となる。そして、箱の内周面に段差部が存在すると、内周面にロンドレーションやトレー等の表面を当接させ、内周面に沿って摺動させて挿入しようとする場合に、段差部に引っ掛かってスムーズに箱詰め作業を行うことができない。従って、生産効率の低下や、歩留まりの低下の原因となる。特に、この段差部が物品の出し入れ方向に対して垂直に形成されていると、物品を進入させようとしても段差を乗り越えさせることが困難となる。
本発明では、このような問題点を考慮して、段差部を物品の出し入れ方向に対して斜めとなるように構成している。これにより、補強フラップ21a,21b及び補強フラップ22a,22bの先端同士の突合せ部に隙間があって段差部が形成されていても、ロンドレーションやトレー等を摺動させ挿入しようとするときに、この段差部により引っかかりにくくなる。従って、生産効率の低下や、歩留まりの低下を防止することができる。
【0038】
また、上述した補強フラップ片の先端同士をほぼ隙間なくぴったりと付き合わせることにより、天面側緩衝板21と底面側緩衝板22の全面が補強フラップ片で覆われるように形成すれば、そもそも段差が発生しないので、物品の出し入れをスムーズに行うことができ、好適である。また、上述した補強フラップ片を、天面側緩衝板21と底面側緩衝板22の箱内部空間側の面でなく緩衝空間側の面に重ねる方向に折り曲げれば、補強フラップ片の突合せ部の段差は箱内部空間側に露出しない。従って、物品の出し入れをスムーズに行うことができ、好適である。
【0039】
また、図5〜図7に示すように、本例では、外箱形成部1bの底面板14には、破断可能なミシン目状の切り込みiが設けられている。また、天面板13には、破断可能なミシン目状の切り込みjが設けられている。切り込みiは円弧状に設けられており、両端が、フラップ14bの基端部が接続された折れ線上に設けられている。
従って、切り込みiが形成されていると、円弧状に囲まれた部分を内側に向かって押圧してこのミシン目を破断することにより、外箱部10に開口を形成することができる。そして、この開口から背面側蓋板12によって閉鎖された側から包装用箱Sを開封することができる。また、切り込みjについても同様に、天面板13の切り込みjによって囲まれた部分を押圧して開口を設け、この開口から正面側蓋板11によって閉鎖された側から包装用箱Sを開封することができる。
【0040】
そして、本例では、緩衝二重構造の箱内部空間側の面、すなわち、天面側緩衝板21と底面側緩衝面22が、上記のような切り込みの破断による開封時に、開封の障害とならないように構成されている。
そのため、本例では、図5に示すように、補強フラップ21aの基端部と天面側緩衝板21との間には予め開口kが設けられており、補強フラップ22a,22bの基端部と底面側緩衝板22との間にはそれぞれ予め開口m,nが設けられている。
このような構成で補強フラップ21a,22a,22bを折り曲げると、図6に示すように、天面側緩衝板21の補強フラップ21a側の短辺に凹形状の切り欠きk1が形成される。また、底面側緩衝面22の補強フラップ22a,22b側の短辺に、それぞれ凹形状の切り欠きm1,n1が形成される。
【0041】
図8は、外箱部10と内箱部20を組み立てて背面側蓋板12を閉鎖し、正面側蓋板11はまだ閉鎖していない状態を示す斜視図であるが、この図に示すように、天面側緩衝板21の正面側蓋板11側の端部に形成された凹形状の切り欠きk1は、天面板13に形成された切り込みjと丁度重なる位置に設けられている。また、この図では図示されない部位にあるが、底面板14の切り込みiと底面側緩衝面22の切り欠きn1についても同様に、丁度重なる位置に設けられている。
このように、本例では、天面側緩衝板21と底面側緩衝面22が、包装用箱Sを開封するために設けた切り込みi,jと対応する位置が切り欠かれた構成となっている。従って、天面側緩衝板21と底面側緩衝面22が、切り込みi,jの破断による開封時に開封の障害とならない。そして、切り込みi,jを容易に破断してその開口から容易に包装用箱Sの内部に指等を挿入することができるので、開口を閉鎖している蓋部材(正面側蓋板11およびフラップ13a,15a,16a、背面側蓋板12およびフラップ14b,15b,16b)を開封したり、内容物を取り出したりする作業を容易に行うことができる。
【0042】
特に、本発明では、天面側緩衝板21と底面側緩衝面22の強度が基板を2枚重ねることにより向上されているので、切り込みi,jと対応する位置が予め切り欠かれていないと開封が困難となる。上記の構成は、このような点を考慮したものである。
なお、本例のような包装用箱を組み立てるためには、箱形成基板が上記と同一の構成でなくても可能である。例えば、上記箱形成基板1における天面板13を底面板14とし、側面板15を側面板16とするように位置を入れ替えて、支持板24を、天面板13でなく底面板14に接続して内箱形成部1aと外箱形成部1bとを接続するようにしてもよい。また、例えば、外箱形成部1bの正面、背面いずれかの開口周囲に設けられたフラップ(フラップ13a、15a、16a、14b、15b、16bのいずれか)を省略し、省略したフラップが延出されていた端辺に内箱形成部1aを接続することも可能である。例えば、支持板24の端辺とフラップ16bが接続されていた端辺とを折れ線を介して接続することにより、内箱形成部1aと外箱形成部1bとを接続する。この場合、まず支持板24と側面板16が重なるように箱形成基板を折り曲げた後、内箱形成部1aを筒状に組み立て、その外周に外箱形成部1bを筒状に組み立てることが可能である。要は、1枚紙からなる箱形成基板となるように構成されていれば、どのような形状であってもよい。
【0043】
(確認試験)
本願出願人は、上述した実施例の構成による本発明の包装用箱と、比較例としての従来品の包装用箱とを用いて緩衝効果確認試験を行い、内容物の破損状況について確認した。以下に試験内容及び試験結果を示す。
【0044】
(1)試験体
以下に示す試験体A〜Dの4種類を用いた。各試験体には、液注製剤10mLアンプルを公知のロンドレーションを用いて各々10管ずつ横一列並べたものを底面から天面の間に5層積層して箱詰めし、50管包装の状態で試験を行った。
・試験体A:2枚貼り二重構造(本発明品)
・試験体B:二重構造なし(比較例1:従来品)
・試験体C:単純二重構造(比較例2:従来品)
・試験体D:支柱付き二重構造(比較例3:従来品)
図9は試験体の構成を示す図であり、本発明品及び従来品の包装用箱の断面構成を示している。図9において、(a)〜(d)がそれぞれ上記試験体A〜Dに相当する。この図に示すように、試験体A(本発明品)は、天面と底面が緩衝二重構造とされ、補強フラップを折り曲げ接着することにより、緩衝面が箱形成基板2枚分の厚みを有するように構成したものである。
【0045】
また、比較例の試験体は、それぞれ、以下のように構成されている。まず、試験体B(比較例1:二重構造なし)は、天面にも底面にも全く二重構造部を設けていないものである。試験体C(比較例2:単純二重構造)は、天面と底面が緩衝二重構造であって、緩衝面には補強フラップは接合されず、基板1枚分の厚みとされている。試験体D(比較例3:支柱付き二重構造)は、天面と底面が二重構造であって、緩衝面は基板1枚分の厚みとされているが、緩衝面の中間部に、緩衝面を支える支柱を2箇所形成したものである。図9(d)では支柱は1箇所のみ図示されているが、試験体Dの支柱は図9の紙面に対して垂直な方向に2箇所設けられている。
各試験体は、収納空間の内法幅(図9(a)〜(d)に示す寸法L)がいずれも80mmとされている。また、試験体A、C、Dの天面または底面と緩衝面との間の距離(図9(a)〜(d)に示す寸法X)はいずれも5mmとされている。
なお、本試験で試験体に用いた箱形成基板の紙質は、試験体A、C、Dが310g/m、試験体Bが400g/mである。すなわち、二重構造なしの比較例の試験体は、他の3種類の試験体よりも強度が高い紙質の基板により形成されている。
【0046】
(2)試験方法
落下試験の方法として、包装貨物に対する落下試験のJIS規格(JISZ0200(包装貨物−評価試験方法通則)、JISZ0202(包装貨物−落下試験方法))を適用し、上述した50管包装の状態で、天面側(図9に示すZ1側)と、底面側(図9に示す矢印Z2側)からそれぞれ落下させてアンプルの破損状況を調べた。具体的には、1試験体1条件につきサンプル数を各10点とし、50管包装×10点=500管のうち、何管破損したか、及び、破損が発生した箱数を算定した。落下高さは80cmとした。
なお、試験体A(本発明品)については、再現性を確認するために、落下高さを90cmに増加させた試験をさらに行っている。
【0047】
(3)結果
【表1】

表1は試験体A〜Dについての落下高さ80cmにおけるアンプルの破損状況である。この表に示すように、本発明品に相当する試験体Aでは、どの面から落下させた場合でも、落下高さ80cmでは全くアンプルの破損は発生していない。
これに対し、試験体B〜Dではいずれもアンプルの破損が発生した。すなわち、試験体B(比較例1:二重構造なし)では、他の3種類の試験体よりも紙の強度が高いにも拘わらず、天面側からの落下では10箱全て(管数では500管中59管)に破損が発生した。また、底面側からの落下では、10箱中4箱(管数では500管中6管)に破損が発生した。
また、二重構造を設けた他の比較例でも破損が発生した。すなわち、試験体C(比較例2:単純二重構造)では、天面側からの落下では10箱中1箱(管数では500管中1管)に破損が発生し、底面側からの落下では10箱中5箱(管数では500管中6管)に破損が発生した。そして、試験体D(比較例3:支柱付き二重構造)では、天面側からの落下では10箱中2箱(管数では500管中2管)に破損が発生し、底面側からの落下では10箱中3箱(管数では500管中4管)に破損が発生した。
【0048】
【表2】

表2は試験体Aについての落下高さ80cmと落下高さ90cmにおけるアンプルの破損状況の比較である。上述のように、落下高さ80cmでは全くアンプルの破損は発生していないが、落下高さ90cmでは、底面側からの落下時に10箱中1箱(管数では500管中1管)の破損が発生した。
【0049】
(4)考察
上記結果によれば、本発明品は比較例のいずれと比較してもアンプルの破損が少ない。従って、従来例の構成と比較して、外部からの衝撃に対して、より確実に物品の破損を防止することができるという効果を奏することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る包装用箱の外観を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る包装用箱に収納される物品の斜視図である。
【図3】本実施形態に係る包装用箱の断面図(図1のA1−A1断面図)である。
【図4】本実施形態に係る包装用箱の断面図(図1のB1−B1断面図)である。
【図5】本実施形態に係る包装用箱を形成する箱形成基板の展開図である。
【図6】補強フラップによって緩衝面を補強した状態を示す説明図である。
【図7】箱形成基板の内箱形成部を組み立てた状態を示す説明図である。
【図8】開口を閉鎖していない包装用箱を示す説明図である。
【図9】落下試験に使用した試験体の構成を示す説明図である。
【図10】従来例の緩衝二重構造を示す説明図である。
【図11】従来例の緩衝二重構造を示す説明図である。
【図12】従来例の緩衝二重構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1‥‥‥‥‥箱形成基板
1a‥‥‥‥内箱形成部
1b‥‥‥‥外箱形成部
2‥‥‥‥‥アンプル
3‥‥‥‥‥ロンドレーション
10‥‥‥‥外箱部
10a‥‥‥筒状部
11‥‥‥‥正面側蓋板
11a‥‥‥固定用フラップ
12‥‥‥‥背面側蓋板
13‥‥‥‥天面板
14‥‥‥‥底面板
13a,15a,16a,14b,15b,16b‥フラップ
15,16‥側面板
20‥‥‥‥内箱部
21‥‥‥‥天面側緩衝板
21a,21b,22a,22b‥補強フラップ
22‥‥‥‥底面側緩衝板
23,24‥支持板
25‥‥‥‥固定用フラップ
102‥‥‥物品
103‥‥‥ロンドレーション
121,122‥‥緩衝面
122a‥‥‥‥‥支持部
A〜D‥‥‥‥‥‥試験体
a〜h‥‥‥‥‥‥折れ線
i,j‥‥‥‥‥‥切り込み
k,m,n‥‥‥‥開口
k1,m1,n1‥切り欠き
x,y‥‥‥‥‥‥矢印
L,X,X1,X2‥寸法
Z1‥‥‥‥‥天面
Z2‥‥‥‥‥底面
S‥‥‥‥‥‥包装用箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平行に配設された底面板および天面板,該底面板と該天面板をそれぞれ接続する第1側面板および第2側面板,を有する筒状部と、該筒状部の一端側の開口を塞ぐ正面側蓋板と、前記筒状部の他端側の開口を塞ぐ背面側蓋板と、を有する外箱部と、前記筒状部の内周に沿って設けられた筒状の内箱部と、を備え、前記外箱部と前記内箱部が1枚の箱形成基板を折り曲げ組み立てて形成された包装用箱であって、
前記内箱部は、前記天面板との間に所定の緩衝空間を有する位置に設けられた天面側緩衝板,前記底面板との間に所定の緩衝空間を有する位置に設けられた底面側緩衝板,前記天面側緩衝板と前記底面側緩衝板をそれぞれ接続する第1支持板および第2支持板,を有し、
前記第1支持板は前記第1側面板に接合され、かつ、前記第2支持板は前記第2側面板に接合されて前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板が所定の位置に支持されるように構成され、
前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の各々には、前記箱形成基板の一部を形成する補強フラップが重ねられ面接合されたことを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
前記箱形成基板は、前記外箱部を形成する外箱形成部と、該外箱形成部の一端に折れ線を介して連設された内箱形成部と、を備え、
前記外箱形成部は、前記天面板,前記第1側面板,前記底面板,前記第2側面板,の順に折れ線を介して連設されると共に、前記天面板,前記第1側面板,前記底面板,前記第2側面板,の端部のうち、前記筒状部の一端側の開口の縁を形成する端部に前記正面側蓋板が折れ線を介して接続され、かつ、前記筒状部の他端側の開口の縁を形成する端部に前記背面側蓋板が折れ線を介して接続され、
前記内箱形成部は、前記天面側緩衝板,前記第1支持板,前記底面側緩衝板,前記第2支持板,の順に折れ線を介して連設され、
前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の各々には、前記第1支持板または前記第2支持板に接続されていない端縁から前記補強フラップが折れ線を介して延出されたことを特徴とする請求項1に記載の包装用箱。
【請求項3】
前記補強フラップは、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の少なくともいずれかの互いに対向する端縁からそれぞれ反対方向に延出されて先端同士が互いに対向するように折り曲げられ、かつ、対向する先端間の隙間が略同一となるように寸法設定されたことを特徴とする請求項2に記載の包装用箱。
【請求項4】
前記補強フラップは前記内箱部の内周側に折り曲げられ、該補強フラップの先端は、前記内箱部が筒状に組み立てられた状態において、前記第1支持板または前記第2支持板の面方向に対して所定角度傾くように斜めに形成されたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の包装用箱。
【請求項5】
前記補強フラップは、前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板の略全面を覆うように寸法設定されたことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の包装用箱。
【請求項6】
前記天面板および前記底面板の少なくともいずれかには破断可能な切り込みが形成され、該切り込みの破断により、前記天面板または前記底面板に所定形状の開封口を形成可能に構成され、
前記天面側緩衝板および前記底面側緩衝板には、前記開封口と前記緩衝空間を介して対向する位置に前記開封口の形状に対応する形状の切り欠き部が設けられると共に、
前記補強フラップは、折り曲げられた状態において前記切り欠き部を覆わないように形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装用箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−30988(P2007−30988A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170368(P2006−170368)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】