説明

補強金物

【課題】
制震性を有しており、また余震の際も建物の強度を確保でき、しかもコスト面にも優れた補強金物を提供すること。
【解決手段】
隣接する二個の部材31を結ぶように配置され、部材31に面接触する二個の取付片12と、二個の取付片12を結ぶ架橋体14と、で構成される補強金物11を用いて、架橋体14には、横断面の面積を縮小して変形を容易にした脆弱部16を設ける。この補強金物11の取付片12をボルト21などで部材31と一体化することで、隣接する部材31同士が強固に締結され、従来の筋交いや耐力壁と同様な効果を発揮して、耐震性を確保できる。また部材31の変形が大きくなると、脆弱部16が弾性変形や塑性変形をするため、制震性も確保でき、しかも部材31や取付片12などに作用する荷重が緩和され、これらの箇所の破損を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱同士や、柱と横架材など、隣接する二個の部材を締結するために用いる補強金物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建て方として広く普及している木造軸組工法は、基礎の上面に土台を敷設して、その上に柱を直立させて、さらに複数の柱を横架材で結んで骨格を組み上げている。この骨格の強度を向上するには、部材同士の締結部の剛性を高める必要があるが、締結部だけで剛性を高めることは困難であり、通常は筋交いや火打ちなどの補強材を組み込んでいる。筋交いは、柱と横架材で構成される格子の中で対角線上に配置され、地震などで水平力が作用した際、柱の傾斜や横架材の変位を拘束する。また火打ちは、締結する二部材を短絡するように配置され、締結部への荷重の集中を防止する。そのほか、柱と横架材で構成される格子を塞ぐ耐力壁も有効な補強手段である。
【0003】
筋交いや火打ちや耐力壁は、地震の際、建物の変形を抑制する「耐震性」を確保することを目的としており、振動を吸収して室内の被害を軽減する「制震性」は期待できない。しかし最近では、後記特許文献1のように、筋交いにダンパーを組み込んで、振動を抑制する技術が開発されている。なお特許文献1の技術は、設計寸法と実際の建上げ寸法との乖離が生じやすい木造建築において、ガタなどの影響を受けることなく、本来の制震効果が発揮できることを目的としており、ダンパーの両端にネジ部を設けたことを特徴としている。
【0004】
特許文献1のほかにも、本願発明と関連性のある以下の特許文献が公開されている。文献2は、筋交いとして機能するブレースダンパーを用いており、ブレースダンパーの両端に粘弾性材を介在させたことを特徴としており、木造建築に適した簡便で小形軽量、かつ安価な制震ダンパーを実現している。また文献3では、二本の間柱と二本の上下繋ぎ材で構成される格子の中に組み込まれる制振パネルが開示されており、格子を上下に三等分して、上下の区画に振動追従板を設けて、中央の区画は単なる空間としたことを特徴としている。変形を中央の区画に凝縮させることで、せん断抵抗機能を発揮して、効率的な制振が実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−228276号公報
【特許文献2】特開2002−30828号公報
【特許文献3】特開2007−138407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の木造軸組工法は、各種基準に基づいて正しく設計や施工を行えば、大規模な地震に遭遇した場合でも、建物が倒壊することはない。ただし筋交いは、柱や横架材などに比べて断面が小さく、しかも両端の締結に釘を用いることも多いため、本震の際、割れや釘の緩みが生じて、以降の余震では、本来の機能を発揮できない恐れがある。そのほか、地震の後も建物を使用し続ける場合、破損個所の修理が必要になるが、その際、柱や横架材などの重要な部材を交換することなく、できるだけ取り扱いが容易な部品だけを交換して、費用や作業時間を抑制すべきである。
【0007】
また筋交いや火打ちや耐力壁は、耐震性の向上には有効だが、地震の衝撃を吸収する制震性を有する訳ではない。制震性を確保するには、先の特許文献1や特許文献2のように、筋交いにダンパーや粘弾性材を組み込む手段が有効である。ただし、このような技術は、有効性は理解されても費用の面で導入をあきらめるケースが多く、また樹脂類の経年劣化にも注意が必要である。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、制震性を有しており、また余震の際も建物の強度を確保でき、しかもコスト面にも優れた補強金物の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、隣接する二個の部材を結ぶように配置され、部材に面接触する二個の取付片と、二個の取付片を結ぶ架橋体と、を備え、前記取付片には、締結部材を差し込むための抜き孔を設け、前記架橋体には、横断面の面積を縮小して変形を容易にした脆弱部を設けたことを特徴とする補強金物である。
【0010】
本発明による補強金物は、柱や横架材など、隣接する二個の部材を結ぶように配置され、両部材を一体化することで剛性を向上するほか、地震の際、エネルギーを吸収することにも配慮され、両端の取付片と、取付片同士を結ぶ架橋体で構成される。なお補強金物を組み込む二個の部材は、平行して並ぶ二本の柱や、直角に交わる柱と横架材のほか、棒材と厚手の板材など、自在である。本発明は木造建築での使用を想定しているため、部材は原則として集成材を含む木材とするが、例外として一方の部材が金属やコンクリートになる場合もある。また補強金物は、建物の強度を向上するため、複数を並べて配置することもある。
【0011】
補強金物は、帯状の鋼板を所定の形状に仕上げたもので、両端の取付片と、その間を結ぶ架橋体で構成されるが、個々の取付片は、それぞれの部材の側面などに接触させて、さらに締結部材を用いて部材と一体化する。なお取付片と部材が一体化した後、地震などによる外力が作用した場合でも、締結部材は、双方の締結を維持できる強度が必要である。そのため締結部材は、木ネジなど簡易なものを用いてはならない。なお締結部材の具体例としては、端面に雌ネジが形成されたラグスクリューまたはシャフトと、これらに螺合するボルトが挙げられ、ラグスクリューまたはシャフトを部材に埋め込み、さらに取付片からこれらの雌ネジに向けてボルトを差し込んで締め上げると、補強金物と部材が一体化する。
【0012】
取付片を部材と一体化する際は、前記のようにボルトを使用するが、これを挿通するため取付片には抜き孔を設けている。なお補強金物を安定して取り付けるため、抜き孔は、片方の取付片について二個以上設けることが好ましい。またボルトについても、地震時の荷重で塑性変形しない強度を必要とする。
【0013】
架橋体は、二つの取付片を結ぶ帯状の部分であり、二個の部材を連結する機能を有する。このように、補強金物を用いて二個の部材を一体化することで、一方の部材に作用した荷重は、補強金物を介して他方の部材に伝達して、二個の部材が一体になって外力に対抗して、筋交いなどと同様の効果を発揮する。なお補強金物は、架橋体の両端に取付片を備えていればよく、具体的な形状は自在であり、架橋体と取付片が直角になった形態のほか一直線に並ぶ形態など、実情に応じて様々選択できる。
【0014】
架橋体は、二本の部材を単純に連結している訳ではなく、その途中に脆弱部を設けたことを特徴としている。脆弱部は、横断面(架橋体の延伸方向に対して直交する断面)の面積が他の部位よりも小さい部分であり、必然的に他の部分に比べて強度が弱くなり、且つ作用する応力も増大する。そのため、架橋体を屈曲または引張させるような荷重が作用すると、脆弱部が集中的に弾性変形していき、さらに弾性限度を超えると塑性変形が発生する。このように脆弱部を設けて、ここを優先的に変形させることで、衝撃の緩和やエネルギーの吸収が容易になり、取付片や部材に作用する荷重が軽減され、部材自体や、部材と取付片との締結部の破損を防止できる。なお脆弱部は、横断面の面積が他の部位よりも小さければよく、その具体的な形状は自在であり、その位置にも制限はない。
【0015】
請求項2記載の発明は、脆弱部の詳細を限定したもので、脆弱部は、架橋体の両端近傍に設けていることを特徴とする。二本の柱の間を跨ぐように補強金物を取り付けた場合、地震などで水平荷重が作用すると、二本の柱のいずれも、同じ方向に同じ角度だけ傾くことが予想される。このように柱が傾くと、一方の取付片は上向きに移動して、他方の取付片は下向きに移動する。そのため、左右の取付片の高さに食い違いが生じて、架橋体を屈曲させるような外力が作用する。その際、脆弱部が一箇所だけでは、外力に対して柔軟に追従できず、取付片と架橋体との境界や、抜き孔の近傍にも荷重が集中して、本来の機能を発揮できない恐れがある。
【0016】
そこで本発明のように、脆弱部を一箇所だけではなく、架橋体の両端近傍、つまり一方の部材の近傍と、他方の部材の近傍の二箇所に設けることで、両脆弱部が関節のように屈曲して、他の部分に無理な荷重が作用せず、本来の機能を発揮できる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明のように、部材に面接触する二個の取付片と、二個の取付片の結ぶ架橋体と、で補強金物を構成して、ボルトなどを用いて取付片と部材を一体化することで、二個の部材が強固に締結され、筋交いや耐力壁などと同様な効果を発揮して、耐震性を確保できる。また部材の変形が過大になると、脆弱部の弾性変形や塑性変形でエネルギーを吸収できるため、制震性も確保され、しかも部材や取付片などに作用する荷重が緩和され、これらの部分の破損を防止できる。
【0018】
さらに脆弱部は、塑性変形した後も破壊された訳ではないため、所定の強度を残している。そのため余震の際も、当初と同様の強度を維持でき、建物の健全性を確保できる。また余震が終息して建物を修理する際は、柱などの傾斜を除去しながら、塑性変形した補強金物だけを交換すればよく、修理に要する時間や費用を抑制できる。しかも補強金物は鋼板を加工した単純な形状で、製造コストも抑制できる。
【0019】
請求項2記載の発明のように、脆弱部を両端近傍の二箇所に設けることで、柱など平行して並ぶ二本の部材が同方向に傾斜した場合、脆弱部だけが関節のように円滑に屈曲して、左右の取付片の高さの食い違いを解消でき、他の部分に無理な荷重が作用しない。そのため、柱と取付片との締結部や、柱自体が破損することを防止でき、余震の際も建物の強度を維持でき、しかも修理の際は、補強金物だけを交換すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による補強金物の形状とその使用例を示す斜視図である。
【図2】補強金物を柱に組み込んだ状態の側面図である。
【図3】柱が傾いて補強金物が塑性変形した状態の側面図である。
【図4】補強金物の形状例を示す斜視図である。
【図5】締結部材の一例を示す斜視図であり、締結部材としてシャフトや異形棒鋼を使用している。
【図6】締結部材の一例を示す斜視図であり、締結部材としてコーチボルトを使用している。
【図7】図1とは異なる形状の補強金物の使用例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す各要素を組み合わせた状態の斜視図である。
【図9】T字形の補強金物を介して柱を据え付けた状態の側面図である。
【図10】補強金物について、他の形状例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による補強金物11の形状とその使用例を示している。補強金物11は、帯状の鋼板を材料としており、両端を直角に折り曲げて形成した左右の取付片12と、左右の取付片12を結ぶ架橋体14で構成され、個々の取付片12には、ボルト21を挿通するための抜き孔17を形成してあり、また架橋体14には、両側面を切り欠いて断面積を縮小した脆弱部16を二箇所に形成している。そして、補強金物11を用いて二本の柱31(部材)を一体化することで、筋交いなどと同様、柱31の強度が向上する。
【0022】
左右の取付片12の間隔(取付片12の外面同士の間隔)は、二本の柱31の対面の間隔と等しく、補強金物11を取り付ける際、無理なく取付片12の外面と柱31の側面が面接触する。なお補強金物11は、単純に柱31の側面に取り付ける訳ではなく、柱31の側面には、あらかじめ締結部材であるラグスクリュー23を埋め込んでいる。ラグスクリュー23は、側周面に螺旋状の凸条25が形成され、これが柱31の中に食い込むことで、柱31の中で固定され、しかも柱31を強化して割れを防止できる。さらにラグスクリュー23の両端面には、ボルト21を螺合するための雌ネジ24が形成されている。またラグスクリュー23を柱31にねじ込むため、柱31には両側面を貫通する下孔33を加工している。
【0023】
ラグスクリュー23の全長は、下孔33の全長と等しく、ねじ込みを終えたラグスクリュー23の両端面は、柱31の側面と段差なく並ぶ。したがって二本の柱31の間に補強金物11を配置して、抜き孔17と雌ネジ24を同心に揃えた後、ボルト21を差し込んで締め上げると、取付片12とラグスクリュー23が面接触して、柱31と補強金物11が一体化する。この際、補強金物11は、ボルト21とラグスクリュー23を介して柱31と一体化しており、柱31の狭い範囲に集中荷重が作用することはなく、柱31に取付片12が食い込むことはない。なお補強金物11は、一個だけでは十分な強度を発揮できないため、図のように上下方向に並べて配置することが多い。
【0024】
図2は、補強金物11を柱31に組み込んだ状態を側面から見たものである。補強金物11は、筋交いや耐力壁と同等の機能を発揮させるため、所定の間隔で上下に並べるだけではなく、この図のように水平方向にも並べることで、建物の変形を効率よく押さえ込むことができる。なお柱31に埋め込まれているラグスクリュー23の全長は、図1と同様、柱31の幅と等しく、いずれの取付片12も、ラグスクリュー23の端面と密着している。
【0025】
図3は、柱31が傾いて補強金物11が塑性変形した状態を側面から見たものである。この図では、土台35の上面から二本の柱31a、31bが直立しており、この柱31の上部には横架材36が載置され、補強金物11は、左右の柱31a、31bを結ぶように配置されている。柱31a、31bが傾く前は、左右の取付片12a、12bの高さは等しく、架橋体14は水平に延びている。しかし地震で横架材36に水平力が作用して、左右の柱31a、31bが同じ方向に傾くと、図のように、左側の取付片12aが高くなり、右側の取付片12bが低くなる。そのため架橋体14は、うねるような変形を強いられるが、二箇所の脆弱部16が図のように塑性変形することで、左右の取付片12a、12bの高さの差を無理なく吸収でき、取付片12やボルト21に作用する荷重が緩和され、理想的な制震性が得られる。
【0026】
脆弱部16が塑性変形すると、補強金物11は元の形状には戻らないが、左右の柱31a、31bが補強金物11で締結されていることに変わりはなく、余震などで繰り返して荷重が作用した場合でも、建物の強度は確保できる。また脆弱部16の効果によって、取付片12やラグスクリュー23に過大な荷重が作用することはなく、柱31やラグスクリュー23は継続して使用できる。したがって余震が収束した後、柱31を直立させ、補強金物11だけを交換すれば、建物を当初の状態に復元できる。
【0027】
図4は、補強金物11の形状例を示している。脆弱部16は、架橋体14の横断面の面積を局地的に縮小するものであれば、その形態は自在である。したがって一番上の形状例1のように、脆弱部16を孔とすることもできる。また形状例2のように、架橋体14の上面に半円形の溝を設けて脆弱部16としてもよい。なお取付片12は、同じ向きに揃える必要はなく、左側の取付片12aを下向きに延ばして、右側の取付片12bを上向きに延ばすこともできる。そのほか形状例3のように、取付片12の中央に架橋体14の端面を溶接で一体化して、H形とすることもできる。
【0028】
図5は、締結部材の一例を示している。補強金物11を柱31などに取り付けるための締結部材は自在であり、図1のように、ボルト21とラグスクリュー23を用いる場合のほか、この図のように、ラグスクリュー23の代替として、シャフト26や異形棒鋼29を用いることもできる。シャフト26は、鋼製の丸棒を所定の長さに切り出したもので、側周面に横孔27が形成してある。また柱31の側面には、シャフト26を埋め込むための下孔33が加工してある。ただし、シャフト26を下孔33に差し込んだだけでは、容易に引き抜けてしまうため、シャフト26と交差するようにドリフトピン39を打ち込んでいる。このドリフトピン39を打ち込むため、柱31の側面には、下孔33と交差するピン孔32を加工してある。なおシャフト26の端面には雌ネジ24を形成してあり、これにボルト21を螺合して補強金物11を固定する。
【0029】
そのほか補強金物11の取り付けには、図5の下方のように、異形棒鋼29も使用できる。異形棒鋼29は、摩擦を増大するため側周面に多数のリブが形成されており、通常はコンクリートの中に埋め込まれるが、本図のように、側周面全体に接着剤28を塗布して、柱31の中に埋め込むこともできる。接着剤28が固まると異形棒鋼29は柱31と一体化して、補強金物11を固定できるようになる。なお異形棒鋼29の端面にも、ボルト21を螺合するための雌ネジ24が形成してある。
【0030】
図6も、締結部材の一例を示している。この図では、締結部材としてコーチボルト22を使用している。コーチボルト22は、汎用のネジ釘よりも大形だが、図5のような下孔33を加工することなくねじ込み可能で、作業性に優れている。ただし取付片12と柱31を直に接触させると、外力が作用した際、取付片12が柱31にめり込み、補強金物11が本来の機能を発揮できない恐れがある。そこで取付片12と柱31との間に鋼製のプレート38を介在させて、柱31の側面に作用する圧力を緩和させている。
【0031】
図7は、図1とは異なる形状の補強金物11tの使用例を示している。補強金物11は、図1のように、平行する二本の柱31を結ぶ形態のほか、この図のように、直交する柱31と横架材36との締結にも使用できる。ただし補強金物11tの形状は、図1などと異なるT字状で、T字の横線に相当する取付片12bは、架橋体14に対して直角方向に延びており横架材36と接触するが、他方の取付片12aは、架橋体14から連続しており柱31の側面に接触する。また架橋体14に形成される脆弱部16は、一箇所のみとしている。
【0032】
補強金物11tを強固に取り付けるため、柱31と横架材36の両方にラグスクリュー23、40をねじ込んでいるが、ラグスクリュー23、40の各端面は、柱31または横架材36の表面と同一に並ぶよう、施工時に配慮がなされている。そのため各取付片12a、12bは、ボルト21およびラグスクリュー23、40を介して、柱31や横架材36と一体化しており、各取付片12a、12bが柱31や横架材36にめり込むことはない。そのほか、図に描かれた計四個の補強金物11tは全て同一形状だが、使用箇所に応じて上下を反転させている。
【0033】
図8は、図7に示す各要素を組み合わせた状態で、さらに二本の柱31を水平に結ぶ補強金物11も使用している。このように補強金物11tを介して二本の柱31を据え付けることで、地震などによる水平荷重が効率よく補強金物11tに伝達するため、その脆弱部16が有効に機能して制震性が向上する。なお柱31の両端を横架材36に締結している補強金物11tに関して、柱31の側面に接触している取付片12aは、架橋体14との明確な境界が存在しない。しかし使用実態から、柱31と接触する範囲を取付片12a、柱31と接触しない範囲を架橋体14とする。
【0034】
図9は、補強金物11tを介して柱31を据え付けた状態を側面から見たものである。基礎37の上面に土台35が敷設され、この土台35の上面から長柱34が直立しており、横架材36は長柱34で支持されている。さらに制震性や耐震性を確保するため、二本の長柱34の間に柱31を配置している。この二本の柱31は、上下に配置された補強金物11tを介して土台35および横架材36と締結されており、補強金物11tには脆弱部16が形成されている。そのため横架材36に作用する水平荷重を円滑に吸収できる。そのほか、二本の柱31を水平に結ぶ補強金物11も配置してあり、二本の柱31が同方向に傾斜することで、補強金物11は図3のように変形するため、地震の際のエネルギーを複合的に吸収することができる。
【0035】
図10は、補強金物11について、他の形状例を示している。図1のように、隣接する二本の柱31は、補強金物11を組み込むことで剛性を向上できるが、剛性をより一段と向上したい場合、この図のような補強金物11vが適している。図1の補強金物11は、架橋体14の表面(面積の大きい面)が水平になっているが、この図の補強金物11vは、架橋体14の表面が垂直になっており、必然的に柱31を傾けようとする荷重に対する剛性が向上する。なお補強金物11vは、柱31に支障なく固定できるよう、取付片12の長さが抑制されており、さらに抜き孔17は幅方向(図の上下方向)に並んでいる。また脆弱部16は、縦長の長円形のものを三個並べて、一定の変形性を確保している。ただしボルト21やラグスクリュー23を介して補強金物11vを取り付ける点は、他の形態と同じである。
【符号の説明】
【0036】
11 補強金物
12 取付片
14 架橋体
16 脆弱部
17 抜き孔
21 ボルト(締結部材)
22 コーチボルト(締結部材)
23 ラグスクリュー(締結部材)(柱にねじ込まれるもの)
24 雌ネジ
25 凸条
26 シャフト(締結部材)
27 横孔
28 接着剤
29 異形棒鋼
31 柱(部材)
32 ピン孔
33 下孔
34 長柱
35 土台(部材)
36 横架材(部材)
37 基礎
38 プレート
39 ドリフトピン
40 ラグスクリュー(締結部材)(土台や横架材にねじ込まれるもの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する二個の部材(31等)を結ぶように配置され、
部材(31等)に面接触する二個の取付片(12)と、二個の取付片(12)を結ぶ架橋体(14)と、を備え、
前記取付片(12)には、締結部材(21)を差し込むための抜き孔(17)を設け、
前記架橋体(14)には、横断面の面積を縮小して変形を容易にした脆弱部(16)を設けたことを特徴とする補強金物。
【請求項2】
前記脆弱部(16)は、前記架橋体(14)の両端近傍に設けたことを特徴とする請求項1記載の補強金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−153437(P2011−153437A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14630(P2010−14630)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(500292851)
【Fターム(参考)】