補正ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法
【課題】 被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することのできる照明光学系。
【解決手段】 光源(1)からの光で被照射面(M;W)を照明する照明光学系(2〜12)は、オプティカルインテグレータ(8)よりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系(3〜8)と、照明瞳を含む照明瞳空間に配置された補正ユニット(9)とを備えている。補正ユニットは、第1透過率分布を有する第1フィルタ(91)と、その後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタ(92)とを備えている。第1フィルタと第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置の変化および第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて第1フィルタおよび第2フィルタによる減光率が変化するように構成されている。
【解決手段】 光源(1)からの光で被照射面(M;W)を照明する照明光学系(2〜12)は、オプティカルインテグレータ(8)よりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系(3〜8)と、照明瞳を含む照明瞳空間に配置された補正ユニット(9)とを備えている。補正ユニットは、第1透過率分布を有する第1フィルタ(91)と、その後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタ(92)とを備えている。第1フィルタと第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置の変化および第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて第1フィルタおよび第2フィルタによる減光率が変化するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、例えば半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に好適な照明光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズを介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源(一般には照明瞳における所定の光強度分布)を形成する。以下、照明瞳での光強度分布を、「瞳強度分布」という。また、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0003】
二次光源からの光は、コンデンサーレンズにより集光された後、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクを透過した光は投影光学系を介してウェハ上に結像し、ウェハ上にはマスクパターンが投影露光(転写)される。マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
マスクの微細パターンをウェハ上に正確に転写するために、例えば輪帯状や複数極状(2極状、4極状など)の瞳強度分布を形成し、投影光学系の焦点深度や解像力を向上させる技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2006/0055834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスクの微細パターンをウェハ上に忠実に転写するには、瞳強度分布を所望の形状に調整するだけでなく、最終的な被照射面としてのウェハ上の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する必要がある。ウェハ上の各点での瞳強度分布の均一性にばらつきがあると、ウェハ上の位置毎にパターンの線幅がばらついて、マスクの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハ上に忠実に転写することができない。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することのできる照明光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整する照明光学系を用いて、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する補正ユニットであって、
前記照明瞳の前側に隣接してパワーを有する光学素子と前記照明瞳の後側に隣接してパワーを有する光学素子との間の照明瞳空間に配置されて、第1透過率分布を有する第1フィルタと、
前記照明瞳空間において前記第1フィルタよりも後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備え、
前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置の変化および前記第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて前記第1フィルタおよび前記第2フィルタによる減光率が変化するように構成されていることを特徴とする補正ユニットを提供する。
【0009】
本発明の第2形態では、光源からの光で被照射面を照明する照明光学系において、
オプティカルインテグレータを有し、該オプティカルインテグレータよりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系と、
前記後側の照明瞳を含む前記照明瞳空間に配置された第1形態の補正ユニットとを備えていることを特徴とする照明光学系を提供する。
【0010】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0011】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の照明光学系は、オプティカルインテグレータよりも後側の照明瞳を含む照明瞳空間に配置されて照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する補正ユニットを備えている。補正ユニットは、第1透過率分布を有する第1フィルタと、その後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備え、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置は変更可能である。また、補正ユニットは、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置の変化および第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて第1フィルタおよび第2フィルタによる減光率が変化するように構成されている。
【0013】
その結果、補正ユニットの作用により、被照射面上の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整することができる。したがって、本発明の照明光学系では、被照射面上の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する補正ユニットの作用により、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することができる。また、本発明の露光装置では、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整する照明光学系を用いて、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの露光面(転写面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0015】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光束は、整形光学系2および輪帯照明用の回折光学素子3を介して、アフォーカルレンズ4に入射する。整形光学系2は、光源1からのほぼ平行な光束を所定の矩形状の断面を有するほぼ平行な光束に変換して回折光学素子3へ導く機能を有する。
【0016】
アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と回折光学素子3の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。回折光学素子3は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的に、輪帯照明用の回折光学素子3は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。
【0017】
したがって、回折光学素子3に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、輪帯状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中において、その瞳位置またはその近傍には、濃度フィルタ6が配置されている。濃度フィルタ6は平行平面板の形態を有し、その光学面にはクロムや酸化クロム等からなる遮光性ドットの濃密パターンが形成されている。すなわち、濃度フィルタ6は、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する。濃度フィルタ6の具体的な作用は後述する。
【0018】
アフォーカルレンズ4を介した光は、σ値(σ値=照明光学系のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ7を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)8に入射する。マイクロフライアイレンズ8は、例えば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であって、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。
【0019】
マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。なお、マイクロフライアイレンズ8として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号公報に開示されている。
【0020】
所定面5の位置はズームレンズ7の前側焦点位置またはその近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置またはその近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面5とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
【0021】
したがって、マイクロフライアイレンズ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。マイクロフライアイレンズ8における各微小レンズの入射面(すなわち単位波面分割面)は、例えばZ方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状であって、マスクM上において形成すべき照明領域の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。
【0022】
マイクロフライアイレンズ8に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の位置(ひいては照明瞳の位置)には、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源(瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、補正ユニット9が配置されている。補正ユニット9の構成および作用については後述する。
【0023】
また、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、必要に応じて、輪帯状の二次光源に対応した輪帯状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞り(不図示)が配置されている。照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
【0024】
マイクロフライアイレンズ8および補正ユニット9を経た光は、コンデンサー光学系10を介して、マスクブラインド11を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド11には、マイクロフライアイレンズ8の微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド11の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとからなる結像光学系12を介して、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系12は、マスクブラインド11の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0025】
マスクステージMS上に保持されたマスクMには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。マスクMのパターン領域を透過した光は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。すなわち、マスクM上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上においてもY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域(実効露光領域)にパターン像が形成される。
【0026】
こうして、いわゆるステップ・アンド・スキャン方式にしたがって、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内において、X方向(走査方向)に沿ってマスクステージMSとウェハステージWSとを、ひいてはマスクMとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には静止露光領域のY方向寸法に等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有するショット領域(露光領域)に対してマスクパターンが走査露光される。
【0027】
本実施形態では、上述したように、マイクロフライアイレンズ8により形成される二次光源を光源として、照明光学系(2〜12)の被照射面に配置されるマスクMをケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系(2〜12)の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。
【0028】
なお、瞳強度分布とは、照明光学系(2〜12)の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。マイクロフライアイレンズ8による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ8の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。図1の構成において、回折光学素子3、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ7、およびマイクロフライアイレンズ8は、マイクロフライアイレンズ8よりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
【0029】
輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、複数極照明(2極照明、4極照明、8極照明など)用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、複数極照明を行うことができる。複数極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに複数極状(2極状、4極状、8極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、複数極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした複数の所定形状(円弧状、円形状など)の照野からなる複数極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ複数極状の二次光源が形成される。
【0030】
また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、円形照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、通常の円形照明を行うことができる。円形照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、円形照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ円形状の二次光源が形成される。また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。回折光学素子3の切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。
【0031】
以下の説明では、本実施形態の作用効果の理解を容易にするために、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、図2に示すような4つの円弧状の実質的な面光源(以下、単に「面光源」という)20a,20b,20cおよび20dからなる4極状の瞳強度分布(二次光源)20が形成されるものとする。また、補正ユニット9は、4極状の瞳強度分布20の形成面よりも後側(マスク側)に配置されているものとする。また、以下の説明において単に「照明瞳」という場合には、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳を指すものとする。
【0032】
図2を参照すると、照明瞳に形成される4極状の瞳強度分布20は、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源20aおよび20bと、光軸AXを挟んでZ方向に間隔を隔てた一対の面光源20cおよび20dとを有する。なお、照明瞳におけるX方向はマイクロフライアイレンズ8の矩形状の微小レンズの短辺方向(矩形状の単位波面分割面の短辺方向)であって、ウェハWの走査方向に対応している。また、照明瞳におけるZ方向は、マイクロフライアイレンズ8の矩形状の微小レンズの長辺方向(単位波面分割面の長辺方向)であって、ウェハWの走査方向と直交する走査直交方向(ウェハW上におけるY方向)に対応している。
【0033】
ウェハW上には、図3に示すように、Y方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域ERが形成され、この静止露光領域ERに対応するように、マスクM上には矩形状の照明領域(不図示)が形成される。ここで、静止露光領域ER内の1点に入射する光が照明瞳に形成する4極状の瞳強度分布は、入射点の位置に依存することなく、互いにほぼ同じ形状を有する。しかしながら、4極状の瞳強度分布を構成する各面光源の光強度は、入射点の位置に依存して異なる場合がある。
【0034】
具体的には、図4に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布21の場合、Z方向に間隔を隔てた面光源21cおよび21dの光強度の方が、X方向に間隔を隔てた面光源21aおよび21bの光強度よりも大きくなる傾向がある。一方、図5に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1からY方向に間隔を隔てた周辺の点P2,P3に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布22の場合、Z方向に間隔を隔てた面光源22cおよび22dの光強度の方が、X方向に間隔を隔てた面光源22aおよび22bの光強度よりも小さくなる傾向がある。
【0035】
一般に、照明瞳に形成される瞳強度分布の外形形状にかかわらず、ウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に関する瞳強度分布(中心点P1に入射する光が照明瞳に形成する瞳強度分布)のZ方向に沿った光強度分布は、図6(a)に示すように、中央において最も小さく周辺に向かって増大する凹曲線状の分布を有する。一方、ウェハW上の静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布は、図6(b)に示すように、中央において最も大きく周辺に向かって減少する凸曲線状の分布を有する。
【0036】
そして、瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布は、静止露光領域ER内のX方向(走査方向)に沿った入射点の位置にはあまり依存しないが、静止露光領域ER内のY方向(走査直交方向)に沿った入射点の位置に依存して変化する傾向がある。このように、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が照明瞳に形成する瞳強度分布)がそれぞれほぼ均一でない場合、ウェハW上の位置毎にパターンの線幅がばらついて、マスクMの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハW上に忠実に転写することができない。
【0037】
本実施形態では、上述したように、アフォーカルレンズ4の瞳位置またはその近傍に、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する濃度フィルタ6が配置されている。また、アフォーカルレンズ4の瞳位置は、その後側レンズ群4bとズームレンズ7とにより、マイクロフライアイレンズ8の入射面と光学的に共役である。したがって、濃度フィルタ6の作用により、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される光強度分布が調整(補正)され、ひいてはマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される瞳強度分布も調整される。
【0038】
ただし、濃度フィルタ6は、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を、各点の位置に依存することなく一律に調整する。その結果、濃度フィルタ6の作用により、例えば中心点P1に関する4極状の瞳強度分布21がほぼ均一になるように、ひいては各面光源21a〜21dの光強度が互いにほぼ等しくなるように調整することはできるが、その場合には周辺点P2、P3に関する4極状の瞳強度分布22の面光源22a,22bと面光源22c,22dとの光強度の差は却って大きくなってしまう。
【0039】
すなわち、濃度フィルタ6の作用により、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整するには、濃度フィルタ6とは別の手段により、各点に関する瞳強度分布を互いに同じ性状の分布に調整する必要がある。具体的に、図4および図を参照して説明した例では、例えば中心点P1に関する瞳強度分布21および周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22において、面光源21a,21bと面光源21c,21dとの光強度の大小関係と面光源22a,22bと面光源22c,22dとの光強度の大小関係とをほぼ同じ比率で一致させる必要がある。
【0040】
そこで、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を互いに同じ性状の分布に調整するための調整手段として、一般的には各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整するための調整手段として、本実施形態の補正ユニット9を備えている。補正ユニット9は、図7および図8に示すように、光軸AX(Y方向に対応)に沿って配置された一対のフィルタ91および92を備えている。各フィルタ91,92の本体は、例えば石英または蛍石のような光学材料により形成された平行平面板の形態を有する。
【0041】
各フィルタ91,92の表面(光の入射側の面、射出側の面、または双方の面)には、位置により厚さの異なる減光性の薄膜、例えばクロムや酸化クロムからなる薄膜が形成されている。あるいは、各フィルタ91,92の表面には、例えばクロムや酸化クロム等からなる微小な遮光性ドットの濃密パターンが形成されている。すなわち、各フィルタ91,92は、上述した濃度フィルタ6と同様に、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する。
【0042】
第1フィルタ91は、例えば光軸AXを中心とする円形状の外形形状を有し、その入射面91aが光軸AXと直交するような姿勢で固定的に位置決めされている。第2フィルタ92は、第1フィルタ91の後側(マスク側)に配置されて、例えば光軸AXを中心とする円形状の外形形状を有する。また、第2フィルタ92は、その入射面92aが光軸AXと直交する姿勢を維持しつつ、X方向、Y方向およびZ方向に沿って移動可能に構成されている。換言すれば、第1フィルタ91と第2フィルタ92とは、光軸AX方向、および光軸AXと直交するXZ平面の面内方向に沿って相対的に移動可能に構成されている。
【0043】
補正ユニット9では、駆動制御系99からの指令に基づき、第2フィルタ92がX方向、Y方向およびZ方向に沿って移動する。なお、第2フィルタ92を固定的に位置決めし、且つ第1フィルタ91をX方向、Y方向およびZ方向に沿って移動可能に構成しても良い。あるいは、フィルタ91および92の双方を、X方向、Y方向およびZ方向に沿って移動可能に構成しても良い。補正ユニット9は、一例として、4極状の瞳強度分布20において光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源20aおよび20bからの光に作用するように、あるいは光軸AXを挟んでZ方向に間隔を隔てた一対の面光源20cおよび20dからの光に作用するように構成されている。一般には、補正ユニット9は、4極状の瞳強度分布20の全部または一部からの光に作用するように構成されている。
【0044】
ここで、図9を参照すると、ウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に達する光、すなわちマスクブラインド11の開口部の中心点P1’に達する光は、補正ユニット9に対して(すなわち第1フィルタ91に対して)入射角度0で入射する。換言すれば、中心点P1に関する瞳強度分布21からの光は、入射角度0で第1フィルタ91に入射する。なお、図9では、瞳強度分布21のうちの面光源21c,21dからの光が入射角度0で補正ユニット9に入射する様子が示されているが、面光源21a,21bからの光も同様に入射角度0で補正ユニット9に入射する。
【0045】
一方、図10に示すように、ウェハW上の静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に達する光、すなわちマスクブラインド11の開口部の周辺点P2’,P3’に達する光は、補正ユニット9に対して比較的大きい入射角度±θで入射する。換言すれば、周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22からの光は、比較的大きい入射角度±θで第1フィルタ91に入射する。なお、図10では、瞳強度分布22のうちの面光源22c,22dからの光が入射角度±θで補正ユニット9に入射する様子が示されているが、面光源22a,22bからの光も同様に比較的大きい入射角度±θ’で補正ユニット9に入射する。
【0046】
なお、図9および図10において、参照符号B1は面光源20a(21a,22a)のX方向に沿った最外縁の点(図2などを参照)を示し、参照符号B2は面光源20b(21b,22b)のX方向に沿った最外縁の点を示している。また、面光源20c(21c,22c)のZ方向に沿った最外縁の点を参照符号B3で示し、面光源20d(21d,22d)のZ方向に沿った最外縁の点を参照符号B4で示している。
【0047】
以下、図11乃至図13に示す単純な例を参照して、本実施形態にかかる補正ユニット9の作用、すなわち静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する機能を説明する。なお、図11乃至図13では、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される任意形状の瞳強度分布の一部、例えば4極状の瞳強度分布を構成する1つの面光源23からの光に着目して、一対のフィルタ91,92を有する補正ユニット9の作用を説明する。
【0048】
図11乃至図13では、全体座標(X,Y,Z)に対応する局部座標(x,y,z)を導入し、面光源23の中心を通り全体座標のY軸と平行な方向にy軸を、全体座標のX軸と平行な方向にx軸を、全体座標のZ軸と平行な方向にz軸を設定している。また、説明の理解を容易にするために、図11乃至図13に示す各例では、各フィルタ91,92とがz方向に沿って一次元的に変化する透過率分布を有するものとする。
【0049】
図11の例では、第1フィルタ91と第2フィルタ92とが、互いに同じ透過率分布を有する。具体的に、各フィルタ91,92は、面光源23に作用する範囲(以下、「作用範囲」という)において、図中破線の曲線で模式的に示すように、z=0において透過率が最も小さく且つz=0の位置からz方向に離れるにしたがって透過率が単調に増大する透過率分布を有する。簡単のために、各フィルタ91,92の作用範囲において、透過率分布はxy平面に関して対称であるものとする。
【0050】
この場合、図11の上側の図において、面光源23の中心からウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も小さい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91の位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13、および第2フィルタ92の位置P21における最小透過率よりも大きい透過率の位置P22,P23を通過する。
【0051】
その結果、図11の上側の図に示す状態では、中心点P1に関する瞳強度分布において面光源23に対応する面光源(以下、「対応面光源」という)の光強度Aは最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは互いに等しく且つ光強度Aよりも大きい。次に、図11の上側の図に示す状態から第2フィルタ92が+y方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った間隔が増大した状態(y方向に沿った相対位置が変化した状態)、すなわち図11の下側の図に示す状態について考える。
【0052】
図11の下側の図では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、図11の上側の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も小さい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図11の上側の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。
【0053】
しかしながら、光線L12,13は、第2フィルタ92については、図11の上側の図に示す状態とは異なり、位置P22,P23における透過率よりも大きい透過率の位置P22’,P23’を通過する。その結果、図11の下側の図に示す状態においても、中心点P1に関する対応面光源の光強度A’は最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B’,C’は互いに等しく且つ光強度A’よりも大きい。そして、図11の上側の図に示す状態と下側の図に示す状態とを比較すると、光強度Aと光強度A’とは等しく、光強度B,Cは光強度B’,C’よりも小さい。
【0054】
換言すると、図11の例では、第2フィルタ92をy方向に移動させて第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させることにより、中心点P1に関する対応面光源の光強度を変化させることなく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度を互いに同じ値だけ変化させることができる。さらに別の表現をすれば、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させることにより、第1フィルタ91および第2フィルタ92フィルタによる減光率を、中心点P1に関して変化させることなく、周辺点P2,P3に関して互いに同じ値だけ変化させることができる。
【0055】
図11の例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させているが、図12の例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置を変化させている。なお、説明を簡単にするために、図12の例においても、第1フィルタ91および第2フィルタ92は図11の例と同じ透過率分布を有するものとする。
【0056】
この場合、図12の上側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も小さい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91の位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13、および第2フィルタ92の位置P21における最小透過率よりも大きい透過率の位置P22,P23を通過する。
【0057】
その結果、図12の上側の図に示す状態では、中心点P1に関する対応面光源の光強度Aは最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは互いに等しく且つ光強度Aよりも大きい。次に、図12の上側の図に示す状態から第2フィルタ92が+z方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置が変化した状態、すなわち図12の下側の図に示す状態について考える。
【0058】
図12の下側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91に関する限り、図12の上側の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11を通過する。しかしながら、光線L11は、第2フィルタ92については、図12の上側の図に示す状態とは異なり、位置P21における透過率よりも大きい透過率の位置P21’を通過する。
【0059】
一方、面光源23の中心から周辺点P2に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図12の上側の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。しかしながら、光線L12は、第2フィルタ92については、図12の上側の図に示す状態とは異なり、位置P22における透過率よりも大きい透過率の位置P22’を通過する。一方、光線L13は、第2フィルタ92については、図12の上側の図に示す状態とは異なり、位置P23における透過率よりも小さい透過率の位置P23’を通過する。
【0060】
その結果、図12の下側の図に示す状態では、周辺点P2に関する対応面光源の光強度B’は最も大きく、中心点P1および周辺点P3に関する対応面光源の光強度A’,C’は光強度B’よりも小さい。そして、図12の上側の図に示す状態と下側の図に示す状態とを比較すると、光強度Aは光強度A’よりも小さく、光強度Bは光強度B’よりも小さく、光強度Cは光強度C’よりも大きい。
【0061】
換言すると、図12の例では、第2フィルタ92をz方向に移動させて第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置を変化させることにより、中心点P1および周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度を、互いに異なる値だけ変化させることができる。さらに別の表現をすれば、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置を変化させることにより、第1フィルタ91および第2フィルタ92フィルタによる減光率を、中心点P1、および周辺点P2,P3に関して互いに独立に変化させることができる。
【0062】
図11および図12の各例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とが互いに同じ透過率分布を有するが、図13の例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とがxz平面と平行な平面(光軸AXと直交する平面)に関して反転した透過率分布を有する。具体的に、第1フィルタ91は、その作用範囲において、図中破線の曲線で模式的に示すように、z=0において透過率が最も小さく且つz=0の位置からz方向に離れるにしたがって透過率が単調に増大する透過率分布を有する。
【0063】
第2フィルタ92は、その作用範囲において、図中破線の曲線で模式的に示すように、z=0において透過率が最も大きく且つz=0の位置からz方向に離れるにしたがって透過率が単調に減少する透過率分布を有する。簡単のために、各フィルタ91,92の作用範囲において、透過率分布はxy平面に関して対称であるものとする。また、第1フィルタ91の作用範囲において透過率がz方向に沿って増大する比率は、第2フィルタ92の作用範囲において透過率がz方向に沿って減少する比率よりも大きいものとする。
【0064】
この場合、図13の左側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も大きい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91の位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13、および第2フィルタ92の位置P21における最大透過率よりも小さい透過率の位置P22,P23を通過する。
【0065】
図13に関連する説明の理解を容易にするために、図13の左側の図に示す状態では、中心点P1に関する対応面光源の光強度Aが最も大きく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは互いに等しいものとする。次に、図13の左側の図に示す状態から第2フィルタ92が−y方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った間隔が減少した状態(y方向に沿った相対位置が変化した状態)、すなわち図13の中央の図に示す状態について考える。
【0066】
図13の中央の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、図13の左側の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も大きい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図13の左側の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。
【0067】
しかしながら、光線L12,13は、第2フィルタ92については、図13の左側の図に示す状態とは異なり、位置P22,P23における透過率よりも大きい透過率の位置P22’,P23’を通過する。図13の左側の図に示す状態と中央の図に示す状態とを比較すると、中心点P1に関する対応面光源の光強度Aと光強度A’とは等しく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは光強度B’,C’よりも小さい。その結果、図13の中央の図に示す状態では、フィルタ91,92の透過率分布および第2フィルタ92のy方向に沿った移動量を適宜設定すると、中心点P1に関する対応面光源の光強度A’と、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B’,C’とが互いに等しくなる状態が存在する。
【0068】
さらに、図13の中央の図に示す状態から第2フィルタ92が−y方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った間隔が減少した状態、すなわち図13の右側の図に示す状態について考える。図13の右側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、図13の左側の図および中央の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も大きい位置P21を通過する。
【0069】
一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図13の左側の図および中央の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。しかしながら、光線L12,13は、第2フィルタ92については、図13の左側の図および中央の図に示す状態とは異なり、位置P22’,P23’における透過率よりも大きい透過率の位置P22'',P23''を通過する。
【0070】
図13の中央の図に示す状態と右側の図に示す状態とを比較すると、中心点P1に関する対応面光源の光強度A’と光強度A''とは等しく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B’,C’は光強度B'',C''よりも小さい。その結果、図13の右側の図に示す状態では、中心点P1に関する対応面光源の光強度A''は最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B'',C''は互いに等しく且つ光強度A''よりも大きくなる。
【0071】
こうして、図13の例では、第2フィルタ92をy方向に移動させて第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させることにより、中心点P1に関する対応面光源の光強度を変化させることなく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度を、中心点P1に関する対応面光源の光強度を挟んで両側に、互いに同じ値だけ変化させることができる。
【0072】
なお、図11乃至図13に示す各例では、第1フィルタ91に形成された第1透過率分布、第2フィルタ92に形成された第2透過率分布、および第1フィルタ91と第2フィルタ92との相対位置の変化がそれぞれ限定的である。実際には、各フィルタ91,92の透過率分布、およびフィルタ91と92との相対位置の変化については、大きな自由度に基づいて様々な形態が可能である。その結果、フィルタ91と92との相対位置および第1フィルタ91への光の入射角度に応じて規定される補正ユニット9による減光率の変化についても、大きな自由度に基づいて様々な形態が可能である。
【0073】
以上のように、本実施形態の補正ユニット9は、第1透過率分布を有する第1フィルタ91と、その後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタ92とを備え、第1フィルタ91と第2フィルタ92との相対位置は変更可能である。そして、補正ユニット9は、第1フィルタ91と第2フィルタ92との相対位置の変化および第1フィルタ91への光の入射角度の変化に応じて第1フィルタ91および第2フィルタ92による減光率が変化するように構成されている。
【0074】
また、補正ユニット9は、照明瞳の近傍の位置、すなわち被照射面であるマスクM(またはウェハW)における光の位置情報が光の角度情報に変換される位置に配置されている。したがって、本実施形態の補正ユニット9は、静止露光領域ER内の各点(すなわち被照射面上の各点)に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整することができ、ひいては各点に関する瞳強度分布を互いにほぼ同じ性状の分布に調整することが可能である。
【0075】
また、本実施形態の照明光学系(2〜12)では、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する補正ユニット9と、各点に関する瞳強度分布を一律に調整する濃度フィルタ6との協働作用により、各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整することができる。したがって、本実施形態の露光装置(2〜WS)では、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点での瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する照明光学系(2〜12)を用いて、マスクMの微細パターンに応じた適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいてはマスクMの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハW上に忠実に転写することができる。
【0076】
本実施形態において、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する動作、さらに一般的には各点に関する瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整する動作は、例えば投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布を計測する瞳強度分布計測装置(不図示)の計測結果に基づいて行われる。瞳強度分布計測装置は、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された撮像面を有するCCD撮像部を備え、投影光学系PLの像面上の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光線が投影光学系PLの瞳面に形成する瞳強度分布)をモニターする。瞳強度分布計測装置の詳細な構成および作用については、米国特許公開第2008/0030707号公報などを参照することができる。
【0077】
具体的に、瞳強度分布計測装置の計測結果は、制御部(不図示)に供給される。制御部は、瞳強度分布計測装置の計測結果に基づいて、投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布が所望の分布になるように、補正ユニット9の駆動制御系99に指令を出力する。駆動制御系99は、制御部からの指令に基づいて第2基板92のZ方向位置を制御し、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を所要の分布に調整する。
【0078】
本実施形態において、ウェハ(被照射面)W上の光量分布が、例えば補正ユニット9の調整作用の影響を受けることが考えられる。この場合、必要に応じて、公知の構成を有する光量分布調整部の作用により、静止露光領域ER内の照度分布または静止露光領域(照明領域)ERの形状を変更することができる。具体的に、照度分布を変更する光量分布調整部としては、特開2001−313250号および特開2002−100561号(並びにそれらに対応する米国特許第6771350号および第6927836号)に記載された構成および手法を用いることができる。また、照明領域の形状を変更する光量分布調整部としては、国際特許公開第WO2005/048326号パンフレット(およびそれに対応する米国特許公開第2007/0014112号公報)に記載された構成および手法を用いることができる。
【0079】
なお、上述の実施形態では、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する補正ユニット9と、各点に関する瞳強度分布を一律に調整する濃度フィルタ6との協働作用により、各点に関する瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整している。しかしながら、場合によっては、濃度フィルタ6の設置を省略し、補正ユニット9の作用だけで各点に関する瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することも可能である。
【0080】
また、上述の実施形態では、図7および図8に示す特定の形態にしたがって、光軸AXに対して垂直に配置された平行平面板の形態を有する一対のフィルタ91および92により補正ユニット9を構成している。また、フィルタ91と92とを光軸AX方向、および光軸AXと直交するXZ平面の面内方向に沿って相対的に移動可能に構成している。しかしながら、これに限定されることなく、補正ユニット9の具体的な構成については、様々な形態が可能である。
【0081】
すなわち、補正ユニットを構成する各フィルタの形態(外形形状など)、各フィルタの姿勢、各フィルタの相対位置の変化の形態、各フィルタに形成される透過率分布の形態、透過率分布の形成面の位置(入射面または射出面)、補正ユニットの配置位置などについて、様々な形態が可能である。例えば、各フィルタの本体として、少なくとも一方の面が曲率を有するような光透過性の基板を用いることもできる。
【0082】
また、上述の実施形態では、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される瞳強度分布20の形成面よりも後側(マスク側)に、補正ユニット9を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、瞳強度分布20の形成面の位置、またはその前側(光源側)に、補正ユニット9を配置することもできる。また、マイクロフライアイレンズ8よりも後側の別の照明瞳の位置またはその近傍、例えば結像光学系12の前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとの間の照明瞳の位置またはその近傍に、補正ユニット9を配置することもできる。
【0083】
一般的に、照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する本発明の補正ユニットは、照明瞳の前側に隣接するパワーを有する光学素子と当該照明瞳の後側に隣接するパワーを有する光学素子との間の照明瞳空間に配置されて第1透過率分布を有する第1フィルタと、照明瞳空間において第1フィルタよりも後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備えている。そして、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置の変化および第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて第1フィルタおよび第2フィルタによる減光率が変化するように構成されている。なお、「照明瞳空間」内には、パワーを持たない平行平面板や平面鏡が存在していても良い。
【0084】
なお、上述の説明では、照明瞳に4極状の瞳強度分布が形成される変形照明、すなわち4極照明を例にとって、本発明の作用効果を説明している。しかしながら、4極照明に限定されることなく、例えば輪帯状の瞳強度分布が形成される輪帯照明、4極状以外の他の複数極状の瞳強度分布が形成される複数極照明などに対しても、同様に本発明を適用して同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
【0085】
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。なお、パターン面が横置きの場合であっても可変パターン形成装置を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。
【0086】
また、上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ8を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、ズームレンズ7の後側にその前側焦点位置がズームレンズ7の後側焦点位置と一致するように集光レンズを配置し、この集光レンズの後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端が照明視野絞り11の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の視野絞り結像光学系12内の、投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。ここで、ズームレンズ7、上記の集光レンズおよびロッド型インテグレータを分布形成光学系とみなすことができる。
【0087】
また、上述の実施形態において、回折光学素子3に代えて、或いは回折光学素子3に加えて、たとえばアレイ状に配列され且つ傾斜角および傾斜方向が個別に駆動制御される多数の微小な要素ミラーにより構成されて入射光束を反射面毎の微小単位に分割して偏向させることにより、光束の断面を所望の形状または所望の大きさに変換する空間光変調素子を用いても良い。このような空間光変調素子を用いた照明光学系は、例えば特開2002−353105号公報に開示されている。
【0088】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0089】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図14は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図14に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0090】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0091】
図15は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図15に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルター形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
【0092】
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0093】
ステップS52のカラーフィルター形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルターを形成する。
【0094】
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルターとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルターとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0095】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0096】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0097】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンフレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0098】
また、上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。
【0099】
また、上述の実施形態では、ウェハWのショット領域にマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、ウェハWの各露光領域にマスクMのパターンを一括露光する動作を繰り返すステップ・アンド・リピート方式の露光装置に対して本発明を適用することもできる。
【0100】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】照明瞳に形成される4極状の二次光源を示す図である。
【図3】ウェハ上に形成される矩形状の静止露光領域を示す図である。
【図4】静止露光領域内の中心点P1に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布の性状を説明する図である。
【図5】静止露光領域内の周辺点P2,P3に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布の性状を説明する図である。
【図6】(a)は中心点P1に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布を、(b)は周辺点P2,P3に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態の補正ユニットの構成を概略的に示す第1の図である。
【図8】本実施形態の補正ユニットの構成を概略的に示す第2の図である。
【図9】本実施形態の補正ユニットの基本的な作用を説明するための第1の図である。
【図10】本実施形態の補正ユニットの基本的な作用を説明するための第2の図である。
【図11】第1の例に基づいて本実施形態の補正ユニットの機能を説明する図である。
【図12】第2の例に基づいて本実施形態の補正ユニットの機能を説明する図である。
【図13】第3の例に基づいて本実施形態の補正ユニットの機能を説明する図である。
【図14】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図15】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 光源
3 回折光学素子
4 アフォーカルレンズ
6 濃度フィルタ
7 ズームレンズ
8 マイクロフライアイレンズ(オプティカルインテグレータ)
9 補正ユニット
91,92 フィルタ
99 駆動制御系
10 コンデンサー光学系
11 マスクブラインド
12 結像光学系
M マスク
MS マスクステージ
PL 投影光学系
AS 開口絞り
W ウェハ
WS ウェハステージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、例えば半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に好適な照明光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズを介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源(一般には照明瞳における所定の光強度分布)を形成する。以下、照明瞳での光強度分布を、「瞳強度分布」という。また、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0003】
二次光源からの光は、コンデンサーレンズにより集光された後、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクを透過した光は投影光学系を介してウェハ上に結像し、ウェハ上にはマスクパターンが投影露光(転写)される。マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
マスクの微細パターンをウェハ上に正確に転写するために、例えば輪帯状や複数極状(2極状、4極状など)の瞳強度分布を形成し、投影光学系の焦点深度や解像力を向上させる技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2006/0055834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスクの微細パターンをウェハ上に忠実に転写するには、瞳強度分布を所望の形状に調整するだけでなく、最終的な被照射面としてのウェハ上の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する必要がある。ウェハ上の各点での瞳強度分布の均一性にばらつきがあると、ウェハ上の位置毎にパターンの線幅がばらついて、マスクの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハ上に忠実に転写することができない。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することのできる照明光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整する照明光学系を用いて、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する補正ユニットであって、
前記照明瞳の前側に隣接してパワーを有する光学素子と前記照明瞳の後側に隣接してパワーを有する光学素子との間の照明瞳空間に配置されて、第1透過率分布を有する第1フィルタと、
前記照明瞳空間において前記第1フィルタよりも後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備え、
前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置の変化および前記第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて前記第1フィルタおよび前記第2フィルタによる減光率が変化するように構成されていることを特徴とする補正ユニットを提供する。
【0009】
本発明の第2形態では、光源からの光で被照射面を照明する照明光学系において、
オプティカルインテグレータを有し、該オプティカルインテグレータよりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系と、
前記後側の照明瞳を含む前記照明瞳空間に配置された第1形態の補正ユニットとを備えていることを特徴とする照明光学系を提供する。
【0010】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0011】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の照明光学系は、オプティカルインテグレータよりも後側の照明瞳を含む照明瞳空間に配置されて照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する補正ユニットを備えている。補正ユニットは、第1透過率分布を有する第1フィルタと、その後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備え、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置は変更可能である。また、補正ユニットは、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置の変化および第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて第1フィルタおよび第2フィルタによる減光率が変化するように構成されている。
【0013】
その結果、補正ユニットの作用により、被照射面上の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整することができる。したがって、本発明の照明光学系では、被照射面上の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する補正ユニットの作用により、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することができる。また、本発明の露光装置では、被照射面上の各点での瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整する照明光学系を用いて、適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの露光面(転写面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0015】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光束は、整形光学系2および輪帯照明用の回折光学素子3を介して、アフォーカルレンズ4に入射する。整形光学系2は、光源1からのほぼ平行な光束を所定の矩形状の断面を有するほぼ平行な光束に変換して回折光学素子3へ導く機能を有する。
【0016】
アフォーカルレンズ4は、その前側焦点位置と回折光学素子3の位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。回折光学素子3は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的に、輪帯照明用の回折光学素子3は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。
【0017】
したがって、回折光学素子3に入射したほぼ平行光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、輪帯状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。アフォーカルレンズ4の前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとの間の光路中において、その瞳位置またはその近傍には、濃度フィルタ6が配置されている。濃度フィルタ6は平行平面板の形態を有し、その光学面にはクロムや酸化クロム等からなる遮光性ドットの濃密パターンが形成されている。すなわち、濃度フィルタ6は、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する。濃度フィルタ6の具体的な作用は後述する。
【0018】
アフォーカルレンズ4を介した光は、σ値(σ値=照明光学系のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ7を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)8に入射する。マイクロフライアイレンズ8は、例えば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であって、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。
【0019】
マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。なお、マイクロフライアイレンズ8として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号公報に開示されている。
【0020】
所定面5の位置はズームレンズ7の前側焦点位置またはその近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ8の入射面はズームレンズ7の後側焦点位置またはその近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ7は、所定面5とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とマイクロフライアイレンズ8の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。
【0021】
したがって、マイクロフライアイレンズ8の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ7の焦点距離に依存して相似的に変化する。マイクロフライアイレンズ8における各微小レンズの入射面(すなわち単位波面分割面)は、例えばZ方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状であって、マスクM上において形成すべき照明領域の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。
【0022】
マイクロフライアイレンズ8に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の位置(ひいては照明瞳の位置)には、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源(瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、補正ユニット9が配置されている。補正ユニット9の構成および作用については後述する。
【0023】
また、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍には、必要に応じて、輪帯状の二次光源に対応した輪帯状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞り(不図示)が配置されている。照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
【0024】
マイクロフライアイレンズ8および補正ユニット9を経た光は、コンデンサー光学系10を介して、マスクブラインド11を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド11には、マイクロフライアイレンズ8の微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド11の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとからなる結像光学系12を介して、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系12は、マスクブラインド11の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0025】
マスクステージMS上に保持されたマスクMには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。マスクMのパターン領域を透過した光は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。すなわち、マスクM上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上においてもY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域(実効露光領域)にパターン像が形成される。
【0026】
こうして、いわゆるステップ・アンド・スキャン方式にしたがって、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内において、X方向(走査方向)に沿ってマスクステージMSとウェハステージWSとを、ひいてはマスクMとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には静止露光領域のY方向寸法に等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有するショット領域(露光領域)に対してマスクパターンが走査露光される。
【0027】
本実施形態では、上述したように、マイクロフライアイレンズ8により形成される二次光源を光源として、照明光学系(2〜12)の被照射面に配置されるマスクMをケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系(2〜12)の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。
【0028】
なお、瞳強度分布とは、照明光学系(2〜12)の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。マイクロフライアイレンズ8による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ8の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。図1の構成において、回折光学素子3、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ7、およびマイクロフライアイレンズ8は、マイクロフライアイレンズ8よりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
【0029】
輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、複数極照明(2極照明、4極照明、8極照明など)用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、複数極照明を行うことができる。複数極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに複数極状(2極状、4極状、8極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、複数極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした複数の所定形状(円弧状、円形状など)の照野からなる複数極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ複数極状の二次光源が形成される。
【0030】
また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、円形照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、通常の円形照明を行うことができる。円形照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに円形状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、円形照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ8の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍にも、その入射面に形成された照野と同じ円形状の二次光源が形成される。また、輪帯照明用の回折光学素子3に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。回折光学素子3の切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。
【0031】
以下の説明では、本実施形態の作用効果の理解を容易にするために、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、図2に示すような4つの円弧状の実質的な面光源(以下、単に「面光源」という)20a,20b,20cおよび20dからなる4極状の瞳強度分布(二次光源)20が形成されるものとする。また、補正ユニット9は、4極状の瞳強度分布20の形成面よりも後側(マスク側)に配置されているものとする。また、以下の説明において単に「照明瞳」という場合には、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳を指すものとする。
【0032】
図2を参照すると、照明瞳に形成される4極状の瞳強度分布20は、光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源20aおよび20bと、光軸AXを挟んでZ方向に間隔を隔てた一対の面光源20cおよび20dとを有する。なお、照明瞳におけるX方向はマイクロフライアイレンズ8の矩形状の微小レンズの短辺方向(矩形状の単位波面分割面の短辺方向)であって、ウェハWの走査方向に対応している。また、照明瞳におけるZ方向は、マイクロフライアイレンズ8の矩形状の微小レンズの長辺方向(単位波面分割面の長辺方向)であって、ウェハWの走査方向と直交する走査直交方向(ウェハW上におけるY方向)に対応している。
【0033】
ウェハW上には、図3に示すように、Y方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域ERが形成され、この静止露光領域ERに対応するように、マスクM上には矩形状の照明領域(不図示)が形成される。ここで、静止露光領域ER内の1点に入射する光が照明瞳に形成する4極状の瞳強度分布は、入射点の位置に依存することなく、互いにほぼ同じ形状を有する。しかしながら、4極状の瞳強度分布を構成する各面光源の光強度は、入射点の位置に依存して異なる場合がある。
【0034】
具体的には、図4に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布21の場合、Z方向に間隔を隔てた面光源21cおよび21dの光強度の方が、X方向に間隔を隔てた面光源21aおよび21bの光強度よりも大きくなる傾向がある。一方、図5に示すように、静止露光領域ER内の中心点P1からY方向に間隔を隔てた周辺の点P2,P3に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布22の場合、Z方向に間隔を隔てた面光源22cおよび22dの光強度の方が、X方向に間隔を隔てた面光源22aおよび22bの光強度よりも小さくなる傾向がある。
【0035】
一般に、照明瞳に形成される瞳強度分布の外形形状にかかわらず、ウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に関する瞳強度分布(中心点P1に入射する光が照明瞳に形成する瞳強度分布)のZ方向に沿った光強度分布は、図6(a)に示すように、中央において最も小さく周辺に向かって増大する凹曲線状の分布を有する。一方、ウェハW上の静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布は、図6(b)に示すように、中央において最も大きく周辺に向かって減少する凸曲線状の分布を有する。
【0036】
そして、瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布は、静止露光領域ER内のX方向(走査方向)に沿った入射点の位置にはあまり依存しないが、静止露光領域ER内のY方向(走査直交方向)に沿った入射点の位置に依存して変化する傾向がある。このように、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が照明瞳に形成する瞳強度分布)がそれぞれほぼ均一でない場合、ウェハW上の位置毎にパターンの線幅がばらついて、マスクMの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハW上に忠実に転写することができない。
【0037】
本実施形態では、上述したように、アフォーカルレンズ4の瞳位置またはその近傍に、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する濃度フィルタ6が配置されている。また、アフォーカルレンズ4の瞳位置は、その後側レンズ群4bとズームレンズ7とにより、マイクロフライアイレンズ8の入射面と光学的に共役である。したがって、濃度フィルタ6の作用により、マイクロフライアイレンズ8の入射面に形成される光強度分布が調整(補正)され、ひいてはマイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される瞳強度分布も調整される。
【0038】
ただし、濃度フィルタ6は、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を、各点の位置に依存することなく一律に調整する。その結果、濃度フィルタ6の作用により、例えば中心点P1に関する4極状の瞳強度分布21がほぼ均一になるように、ひいては各面光源21a〜21dの光強度が互いにほぼ等しくなるように調整することはできるが、その場合には周辺点P2、P3に関する4極状の瞳強度分布22の面光源22a,22bと面光源22c,22dとの光強度の差は却って大きくなってしまう。
【0039】
すなわち、濃度フィルタ6の作用により、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整するには、濃度フィルタ6とは別の手段により、各点に関する瞳強度分布を互いに同じ性状の分布に調整する必要がある。具体的に、図4および図を参照して説明した例では、例えば中心点P1に関する瞳強度分布21および周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22において、面光源21a,21bと面光源21c,21dとの光強度の大小関係と面光源22a,22bと面光源22c,22dとの光強度の大小関係とをほぼ同じ比率で一致させる必要がある。
【0040】
そこで、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を互いに同じ性状の分布に調整するための調整手段として、一般的には各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整するための調整手段として、本実施形態の補正ユニット9を備えている。補正ユニット9は、図7および図8に示すように、光軸AX(Y方向に対応)に沿って配置された一対のフィルタ91および92を備えている。各フィルタ91,92の本体は、例えば石英または蛍石のような光学材料により形成された平行平面板の形態を有する。
【0041】
各フィルタ91,92の表面(光の入射側の面、射出側の面、または双方の面)には、位置により厚さの異なる減光性の薄膜、例えばクロムや酸化クロムからなる薄膜が形成されている。あるいは、各フィルタ91,92の表面には、例えばクロムや酸化クロム等からなる微小な遮光性ドットの濃密パターンが形成されている。すなわち、各フィルタ91,92は、上述した濃度フィルタ6と同様に、光の入射位置に応じて透過率の異なる透過率分布を有する。
【0042】
第1フィルタ91は、例えば光軸AXを中心とする円形状の外形形状を有し、その入射面91aが光軸AXと直交するような姿勢で固定的に位置決めされている。第2フィルタ92は、第1フィルタ91の後側(マスク側)に配置されて、例えば光軸AXを中心とする円形状の外形形状を有する。また、第2フィルタ92は、その入射面92aが光軸AXと直交する姿勢を維持しつつ、X方向、Y方向およびZ方向に沿って移動可能に構成されている。換言すれば、第1フィルタ91と第2フィルタ92とは、光軸AX方向、および光軸AXと直交するXZ平面の面内方向に沿って相対的に移動可能に構成されている。
【0043】
補正ユニット9では、駆動制御系99からの指令に基づき、第2フィルタ92がX方向、Y方向およびZ方向に沿って移動する。なお、第2フィルタ92を固定的に位置決めし、且つ第1フィルタ91をX方向、Y方向およびZ方向に沿って移動可能に構成しても良い。あるいは、フィルタ91および92の双方を、X方向、Y方向およびZ方向に沿って移動可能に構成しても良い。補正ユニット9は、一例として、4極状の瞳強度分布20において光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の面光源20aおよび20bからの光に作用するように、あるいは光軸AXを挟んでZ方向に間隔を隔てた一対の面光源20cおよび20dからの光に作用するように構成されている。一般には、補正ユニット9は、4極状の瞳強度分布20の全部または一部からの光に作用するように構成されている。
【0044】
ここで、図9を参照すると、ウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に達する光、すなわちマスクブラインド11の開口部の中心点P1’に達する光は、補正ユニット9に対して(すなわち第1フィルタ91に対して)入射角度0で入射する。換言すれば、中心点P1に関する瞳強度分布21からの光は、入射角度0で第1フィルタ91に入射する。なお、図9では、瞳強度分布21のうちの面光源21c,21dからの光が入射角度0で補正ユニット9に入射する様子が示されているが、面光源21a,21bからの光も同様に入射角度0で補正ユニット9に入射する。
【0045】
一方、図10に示すように、ウェハW上の静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に達する光、すなわちマスクブラインド11の開口部の周辺点P2’,P3’に達する光は、補正ユニット9に対して比較的大きい入射角度±θで入射する。換言すれば、周辺点P2,P3に関する瞳強度分布22からの光は、比較的大きい入射角度±θで第1フィルタ91に入射する。なお、図10では、瞳強度分布22のうちの面光源22c,22dからの光が入射角度±θで補正ユニット9に入射する様子が示されているが、面光源22a,22bからの光も同様に比較的大きい入射角度±θ’で補正ユニット9に入射する。
【0046】
なお、図9および図10において、参照符号B1は面光源20a(21a,22a)のX方向に沿った最外縁の点(図2などを参照)を示し、参照符号B2は面光源20b(21b,22b)のX方向に沿った最外縁の点を示している。また、面光源20c(21c,22c)のZ方向に沿った最外縁の点を参照符号B3で示し、面光源20d(21d,22d)のZ方向に沿った最外縁の点を参照符号B4で示している。
【0047】
以下、図11乃至図13に示す単純な例を参照して、本実施形態にかかる補正ユニット9の作用、すなわち静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する機能を説明する。なお、図11乃至図13では、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される任意形状の瞳強度分布の一部、例えば4極状の瞳強度分布を構成する1つの面光源23からの光に着目して、一対のフィルタ91,92を有する補正ユニット9の作用を説明する。
【0048】
図11乃至図13では、全体座標(X,Y,Z)に対応する局部座標(x,y,z)を導入し、面光源23の中心を通り全体座標のY軸と平行な方向にy軸を、全体座標のX軸と平行な方向にx軸を、全体座標のZ軸と平行な方向にz軸を設定している。また、説明の理解を容易にするために、図11乃至図13に示す各例では、各フィルタ91,92とがz方向に沿って一次元的に変化する透過率分布を有するものとする。
【0049】
図11の例では、第1フィルタ91と第2フィルタ92とが、互いに同じ透過率分布を有する。具体的に、各フィルタ91,92は、面光源23に作用する範囲(以下、「作用範囲」という)において、図中破線の曲線で模式的に示すように、z=0において透過率が最も小さく且つz=0の位置からz方向に離れるにしたがって透過率が単調に増大する透過率分布を有する。簡単のために、各フィルタ91,92の作用範囲において、透過率分布はxy平面に関して対称であるものとする。
【0050】
この場合、図11の上側の図において、面光源23の中心からウェハW上の静止露光領域ER内の中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も小さい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から静止露光領域ER内の周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91の位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13、および第2フィルタ92の位置P21における最小透過率よりも大きい透過率の位置P22,P23を通過する。
【0051】
その結果、図11の上側の図に示す状態では、中心点P1に関する瞳強度分布において面光源23に対応する面光源(以下、「対応面光源」という)の光強度Aは最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは互いに等しく且つ光強度Aよりも大きい。次に、図11の上側の図に示す状態から第2フィルタ92が+y方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った間隔が増大した状態(y方向に沿った相対位置が変化した状態)、すなわち図11の下側の図に示す状態について考える。
【0052】
図11の下側の図では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、図11の上側の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も小さい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図11の上側の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。
【0053】
しかしながら、光線L12,13は、第2フィルタ92については、図11の上側の図に示す状態とは異なり、位置P22,P23における透過率よりも大きい透過率の位置P22’,P23’を通過する。その結果、図11の下側の図に示す状態においても、中心点P1に関する対応面光源の光強度A’は最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B’,C’は互いに等しく且つ光強度A’よりも大きい。そして、図11の上側の図に示す状態と下側の図に示す状態とを比較すると、光強度Aと光強度A’とは等しく、光強度B,Cは光強度B’,C’よりも小さい。
【0054】
換言すると、図11の例では、第2フィルタ92をy方向に移動させて第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させることにより、中心点P1に関する対応面光源の光強度を変化させることなく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度を互いに同じ値だけ変化させることができる。さらに別の表現をすれば、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させることにより、第1フィルタ91および第2フィルタ92フィルタによる減光率を、中心点P1に関して変化させることなく、周辺点P2,P3に関して互いに同じ値だけ変化させることができる。
【0055】
図11の例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させているが、図12の例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置を変化させている。なお、説明を簡単にするために、図12の例においても、第1フィルタ91および第2フィルタ92は図11の例と同じ透過率分布を有するものとする。
【0056】
この場合、図12の上側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も小さい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91の位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13、および第2フィルタ92の位置P21における最小透過率よりも大きい透過率の位置P22,P23を通過する。
【0057】
その結果、図12の上側の図に示す状態では、中心点P1に関する対応面光源の光強度Aは最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは互いに等しく且つ光強度Aよりも大きい。次に、図12の上側の図に示す状態から第2フィルタ92が+z方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置が変化した状態、すなわち図12の下側の図に示す状態について考える。
【0058】
図12の下側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91に関する限り、図12の上側の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11を通過する。しかしながら、光線L11は、第2フィルタ92については、図12の上側の図に示す状態とは異なり、位置P21における透過率よりも大きい透過率の位置P21’を通過する。
【0059】
一方、面光源23の中心から周辺点P2に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図12の上側の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。しかしながら、光線L12は、第2フィルタ92については、図12の上側の図に示す状態とは異なり、位置P22における透過率よりも大きい透過率の位置P22’を通過する。一方、光線L13は、第2フィルタ92については、図12の上側の図に示す状態とは異なり、位置P23における透過率よりも小さい透過率の位置P23’を通過する。
【0060】
その結果、図12の下側の図に示す状態では、周辺点P2に関する対応面光源の光強度B’は最も大きく、中心点P1および周辺点P3に関する対応面光源の光強度A’,C’は光強度B’よりも小さい。そして、図12の上側の図に示す状態と下側の図に示す状態とを比較すると、光強度Aは光強度A’よりも小さく、光強度Bは光強度B’よりも小さく、光強度Cは光強度C’よりも大きい。
【0061】
換言すると、図12の例では、第2フィルタ92をz方向に移動させて第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置を変化させることにより、中心点P1および周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度を、互いに異なる値だけ変化させることができる。さらに別の表現をすれば、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのz方向に沿った相対位置を変化させることにより、第1フィルタ91および第2フィルタ92フィルタによる減光率を、中心点P1、および周辺点P2,P3に関して互いに独立に変化させることができる。
【0062】
図11および図12の各例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とが互いに同じ透過率分布を有するが、図13の例では第1フィルタ91と第2フィルタ92とがxz平面と平行な平面(光軸AXと直交する平面)に関して反転した透過率分布を有する。具体的に、第1フィルタ91は、その作用範囲において、図中破線の曲線で模式的に示すように、z=0において透過率が最も小さく且つz=0の位置からz方向に離れるにしたがって透過率が単調に増大する透過率分布を有する。
【0063】
第2フィルタ92は、その作用範囲において、図中破線の曲線で模式的に示すように、z=0において透過率が最も大きく且つz=0の位置からz方向に離れるにしたがって透過率が単調に減少する透過率分布を有する。簡単のために、各フィルタ91,92の作用範囲において、透過率分布はxy平面に関して対称であるものとする。また、第1フィルタ91の作用範囲において透過率がz方向に沿って増大する比率は、第2フィルタ92の作用範囲において透過率がz方向に沿って減少する比率よりも大きいものとする。
【0064】
この場合、図13の左側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も大きい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91の位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13、および第2フィルタ92の位置P21における最大透過率よりも小さい透過率の位置P22,P23を通過する。
【0065】
図13に関連する説明の理解を容易にするために、図13の左側の図に示す状態では、中心点P1に関する対応面光源の光強度Aが最も大きく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは互いに等しいものとする。次に、図13の左側の図に示す状態から第2フィルタ92が−y方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った間隔が減少した状態(y方向に沿った相対位置が変化した状態)、すなわち図13の中央の図に示す状態について考える。
【0066】
図13の中央の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、図13の左側の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も大きい位置P21を通過する。一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図13の左側の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。
【0067】
しかしながら、光線L12,13は、第2フィルタ92については、図13の左側の図に示す状態とは異なり、位置P22,P23における透過率よりも大きい透過率の位置P22’,P23’を通過する。図13の左側の図に示す状態と中央の図に示す状態とを比較すると、中心点P1に関する対応面光源の光強度Aと光強度A’とは等しく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B,Cは光強度B’,C’よりも小さい。その結果、図13の中央の図に示す状態では、フィルタ91,92の透過率分布および第2フィルタ92のy方向に沿った移動量を適宜設定すると、中心点P1に関する対応面光源の光強度A’と、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B’,C’とが互いに等しくなる状態が存在する。
【0068】
さらに、図13の中央の図に示す状態から第2フィルタ92が−y方向に移動して、第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った間隔が減少した状態、すなわち図13の右側の図に示す状態について考える。図13の右側の図に示す状態では、面光源23の中心から中心点P1に向かう光線L11は、図13の左側の図および中央の図に示す状態と同様に、第1フィルタ91の透過率の最も小さい位置P11、および第2フィルタ92の透過率の最も大きい位置P21を通過する。
【0069】
一方、面光源23の中心から周辺点P2,P3に向かう光線L12,13は、第1フィルタ91に関する限り、図13の左側の図および中央の図に示す状態と同様に、位置P11における最小透過率よりも大きい透過率の位置P12,P13を通過する。しかしながら、光線L12,13は、第2フィルタ92については、図13の左側の図および中央の図に示す状態とは異なり、位置P22’,P23’における透過率よりも大きい透過率の位置P22'',P23''を通過する。
【0070】
図13の中央の図に示す状態と右側の図に示す状態とを比較すると、中心点P1に関する対応面光源の光強度A’と光強度A''とは等しく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B’,C’は光強度B'',C''よりも小さい。その結果、図13の右側の図に示す状態では、中心点P1に関する対応面光源の光強度A''は最も小さく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度B'',C''は互いに等しく且つ光強度A''よりも大きくなる。
【0071】
こうして、図13の例では、第2フィルタ92をy方向に移動させて第1フィルタ91と第2フィルタ92とのy方向に沿った相対位置を変化させることにより、中心点P1に関する対応面光源の光強度を変化させることなく、周辺点P2,P3に関する対応面光源の光強度を、中心点P1に関する対応面光源の光強度を挟んで両側に、互いに同じ値だけ変化させることができる。
【0072】
なお、図11乃至図13に示す各例では、第1フィルタ91に形成された第1透過率分布、第2フィルタ92に形成された第2透過率分布、および第1フィルタ91と第2フィルタ92との相対位置の変化がそれぞれ限定的である。実際には、各フィルタ91,92の透過率分布、およびフィルタ91と92との相対位置の変化については、大きな自由度に基づいて様々な形態が可能である。その結果、フィルタ91と92との相対位置および第1フィルタ91への光の入射角度に応じて規定される補正ユニット9による減光率の変化についても、大きな自由度に基づいて様々な形態が可能である。
【0073】
以上のように、本実施形態の補正ユニット9は、第1透過率分布を有する第1フィルタ91と、その後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタ92とを備え、第1フィルタ91と第2フィルタ92との相対位置は変更可能である。そして、補正ユニット9は、第1フィルタ91と第2フィルタ92との相対位置の変化および第1フィルタ91への光の入射角度の変化に応じて第1フィルタ91および第2フィルタ92による減光率が変化するように構成されている。
【0074】
また、補正ユニット9は、照明瞳の近傍の位置、すなわち被照射面であるマスクM(またはウェハW)における光の位置情報が光の角度情報に変換される位置に配置されている。したがって、本実施形態の補正ユニット9は、静止露光領域ER内の各点(すなわち被照射面上の各点)に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整することができ、ひいては各点に関する瞳強度分布を互いにほぼ同じ性状の分布に調整することが可能である。
【0075】
また、本実施形態の照明光学系(2〜12)では、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する補正ユニット9と、各点に関する瞳強度分布を一律に調整する濃度フィルタ6との協働作用により、各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整することができる。したがって、本実施形態の露光装置(2〜WS)では、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点での瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する照明光学系(2〜12)を用いて、マスクMの微細パターンに応じた適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいてはマスクMの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハW上に忠実に転写することができる。
【0076】
本実施形態において、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれほぼ均一に調整する動作、さらに一般的には各点に関する瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整する動作は、例えば投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布を計測する瞳強度分布計測装置(不図示)の計測結果に基づいて行われる。瞳強度分布計測装置は、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された撮像面を有するCCD撮像部を備え、投影光学系PLの像面上の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光線が投影光学系PLの瞳面に形成する瞳強度分布)をモニターする。瞳強度分布計測装置の詳細な構成および作用については、米国特許公開第2008/0030707号公報などを参照することができる。
【0077】
具体的に、瞳強度分布計測装置の計測結果は、制御部(不図示)に供給される。制御部は、瞳強度分布計測装置の計測結果に基づいて、投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布が所望の分布になるように、補正ユニット9の駆動制御系99に指令を出力する。駆動制御系99は、制御部からの指令に基づいて第2基板92のZ方向位置を制御し、ウェハW上の静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布を所要の分布に調整する。
【0078】
本実施形態において、ウェハ(被照射面)W上の光量分布が、例えば補正ユニット9の調整作用の影響を受けることが考えられる。この場合、必要に応じて、公知の構成を有する光量分布調整部の作用により、静止露光領域ER内の照度分布または静止露光領域(照明領域)ERの形状を変更することができる。具体的に、照度分布を変更する光量分布調整部としては、特開2001−313250号および特開2002−100561号(並びにそれらに対応する米国特許第6771350号および第6927836号)に記載された構成および手法を用いることができる。また、照明領域の形状を変更する光量分布調整部としては、国際特許公開第WO2005/048326号パンフレット(およびそれに対応する米国特許公開第2007/0014112号公報)に記載された構成および手法を用いることができる。
【0079】
なお、上述の実施形態では、静止露光領域ER内の各点に関する瞳強度分布をそれぞれ独立的に調整する補正ユニット9と、各点に関する瞳強度分布を一律に調整する濃度フィルタ6との協働作用により、各点に関する瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整している。しかしながら、場合によっては、濃度フィルタ6の設置を省略し、補正ユニット9の作用だけで各点に関する瞳強度分布をそれぞれ所要の分布に調整することも可能である。
【0080】
また、上述の実施形態では、図7および図8に示す特定の形態にしたがって、光軸AXに対して垂直に配置された平行平面板の形態を有する一対のフィルタ91および92により補正ユニット9を構成している。また、フィルタ91と92とを光軸AX方向、および光軸AXと直交するXZ平面の面内方向に沿って相対的に移動可能に構成している。しかしながら、これに限定されることなく、補正ユニット9の具体的な構成については、様々な形態が可能である。
【0081】
すなわち、補正ユニットを構成する各フィルタの形態(外形形状など)、各フィルタの姿勢、各フィルタの相対位置の変化の形態、各フィルタに形成される透過率分布の形態、透過率分布の形成面の位置(入射面または射出面)、補正ユニットの配置位置などについて、様々な形態が可能である。例えば、各フィルタの本体として、少なくとも一方の面が曲率を有するような光透過性の基板を用いることもできる。
【0082】
また、上述の実施形態では、マイクロフライアイレンズ8の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に形成される瞳強度分布20の形成面よりも後側(マスク側)に、補正ユニット9を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、瞳強度分布20の形成面の位置、またはその前側(光源側)に、補正ユニット9を配置することもできる。また、マイクロフライアイレンズ8よりも後側の別の照明瞳の位置またはその近傍、例えば結像光学系12の前側レンズ群12aと後側レンズ群12bとの間の照明瞳の位置またはその近傍に、補正ユニット9を配置することもできる。
【0083】
一般的に、照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する本発明の補正ユニットは、照明瞳の前側に隣接するパワーを有する光学素子と当該照明瞳の後側に隣接するパワーを有する光学素子との間の照明瞳空間に配置されて第1透過率分布を有する第1フィルタと、照明瞳空間において第1フィルタよりも後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備えている。そして、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、第1フィルタと第2フィルタとの相対位置の変化および第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて第1フィルタおよび第2フィルタによる減光率が変化するように構成されている。なお、「照明瞳空間」内には、パワーを持たない平行平面板や平面鏡が存在していても良い。
【0084】
なお、上述の説明では、照明瞳に4極状の瞳強度分布が形成される変形照明、すなわち4極照明を例にとって、本発明の作用効果を説明している。しかしながら、4極照明に限定されることなく、例えば輪帯状の瞳強度分布が形成される輪帯照明、4極状以外の他の複数極状の瞳強度分布が形成される複数極照明などに対しても、同様に本発明を適用して同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
【0085】
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。なお、パターン面が横置きの場合であっても可変パターン形成装置を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。
【0086】
また、上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ8を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、ズームレンズ7の後側にその前側焦点位置がズームレンズ7の後側焦点位置と一致するように集光レンズを配置し、この集光レンズの後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端が照明視野絞り11の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の視野絞り結像光学系12内の、投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。ここで、ズームレンズ7、上記の集光レンズおよびロッド型インテグレータを分布形成光学系とみなすことができる。
【0087】
また、上述の実施形態において、回折光学素子3に代えて、或いは回折光学素子3に加えて、たとえばアレイ状に配列され且つ傾斜角および傾斜方向が個別に駆動制御される多数の微小な要素ミラーにより構成されて入射光束を反射面毎の微小単位に分割して偏向させることにより、光束の断面を所望の形状または所望の大きさに変換する空間光変調素子を用いても良い。このような空間光変調素子を用いた照明光学系は、例えば特開2002−353105号公報に開示されている。
【0088】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0089】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図14は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図14に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0090】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0091】
図15は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図15に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルター形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。
【0092】
ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0093】
ステップS52のカラーフィルター形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルターを形成する。
【0094】
ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルターとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルターとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0095】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0096】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0097】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンフレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0098】
また、上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。
【0099】
また、上述の実施形態では、ウェハWのショット領域にマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、ウェハWの各露光領域にマスクMのパターンを一括露光する動作を繰り返すステップ・アンド・リピート方式の露光装置に対して本発明を適用することもできる。
【0100】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】照明瞳に形成される4極状の二次光源を示す図である。
【図3】ウェハ上に形成される矩形状の静止露光領域を示す図である。
【図4】静止露光領域内の中心点P1に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布の性状を説明する図である。
【図5】静止露光領域内の周辺点P2,P3に入射する光が形成する4極状の瞳強度分布の性状を説明する図である。
【図6】(a)は中心点P1に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布を、(b)は周辺点P2,P3に関する瞳強度分布のZ方向に沿った光強度分布を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態の補正ユニットの構成を概略的に示す第1の図である。
【図8】本実施形態の補正ユニットの構成を概略的に示す第2の図である。
【図9】本実施形態の補正ユニットの基本的な作用を説明するための第1の図である。
【図10】本実施形態の補正ユニットの基本的な作用を説明するための第2の図である。
【図11】第1の例に基づいて本実施形態の補正ユニットの機能を説明する図である。
【図12】第2の例に基づいて本実施形態の補正ユニットの機能を説明する図である。
【図13】第3の例に基づいて本実施形態の補正ユニットの機能を説明する図である。
【図14】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図15】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 光源
3 回折光学素子
4 アフォーカルレンズ
6 濃度フィルタ
7 ズームレンズ
8 マイクロフライアイレンズ(オプティカルインテグレータ)
9 補正ユニット
91,92 フィルタ
99 駆動制御系
10 コンデンサー光学系
11 マスクブラインド
12 結像光学系
M マスク
MS マスクステージ
PL 投影光学系
AS 開口絞り
W ウェハ
WS ウェハステージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する補正ユニットであって、
前記照明瞳の前側に隣接してパワーを有する光学素子と前記照明瞳の後側に隣接してパワーを有する光学素子との間の照明瞳空間に配置されて、第1透過率分布を有する第1フィルタと、
前記照明瞳空間において前記第1フィルタよりも後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備え、
前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置の変化および前記第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて前記第1フィルタおよび前記第2フィルタによる減光率が変化するように構成されていることを特徴とする補正ユニット。
【請求項2】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、前記照明光学系の光軸の方向に沿って相対的に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の補正ユニット。
【請求項3】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、前記照明光学系の光軸と直交する平面の面内方向に沿って相対的に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の補正ユニット。
【請求項4】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、平行平面板の形態を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の補正ユニット。
【請求項5】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、互いに平行な状態を維持することを特徴とする請求項4に記載の補正ユニット。
【請求項6】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、互いに同じ透過率分布を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の補正ユニット。
【請求項7】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、前記照明光学系の光軸と直交する平面に関して反転した透過率分布を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の補正ユニット。
【請求項8】
光源からの光で被照射面を照明する照明光学系において、
オプティカルインテグレータを有し、該オプティカルインテグレータよりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系と、
前記後側の照明瞳を含む前記照明瞳空間に配置された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の補正ユニットとを備えていることを特徴とする照明光学系。
【請求項9】
前記オプティカルインテグレータは所定方向に沿って細長い矩形状の単位波面分割面を有し、
前記補正ユニットは、前記照明瞳において前記照明光学系の光軸を挟んで前記所定方向に間隔を隔てた一対の領域に関する光または前記所定方向と直交する方向に間隔を隔てた一対の領域に関する光に作用するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の照明光学系。
【請求項10】
前記被照射面上での照度分布または前記被照射面上に形成される照明領域の形状を変更する光量分布調整部をさらに備えることを特徴とする請求項8または9に記載の照明光学系。
【請求項11】
前記光量分布調整部は、前記補正ユニットによる前記被照射面上の光量分布への影響を補正することを特徴とする請求項10に記載の照明光学系。
【請求項12】
前記被照射面と光学的に共役な面を形成する投影光学系と組み合わせて用いられ、前記照明瞳は前記投影光学系の開口絞りと光学的に共役な位置であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項13】
前記分布形成光学系は、前記オプティカルインテグレータに隣接する照明瞳に前記瞳強度分布を形成し、
前記補正ユニットは前記隣接する照明瞳に配置されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項14】
前記分布形成光学系は、前記オプティカルインテグレータからの光を導いて前記後側の照明瞳に瞳強度分布を形成するリレー光学系を備え、
前記補正ユニットは、前記後側の照明瞳を含む前記照明瞳空間に配置されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項15】
前記リレー光学系は、前記オプティカルインテグレータに隣接する照明瞳と光学的に共役な位置を前記後側の照明瞳に形成することを特徴とする請求項14に記載の照明光学系。
【請求項16】
所定のパターンを照明するための請求項8乃至15のいずれか1項に記載の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項17】
前記所定のパターンの像を前記感光性基板上に形成する投影光学系を備え、該投影光学系に対して前記所定のパターンおよび前記感光性基板を走査方向に沿って相対移動させて、前記所定のパターンを前記感光性基板へ投影露光することを特徴とする請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記オプティカルインテグレータにおける前記所定方向は、前記走査方向と直交する方向に対応していることを特徴とする請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれか1項に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項1】
照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を補正する補正ユニットであって、
前記照明瞳の前側に隣接してパワーを有する光学素子と前記照明瞳の後側に隣接してパワーを有する光学素子との間の照明瞳空間に配置されて、第1透過率分布を有する第1フィルタと、
前記照明瞳空間において前記第1フィルタよりも後側に配置されて第2透過率分布を有する第2フィルタとを備え、
前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置は変更可能であり、前記第1フィルタと前記第2フィルタとの相対位置の変化および前記第1フィルタへの光の入射角度の変化に応じて前記第1フィルタおよび前記第2フィルタによる減光率が変化するように構成されていることを特徴とする補正ユニット。
【請求項2】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、前記照明光学系の光軸の方向に沿って相対的に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の補正ユニット。
【請求項3】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、前記照明光学系の光軸と直交する平面の面内方向に沿って相対的に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の補正ユニット。
【請求項4】
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、平行平面板の形態を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の補正ユニット。
【請求項5】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、互いに平行な状態を維持することを特徴とする請求項4に記載の補正ユニット。
【請求項6】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、互いに同じ透過率分布を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の補正ユニット。
【請求項7】
前記第1フィルタと前記第2フィルタとは、前記照明光学系の光軸と直交する平面に関して反転した透過率分布を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の補正ユニット。
【請求項8】
光源からの光で被照射面を照明する照明光学系において、
オプティカルインテグレータを有し、該オプティカルインテグレータよりも後側の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系と、
前記後側の照明瞳を含む前記照明瞳空間に配置された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の補正ユニットとを備えていることを特徴とする照明光学系。
【請求項9】
前記オプティカルインテグレータは所定方向に沿って細長い矩形状の単位波面分割面を有し、
前記補正ユニットは、前記照明瞳において前記照明光学系の光軸を挟んで前記所定方向に間隔を隔てた一対の領域に関する光または前記所定方向と直交する方向に間隔を隔てた一対の領域に関する光に作用するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の照明光学系。
【請求項10】
前記被照射面上での照度分布または前記被照射面上に形成される照明領域の形状を変更する光量分布調整部をさらに備えることを特徴とする請求項8または9に記載の照明光学系。
【請求項11】
前記光量分布調整部は、前記補正ユニットによる前記被照射面上の光量分布への影響を補正することを特徴とする請求項10に記載の照明光学系。
【請求項12】
前記被照射面と光学的に共役な面を形成する投影光学系と組み合わせて用いられ、前記照明瞳は前記投影光学系の開口絞りと光学的に共役な位置であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項13】
前記分布形成光学系は、前記オプティカルインテグレータに隣接する照明瞳に前記瞳強度分布を形成し、
前記補正ユニットは前記隣接する照明瞳に配置されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項14】
前記分布形成光学系は、前記オプティカルインテグレータからの光を導いて前記後側の照明瞳に瞳強度分布を形成するリレー光学系を備え、
前記補正ユニットは、前記後側の照明瞳を含む前記照明瞳空間に配置されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項15】
前記リレー光学系は、前記オプティカルインテグレータに隣接する照明瞳と光学的に共役な位置を前記後側の照明瞳に形成することを特徴とする請求項14に記載の照明光学系。
【請求項16】
所定のパターンを照明するための請求項8乃至15のいずれか1項に記載の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項17】
前記所定のパターンの像を前記感光性基板上に形成する投影光学系を備え、該投影光学系に対して前記所定のパターンおよび前記感光性基板を走査方向に沿って相対移動させて、前記所定のパターンを前記感光性基板へ投影露光することを特徴とする請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記オプティカルインテグレータにおける前記所定方向は、前記走査方向と直交する方向に対応していることを特徴とする請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれか1項に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−157649(P2010−157649A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335826(P2008−335826)
【出願日】平成20年12月30日(2008.12.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月30日(2008.12.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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