説明

裸眼立体視ディスプレイ

【課題】
従来技術には、画素間の隙間を知覚されてしまうと、画素数としては多く存在していても、立体感や画質感が損なわれるという結果となってしまうという問題がある。
従って、光線間の間隔を変えることなく立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイが求められている。
【解決手段】
裸眼立体視ディスプレイは、二次元映像装置と、光学素子とを有し、
光学素子は、二次元映像装置から出射された光を偏光させた後に、偏光された光を複屈折させることにより、立体映像を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
裸眼立体視ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、特開2008−139524号公報(特許文献1)がある。この公報には、プロジェクタから投影された光線は,マイクロレンズアレイを通った時に偏光し,指向性のある光線として拡がるため,人の左右の目には異なる光線が入射し,人は立体映像として映像を知覚することが開示されている.このように光線を何らかの方法によって偏光させる技術を用いて,その偏光した光線を人に見せることにより立体知覚が可能となる。
【0003】
ここで、「偏光」とは、光の進行方向を変えることである。また、一般に、物質内を光が通過する時、微視的には、物質を構成する原子や分子に光が散乱されたり、構造的な不連続部分で光が回折されたりする。これが、巨視的には、光の拡散、あるいは屈折として観測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、プロジェクタから投影された光線は、マイクロレンズを通ったあと、非常に小さな領域(この領域を以下,偏光支点と呼ぶ)に集光され、この領域を支点として,指向性の光線として拡がるため、人が立体視ディスプレイを観察する際に、光線が作る輝点は非常に小さな画素として認識される。
【0006】
例えば特許文献1のように複数のプロジェクタから光線が投影されている場合、プロジェクタが十分密に並び、となりあう光線間の間隔が小さくてとなりあう上述の偏光支点どうしが十分に近ければ、画素間の間隔も十分小さく、問題ない。しかし現実的にはプロジェクタ間の間隔は広くとなりあう光線間の間隔を十分小さくできないので、人が画面を観察した際に、滑らかさのない、画素間に隙間のある映像として知覚されてしまうという課題が存在する。このように画素間の隙間を知覚されてしまうと、画素数としては多く存在していても、立体感や画質感が損なわれるという結果となってしまうという問題がある。
【0007】
そこで光線間の間隔を変えることなく立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
裸眼立体視ディスプレイは、二次元映像装置と、光学素子とを有し、
光学素子は、二次元映像装置から出射された光を偏光させた後に、偏光された光を複屈折させることにより、立体映像を提供する。
【発明の効果】
【0009】
表示される立体映像の輝点面積が広がるため,光線間の間隔を変えなくても、立体映像が滑らかとなり、立体感、画質感を向上した裸眼立体視ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【図2】複屈折素子の例である。
【図3】複屈折素子の例である。
【図4】複屈折素子の例である。
【図5】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【図6】裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を,図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、偏光効果を持つ光学素子と複屈折素子とを有する裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0013】
図1は、本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図の例である。
裸眼立体視ディスプレイは、二次元映像表示デバイス1、光学素子2、複屈折素子10を有する。
【0014】
二次元映像表示デバイス1から出射した光線は、光学素子2で偏光され,偏光状態に応じて複屈折素子10で異なる2つの屈折率で屈折して2つの方向に異なる偏光で出射する。
【0015】
二次元映像表示デバイス1から出射した光線が光学素子2と複屈折素子10によって偏光されるので、図1の右側からユーザが観察した時に,右目3,左目4に,それぞれ別の光線5,6が入射する.この結果、違う色や輝度を持つ光線が右目3と左目4入射するため,裸眼で立体視が可能となる.
さらに、二次元映像表示デバイス1から出射した光線は複屈折素子10によって2つ光線に分けられるので、この2つの光線によって作られる輝点の面積は、複屈折素子10を用いなかった場合に1つの光線によって作られる輝点の面積よりも広くなる。したがって、複屈折素子10を使用しない場合と比べて、画素間の間隔が狭くなり、滑らかな立体映像を提供することができる。 二次元映像表示デバイス1は,液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ,有機ELディスプレイ,電界放出ディスプレイ,プロジェクタなどの一般的な映像表示装置として用いられているものであれば良い.二次元映像表示デバイス1から出射する光は、偏光していない状態,または,2つ以上の偏光状態の光が混じった状態であればよい.
光学素子2は,通常複数の単レンズ(単光学素子)121を有する.通常,単光学素子121は,光軸が格子上に並んだり,光軸が最密充填構造の中心に一致するなどや何らかの規則に沿って並べられている.単レンズ121としては,バリアやピンホール,レンチキュラや球面凸レンズなどが用いられる.
ここで光軸とは、光学素子の中心を通り,光学素子に垂直な直線である.光学素子がレンズの場合は,光軸はレンズ中心を通りレンズ面に垂直な直線となる。
【0016】
図2は,複屈折素子の例である.
複屈折素子10に入射した光20は,光の偏光状態に応じて2つの異なる屈折率で屈折を行い,2つの方向(21および22)に光が出射する.複屈折素子の厚さに応じて屈折量は制御可能である。滑らかな立体映像を得るためには、複屈折素子10を用いない場合における隣り合う輝点間の距離の半分程度輝点が移動する複屈折量が得られるような厚みの複屈折素子を用いるのが良い.なお、複屈折素子10の一例として、方解石やルチル、水晶、液晶で構成された素子を用いることができる。
【0017】
図3は,複屈折素子の断面の例である.
複屈折素子10は,片側が球面,その逆側が平面の形状を有し,球面部分の形状に対して,最大で元の球面の曲率半径の10%程度長さのランダムな形状歪みを有する.
ここで,ランダムとは、非規則的であることを意味するが,コンピュータの乱数生成プログラムにより生成された乱数などを用いても良い。
【0018】
図4は,複屈折素子の別の例である.図4に示す複屈折素子10は入射した光20を円複屈折させる.すなわち複屈折素子10は、例えば,光軸を中心とした円41上に入射光40を複屈折させる.円複屈折の量としては,例えば屈折素子10を用いない場合における隣り合う最も近い輝点間の距離の半分だけ輝点が広がる量とか,近辺数個の輝点との距離の平均値分だけ輝点が広がる量とすると良い.このような複屈折素子10を用いると、光軸の周囲全方向に輝点面積が広がるので、全方向で画素間の間隔を狭くすることができ、より滑らかな立体映像を提供することができる。
【実施例2】
【0019】
本実施例では、偏光効果と複屈折効果の両方を持つ光学素子アレイを有するプロジェクタ方式裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0020】
図5は,本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図である。本実施例では、光学素子2および複屈折素子10に変えて、光学素子50として偏光作用と複屈折作用の両方を有する光学素子アレイを用いる。なお、光学素子アレイの一例として、水晶から製作した単球面レンズアレイや、硝子から製作した中空のレンズアレイに液晶を充填したものを用いることができる。また、二次元映像表示デバイス1としてプロジェクタ91を用いる.
図1の構成との大きな違いは,二次元映像表示デバイス1としてプロジェクタ91を用いた場合,プロジェクタ91と光学素子50との距離が、図1の二次元映像表示デバイス1と光学素子2との距離より長くなることである.図1に示す実施例1の二次元映像表示デバイス1と光学素子2の距離は,通常,光学素子2の焦点距離fにほぼ等しいのに対して,図9の構成では,プロジェクタ91と光学素子50の距離は,プロジェクタ91の焦点距離f’にほぼ等しくなる.通常f’>fである.
短焦点プロジェクタの場合は,画角θが大きくなるため,画面中央に比べて画面端では光線が斜めに入射している.
そこで、各単光学素子121の光軸と、プロジェクタ91の投影中心と当該単光学素子121の中心を結ぶ直線とが並行となるように、各各単光学素子121を傾けて配置することで光学素子50を構成する.
この結果,観察が裸眼立体視ディスプレイを正面からではなく,斜めから見たときの画質が向上する.
【実施例3】
【0021】
本実施例では、偏光効果と複屈折効果の両方を持つ光学素子アレイを有するマルチプロジェクタ方式裸眼立体視ディスプレイの例を説明する。
【0022】
図6は,本実施例の裸眼立体視ディスプレイの構成図である。
【0023】
図5とのちがいは、二次元映像表示デバイス1として複数のプロジェクタを備えるプロジェクタ群101を用いたことである.その他の構成は,既に説明した図5に示された同一の符号を付された構成と,同一の機能を有するので,その説明は省略する.
本構成では,複数台プロジェクタを用いているため,映像が明るくなり,また光線数が向上するため画質が向上する効果がある.また,光学素子50が複屈折効果を持つため,画素の輝点面積を大きくする効果があり,プロジェクタ群101を構成するプロジェクタ間の配置間隔を狭めて光線間の距離を狭めなくても、滑らかで自然な立体映像の表示が可能となる.
なお、本発明は上記した3つの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 二次元映像表示デバイス
2 光学素子
3 右目
4 左目
5 光線
6 光線
10 複屈折素子
91 プロジェクタ
101 プロジェクタ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元映像装置と、
光学素子とを有し、
前記光学素子は、前記二次元映像装置から出射された光を偏光させた後に、偏光された光を複屈折させることにより、立体映像を提供することを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記光学素子は、方解石で構成された素子を備えており、
前記方解石で構成された素子が前記偏光された光を複屈折させることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項3】
請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記光学素子は、ルチルで構成された素子を備えており、
前記ルチルで構成された素子が前記偏光された光を複屈折させることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項4】
請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記光学素子は、液晶で構成された素子を備えており、
前記液晶で構成された素子が前記偏光された光を複屈折させることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項5】
請求項1に記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記光学素子は、前記偏光された光を円複屈折させることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記二次元映像装置としてプロジェクタを備えることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項7】
請求項1乃至5記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記二次元映像装置として、複数のプロジェクタを有するプロジェクタ群を備えることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。
【請求項8】
請求項6乃至7記載の裸眼立体視ディスプレイであって、
前記光学素子は、複数の単光学素子を備えており、
前記複数の単光学素子は各々、当該単光学素の光軸が前記二次元映像装置の投影中心と当該単光学素の中心とを結ぶ直線と並行になるよう配置されていることを特徴とする裸眼立体視ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80071(P2013−80071A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219715(P2011−219715)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】