説明

製品の熱処理のためのトンネル炉

トンネル炉が、生産工程の中で連続的方法において製品の熱処理のために用いられる。このトンネル炉は、典型的には、複数の同一の炉の部分からなり、各部分は、ファンと、新鮮な空気を加熱するための加熱要素と、共有された排気空気ラインとを有する。製品の処理のために、それらは、ファンの吸引側または圧力側とのいずれかを通過するように動かされる。そのような炉の容積全体を低減し、エネルギーを節約するために、ファンが炉の内部に配置され、その結果、ファンは、移動の方向を横断する循環の流れを生成し、乾燥されるべき製品は、互いに平行な移動の方向において、循環の流れを介して、ファンの圧力側と、また吸引側との両方で輸送されるべきであることが提案される。この炉は、好適には、自動車排気ガス接触コンバーターにおいて用いられ、その中でモノリシックハニカム体に適用される触媒層が乾燥され、焼成されなければならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(説明)
本発明は、生産工程中の連続動作における製品の熱処理のためのトンネル炉に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル炉または連続炉は、概して、互いにフランジを付けられた複数の部分を含む。複数の部分は、トンネルを形成し、トンネルを通して、処理されるべき品目が適切なコンベヤーベルト上で輸送される。ローディングステーションおよびアンローディングステーションは、コンベヤーベルトに装填し、コンベヤーベルトから除去するように機能する。トンネル炉は、バーナーを介してか、または電気加熱要素を介して加熱される。
【0003】
特許文献1、特許文献2、ベルギー国特許第BE557592号および特許文献3は、トンネル炉を開示し、このトンネル炉の中で、送風機によって駆動される加熱された空気は、製品の輸送方向を横断するように循環する。この場合において、循環する流れは、輸送ベルトの幅全体にわたって輸送ベルト上に配置される製品を通って、同じ方向に流れるような態様で形成される。加熱された空気の戻りの流れは、トンネル炉内の輸送ベルトの両方の側面に接する対応するすきまとして生じる。
【0004】
特許文献4は、プリント回路基板の加熱のためのトンネル炉を説明する。この炉は、とりわけ、プリント回路基板に対する2つの平行な輸送ベルトを有する。
【0005】
トンネル炉はまた、自動車の排気のための、不活性な支持に適用されるセラミックグリーン体または触媒層を乾燥させ、焼成する接触コンバーターの生産においても用いられる。セラミックハニカム体の焼成のためのトンネル炉は、例えば、特許文献5、特許文献6および特許文献7において説明される。
【0006】
本発明は、特に、自動車の排気に対する接触コンバーターの生産のためのトンネル炉に関連する。したがって、製品は、好適には、自動車の排気に対する接触コンバーターの生産のための、いわゆるハニカム体のセラミックまたはいわゆるハニカム体の金属の形態において用いられるような触媒材料でコーティングされたばかりの、モノリシック支持体である。触媒層は、乾燥され、焼成されなければならない。本発明に従ったトンネル炉はまた、他の製品の処理に対しても用いられ得る。
【0007】
ハニカム体の触媒コーティングは、通例、水中の酸化担体材料のスラリーで構成される。このスラリーはまた、触媒活性貴金属および触媒活性助触媒の前駆体化合物も含む。これらの前駆体化合物は、しばしば、これらの貴金属および助触媒の硝酸塩および塩化物であり、これらの貴金属および助触媒の硝酸塩および塩化物は、トンネル炉における焼成によって実際の触媒活性化合物に変換されるのみである。乾燥および焼成は、水蒸気および一酸化二窒素または塩素化合物を放出する効果を有し、水蒸気および一酸化二窒素または塩素化合物は、トンネル炉から炉の空気の一部とともに排出されなければならず、その間、同時に新鮮な空気と置き換えられ、場合によって排気排出制御システムに送られる。
【0008】
ローディングステーションから、ハニカム体は、概して、最初に乾燥ゾーンの中に入り、約100℃から約200℃の温度で乾燥される。乾燥ゾーンを通った後で、ハニカム体は、焼成ゾーンに入り、ハニカム体は、300℃から600℃の温度で処理される。その後で、ハニカム体は、アンローディングステーションを介してトンネル炉から出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許発明第2344138号明細書
【特許文献2】米国特許第2,330,984号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0090790号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1106947号明細書
【特許文献5】米国特許第6,048,199号明細書
【特許文献6】米国特許第6,089,860号明細書
【特許文献7】米国特許第6,325,963号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に空間を節約する構成であり、エネルギーの節約のために用いられ結果としてエネルギーの節約に寄与する加熱エネルギーを最適に利用する、トンネル炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、製品(12、12’)の熱処理のためのトンネル炉によって達成され、トンネル炉は、トンネルの形態の炉のチャンバーを有し、トンネルを通して、処理されるべき製品が連続輸送の方向に輸送され、トンネル炉は、連続輸送の方向に互いにフランジを付けられた複数のトンネルセグメント(10)を有する。トンネル炉は、各トンネルセグメントが少なくとも1つの送風機(15)と、少なくとも1つの加熱要素(17)と、新鮮な空気に対する吸気チャネル(19)と、排気ガスおよび水蒸気で満たされた排気空気用の排気チャネル(22)とを含む点で特徴づけられ、そして、1つまたは複数の送風機は、1つまたは複数の送風機が連続輸送の方向に対して横断するように下向きの流れと上向きの流れとを有する循環する流れ(23)を生成し得るような態様で、トンネルセグメントの中に配列され、製品のための2つの平行な輸送ベルト(11、11’)が、下向きの流れと上向きの流れとにおいて提供される点で特徴づけられる。
【0012】
本発明に従って、製品の連続輸送の方向を横断する循環する流れは、1つまたは複数の送風機によってトンネルセグメントの中に生成され、処理されるべき製品は、送風機の圧力側と吸引側の両方で循環する流れを介して輸送される。結果として、生成される気体のストリームは、最適には、製品の処理のために利用される。送風機の配列に依存して、下向きまたは上向きの流れは、送風機の圧力側または吸引側に配置されるか、あるいはその反対である。
【0013】
トンネルセグメントは、好適には、長方形の断面を有し、それぞれ、底部、上部および2つの側壁によって境界づけられ、送風機は、好適には、下から底部を通して炉のチャンバーの中に導入される。全般的な保守および修理作業を容易にするために、トンネルセグメントの側壁は、振り下ろされ得るような態様に形成され得る。
【0014】
空気ストリームを導く流れバッフルプレートと、処理されるべき製品への、場合によっては処理されるべき製品を介しての、均一な流れを提供するための多孔性プレートまたはスロット付きプレートとが、炉のチャンバーの中に配列され得る。さらに、流れバッフルプレートは、望ましい循環する流れの形成に対して伝導性であり得る。
【0015】
ガスバーナーまたはオイルバーナーおよび電気加熱要素が、炉のチャンバーの加熱に対して適している。電気加熱要素は、好適に用いられる。
【0016】
熱損失を低減するために、炉のチャンバーの内側に排気チャネルを配列することが有利である。排気チャネルは、個々の循環する流れの排気空気を収集し、排気空気を中央の外部の位置に導く。必要とされる場合には、排気空気は、排気排出制御システムへ通される。
【0017】
トンネルセグメントの内側に配列された送風機は、時折り保守されるか、または修理されなければならない。したがって、トンネル炉の好適な実施形態において、送風機は、容易な交換という目的のために、底部または側壁の一部分を有するトンネルセグメントにフランジを付けられる。
【0018】
トンネル炉を介して製品を輸送するために、車または輸送ベルトが用いられ得る。輸送ベルトは、好適に用いられ得る。この場合には、処理されるべき製品は、2つの平行な輸送ベルトの吸引側と圧力側とで循環する流れを介して輸送される。単純にするために、両方のベルトは、共通の駆動装置によって駆動され得る。
【0019】
例えば、トンネル炉は、自動車の排気に対する接触コンバーターの生産のための、触媒層でコーティングされたセラミックのハニカム体または金属のハニカム体の乾燥および焼成のために用いられる。この目的のために、トンネル炉を通る連続輸送の方向に沿った望ましい温度特性が、トンネルセグメントの加熱要素を作動することによって設定される。処理されるべき製品は、平行する輸送ベルトの循環する流れの下向きの流れと上向きの流れとを介して輸送され、循環するストリームの一部分は、それぞれ、炉から製品の熱処理の間に解放される排気ガスおよび水蒸気を取り除くように排出され、対応する量の新鮮な空気によって置き換えられる。
【0020】
トンネル炉のモジュラー構成は、本発明に従って、複数のトンネルセグメント間に他のステーションを、例えば、製品の低減処理(例えば、気体を形成することで)のためのステーションを挿入することを可能にする。さらに、必要とされる場合には、選択されたトンネルセグメントの場合には、加熱を冷却によって置き換えることが可能である。
【0021】
少数の製品のみが炉の中で処理される予定の場合には、1つだけのトンネルセグメントを基にバッチ炉を構成することが有利であり得、コンベヤーベルトは、対応する運搬グリッドによって置き換えられる。
【0022】
連続輸送の方向を横断する循環する流れに関する説明の導入部分において参照されるトンネル炉の場合には、処理されるべき製品は、一方向にのみ空気を加熱することによって流される。戻りの流れは、それぞれ製品の外側の周りを通るようにされる。このことは、個々のトンネルセグメントが、製品の輸送に必要であるよりも広い断面を有しなければならないことを意味する。このことと対照して、本発明の場合には、循環する流れの戻りの流れはまた、製品の処理のためにも用いられる。このことは、個々のトンネルセグメントが対応して、よりコンパクトな設計であることを可能にする。発明者の経験において、トンネルセグメントの周囲の表面積の30%までが、本発明によって節約され得る。このことは、鋼のプレートと断熱とにおけるかなりの節約を意味する。さらに、良好な断熱にもかかわらず完全には回避されは得ない熱の排出もまた、節約される周囲の表面積に対応する程度まで低減される。したがって、本発明に従ったトンネル炉はまた、エネルギーの節約に有意に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、以下の図を基にして、より詳細に説明される。
【図1】図1は、トンネル炉の側面図を示す。
【図2】図2は、トンネルセグメントを通る断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、トンネル炉(1)の基本的構成を示す。トンネル炉の開始部において、トンネル炉に処理されるべき製品を充填するためのローディングステーション(2)があり、トンネル炉の終端部において処理された製品を取り除くためのアンローディングステーション(3)がある。トンネル炉は、互いにフランジを付けられた複数のトンネル炉セグメント(4)を備えている。自動車の排気のための接触コンバーターの乾燥および焼成のために、100℃と600℃との間の温度、好適には100℃と500℃との間の温度が必要とされる。炉のモジュラー構成は、隣のセグメントとは主として無関係に、各トンネルセグメントに対する処理温度を設定することを可能にする。その結果、湿った触媒を乾燥させるために、ローディングステーションの炉の下流の温度を100℃と200℃との間に設定することが可能である。この乾燥ゾーンを通過した後にのみ、触媒のコーティングを焼成するために、炉の温度は、例えば、300℃〜600℃に上げられる。
【0025】
図2は、連続輸送の方向に垂直なトンネルセグメント(10)の断面を例として示す。トンネルセグメントの断面は、長方形であり、底部プレート(24)、上部(25)および2つの側壁(26および27)によって囲まれる。トンネル炉の断面は、垂直な流れバッフルプレート(13)によって2つの半部分に分割される。両方の半部分の各々において、製品(12、12’)がトンネルを通って輸送されるための輸送ベルト(11,11’)がある。輸送ベルトは、循環するストリームを妨げることができるだけ少なくなるように、多孔性構成になっていることが好都合である。図2において、輸送ベルトの長手方向の範囲は、図面の平面に対して垂直に向けられる。送風機(15)が、トンネル炉に対して下からフランジを付けられ、循環する流れ(23)を生成するように機能する。送風機は、モーター(16)によって駆動される。トンネルセグメントの中の気体の流れは、図2において破線によって描かれる矢印によって識別される。送風機の吸引側において、新鮮な空気(18)が吸気チャネル(19)を介して吸い込まれる。新鮮な空気(20)は、加熱要素(17)によって必要な処理温度にされる。送風機のモーターを冷却するためには、モーターを新鮮な空気に対する吸気チャネルの中に配列することが有利である。熱く、排気ガスで満たされた排気空気(21)は、排気チャネル(22)によって収集され、中央の処分位置へ伝えられる。排気ガスの熱容量を利用するためには、トンネルセグメントの内側に排気チャネル(22)を置くことが有利である。トンネルセグメントにおける流れの状態は、適切な流れバッフルプレートおよびスクリーンによって、処理されるべき製品が可能な限り均一な流れにさらされるような態様で、影響され得る。さらなる流れバッフルプレート(14)が、1つだけ図2において例として表される。トンネルセグメントの壁の必要な断熱は、明快な概観を維持するために、図2の中には示されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品(12、12’)の熱処理のための炉のチャンバーと、連続輸送の方向とを有するトンネル炉であって、該トンネル炉は、連続輸送の方向に複数のトンネルセグメント(10)を含み、複数のトンネルセグメント(10)は、互いにフランジを付けられる、トンネル炉であって、各トンネルセグメントが少なくとも1つの送風機(15)と、少なくとも1つの加熱要素(17)と、新鮮な空気に対する吸気チャネル(19)と、排気ガスおよび水蒸気で満たされた排気空気用の排気チャネル(22)とを含むことと、該少なくとも1つの送風機は、該少なくとも1つの送風機が該連続輸送の方向に対して横断するような下向きの流れと上向きの流れとを有する循環する流れ(23)を生成し得るような態様で、該トンネルセグメントの中に配列されることとを特徴とし、該製品のための2つの平行な輸送ベルト(11、11’)が、該下向きの流れと上向きの流れとにおいて提供される、トンネル炉。
【請求項2】
前記トンネルセグメントは、長方形の断面を有し、それぞれ、底部プレート(24)、上部(25)および2つの側壁(26、27)によって境界づけられ、前記送風機は、下から該底部を通して前記炉のチャンバーの中に導入されることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル炉。
【請求項3】
空気ストリームを導く流れバッフルプレート(13)と、処理されるべき前記製品への均一な流れを提供するための多孔性プレート(14)またはスロット付きプレート(14)とが、前記炉のチャンバーの中に配列されることを特徴とする、請求項2に記載のトンネル炉。
【請求項4】
前記加熱要素(17)は、電気的に動作することを特徴とする、請求項3に記載のトンネル炉。
【請求項5】
排気ガスライン(22)は、個々の循環する流れの前記排気空気を収集し、該排気空気を中央の外部位置に導くことを特徴とする、請求項4に記載のトンネル炉。
【請求項6】
前記トンネルセグメントの前記側壁は、該トンネルセグメントの該側壁が保守および修理作業を容易にするために下ろされ得るような態様で構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のトンネル炉。
【請求項7】
前記2つの輸送ベルトは、共通の駆動装置によって駆動されることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル炉。
【請求項8】
触媒層でコーティングされたセラミックのハニカム体または金属のハニカム体の乾燥おび焼成のための、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のトンネル炉の使用。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のトンネル炉を動作させる方法であって、該方法は、該トンネル炉を通る連続輸送の前記方向に沿った望ましい温度特性が、前記それぞれの加熱要素を作動することによって設定され、処理されるべき前記製品は、前記平行な輸送ベルト上の前記循環する流れの前記下向きの流れと前記上向きの流れとを介して輸送され、該循環する流れの一部分は、それぞれ、該炉から排気ガスおよび水蒸気を取り除くように排出され、該排気ガスおよび該水蒸気は、該製品の熱処理の間に放出され、対応する量の新鮮な空気と置き換えられることを特徴とする、方法。
【請求項10】
製品の熱処理のための炉のチャンバーを有するバッチ炉であって、該バッチ炉は、少なくとも1つの送風機と、少なくとも1つの加熱要素と、新鮮な空気のための吸気チャネルと、排気ガスおよび水蒸気で満たされた排気空気のための排気チャネルとを含むことと、該少なくとも1つの送風機は、該少なくとも1つの送風機が該炉のチャンバーの中で下向きの流れと上向きの流れとを有する循環する流れを生成するような態様で該炉のチャンバーの中に配列され、処理されるべき該製品は、該下向きの流れと該上向きの流れの両方の中に配列され、該循環する流れの一部分は、それぞれ、該炉から該排気チャネルを介して該製品の熱処理の間に解放される排気ガスおよび水蒸気を取り除くように排出され、対応する量の新鮮な空気と置き換えられることとを特徴とする、バッチ炉。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−504573(P2011−504573A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534497(P2010−534497)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066092
【国際公開番号】WO2009/068505
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(505446895)ユミコア アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】