製紙用薬剤の効果監視方法及び注入量制御方法
【課題】抄紙工程において紙の原料スラリーやインレット内スラリー等の抄紙工程水に添加される歩留向上剤、濾水性向上剤、凝結剤、ピッチコントロール剤等の製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認し、この監視結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を的確に制御する。
【解決手段】薬剤添加前後の抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、被測定流体にレーザ光を照射し、被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る。この散乱光強度データに基づき被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求め、薬剤添加前後の粒径情報及び/又は濁度情報を比較することにより、製紙用薬剤の効果を監視する。薬剤添加前後の粒径情報及び/又は濁度情報の比較結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を制御する。
【解決手段】薬剤添加前後の抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、被測定流体にレーザ光を照射し、被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る。この散乱光強度データに基づき被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求め、薬剤添加前後の粒径情報及び/又は濁度情報を比較することにより、製紙用薬剤の効果を監視する。薬剤添加前後の粒径情報及び/又は濁度情報の比較結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙用薬剤の効果監視、注入量制御方法に係る。特に、抄紙工程において、紙の原料スラリーやインレットに添加される製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認する方法と、その監視結果に基づき製紙用薬剤の注入量を的確に制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料には、LBKP、NBKP、TMPなどの他、近年は古紙の利用率の向上、ブロークパルプの配合率向上、系のクローズド化が進み、古紙、DIP、コートブロークなども多用されてきている。これらの原料にはアニオン性不純物、いわゆるアニオントラッシュが多く、アニオントラッシュによるピッチ、欠陥の発生だけでなく、断紙、生産スピードダウンといった生産性の低下を招いている。
【0003】
これらの問題に対して、カチオン性スターチ及びコロイドシリカを添加する方法(USP4388150)、合成カチオン性ポリマーを加えた後次のステップでベントナイトを添加する方法(EP235893、特開昭62−191598)、分子量の低いカチオン性ポリマーを添加し、次いでアニオン性ポリマーを添加する方法(特公平5−29719)等に開示されるような様々な薬剤添加により、アニオントラッシュをパルプ繊維に定着させ、系外へ除去することが行われている。
【0004】
また、従来、これらの薬剤の添加効果は下記のような間接的手法により断続的に管理されている。
(1) 出来上がった紙の品質及び欠陥の評価や生産スピードの管理
(2) 原料スラリー、インレット内スラリーの粒子表面電荷(カチオン要求量)の測定
(3) 原料スラリー、インレット内スラリーを濾過した濾液の透過光による濁度測定
【0005】
しかし、上記従来の方法では、各々、次のような課題があった。
(1) 出来上がった紙の品質及び欠陥の評価や生産スピードの管理:
直接的に薬剤効果の影響を確認できるものの、すでに生産が始まった後又は紙が出来上がった後での管理であり、トラブル解決への対応が著しく遅れるという課題がある。
【0006】
(2) 原料スラリー、インレット内スラリーの粒子表面電荷(カチオン要求量)の測定:
表面電荷はあくまで間接的な評価であり、必ずしも表面電荷の変化とアニオントラッシュに起因する欠陥とは相関しない場合がある。
【0007】
(3) 原料スラリー、インレット内スラリーを濾過した濾液の濁度測定:
アニオントラッシュ成分による濁度を直接測るものであり、信頼性が高いが、濾過工程が必須であるため、濾過装置の目詰まりトラブルが起き易いこと、メンテナンス頻度が高いこと、洗浄機構などを備えることにより装置が高価になることなど、課題が多い。
【0008】
上記の課題に対し、本願出願人は、特願2005−370143にて、レーザ光散乱方式のセンサにより、抄紙工程の薬剤効果を監視、及び薬注制御する方法を提案した。これにより、高精度に薬剤効果の監視ができ、紙製品の異常や製造時のトラブル発生を防止することができるが、場合によっては、計測対象の抄紙工程水の水質が変化し、センサ計測による絶対値だけでは完全な監視及び制御が難しいケースがあるため、その改善策の必要があった。
【0009】
なお、抄紙工程水の水質変動の理由は次の通りである。
即ち、紙の原料には、前述の如く、LBKP、NBKP、TMPなどの他、近年は古紙の利用率の向上、ブロークパルプの配合率向上、系のクローズド化が進み、古紙、DIP、コートブロークなどの回収原料も多用されてきている。特に、抄紙工程水の性状変動に大きく影響するのが回収原料の性状で、その品質、性状を一定に保つことは極めて困難である。つまり、単純に固形分濃度だけでなく、パルプ繊維の長さ、その分布、灰分の量と種類、色合いなど、変動因子は多く、基本的にこれらを制御することは困難と言わざるを得ないからである。
【特許文献1】USP4388150
【特許文献2】EP235893
【特許文献3】特開昭62−191598
【特許文献4】特公平5−29719
【特許文献5】特願2005−370143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決し、抄紙工程において紙の原料スラリーやインレット内スラリー等の抄紙工程水に添加される歩留向上剤、濾水性向上剤、凝結剤、ピッチコントロール剤等の製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認することができる製紙用薬剤の効果監視方法と、このような監視結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を的確に制御する製紙用薬剤の注入量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の製紙用薬剤の効果監視方法は、抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果を監視する方法において、抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程とを含む製紙用薬剤の効果監視方法であって、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報とを比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の製紙用薬剤の注入量制御方法は、抄紙工程水への製紙用薬剤の注入量を制御する方法において、抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程とを含む製紙用薬剤の注入量制御方法であって、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報とを比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程と、前記比較データに基づき前記製紙用薬剤の注入量を制御する第五工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、抄紙工程において紙の原料スラリーやインレット内スラリー等の抄紙工程水に添加される歩留向上剤、濾水性向上剤、凝結剤、ピッチコントロール剤等の製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認することができ、この監視結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を的確に制御することができる。
【0014】
即ち、レーザ光の反射は、これが照射されて当たった粒子の大きさに関係し、大きい粒子に当たると大きな反射を起こし、小さな粒子に当たると小さな反射を起こす。従って、被測定流体にレーザ光を照射して、被測定流体中の粒子により散乱された散乱光の強度を計測することにより、抄紙工程水中のアニオントラッシュ等の粒子の大きさの変化(粒径情報)をとらえることができる。また、この散乱光強度データの最低値は、粒子間の間隙を示す濁度情報を与えるため、この原理を利用することにより、紙の原料スラリーやインレット内スラリーなどに添加された製紙用薬剤の効果をモニタリングすることができ、さらには、このデータを使って、製紙用薬剤の薬注制御を的確に行うことが可能となる。
【0015】
しかも、本発明では、薬剤添加後の抄紙工程水について散乱光強度データを計測するだけでなく、薬剤添加前の抄紙工程水についても散乱光強度データを計測し、その差を検知するため、抄紙工程水の水質が変動しても安定した結果を得ることができる。
【0016】
即ち、前述の如く、紙の原料スラリー、インレット内スラリー等の抄紙工程水の性状は変動し易いため、薬剤添加後の抄紙工程水のみについて計測したセンサ計測絶対値だけでは、処理の良し悪しが判断できず、管理が困難になる場合がある。本発明によれば、薬剤添加前後の抄紙工程水について散乱光強度データを計測し、これらを相対的に管理することにより、安定した監視及び薬注制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
[抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果の監視]
本発明に従って、抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果を監視するには、抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射し、該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得、この散乱光強度データに基づき被測定流体中の粒子の粒径及び/又は濁度の変化をとらえる。
【0019】
1) 製紙用薬剤の効果監視装置
まず、図1〜4に基づいて、本発明に好適な製紙用薬剤の効果監視装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の好適例に係る製紙用薬剤の効果監視装置の概略構成を示す構成図であり、図2は、図1に示すレーザ光照射部と散乱光受光部の構成を示す拡大図である。なお、以下においては、抄紙工程水として紙の原料スラリーの計測を行う場合を示すが、後述の如く、本発明における被測定流体は何ら紙の原料スラリーに限定されず、その他インレットにおけるスラリー、プレス搾水等の各種の抄紙工程水及びその希釈水が挙げられる。
【0021】
この製紙用薬剤の効果監視装置は、レーザ発振器1、第1の光ファイバ2、レーザ光照射部3、散乱光受光部4、第2の光ファイバ5、光電変換回路6、検波回路7、最低値検出回路8から構成される。20は、原料スラリー21が貯えられる計測槽であり、計測槽20内の原料スラリー21中には、遮蔽部材22(以下「センサプローブ」と称す場合がある。)の底部に配設されたレーザ光照射部3と散乱光受光部4が投入されている。この遮蔽部材22は上方からの自然光がレーザ光照射部3と散乱光受光部4間の測定領域23に到るのを遮蔽している。
【0022】
即ち、遮蔽部材22は図3に示す通り、底面が下方に突出し、突出した両側面に溝部24が形成された五角柱であり、この溝部24に、第1の光ファイバ2と第2の光ファイバ5とが固定され、第1の光ファイバ2の一端であるレーザ光照射部3と第2の光ファイバ5の一端である散乱光受光部4が、図2中、左右対称(線対称)に配設されている。さらに第1の光ファイバ2のレーザ光照射部3と第2の光ファイバ5の散乱光受光部4の中心線は互いに90度で交差していることが好ましい。
【0023】
また、一般にレーザ発振器1から発振されるレーザ光の強度は、自然光と区別するために変調することが好ましく、光電変換回路6で受光した散乱光強度を元の電気信号に戻すためには、70〜150kHz程度の変調が好ましい。そこで、本実施形態の構成において、レーザ発振器1はファンクションゼネレータ11とレーザダイオード12とからなり、ファンクションゼネレータ11から発生する所定周波数、例えば95kHzの電気信号で振幅変調(AM)したレーザ光をレーザダイオード12から第1の光ファイバ2の一端に出射している。このレーザ光は第1の光ファイバ2を介してレーザ光照射部3となっている光ファイバ2の他の一端から原料スラリー中に出射している。なお、レーザ発振器は、ファンクションゼネレータとレーザダイオードに限定されるものではなく、例えば発光ダイオード等を用いることも可能である。
【0024】
原料スラリー中には、アニオントラッシュ成分の粒子が存在しており、レーザ光照射部3からアニオントラッシュ成分の粒子に照射されたレーザ光は散乱して散乱光となり、散乱光受光部4となっている第2の光ファイバ5の一端から光ファイバ5に入射している。本実施形態において、測定領域23は、レーザ光照射部3から出射されるレーザ光が照射する領域と、散乱光受光部4が散乱光を受光できる領域との重なり合った領域となっており、散乱光受光部4は測定領域23から90度(第2の光ファイバ5の中心線)方向に散乱した散乱光を受光している。
【0025】
なお、遮蔽部材22におけるレーザ光照射部の構成は、図2に示すものに何ら限定されず、図4に示す如く、遮蔽部材22の測定領域23近傍にレーザーダイオード12を設けて電流ケーブル12Aを引き、遮蔽部材22の測定領域近傍で直接レーザ光を発光させるものであっても良く、この場合には、レーザ光照射部まで光ファイバを使用しないことにより、光ファイバの破損等を防止することができる。図4において、レーザ照射部以外の構成は図2に示すものと同様であり、同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0026】
光電変換回路6は、フォトデテクター61、バンドパスフィルタ62及び増幅器63とからなり、第2の光ファイバ5の他の一端に接続されたフォトデテクター61によって散乱光の光信号を電気信号に変換し、バンドパスフィルタ62で自然光と区別するために電気信号から変調周波数成分の信号を取り出し、増幅器63において増幅して検波回路7に出力する。なお、光電変換回路6は、光信号を電気信号に変換するものであれば上記構成のものに限らず、例えばフォトデテクターの代わりにフォトダイオードを用いても良いし、バンドパスフィルタの代わりに低域フィルタを用いても良い。
【0027】
変調周波数成分の信号は、散乱光強度の変化を測定するために、検波回路7にてAM検波を行ってその検波後の信号を最低値検出回路8に出力する。なお、検波回路7によって出力された信号は、低域フィルタを通過する信号と同等の信号処理が施されることとなる。従って、バンドパスフィルタ62のカットオフ周波数を適当に選択することによって、検波回路7はこのカットオフ周波数の変動を取り除いた直流分の出力波形の信号として検出し、最低値検出回路8に出力することができる。このように本実施形態では、フォトデテクター61で検出された光信号のうち、バンドパスフィルタ62で変調周波数成分を取り出し増幅器63で増幅した後、AM検波を行うことで、アニオントラッシュ成分の微小粒子の散乱に伴う光強度の変化を信号強度の変化として測定できる。ただし、AM検波は必ずしも必要とされず、変調周波数成分の信号を直接最低値検出回路8に出力しても良い。
【0028】
最低値検出回路8は、入力する直流分の信号から最低値の信号強度を検出している。この最低値の検出とは、図1に示した増幅器63から出力される信号波形で説明すると、波形のくびれ部分を測定することである。くびれ部分以外の部分は、粗大な紙原料及び微小なアニオントラッシュ成分粒子が測定領域23に存在している時であり、くびれ部分は、紙原料が、測定領域から出ていった時である。従って、最低値検出回路8が信号強度の最低値を検出することにより、アニオントラッシュ成分の微小粒子のみが存在する時の散乱光強度、即ちアニオントラッシュ成分の微小粒子の粒径を測定することが可能となる。そして、この最低値の減少は、測定領域でのアニオントラッシュ成分の微小粒子の粒径が小さくなったことを表し、また最低値の増大は、アニオントラッシュ成分の微小粒子の粒径が大きくなったことを表す。
【0029】
具体的に、薬剤効果の測定原理は以下のようなものである。即ち、計測槽20内の原料スラリー21の攪拌に伴って測定領域23にコロイド状の微小なアニオントラッシュ成分粒子(以下「微小コロイド粒子」と称す。)が流入出するときに散乱光の変動が生じることとなる。この変動の周期は、測定領域を粒子と見なして、微小コロイド粒子との間に生じる衝突回数を想定することにより概算することができる。即ち、測定領域23を直径Rの球体、微小コロイド粒子を直径rの球体でそれぞれ近似すると、この場合の衝突断面積Q0は、Q0=π(R+r)2で与えられる。また、微小コロイド粒子密度をN、測定領域に対する粒子の相対速度をvとすると、単位時間当たりに微小コロイドが測定領域に流入する回数νは、ν=NQ0vとなる。同じく、微小コロイド粒子が測定領域から出て行く時にも同様の変動が生じるので、散乱光強度を微分した値の周期は、この回数の2倍の値となる。そして、散乱光強度は微小コロイド粒子の粒径のn乗に比例すると仮定し、多重散乱を無視すると、微小コロイド粒子1個の流出入に伴う散乱光強度の変動Aは、A=A0rnとなる。なお、A0は測定系に依存する定数であり、標準試料を用いて校正される。
【0030】
ここで、微小コロイド粒子は、直径rが小さく粒子密度Nが大きいので、散乱光の微小な変動が短い周期で生じることとなる。そこで、検波回路7で変調周波数成分の検波を行うことにより、上述したごとく出力波形は低域フィルタを通過するのと等価な信号処理が施されるので、フィルタ62のカットオフ周波数を適当に選ぶことにより、この変動を取り除いた直流分の信号として検出することができる。
【0031】
一方、原料スラリー中の紙原料では、測定領域に流出入する際の変動が大きく、かつこの変動の平均周期は長くなる。従って紙原料の密度と測定領域体積との積が1より小さい時には、検波後の出力波形の最低値が微小コロイド粒子の散乱に対応していることになる。これにより本実施形態では、検波回路7の後段に最低値検出回路8を接続させることによって、原料スラリー中の微小コロイド粒子、即ちアニオントラッシュ成分による散乱光と紙原料による散乱光とを区別し、アニオントラッシュ成分による散乱光のみを取り出すことが可能となるので、薬剤によるアニオントラッシュ成分の低減効果が適切に把握できる。
【0032】
また、本実施形態の監視装置では、特別な測定部を別途設ける必要がなく、遮蔽部材に取り付けたレーザ光照射部と散乱光受光部を計測槽に投入するのみで散乱光を測定することができるので、簡易な装置構成の監視装置を提供することができる。さらに、本実施形態の監視装置は、装置構成が簡易で軽量、小型化が図られるため、投げ込み式の監視装置にすることも可能である。
【0033】
なお、本発明においては、このような装置を1台用意し、電磁弁等で自動的に計測対象液を薬剤添加前の原料スラリーと薬剤添加後の原料スラリーとで切り替えができるような構造・機構を取り入れてもよく、手動のバルブで切り替える構造でもよい。また、このような装置を2台用意し、薬剤添加前と後の原料スラリーを別々に計測してもよい。
【0034】
2)受光された散乱光から変換された電気信号の最低値及び散乱強度
図1の装置において、測定領域23にて生じる散乱光について考察すると、この測定領域23に存在する微小コロイド粒子は薬剤の添加で微少フロック化し、フロック化とともに散乱光強度は大きくなる。
【0035】
従って、前述した構造のセンサプローブ(図2に示す遮蔽部材22)を用いて微小測定領域23における散乱光の強度を計測すると、図5(a)〜(c)にその概念を示すように、凝集が進んで微小コロイド粒子数が減少し、フロックの数が徐々に増加しても、フロックの数は懸濁物質(微小コロイド)の減少に比べ遥かに少ないので、プローブで検出される微小測定領域23の散乱光の平均強度は低下する。このため、プローブで検出されるフロックの凝集状態は、希に微小測定領域23に入り込むフロックで上記散乱光の強度が一時的に強くなったときを除いて、平均的な散乱光の強度は未凝集の懸濁物質(微小コロイド)の粒子数、すなわち濁度を示しているとみなし得る。なお、図5(a)〜(c)の横軸は時間軸であり、tは時間を示す。
【0036】
前述した最低値検出回路8は、上記観点に立脚し、散乱光の強度に応じた光電変換回路6の出力から得られる振幅変調周波数成分の信号の包絡線成分から最低値を検出することで、原料スラリーの未凝集の微小コロイドの粒子数(濁度)を検知することを可能とする。また、凝集が進んで微小コロイド粒子が、微少フロック化し、プローブにて検出される微小測定領域23の散乱光の強度が上記フロックにより大きくなる。これ故、微少フロック化に至るまでの散乱光強度の変化をとらえることで、微少フロックの粒径情報を得ることができる。
【0037】
散乱強度はセンサによる計測の検波信号の標準偏差で扱う。電気信号mVとして表示する。通常は、散乱強度の変化を相対的にとらえて、粒径が大きく、又は小さく変化した状況をとらえる。
【0038】
3)抄紙工程水
本発明において、測定対象となる抄紙工程水としては、紙の原料スラリーやインレット内のスラリー、白水等が挙げられる。このうち、紙の原料スラリーは、通常の紙パルププロセスにおける原料スラリーであり、この原料スラリー中の紙原料としては、例えばLBKP、NBKP、TMP、古紙、DIP、コートブロークなどが挙げられ、これらの任意の2種以上の混合物でも良い。
4)被測定流体
本発明では、上記3)記載の抄紙工程水について、5)記載の製紙用薬剤を添加する前の抄紙工程水と添加後の抄紙工程水を被計測流体とし、薬剤添加前と後の抄紙工程水の両方について計測を行う。そして、薬剤添加前後の計測値を比較することにより、薬剤の効果判断を行う。なお、この場合、必要に応じて各抄紙工程水を6)の希釈用水で希釈して計測してもよい。
【0039】
5)製紙用薬剤
このような抄紙工程水に添加される製紙用薬剤としては特に制限はなく、紙パルププロセスにおいて通常使用されているカチオン系合成ポリマー、或いはカチオン系合成ポリマーとアニオン系合成ポリマーとの組み合わせ、両性合成ポリマーなど、任意のものを用いることができる。これらの製紙用薬剤の添加量は、通常、処理対象の紙パルププロセスの設定条件や原料スラリーの性状に応じて適宜決定される。
【0040】
6)希釈用水及び計測濃度
測定にあたっては、製紙用薬剤の添加前後の原料スラリー等の抄紙工程水は原液のままでも良く、必要に応じて水で希釈して測定に供しても良い。即ち、抄紙工程水のパルプ繊維濃度が過度に高い場合には照射光やアニオントラッシュ成分からの散乱光が高濃度に存在するパルプ繊維により妨害を受けやすくなることにより、アニオントラッシュ成分に対応する正確な計測値を確実に得ることができない場合があるので、抄紙工程水は必要に応じて希釈する。希釈倍率については特に制限はなく、任意に決定することができるが、測定に供する抄紙工程水の固形分濃度としては、一般的には500〜60000mg/Lの範囲であることが好ましいことから、このような濃度となるように希釈を行うことが好ましい。
【0041】
希釈用水としては特に制限はなく、水道水、工業用水、中水、白水の加圧浮上又は凝集沈殿処理水などを用いることができる。
【0042】
7)流速
測定時の被測定流体は、濁度成分の沈降を防止して均一分散液状とするために、流動状態とし、必要に応じて攪拌を行ってもよい。この被測定流体の流速としては特に制限はなく、測定に供する被測定流体の濃度によっても異なるが、測定値の安定性の面から、0.2〜5.0m/s、特に0.5〜3.0m/sの範囲であることが好ましい。
【0043】
8)測定部のサイズ
測定部の大きさは、レーザー光発光面から壁面までの距離(図1において、レーザ光照射部3の先端と計測槽20の内壁面との距離)が1cm以上離れていることが好ましい。この距離が1cmよりも近いと、壁面でのレーザー光の反射が測定値に影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
【0044】
9)被測定流体の採取箇所
本発明においては、紙パルププロセスの所定の箇所から紙の原料スラリー等の抄紙工程水を抜き出し、図1に示すような装置で測定を行っても良く、図2又は図4に示す遮蔽部材22を、紙パルププロセスの所定の箇所に直接投入して測定を行っても良い。紙パルププロセスから抄紙工程水を抜き出して測定を行う場合、図1に示す装置には更に必要に応じて希釈槽を設けることが好ましい。
【0045】
10)測定間隔
測定は連続的に行っても良く、間欠的に行っても良い。間欠的に測定を行う場合の測定頻度は、薬剤効果の推移を確認できれば良く、任意に設定することができ、例えば1〜2時間に1回の測定頻度とすることができる。測定を行っていない場合には、例えば、計測槽に水を流して、後述のレーザー光照射部/受光部の洗浄を行っても良い。
【0046】
11)検量線
通常は、散乱光の電気信号の最低値及び散乱強度の変化を相対的にとらえて、薬剤効果の変化を検知するが、予め電気信号の最低値及び散乱強度が既知のサンプル液を用いて同様の測定を行って、測定値との関係を示す検量線を作成しておき、この検量線に測定値をあてはめて、抄紙工程水での薬剤の効果判断及び、薬注制御を行うことができる。
【0047】
12)計測部の洗浄
測定に用いるレーザ光照射部と散乱光受光部は、汚れの付着による測定精度の低下を防止するために、定期的に洗浄を行うことが好ましい。この照射部/受光部の洗浄は、空気又は水で行うことができる。
【0048】
圧縮空気での洗浄の場合、被測定対象液である原料スラリー中で空気の散気による気液混合状態で行う。洗浄時間には特に制限はないが、計測の安定性の点からレーザ光照射部/受光部各々3〜5秒間が良い。洗浄間隔は特に制限はないが、計測の安定性の点からレーザ光照射部/受光部各々40〜120秒間隔での洗浄が良い。洗浄圧は特に制限はないが、計測の安定性の点から0.01MPa以上の圧力が良く、より好ましくは0.05〜0.5MPaである。
【0049】
水での洗浄の場合、高圧水でセンサ先端を洗浄するか、計測槽に清水を0.5m/秒以上の流速で通水し、計測槽及びセンサ先端の洗浄を行う。洗浄時間は、高圧水の場合は1回あたり3〜60秒程度、通水の場合は、1回あたり130秒以上がよい。
【0050】
13)メンテナンス
前述の本発明の装置は、1ヶ月ないしは1週間に1回の頻度でレーザー光照射部/受光部の清浄度や照射されたレーザー光の輝度確認を行うことが好ましいが、このようなメンテナンス頻度は状況に応じて任意に決定することができる。
【0051】
14)製紙用薬剤の薬注制御
本発明の製紙用薬剤の効果監視装置及び方法により得られた薬注効果の情報は、これを出力信号として出力し、この信号に基づいて薬注ポンプや原料スラリーの送液ポンプの制御を行って、最適な薬注条件を維持することができる。
【0052】
即ち、例えば、前述の信号強度の最低値から薬注量を増減する方法と併用し、本発明の散乱光強度信号からの情報で薬注量を増減してもよく、又は本発明に係る散乱光強度信号からの情報のみで薬注量を増減して、制御してもよい。
【0053】
具体的には、次のような薬注制御を行うことができる。
以下においては、抄紙工程水としてインレット内のスラリーへの適用例について説明する。
通常のマシン操作にて紙の製造を開始し、薬注量が最適で安定した生産状態にする。この時、歩留向上剤添加前のインレット内のスラリーのサンプリング配管と、歩留向上剤添加後のインレット内のスラリーのサンプリング配管をそれぞれ分岐して、センサプローブを装着したセンサ計測槽と流路を切り替えられるバルブを介して接続する。つまり、歩留向上剤添加前と後のインレット内スラリーをバルブ切換で交互にセンサ計測できるように配管する。計測後のインレット内スラリーは白水ビットに戻すようにする。センサ計測槽にてレーザー発光部で所定の流速が確保できていることを確認し、散乱強度計測及びセンサ出力信号の最低値の計測を開始する。例として、2秒に1回200mS間欠発光レーザーでの計測を述べる。
【0054】
(1)粒径情報を使った制御
薬剤添加前のインレット内スラリーについて2秒ごとの散乱強度を5分間計測し、その散乱強度の平均値を粒径情報とする。同じ操作を5回行い、5点の粒径情報の平均を確認する。通常、この値は30〜50mV程度になる。同じく、薬剤添加後のインレット内スラリーについて2秒ごとの散乱強度を5分間計測し平均した粒径情報5点の粒径情報の平均を確認する。通常、この値は80〜150mV程度になる。これらの変化幅は原料の変化やSS濃度の変動に由来するインレット内スラリーの性状変化である。センサ計測は、薬剤添加前と後のインレット内スラリーの粒径情報を任意の間隔で交互に計測する。常に薬剤添加前と後の状態を監視するので、インレット内スラリーの性状変動に影響されることなく計測ができる。また、薬注量が最適で安定した生産状態での歩留向上剤注入のインバータポンプの出力%を現状値とする。
【0055】
制御方法としては、薬注後散乱強度(mV)−薬注前散乱強度(mV)=偏差(mV)とし、例えば80<偏差≦100の時インバーターポンプの出力は現状値のまま、50<偏差≦80の時は現状値+20%、30<偏差≦50の時は現状値+30%、偏差≦30の時は現状値+50%、100<偏差の時は現状値−20%、とするような一般的なプログラムを予めセンサに組み込んでおき、センサから制御信号をインバータポンプに出力することにより、粒径情報に応じた薬注制御が可能となる。この時の計測頻度、偏差に対するインバータポンプへの出力%は、実際の製造における条件変動に応じて任意に決めることができる。
【0056】
(2)濁度情報を使った制御
薬剤添加前のインレット内スラリーについて2秒ごとのセンサ出力最低値を5分間計測し、その平均値を濁度情報とする。同じ操作を5回行い、5点の濁度情報の平均を確認する。通常、この値は4000〜5000mV程度になる。同じく、薬剤添加後のインレット内スラリーについて2秒ごとの散乱強度を5分間計測し平均した濁度情報5点の濁度情報の平均を確認する。通常、この値は2000〜4000mV程度になる。これらの変化幅は原料の変化やSS濃度の変動に由来するインレット内スラリーの性状変化である。センサ計測は、薬剤添加前と後のインレット内スラリーの濁度情報を任意の間隔で交互に計測する。常に薬剤添加前と後の状態を監視するので、インレット内スラリーの性状変動に影響されることなく計測ができる。また、薬注量が最適で安定した生産状態での歩留向上剤注入のインバータポンプの出力%を現状値とする。
【0057】
制御方法としては、薬注前センサ出力最低値(mV)−薬注後センサ出力最低値(mV)=偏差(mV)とし、例えば2000<偏差≦3000の時インバーターポンプの出力は現状値のまま、1500<偏差≦2000の時は現状値+20%、1000<偏差≦1500の時は現状値+30%、偏差≦1000の時は現状値+50%、3000<偏差の時は現状値−20%、とするような一般的なプログラムを予めセンサに組み込んでおき、センサから制御信号をインバータポンプに出力することにより、濁度情報に応じた薬注制御が可能となる。この時の計測頻度、偏差に対するインバータポンプへの出力%は、実際の製造における条件変動に応じて任意に決めることができる。
【実施例】
【0058】
以下に比較例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0059】
以下の比較例及び実施例においては、添加薬剤、抄紙工程水として以下のものを用いた。
1)薬剤:カチオン系合成ポリマー
・構造,組成:ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル四級化物/アクリル
アミド=25/75(モル%)
・固有粘度:13.5(dl/g)(溶媒=1N NaCl(30℃))
・使用濃度:0.2wt%
・添加率:0〜5.6mg/l(対スラリー)
2)抄紙工程水:インレット内スラリー
・濃度:6850mg/l
・外観:繊維分含有の白色スラリー
【0060】
(比較例1)
以下の手順で濾液量の測定を行った。
(1) 500mlビーカーにインレットから採取したスラリーを180ml入れて、薬剤を所定量添加した。
(2) 撹拌機にて500rpmで40秒間攪拌した。
(3) 上記(2)の液を、直ちに60メッシュナイロン濾布を敷いたヌッチェロートにあけ、10秒間の濾水量を計測した。
(4) (1)の薬剤添加率と(3)で測定された濾液量との関係を図6に示した。
【0061】
(実施例1)
図1に示す装置を用い、以下の手順で散乱光強度の測定を行った。
(1) 3000mlビーカーにインレットから採取したスラリーを1800ml入れて、薬剤を所定量添加した。
(2) 撹拌機にて500rpmで40秒間攪拌した。
(3) 上記(2)の液にレーザー散乱光のセンサプローブ(図2に示す遮蔽部材22)を浸漬し、250rpmの攪拌下(流速1.3m/s)で、センサによる計測を行った。計測項目は、薬剤添加前後のインレット内スラリーについて計測された散乱光の電気信号の最低値の差(以下「濁度情報(mV)」とする。)、及び散乱強度の差(以下「粒径情報法(mV)」とする)で、レーザー光を2分間隔で200m秒発光させ、120秒間の散乱強度の平均値を求めた。
(4) 解析は、薬剤無添加(0mg/l)時の計測値と薬剤添加時の計測値の差を求め、比較例で示した通常の濾水試験結果との関係を整理した。
【0062】
薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を図7に、薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を図8に示した。
【0063】
また、同一薬剤添加率における比較例1の濾液量と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を図9に、同一薬剤添加率における比較例1の濾液量と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を図10に示した。
また、これらの結果を表1にまとめて示した。
【0064】
【表1】
【0065】
これらの結果より、薬剤添加の前後の抄紙工程水について計測された散乱光の電気信号の最低値及び散乱強度の差から求めた濁度情報及び粒径情報と濾液量には明確な相関が認められ、センサによるレーザー光散乱光強度及び散乱光の電気信号の最低値が、薬剤添加によるインレット内スラリーの微細フロックの大きさと濁度を検知していることが確認された。
【0066】
この結果により、レーザー光散乱方式センサを用いて、本発明に従って薬剤添加前後の抄紙工程水について散乱光強度や散乱光の電気信号の最低値の測定を行うことにより、抄紙工程水に添加した歩留向上剤などの薬剤の効果を連続的にモニタリングできることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態に係る製紙用薬剤の効果監視装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】図1に示したレーザ光照射部と散乱光受光部の構成を示す拡大図である。
【図3】図2に示した遮蔽部材22の斜視図である。
【図4】レーザ光照射部と散乱光受光部の他の構成例を示す拡大図である。
【図5】微小コロイド粒子の凝集に伴う、微小測定領域での散乱光強度の変化の様子を示す模式図である。
【図6】比較例1における、薬剤添加率と濾液量との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1における、薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【図8】実施例1における、薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【図9】同一薬剤添加率での、比較例1の濾液量と、実施例1における薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【図10】同一薬剤添加率での、比較例1の濾液量と、実施例1における薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザ発振器
2 第1の光ファイバ
3 レーザ照射部
4 散乱光受光部
5 第2の光ファイバ
6 光電変換回路
7 検波回路
8 最低値検出回路
11 ファンクションゼネレータ
12 レーザダイオード
20 計測槽
22 遮蔽部材
23 測定領域
24 溝部
61 フォトデテクター
62 バンドパスフィルタ
63 増幅器
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙用薬剤の効果監視、注入量制御方法に係る。特に、抄紙工程において、紙の原料スラリーやインレットに添加される製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認する方法と、その監視結果に基づき製紙用薬剤の注入量を的確に制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料には、LBKP、NBKP、TMPなどの他、近年は古紙の利用率の向上、ブロークパルプの配合率向上、系のクローズド化が進み、古紙、DIP、コートブロークなども多用されてきている。これらの原料にはアニオン性不純物、いわゆるアニオントラッシュが多く、アニオントラッシュによるピッチ、欠陥の発生だけでなく、断紙、生産スピードダウンといった生産性の低下を招いている。
【0003】
これらの問題に対して、カチオン性スターチ及びコロイドシリカを添加する方法(USP4388150)、合成カチオン性ポリマーを加えた後次のステップでベントナイトを添加する方法(EP235893、特開昭62−191598)、分子量の低いカチオン性ポリマーを添加し、次いでアニオン性ポリマーを添加する方法(特公平5−29719)等に開示されるような様々な薬剤添加により、アニオントラッシュをパルプ繊維に定着させ、系外へ除去することが行われている。
【0004】
また、従来、これらの薬剤の添加効果は下記のような間接的手法により断続的に管理されている。
(1) 出来上がった紙の品質及び欠陥の評価や生産スピードの管理
(2) 原料スラリー、インレット内スラリーの粒子表面電荷(カチオン要求量)の測定
(3) 原料スラリー、インレット内スラリーを濾過した濾液の透過光による濁度測定
【0005】
しかし、上記従来の方法では、各々、次のような課題があった。
(1) 出来上がった紙の品質及び欠陥の評価や生産スピードの管理:
直接的に薬剤効果の影響を確認できるものの、すでに生産が始まった後又は紙が出来上がった後での管理であり、トラブル解決への対応が著しく遅れるという課題がある。
【0006】
(2) 原料スラリー、インレット内スラリーの粒子表面電荷(カチオン要求量)の測定:
表面電荷はあくまで間接的な評価であり、必ずしも表面電荷の変化とアニオントラッシュに起因する欠陥とは相関しない場合がある。
【0007】
(3) 原料スラリー、インレット内スラリーを濾過した濾液の濁度測定:
アニオントラッシュ成分による濁度を直接測るものであり、信頼性が高いが、濾過工程が必須であるため、濾過装置の目詰まりトラブルが起き易いこと、メンテナンス頻度が高いこと、洗浄機構などを備えることにより装置が高価になることなど、課題が多い。
【0008】
上記の課題に対し、本願出願人は、特願2005−370143にて、レーザ光散乱方式のセンサにより、抄紙工程の薬剤効果を監視、及び薬注制御する方法を提案した。これにより、高精度に薬剤効果の監視ができ、紙製品の異常や製造時のトラブル発生を防止することができるが、場合によっては、計測対象の抄紙工程水の水質が変化し、センサ計測による絶対値だけでは完全な監視及び制御が難しいケースがあるため、その改善策の必要があった。
【0009】
なお、抄紙工程水の水質変動の理由は次の通りである。
即ち、紙の原料には、前述の如く、LBKP、NBKP、TMPなどの他、近年は古紙の利用率の向上、ブロークパルプの配合率向上、系のクローズド化が進み、古紙、DIP、コートブロークなどの回収原料も多用されてきている。特に、抄紙工程水の性状変動に大きく影響するのが回収原料の性状で、その品質、性状を一定に保つことは極めて困難である。つまり、単純に固形分濃度だけでなく、パルプ繊維の長さ、その分布、灰分の量と種類、色合いなど、変動因子は多く、基本的にこれらを制御することは困難と言わざるを得ないからである。
【特許文献1】USP4388150
【特許文献2】EP235893
【特許文献3】特開昭62−191598
【特許文献4】特公平5−29719
【特許文献5】特願2005−370143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決し、抄紙工程において紙の原料スラリーやインレット内スラリー等の抄紙工程水に添加される歩留向上剤、濾水性向上剤、凝結剤、ピッチコントロール剤等の製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認することができる製紙用薬剤の効果監視方法と、このような監視結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を的確に制御する製紙用薬剤の注入量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の製紙用薬剤の効果監視方法は、抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果を監視する方法において、抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程とを含む製紙用薬剤の効果監視方法であって、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報とを比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の製紙用薬剤の注入量制御方法は、抄紙工程水への製紙用薬剤の注入量を制御する方法において、抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程とを含む製紙用薬剤の注入量制御方法であって、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報とを比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程と、前記比較データに基づき前記製紙用薬剤の注入量を制御する第五工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、抄紙工程において紙の原料スラリーやインレット内スラリー等の抄紙工程水に添加される歩留向上剤、濾水性向上剤、凝結剤、ピッチコントロール剤等の製紙用薬剤の効果を迅速かつ確実に確認することができ、この監視結果に基づいて製紙用薬剤の注入量を的確に制御することができる。
【0014】
即ち、レーザ光の反射は、これが照射されて当たった粒子の大きさに関係し、大きい粒子に当たると大きな反射を起こし、小さな粒子に当たると小さな反射を起こす。従って、被測定流体にレーザ光を照射して、被測定流体中の粒子により散乱された散乱光の強度を計測することにより、抄紙工程水中のアニオントラッシュ等の粒子の大きさの変化(粒径情報)をとらえることができる。また、この散乱光強度データの最低値は、粒子間の間隙を示す濁度情報を与えるため、この原理を利用することにより、紙の原料スラリーやインレット内スラリーなどに添加された製紙用薬剤の効果をモニタリングすることができ、さらには、このデータを使って、製紙用薬剤の薬注制御を的確に行うことが可能となる。
【0015】
しかも、本発明では、薬剤添加後の抄紙工程水について散乱光強度データを計測するだけでなく、薬剤添加前の抄紙工程水についても散乱光強度データを計測し、その差を検知するため、抄紙工程水の水質が変動しても安定した結果を得ることができる。
【0016】
即ち、前述の如く、紙の原料スラリー、インレット内スラリー等の抄紙工程水の性状は変動し易いため、薬剤添加後の抄紙工程水のみについて計測したセンサ計測絶対値だけでは、処理の良し悪しが判断できず、管理が困難になる場合がある。本発明によれば、薬剤添加前後の抄紙工程水について散乱光強度データを計測し、これらを相対的に管理することにより、安定した監視及び薬注制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
[抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果の監視]
本発明に従って、抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果を監視するには、抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射し、該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得、この散乱光強度データに基づき被測定流体中の粒子の粒径及び/又は濁度の変化をとらえる。
【0019】
1) 製紙用薬剤の効果監視装置
まず、図1〜4に基づいて、本発明に好適な製紙用薬剤の効果監視装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の好適例に係る製紙用薬剤の効果監視装置の概略構成を示す構成図であり、図2は、図1に示すレーザ光照射部と散乱光受光部の構成を示す拡大図である。なお、以下においては、抄紙工程水として紙の原料スラリーの計測を行う場合を示すが、後述の如く、本発明における被測定流体は何ら紙の原料スラリーに限定されず、その他インレットにおけるスラリー、プレス搾水等の各種の抄紙工程水及びその希釈水が挙げられる。
【0021】
この製紙用薬剤の効果監視装置は、レーザ発振器1、第1の光ファイバ2、レーザ光照射部3、散乱光受光部4、第2の光ファイバ5、光電変換回路6、検波回路7、最低値検出回路8から構成される。20は、原料スラリー21が貯えられる計測槽であり、計測槽20内の原料スラリー21中には、遮蔽部材22(以下「センサプローブ」と称す場合がある。)の底部に配設されたレーザ光照射部3と散乱光受光部4が投入されている。この遮蔽部材22は上方からの自然光がレーザ光照射部3と散乱光受光部4間の測定領域23に到るのを遮蔽している。
【0022】
即ち、遮蔽部材22は図3に示す通り、底面が下方に突出し、突出した両側面に溝部24が形成された五角柱であり、この溝部24に、第1の光ファイバ2と第2の光ファイバ5とが固定され、第1の光ファイバ2の一端であるレーザ光照射部3と第2の光ファイバ5の一端である散乱光受光部4が、図2中、左右対称(線対称)に配設されている。さらに第1の光ファイバ2のレーザ光照射部3と第2の光ファイバ5の散乱光受光部4の中心線は互いに90度で交差していることが好ましい。
【0023】
また、一般にレーザ発振器1から発振されるレーザ光の強度は、自然光と区別するために変調することが好ましく、光電変換回路6で受光した散乱光強度を元の電気信号に戻すためには、70〜150kHz程度の変調が好ましい。そこで、本実施形態の構成において、レーザ発振器1はファンクションゼネレータ11とレーザダイオード12とからなり、ファンクションゼネレータ11から発生する所定周波数、例えば95kHzの電気信号で振幅変調(AM)したレーザ光をレーザダイオード12から第1の光ファイバ2の一端に出射している。このレーザ光は第1の光ファイバ2を介してレーザ光照射部3となっている光ファイバ2の他の一端から原料スラリー中に出射している。なお、レーザ発振器は、ファンクションゼネレータとレーザダイオードに限定されるものではなく、例えば発光ダイオード等を用いることも可能である。
【0024】
原料スラリー中には、アニオントラッシュ成分の粒子が存在しており、レーザ光照射部3からアニオントラッシュ成分の粒子に照射されたレーザ光は散乱して散乱光となり、散乱光受光部4となっている第2の光ファイバ5の一端から光ファイバ5に入射している。本実施形態において、測定領域23は、レーザ光照射部3から出射されるレーザ光が照射する領域と、散乱光受光部4が散乱光を受光できる領域との重なり合った領域となっており、散乱光受光部4は測定領域23から90度(第2の光ファイバ5の中心線)方向に散乱した散乱光を受光している。
【0025】
なお、遮蔽部材22におけるレーザ光照射部の構成は、図2に示すものに何ら限定されず、図4に示す如く、遮蔽部材22の測定領域23近傍にレーザーダイオード12を設けて電流ケーブル12Aを引き、遮蔽部材22の測定領域近傍で直接レーザ光を発光させるものであっても良く、この場合には、レーザ光照射部まで光ファイバを使用しないことにより、光ファイバの破損等を防止することができる。図4において、レーザ照射部以外の構成は図2に示すものと同様であり、同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0026】
光電変換回路6は、フォトデテクター61、バンドパスフィルタ62及び増幅器63とからなり、第2の光ファイバ5の他の一端に接続されたフォトデテクター61によって散乱光の光信号を電気信号に変換し、バンドパスフィルタ62で自然光と区別するために電気信号から変調周波数成分の信号を取り出し、増幅器63において増幅して検波回路7に出力する。なお、光電変換回路6は、光信号を電気信号に変換するものであれば上記構成のものに限らず、例えばフォトデテクターの代わりにフォトダイオードを用いても良いし、バンドパスフィルタの代わりに低域フィルタを用いても良い。
【0027】
変調周波数成分の信号は、散乱光強度の変化を測定するために、検波回路7にてAM検波を行ってその検波後の信号を最低値検出回路8に出力する。なお、検波回路7によって出力された信号は、低域フィルタを通過する信号と同等の信号処理が施されることとなる。従って、バンドパスフィルタ62のカットオフ周波数を適当に選択することによって、検波回路7はこのカットオフ周波数の変動を取り除いた直流分の出力波形の信号として検出し、最低値検出回路8に出力することができる。このように本実施形態では、フォトデテクター61で検出された光信号のうち、バンドパスフィルタ62で変調周波数成分を取り出し増幅器63で増幅した後、AM検波を行うことで、アニオントラッシュ成分の微小粒子の散乱に伴う光強度の変化を信号強度の変化として測定できる。ただし、AM検波は必ずしも必要とされず、変調周波数成分の信号を直接最低値検出回路8に出力しても良い。
【0028】
最低値検出回路8は、入力する直流分の信号から最低値の信号強度を検出している。この最低値の検出とは、図1に示した増幅器63から出力される信号波形で説明すると、波形のくびれ部分を測定することである。くびれ部分以外の部分は、粗大な紙原料及び微小なアニオントラッシュ成分粒子が測定領域23に存在している時であり、くびれ部分は、紙原料が、測定領域から出ていった時である。従って、最低値検出回路8が信号強度の最低値を検出することにより、アニオントラッシュ成分の微小粒子のみが存在する時の散乱光強度、即ちアニオントラッシュ成分の微小粒子の粒径を測定することが可能となる。そして、この最低値の減少は、測定領域でのアニオントラッシュ成分の微小粒子の粒径が小さくなったことを表し、また最低値の増大は、アニオントラッシュ成分の微小粒子の粒径が大きくなったことを表す。
【0029】
具体的に、薬剤効果の測定原理は以下のようなものである。即ち、計測槽20内の原料スラリー21の攪拌に伴って測定領域23にコロイド状の微小なアニオントラッシュ成分粒子(以下「微小コロイド粒子」と称す。)が流入出するときに散乱光の変動が生じることとなる。この変動の周期は、測定領域を粒子と見なして、微小コロイド粒子との間に生じる衝突回数を想定することにより概算することができる。即ち、測定領域23を直径Rの球体、微小コロイド粒子を直径rの球体でそれぞれ近似すると、この場合の衝突断面積Q0は、Q0=π(R+r)2で与えられる。また、微小コロイド粒子密度をN、測定領域に対する粒子の相対速度をvとすると、単位時間当たりに微小コロイドが測定領域に流入する回数νは、ν=NQ0vとなる。同じく、微小コロイド粒子が測定領域から出て行く時にも同様の変動が生じるので、散乱光強度を微分した値の周期は、この回数の2倍の値となる。そして、散乱光強度は微小コロイド粒子の粒径のn乗に比例すると仮定し、多重散乱を無視すると、微小コロイド粒子1個の流出入に伴う散乱光強度の変動Aは、A=A0rnとなる。なお、A0は測定系に依存する定数であり、標準試料を用いて校正される。
【0030】
ここで、微小コロイド粒子は、直径rが小さく粒子密度Nが大きいので、散乱光の微小な変動が短い周期で生じることとなる。そこで、検波回路7で変調周波数成分の検波を行うことにより、上述したごとく出力波形は低域フィルタを通過するのと等価な信号処理が施されるので、フィルタ62のカットオフ周波数を適当に選ぶことにより、この変動を取り除いた直流分の信号として検出することができる。
【0031】
一方、原料スラリー中の紙原料では、測定領域に流出入する際の変動が大きく、かつこの変動の平均周期は長くなる。従って紙原料の密度と測定領域体積との積が1より小さい時には、検波後の出力波形の最低値が微小コロイド粒子の散乱に対応していることになる。これにより本実施形態では、検波回路7の後段に最低値検出回路8を接続させることによって、原料スラリー中の微小コロイド粒子、即ちアニオントラッシュ成分による散乱光と紙原料による散乱光とを区別し、アニオントラッシュ成分による散乱光のみを取り出すことが可能となるので、薬剤によるアニオントラッシュ成分の低減効果が適切に把握できる。
【0032】
また、本実施形態の監視装置では、特別な測定部を別途設ける必要がなく、遮蔽部材に取り付けたレーザ光照射部と散乱光受光部を計測槽に投入するのみで散乱光を測定することができるので、簡易な装置構成の監視装置を提供することができる。さらに、本実施形態の監視装置は、装置構成が簡易で軽量、小型化が図られるため、投げ込み式の監視装置にすることも可能である。
【0033】
なお、本発明においては、このような装置を1台用意し、電磁弁等で自動的に計測対象液を薬剤添加前の原料スラリーと薬剤添加後の原料スラリーとで切り替えができるような構造・機構を取り入れてもよく、手動のバルブで切り替える構造でもよい。また、このような装置を2台用意し、薬剤添加前と後の原料スラリーを別々に計測してもよい。
【0034】
2)受光された散乱光から変換された電気信号の最低値及び散乱強度
図1の装置において、測定領域23にて生じる散乱光について考察すると、この測定領域23に存在する微小コロイド粒子は薬剤の添加で微少フロック化し、フロック化とともに散乱光強度は大きくなる。
【0035】
従って、前述した構造のセンサプローブ(図2に示す遮蔽部材22)を用いて微小測定領域23における散乱光の強度を計測すると、図5(a)〜(c)にその概念を示すように、凝集が進んで微小コロイド粒子数が減少し、フロックの数が徐々に増加しても、フロックの数は懸濁物質(微小コロイド)の減少に比べ遥かに少ないので、プローブで検出される微小測定領域23の散乱光の平均強度は低下する。このため、プローブで検出されるフロックの凝集状態は、希に微小測定領域23に入り込むフロックで上記散乱光の強度が一時的に強くなったときを除いて、平均的な散乱光の強度は未凝集の懸濁物質(微小コロイド)の粒子数、すなわち濁度を示しているとみなし得る。なお、図5(a)〜(c)の横軸は時間軸であり、tは時間を示す。
【0036】
前述した最低値検出回路8は、上記観点に立脚し、散乱光の強度に応じた光電変換回路6の出力から得られる振幅変調周波数成分の信号の包絡線成分から最低値を検出することで、原料スラリーの未凝集の微小コロイドの粒子数(濁度)を検知することを可能とする。また、凝集が進んで微小コロイド粒子が、微少フロック化し、プローブにて検出される微小測定領域23の散乱光の強度が上記フロックにより大きくなる。これ故、微少フロック化に至るまでの散乱光強度の変化をとらえることで、微少フロックの粒径情報を得ることができる。
【0037】
散乱強度はセンサによる計測の検波信号の標準偏差で扱う。電気信号mVとして表示する。通常は、散乱強度の変化を相対的にとらえて、粒径が大きく、又は小さく変化した状況をとらえる。
【0038】
3)抄紙工程水
本発明において、測定対象となる抄紙工程水としては、紙の原料スラリーやインレット内のスラリー、白水等が挙げられる。このうち、紙の原料スラリーは、通常の紙パルププロセスにおける原料スラリーであり、この原料スラリー中の紙原料としては、例えばLBKP、NBKP、TMP、古紙、DIP、コートブロークなどが挙げられ、これらの任意の2種以上の混合物でも良い。
4)被測定流体
本発明では、上記3)記載の抄紙工程水について、5)記載の製紙用薬剤を添加する前の抄紙工程水と添加後の抄紙工程水を被計測流体とし、薬剤添加前と後の抄紙工程水の両方について計測を行う。そして、薬剤添加前後の計測値を比較することにより、薬剤の効果判断を行う。なお、この場合、必要に応じて各抄紙工程水を6)の希釈用水で希釈して計測してもよい。
【0039】
5)製紙用薬剤
このような抄紙工程水に添加される製紙用薬剤としては特に制限はなく、紙パルププロセスにおいて通常使用されているカチオン系合成ポリマー、或いはカチオン系合成ポリマーとアニオン系合成ポリマーとの組み合わせ、両性合成ポリマーなど、任意のものを用いることができる。これらの製紙用薬剤の添加量は、通常、処理対象の紙パルププロセスの設定条件や原料スラリーの性状に応じて適宜決定される。
【0040】
6)希釈用水及び計測濃度
測定にあたっては、製紙用薬剤の添加前後の原料スラリー等の抄紙工程水は原液のままでも良く、必要に応じて水で希釈して測定に供しても良い。即ち、抄紙工程水のパルプ繊維濃度が過度に高い場合には照射光やアニオントラッシュ成分からの散乱光が高濃度に存在するパルプ繊維により妨害を受けやすくなることにより、アニオントラッシュ成分に対応する正確な計測値を確実に得ることができない場合があるので、抄紙工程水は必要に応じて希釈する。希釈倍率については特に制限はなく、任意に決定することができるが、測定に供する抄紙工程水の固形分濃度としては、一般的には500〜60000mg/Lの範囲であることが好ましいことから、このような濃度となるように希釈を行うことが好ましい。
【0041】
希釈用水としては特に制限はなく、水道水、工業用水、中水、白水の加圧浮上又は凝集沈殿処理水などを用いることができる。
【0042】
7)流速
測定時の被測定流体は、濁度成分の沈降を防止して均一分散液状とするために、流動状態とし、必要に応じて攪拌を行ってもよい。この被測定流体の流速としては特に制限はなく、測定に供する被測定流体の濃度によっても異なるが、測定値の安定性の面から、0.2〜5.0m/s、特に0.5〜3.0m/sの範囲であることが好ましい。
【0043】
8)測定部のサイズ
測定部の大きさは、レーザー光発光面から壁面までの距離(図1において、レーザ光照射部3の先端と計測槽20の内壁面との距離)が1cm以上離れていることが好ましい。この距離が1cmよりも近いと、壁面でのレーザー光の反射が測定値に影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。
【0044】
9)被測定流体の採取箇所
本発明においては、紙パルププロセスの所定の箇所から紙の原料スラリー等の抄紙工程水を抜き出し、図1に示すような装置で測定を行っても良く、図2又は図4に示す遮蔽部材22を、紙パルププロセスの所定の箇所に直接投入して測定を行っても良い。紙パルププロセスから抄紙工程水を抜き出して測定を行う場合、図1に示す装置には更に必要に応じて希釈槽を設けることが好ましい。
【0045】
10)測定間隔
測定は連続的に行っても良く、間欠的に行っても良い。間欠的に測定を行う場合の測定頻度は、薬剤効果の推移を確認できれば良く、任意に設定することができ、例えば1〜2時間に1回の測定頻度とすることができる。測定を行っていない場合には、例えば、計測槽に水を流して、後述のレーザー光照射部/受光部の洗浄を行っても良い。
【0046】
11)検量線
通常は、散乱光の電気信号の最低値及び散乱強度の変化を相対的にとらえて、薬剤効果の変化を検知するが、予め電気信号の最低値及び散乱強度が既知のサンプル液を用いて同様の測定を行って、測定値との関係を示す検量線を作成しておき、この検量線に測定値をあてはめて、抄紙工程水での薬剤の効果判断及び、薬注制御を行うことができる。
【0047】
12)計測部の洗浄
測定に用いるレーザ光照射部と散乱光受光部は、汚れの付着による測定精度の低下を防止するために、定期的に洗浄を行うことが好ましい。この照射部/受光部の洗浄は、空気又は水で行うことができる。
【0048】
圧縮空気での洗浄の場合、被測定対象液である原料スラリー中で空気の散気による気液混合状態で行う。洗浄時間には特に制限はないが、計測の安定性の点からレーザ光照射部/受光部各々3〜5秒間が良い。洗浄間隔は特に制限はないが、計測の安定性の点からレーザ光照射部/受光部各々40〜120秒間隔での洗浄が良い。洗浄圧は特に制限はないが、計測の安定性の点から0.01MPa以上の圧力が良く、より好ましくは0.05〜0.5MPaである。
【0049】
水での洗浄の場合、高圧水でセンサ先端を洗浄するか、計測槽に清水を0.5m/秒以上の流速で通水し、計測槽及びセンサ先端の洗浄を行う。洗浄時間は、高圧水の場合は1回あたり3〜60秒程度、通水の場合は、1回あたり130秒以上がよい。
【0050】
13)メンテナンス
前述の本発明の装置は、1ヶ月ないしは1週間に1回の頻度でレーザー光照射部/受光部の清浄度や照射されたレーザー光の輝度確認を行うことが好ましいが、このようなメンテナンス頻度は状況に応じて任意に決定することができる。
【0051】
14)製紙用薬剤の薬注制御
本発明の製紙用薬剤の効果監視装置及び方法により得られた薬注効果の情報は、これを出力信号として出力し、この信号に基づいて薬注ポンプや原料スラリーの送液ポンプの制御を行って、最適な薬注条件を維持することができる。
【0052】
即ち、例えば、前述の信号強度の最低値から薬注量を増減する方法と併用し、本発明の散乱光強度信号からの情報で薬注量を増減してもよく、又は本発明に係る散乱光強度信号からの情報のみで薬注量を増減して、制御してもよい。
【0053】
具体的には、次のような薬注制御を行うことができる。
以下においては、抄紙工程水としてインレット内のスラリーへの適用例について説明する。
通常のマシン操作にて紙の製造を開始し、薬注量が最適で安定した生産状態にする。この時、歩留向上剤添加前のインレット内のスラリーのサンプリング配管と、歩留向上剤添加後のインレット内のスラリーのサンプリング配管をそれぞれ分岐して、センサプローブを装着したセンサ計測槽と流路を切り替えられるバルブを介して接続する。つまり、歩留向上剤添加前と後のインレット内スラリーをバルブ切換で交互にセンサ計測できるように配管する。計測後のインレット内スラリーは白水ビットに戻すようにする。センサ計測槽にてレーザー発光部で所定の流速が確保できていることを確認し、散乱強度計測及びセンサ出力信号の最低値の計測を開始する。例として、2秒に1回200mS間欠発光レーザーでの計測を述べる。
【0054】
(1)粒径情報を使った制御
薬剤添加前のインレット内スラリーについて2秒ごとの散乱強度を5分間計測し、その散乱強度の平均値を粒径情報とする。同じ操作を5回行い、5点の粒径情報の平均を確認する。通常、この値は30〜50mV程度になる。同じく、薬剤添加後のインレット内スラリーについて2秒ごとの散乱強度を5分間計測し平均した粒径情報5点の粒径情報の平均を確認する。通常、この値は80〜150mV程度になる。これらの変化幅は原料の変化やSS濃度の変動に由来するインレット内スラリーの性状変化である。センサ計測は、薬剤添加前と後のインレット内スラリーの粒径情報を任意の間隔で交互に計測する。常に薬剤添加前と後の状態を監視するので、インレット内スラリーの性状変動に影響されることなく計測ができる。また、薬注量が最適で安定した生産状態での歩留向上剤注入のインバータポンプの出力%を現状値とする。
【0055】
制御方法としては、薬注後散乱強度(mV)−薬注前散乱強度(mV)=偏差(mV)とし、例えば80<偏差≦100の時インバーターポンプの出力は現状値のまま、50<偏差≦80の時は現状値+20%、30<偏差≦50の時は現状値+30%、偏差≦30の時は現状値+50%、100<偏差の時は現状値−20%、とするような一般的なプログラムを予めセンサに組み込んでおき、センサから制御信号をインバータポンプに出力することにより、粒径情報に応じた薬注制御が可能となる。この時の計測頻度、偏差に対するインバータポンプへの出力%は、実際の製造における条件変動に応じて任意に決めることができる。
【0056】
(2)濁度情報を使った制御
薬剤添加前のインレット内スラリーについて2秒ごとのセンサ出力最低値を5分間計測し、その平均値を濁度情報とする。同じ操作を5回行い、5点の濁度情報の平均を確認する。通常、この値は4000〜5000mV程度になる。同じく、薬剤添加後のインレット内スラリーについて2秒ごとの散乱強度を5分間計測し平均した濁度情報5点の濁度情報の平均を確認する。通常、この値は2000〜4000mV程度になる。これらの変化幅は原料の変化やSS濃度の変動に由来するインレット内スラリーの性状変化である。センサ計測は、薬剤添加前と後のインレット内スラリーの濁度情報を任意の間隔で交互に計測する。常に薬剤添加前と後の状態を監視するので、インレット内スラリーの性状変動に影響されることなく計測ができる。また、薬注量が最適で安定した生産状態での歩留向上剤注入のインバータポンプの出力%を現状値とする。
【0057】
制御方法としては、薬注前センサ出力最低値(mV)−薬注後センサ出力最低値(mV)=偏差(mV)とし、例えば2000<偏差≦3000の時インバーターポンプの出力は現状値のまま、1500<偏差≦2000の時は現状値+20%、1000<偏差≦1500の時は現状値+30%、偏差≦1000の時は現状値+50%、3000<偏差の時は現状値−20%、とするような一般的なプログラムを予めセンサに組み込んでおき、センサから制御信号をインバータポンプに出力することにより、濁度情報に応じた薬注制御が可能となる。この時の計測頻度、偏差に対するインバータポンプへの出力%は、実際の製造における条件変動に応じて任意に決めることができる。
【実施例】
【0058】
以下に比較例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0059】
以下の比較例及び実施例においては、添加薬剤、抄紙工程水として以下のものを用いた。
1)薬剤:カチオン系合成ポリマー
・構造,組成:ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル四級化物/アクリル
アミド=25/75(モル%)
・固有粘度:13.5(dl/g)(溶媒=1N NaCl(30℃))
・使用濃度:0.2wt%
・添加率:0〜5.6mg/l(対スラリー)
2)抄紙工程水:インレット内スラリー
・濃度:6850mg/l
・外観:繊維分含有の白色スラリー
【0060】
(比較例1)
以下の手順で濾液量の測定を行った。
(1) 500mlビーカーにインレットから採取したスラリーを180ml入れて、薬剤を所定量添加した。
(2) 撹拌機にて500rpmで40秒間攪拌した。
(3) 上記(2)の液を、直ちに60メッシュナイロン濾布を敷いたヌッチェロートにあけ、10秒間の濾水量を計測した。
(4) (1)の薬剤添加率と(3)で測定された濾液量との関係を図6に示した。
【0061】
(実施例1)
図1に示す装置を用い、以下の手順で散乱光強度の測定を行った。
(1) 3000mlビーカーにインレットから採取したスラリーを1800ml入れて、薬剤を所定量添加した。
(2) 撹拌機にて500rpmで40秒間攪拌した。
(3) 上記(2)の液にレーザー散乱光のセンサプローブ(図2に示す遮蔽部材22)を浸漬し、250rpmの攪拌下(流速1.3m/s)で、センサによる計測を行った。計測項目は、薬剤添加前後のインレット内スラリーについて計測された散乱光の電気信号の最低値の差(以下「濁度情報(mV)」とする。)、及び散乱強度の差(以下「粒径情報法(mV)」とする)で、レーザー光を2分間隔で200m秒発光させ、120秒間の散乱強度の平均値を求めた。
(4) 解析は、薬剤無添加(0mg/l)時の計測値と薬剤添加時の計測値の差を求め、比較例で示した通常の濾水試験結果との関係を整理した。
【0062】
薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を図7に、薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を図8に示した。
【0063】
また、同一薬剤添加率における比較例1の濾液量と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を図9に、同一薬剤添加率における比較例1の濾液量と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を図10に示した。
また、これらの結果を表1にまとめて示した。
【0064】
【表1】
【0065】
これらの結果より、薬剤添加の前後の抄紙工程水について計測された散乱光の電気信号の最低値及び散乱強度の差から求めた濁度情報及び粒径情報と濾液量には明確な相関が認められ、センサによるレーザー光散乱光強度及び散乱光の電気信号の最低値が、薬剤添加によるインレット内スラリーの微細フロックの大きさと濁度を検知していることが確認された。
【0066】
この結果により、レーザー光散乱方式センサを用いて、本発明に従って薬剤添加前後の抄紙工程水について散乱光強度や散乱光の電気信号の最低値の測定を行うことにより、抄紙工程水に添加した歩留向上剤などの薬剤の効果を連続的にモニタリングできることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態に係る製紙用薬剤の効果監視装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】図1に示したレーザ光照射部と散乱光受光部の構成を示す拡大図である。
【図3】図2に示した遮蔽部材22の斜視図である。
【図4】レーザ光照射部と散乱光受光部の他の構成例を示す拡大図である。
【図5】微小コロイド粒子の凝集に伴う、微小測定領域での散乱光強度の変化の様子を示す模式図である。
【図6】比較例1における、薬剤添加率と濾液量との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1における、薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【図8】実施例1における、薬剤添加率と、薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【図9】同一薬剤添加率での、比較例1の濾液量と、実施例1における薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の濁度情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【図10】同一薬剤添加率での、比較例1の濾液量と、実施例1における薬剤添加の場合と薬剤無添加の場合の粒径情報(mV)の差との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザ発振器
2 第1の光ファイバ
3 レーザ照射部
4 散乱光受光部
5 第2の光ファイバ
6 光電変換回路
7 検波回路
8 最低値検出回路
11 ファンクションゼネレータ
12 レーザダイオード
20 計測槽
22 遮蔽部材
23 測定領域
24 溝部
61 フォトデテクター
62 バンドパスフィルタ
63 増幅器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果を監視する方法において、
抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、
該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、
該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程と
を含む製紙用薬剤の効果監視方法であって、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と
を比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程とを有する製紙用薬剤の効果監視方法。
【請求項2】
抄紙工程水への製紙用薬剤の注入量を制御する方法において、
抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、
該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、
該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程と
を含む製紙用薬剤の注入量制御方法であって、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と
を比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程と、
前記比較データに基づき前記製紙用薬剤の注入量を制御する第五工程と
を有する製紙用薬剤の注入量制御方法。
【請求項1】
抄紙工程水に添加される製紙用薬剤の効果を監視する方法において、
抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、
該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、
該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程と
を含む製紙用薬剤の効果監視方法であって、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と
を比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程とを有する製紙用薬剤の効果監視方法。
【請求項2】
抄紙工程水への製紙用薬剤の注入量を制御する方法において、
抄紙工程水もしくはその希釈水を被測定流体として、該被測定流体にレーザ光を照射する第一工程と、
該被測定流体中の粒子により散乱された散乱光を受光して散乱光強度データを得る第二工程と、
該散乱光強度データに基づき前記被測定流体中の粒子の粒径情報及び/又は濁度情報を求める第三工程と
を含む製紙用薬剤の注入量制御方法であって、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加前の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と、
前記抄紙工程水として前記薬剤の添加後の抄紙工程水を使用して、前記第一〜第三工程を経て得た粒径情報及び/又は濁度情報と
を比較することにより、前記薬剤添加前後の比較データを得る第四工程と、
前記比較データに基づき前記製紙用薬剤の注入量を制御する第五工程と
を有する製紙用薬剤の注入量制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−262628(P2007−262628A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91459(P2006−91459)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】
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