説明

製造設備及び異常検知装置

【課題】噴射部を回転させながらタンク内を洗浄する設備におけるタンクの洗浄に関する異常をより確実に検知する。
【解決手段】液体製品を製造するための製造設備100は、タンク10と、タンク10内に配置されて洗浄液を噴射することによってタンク10内を洗浄するための噴射部20と、噴射部20を回転させる回転機構30と、噴射部30の回転の異常を検知する異常検知部40とを備える。異常検知部30は、噴射部20から噴射される洗浄液21をタンク10内の定位置で検知する液検知センサ42と、液検知センサ42から出力される信号に基づいて噴射部20の回転に異常があるかどうかを判定する判定部44とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体製品を製造するための製造設備及びそのような設備における噴射部の回転異常の検知に好適な異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール系飲料などのアルコール飲料、清涼飲料などのノンアルコール飲料、洗剤などの薬品その他の種々の液体製品の製造において、原料、中間製品又は最終製品を処理し又は貯留するためにタンクが使用される。このようなタンク、特に飲料の製造のためのタンクについては、使用の度に或いは定期的に内部を洗浄すべきである。
【0003】
タンクの内部を洗浄するための装置として、タンク内に配置されて洗浄液を噴射することによってタンク内を洗浄する噴射部(例えば、スプレーボール)とそれをタンク内で回転させる回転機構とが備えられうる。タンク内が洗浄されていることを保証するための方法には、種々の方法があり、それらが複合的に利用されるが、それらの方法の1つとして、噴射部の回転異常を検知する方法がある。
【0004】
噴射部の回転異常を検知する方法としては、噴射部を回転させるための回転機構における回転体、例えば、ギアや回転軸の回転を検知する方法が考えられる。
【特許文献1】特開平5−23280号公報
【特許文献2】特開平1−243982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
噴射部の回転異常を検知するために噴射部の回転機構における回転体の回転を検知する方法では、例えば、噴射部が脱落している場合や、回転機構の一部に破損等があって噴射部が適正に回転していない場合において、タンクの内壁に対して全周的に適正な回転数で洗浄液が吹き付けられていないとしても、それを検知することはできない。
【0006】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、例えば、噴射部を回転させながらタンク内を洗浄する設備におけるタンクの洗浄に関する異常をより確実に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、液体製品を製造するための製造設備に係り、前記製造設備は、タンクと、前記タンク内に配置されて洗浄液を噴射することによって前記タンク内を洗浄するための噴射部と、前記噴射部を回転させる回転機構と、前記噴射部の回転の異常を検知する異常検知部とを備える。前記異常検知部は、前記噴射部から噴射される洗浄液を前記タンク内の定位置で検知する液検知センサと、前記液検知センサから出力される信号に基づいて前記噴射部の回転に異常があるかどうかを判定する判定部とを含む。
【0008】
本発明の第2の側面は、タンクと、前記タンク内に配置されて洗浄液を噴射することによって前記タンク内を洗浄するための噴射部と、前記噴射部を回転させる回転機構とを有する製造設備において前記噴射部の回転の異常を検知する異常検知装置に係り、前記異常検知装置は、前記噴射部から噴射される洗浄液を前記タンク内の定位置で検知する液検知センサと、前記液検知センサから出力される信号に基づいて前記噴射部の回転に異常があるかどうかを判定する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、噴射部を回転させながらタンク内を洗浄する設備におけるタンクの洗浄に関する異常をより確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の好適な実施形態の製造設備を概略的に示す図である。本発明の好適な実施形態の製造設備100は、液体製品を製造するために使用される。液体製品の概念には、例えば、ビール系飲料などのアルコール飲料、清涼飲料などのノンアルコール飲料、洗剤などの薬品その他の種々の液体が含まれうる。
【0012】
製造設備100は、タンク10と、タンク10内に配置されて洗浄液を噴射することによってタンク10内を洗浄するための噴射部20と、噴射部20を回転させる回転機構30と、噴射部20の回転の異常を検知する異常検知部40とを備えている。
【0013】
タンク10は、液体製品の製造において、原料、中間製品又は最終製品を処理し又は貯留するために使用されうる。タンク10は、液体を収容するあらゆる容器でありうるものとして広義に解釈されるべきである。タンク10の例として、ビール系飲料の製造においては、例えば、仕込釜、仕込槽、麦汁ろ過槽、煮沸釜、醗酵タンク、熟成タンク等を挙げることができる。
【0014】
噴射部20は、その形式により、例えば、スプレーボールと呼ばれることがある。噴射部20には、不図示の送液管を通して洗浄液が供給され、その洗浄液は、噴射部20からタンク10の内壁に向けて噴射される。回転機構30は、噴射部20を適切な回転数で回転させる。回転数は、タンク10の大きさ、洗浄液の種類や使用量等に応じて適宜設定されうる。洗浄液は、広義に解釈されるべきであり、その概念には、例えば、薬液のほか、水も含まれる。
【0015】
異常検知部40は、噴射部20から噴射される洗浄液21をタンク10内の定位置で検知する液検知センサ42と、液検知センサ42から出力される信号に基づいて噴射部20の回転に異常があるかどうかを判定する判定部44とを含む。判定部44による判定結果は、不図示の警報手段(例えば、表示器、スピーカ、操作端末など)に送られ、噴射部20の回転に異常がある場合には、その警報手段を通して警報が発せられる。
【0016】
液検知センサ42としては、例えば、導電率を検知する導電率センサが好適である。導電率センサは、それに対して洗浄液が吹き付けられる程度に応じて変化する信号を出力する。液検知センサ42から出力される信号は、噴射部20の回転に応じた周期的な成分を含む。ここで、噴射部20から1方向にのみ洗浄液が噴射される構成においては、液検知センサ42から出力される信号の周期は、噴射部20の回転の周期と一致する。また、噴射部20から互いに180度の角度をもって2方向に等量の洗浄液が噴射される構成においては、液検知センサ42から出力される信号の周期は、噴射部20の回転の周期の1/2と一致する。いずれにしても、液検知センサ42から出力される信号の周期が噴射部20の回転(つまり、回転機構30の動作)に適切な相関を有している場合には、噴射部20が適切に回転しつつ噴射部20から洗浄液が噴射されていることが保証される。
【0017】
図2は、異常検知部40に自己診断機能を組み込んだ構成例を概略的に示す図である。異常検知部40は、前述の液検知センサ42及び判定部44の他に、回転機構30における回転体(例えば、ギアや回転軸)の回転を検知する回転計46と、回転計46から出力される信号と液検知センサ42から出力される信号とに基づいて異常検知部40(より具体的には、例えば、液検知センサ42、判定部44)の故障を診断する診断部48を更に含みうる。診断部48は、回転計46によって検知された回転の周期と液検知センサ42から出力される信号に基づいて得られる噴射部20の回転の周期とに基づいて異常検知部40の故障を診断する。
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、噴射部を回転させながらタンク内を洗浄する製造設備において、噴射部から噴射される洗浄液を検知することにより、タンクの洗浄に関する異常をより確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施形態の製造設備を概略的に示す図である。
【図2】異常検知部に自己診断機能を組み込んだ構成例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0020】
10 タンク
20 噴射部
21 洗浄液
30 回転機構
40 異常検知部
42 液検知センサ
44 判定部
46 回転計
48 診断部
100 製造設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体製品を製造するための製造設備であって、
タンクと、
前記タンク内に配置されて洗浄液を噴射することによって前記タンク内を洗浄するための噴射部と、
前記噴射部を回転させる回転機構と、
前記噴射部の回転の異常を検知する異常検知部とを備え、
前記異常検知部は、
前記噴射部から噴射される洗浄液を前記タンク内の定位置で検知する液検知センサと、
前記液検知センサから出力される信号に基づいて前記噴射部の回転に異常があるかどうかを判定する判定部とを含む、
ことを特徴とする製造設備。
【請求項2】
前記異常検知部は、
前記回転機構における回転体の回転を検知する回転計と、
前記回転計から出力される信号と前記液検知センサから出力される信号とに基づいて前記異常検知部の故障を診断する診断部とを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造設備。
【請求項3】
前記液検知センサは、導電率を検知するセンサを含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造設備。
【請求項4】
タンクと、前記タンク内に配置されて洗浄液を噴射することによって前記タンク内を洗浄するための噴射部と、前記噴射部を回転させる回転機構とを有する製造設備において前記噴射部の回転の異常を検知する異常検知装置であって、
前記噴射部から噴射される洗浄液を前記タンク内の定位置で検知する液検知センサと、
前記液検知センサから出力される信号に基づいて前記噴射部の回転に異常があるかどうかを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項5】
前記回転機構における回転体の回転を検知する回転計と、
前記回転計から出力される信号と前記液検知センサから出力される信号とに基づいて当該異常検知装置の故障を診断する診断部と、
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記液検知センサは、導電率を検知するセンサを含む、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−290003(P2008−290003A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138107(P2007−138107)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】