説明

複合プラグおよび電気回路システム

【課題】電気回路の複数の箇所を容易に導通状態または非導通状態とすることを可能としたプラグ、およびそのようなプラグを適用したシステムを提供する。
【解決手段】導電性部材によって接続された2つの導体片を備え、当該2つの導体片をそれぞれ電気回路に含まれる2つの回路端子へ接触させることによって当該2つの回路端子の間を導通状態とし、当該2つの導体片をそれぞれ電気回路に含まれる2つの回路端子から隔離することによって、当該2つの回路端子の間を非導通状態とするプラグを複数備える複合プラグにおいて、複数のプラグは共通の筐体に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路の一部を導通状態または非導通状態とするためのプラグ、およびそのようなプラグを適用したシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって駆動される車両が広く用いられている。そのような車両は、モータに電力を供給するための電池と、電池が出力する電力を調整してモータに供給する電力調整回路を備える。
【0003】
【特許文献1】特開2004−114775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される電池は、車両を駆動するために必要な電力を供給するための高い電圧を出力する。したがって、電池および電力調整回路は、部品の交換、点検、修理等の作業において、高電圧が印加されている部分の短絡等による故障を回避することができる構成であることが好ましい。
【0005】
本発明は、このような課題に対してなされたものであり、電気回路の複数の箇所を容易に導通状態または非導通状態とすることを可能としたプラグ、およびそのようなプラグを適用したシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複合プラグは、導電性部材によって接続された2つの導体片を備え、当該2つの導体片をそれぞれ電気回路に含まれる2つの回路端子へ接触させることによって当該2つの回路端子の間を導通状態とし、当該2つの導体片をそれぞれ電気回路に含まれる2つの回路端子から隔離することによって、当該2つの回路端子の間を非導通状態とするプラグ、を複数備え、 複数の前記プラグのうちの1つである第1プラグは、車両を駆動するモータに電力を供給する回路である第1電力回路に含まれる2つの回路端子の間を導通状態または非導通状態とし、複数の前記プラグのうちの1つであり前記第1プラグとは異なる第2プラグは、前記モータに供給する電力を増加させるために前記第1電力回路とは別に設けられた第2電力回路に含まれる2つの回路端子の間を導通状態または非導通状態とし、複数の前記プラグは、共通の固定部材に固定されることを特徴とする複合プラグ。
【0007】
また、本発明に係る複合プラグにおいては、前記第1電力回路は、前記モータに電力を供給するための電池を備え、前記電池は、非導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力されない状態とし、導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力される状態とする2つの回路端子を備えることが好適である。
【0008】
また、本発明に係る複合プラグにおいては、前記第2電力回路は、前記モータに供給する電力を蓄積するためのキャパシタを備え、前記キャパシタは、非導通状態とすることによって前記キャパシタが電荷の充放電を行わない状態とし、導通状態とすることによって前記キャパシタが電荷の充放電を行う状態とする2つの回路端子を備えることが好適である。
【0009】
また、本発明に係る複合プラグにおいては、前記第1電力回路および前記第2電力回路のそれぞれは、前記モータに電力を供給するための電池を備え、前記電池は、非導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力されない状態とし、導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力される状態とする2つの回路端子を備えることが好適である。
【0010】
また、本発明に係る複合プラグにおいては、前記導電性部材は、所定の電流が流れることによって遮断状態となるヒューズとすることが好適である。
また、本発明に係る電気回路システムは、前記複合プラグと、前記第1電力回路と、前記第2電力回路と、前記第1電力回路および前記第2電力回路を収納する電気回路筐体と、を備え、前記複合プラグが前記電気回路筐体に装着されると共に、前記第1プラグは、前記第1電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を導通状態とし、前記第2プラグは、前記第2電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を導通状態とし、前記複合プラグが前記電気回路筐体から取り外されると共に、前記第1プラグは、前記第1電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を非導通状態とし、前記第2プラグは、前記第2電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を非導通状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気回路の複数の箇所を容易に導通状態または非導通状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明の第1の実施形態に係る車両駆動システム100の構成を示す。車両駆動システム100は、複合プラグ10、電池ユニット12、電力回路ユニット14、キャパシタユニット16、およびモータ18を備えて構成される。電池ユニット12およびキャパシタユニット16は、所定の位置に近接して配置される。複合プラグ10は、電池ユニット12およびキャパシタユニット16に後述する態様で取り付けられる。
【0013】
図2に複合プラグ10の斜視図を示す。また、図3(a)に図2の一点鎖線で描かれた直線ABを含む断面S1から複合プラグ10の内部を見た図を、図3(b)に図2の一点鎖線で描かれた直線CDを含む断面S2から複合プラグ10の内部を見た図を、図3(c)に図2の一点鎖線で描かれた直線EFを含む断面S3から複合プラグ10の内部を見た図を示す。
【0014】
複合プラグ10は、プラグケース10C、導体棒Sa,Sb,Sc,Sd、ヒューズF1およびF2を備えて構成される。
【0015】
導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdは金属等の導電材料で形成される。延伸方向に垂直な断面の形状は任意の形状とすることができ、ここでは円形であるものとする。導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdの一方の端には、ヒューズを取り付けるためのヒューズ固定部FFが設けられる。ヒューズ固定部FFは、1対の長方形の金属の平板を平行に対向させ、対向する2枚の平板の近接する縁を更にもう1枚の長方形の金属の平板でつなぎ合わせた、U字型の形状を有する部材によって形成することができる。
【0016】
プラグケース10Cは、平板部10−1および容器部10−2を備えて構成される。平板部10−1および容器部10−2はプラスチック、磁器等の絶縁材料によって形成することが好適である。
【0017】
平板部10−1には、導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdが取り付けられる。導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdは、ヒューズ固定部FFが設けられる端がプラグケース10Cの内側に収納されるよう平板部10−1を貫通する。導体棒SaおよびSbのそれぞれのプラグケース10Cの外側へ突出した部分は、電池ユニット12に設けられ導体棒を固定するジャックに挿入される。導体棒ScおよびSdのそれぞれのプラグケース10Cの外側へ突出した部分は、キャパシタユニット16に設けられ導体棒を固定するジャックに挿入される。そのため、導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdの位置は、電池ユニット12に設けられるジャックの位置、キャパシタユニット16に設けられるジャックの位置、および電池ユニット12とキャパシタユニット16の配置に基づいて定められる。さらに、平板部10−1の形状は、導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdの配置に基づいて定められる。
【0018】
容器部10−2は、開口が平板部10−1と同一の形状を有する容器の形状に形成される。容器部10−2の開口には平板部10−1が接合され、平板部10−1および容器部10−2はケースを形成する。
【0019】
ヒューズF1は端子T1およびT2を備える。端子T1およびT2はそれぞれ、導体棒SaおよびSbのヒューズ固定部FFに電気的接触を実現しつつ固定される。ヒューズF1は、端子T1およびT2を介して流れる電流の値が所定値を超えると遮断状態となる。ヒューズF2は、ヒューズF1と同一の構成および機能を有し、端子T1およびT2はそれぞれ、導体棒ScおよびSdのヒューズ固定部FFに電気的接触を実現しつつ固定される。
【0020】
このような構成によれば、導体棒SaおよびSbによって、複合プラグ10を電池ユニット12に取り付けることができ、導体棒ScおよびSdによって、複合プラグ10をキャパシタユニット16に取り付けることができる。
【0021】
また、ヒューズF1は、導体棒SaおよびSbを介してプラグケース10C内に固定して収納され、ヒューズF2は、導体棒ScおよびSdを介してプラグケース10C内に固定して収納される。そして、導体棒SaおよびSbのそれぞれのプラグケース10Cの外側へ突出した部分をヒューズF1に電気的に接続するための端子とし、導体棒ScおよびSdのそれぞれのプラグケース10Cの外側へ突出した部分をヒューズF2に電気的に接続するための端子とすることができる。
なお、ここでは、容器部10−2に平板部10−1を接合した複合プラグ10について説明した。このような複合プラグ10の他、容器部10−2のような覆いを設けず平板部10−1のような導体棒を固定する部材のみで構成された複合プラグを構成することも可能である。
【0022】
図4(a)に電池ユニット12の内部を、図1の一点鎖線で描かれた直線GHを含む断面S5から見た図を示す。
【0023】
電池ユニット12は、電池ケース12C、ジャックJaおよびJb、電池ブロック12−1および12−2、ならびに電池端子htおよびcdを備えて構成される。
【0024】
電池ケース12Cは、キャパシタユニット16と近接して配置することができる形状に形成される。本実施形態においては、電池ケース12Cは6面体形状に形成され、その1つの面として端子取り付け板12Pを含む。端子取り付け板12PにはジャックJaおよびJbならびに電池端子htおよびcdが取り付けられる。
【0025】
ジャックJaおよびJbは、導体棒Saと導体棒Sbとの間の距離と同一の距離を隔てて端子取り付け板12Pに取り付けられる。図5にジャックJaの構成例を断面図を以て示す。ジャックJaは、導体筒P、ジャック端子TJ、バネ切片Bを備える。導体筒Pは導体によって筒状に形成される。導体筒Pの延伸方向に垂直な断面の形状は、複合プラグ10の導体棒の断面の形状と同一とする。導体筒Pは片方の開口が電池ケース12Cの外側を臨むよう端子取り付け板12Pに取り付けられる。ジャック端子TJおよびバネ切片Bは電池ケース12Cの外側を臨む側とは反対側の導体筒Pの端に取り付けられる。導体筒Pに複合プラグの導体棒Saが挿入され導体棒Saがバネ切片Bに接触すると共に、バネ切片Bは導体棒Saを付勢力によって固定する。これによって、ジャック端子TJと導体棒Saとが電気的に接続される。ジャックJbは、ジャックJaと同一の構成および機能を有し、ジャックJbには複合プラグ10の導体棒Sbが挿入される。
【0026】
このような構成によって、電池ユニット12に複合プラグ10を取り付けることが可能となる。複合プラグ10を取り付けることで、ジャックJaのジャック端子TJとジャックJbのジャック端子TJとの間はヒューズF1によって導通状態となる。
【0027】
電池ブロック12−1および12−2は、電池ケース12Cの内部に固定して収納される。電池ブロック12−1および12−2はそれぞれ1つの電池として機能する。電池ブロック12−1の高電位側の端子は電池端子htに接続され、電池ブロック12−1の低電位側の端子はジャックJaの端子TJに接続される。電池ブロック12−2の高電位側の端子はジャックJbの端子TJに接続され、電池ブロック12−2の低電位側の端子は電池端子cdに接続される。
【0028】
電池ユニット12に複合プラグ10が取り付けられた状態では、ジャックJaおよびJbを介して、電池ブロック12−1と電池ブロック12−2は直列に接続される。この状態で電池ユニット12は、電池ブロック12−1の出力電圧と電池ブロック12−2の出力電圧との和に相当する電圧を電池端子htと電池端子cdとの間から出力する。
【0029】
電池ユニット12では、電池ブロック12−1および12−2を直列に接続することによって出力する電圧を増大させている。電池ユニット12は、3個以上の電池ブロックを直列に接続した構成とすることもできる。この場合、3個以上の電池ブロックのうち2つが、ジャックJaおよびJbを介して直列に接続される構成とすればよい。
【0030】
電力回路ユニット14は、回路ケース14C、電源端子14aおよび14b、スイッチ20a,20b,26aおよび26b、コンバータ回路22、インバータ回路24、交流端子u,v,w、ならびにキャパシタ接続端子CaおよびCbを備えて構成される。
【0031】
回路ケース14Cは、スイッチ20a,20b,26aおよび26b、コンバータ回路22、ならびにインバータ回路24を固定して収納する。回路ケース14Cには電源端子14aおよび14b、交流端子u,v,およびw、ならびにキャパシタ接続端子CaおよびCbが取り付けられる。
【0032】
スイッチ20aは端子eおよびfを備える。スイッチ20aは、端子eと端子fとの間を導通状態とするか、端子eと端子fとの間を遮断状態とするかを選択する。スイッチ20b,26aおよび26bはスイッチ20aと同一の構成および機能を有する。
【0033】
コンバータ回路22は、端子22a,22b,22cおよび22dを備える。コンバータ回路22は、端子22aと端子22bとの間に印加された電圧を昇圧して端子22cと端子22dとの間に出力する。
【0034】
インバータ回路24は、直流端子24aおよび24bを備える。インバータ回路24は、直流端子24aと直流端子24bとの間に印加された直流電圧を3相交流電圧に変換して交流端子u,v,およびwに出力する。
【0035】
電力回路ユニット14の各構成部の電気的な接続について説明する。スイッチ20aの端子eは電源端子14aに接続され、スイッチ20bの端子eは電源端子14bに接続される。スイッチ20aの端子fはコンバータ回路22の端子22aに接続され、スイッチ20bの端子fはコンバータ回路22の端子22bに接続される。コンバータ回路22の端子22cはインバータ回路24の直流端子24aに接続され、コンバータ回路22の端子22dはインバータ回路24の直流端子24bに接続される。スイッチ26aの端子eはキャパシタ接続端子Caに接続され、スイッチ26bの端子eはキャパシタ接続端子Cbに接続される。スイッチ26aの端子fはインバータ回路24の直流端子24aに接続され、スイッチ26bの端子fはインバータ回路24の端子24bに接続される。
【0036】
スイッチ20a,20b,26aおよび26bが導通状態とされたときの電力回路ユニット14の動作について説明する。電源端子14aと電源端子14bとの間に印加された電圧は、スイッチ20aおよび20bを介してコンバータ回路22の端子22aと端子22bとの間に印加される。コンバータ回路22は、直流端子24aと直流端子24bとの間に昇圧した電圧を出力する。また、コンバータ回路22は、スイッチ26aおよび26bを介してキャパシタ接続端子Caとキャパシタ接続端子Cbとの間に昇圧した電圧を出力する。インバータ回路24は、直流端子24aと直流端子24bとの間に印加された電圧を3相交流電圧に変換し、交流端子u,vおよびwに出力する。
【0037】
図4(b)にキャパシタユニット16の内部を、図1の一点鎖線で描かれた直線IKを含む断面S4から見た図を示す。
【0038】
キャパシタユニット16は、キャパシタケース16C、キャパシタ16−1および16−2、ジャックJcおよびJd、ならびに端子16aおよび16bを備えて構成される。キャパシタユニット16は、電力回路ユニット14の外部からインバータ回路24に接続することで、電力回路ユニット14が出力することができる電力を増加させるものである。
【0039】
キャパシタケース16Cは、電池ユニット12と近接して配置することができる形状に形成される。本実施形態においては、キャパシタケース16Cは6面体形状に形成され、その1つの面として端子取り付け板16Pを含む。端子取り付け板16PにはジャックJcおよびJd、ならびに端子16aおよび16bが取り付けられる。
【0040】
ジャックJcおよびJdは、電池ユニット12のジャックJaと同一の構成および機能を有する。ジャックJcおよびJdには、それぞれ複合プラグ10の導体棒ScおよびSdが挿入される。ジャックJcおよびJdは、導体棒Scと導体棒Sdとの間の距離と同一の距離を隔て、電池ユニット12とキャパシタユニット16とを重ねて配置した状態で、それぞれ複合プラグの導体棒ScおよびSdが挿入することができるよう端子取り付け板16Pに取り付けられる。
【0041】
このような構成によって、キャパシタユニット16に複合プラグ10を取り付けることが可能となる。複合プラグ10を取り付けることで、ジャックJcのジャック端子TJとジャックJdのジャック端子TJとの間はヒューズF2によって導通状態となる。
【0042】
キャパシタ16−1および16−2は、キャパシタケース16Cの内部に固定して収納される。キャパシタ16−1の片方の端子は端子16aに接続され、端子16aが接続されていない側のキャパシタ16−1の端子はジャックJcの端子TJに接続される。キャパシタ16−2の片方の端子はキャパシタ端子16bに接続され、キャパシタ端子16bが接続されていない側のキャパシタ16−2の端子はジャックJdの端子TJに接続される。
【0043】
キャパシタユニット16に複合プラグ10が取り付けられた状態では、ジャックJcおよびJdを介して、キャパシタ16−1とキャパシタ16−2は直列に接続される。この状態でキャパシタユニット16は端子16aおよび16bから電荷を充電し、または放電することができる。
【0044】
キャパシタユニット16では、キャパシタ16−1および16−2が直列に接続されるため、それぞれに要求される耐電圧を低減することができる。キャパシタユニット16は、3個以上のキャパシタを直列に接続した構成とすることもできる。この場合、3個以上のキャパシタのうち2つが、ジャックJcおよびJdを介して直列に接続される構成とすればよい。
【0045】
電池ユニット12、電力回路ユニット14、キャパシタユニット16、およびモータ18の電気的な接続、ならびに動作について図1を参照して説明する。
【0046】
電池ユニット12の電池端子htおよびcdは、それぞれ電力回路ユニット14の電源端子14aおよび14bに接続される。電力回路ユニット14の交流端子u,v,およびwにはモータ18が接続される。
【0047】
電池ユニット12およびキャパシタユニット16は、複合プラグ10を取り付けることが可能なように配置される。本実施形態では、電池ユニット12の上にキャパシタユニット16を重ねて配置した状態で複合プラグ10を取り付けることが可能である。
【0048】
電池ユニット12、キャパシタユニット16等の交換、車両駆動システム100の点検、修理等を行う場合を除き、複合プラグ10は、電池ユニット12およびキャパシタユニット16に取り付けた状態とする。
【0049】
車両を走行させるときには、電力回路ユニット14のスイッチ20a,20b,26aおよび26bを導通状態とする。電池ユニット12は、電力回路ユニット14の電源端子14aと電源端子14bとの間に電圧を印加する。電力回路ユニット14は、電圧を昇圧してキャパシタユニット16を充電し、昇圧された電圧およびキャパシタユニット16に充電された電圧を3相交流電圧に変換して交流端子u,v,およびwを介してモータ18に出力する。モータ18は3相交流電圧に基づいて回転し車両を走行させる。
【0050】
電池ユニット12、キャパシタユニット16等の交換、車両駆動システム100の点検、修理等を行うときには、スイッチ20a,20b,26aおよび26bを遮断状態とすると共に、複合プラグ10を電池ユニット12およびキャパシタユニット16から取り外す。これによって、電池ブロック12−1と電池ブロック12−2は切り離され、電池端子htと電池端子cdとの間に電圧が出力されない状態となる。さらに、キャパシタ16−1とキャパシタ16−2は切り離され、キャパシタ16−1および16−2に電荷が残存していたとしても端子16aと端子16bとの間に電圧が出力されない状態となる。
【0051】
このような構成によれば、複合プラグ10を取り外すという簡単な作業によって、電池ユニット12およびキャパシタユニット16を電圧が出力されない状態とすることができる。これによって、電池ユニット12、キャパシタユニット16等の交換、電力駆動システム100の点検、修理等の作業において、高電圧が印加されている部分の短絡等による故障を回避することができる。また、例えば、遮断状態とならない故障がスイッチ20a,20b,26aまたは26bに生じている場合であっても、電力回路ユニット14の点検、修理等の際の高電圧が印加されている部分の短絡等による故障を回避することができる。
【0052】
さらに、車両駆動システム100に含まれる回路の故障等により、複合プラグ10に備えられているヒューズに所定値以上の電流が流れ遮断状態となったときには、電池ユニット12またはキャパシタユニット16は電圧が出力されない状態となる。これによって、車両駆動システム100の2次的な故障を回避することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両駆動システム102について説明する。図6に車両駆動システム102の構成を示す。車両駆動システム102は、複合プラグ10、電池ユニット12、補助電池ユニット28、電力回路ユニット14A、およびモータ18を備えて構成される。
【0054】
車両駆動システム102は、車両駆動システム100の電力回路ユニット14を電力回路ユニット14Aに、キャパシタユニット16を補助電池ユニット28にそれぞれ置き換えたものである。図1の車両駆動システム100と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
補助電池ユニット28は、電池ユニット12と同一の構成および機能を有する。複合プラグ10は、電池ユニット12の上に補助電池ユニット28を重ねて配置した状態で電池ユニット12および補助電池ユニット28に取り付けることができるよう、平板部10−1および容器部10−2の形状、導体棒Sa,Sb,Sc,およびSdの配置等が定められる。
【0056】
電力回路ユニット14Aは、回路ケース14C、電源端子14aおよび14b、補助電源端子14dおよび14e、スイッチ20a,20b,26aおよび26b、コンバータ回路22、補助コンバータ回路30、インバータ回路24、ならびに交流端子u,v,およびwを備えて構成される。電力回路ユニット14Aは、電力回路ユニット14に、補助コンバータ回路30を追加し、コンデンサ接続端子CaおよびCbをそれぞれ補助電源端子14dおよび14eに置き換えたものである。電力回路ユニット14と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
スイッチ26a,26b、および補助コンバータ回路30は、回路ケース14Cに固定して収納される。スイッチ26aおよび26bは、スイッチ20aと同一の構成および機能を有する。補助コンバータ回路30はコンバータ回路22と同一の構成および機能を有する。スイッチ26aの端子eは補助電源端子14dに接続され、スイッチ26bの端子eは補助電源端子14dに接続される。スイッチ26aの端子fは補助コンバータ回路30の端子30aに接続され、スイッチ26bの端子fは補助コンバータ回路30の端子30bに接続される。補助コンバータ回路30の端子30cはインバータ回路24の直流端子24aに接続され、補助コンバータ回路30の端子30dはインバータ回路24の直流端子24bに接続される。
【0058】
スイッチ26aおよび26bが導通状態とされたときの動作について説明する。補助電源端子14dと補助電源端子14eとの間に印加された電圧は、スイッチ26aおよび26bを介して補助コンバータ回路30の端子30aと端子30bとの間に印加される。補助コンバータ回路30は、電圧を昇圧し直流端子24aと直流端子24bとの間に出力する。
【0059】
電力回路ユニット14Aは、補助コンバータ回路30が追加されているため、電力回路ユニット14が供給する電力より大きい電力を供給することができる。
【0060】
電池ユニット12、補助電池ユニット28、電力回路ユニット14A、およびモータ18の電気的な接続、ならびに動作について図6を参照して説明する。
【0061】
電池ユニット12の電池端子htおよびcdは、それぞれ電力回路ユニット14Aの電源端子14aおよび14bに接続される。補助電池ユニット28の電池端子htおよびcdは、それぞれ電力回路ユニット14Aの補助電源端子14dおよび14eに接続される。電力回路ユニット14Aの交流端子u,v,およびwにはモータ18が接続される。
【0062】
車両を走行させるときには、電力回路ユニット14Aのスイッチ20a,20b,26aおよび26bを導通状態とする。電池ユニット12は、電力回路ユニット14Aの電源端子14aと電源端子14bとの間に電圧を印加する。補助電池ユニット28は、電力回路ユニット14Aの補助電源端子14dと補助電源端子14eとの間に電圧を印加する。電力回路ユニット14Aは、印加された電圧を昇圧し3相交流電圧に変換して交流端子u,v,およびwを介してモータ18に出力する。モータ18は3相交流電圧に基づいて回転し車両を走行させる。
【0063】
電池ユニット12、補助電池ユニット28等の交換、車両駆動システム102の点検、修理等を行うときには、スイッチ20a,20b,26a,および26bを遮断状態とすると共に、複合プラグ10を電池ユニット12および補助電池ユニット28から取り外す。これによって、電池ユニット12および補助電池ユニット28は電圧が出力されない状態となる。
【0064】
このような構成によれば、複合プラグ10を取り外すという簡単な作業によって、電池ユニット12および補助電池ユニット28を電圧が出力されない状態とすることができる。これによって、電池ユニット12、補助電池ユニット28等の交換、車両駆動システム102の点検、修理等の作業の際において、高電圧が印加されている部分の短絡等による故障を回避することができる。
【0065】
上記では、複合プラグ10の取り付けまたは取り外しによって、電池ユニット12、キャパシタユニット16、または補助電池ユニット28に含まれる回路の2箇所を導通状態または非導通状態とする構成について説明した。本発明はこのような実施形態に限らず、電気回路の任意の2箇所を導通状態または非導通状態とする構成に適用することが可能である。
【0066】
さらに、複合プラグに取り付ける導体棒の対を増加させることにより、3箇所以上を導通状態または非導通状態とする構成とすることも可能である。例えば、モータ18に供給することができる電力を増加させるため、インバータ回路24の直流端子24aと直流端子24bとの間にキャパシタユニット16を更に追加して接続した場合、追加したキャパシタユニット16のジャックJcとジャックJdとの間を導通状態または非導通状態とする必要がある。このような場合にも、複合プラグに取り付ける導体棒の対を増加させることにより、追加したキャパシタユニット16のジャックJcとジャックJdとの間を導通状態または非導通状態とすることができる。これは、インバータ回路24の直流端子24aと直流端子24bとの間に、補助電池ユニット28が接続されたコンバータ回路22を追加して接続した場合についても同様である。また、複合プラグにヒューズを設けた構成について説明したが、故障等の確率が低い回路の箇所についてはヒューズを導線に置き換えた構成としてもよい。
【0067】
また、第1の実施形態では、電池ユニット12とキャパシタユニット16を別のケースで構成した。このような構成の他、電池ユニット12およびキャパシタユニット16を共通のケースで構成し、ジャックの配置に応じて複合プラグの導体棒を配置した構成も可能である。同様にして、第2の実施形態において、電池ユニット12と補助電池ユニット28を共通のケースで構成することが可能である。
【0068】
なお、モータを電動機と発電機の機能を有するモータジェネレータとし、車両の走行によってモータジェネレータが発電した電力を電池ユニット12または補助電池ユニット28で回収する車両駆動システムに本発明を適用することも可能である。この場合、インバータ回路24は、モータジェネレータが出力する3相交流電圧を直流電圧に変換してコンバータ回路22または補助コンバータ回路30に出力する。コンバータ回路22は電圧を降圧して電池ユニット12を充電する。補助コンバータ回路30は電圧を降圧して補助電池ユニット28を充電する。このような構成においても、電池ユニット12、補助電池ユニット28等の交換、電力駆動システムの点検、修理等の作業を行う際に、実施形態に係る複合プラグを取り外すことによって、高電圧が印加されている部分の短絡等による故障を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態に係る車両駆動システムを示す図である。
【図2】複合プラグの構成を示す図である。
【図3】複合プラグの内部を示す図である。
【図4】電池ユニットの内部およびキャパシタユニットの内部を示す図である。
【図5】ジャックの構成例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る車両駆動システムを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10 複合プラグ、10C プラグケース、10−1 平板部、10−2 容器部、12 電池ユニット、12−1,12−2 電池ブロック、12C 電池ケース、12P,16P 端子取り付け板、14,14A 電力回路ユニット、14C 回路ケース、14a,14b,14d,14e 電源端子、16 キャパシタユニット、16−1,16−2 キャパシタ、16C キャパシタケース、18 モータ、20a,20b,26a,26b スイッチ、22 コンバータ回路、22a,22b,22c,22d,30a,30b,30c,30d,e,f 端子、24 インバータ回路、24a,24b 直流端子、28 補助電池ユニット、30 補助コンバータ回路、100,102 車両駆動システム、ht,cd 電池端子、u,v,w 交流端子、B バネ切片、Ca,Cb キャパシタ接続端子、F1,F2 ヒューズ、FF ヒューズ固定部、Ja,Jb,Jc,Jd ジャック、P 導体筒、Sa,Sb,Sc,Sd 導体棒、16a,16b,T1,T2 端子、TJ ジャック端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材によって接続された2つの導体片を備え、当該2つの導体片をそれぞれ電気回路に含まれる2つの回路端子へ接触させることによって当該2つの回路端子の間を導通状態とし、当該2つの導体片をそれぞれ電気回路に含まれる2つの回路端子から隔離することによって、当該2つの回路端子の間を非導通状態とするプラグ、を複数備え、
複数の前記プラグのうちの1つである第1プラグは、
車両を駆動するモータに電力を供給する回路である第1電力回路に含まれる2つの回路端子の間を導通状態または非導通状態とし、
複数の前記プラグのうちの1つであり前記第1プラグとは異なる第2プラグは、
前記モータに供給する電力を増加させるために前記第1電力回路とは別に設けられた第2電力回路に含まれる2つの回路端子の間を導通状態または非導通状態とし、
複数の前記プラグは、
共通の固定部材に固定されることを特徴とする複合プラグ。
【請求項2】
請求項1に記載の複合プラグであって、
前記第1電力回路は、
前記モータに電力を供給するための電池を備え、
前記電池は、
非導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力されない状態とし、導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力される状態とする2つの回路端子を備えることを特徴とする複合プラグ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合プラグであって、
前記第2電力回路は、
前記モータに供給する電力を蓄積するためのキャパシタを備え、
前記キャパシタは、
非導通状態とすることによって前記キャパシタが電荷の充放電を行わない状態とし、導通状態とすることによって前記キャパシタが電荷の充放電を行う状態とする2つの回路端子を備えることを特徴とする複合プラグ。
【請求項4】
請求項1に記載の複合プラグであって、
前記第1電力回路および前記第2電力回路のそれぞれは、
前記モータに電力を供給するための電池を備え、
前記電池は、
非導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力されない状態とし、導通状態とすることによって前記電池から電圧が出力される状態とする2つの回路端子を備えることを特徴とする複合プラグ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の複合プラグであって、
前記導電性部材は、所定の電流が流れることによって遮断状態となるヒューズであることを特徴とする複合プラグ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の複合プラグと、前記第1電力回路と、前記第2電力回路と、前記第1電力回路および前記第2電力回路を収納する電気回路筐体と、
を備え、
前記複合プラグが前記電気回路筐体に装着されると共に、前記第1プラグは、前記第1電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を導通状態とし、前記第2プラグは、前記第2電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を導通状態とし、
前記複合プラグが前記電気回路筐体から取り外されると共に、前記第1プラグは、前記第1電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を非導通状態とし、前記第2プラグは、前記第2電力回路に含まれる前記2つの回路端子の間を非導通状態とすることを特徴とする電気回路システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−66246(P2008−66246A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245847(P2006−245847)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】