説明

複合ポリケチドを生成するための生合成遺伝子クラスター

合計15のモジュールを有するポリケチドシンターゼ、1つのモジュールを有する非リボソームペプチドシンテターゼ、およびシトクロムp450ヒドロキシラーゼから構成されるポリケチドシンターゼ複合体を記載する。新規ストレプトミセス種、および改変したストレプトミセス種の方法も提供する。新規化合物である36-ケトメリダマイシン(ketomeridamycin)、C9-デオキソメリダマイシン(deoxomeridamycin)、およびC9-デオキソプロリルメリダマイシン(deoxoprolylmeridamycin)、ならびにそれらの使用をさらに記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メリダマイシンの生成に関与するI型ポリケチドシンターゼ(PKS)および非リボソームペプチドシンターゼをコードする生合成遺伝子クラスターのクローニングおよび配列決定に関する。本発明はまた、メリダマイシン生合成経路を遺伝子操作して、メリダマイシンの誘導体を生成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリケチドは、酢酸塩、プロピオン酸塩または酪酸塩等の単純なカルボン酸塩の一連の縮合から誘導される天然生成物の大きな集合を表す。天然のポリケチドは、テトラサイクリンおよびエリスロマイシン等の抗生物質、ダウノマイシンおよびブリオスタチン等の抗癌剤、FK506およびラパマイシン等の免疫抑制剤、ならびにモネンシンおよびアベルメクチン等の獣医用製品を含む幅広い生物活性を有する。ポリケチドは、ほとんどの群の生物で生成され、菌糸状細菌(mycelial bacteria)の1クラスである放線菌において特に豊富であり、これは様々な種類のポリケチドを生成する。
【0003】
ポリケチドの生合成に関与する酵素は、ポリケチドシンターゼ(PKS)と呼ばれる。PKSの大まかなクラスとしては2つある。I型PKSとして知られている1つのクラスは、エリスロマイシンおよびラパマイシン等のマクロライドポリケチドを合成するPKSに代表される。この種類のPKSは、成長中のポリケチド鎖への特定の二炭素延長体単位(通常、マロニルCoA、メチルマロニルCoAまたはプロピオニルCoA)の認識および取り込みを触媒するのに必要な酵素ドメインのセットとしてモジュールが規定されているモジュール酵素構造を有する。最小のI型PKSモジュールは以下の3つの酵素ドメインを含む:すなわち(1)出発単位または成長中ポリケチド鎖と延長体単位とのクライゼン縮合反応の触媒に関与するケトシンターゼドメイン(KS);(2)様々なCoAカルボン酸塩の細胞内プールから特定の延長体単位と選択的に結合し、それをアシル担体中心に運ぶアシルトランスフェラーゼドメイン(AT);(3)4-ホスホパンテテイン基で翻訳後修飾されたセリン残基を含み、延長体単位または成長中ポリケチド鎖の受容体の役割をするアシル担体タンパク質ドメイン(ACP)。KS、ATおよびACPドメインに加えて、I型PKSモジュールは、以下のドメインの1、2または3つを有することもできる:すなわち、β-ケトンを水酸基に還元するケトリダクターゼドメイン(KR)、α、β炭素中心から水を排除してそれらの二重結合を形成するデヒドラターゼドメイン(DH)、およびDHドメインにより形成された二重結合をさらに還元してβ-メチレン基を産生するエノイルリダクターゼドメイン(ER)。
【0004】
I型PKSの一次構成(primary organization)とポリケチド骨格の構造との間には共直線関係が存在する。例えば、PKSのモジュール数によって、最終的なポリケチド生成物の炭素骨格中の二炭素単位の数が決定され、特定のATドメインの存在によってどの延長体(マロン酸塩、メチルマロン酸塩またはエチルマロン酸塩等)が成長中ポリケチド鎖に取り入れられるかが決定され、モジュール中の還元ドメイン(KR、DHおよびER)の存在によって所与の縮合で形成されるβ-炭素の還元の程度が決定される。
【0005】
II型PKSと呼ばれるPKSの第2のクラスは、ダウノルビシンおよびテトラセノマイシン(tetracenomycin)等の芳香族ポリケチドの合成に関与する。II型PKSは、個々のタンパク質に属し、多環式構造を有するポリケチドを生成するために繰り返し使用される単一の酵素活性セット(KS、AT、ACP、KR等)を有する。II型PKS酵素組織と最終的なポリケチド構造との間に明確な相関関係はない。
【0006】
ポリケチド化合物を作るのに必要なPKSおよびテーラーメイド(tailoring)酵素をコードする遺伝子は全ての場合において、生成を行う微生物の染色体上で共に集団化されることが示されているため、集合的に「PKS生合成遺伝子クラスター」と呼ばれる。PKS生合成遺伝子クラスターの遺伝子操作を介して潜在的な治療用途を有する新規ポリケチド化合物を生成することを目的として、学術および産業の分野において多大な研究がなされてきた。新規PKS複合体をコードする遺伝子を決定することが、当該分野において必要とされ続けている。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、ポリケチド化合物を生成するための、ポリケチドシンターゼ複合体をコードする生合成遺伝子クラスターを提供する。本発明は、それぞれ少なくとも1つのモジュールを含む4つのポリケチドシンターゼ、一実施形態では4つの触媒ドメインを含む非リボソームペプチドシンターゼ、一実施形態ではシトクロムP450ヒドロキシラーゼを含むメリダマイシンシンターゼ複合体をさらに提供する。一実施形態では、ポリケチドシンターゼは合計で15のモジュールを含む。
【0008】
一実施形態では、ポリケチドシンターゼのモジュールは、ケトシンターゼドメイン、アシルトランスフェラーゼドメイン、およびアシル担体タンパク質を含む。
【0009】
別の実施形態では、上記モジュールは、ケトリダクターゼドメイン、デヒドラターゼドメインおよびエノイルリダクターゼドメインをさらに含む。
【0010】
本発明はまた、ポリケチドシンターゼに含まれ、ポリケチド化合物の合成に必要なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む単離型核酸も提供する。対応するアミノ酸配列も提供する。
【0011】
本発明はまた、ポリケチドシンターゼを含む核酸と相補的および/またはストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸配列も提供する。
【0012】
本発明は、ポリケチドシンターゼにより生成されるポリケチド化合物の生成方法をさらに提供する。一実施形態では、ポリケチド化合物はメリダマイシンである。
【0013】
本発明はまた、改変型ポリケチド化合物を生成するための本発明のポリケチドシンターゼの改変方法、およびその改変型ポリケチド化合物も提供する。
【0014】
一実施形態では、上記改変は、少なくとも1つのアミノ酸の付加、除去または置換を含み、このような改変はポリケチド化合物のi)環の大きさ、ii)環上のβ-ケト基の還元の程度、iii)α-炭素にある側鎖、またはiv)出発単位、の改変を生じる。
【0015】
別の実施形態では、上記改変型ポリケチド化合物は、メリダマイシンのケト誘導体である。
【0016】
本発明はさらに、神経細胞を、適切な改変を含み得る配列番号:1のポリケチドシンターゼにより生成された有効量のポリケチド化合物と接触させることにより、神経変性を防ぐ方法を提供する。
【0017】
神経細胞を、適切な改変を含み得る配列番号:1を含む核酸配列を有するポリケチドシンターゼにより生成された有効量のポリケチド化合物と接触させることにより、神経再生を促進する方法。
【0018】
一態様では、本発明は、新規放線菌株により生成されるマクロライドおよび他の化学化合物、ならびにこのような化合物を含む医薬組成物に関する。
【0019】
特に、本発明は、式:
【化4】

のメリダマイシンおよびその誘導体を含むメリダマイシン化合物、その塩、またはその混合物に関する。このような化合物は、1つ以上の製薬上許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む組成物を調製するために使用できる。哺乳動物に本発明の化合物または組成物を投与することを含む、特に神経障害を治療するための哺乳動物の治療方法も提供する。
【0020】
本発明はさらに、放線菌株LL-BB0005の細胞培養物中での培養等による、放線菌株中での化合物の生成方法に関する。放線菌株LL-BB0005の細胞培養物は、例えば、式(I)を有する化合物を生成することが分かっており、これは発酵ブロスから単離できる。
【0021】
本発明の他の態様および利点は、以下の本発明の詳細な説明から容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、ポリケチド化合物の単離型生合成遺伝子クラスターを提供する。都合よくは、生合成遺伝子クラスターは、それが自然で認められる細胞物質(すなわち、放線菌種)から単離されたメリダマイシン生合成核酸配列である。
【0023】
一実施形態では、生合成遺伝子クラスター核酸配列は、合計で15のモジュールを含む4つのポリケチドシンターゼ、および4つの触媒ドメインを含む非リボソームペプチドシンターゼをコードする。一実施形態では、ポリケチドシンターゼのモジュールは、ケトシンターゼドメイン、アシルトランスフェラーゼドメイン、およびアシル担体タンパク質を含む。別の実施形態では、上記モジュールは、ケトリダクターゼドメイン、デヒドラターゼドメインおよびエノイルリダクターゼドメインをさらに含む。
【0024】
本発明は、単離型メリダマイシン生合成クラスターの遺伝子の核酸、ならびに/またはこれらのポリペプチドおよび酵素(ポリケチドシンターゼ(PKS)、非リボソームペプチドシンターゼ(NRPS)等)をコードするオープンリーディングフレームをさらに提供する。
【0025】
本発明はまた、生合成遺伝子クラスターに含まれ、ポリケチド化合物の合成に必要なポリペプチドおよび酵素をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸も提供する。対応するアミノ酸配列も提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、本明細書で提供する配列を使用してメリダマイシン生合成経路の1つ以上のポリペプチドおよび/または酵素を生成する組換え技術の使用を提供する。
【0027】
一実施形態では、本発明は、生合成遺伝子クラスターの1つ以上の遺伝子を改変することにより生成される変異型ストレプトミセス株を生成する方法を提供する。
【0028】
本発明は、部位特異的突然変異誘発または置換のいずれかによってポリケチド核を遺伝子改変することにより、メリダマイシン生合成遺伝子クラスターの個々のモジュールに対して適切に特定の変化を生じさせる。さらに、これらのモジュールを使用して、他の有用なペプチドの合成を指示する他の生合成遺伝子クラスターをモジュール交換によって改変できる。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、メリダマイシン生合成遺伝子クラスターの1つ以上の遺伝子および/またはオープンリーディングフレームを改変する方法を提供する。このような改変を使用して、マクロライド化合物(例えば、メリダマイシン、36-ケトメリダマイシン、9-デオキソメリダマイシン)を生成できる。
【0030】
本発明は、遺伝子および/またはオープンリーディングフレームの核酸をさらに提供する。
【0031】
I.定義
以下の定義を、本明細書で使用する用語および略語を十分に理解するために提供する。
【0032】
メリダマイシンは、強いFKBP12結合活性および有意な神経保護活性をin vitroで有することが示された、構造(I):
【化5】

を有するマクロライドポリケチドである。これは、農業研究サービス機関の系統保存(Agricultural Research Service Culture Collection)(NRRL)に関するブダペスト条約に従って2004年5月18日に寄託された陸生放線菌ワイス(Wyeth)培養物LL-BB0005(受託番号NRRL 30748)により生成される。メリダマイシンは、FK結合タンパク質に結合するイムノフィリンとして作用する。
【0033】
ストレプトミセス属は、マクロライド抗生物質複合体を生成する陸生放線菌を指す。
【0034】
ワイス株LL-BB0005は、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)に関するブダペスト条約に従って2004年5月18日に寄託されたストレプトミセス属の株(受託番号NRRL 30748)を指す。
【0035】
本明細書中の略語は、以下の測量単位、技術、性質または化合物に対応する:「hr」は時間、「μL」はマイクロリットル、「nM」はナノモーラー、「μM」はマイクロモーラー、「M」はモーラー、「mmole」はミリモル、「kb」はキロ塩基、「bp」は塩基対を意味し、「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと略し;「非リボソームペプチドシンターゼ」はNRPSと略し;ドーパミンは「DA」と略し;ポリケチドシンターゼは「PKS」と略す。
【0036】
「核酸分子」は、一本鎖形態または二本鎖らせんのいずれかの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンもしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンもしくはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、あるいはそれらの任意のリン酸エステル類似体(ホスホロチオエートおよびチオエステル等)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAらせんが可能である。核酸分子、特にDNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次および二次構造のみを指し、いかなる特定の三次形態にも限定されない。従って、本用語は、とりわけ直線(例えば、制限断片)または環状DNA分子、プラスミドおよび染色体において認められる二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を議論するにあたって、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同的な配列を有する鎖)に沿った5'側から3'側方向の配列のみを示す慣習に従って配列を本明細書に記載する場合がある。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を経たDNA分子である。
【0037】
「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド配列」は、DNAおよびRNA等の核酸中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)であり、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。ヌクレオチド配列は、典型的に、細胞機構がタンパク質および酵素を作るために使用する情報を含む遺伝子情報を持つ。これらの用語は、二本鎖または一本鎖ゲノムおよびcDNA、RNA、任意の合成および遺伝子操作されたポリヌクレオチド、ならびにセンスおよびアンチセンスポリヌクレオチドの両方(ただし、本明細書においてはセンス鎖のみを示す)を含む。これには、一本鎖および二本鎖分子(すなわち、DNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAハイブリッド)、ならびに塩基をアミノ酸骨格に共役させて形成された「タンパク質核酸」(PNA)が含まれる。これには、改変した塩基、例えばチオ-ウラシル、チオ-グアニン、フルオロ-ウラシルを含む核酸も含まれる。
【0038】
本明細書中の核酸は、天然型調節(発現制御)配列に隣接するか、または異種配列(プロモーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)および他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5'-および3'-非コード領域等を含む)と会合している。核酸は、当該分野で公知の多数の手段によっても改変され得る。このような改変の限定しない例としては、メチル化、「キャップ(caps)」、類似体での1つ以上の天然型ヌクレオチドの置換、ならびに例えば非荷電結合(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート等)および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)での改変を含むヌクレオチド間(internucleotide)改変が挙げられる。ポリヌクレオチドは、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシン等)、インターカレーション剤(例えば、アクリジン、ソラーレン等)、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、鉄、酸化金属等)およびアルキル化剤等の1つ以上の追加の共有結合部分を含み得る。ポリヌクレオチドは、メチルまたはエチルホスホトリエステルまたはアルキルホスホラミデート結合の形成により誘導体化され得る。さらに、本明細書のポリヌクレオチドは、直接的または間接的に検出できるシグナルを提供可能な標識によっても改変され得る。標識の例としては、放射性同位体、蛍光分子、ビオチン等が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用するDNAの「増幅」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、DNA配列の混合物中の特定のDNA配列の濃度を高めることを示す。PCRの説明については、Saikiら, Science 1988, 239:487を参照のこと。
【0040】
「構造遺伝子」とも呼ばれる「遺伝子」という用語は、1つ以上のタンパク質または酵素の全てまたは一部を含むアミノ酸の特定の配列をコードするかまたはそれに対応し、例えば遺伝子が発現される条件を決定する調節DNA配列(プロモーター配列等)を含むかまたは含まないDNA配列を意味する。構造遺伝子ではない一部の遺伝子は、DNAからRNAに転写され得るが、アミノ酸配列には翻訳されない。他の遺伝子は、構造遺伝子の調節因子としてまたはDNA転写の調節因子として機能し得る。
【0041】
RNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素等の「コード配列」または発現産物を「コードする」配列は、発現されるとそのRNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素を産生するヌクレオチド配列である(すなわち、ヌクレオチド配列は該ポリペプチド、タンパク質または酵素のアミノ酸配列をコードする)。タンパク質のコード配列は、開始コドン(通常、ATG)および終止コドンを含み得る。
【0042】
コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をRNA、特にmRNAに転写し、その後これが(イントロンを含む場合に)RNAトランススプライシングされ、コード配列にコードされるタンパク質に翻訳される際に、細胞中で発現制御配列「の制御下にある」かまたはそれ「に作用可能に会合している」。
【0043】
「異種」という用語は、自然では生じないエレメントの組合せを指す。例えば、異種DNAとは、自然では細胞中または細胞の染色体上の部位に位置しないDNAを指す。異種DNAは、細胞にとって外来の遺伝子を含むことが好ましい。例えば、本発明は、DNA配列、および該DNA配列の一部ではない異種DNA配列を含むキメラDNA分子を含む。これに関連して、異種DNA配列は、生合成遺伝子クラスター配列中に自然には配置されないDNA配列を指す。あるいはまた、異種DNA配列は、生合成遺伝子クラスター中の自然には生じない位置に自然に配置され得る。例えば、機能的酵素またはドメインをコードしている配列は、NRPS配列中に自然に配置され得るが、この部位から欠失されて生合成遺伝子クラスター配列の別の場所に挿入されてもよい。異種発現調節エレメントは、自然に作用可能に会合しているものとは異なる遺伝子と作用可能に会合したエレメントである。本発明に関連して、目的のタンパク質をコードする遺伝子は、クローニングまたは発現のために挿入されるベクターDNAに対して異種であり、発現先であるそのようなベクターを含む宿主細胞に対して異種である。
【0044】
「発現制御配列」という用語は、コード配列の転写を調節するために組み合わせられる、プロモーター、任意のエンハンサーエレメントまたはサプレッサーエレメント(例えば、複製起点)を指す。「発現する」および「発現」という用語は、遺伝子またはDNA配列中の情報を現れさせること、例えば対応する遺伝子またはDNA配列の転写および翻訳に関わる細胞機能を活性化させることによりタンパク質を産生させることを意味する。DNA配列は、細胞中でまたは細胞により発現されてタンパク質等の「発現産物」を形成させる。発現産物自体(例えば、得られるタンパク質)も細胞により「発現される」と言える。発現産物は、細胞内、細胞外または分泌型として特徴付けられる。「細胞内」という用語は、細胞の中にあるものを意味する。「細胞外」という用語は、細胞の外にあるものを意味する。物質は、細胞上または細胞内のどこかから細胞外で有意な量で認められる場合に、細胞により「分泌」されるという。
【0045】
「トランスフェクション」という用語は、細胞への外来核酸の導入を意味する。「形質転換」という用語は、「外来の」(すなわち、外因性または細胞外の)遺伝子、DNAまたはRNA配列が細胞へ導入され、宿主細胞が、導入された遺伝子または配列を発現して、所望の物質(典型的には導入された遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素)を産生することを意味する。導入された遺伝子または配列は、「クローニングされた」または「外来」遺伝子または配列とも呼ばれ、細胞の遺伝子機構により使用される開始、終止、プロモーター、シグナル、分泌または他の配列等の調節または制御配列を含み得る。遺伝子または配列は、非機能配列または機能が公知でない配列を含む。導入されたDNAまたはRNAを受容し発現する宿主細胞は、「形質転換」された「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されたDNAまたはRNAは、宿主細胞と同じ属もしくは種、または異なる属もしくは種の細胞を含むいかなる由来源にも由来し得る。
【0046】
本明細書で使用する「アミノ酸等価物」という用語は、天然型アミノ酸の構造から逸脱するが、実質的にアミノ酸の構造を有して、生物学的活性を保持するペプチド内で置換され得るような化合物を指す。従って、例えば、アミノ酸等価物は、側鎖改変および/または置換を有するアミノ酸を含み、また関連した有機酸、アミド等も含み得る。「アミノ酸」という用語は、アミノ酸等価物を含むことを意図する。「残基」という用語は、アミノ酸およびアミノ酸等価物の両方を指す。
【0047】
本明細書で使用する「相同の」および「相同性」という用語は、スーパーファミリー(例えば、免疫グロブリンスーパーファミリー)に由来するタンパク質を含む「共通進化起点(common evolutionary origin)」を持つタンパク質と、異なる種に由来する相同タンパク質(例えば、ミオシン軽鎖等)との関係を指す(Reeckら, Cell 50:667, 1987)。このようなタンパク質(およびそれらのコード遺伝子)は、保存された位置における類似性%または特定の残基もしくはモチーフの存在のいずれかの点でのそれらの配列類似性に反映される配列相同性を有する。
【0048】
従って、「配列類似性」という用語は、共通進化起点を共有するかまたは共有しないタンパク質の核酸配列間またはアミノ酸配列間の同一性または対応性の程度を指す(Reeckら、前掲を参照)。しかし、一般的な用法および本出願においては、「相同」という用語は、「高く」等の副詞で修飾される場合、配列類似性を指し得、共通進化起点に関係するかもしれないしまたは関係しないかもしれない。
【0049】
具体的な実施形態では、2つのDNA配列は、BLAST、FASTA、DNAストライダー(Strider)等の配列比較アルゴリズムにより決定された際に少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%または95%のヌクレオチドが規定の長さのDNA配列にわたり一致する場合に「実質的に相同」または「実質的に類似」しているという。このような配列の例は、本発明の特定の遺伝子の変形体である対立遺伝子または種である。実質的に相同な配列は、配列データバンクにある利用可能な標準的なソフトウェアを用いて、または例えば特定の系について規定したストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において配列を比較することにより同定され得る。
【0050】
同様に、特定の実施形態では、80%を超えるアミノ酸が同一または約90%を超えるアミノ酸が類似している場合に、2つのアミノ酸配列は「実質的に相同」または「実質的に類似」している。アミノ酸は機能的に同一であることが好ましい。例えば、GCG(Genetics Computer Group, GCGパッケージ用プログラムマニュアル、バージョン10、Madison, Wisconsin)パイルアップ(pileup)プログラム、または上述したプログラムのいずれか(BLAST、FASTA等)を使用したアライメントにより類似または相同配列が同定されることが好ましい。
【0051】
核酸配列に関連する「配列同一性」、「配列同一性%」または「同一性%」という用語は、最も一致した状態で整列した場合に2つの配列で同一の残基を指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、または少なくとも約500〜5000ヌクレオチドの断片にわたることが望ましい。しかし、もっと短い断片(例えば、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20〜24ヌクレオチド、少なくとも約28〜32ヌクレオチド、少なくとも約36以上のヌクレオチド)の同一性が望ましい場合もある。同様に、「配列同一性%」は、タンパク質の全長またはその断片にわたりアミノ酸配列について容易に決定できる。都合よくは、断片は少なくとも約8アミノ酸の長さであり、最大約700アミノ酸であり得る。適切な断片の例を本明細書に記載する。
【0052】
核酸分子は、温度および溶液イオン強度の適切な条件下にあって核酸分子の一本鎖形態が他の核酸分子にアニールできる場合に、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA等の別の核酸分子に「ハイブリダイズ可能」という(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(本明細書においては、Sambrookら, 1989)を参照)。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。相同核酸の予備スクリーニングのために、55℃のTm(融解温度)に対応する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件が使用できる(例えば、5×SSC、0.1%SDS、0.25%乳およびホルムアミド無し;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDS)。中度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より高いTmに対応する(例えば、40%ホルムアミド、5×または6×SCC)。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は最も高いTmに対応する(例えば、50%ホルムアミド、5×または6×SCC)。SCCは0.15M NaCl、0.015M Naクエン酸塩である。ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補配列を含むことを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによっては、塩基間のミスマッチもありうる。核酸をハイブリダイズするのに適したストリンジェンシーは、当該分野において周知の変数である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きければ大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドについてのTmの値も高くなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(より高いTmに対応)は、以下の順で低くなる:すなわち、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。100ヌクレオチドよりも長いハイブリッドについては、Tmの計算式が導き出されている(Sambrookら、前掲、9.50-9.51を参照)。より短い核酸(すなわちオリゴヌクレオチド)とのハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら、前掲、11.7-11.8を参照)。ハイブリダイズ可能な核酸の最短の長さは、少なくとも約10ヌクレオチド;好ましくは少なくとも約15ヌクレオチド;より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドである。
【0053】
特定の実施形態では、「標準的ハイブリダイゼーション条件」という用語は55℃のTmを指し、上述した条件を利用する。好適な実施形態ではTmは60℃であり;より好適な実施形態ではTmは65℃である。特定の実施形態では、「高ストリンジェンシー」は、0.2×SSCにて68℃、50%ホルムアミドにて42℃、4×SSCのハイブリダイゼーションおよび/もしくは洗浄条件、またはこれら2つの条件のいずれかの下で認められるのと同等のハイブリダイゼーションレベルを提供する条件を指す。
【0054】
オリゴヌクレオチドの適切なハイブリダイゼーション条件(例えば、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー)は、典型的に、オリゴヌクレオチドの融解温度がより低いため完全長核酸(例えば、完全長cDNA)とはいくらか異なる。オリゴヌクレオチドの融解温度は、関与するオリゴヌクレオチド配列の長さに依存するため、適切なハイブリダイゼーション温度は使用するオリゴヌクレオチド分子に依って異なる。温度の例は、37℃(14塩基オリゴヌクレオチド)、48℃(17塩基オリゴヌクレオチド)、55℃(20塩基オリゴヌクレオチド)、および60℃(23塩基オリゴヌクレオチド)であり得る。オリゴヌクレオチドの適切なハイブリダイゼーション条件の例としては、6×SSC/0.05%ピロリン酸塩中での洗浄、または同等のハイブリダイゼーションレベルを提供する他の条件が挙げられる。
【0055】
「変異体(mutant)」および「突然変異」という用語は、遺伝子物質(例えばDNA)におけるあらゆる検出可能な変化、またはそのような変化のあらゆるプロセス、メカニズムもしくは結果を意味する。これには、遺伝子の構造(例えばDNA配列)が変化される遺伝子突然変異、任意の突然変異プロセスから生じる任意の遺伝子またはDNA、および改変された遺伝子またはDNA配列によって発現される任意の発現産物(例えばタンパク質または酵素)が含まれる。
【0056】
「変形体(variant)」という用語も、改変または変化した遺伝子、DNA配列、酵素、細胞等(すなわち任意の種類の変異体)を指すために使用され得る。2つの具体的な種類の変形体は、所与のコドン位置における1つ以上のヌクレオチドの変化によりその位置においてコードされるアミノ酸に変化が生じないポリヌクレオチド配列である「配列保存型変形体」、ならびにポリペプチドの全体的な立体構造および機能を変えることなくタンパク質または酵素中の所与のアミノ酸残基が変化している「機能保存型変形体」がある。同様の性質をもつアミノ酸は当該分野で周知である。保存型と示すもの以外のアミノ酸は、タンパク質または酵素が異なり、つまり同様の機能の任意の2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列の類似性%が異なり、例えばMEGALIGNで利用可能なアルゴリズムに類似性が基づくクラスタル(Clustal)法等の整列スキームにより決定された際に70%〜99%であり得る。「機能保存変形体」はまた、BLASTまたはFASTAのアライメントにより決定された場合に少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性を有し、比較対象である天然型または親タンパク質または酵素と同じまたは実質的に同様の性質または機能を有するポリペプチドまたは酵素も含む。
【0057】
本発明によれば、当該分野の技術範囲内にある従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術が採用され得る。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook, FritschおよびManiatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(本明細書においては「Sambrookら, 1989」);DNA Cloning: A Practical Approach, IおよびII巻 (D.N. Glover編 1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J. Gait編 1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D. HamesおよびS.J. Higgins編(1985));Transcription And Translation(B.D. HamesおよびS.J. Higgins編(1984));Animal Cell Culture(R.I. Freshney編(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press, (1986));B. Perbal, A practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M. Ausubelら(編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc.(1994)を参照のこと。
【0058】
II.生合成遺伝子クラスター
一態様において、本発明は、単離型メリダマイシン生合成遺伝子クラスターを提供する。メリダマイシンの生合成についての遺伝子情報を含むpMH45、pMH18、pMH26、pMH47、pMH51およびpMH54と同定されたコスミド群の単離を記載している例を参照のこと。配列番号:1は、単離されたメリダマイシン生合成遺伝子クラスターの核酸配列を提供する。本発明には、表1の核酸配列に相補的な鎖、生合成遺伝子クラスターの配列の天然型変形体および操作された改変、ならびにそれらの相補鎖も含まれる。このような改変としては、例えば、当該分野で公知の標識、メチル化、および縮重ヌクレオチドによる1つ以上の天然型ヌクレオチドの置換が挙げられる。これらの改変は、選択した発現系における発現、収率を高めるため、および/もしくは精製を改善するため、または他の所望の目的のためであり得る。
【0059】
さらに、本発明は、配列番号:1の核酸配列の機能的断片およびその逆方向相補体を包含する。適切な断片の例は、配列番号:1の核酸配列に関して表1に示す。表1はさらに、コード配列によりコードされるポリペプチドの長さを識別し、それぞれの関連配列識別番号および機能を参照する。
【0060】
とりわけ、一部のコード配列は、配列番号:1のセンス鎖に配置されている(例えば、ORF4、ORF8、ORF21、MerA、MerB、MerC、MerD、MerE、ORF F-2、MerJ、ORFr、MerSおよびORFVを含む)。さらに、一部のコード配列は、配列番号:1の逆方向相補体である鎖上に配置されている(例えば、ORF1-3、ORF5-7、ORF9-15、MerM-MerQ、MerTおよびMerUを含む)。便宜上、配列番号:1の逆方向鎖上に配置されているコード配列には別々の配列番号をつけている。他の適切な核酸断片としては、表1のアミノ酸をコードする核酸配列[配列番号:31〜68]、ならびに表2に示すモジュールおよび触媒ドメインのアミノ酸配列をコードする核酸配列(すなわち、配列番号:47、48、49および50の特定の断片)が挙げられる。さらに他の適切な断片は、当業者に容易に分かるであろう。
【0061】
従って、本発明は、メリダマイシン生合成遺伝子クラスターに由来するコード領域の単離された核酸配列を提供する。これらには、例えば、ORF1-15、ORF F1-1、ORF F-2、ORFK、ORFR、ORFV、MerP、MerA、MerB、MerC、MerD、MerEのいずれか、MerG-J、MerM-O、MerQ、またはMerS-Uのいずれかが挙げられる。一実施形態では、単離された核酸配列は、単一のオープンリーディングフレームまたは遺伝子を含む。別の実施形態では、単離された核酸配列は、1つ以上のオープンリーディングフレームまたは遺伝子を含む。例えば、選択された宿主細胞は、MerPおよびMerA-MerDにわたる配列を、また任意にMerE(配列番号:1のヌクレオチド26284-99586)との組合せを含み得る。あるいはまた、選択された宿主細胞は、1つ以上のこれらのコード領域の単離された配列を含み得る(例えば、MerP[配列番号:1のnt21592-26311]、MerA[配列番号:1のnt26284-43422])、MerB[配列番号:1のnt43480-64788] 、MerC[配列番号:1のnt64785-88691]、MerD[配列番号:1のnt889131-98352]、および/またはMerD[配列番号:1のnt98393-99586])。あるいはまた、ベクター宿主細胞は、MerP[配列番号:46]、MerA[配列番号:47]、MerB[配列番号:48]、MerC[配列番号:49]、MerD[配列番号:50]、および/またはMerE[配列番号:51]をコードする配列の任意の組合せを含み得る。
【0062】
生合成遺伝子クラスターの断片およびそれらの相補鎖の改変も含む。このような改変は、例えば、当該分野で公知の標識、メチル化、および縮重ヌクレオチドによる1つ以上の天然型ヌクレオチドの置換を含む。これらの改変は、選択した発現系における発現、収率を高めるため、および/もしくは精製を改善するため、または他の所望の目的のためであり得る。
【0063】
【表1】


【0064】
表1に示すように、MerP、MerA、MerB、MerC、MerDおよびMerE遺伝子は、メリダマイシン分子の核の生成に関与するものである。MerPは、非リボソームペプチドシンテターゼをコードする。MerA、MerB、MerCおよびMerDはそれぞれ、それぞれ複数のモジュールから構成されるI型ポリケチドシンテターゼ(PKS)をコードする。モジュールはそれぞれ、触媒ドメイン(例えばケトシンターゼ還元(KR)、アシルトランスフェラーゼ還元(AT)、デヒドラターゼ還元ドメイン(DH)、またはエノイルリダクターゼ(ER)還元ドメイン)を提供する。例えば、MerAは4つのモジュール、MerBは4つのモジュール、MerCは5.5のモジュール、およびMerDは1.5のモジュールを提供する。表2を参照。
【0065】
【表2】


【0066】
(例えば、MerP、MerA、MerB、MerCおよびMerDによる)核モジュールの生成後、ポリケチド核を、本明細書において「テーラーメイド酵素」と呼ぶ追加酵素により修飾できる。これらの酵素は、ポリケチド核内に存在する炭素原子の数を変えること無くポリケチド核の側鎖を変える。このようなテーラーメイド酵素としては、ヒドロキシル化およびメチル化が挙げられるがこれらに限定されない。このようなテーラーメイド酵素の一例であるシトクロムP450様ヒドロキシラーゼはMerEでコードされる。
【0067】
例えば、プリンシンターゼ、スクシニル-CoAシンテターゼ、グルカナーゼ、アルギニノコハク酸シンターゼ、マイコデキストラナーゼ、グルコシダーゼ、糖輸送体、調節タンパク質、薬物排出輸送体および膜タンパク質を含む他の機能ポリペプチドおよび酵素が同定されている。
【0068】
一実施形態では、少なくともポリケチド核をコードする遺伝子を含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、改変されたストレプトミセスおよび/または放線菌株であり得る。あるいはまた、宿主細胞は、これらの生合成遺伝子を自然に担持しない種類であり得る。一実施形態では、宿主細胞は、生合成遺伝子クラスターの1つ以上の他の遺伝子を含む(例えば、MerE、(MerG-Uの任意の1つ)、ORF1-15、ORFF-1、ORFF-2、ORFK、ORFRまたはORFV)。
【0069】
一実施形態では、本発明は、遺伝子領域中の1つ以上の触媒ドメイン(例えば、モジュール)の機能が排除された変異型遺伝子を提供する。この突然変異は、欠失、フレームシフト突然変異、または当該分野で公知の他の方法により達成できる。これらのモジュールそれぞれの機能は保持され、選択した遺伝子の機能が保持されることが望ましい。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、とりわけ、表1および2に示すメリダマイシン生合成シンターゼ複合体のポリペプチドおよび酵素を含む新規アミノ酸配列を提供する[配列番号:31〜68、およびそれらの断片(例えば、表2に示すもの)]。本発明のアミノ酸配列は、本発明の核酸配列から(例えば、配列番号:1もしくは本明細書において同定されているようなその断片から、またはこれらのアミノ酸をコードする他の核酸配列から)発現され得る。
【0071】
さらに別の実施形態では、これらのアミノ酸配列またはそれらの断片は、当業者に公知の技術を用いて(例えば、化学合成により)合成的に生成され得る。例えば、ペプチドは、周知の固相ペプチド合成法(Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149 (1962);StewartおよびYoung, Solid Phase Peptide Synthesis (Freeman, San Francisco, 1969) pp.27-62)によっても合成され得る。
【0072】
適切な生成技術は、当業者に周知である。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。本明細書で提供する任意のアミノ酸配列の配列は、様々な技術を用いて容易に生成できる。上記および他の適切な生成方法は、当業者の知識範囲内にあり、本発明を限定するものではない。
【0073】
1つの特定の実施形態では、本発明のアミノ酸配列は、選択された宿主細胞中での1つ以上のORFまたは遺伝子の発現により生成される。典型的に、1つ以上のORFまたは遺伝子をコードする核酸配列を所望の宿主細胞に運ぶようにベクターは設計される。
【0074】
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、DNAを宿主細胞に導入して、導入された配列の発現を生じることのできるビヒクルを指す。一実施形態では、ベクターは、導入されたDNAに対しては異種であるが宿主細胞により認識および使用されるプロモーターおよび1つ以上の制御エレメント(例えば、エンハンサーエレメント)を含む。別の実施形態では、ベクターに導入される配列は、宿主細胞により認識および発現され得るその天然のプロモーターを保持する(Bormannら, J. Bacteriol 1996; 178:1216-1218)。一実施形態では、本発明に適したベクターは、例えばストレプトミセスと大腸菌とを接合させる属間シャトルベクターである。別の実施形態では、ベクターはコスミドである。
【0075】
「プロモーター」または「プロモーター配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼと結合すること、および下流(3'側方向)コード配列の転写を開始することが可能なDNA調節領域である。本発明を規定する目的で、プロモーター配列は、その3'末端に転写開始部位が結合し、上流(5'側方向)に延長して、バックグラウンドを超える検出可能なレベルでの転写を開始するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列内では、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1でマッピングされることにより適切に決定される)、およびRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が認められる。プロモーターは、エンハンサーおよびリプレッサー配列を含む他の発現制御配列と作用可能に会合し得る。
【0076】
「属間ベクター」は、属間接合を可能にする(すなわち、DNAを大腸菌から放線菌に直接渡す系を利用する)ベクターである(Keiser, T.ら, Practical Streptomyces Genetics (2000) John Innes Foundation, John Innes Centre (England))。属間接合は、形質変換よりも操作が少ない。
【0077】
ベクターは、典型的に、伝達性物質(transmissible agent)のDNAを含み、これに外来DNAを挿入する。DNAの一方のセグメントをDNAの他方のセグメントに挿入するための一般的な手法は、制限部位と呼ばれる特異的な部位(特異的なヌクレオチドグループ)においてDNAを切断する制限酵素と呼ばれる酵素を使用することを伴う。「カセット」とは、規定された制限部位においてベクターに挿入され得る、発現産物をコードするDNAコード配列またはDNAのセグメントを指す。カセット制限部位は、カセットが正しいリーディングフレームに確実に挿入されるよう設計される。一般的に、外来DNAは、ベクターDNAの1つ以上の制限部位に挿入され、その後ベクターにより伝達性(transmissible)ベクターDNAと共に宿主細胞まで運ばれる。発現ベクター等のDNAを導入または付加されたDNAのセグメントまたは配列は「DNA構築物」とも呼ばれうる。よくあるタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、一般的に、付加(外来)DNAを許容し易くかつ適切な宿主細胞に導入し易い(環状であり得る)二本鎖DNAの内蔵分子(通常、細菌由来源のもの)である。プラスミドベクターは、コードDNAおよびプロモーターDNAを含むことが多く、外来DNAを挿入するのに適した1つ以上の制限部位を有する。コードDNAは、特定のタンパク質または酵素の特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始、調節、さもなくば仲介または制御するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは、同じ遺伝子または異なる遺伝子に由来し得、同じまたは異なる生物に由来し得る。組換えクローニングベクターは、クローニングまたは発現のための1つ以上の複製系、宿主内での選択のための1つ以上のマーカー(例えば、抗生物質耐性)、および1つ以上の発現カセットを含むことが多い。
【0078】
ベクター構築物は、当該分野の範囲内にある従来の分子生物学および組換えDNA技術を用いて作製され得る。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook, FritschおよびManiatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(本明細書においては「Sambrookら, 1989」);DNA Cloning: A Practical Approach,IおよびII巻 (D.N. Glover編 1985);F.M. Ausubelら(編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc.(1994)を参照のこと。
【0079】
「宿主細胞」という用語は、細胞により物質を生成するための任意の手段で選択、改変、形質転換、培養、使用、または操作された任意の生物の任意の細胞を意味する。例えば、宿主細胞は、特定の遺伝子、DNAもしくはRNA配列、タンパク質、または酵素を発現するように操作されたものであり得る。宿主細胞はさらに、以下に記載のスクリーニングまたは他のアッセイのために使用できる。宿主細胞は、in vitroで、または非ヒト動物(例えば、トランスジェニック動物もしくは一過性にトランスフェクトされた動物)の1つ以上の細胞において培養され得る。
【0080】
宿主細胞自体は、原核(例えば、細菌)細胞、植物細胞、ならびに真核細胞(昆虫細胞、酵素細胞、および哺乳動物細胞を含む)を含む任意の生物から選択され得る。適切な宿主細胞の代表的な例としては、大腸菌、ストレプトミセスおよび枯草菌等の細菌細胞;酵母細胞およびアスペルギルス細胞等の真菌細胞;ならびにショウジョウバエS2およびヨトウガ(spodoptera)Sf9細胞等の昆虫細胞が挙げられる。
【0081】
「発現系」という用語は、(例えば、ベクターに担持され、宿主細胞に導入される外来DNAによりコードされたタンパク質の発現のために)適切な条件下にある宿主細胞および適合したベクターを意味する。多種多様な発現系が使用でき、例えば、染色体、エピソーム、ウイルス由来系(例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、ウイルス(バキュロウイルス、SV40等のパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス等)から誘導されるベクター、ならびにそれらの組合せ(プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝エレメントから誘導されるもの(コスミド、BACベクターおよびファージミド)等)から誘導されるベクター)がある。発現系は、発現を調節および発生させる制御領域を含み得る。一般的に、ポリヌクレオチドを維持、増幅または発現して宿主において酵素を産生できる任意の系またはベクターが使用できる。適切なヌクレオチド配列は、例えばSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第二版 Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989)に記載されているもの等の様々な周知かつ常套的な技術のいずれかにより発現系に挿入され得る。適切な分泌シグナルを所望の酵素に組み込み、翻訳されたタンパク質を小胞体の内腔、ペリプラズム空間または細胞外環境に分泌させることができる。これらのシグナルは、酵素に対して内因性であっても、または異種シグナルであってもよい。
【0082】
従って、本発明者らによりメリダマイシンの生合成経路が決定されたことによって、当業者は、一実施形態において、該経路つまりはポリケチドを異種生物においてクローニングおよび発現することができる。本発明はまた、生合成遺伝子クラスター(例えば、1つ以上のORFまたは遺伝子)の単離された核酸配列の一部が、異種宿主細胞(すなわち、別のストレプトミセス株、非ストレプトミセスおよび/または非放線菌)において発現することを可能にする。実施例においては細菌株の使用について例示しているが、本明細書に記載のあらゆる生物または発現系が使用できる。生物の選択は、当業者のニーズに依る。例えば、遺伝子操作し易い株を使用して、メリダマイシンを改変および生成し易くしてもよい。
【0083】
III.生合成遺伝子クラスター内の単位を改変する方法
一態様において、本発明は、メリダマイシン生合成遺伝子クラスターの1つ以上の遺伝子、オープンリーディングフレーム、モジュールまたは触媒ドメインの改変方法を提供する。改変は、選択した発現系における発現を改善することを目的としていてもよい。その他の改変は、選択したドメインの機能を消失、改変または増強するためのものであってもよい。
【0084】
一実施形態では、このような改変単位の核酸配列は、適切なベクターを介して選択された宿主細胞中で異種宿主細胞(すなわち、別のストレプトミセス株、非ストレプトミセスおよび/または非放線菌)に与えられ、産物を発現するために使用され得る。適切なベクター、発現系および宿主細胞の例は本明細書に記載されている。別の実施形態では、本発明は、生合成遺伝子クラスターの1つ以上の遺伝子の改変により生成される変異型ストレプトミセス株の生成方法を提供する。本発明に従い1つ以上の遺伝子の機能が部分的または全体的に改変または破壊された生合成遺伝子クラスターを含むこのような変異型放線菌株を使用して、マクロライド化合物(例えば、メリダマイシン、36-ケトメリダマイシン、または9-デオキソメリダマイシン)を生成できる。
【0085】
マクロライド化合物の生成が望ましい場合、宿主細胞は、ポリケチド核(すなわち、MerP、MerA、MerB、MerCおよびMerD)を生成するのに必要な機能を発現する。しかし、補助的機能は改変または消滅され得る。例えば、核モジュールの生成後、本明細書中において「テーラーメイド酵素」と呼ぶ追加酵素によりポリケチド核を改変できる。これらの酵素は、ポリケチド核に存在する炭素原子の数を変えることなくポリケチド核の側鎖を改変する。このようなテーラーメイド酵素としては、ヒドロキシル化およびメチル化が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、テーラーメイド酵素であるシトクロムP450ヒドロキシラーゼ(配列番号:52)の機能は破壊され得る。
【0086】
別の例では、生合成遺伝子クラスターの一部を構成する非リボソームペプチドシンターゼの4つのモジュールの1つ以上、またはそれらの触媒ドメインが改変される。別の実施形態では、4つのポリケチドシンターゼ(合計15のモジュールを含む)の1つ以上が改変される。別の実施形態では、ポリケチドシンターゼのモジュールの1つ(例えば、ケトシンターゼドメイン、アシルトランスフェラーゼドメインおよびアシル担体タンパク質)が改変される。さらに別の実施形態では、別のモジュール(例えば、ケトリダクターゼドメイン、デヒドラターゼドメインまたはエノイルリダクターゼドメイン)が改変される。テーラーメイド酵素以外の遺伝子に対する突然変異を含む他の適切な突然変異も当業者により容易に実施できる。
【0087】
本発明は、本発明のタンパク質をコードする核酸配列のいずれかを改変するあらゆる方法を包含する。より具体的には、本発明は、本発明のタンパク質にアミノ酸を挿入、アミノ酸を欠失またはアミノ酸を置換するあらゆる方法を包含する。さらに、モジュール中のドメイン(KR、DHまたはERドメイン等)全体が置換され得、これはポリケチド環に対するβ-ケト基の還元程度を変える。改変は、核酸レベルで行うことができる。これらの改変は、標準的な技術により行うことができ、当該分野で周知である。例えば、本発明の一実施形態では、メリダマイシンマクロライド核へのピペコリン酸の取り込みに関与する生合成クラスターのNRPSをコードする遺伝子が不活性化される。
【0088】
メリダマイシンポリケチドシンターゼの一次構成とメリダマイシンポリケチド核構造の構造との共直線性の関係に関する本明細書中の情報を前提として、当業者は、モジュールをコードする遺伝子を操作し、従って化学改変では容易に作用できないメリダマイシンのポリケチド骨格の特定の部分を改変することにより、これらの1つ以上の個々のPKSモジュールに特定の変化を容易に導入できる。
【0089】
一実施形態では、本発明は、選択されたモジュール中の選択された還元ドメイン(例えば、KR、DHまたはER)の不活性化、欠失または挿入により、ポリケチド環に対するβ-ケト基の還元の程度の変化を提供する。例えば、メリダマイシンのC36における水酸基は、メリダマイシンポリケチドシンターゼA(MerA)中のモジュール1のKRドメインの作用によりケト基から誘導される。MerAからこのKRドメインを排除することで、ケト基がC36位置において回復(restore)する。これは、実施例4(以下参照)で詳細に記載するように成果を上げている。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、1つ以上のPKSモジュールの欠失または付加により大きさが改変されたポリケチド環を有するメリダマイシンを提供する。ポリケチド環中の二炭素単位の数(環の大きさ)は、PKS中に存在するモジュールの数により決定される。従って、ポリケチド環の大きさは、対応するPKSへのモジュールの付加または欠失を介して二炭素単位で増加または低下され得る。これは、このようなモジュールをコードするDNA断片を、選択されたPKS遺伝子(merA、merBまたはmerC)へ、オープンリーディングフレーム全体の完全性を維持するように挿入することにより達成され得る。
【0091】
さらに別の実施形態では、本発明は、ATドメインの部位特異的突然変異または置換により改変された1つ以上の側鎖を有するメリダマイシンポリケチド環を提供する。上記したように、マクロライドポリケチドのα-炭素にある側鎖の組成は、対応するモジュール中に存在するATドメインの特異性により決定される。例えば、モジュール4中のATドメインはエチルマロニルCoAを認識する特異性を有しており、4サイクル目の縮重の間にそれをポリケチド環に取り込むため、エチル基がメリダマイシンのC28に存在する。このATドメインが、メチルマロニルCoAを特異的に認識する別のATドメインに置き換えられた場合、エチル基の代わりにメチル基がC28に存在することになる。あるいはまた、このATドメインが、マロニルCoAを特異的に認識する別のATドメインに置き換えられた場合、C28において水素が存在する。これらの変化は全て、点突然変異を特定のATドメインをコードするDNA断片に部位特異的突然変異誘発により導入すること、またはATドメインをコードするDNA断片を異なる基質特異性を有する別のATドメインをコードする別のDNA断片で置き換えることにより達成できる。
【0092】
さらに別の実施形態では、本発明は、ローディングモジュールの置換により変化した出発単位を有するメリダマイシンを提供する。メリダマイシン中のC36およびC37は、マロニル-CoAからのmerPKSのローディングモジュールにより取り込まれる。merPKS遺伝子クラスターの配列決定分析により、KSQ-AT-ACP三ドメイン(tridomain)を含むローディングモジュールが明らかになり、チロシン、ピクロマイシン/メチマイシン、スピノシンおよびモネンシンの生合成遺伝子クラスターに認められる連鎖開始の種類を示唆している。これまでの研究は、この種類のローディングモジュールが厳密な基質特異性を有することを示しており、これはエリスロマイシンおよびアベルメクチンPKSで認められるAT-ACP二ドメイン(didomain)ローディングモジュールの緩い特異性とは対照的である。従って、merPKSローディングモジュールが幅広い基質特異性の1つで置き換えられた変異型メリダマイシン生成株が生成できる。このような変異型メリダマイシンは、培養に添加する様々な基質に依存して1を上回るメリダマイシン類似体を提供し得る。
【0093】
本発明はまた、以下の実施例で記載する属間共役ベクターを使用して、特定の生成物の合成に関与するタンパク質を操作、改変または単離する方法も包含する。例えば、ベクターを使用して、ピペコリン酸残基のポリケチド核への取り込みに関与する酵素を改変して、プロリン残基が代わりに取り込まれるようにしてもよい。その後、ペプチド機能に対するこの改変の影響を、生物学的効力について評価してもよい。上記例において、酵素に対する改変としては、ピペコリン酸を特異的に認識するアミノ酸および/もしくは配列の除去、ならびに/またはプロリンを特異的に認識するアミノ酸および/もしくは配列の取り込みが挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
従って、大まかに言えば、属間ベクターを使用して、核酸配列の挿入、核酸配列の欠失、または核酸配列中の特定の塩基の改変により遺伝子配列を変えて、目的のタンパク質の配列を変えて、目的の改変型タンパク質を生成してもよい。目的のタンパク質は、目的の化合物の合成に関与することが好ましい。タンパク質を改変する方法は、(i)第1の細菌細胞をベクターでトランスフェクトすること、(ii)該ベクターの複製を可能にする条件下で該第1の細菌細胞を培養すること、(iii)ベクターを該第1の細菌細胞から第2の細菌細胞へ直接移動させる条件下で、該第1の細菌細胞と該第2の細菌細胞とを接合すること、および(iv)該ベクターで形質転換された該第2の細菌細胞を単離することを含む。好適な実施形態では、第1の細胞はグラム陰性細菌細胞であり、第2の細胞はグラム陽性細胞である。
【0095】
一実施形態では、メリダマイシン核構造の生成ためのPKSをコードする遺伝子がLL-BB0005の染色体上で互いと結合されているという事実に基づき、当業者は、これらの遺伝子を、マクロライド化合物(例えば、ラパマイシン)の高収率生成のために最適化された別の細菌の染色体に移すことが可能であろう。これは、2ステップで行うことができる:すなわち、まず、天然型ラパマイシンPKS遺伝子をラパマイシン高生成体(high producer)から欠失すること;その後メリダマイシンPKS遺伝子を変異型ラパマイシン高生成体の染色体に組み込むこと。
【0096】
本発明により生成した変異型遺伝子、および/またはMerA-VもしくはORF1-ORF15にコードされるタンパク質の役割は、当該分野で公知の任意の方法を用いて評価される。例えば、タンパク質配列に対する特定の改変を行って最終生成物を変えることができる。これらのタンパク質で行うことのできる研究の他の限定しない例としては、(i)タンパク質の生物学的活性の評価、および(ii)細菌由来の最終生成物を変えるための合成経路の操作が挙げられる。これらの提案される使用についてのより詳細な議論は以下の通りである。
【0097】
本明細書で議論するタンパク質の遺伝子操作および発現は、当該分野で公知の任意の方法により行うことができる。例えば、点突然変異の影響を評価できる。突然変異は、当該分野で公知の任意の方法により行うことができる。1つの特定の方法では、操作およびタンパク質発現は、少なくとも1つのグラム陰性および少なくとも1つのグラム陽性複製起点を含むベクターを使用して行われ得る。複製起点は、グラム陰性またはグラム陽性細胞系のいずれかにおいて、ベクターにコードされる核酸の複製を可能にする。一実施形態では、ベクターは、1つのグラム陰性および1つのグラム陽性複製起点を含む。さらに、ベクターは、宿主細胞によって複製および転写され得る異種核酸の挿入を可能にする複数のクローニング部位を含む。
【0098】
核酸の転移の最も発達しているメカニズムは接合である。本明細書で使用する「接合」という用語は、細胞間の直接接触による一方の原核細胞から他方への核酸の直接転移を指す。転移の起点はベクターにより決定され、ドナー細胞は保持され、レシピエント細胞はベクターのコピーを受け取るようにする。接合による伝達性はtra領域中の遺伝子セットにより制御され、これはまた転移の起点が組み込まれた際には染色体の転移を動員する能力も持つ(Pansegrauら, J. Mol. Biol., 239:623-663, 1994;FongおよびStanisich, J. Bact., 175:448-456, 1993)。
【0099】
改変型タンパク質をコードする核酸を生成する際に、宿主細胞においてタンパク質を発現させてもよい。次に、改変された経路の生成物の生成を可能にする条件下で宿主細胞が培養され得る。
【0100】
生成物を単離したら、当該分野で公知の任意の方法により生成物の活性を評価してもよい。活性は、非改変型生合成経路の生成物および他の改変により生成された生成物と比較できる。特定の変化と活性との間で相互関係を導き出し得る。例えば、特定の位置にある活性残基は、活性を高め得ると決定できる。これらの種の相互関係により、当業者は特定の活性について最も好ましい生成物構造を決定することができる。
【0101】
化合物の合成におけるタンパク質のメカニズムおよびタンパク質の役割の評価は、従来より配列相同性技術を用いて決定されてきた。先に記載されている属間シャトルベクター、例えば、pNWA200(米国特許出願公報第2003-0219872 A1(2003年3月28日に出願されたシリアル番号10/402,842)を参照)を使用して、未知のタンパク質の生物学的活性を評価してもよい。ベクターは、タンパク質をコードする遺伝子を部分的もしくは完全に除去することにより、または該遺伝子を破壊することにより、タンパク質を破壊するために使用され得る。改変されたタンパク質が存在した場合に生成された生成物の評価は、タンパク質の機能を決定する上で有用である。
【0102】
IV.変異型放線菌株
一実施形態では、本発明は、本発明の1つ以上の生合成遺伝子の改変により生成される変異型ストレプトミセス株を提供する。
【0103】
本発明はさらに、本発明により生成する変異型株MH1104-1を提供し、これは農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)に関するブダペスト条約に従って2005年3月14日に寄託されている(受託番号NRRL B-30829)。
【0104】
本明細書に記載のストレプトミセス種を培養する発酵条件は、フラスコ中で行うことができる。あるいはまた、大容量の生成は発酵槽において同様の条件下で行うことができる。
【0105】
ストレプトミセス種の培養およびマクロライド化合物の生成に有用な培地としては、例えばデキストロース、スクロース、グリセロール、糖蜜、スターチガラクトース、フルクトース、コーンスターチ、麦芽エキスおよびそれらの組合せ等の同化炭素源;例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、アミノ酸、タンパク質加水分解物、コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母抽出物、ペプトン、トリプトンおよびそれらの組合せ等の同化窒素源;ならびに例えばカリウム、ナトリウム、硫酸塩、カルシウム、マグネシウム、塩化物等の無機アニオンおよびカチオンが挙げられる。例えば亜鉛、コバルト、鉄、ホウ素、モリブデンおよび銅等の微量元素は培地の他の構成要素の不純物として供給される。タンクおよび瓶内の給気は、発酵培地またはその表面に滅菌空気を強引に通すことにより実施できる。機械的な推進体によりタンク内でさらに攪拌を行える。ポリプロピレングリコール等の消泡剤が必要に応じて添加できる。
【0106】
一実施形態では、発酵生成培地は、約1%〜約2%の重量パーセントのデキストロース;約1%〜約3%のダイズ由来源(soy source)、約0.25%〜約1%の酵母、約0.1%のカルシウム由来源、約5%〜約10%、好ましくは6%〜8%のマルトデキストリン、および任意に0〜0.5%のプロリンを組み合わせることにより調製する。任意に、他の成分も含まれうる。培地のpHは約6.5〜7.5、好ましくは約6.8〜7に調節されることが都合がよい。典型的に、培養物は、適切な攪拌および給気により発酵させる。あるいはまた、他の適切な発酵培地は、当業者が他の適切な炭素源もしくは他の構成要素に置き換えることにより調製してもよいし、および/または購入してもよい。一般的に、例えば、Sigma Aldrich(St. Louis, MO);G.J. Tortoraら, Microbiology: An Introduction Media Update (Benjamin Cummings Publishing Co; Oct. 1, 2001);Maintaining Cultures for Biotechnology and Industry, J.C. Hunter-CeveraおよびA. Bet編(Academic Press, Jan 25, 1996)を参照のこと。
【0107】
発酵の約5〜10日後、好ましくは約7日後、培養から得た細胞を遠心分離によりペレット化した。一実施形態では、細胞を適切な溶剤(例えば、酢酸エチル)で抽出した。抽出物を、減圧下で濃縮させ、最小容量の適切な溶剤(例えば、メタノール)に再懸濁させる。溶液を逆相シリカカラムに充填し、20%〜100%メタノール含有水で溶出した。60%メタノール〜100%メタノールから溶出した画分を減圧下で濃縮した。画分を含むメリダマイシンおよび/またはメリダマイシン類似体を、適切な手段(例えば、クロマトグラフィー法)で分離する。
【0108】
別の実施形態では、上清を適切な樹脂と混合し、約8〜16時間静置する。その後、樹脂を適切な溶剤(例えば、メタノール)で洗浄し、濾液を回収する。細胞ペレットに、酢酸エチル-メタノール混合物を添加する。これを繰り返し振とうおよび遠心分離させ、上清を回収する。細胞上清およびブロスメタノール濾液を組合せ、減圧下で濃縮させる。粗抽出物を、シリカに吸着させ、減圧液体クロマトグラフィー(VLC)により分画する。化合物を適切な溶剤(例えば、メタノール含有ジクロロメタン)で溶出する。この抽出物を濃縮し、シリカ上に吸着させ、フラッシュシリカカラムに充填する。化合物を適切な溶剤で溶出し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによりさらに精製する。
【0109】
本発明の酵素は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈降、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法により細胞培養物から回収および精製できる。アフィニティークロマトグラフィーを精製に採用することが最も好ましい。タンパク質再折り畳みに関する周知の技術を採用して、単離および/または精製の間に酵素が変性した際に活性立体構造を再生させてもよい。
【0110】
粗または半精製物質中で生物により生成される化合物の存在は、従来の方法(例えば、画分の液体クロマトグラフィー質量(LCMS)分析)により確認できる。これらの画分は、プールでき、クロマトグラフィー法によりさらに精製され、任意に(例えば、減圧下で)濃縮され得る。
【0111】
得られる精製化合物は、研究および/または臨床を目的とした化合物の扱いおよび処方を可能にする必要性に応じて、細胞および細胞物質、副産物、試薬、ならびに他の外来物質を含まない。本発明で使用する化合物の純度は、80重量%を上回る;より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは95重量%を上回る;さらにより好ましくは少なくとも99重量%の純度を有することが好ましい。一実施形態では、本発明は、そのような化合物がどのように生成されるかとは関係なく本発明の化合物を含む組成物を提供する。
【0112】
さらに別の実施形態では、本発明は、生合成遺伝子クラスター中の遺伝子の改変により生成される新規化合物を提供する。化合物は、本明細書に記載のように生成された変異型ストレプトミセス種により、または本明細書に記載のように生合成遺伝子クラスター中での改変型遺伝子の組換え生成により生成され得る。
【0113】
V.ポリケチド化合物
別の態様では、本発明は、新規メリダマイシン化合物を提供する。これらの化合物としては、36-ケトメリダマイシン、C9-デオキソメリダマイシン、およびC9-デオキソプロリルメリダマイシンが挙げられる。
【0114】
一実施形態では、本発明は、式(II)
【化6】

のC36-ケトメリダマイシン化合物、またはそれらの製薬上許容可能な塩を提供する。
【0115】
別の実施形態では、本発明は、構造(III):
【化7】

の特徴を持つ9-デオキソメリダマイシン化合物を提供する。
【0116】
複数または単数の「製薬上許容可能な塩」という用語は、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、桂皮酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、シュウ酸、プロピオン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、グリコール酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸および同様の公知の許容可能な酸等の有機酸および無機酸に由来する塩を指す。
【0117】
式(II)または(III)においては立体化学を考慮せずに示しているが、式(II)および(III)の化合物は1つ以上の不斉中心を含み得る。「式(II)または(III)の化合物」に言及する場合、関係する構造式のあらゆる化合物(それらの全ての立体異性体を含む)を含むと理解される。
【0118】
式(III)(式中、n=2)の化合物の物理化学的特性は以下の通りである:
見掛け分子式:C45H77NO11
分子量:陽イオンエレクトロスプレーMS m/z=808.1 (M+H)+;陰イオンエレクトロスプレーMS m/z = 806.5(M-H)-;高解像度フーリエ変換MS m/z=830.53683(M+Na)+
紫外線吸光度スペクトル:λmaxnm(アセトニトリル/水)=210 nm、末端吸光(end absorption)
プロトン磁気共鳴スペクトル:(400 MHz, CD3OD):図4を参照
炭素磁気共鳴スペクトル:(100 MHz, CD3OD):図5を参照。
【0119】
本発明の神経保護化合物(II)または(III)の生成は、特定の生物、例えば、LL-BB0005と称される放線菌種に限定されない。実際には、この生物の天然型変異体、および本発明によりあるいはまた当業者に公知の様々な変異誘発手段(例えば、ナイトロジェンマスタード、X線照射、紫外線照射、N'-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジンまたはアクチノファージへの曝露)によりBB0005から生成される誘導型変異体の使用を含むことが望ましいかまたは意図される。当業者に公知の遺伝子技術(例えば、接合、形質導入および遺伝子操作技術)により生成される種間または種内遺伝子組換え体を含むことも望ましくかつ意図するものである。特に望ましい1つの実施形態では、化合物(III)の生成に使用する生物は、放線菌LL-BB0005のM507と称される変異体である。
【0120】
放線菌LL-BB0005と称される培養物を、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)(1815 North University Avenue, Peoria, Illinois 61604)に関するブダペスト条約に従って2004年5月18日に寄託し、受託番号NRRL 30748を割り当てられた。
【0121】
本発明はまた、M507と称される放線菌LL-BB0005の変異型株も提供する。この生物は、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)(1815 North University Avenue, Peoria, Illinois 61604)に関するブダペスト条約に従って2005年1月24日に寄託し、受託番号NRRL 30815を割り当てられた。この変異型株は、適切な条件下で培養された場合に、本発明の式(III)の化合物をその親株と比べて高い収率で生成することが認められている。例えば、M507は、発酵プロセスの間にメチラポンが添加された場合に、親株と比べて約3倍高い収率で式(III、式中n=2)の化合物を生成できる。変異型株M507は、親株と比べて3倍高い収率でメリダマイシンを生成でき、望ましくない生成物は有意に低い量で生成する。変異型株M507は胞子を形成し、これにより遺伝子操作の影響を受け易くなる。
【0122】
本発明はさらに、式(III)の化合物を生成する能力を特徴とする、本発明の放線菌株の変異体、組換え体、および改変型形態を提供する。
【0123】
化合物(III)の生成のための放線菌培養株の発酵は、フラスコ内で行うことができる。あるいはまた、より高い容量の生成は同様の条件下で発酵槽において行うことができる。
【0124】
放線菌株LL-BB0005およびM507変異体を含むその変異体の培養、ならびに化合物の生成のために有用な培地は、例えばデキストロース、スクロース、グリセロール、糖蜜、スターチ等の同化炭素源;例えば塩化アンモニウム、アミノ酸、タンパク質加水分解物、コーンスティープリカー等の同化窒素源;ならびに例えばカリウム、ナトリウム、硫酸塩、カルシウム、マグネシウム、塩化物等の無機アニオンおよびカチオンを含む。例えば亜鉛、コバルト、鉄、ホウ素、モリブデンおよび銅等の微量元素は培地の他の構成要素の不純物として供給される。タンクおよび瓶内の給気は、発酵培地またはその表面に滅菌空気を強引に通すことにより実施できる。機械的な推進体によりタンク内でさらに攪拌できる。ポリプロピレングリコール等の消泡剤は必要に応じて添加できる。
【0125】
化合物III(式中、n=2)は、標準的な発酵条件下で、親株LL-BB0005により、部分精製後のLCMSで検出可能なごく少量で生成される。メチラポンを発酵に添加しない場合、LL-BB0005およびM507は化合物III(n=2)を1〜2 mg/Lの量で生成する。化合物II(式中、n=2)の力価(titer)を高めるために、親株か変異型M507のいずれかにメチラポンを添加できる。メチラポンが添加される場合、M507は化合物III(n=2)を15〜20 mg/Lの量で生成する。メチラポンは、公知のP450阻害剤であり、これはメリダマイシンの生成において最終的な酸化ステップを妨げ、化合物III(式中、n=2)の生成を生じる。
【0126】
典型的に、本発明の化合物(例えば、化合物III)の生成のために、放線菌株LL-BB0005を適切な培地中で数(例えば2〜4)日間、好ましくは約25℃〜約30℃(好ましくは約28℃)の温度にて培養する。典型的に、合計約2〜5日間のインキュベーションの後、2-メチル-1,2-ジ-3-ピリジル(pyridyle)-1-プロパノン(メチラポン)を添加し、発酵を約3〜6日間続ける。
【0127】
本発明の化合物を生成するのに適した条件下での放線菌の培養後、当業者に公知の方法を用いて化合物を単離および精製する。例えば、培養物を遠心分離して、本発明の化合物を含むブロスと細胞ペレットとに分離する。典型的には、細胞ペレットを抽出し、抽出物を濃縮する。次いで、ブロスを処理して、遠心分離の間に細胞から分泌または放出された任意の化合物を得る。その後、半粗物質を(例えば、クロマトグラフィー法により)さらに精製する。
【0128】
得られた精製化合物は、研究および/または臨床を目的とした化合物の扱いおよび処方を可能にする必要性に応じて、細胞および細胞物質、副産物、試薬、ならびに他の外来物質を含まない。本発明で使用する化合物の純度は、80重量%を上回る;より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは95重量%を上回る;さらにより好ましくは少なくとも99重量%の純度を有することが好ましい。一実施形態では、本発明は、そのような化合物がどのように生成されるかとは関係なく本発明の化合物を含む組成物を提供する。
【0129】
VI.ポリケチド化合物の使用
一態様では、本発明は、様々な神経障害に対する医薬組成物および方法における、本明細書に記載する新規株により生成される化合物および本発明の新規化合物の使用を提供する。従って、本明細書に記載の変異体または他の新規宿主細胞により生成されるメリダマイシン化合物、36-ケトメリダマイシン、9-デオキソメリダマイシンまたは9-デオキソプロリルメリダマイシンも同様に使用できる。
【0130】
「神経変性の予防」という用語は、神経変性疾患、虚血、外傷、および過剰の興奮性アミノ酸(グルタミン酸塩等)から生じる任意の症状を含むがこれらに限定されない病態から生じるアポトーシスまたは他のメカニズムによる神経細胞死を予防することを指す。
【0131】
「神経再生の促進」という用語は、神経突起伸長または長期増強を含むがこれらに限定されない神経細胞事象を誘発することを指す。神経保護剤は、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病等の神経変性疾患、虚血もしくは外傷後の神経損傷、および神経損傷が関係する任意の他の病態の治療のために有用である。メリダマイシンから誘導される他の化合物(自己の国際特許出願第PCT/US2005/06246号、元は2004年3月2日に出願された米国仮出願第60/549,430号に記載)は、本発明のメリダマイシンと同様、神経保護効果を示すことが記載されている(自己の国際特許出願第PCT/US2005/005895号および米国特許出願第11/065,934号(元は2004年3月2日に出願された米国仮出願第60/549,480号)も参照)。
【0132】
その治療的用途を限定することを意図するものではないが、本明細書に記載の36-ケトメリダマイシンまたは他のマクロライド化合物を、中枢神経系の症状、神経障害、および末梢神経系の障害の治療のために使用することが望ましい。中枢神経系に影響する症状としては、癲癇、発作、脳虚血、脳性麻痺、多発性硬化症、アルパース病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、レビー小体型認知症、レット症候群、神経病の疼痛、脊髄外傷、または外傷性脳損傷が挙げられるがこれらに限定されない。
【0133】
本発明による神経障害としては、神経変性に関係する様々な末梢神経病および神経障害(三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮症、遺伝性の延髄性進行性筋萎縮(progressive bulbar inherited muscular atrophy)、椎間板ヘルニア、椎間板破裂または脱出した椎間板症候群、頸部脊椎症、神経叢疾患、胸郭出口破壊症候群、末梢神経障害(鉛により生じるもの等)、アクリルアミド、γジケトン(シンナー中毒者ニューロパシー)、二硫化炭素、ダプソン、ダニ麻痺(ticks)、ポルフィリン症、ギランバレー症候群、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン舞踏病が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0134】
神経栄養療法が保証された具体的な病態としては、中枢神経系障害、アルツハイマー病、老化、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、癲癇、炎症性疾患、関節リウマチ、自己免疫疾患、呼吸窮迫症、肺気腫、乾癬、成人呼吸窮迫症候群、中枢神経系外傷、および発作が挙げられるがこれらに限定されない。
【0135】
本発明の化合物は、老年性認知症、レビー小体型認知症、軽度の認知障害、アルツハイマー病、認知低下、関連神経変性障害を予防、治療または阻害するのに、および神経保護または認知増強のためにも有用である。
【0136】
本明細書で使用する「被検体」または「患者」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る哺乳動物を指す。
【0137】
本明細書で使用する「投与する」、「投与すること」または「投与」という用語は、化合物もしくは組成物を患者に直接投与するか、または患者の体内で同等の量の活性化合物もしくは物質を形成する化合物のプロドラッグ誘導体もしくは類似体を患者に投与することを指す。
【0138】
本明細書で使用する「有効量」および「治療的有効量」という用語は、患者に投与された場合に、患者が患っていると思われる症状を少なくとも部分的に緩和するのに効果のある化合物の量を指す。
【0139】
特定の疾患状態または障害を治療または阻害するために投与した場合に、利用する特定の化合物、投与様式、治療する症状およびその重篤度、ならびに治療する個々の被検体に関する様々な物理的要因に応じて有効投与量が変わり得ることが理解されよう。本発明のマクロライド化合物の有効な投与は、毎月、毎週もしくは毎日、または他の適切な間隔で行われ得る。例えば、非経口投与は、約10 mg〜約1000 mg、約50 mg〜約500 mg、または約100 mg〜約250 mg/週の投薬量で週ごとの頻度で送達され得る。適切な経口投薬量は、約0.1 mg/日を超え得る。投与は、約10 mg/日を超える、より具体的には約50 mg/日を超える量を1回または2回以上に分けて行うことが好ましい。一般的に、経口投薬量は、約1,000 mg/日を超えず、より具体的には約600 mg/日を超えない。見込まれる1日の投与量は、投与経路に応じて変化することが予想される。
【0140】
このような投薬量は、本明細書に記載の活性化合物をレシピエントの血流に方向付けるのに有用な任意の手法で投与され得、経口、インプラント介在型、非経口(静脈内、腹腔内および皮下注射を含む)、直腸、鼻腔内、経膣および経皮投与を含む。
【0141】
本発明の活性化合物を含む経口製剤は、従来から使用されている任意の経口形態(錠剤、カプセル、口腔内形態、トローチ、ロゼンジおよび経口液、懸濁液または溶液を含む)を含み得る。カプセルは、活性化合物と、不活性充填剤および/または希釈剤(製薬上許容可能なスターチ(例えば、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカスターチ)、糖類、人工甘味料、結晶性および微結晶性セルロース等の粉末セルロース、粉末類(flours)、ゼラチン、ゴム等)との混合物を含み得る。有用な錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒法または乾式造粒法により作ることができ、製薬上許容可能な希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁剤または安定剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンゴム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩(complex silicates)、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥スターチおよび粉末糖が挙げられるがこれらに限定されない)を利用する。好ましい表面改質剤としては、非イオンおよびアニオン表面改質剤が挙げられる。表面改質剤の代表的な例としては、ポロクサマー(poloxamer)188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリル(cetostearyl)アルコール、セトマクロゴール(cetomacrogol)乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化シリコン、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよびトリエタノールアミンが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載の経口製剤は、標準的な遅延型または持続放出型製剤を利用して、活性化合物の吸収を変えてもよい。経口製剤はまた、必要に応じて適切な可溶化剤または乳化剤を含む水または果汁に入った活性成分を投与することから構成されていてもよい。
【0142】
場合により、化合物をエアロゾルの形態で直接気道に投与することが望ましい場合もある。
【0143】
マクロライド化合物は、非経口投与または腹腔内投与もされ得る。これらの活性化合物の溶液または懸濁液は、遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩として、ヒドロキシ-プロピルセルロース等の界面活性剤と適切に混合した水の中で調製できる。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合液を含む油中で調製できる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物は、保存剤を含んで、微生物の成長を防ぐ。
【0144】
注射用途に適した製薬形態としては、滅菌水溶液または分散液、および注射可能な滅菌溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。その形態は全ての場合において、滅菌、かつ注射が容易に可能な程度に流体でなければならない。これは、製造および保存条件下で安定していなければならず、細菌および菌類等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、ならびに植物油を含む溶剤または分散液培地であり得る。
【0145】
本開示の目的のために、経皮投与は、上皮および粘膜組織を含む、身体表面および身体経路の内層に対する全ての投与を含むと理解される。このような投与は、本発明の化合物またはその製薬上許容可能な塩を、ローション、クリーム、泡、パッチ、懸濁液、溶液、ならびに座薬(直腸および膣用)で用いて実行できる。
【0146】
経皮投与は、活性化合物、ならびに該活性化合物に対して不活性で、皮膚に対して無毒で、かつ全身吸収のために薬剤を皮膚を介して血流へ送達可能な担体を含む経皮パッチを使用することにより達成できる。担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲル、ならびに密封デバイス(occlusive device)等の多数の形態を取り得る。クリームおよび軟膏は、水中油型または油中水型のいずれかの粘液または半固体乳剤であり得る。活性成分を含む石油または親水性石油中に分散された吸収性粉末から構成されるペーストも適している。担体と共にもしくは担体無しで活性成分を含む容器を覆う半透過性膜、または活性成分を含むマトリックス等様々な密封デバイスが、血流に活性成分を放出するために使用され得る。他の密封デバイスは文献から公知である。
【0147】
座薬製剤は、座薬の融点を変えるためにワックスを添加するかまたは添加しないカカオバター、およびグリセリンを含む従来の物質から作られ得る。様々な分子量のポリエチレングリコール等の水溶性座薬基剤も使用できる。
【0148】
本発明はさらに、送達用に製剤化された化合物を含むパッケージを含む生成物を提供する。別の態様では、本発明は、例えば、本発明の化合物を送達するための針、注射器およびその他のパッケージを含むキットを提供する。任意に、そのようなキットは、薬剤投与の指示書、本発明の化合物の固形形態を混合するための希釈剤および/または担体を含み得る。
【0149】
本発明の化合物の調製のために使用する試薬は、購入して得るか、または文献に記載されるような標準的手順により調製され得る。
【0150】
本発明の代表的な例の調製を、以下の実施例に記載する。
【実施例】
【0151】
本発明を、特定の実施例により記載する。ただし、このような実施例の使用は、例示のためだけのものであり、本発明または例示の表現の範囲および意味を決して限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載する特定の好適な実施形態に限定されない。実際、本発明の多くの改変および変更が、本明細書を読めば当業者には明らかになり、精神および範囲から逸脱することなく行うことができるであろう。従って、本発明は、添付の請求の範囲の表現、および請求の範囲が権利を持つ等価の範囲全体によってのみ限定されるものである。
【0152】
実施例1:メリダマイシン生合成遺伝子クラスターのクローニングおよび単離
方法
A.DNAプローブの作製
2対の縮重PCRプライマーを使用して、PCRによりストレプトミセス種LL-BB0005のゲノムDNAからDNA断片を増幅した。第1のプライマー対を、I型PKS ACPおよびKSドメイン中の保存アミノ酸モチーフに基づいて設計した。順方向プライマー(ACPセンス)は配列5'-GA(GC)CT(GC)GG(GC)(TC)T(GC)GAC TC(CG)CT(AC)-3'(配列番号:2)を有し、逆方向プライマー(KSアンチセンス)は配列5'-(GC)GA(GC)GA(AG)CA(GC)GC(GC)GT GTC(GC)AC-3'(配列番号:3)を有していた。第2のプライマー対を、非リボソームペプチドシンテターゼのアデニル化ドメインの高度に保存されたコアモチーフに基づいて設計した。順方向プライマー(A3モチーフ)は配列5'-AC(GC)TC(GC)GGC(TA)C(GC)ACC GGC CIG CC(GC)AAG-3'(配列番号:4)を有し、逆方向プライマー(A8モチーフ)は配列5'-AGC TC(GC)A(TC)GC CG(GC)(TA)(GA)G CC(GC)CG(GC)A(TC)C TT(GC)ACC TG-3'(配列番号:5)を有していた。各50μLのPCR混合液は以下を含んでいた:すなわち、約0.1μgのストレプトミセス種LL-BB0005ゲノムDNA、1.6μMの各プライマー、8%DMSO、1×Pfu反応緩衝液(Stratagene, La Jolla, CA)、200μMの各dNTP、および2.5単位のPfu Turbo DNAポリメラーゼ。
【0153】
ワットマンBiometra TGRADIENTサーモサイクラーシステム上で、以下の条件下でPCR反応を行った:すなわち、1サイクルの初期変性(96℃、4分間)、34サイクルの変性(96℃、1分間)/アニーリング(45℃〜65℃の勾配、1分間)/伸長(72℃、1分間)、および1サイクルの最終伸長(72℃、5分間)。ACP/KSプライマーで得られた約0.7 kbのDNA断片、およびA3/A8プライマーで得られた0.7〜0.8 kbの混合DNA断片を、製造元の指示書に従ってpCR4平滑末端-TOPOベクターにクローニングした。各クローニングのいくつかのクローンを、M13逆方向および順方向プライマーを用いたDNA配列決定分析に供した。
【0154】
B.メリダマイシン生合成遺伝子クラスターの単離
製造元の指示書に従ってベクターpWEB(Epicentre, Madison WI)を用いて、ストレプトミセス種LL-BB0005のサイズ分画されたゲノムDNAのコスミドライブラリーを構築した。約800のコスミドクローンを、コロニーハイブリダイゼーションにより上記I型PKS遺伝子プローブでスクリーニングした。56の陽性クローンからコスミドを抽出し、BamHIで消化し、その後、電気泳動後に上記ピペコリン酸(pipecolate acid)取込み酵素遺伝子プローブとハイブリダイズさせた。コスミド45は、ピペコリン酸特異的ペプチドシンターゼをコードする約2.5 kbのDNA断片を含むことを同定した。コスミド45のインサートを、カスタム配列決定(MWG Biotech, High Point, NC)により完全に配列決定し、コスミドインサートの制限マッピング、染色体歩行および末端配列決定(end-sequencing)によっていくつかの他のコスミドを同定するために使用した。
【0155】
C.結果
ACP/KSプライマーを用いたPCRから得た一方のDNA断片はI型PKSをコードすると同定され、A3/A8プライマーを用いたPCRから得た他方のDNA断片は、ラパマイシン生合成(RapP)およびFK506生合成(FKBP)のピペコリン酸取込み酵素に相同的な非リボソームペプチドシンテターゼをコードすると同定された。これらの2つの断片を精製し、その後ストレプトミセス種Ll-BB0005コスミドライブラリーをスクリーニングするのに使用した。
【0156】
コスミド45を配列決定し、他のコスミドを同定するのに使用し、重複するインサートのセットを生じた。これらのコスミドのインサートを完全に配列決定およびアセンブルし、メリダマイシン生合成クラスターを含む116,856ntの連続DNAストレッチを得た。このDNAアセンブリの完全なヌクレオチド配列を配列番号:1に示す。
【0157】
実施例2:メリダマイシン生合成遺伝子クラスターのコンピュータ上での配列分析
A.方法
Lasergene(DNASTAR, Madison, WI)およびベクターNTI(InforMax, Frederick, MD)を用いてDNA配列分析を行った。この遺伝子クラスターにおいて同定されたオープンリーディングフレームと、それらの提案される機能との相関関係を表1にまとめた。
【0158】
B.結果
メリダマイシンの生成のための生合成経路が、クローニングされた遺伝子クラスターの配列分析に基づいて提案されている。
【0159】
実施例3:merP遺伝子の遺伝子破壊
クローニングされた遺伝子クラスターがメリダマイシンの生成に関与することを確認するために、破壊実験を行って、メリダマイシンマクロライド核へのピペコリン酸の取り込みに関与するNRPSをコードする遺伝子を不活性化した。
【0160】
A.方法および結果
merP遺伝子の内部部分にわたるコスミド45由来の2450 bpのBamHI断片を、pUC19にクローニングしてpMH100を得た。pUC120由来のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.5 kbのNcoI断片を、2450 bp BamHI断片の中央に位置するNcoI部位にクローニングした。次いで、得られた約3.9 kbのBamHI断片を切り出し、ストレプトミセス/大腸菌共役シャトルベクターpNWA200のBamHI部位にクローニングしてpBWA27を得た。pBWA27を含む大腸菌ET12567(z8002pUB307)と、ストレプトミセス種LL-BB0005とを以下の通りに接合させた:簡単に言うと、等容量のドナー細胞およびLL-BB0005の胞子懸濁液を混合し、予め乾燥させたR6寒天培地上にプレート化した。プレートを、37℃にて20時間インキュベートした後に、0.5 gmb/mLアプラマイシンおよび0.5 gmb/mLナリジクス酸を含む1 mLのddH2Oでそれぞれを覆った。次いで、プレートを30℃にて5〜7日間インキュベートした。アプラマイシン耐性接合完了体(exconjugant)を単離し、非選択的条件下で培養した。アプラマイシン耐性/カナマイシン感受性コロニーを同定し、それらのゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーション分析により二重交差(double crossover)突然変異を確認した。
【0161】
B.代謝産物のLC/MS分析
野生型LL-BB0005および3つの個別Pmerp::apr変異体を、シード(seed)培地(デキストロース10 g/L、可溶性スターチ20 g/L、酵母抽出物5 g/L、NZ-アミンA 5 g/L、炭酸カルシウム1 g/L, pH 7.3)中で28℃にて3日間培養した後、発酵培地(デキストロース30 g/L、ダイズ粉(soy flour)15 g/L、塩化ナトリウム2 g/L、炭酸カルシウム1 g/L、pH6.8〜7)に接種し、28℃にて5日間培養した。1 mLのブロスサンプルを4日目および5日目に採取し、等容量の酢酸エチルで抽出した。次いで、抽出物を乾燥するまで乾燥させ、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)での分析のために100μLのメタノールに再懸濁させた。
【0162】
実施例4:メリダマイシンポリケチドシンテターゼAのモジュールIケト-リダクターゼ中のKR1ドメインを不活性化することによるメリダマイシンのケト誘導体の生成
本実施例では、メリダマイシンポリケチドシンターゼのモジュールI中のKRドメインをコードするDNAを欠失させることにより新規メリダマイシン類似体C-36ケト-メリダマイシンを生成する、変異型LL-BB0005株の生成を説明する。
【0163】
A.C36-ケト-メリダマイシンの生成
MerAのモジュールIの大部分をコードする約4158塩基対(bp)のDNA断片を、制限酵素EcoRIおよびNotIで消化することによりコスミド45から切断し、ベクターpUC19のHincII部位にクローニングした。次いで、得られた構築物を、制限酵素NcoIにより消化して、KRドメインをコードする1291 bpのDNA断片を欠失させた。次いで、構築物の残りを環状プラスミドに再度ライゲートした。このプラスミドのインサートを、HindIIIおよびXbaIで消化することにより切り出し、その後ストレプトミセス-大腸菌共役シャトルベクターpKC1139にクローニングした。得られた構築物を、pMH1102と名付けた。次いで、pMH1102を、LL-BB0005と大腸菌ET12567/pMH1102との接合によりLL-BB0005株に導入した。pMH1102とLL-BB0005の染色体DNAとの二重交差により、MerAのモジュール1のKRドメインをコードする1291 bpのDNA断片を完全に欠失させた。この変異型株をMH1102と名付け、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)に関するブダペスト条約に従って2004年5月3日に寄託した(受託番号NRRL 30743)。
【0164】
B.LC/MSによるC36-ケト-メリダマイシンの化学的検出
LC/MS分析のために、等容量の酢酸エチルで発酵ブロス上清を抽出し、10倍濃縮した。次いで、抽出物を、LC/MS上で、5%〜95%アセトニトリル含有水の直線勾配をYMC-ODS 4.6×150 mm 5uカラム上で用いて分画した。画分を、96ウェルプレートに毎分回収した。高解像度および正確な質量測定(HRMS)のためにプレートを高速真空(speed hrmsvacuum)により濃縮した。アクティブシールド型7.1テスラ超伝導磁石(Magnex Scientific Ltd., UK)、外部Bruker APOLLO ESIソースおよびSynrad 50W CO2 CWレーザを備えたBruker(Billerica, MA)APEXII FTICR質量分析計を用いてHRMSを行った。典型的に、5μlのサンプルをNanoESIチップ(New Objective, Woburn, MA)に充填し、NanoESIチップとキャピラリとの間に約800Vの高電圧をかけた。ここで報告するデータは、HPチューニングミクス(tuning mix)を用いた内部較正に基づいている。
【0165】
C.生成
このMH1102株の発酵により、C36-ケト-メリダマイシンが生成された。実験の略式図を図3Bに示す。
【0166】
D.検出
ナトリウム付加体分子イオンが、ポジティブESI検出モードにおいて、平均m/z=842.50245(842.50435, 842.50409, 842.50187, 842.50156, 842.50190, 842.50192, 842.50149)で検出され、これは計算値([M+Na]1+、計算値:842.50250、Δ=-0.05 mmu、表3を参照)と一致する。ナトリウム付加体分子イオンの測定された同位体分布も、シミュレートされたものと極めてよく一致する。ポジティブモードESI FTMS質量スペクトルからは、メリダマイシンイオンの存在は示されなかった。脱プロトン化分子イオンも、ネガティブESI検出モードにおいて、m/z=818.50531で検出され、これは計算値([M-H]1-、計算値:818.50600、Δ=-0.69 mmu、表3を参照)と極めてよく一致した。脱プロトン化分子イオンの測定された同位体分布も、シミュレートされたものと極めてよく一致する。ネガティブモードESI FTMS質量スペクトルからも、メリダマイシンイオンの存在は示されなかった。
【0167】
【表3】

【0168】
実施例5:NRPS遺伝子および/またはP450ヒドロキシラーゼ遺伝子の操作によるメリダマイシン類似体の生成および収率の改善
メリダマイシンマクロラクタム環中のピペコリル部分は、MerP遺伝子(配列番号:1のnt21592〜26311)によりコードされるNRPS MerP(配列番号:46)により取り込まれる。merPのアデニル化ドメインのアミノ酸配列は、ピペコリン酸を認識する他のNRPS由来のアデニル化ドメイン、およびプロリンを認識するものと有意な相同性を示す。従って、メリダマイシン類似体、プロリルメリダマイシン(自己の国際特許出願第PCT/US2005/005895号および米国特許出願第11/065,934号(元は2004年3月2日に出願された米国仮出願第60/549,480号)(参照により本明細書に援用する)を参照)は、野生型LL-BB0005によっても非常に低い量で生成された。この化合物の収率は、当業者により、周知の技術を用いて、NRPS遺伝子を、ピペコリン酸よりもプロリンに対してはるかに高い選択性を示すNRPSをコードする別の遺伝子と置き換えることにより有意に改善される。同様に、merP遺伝子も、ピペコリン酸以外の特定のアミノ酸を認識する任意の他のNRPS遺伝子と置き換えられ、マクロラクタム環において異なるアミノ残基を有するより多くの新規メリダマイシン類似体を提供することができる。
【0169】
野生型LL-BB0005株は、別の類似体C9-デオキソメリダマイシンも非常に低い量で生成する。この化合物は、メリダマイシンの生合成において最後のステップを省略することにより生じた:merE遺伝子(配列番号:1のnt98393〜99586)によりコードされるP450ヒドロキシラーゼMerE(配列番号:51)によるC9のヒドロキシル化。従って、この化合物の収率は、当業者により、周知の技術を用いて、抗生物質耐性遺伝子をmerEへ挿入するか、またはmerE遺伝子を欠失させるかのいずれかによるmerE遺伝子の遺伝子ノックアウトにより有意に改善される。
【0170】
さらに、上述した遺伝子改変の2種類を組み合わせて、C9-デオキシルマクロラクタム環においてピペコリル部分が別のアミノ酸残基により置き換えられた別のメリダマイシン類似体セットを生じさせることにより、多くのメリダマイシン類似体も生成され得る。
【0171】
実施例6:調節遺伝子の遺伝子操作を介してメリダマイシンおよび/またはその類似体の収率を高める
クローニングしたDNAアセンブリ(配列番号:1)中の少なくとも6つの遺伝子が、経路特異的調節遺伝子であると予想される。Orf15(配列番号:18)によりコードされるタンパク質(配列番号:45)は、細菌調節タンパク質のLacIファミリーに属する。MerI(配列番号:56)およびMerQ(配列番号:63)の両方が、原核生物転写調節タンパク質のLysRファミリーに属する。MerH(配列番号:55)は、複数の抗体物質耐性非特異性耐性系に関与すると思われるリプレッサーのMarRグループと高い配列類似性を共有する。MerM(配列番号:60)は、特定の小分子に対する耐性に関与することが認められたMerRファミリー調節タンパク質のメンバーであると思われる。MerO(配列番号:62)は、細菌調節タンパク質のtetRファミリーに属する。
【0172】
当業者には、メリダマイシンおよび/またはその類似体の生成が改善した変異株を生成することがこれらの調節遺伝子の操作を介して可能である。これは、いくつかの手法により達成できる。例えば、個々の調節遺伝子の標的化された破壊または欠失(すなわち、ノックアウト)は、そのタンパク質生成物を、メリダマイシン生成のアクチベーターまたはリプレッサーとして識別する。これは、抗生物質耐性遺伝子を各調節遺伝子に挿入すること、または調節遺伝子を欠失することにより行うことができる。調査している遺伝子が経路リプレッサーをコードする場合、この遺伝子のノックアウトはメリダマイシンおよび/またはその類似体の収率を直接増加する。遺伝子がアクチベーターをコードする場合、メリダマイシンおよび/またはその類似体の収率は、このアクチベーター遺伝子の余分なコピーを野生型生成株に導入することにより改善され得る。これは、アクチベーター遺伝子を染色体DNAに挿入するか、またはアクチベーター遺伝子をメリダマイシン生成株の内部で複製可能なプラスミド中でトランスフェクトすることにより達成できる。いずれの場合も、アクチベーター遺伝子は適切なプロモーターの制御下に置かれて、その発現を確実にしなければならない。
【0173】
実施例7:メリダマイシンおよびアッセイの神経保護効果
放線菌(NRRL受託番号30721のLL-C31037)により生成される化合物の神経保護効果は、自己の国際特許出願第PCT/US2005/005895号および米国特許出願第11/065,934号(元は2004年3月4日に出願された米国仮出願第60/549,480号)(参照によりその全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0174】
A.中脳神経細胞の単離
E15ラット胚から腹側中脳培養物を調製し、Pongら, J Neurochem. 69:986-994, 1997の方法に従って7回の分裂の間維持して、その後実験した。
【0175】
B.薬物処理およびアッセイ
指定された薬物、すなわちイムノフィリンリガンドメリダマイシン、ラパマイシンおよびFK-506(1、10、100および1000nM)、サイクロフィリンリガンドサイクロスポリン(CsA)を同じ濃度で、ならびにグリア誘導型神経栄養因子(GDNF-対照(control)-1および10 ng/ml)で、培養物を1時間または24時間予め処理した。次いで、培養物を10μM 1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)に、薬物の存在下で1時間曝した。1時間曝した後、培地を3回替えて、新鮮な薬物をさらに24時間または48時間添加した。24時間または48時間の回復(recovery)期間の後、高親和性3H-DA取り込みを未処理対照の%として測定した(Prochiantzら, Nature 293:570-572, 1981)。
【0176】
C.結果
GDNFおよびFK506は、正常中脳ドーパミン神経細胞培養物のDA取り込みを向上させた。処理に加えて10 mM MPP+を添加することにより取り込みが低減した。GDNF、FK506、CsAおよびメリダマイシンでの予備処理により、MPP毒性に対して部分的であるが有意な保護が得られた。
【0177】
予備処理および回復時間を高めると神経保護の増加が認められた。
【0178】
実施例8:P450モノオキシゲナーゼをコードするmerE遺伝子を不活性化することによるBB0005の変異株の生成
本実施例は、P450モノオキシゲナーゼをコードするDNAが欠失したBB0005株の生成を説明する。得られた変異体(MH1104-1と称する)は、式(III)の化合物を生成する。この生物は、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)(1815 North University Avenue, Peoria, Illinois 61604)に関するブダペスト条約に従って2005年3月14日に寄託し、受託番号NRRL B-30829を割り当てられた。
【0179】
A.MH1104-1の生成
2つのDNA断片を、BB0005から単離された、merCの3'側部分、完全長merD、merE、F1、F2、GおよびH-Vを含む生合成遺伝子クラスターの3'側端部を含むコスミド54から増幅した。
【0180】
順方向プライマー5'-TGCAAGCTTCTCGCGTCTGGTGCTGGTG-3'(配列番号:69)および逆方向プライマー5'-ATCTTCGCCCTTGTCCCGCAGTC-3'(配列番号:70)を用いて、HindIII制限部位を5'側に導入して、第1の断片(約1450 bp)を増幅した。順方向プライマー5'-ATCGCTCTGCGGCTGGCGGTG-3'(配列番号:71)および逆方向プライマー5'-TGCTCTAGAGCCACGAAGACGCCGGAAC-3'(配列番号:72)を用いて、XbaI制限部位を3'側に導入して、第2の断片(約1440 bp)を増幅した。次いで、これら2つの断片をHindIIIおよびXbaI部位を介してpUC18にライゲートした。2つのDNA断片の結合部位においてEcoR V制限部位を生成し、これをアプロマイシン耐性遺伝子をコードする約800 bpのDNA断片を挿入するために使用した。最終構築物のインサートをHindIIIおよびXbaIで消化することにより切り出し、ストレプトミセス-大腸菌共役シャトルベクターpNWA200にクローニングした。得られた構築物はpMH1104と名付けた。その後、pMH1104を、BB0005と大腸菌ET12567/pMH1104との接合を介してBB0005株に導入した。pMH1104とBB0005の染色体DNAとの間の二重交差により、P450モノオキシゲナーゼをコードするmerE遺伝子が生じた。
【0181】
この変異型BB0005株はMH1104-1と名付け、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)に関するブダペスト条約に従って2005年3月14日に寄託された(受託番号NRRL B-30829)。
【0182】
B.生成
このMH1104-1株の発酵により、約30 mg/Lの力価でC9-デオキソ-メリダマイシンが生成された。これはBB0005により生成されたC9-デオキソ-メリダマイシンの約1 mg/Lの力価と比べて高かった。
【0183】
実施例9:C9-デオキソメリダマイシンの化合物
【化8】

【0184】
A.化合物の生成
株M507の胞子懸濁液の50μLアリコートを5mLシード培地(デキストロース10 g/L、可溶性スターチ20 g/L、酵母抽出物5 g/L、NZ-アミンA5 g/L、炭酸カルシウム1 g/L、pH7.3)に接種し、ロータリーシェーカー上で200 rpmの攪拌速度で28℃にて3日間インキュベートした。次いで、このシード培養物を、25 mLの新鮮なシード培地(1フラスコ当たり1 mLのシード培養物)をそれぞれ含む5つの250-mLエルレンマイヤーフラスコに移した。第2ステージのシード培養物を同じ条件下で2日間インキュベートした後、25 mLの発酵培地(デキストロース30 g/L、ダイズ粉末15 g/L、塩化ナトリウム2 g/L、炭酸カルシウム1 g/L、pH6.8〜7)(各フラスコに第2ステージのシード培養物を1 mLアリコート)をそれぞれ含む80の250-mLエルレンマイヤーフラスコに接種するのに使用した。200 rpmで28℃にて1日振とうした後、メチラポン(2-メチル-1,2-ジ-3-ピリジル-1-プロパノン)を発酵物に2 mMの最終濃度まで添加した。その後、同じ条件下でさらに4日間発酵を続けた。
【0185】
収穫時に、ブロス全体を遠心分離して、ブロスと細胞ペレットとを分離した。細胞ペレットを酢酸エチル(3×600 ml)で抽出し、酢酸エチル抽出物を減圧下で濃縮させた。ブロスを、300 ml Diaion HP20樹脂と共に攪拌し、カラムに注いだ。カラムを1Lの水で洗浄し、段階勾配(1:3、1:1、3:1、1:0 MeOH:H2O;各500 ml)を用いて溶出した。75%および100%MeOH含有H2O画分を組合せ、減圧下で濃縮し、細胞のEtOAc抽出物と組み合わせた。この物質を、塩化メチレン/メタノールに溶解し、50 mlシリカゲル(ICNシリカゲル、32〜63μm、60A)に充填し、減圧下で濃縮した。次いで、この物質をSiVLC(400 ml ICNシリカゲル)を用いて、段階勾配(各1Lの100:0、95:5、90:10、80:20 CH2Cl2:MeOH)で溶出して1画分当たり500 mlを回収することで処理した。画分4〜6を組み合せ、減圧下で濃縮し、45:45:10ヘキサン:EtOAc:イソプロパノールで再度溶解し、フラッシュSiカラム(ICNシリカゲル;5.0 cm×8.5 in;45:45:10 hex:EtOAc:iPrOH)に充填した。2L 45:45:10 hex:EtOAc:iPrOHでカラムを溶出し、40mlの画分を回収した。画分17〜40を組合せ、濃縮した。この半粗物質を逆相(RP)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(YMC ODS-A 30×250 mm S-5カラム;50分間にわたり65%〜85%MeOH含有H2Oにおいて、その後20分間にわたり85%〜100%MeOH含有H2Oにおいて、12 ml/分の流速)によりクロマトグラフィーにかけた。44〜52分に溶出した表題の化合物を、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)(tR=48分)により測定した。これらの画分をプールし、RPHPLC(YMC ODS-A 10×250 mm S-5カラム;30分間にわたり40%〜70%アセトニトリル含有H2Oにおいて、2.5 ml/分の流速)によるさらなる精製に供して、16.4 mgの表題の化合物を産出した(tR=25分)。
【0186】
B.C9-デオキソメリダマイシンの特徴決定
項目Aに記載のように調製した化合物を、見掛け分子式:C45H77NO11を有すると特徴決定した。
【0187】
分子量:陽イオンエレクトロスプレーMS m/z=808.1(M+H)+;陰イオンエレクトロスプレーMS m/z=806.5(M-H)-;高解像度フーリエ交換MS m/z=830.53683(M+Na)+
【0188】
紫外線吸光度スペクトル:λmaxnm(アセトニトリル/水)=210 nm、末端吸光。
【0189】
プロトン磁気共鳴スペクトル:図4の(400 MHz, CD3OD)。
【0190】
炭素磁気共鳴スペクトル:図5の(100 MHz, CD3OD)。
【0191】
実施例10:式(III)(n=1)の化合物
【化9】

【0192】
5員環は、プロリルラパマイシン[Russo, R.J.;Howell, S.R.;Sehgal, S.N.米国特許第5441977号、1995;Nishida, H.;Sakakibara, T.;Aoki, F.;Saito, T.;Ichikawa, K.;Inagaki, T.;Kojima, Y.;Yamauchi, Y.;Huang, L.H.;Guadliana, M.A.;Kaneko, T.;Kojima, N.J.Antibiot.1995, 48(7), 657-666;Kojima, I.;Demain, A.L. J. Ind. Microbiolo. Biotechnol. 1998, 20, 309-316]およびプロリルイムノマイシン[Nielsen, J.B.;Hsu, M.J.;Byrne, K.M.;Kaplan, L. Biochemistry 1991, 30, 5789-5796]の生成のためのものと同様の手法で、前駆体供給(precursor feeding)およびピペコリン酸生合成の阻害を含む生合成調節により得られる。ラパマイシンの前例についての文献に基づき、5員環は、プロリン、およびピペコリン酸生合成の公知阻害剤(ニペコチン酸[Graziani, E.I.;Ritacco, F.V.;Summers, M.Y.;Zabriskie, M.;Yu, K.;Bernan, V.S.;Greenstein, M.;Carter, G.T. Org. Lett. 2003, 5, 2385-238]、チアプロリン(L-チアゾリジン-4-カルボン酸)またはチアゾリジン-2-カルボン酸(T2CA)等)を添加する、放線菌株BB0005-MH1104-2(受託番号NRRL30820)の発酵により生成され得る。
【0193】
実施例9の化合物を単離するための先に概要を述べた手順を使用して、5員環を精製できる。
【0194】
実施例11:神経細胞培養物中の式III(n=2)の化合物の神経再生特性
先に記載されているように解離された皮質神経細胞培養物を調製した[Pongら, "Attenuation of staurosporine-induced apoptosis, oxidative stress, and mitochondrial dysfunction by synthetic superoxide dismutase and catalase mimetics, in cultured cortical neurons", Exp Neurol. 2001 Sep;171(1):84-97]。簡単に言うと、15日胚齢ラット胎仔を回収し、氷冷PBS中で解剖した。解剖した皮質を一緒にプールし、パパインを含む酵素的解離培地に移した。30分後、火で加工したガラスパスツールピペットを用いて組織を機械的に粉砕した。完全培地中の単細胞懸濁液をポリ-L-オルニチンおよびラミニンで被覆された96ウェルプレートに播種した。24時間後、培養物を様々な濃度の式IIIの化合物で72時間処理した。次いで、培養物を固定し、抗チューブリン抗体(TUJ-1)および蛍光タグ付き二次抗体で染色した。Cellomics ArrayScanと共にエンハンスド神経突起伸長(ENO)アルゴリズムを用いて神経突起伸長を測定し、1細胞当たりの平均神経突起長または神経突起長として示した。
【0195】
実施例9に記載するように調製した化合物は、1μM未満のEC50での皮質神経細胞アッセイにおいて活性であった。
【0196】
実施例12:神経細胞培養物中の化合物(III)の神経再生特性
先に記載されているように解離された皮質神経細胞培養物を調製した[Pongら, Exp Neurol. 2001 Sep;171(1):84-97(2001)]。簡単に言うと、15日胚齢ラット胎仔を回収し、氷冷PBS中で解剖した。解剖した皮質を一緒にプールし、パパインを含む酵素的解離培地に移した。30分後、火で加工したガラスパスツールピペットを用いて組織を機械的に粉砕した。完全培地中の単細胞懸濁液をポリ-L-オルニチンおよびラミニンで被覆された96ウェルプレートに播種した。24時間後、培養物を様々な濃度の式(III)の化合物で72時間処理した。次いで、培養物を固定し、神経フィラメント一次抗体およびペルオキシダーゼタグ付き二次抗体で染色した。ペルオキシダーゼ基質(K-Blue Max)を添加し、比色プレートリーダー上で比色変化を測定した。
【0197】
表4:培養した皮質神経細胞中の神経フィラメント含量
神経フィラメント含量
処理 (対照に対する増加倍数)

10 nM化合物 1.9
100 nM化合物 2.19
1μM化合物 2.24
10μM化合物 2.29
【0198】
実施例13-培養した皮質神経細胞中の化合物(III)の神経再生特性
先に記載されているように解離された皮質神経細胞培養物を調製した(Pongら, 上記引用、2001)。簡単に言うと、15日胚齢ラット胎仔を回収し、氷冷PBS中で解剖した。解剖した皮質を一緒にプールし、パパインを含む酵素的解離培地に移した。30分後、火で加工したガラスパスツールピペットを用いて組織を機械的に粉砕した。完全培地中の単細胞懸濁液をポリ-L-オルニチンおよびラミニンで被覆された96ウェルプレートに播種した。24時間後、培養物を様々な濃度の式(III)の化合物で72時間処理した。次いで、培養物を固定し、抗チューブリン抗体(TUJ-1)および蛍光タグ付き二次抗体で染色した。Cellomics ArrayScanと共にエンハンスド神経突起伸長(ENO)アルゴリズムを用いて神経突起伸長を測定し、1細胞当たりの合計神経突起長として示した。
【0199】
表5:培養した皮質神経細胞中の合計神経突起長
合計神経突起長
処理 (対照に対する増加%)

10 nM化合物 10%
100 nM化合物 54%
1μM化合物 86%
10μM化合物 121%
【0200】
実施例14-培養した後根神経節における化合物(III)の神経再生特性
先に記載されているように解離された後根神経節培養物を調製した[A. Woodら, "Stimulation of neurite outgrowth by immunophilin ligands: quantitative analysis by Cellomics Array scan" Society for Neuroscience (2004), abstract 104.3]。簡単に言うと、生後3〜5日の仔ラットを安楽死させた。脊柱を取り出し、個々の後根神経節(DRG)を切り出した。切り出したDRGを一緒にプールし、パパインを含む酵素的解離培地に移した。60分後、火で加工したガラスパスツールピペットを用いて組織を機械的に粉砕した。完全培地中の単細胞懸濁液をポリ-L-オルニチンおよびラミニンで被覆された96ウェルプレートに播種した。24時間後、培養物を様々な濃度の式(III)の化合物で72時間処理した。次いで、培養物を固定し、抗チューブリン抗体(TUJ-1)および蛍光タグ付き二次抗体で染色した。Cellomics ArrayScanと共にエンハンスド神経突起伸長(ENO)アルゴリズムを用いて神経突起伸長を測定し、1細胞当たりの合計神経突起長として示した。
【0201】
表6:培養した後根神経節における合計神経突起長
合計神経突起長
処理 (対照に対する増加%)

10 nM化合物 17%
100 nM化合物 24%
1μM化合物 36%
10μM化合物 64%
【0202】
本発明は、本明細書に記載する具体的な実施例により範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載したものに加えて本発明の様々な改変が、上記記載および添付の図面から当業者には明らかであろう。このような改変は添付の請求の範囲内に含まれることを意図する。
【0203】
さらに、値はおおよそのものであり、説明のために提供するものであることが理解されよう。特許、特許出願、刊行物、手順等が本明細書中で引用されているが、それらの開示は参照することにより全体的に本明細書に援用されることとする。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】メリダマイシン生合成遺伝子クラスターの遺伝子構成の略式図。
【図2A】MerP遺伝子の野生型ゲノムDNAの略式図。
【図2B】MerP::Apr変異体構築物の略式図。
【図3A】メリダマイシン生成の略式図。
【図3B】C36-ケトメリダマイシン生成の略式図。
【図4】CD3OD中400 MHzでの、式(III)(式中、n=2)の化合物のプロトンNMRスペクトル。
【図5】CD3OD中100 MHzでの、式(III)(式中、n=2)の化合物の炭素NMRスペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがモジュールを含む4つのポリケチドシンターゼ、1モジュールを有する非リボソームペプチドシンテターゼ、およびシトクロムP450ヒドロキシラーゼを含むメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項2】
前記ポリケチドシンターゼは、配列番号:47のアミノ酸配列、配列番号:48のアミノ酸配列、配列番号:49のアミノ酸配列、および配列番号:50のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項3】
配列番号:47のアミノ酸配列が、配列番号:1のnt26284〜43422のヌクレオチド配列を有するMerA遺伝子によりコードされる、請求項1または請求項2に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項4】
前記配列番号:48のアミノ酸配列が、配列番号:1のnt63480〜64788のヌクレオチド配列を有するMerB遺伝子によりコードされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項5】
前記配列番号:49のアミノ酸配列が、配列番号:1のnt64785〜88691のヌクレオチド配列を有するMerC遺伝子によりコードされる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項6】
前記配列番号:50のアミノ酸配列が、配列番号:1のnt89131〜98352のヌクレオチド配列を有するMerD遺伝子によりコードされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項7】
前記シトクロムP450ヒドロキシラーゼが配列番号:51のアミノ酸配列を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項8】
前記配列番号:51のアミノ酸配列が、配列番号:1の98393〜99586のヌクレオチド配列を有するMerE遺伝子によりコードされる、請求項7に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項9】
前記非リボソームペプチドシンターゼが配列番号:46のアミノ酸配列を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項10】
前記配列番号:46のアミノ酸配列が、配列番号:1の21592〜26311のヌクレオチド配列を有するMerP遺伝子によりコードされる、請求項9に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項11】
前記ポリケチドシンターゼが合計15のモジュールを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項12】
前記モジュールのそれぞれが、(i)ケトシンターゼドメイン、(ii)アシルトランスフェラーゼドメインおよび(iii)アシル担体タンパク質ドメイン、ならびに/または(i)ケトリダクターゼドメイン、(ii)デヒドラターゼドメインおよび(iii)エノイルリダクターゼドメインの少なくとも1つを含む、請求項11に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項13】
配列番号:47のアミノ酸1〜1050、アミノ酸2511〜4184、およびアミノ酸4184〜5172からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、MerA遺伝子にコードされるモジュールを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項14】
配列番号:48のアミノ酸1〜1717、アミノ酸1718〜3263、およびアミノ酸5294〜7102からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、MerB遺伝子にコードされるモジュールを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項15】
配列番号:49のアミノ酸1〜1496、アミノ酸1497〜2942、アミノ酸2943〜4470、アミノ酸4471〜5930、アミノ酸5931〜7386、およびアミノ酸7387〜7968からなる群より選択されたアミノ酸配列を有する、MerC遺伝子にコードされるモジュールを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項16】
配列番号:50のアミノ酸1〜1385およびアミノ酸1386〜3425からなる群より選択されたアミノ酸配列を有する、MerD遺伝子にコードされるモジュールを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のメリダマイシンシンターゼ複合体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の異種メリダマイシンシンターゼ複合体を含む、宿主細胞。
【請求項18】
(a)配列番号:47のアミノ酸1〜1050、アミノ酸1051〜2510、アミノ酸2511〜4183、およびアミノ酸4184〜5172からなる群より選択されるMerAモジュール、またはそれらの触媒ドメイン;
(b)配列番号:48のアミノ酸1〜1717、アミノ酸1718〜3263、アミノ酸3264〜5293、およびアミノ酸5294〜7102からなる群より選択されるMerBモジュール、またはそれらの触媒ドメイン;
(c)配列番号:49のアミノ酸1〜1496、アミノ酸1497〜2942、アミノ酸2943〜4470、アミノ酸4471〜5930、アミノ酸5931〜7386、およびアミノ酸7387〜7968からなる群より選択されるMerCモジュール、またはそれらの触媒ドメイン;ならびに
(d)配列番号:50のアミノ酸1〜1385およびアミノ酸1386〜3425からなる群より選択されるMerDモジュール、またはそれらの触媒ドメイン;
からなる群より選択されるメリダマイシンモジュールを含む合成ポリケチドシンターゼ。
【請求項19】
請求項18に記載の合成ポリケチドシンターゼをコードする核酸配列。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸配列を含む組換えベクター。
【請求項21】
請求項18に記載の異種メリダマイシンシンターゼを含む、宿主細胞。
【請求項22】
(a)配列番号:31〜68のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(b)配列番号:31〜68のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸配列であって、該ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる、核酸配列;
(c)配列番号31〜68のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも90%相同なポリペプチドをコードする核酸配列;および
(d)(a)、(b)または(c)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する単離型核酸断片
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する単離型核酸。
【請求項23】
発現制御配列と作用可能に会合している請求項19または22の核酸を含む、キメラ核酸構築物。
【請求項24】
前記構築物は発現ベクターである、請求項23に記載のキメラ核酸構築物。
【請求項25】
請求項22、23または24に記載の異種核酸を含む、宿主細胞。
【請求項26】
前記核酸は配列番号:6〜18のヌクレオチド配列、配列番号:1のヌクレオチド3885〜4727、配列番号:1のヌクレオチド9320〜10960、配列番号:19〜30、配列番号:1のヌクレオチド100528〜101037、配列番号:1の104277〜105272、配列番号:1の111062〜111718、配列番号:1の111847〜113226、および配列番号:1の116454〜116855を有する、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記宿主細胞が配列番号:1の核酸を含む、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項28】
請求項17、21または25〜27のいずれか一項に記載の宿主細胞を、核酸にコードされるアミノ酸の発現を提供する条件下で培養することを含む、ポリケチド化合物の生成方法。
【請求項29】
前記ポリケチド化合物がメリダマイシンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリケチド化合物が改変され、該改変された化合物はポリケチドシンターゼにおいて少なくとも1つのアミノ酸の付加、除去または置換を含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
MerA核酸配列(配列番号:1のヌクレオチド26284〜43422)が改変されてケトリダクターゼドメインの機能を排除してC-36ケト-メリダマイシンを生成する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記改変されたポリケチド化合物が、MerP、MerA、MerB、MerC、MerDおよびMerE(配列番号:46、47、48、49、50、51)から選択される群における少なくとも1つのアミノ酸の付加、除去または置換を含む改変により生じ、該改変は、ポリケチド化合物の環の大きさの変化、β-ケト基のポリケチド環に対する還元程度の変化、ポリケチド化合物のα-炭素にある側鎖の変化、ポリケチド化合物の出発単位の変化、他のアミノ酸残基でのピペコリル部分の変化、およびC9の酸化状態の変化を生じる、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
(a)請求項33に記載の方法を用いて宿主細胞において改変型ポリケチドシンターゼを生成すること、
(b)改変型ポリケチドシンターゼにより生成される改変型ポリペプチドの発現を提供する条件下で宿主細胞を培養すること、
(c)改変型ポリケチドシンターゼにより生成される改変型ポリケチドの活性と、非改変型ポリケチドシンターゼにより生成されるポリケチドの活性とを比較すること(活性における差は改変型ポリケチドにおける改変がポリケチド活性の構造要件の一部であることを示す)、
を含む、ポリケチド活性の構造要件を決定する方法。
【請求項34】
前記C-36ケト-メリダマイシンが、MerAのモジュール1のKRドメインをコードする1291 bpのDNA断片の欠失を含むように改変された、農業研究サービス機関の系統保存(Agricultural Research Service Culture Collection)(NRRL)に関するブダペスト条約に従って2004年5月3日に寄託されたストレプトミセス株MH1102(受託番号NRRL 30743)により生成される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項28〜34のいずれか一項に記載の方法から生成されるメリダマイシン類似体。
【請求項36】
メリダマイシン化合物を生成するのに有用な変異型ストレプトミセス株であって、該変異型株MH1104-1は農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)受託番号NRRL B-30829を有する、変異型ストレプトミセス株。
【請求項37】
構造:
【化1】

を有するC36-ケトメリダマイシン、またはその製薬上許容可能な塩。
【請求項38】
構造:
【化2】

のデオキソメリダマイシン化合物、その製薬上許容可能な塩、またはそれらの混合物。
【請求項39】
n=1である、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
n=2である、請求項38に記載の化合物。
【請求項41】
(a)見掛け分子式:C45H77NO11
(b)陽イオンエレクトロスプレーMS m/z = 808.1(M+H)+;陰イオンエレクトロスプレーMS m/z = 806.5(M-H)-;および高解像度フーリエ変換MS m/z = 830.53683(M+Na)+を特徴とする分子量;
(c)紫外線吸光度スペクトル:λmaxnm(アセトニトリル/水)=210 nm、末端吸光(end absorption)
の特徴を有する化合物。
【請求項42】
図4のプロトン磁気共鳴スペクトル(400 MHz, CD3OD)によりさらに特徴付けられる、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
図5の炭素磁気共鳴スペクトル(100 MHz, CD3OD)によりさらに特徴付けられる、請求項41に記載の化合物。
【請求項44】
製薬上許容可能な担体および請求項37〜43のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項45】
請求項44に記載の組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
【請求項46】
請求項44に記載の組成物を有効量で哺乳動物に投与することを含む、神経障害の治療方法。
【請求項47】
前記組成物が、1つ以上の製薬上許容可能な担体、賦形剤または希釈剤と混合された化合物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記神経障害が、癲癇、発作、脳虚血、脳性麻痺、アルパース病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、レット症候群、神経病の疼痛、脊髄外傷、または外傷性脳損傷である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記神経障害が、老年性認知症、レビー小体型認知症、軽度の認知障害、アルツハイマー病または認知低下である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
医薬の製造において使用する、請求項37〜43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項51】
神経障害を治療するための医薬の製造において使用する、請求項37〜43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項52】
前記神経障害が、癲癇、発作、脳虚血、脳性麻痺、アルパース病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、レット症候群、神経病の疼痛、脊髄外傷、または外傷性脳損傷である、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)の受託番号NRRL 30815を有する、放線菌株M507。
【請求項54】
農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)の受託番号NRRL 30815を有する放線菌株M507を、マクロライドの生成を可能にする条件下で培養するステップを含む、マクロライドを生成する方法。
【請求項55】
構造:
【化3】

の化合物を生成する方法であって、放線菌株LL-BB0005またはM507を該化合物の生成に適した条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項56】
前記放線菌株LL-BB0005は農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)の受託番号NRRL 30748を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記放線菌株が、農業研究サービス機関の系統保存(NRRL)の受託番号NRRL 30815を有するM507である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物を実質的に純粋な形態で単離することをさらに含む、請求項55〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記化合物をクロマトグラフィーにより単離することをさらに含む、請求項55〜57のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−501342(P2008−501342A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515589(P2007−515589)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/019473
【国際公開番号】WO2005/121327
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】