説明

複合乳化剤形の組成物

【課題】種々の有効成分の配向・分配性のコントロールに優れた乳化組成物を提供する。
【解決手段】1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物により上記課題が解決される。 前記油中水乳化物は、その水相に有効成分を含有し、有機変性粘土鉱物を含有することが好ましい。さらに
該油中水乳化物を分散した水性担体からなる組成物を水相とし、これに油相を分散してなる、水中油・水中油中水複合乳化組成物がさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に好適な乳化組成物に関し、更に詳細には、種々の有効成分を目的に合わせて配向分配させるのに有用な皮膚外用剤用の複合乳化剤形の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤に於いて、乳化剤形は水相と油相が存在するために、油溶性の有効成分も、水溶性の有効成分もともに担持出来る利点を有した優れた製剤形である。しかしながら、有効成分毎に配向分配性は異なり、それらを調整することが好ましいが、通常の乳化剤形では連続相に含有せしめるか、分散相に含有せしめるかの2種の手段しか存在せず、その調整は困難であった。この様な点に鑑みて、乳化状態を複合化し、配向・分配性をコントロールする試みが為されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。しかしながら、これらの複合乳化剤形は何れも連続相中に乳化滴が分散した形態であり、分散している乳化滴間には差異は存しない。従って、配向・分配性の観点に立てば2種の選択可能性が3種となり、1種増えたに過ぎないとも言える。種々の有効成分の配向・分配性のコントロールのために分散する滴の多様性を高める手段の開発が望まれていたと言える。又、分散滴の多様性を高めることは、皮膚状態が多様化し、使用するべき化粧料を個人毎に特性を変え対応するニーズが高まっている現代に於いては(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)、化粧料の個人特性対応にも優れた貢献をする技術であると期待される。
【0003】
一方、有機変性粘土鉱物は、油相の増粘剤、該増粘作用に起因する油中水乳化剤形の安定化作用等が存することが知られている(例えば、特許文献6、特許文献7を参照)。又、平均付加モル数100以上のポリエチレングリコールの脂肪酸エステルは、水中油乳化組成物を調整するのに好適な界面活性剤であることが知られている(例えば、特許文献8、特許文献9を参照)。しかしながら、1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物も知られていないし、かかる組成物を水相とし、これに油滴を更に分散してなる、複合乳化組成物も全く知られていない。加えて、この様な構成の複合乳化組成物が、有効成分、取り分け、水溶性の有効成分の配向・分配性に優れることも全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2008−208128号公報
【特許文献2】特開2007−45840号公報
【特許文献3】特開2003−48810号公報
【特許文献4】特開2001−233731号公報
【特許文献5】特開2005−270116号公報
【特許文献6】特開2008−247785号公報
【特許文献7】特開2005−200329号公報
【特許文献8】特開2007−191408号公報
【特許文献9】特開2007−191406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、種々の有効成分の配向・分配性のコントロールに優れた乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、種々の有効成分の配向・分配性のコントロールに優れた乳化組成物を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物を水相とする、複合乳化組成物にその様な特性を見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物。
<2>前記油中水乳化物は、その水相に有効成分を含有することを特徴とする、<1>に記載の組成物。
<3>前記油中水乳化物は、有機変性粘土鉱物を含有することを特徴とする、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4><1>〜<3>何れか1項に記載の、油中水乳化物を分散した水性担体からなる組成物を水相とし、これに油相を分散してなる、水中油・水中油中水複合乳化組成物。
<5>予め、有機変性粘土鉱物を含む油中水乳化物を作成し、ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体にこれを分散せしめ、しかる後に、油相を加えて油滴を分散せしめることを特徴とする、水中油・水中油中水複合乳化組成物の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、種々の有効成分の配向・分配性のコントロールに優れた乳化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<1>本発明の複合乳化組成物の必須成分であるポリエチレングリコールの脂肪酸エステル
本発明の複合乳化組成物は、平均重合度100〜300のポリエチレングリコールの脂肪酸エステルを必須成分として含有することを特徴とする。かかる成分を構成するポリエチレングリコール部分としては、ポリオキシエチレンの重合度に換算して100〜300が好ましく、120〜200がより好ましい。又、脂肪酸残基としては、特段の限定はないが、炭素数10〜30の飽和又は不飽和のものが好ましく、分岐を有することもできる。又、エステルとしてはポリエチレングリコールの片側に脂肪酸残基を有するものエステル、両側に脂肪酸残基を有するジエステルの何れでも良く、モノエステルであることが特に好ましい。具体的には、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレイン酸残基、イソステアリン酸残基、オクチルドデカン酸残基などが好適に例示できる。特に好ましいものはステアリン酸残基である。特に好ましい化合物としては、ポリエチレングリコール(150)モノステアリン酸エステル或いはポリエチレングリコール(150)ジステアリン酸エステルが例示できる。これらの成分に関しては既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入して利用できる。市販品としては、ニッコールCMS6000(ポリエチレングリコール(150)モノステアリン酸エステル;日本サーファクタント株式会社製)、ニッコールCDS6000(ポリエチレングリコール(150)ジステアリン酸エステル;日本サーファクタント株式会社製)、エマレックス6300MST(ポリエチレングリコール(150)モノステアリン酸エステル;日本エマルション株式会社製)等が存する。かかる成分は、複合乳化組成物全量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。又、後記の油中水乳化組成物に対しては、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。かかる界面活性剤を採用することにより、水性担体中に、油中水乳化組成物を均一且つ安定に分散せしめることが出来る。この様な安定性故に、安定な複合乳化組成物を調整することも出来る。
【0009】
<2>ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルを含有する水性担体
本発明の複合乳化組成物に於いて、前記平均重合度100〜300のポリエチレングリコールの脂肪酸エステルは、水性担体に含有される。かかる構成の水性担体は、油中水乳化組成物からなる乳化滴と、油相からなる油滴とをともに安定に分散させるための分散媒となるべきものであり、水に加えて、通常化粧料などの皮膚外用剤で使用される、水溶性の成分を含有することが出来る。かかる水溶性の成分としては、例えば、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、イソプレングリコールなどの多価アルコール、キサンタンガム、マルメロ抽出物、アルキル変性されても良いカルボキシビニルポリマーなどの増粘成分、レシチン、水添レシチン、水酸化レシチン、リゾレシチンなどの燐脂質、フェノキシエタノールやパラベンなどの防腐成分等が好適に例示でき、本発明の効果を損なわない範囲に於いて、必須成分に属しない界面活性剤なども含有することが出来る。好ましい形態としては、必須の界面活性剤以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であり、より好ましくは実質的に含有しない形態である。又、油滴と油中水乳化滴との合一を防ぐ意味では、燐脂質を含有させて界面を強固にすることが好ましく、中でも水酸化レシチンを含有させることがより好ましい。かかる燐脂質の含有量は、複合乳化組成物全量に対して、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。又、後記の油中水乳化組成物に対しては、0.1〜3質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。この様な成分構成を有する本発明の組成物の必須構成要素である水性担体は、油中水乳化滴を、油滴同様に安定に均一分散できるため、油滴と油中水乳化滴とを安定に共存せしめることが出来る。かかる特性は、同じ水性担体を連続相とする、水中油中水乳化組成物と、水中油乳化組成物とを任意の割合で安定に混合できることを意味し、乳化組成物の多様性を格段に向上できる。かかる多様性は、個人個人の肌特性に合わせて、水中油中水乳化組成物と、水中油乳化組成物との混合比を変えて対応することが可能であることを意味する。本発明の組成物を、この様な製剤多様化の目的で使用する場合も本発明の技術的範囲に属する。
【0010】
<3>本発明の水性担体に分散されるべき油中水乳化物
本発明の組成物に於いて、前記水性担体に分散されるべき油中水乳化物は、化粧料などの皮膚外用剤分野において、通常の技術で調整された油中水乳化物を用いることが出来るが、ジステアリルジモニウムクロリド変性ヘクトライト(例えば、「ベントン38V」エレメンティス社製など)などのような有機変性粘土鉱物を用いた油中水乳化組成物が好ましい。これはこの様な構成の乳化組成物では、油相界面が強固で、併存する油滴と合一が、より回避できるので好ましい。かかる油中水乳化物では、油中水乳化物全量に対し、0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の有機変性粘土鉱物を含有し、所望により、ポリエチレンオキシド或いはポリプロピレンオキシド等で変性したジメチコンのような、ポリエーテル変性シリコーンを、油中水乳化物全量に対し、0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%含有する。かかる油中水乳化物に於いては、内水相に、有効成分、取り分け、水性担体で抽出或いは希釈された生薬抽出物や水溶性高分子、配糖体などの水性有効成分を含有することが好ましい。かかる水性有効成分は、通常は皮膚バリア機能に阻害されて経皮吸収することが難しいが、この様な油中水乳化滴の内水相に抱含されることにより、経皮吸収性が向上し、その効果発現が顕著になる。この様な有効成分としては、生薬抽出物であれば、例えば、クジン抽出物、ノコギリソウ抽出物、ヤグルマソウ抽出物、オトギリソウ抽出物、ヨモギ抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、シラカバ抽出物、コウキ抽出物、ツボクサ抽出物、マージョラム抽出物、スイートマージョラム抽出物、オレガノ抽出物、バクモンドウ抽出物、チョウジ抽出物、コウライニンジン抽出物、オウレン抽出物、アルニカ抽出物、クワ抽出物、カモミール抽出物、コメなどの穀物の発酵物からの抽出物、大豆蛋白抽出物等が好ましく例示でき、水溶性高分子であれば、ポリメタクリロイルリジン、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマー、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマー、ポリグリコシルエチルメタクリレート等の生体類似構造を有する(メタ)アクリル酸系高分子が好ましく例示でき、配糖体であれば、アスコルビン酸グルコシド及び/又は塩、グリチルリチン酸及び/又は塩、アルブチン及び/又は塩、ダイズイソフラボン配糖体等が好適に例示できる。かかる成分は、再修正剤に於ける濃度で有効量含有させることが好ましく、油中水乳化物に於いては、それぞれを油中水乳化物全量に対して、0.001〜10質量%含有させることが好ましく、0.01〜5質量%含有させることが好ましい。
【0011】
<4>本発明の複合乳化組成物
本発明の複合乳化組成物は、前記水性担体に、前記油中水乳化物の乳化滴と、油滴とが併存する形態であることを特徴とする。この様な複合乳化物は、例えば、次に列挙する方法により調整することが出来、何れの製法であっても、本発明の水性担体を連続する構成を取ることにより、安定な複合乳化物となる。中でも調整法2では、油滴と油中水乳化滴の合一が起こりにくく、且つ、油中水乳化滴の分散安定性が得られやすいので特に好ましい。
【0012】
(調整法1) 前記水性担体に油相を加え、水中油乳化物を作成し、これに予め調整しておいた油中水乳化物を加え、複合乳化物と為す。
【0013】
(調整法2) 前記水性担体に油相を加え、水中油乳化物を作成し、これと、別途前記水性担体に予め調整しておいた油中水乳化物を分散させた油中水乳化滴分散水性担体とを混合し、複合乳化組成物とする。
【0014】
(調整法3) 予め水中油乳化物を作成し(連続相は本発明の水性担体とは異なる)、これと、別途最終濃度で前記水性担体となるように必須構成成分を調整してある、水性担体に予め調整しておいた油中水乳化物を分散させた油中水乳化滴分散水性担体とを混合し、複合乳化組成物とする。
【0015】
本発明の複合乳化組成物においては、前記の成分以外に通常皮膚外用剤、乳化組成物で使用される任意の成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤;ヘクトライト等の粘土鉱物などが好ましく例示できる。これらを常法に従って仕込み部位に振り当て、前記方法に従って処理することにより本発明の複合乳化組成物は製造することが出来る。
【0016】
斯くして得られた、本発明の複合乳化組成物は、有効成分の経皮透過性に優れるため、化粧料、皮膚外用医薬などの皮膚外用剤に好ましく適用される。特に好ましいものは化粧料であり、美肌化粧料、美白化粧料などに好適に適用される。
【0017】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0018】
下記に示す処方に従って、本発明の複合乳化組成物である、化粧料を製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加温し、イに攪拌下徐々にロを加えて、一次乳化して水中油乳化物を形成させ、これに更にハの成分を攪拌下加えて、二次乳化をして水中油中水・水中油混在の分散滴多様化タイプの複合乳化剤形とした。これを攪拌冷却し、本発明の化粧料である化粧料1を得た。
【0019】
【表1】

* 中間油中水乳液1


(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
アルニカ抽出物は、ヨーロッパを原産とするキク科アルニカ属アルニカの抽出物であり、この植物は現代では世界各国で栽培され、本願発明では日本での栽培品を購入し用いて抽出物を作成した。
オウレン抽出物は、中国中南部原産であり、古くより日本でも栽培されている、キンポウゲ科オウレン属の植物の内、日本で栽培されているものを購入し抽出物を作成した。
クジン抽出物は、中国原産のクジン(S. flavescens)の日本での変種クララ(S. flavescens var. angustifolia)を購入し、作成した。
セイヨウノコギリソウ抽出物は、ヨーロッパ原産のキク科セイヨウノコギリソウ(Achillea millefolium L)の乾燥物を購入し、作成した。
オトギリソウ抽出物は、日本、韓国、中国を原産とするオトギリソウ科オトギリソウ属の植物(Hypericum erectum Thunb.)の抽出物であり、抽出物作成には日本に自生するものを購入し用いて作成した。
シラカバ抽出物は、ロシアを原産とするカバノキ科シラカンバ(Betula platyphylla Sukatchev var. japonica Hara)の日本へ移植され、定着した植物を購入し用いて作成した。
ローズマリー抽出物は、南欧原産のシソ科ローズマリー(Rosmarinus officinalis L)の日本へ移植され、繁殖したものを購入し用いて作成した。
ツボクサ抽出物は、インド原産のセリ科ツボクサ属の植物(Centella asiatica (L.))の日本への渡来、繁殖したものを用いて作成した。
チョウジ抽出物は、モルッカ諸島原産のフトモモ科チョウジの花蕾の乾燥物の抽出物であり、フトモモ科チョウジの花蕾の乾燥物はニューギニア産のものを購入し用いて、作成した。
【0020】
化粧料1との特性比較のために、組成は変えずに水中油乳化剤形とした比較例1も製造した。即ち、イ、ロをともに80℃に加温し、攪拌下徐々にイにロを加え乳化し、粒子を均質化した後、攪拌冷却し比較例1を得た。
【0021】
【表2】

【0022】
<試験例1>
対照有効成分としてチョウジエキスを選択し、オイゲノールを指標にフランツセルにミリポアフィルターを隔壁としてセットし、レセプター側に40%ポリエチレングリコール(平均分子量400)水溶液を充填し、フィルター上に検体を10mg/cm2で塗布し、1時間でのフィルター上からアクセプター側の40%ポリエチレングリコール水溶液への24時間での移動量を絶対検量線法によるHPLC分析法で計測した。結果を投与量に対する移動総量の百分率として表3に示す。これより本発明の複合乳化組成物である化粧料1は有効成分の経皮透過促進性に優れることが判る。これは水性担体中での油中水乳化物の安定性が優れるためであると考えられる。
(HPLC条件)
カラム:ODS4.6×150mm、カラム温度:40℃、検知:紫外部280nm、移動相:50%アセトニトリル水溶液、流速1ml/min
【0023】
【表3】

【実施例2】
【0024】
化粧料1と同じ処方で、有効成分の配合相を最外相に変えて、化粧料2を作成した。化粧料2と比較例1の透過性を試験例1の手技で投与後6時間で比較した。ここにおいても本発明の複合乳化組成物は経皮透過性に優れることが確認された。
【0025】
【表4】

* 中間油中水乳液2


(製法)イ、ロを80℃で加熱溶解させ、非溶解分を良く攪拌して均一に為し、攪拌下イにロを徐々に加えて、乳化を行い、中間油中水乳液1を得た。
【0026】
【表5】

【実施例3】
【0027】
実施例1、2より、有効成分の経皮透過性は、水性担体に分散時の油中水乳化物の安定性に依存することが判ったので、油中水乳化物の分散安定性に対する界面活性剤の影響を検討した。即ち、次の表6に処方を示す水性担体20質量部に、実施例1の油中水乳化組成物1を20質量部加え、ディスパー(4000rpm)で5分間分散させ、1日後乳化粒子の分散・合一の程度を顕微鏡下表6基準で判定した。評価結果を表7に示す。また、各評価基準の顕微鏡観察写真を図1に示す。これより、平均付加モル数100〜300のポリエチレングリコールの脂肪酸モノエステル乃至はジエステルが好ましいことが判る。
【表6】

【0028】


【表7】

【0029】
【表8】

【実施例4】
【0030】
化粧料1と同様に、下記の処方に従って、本発明の複合乳化組成物である化粧料3を作成した。
【0031】
【表9】

【実施例5】
【0032】
化粧料1と同様に、下記の処方に従って、本発明の複合乳化組成物である化粧料4を作成した。
【0033】
【表10】

【実施例6】
【0034】
化粧料1〜4及び比較例1について、40℃で1ヶ月間保存した後、20℃に24時間変えて戻し、顕微鏡下実施例3の基準で乳化粒子の分散性を観察、判定した。結果を表10に示す。これより、複合乳化剤形をとり、且つ、有効成分を油中水乳化物の内水相に内包し、最外相に水酸化レシチンを含有する形態が乳化粒子の分散安定性に優れることがわかる。
【0035】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0036】
化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】エマルションの1日後乳化粒子の分散・合一の程度に対する各評価基準に対応する顕微鏡観察像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体に、2)油中水乳化物を分散してなる組成物。
【請求項2】
前記油中水乳化物は、その水相に有効成分を含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記油中水乳化物は、有機変性粘土鉱物を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3何れか1項に記載の、油中水乳化物を分散した水性担体からなる組成物を水相とし、これに油相を分散してなる、水中油・水中油中水複合乳化組成物。
【請求項5】
予め、有機変性粘土鉱物を含む油中水乳化物を作成し、ポリエチレングリコール(平均重合度100〜300)の脂肪酸エステルを含む水性担体にこれを分散せしめ、しかる後に、油相を加えて油滴を分散せしめることを特徴とする、水中油・水中油中水複合乳化組成物の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138148(P2010−138148A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318843(P2008−318843)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】