説明

複合体、該複合体の製造方法、該複合体を用いたビードコア及びタイヤ並びに該タイヤの製造方法

【課題】本発明は、形状安定性が良好なゴム・スチールコード複合体、該複合体の製造方法、該複合体を用いたビードコア及びタイヤ並びに該タイヤの製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】半加硫ゴムとスチールコードからなる複合体が、本発明の解決手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状安定性が高いゴム・スチールコード複合体、該複合体の製造方法、該複合体を用いたビードコア及びタイヤ並びに該タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム・スチールコード複合体はさまざまな用途に用いられている。その用途の1つとして空気入りタイヤがある。空気入りタイヤは、一般にスチールコード製のビードワイヤを連続的に巻回して形成された、空気入りタイヤ用ビードコアをビード部に埋設し、これによってタイヤをリムに嵌合させている。これらゴム・スチールコード複合体について、ゴムを加硫する時に高温の熱が作用しても、ゴム流動による形くずれ等が起こらない技術が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建設車両用空気入りラジアルタイヤのベルトに関して、スチールコード及び薄層被覆したコーティングゴムを予め加硫ないし半加硫しておき、それらを未加硫ゴムで一体化した構造の複合体が開示されている。また、特許文献2には、ビードコア周りに予め硬化したゴムが配設されている空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/055697号
【特許文献2】特開2004−155096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のゴム・スチールコード複合体では、ゴムを加硫する時に高温の熱が作用するため、未加硫ゴムが流動する等によって、加硫時に形くずれ等が起こる場合(図2b参照)があったという問題がある。特に、空気入りタイヤにおいては、ゴムを加硫する時に高温の熱が作用しても形状が安定で、ゲージが安定で、ビードが形くずれせず、リムフィット性が高く、ユニフォミティも高いゴム・スチールコード複合体が求められている(図2a参照)。しかし、従来の技術では、形くずれ等を抑えることが困難であった(図2b参照)。
例えば、ビードコアにおいて、加硫時の変形ないし流動変形により、リム組の際にリムに対するビードコアの嵌合力や嵌合圧にタイヤ周方向位置でばらつきが生じるため、リムフィット性は改善されず、タイヤのリムへの嵌合が不十分となり、タイヤ単体のRFVのレベルに比べてリム組後のRFVが悪化する場合があったという問題がある。ここで、RFV(ラジアルフォースバリエーション:Radial Force Variation、上下力の変動)とは、荷重を受けているタイヤが、一定の半径で1回転する間に発生するタイヤ半径方向(z軸方向)の力の変動の大きさのことを言うものである。RFVが増大すると、ユニフォミティが損なわれて走行時に振動が生じる場合があり、特に、フラットな良路において乗り心地が安定し難い場合があったという問題がある。
【0006】
さらに、従来の技術では、空気入りタイヤとリムの嵌合圧やビードアンシーティング抵抗(JIS D4230:リム外れ抵抗)を両立させ、総合的な嵌合特性を向上することは困難であった。空気入りタイヤとリムの嵌合圧やビードアンシーティング抵抗はビードコアの剛性の影響を大きく受けるため、ビードコアを構成しているビードワイヤの使用量を増やしてビードコアの剛性を大きくすれば、ビードアンシーティング抵抗を高くすることができるが、これは同時に嵌合圧の増加も招く。一方、ビードコアを構成するビードワイヤの使用量を減らした場合、嵌合圧は低くなるが、同時にビードアンシーティング抵抗値も低下するという問題がある。すなわち、従来の技術では、リムフィット性は改善されておらず、タイヤのリムへの嵌合が不十分となり、タイヤ単体のRFVのレベルに比べてリム組後のRFVが悪化する場合があったという問題がある。
【0007】
また、特許文献1で得られる建設車両用空気入りラジアルタイヤのベルト構造では、ゴム・スチールコード複合体としてのベルト全体でみると、ゴムに未加硫部分あるため、全体としての形状維持効果は小さい。さらに、特許文献2には、ビードコアの周りに電子線照射等を施したゴムを配設する技術であり、予め硬化したゴムとスチールコード複合体に関する技術であって、半加硫ゴムとスチールコードの複合体、特に半加硫ゴムをスチールコードに被覆させるビードインシュレーションゴム技術については、記載も示唆もない。さらに、表面近傍の加硫が過度に進行した場合、加硫による一体成形が困難になるため、電子線照射等の高度な半加硫工程を必要とするという問題点がある。
更に、ビードコアの周りは通常通り未加硫ゴム、かつ該ゴム被覆物の周りを半加硫ゴムで被覆したものについてはビード−ビード間のゴムが未加硫であるため、ビード形状が崩れやすいという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、形状安定性が良好なゴム・スチールコード複合体、該複合体の製造方法、該複合体を用いたビードコア及びタイヤ並びに該タイヤの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム・スチールコード複合体の全てのゴムを半加硫状態にすることにより、形状安定性が高いゴム・スチールコード複合体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の複合体は、半加硫ゴムとスチールコードからなる複合体であることを特徴とする。
また、本発明の複合体は、ビードコア、ベルト又はカーカスプライに用いることが好ましく、さらに、前記スチールコードに未加硫ゴムを被覆した被覆物が単線である時に、該未加硫ゴムを半加硫することがより好ましく、また、前記スチールコードと未加硫ゴムとでビードコア形状を形成後、該未加硫ゴムを半加硫することがより好ましい。さらに、前記半加硫ゴムの加硫度が20%〜80%の範囲にあることがより一層好ましい。
【0011】
また、本発明のタイヤは、前記複合体を用いたタイヤであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の複合体の製造方法は、未加硫ゴムでスチールコードを被覆する工程、被覆後、該未加硫ゴムを半加硫状態にする工程を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のビードコアは、1本以上のスチールコード製のビードワイヤを未加硫ゴムで被覆されてなるビードワイヤ被覆物を連続的に巻回して環状に形成された、空気入りタイヤ用ビードコアにおいて、ビードコア形状を形成後、前記ビードワイヤを被覆する未加硫ゴムを、半加硫することが好ましく、また、前記ビードワイヤは、標準リムのリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満の範囲にある曲率半径Rで癖付けされてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の空気入りタイヤは、1本以上のスチールコード製のビードワイヤを未加硫ゴムで被覆されてなるビードワイヤ被覆物を連続的に巻回して環状に形成された、ビードコアをビード部に埋設してなる空気入りタイヤにおいて、ビードコア形状を形成後、前記ビードワイヤを被覆する未加硫ゴムを、半加硫し、前記ビードワイヤは、標準リムのリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満の範囲にある曲率半径Rで癖付けされてなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、環状のビードコアをビード部に埋設してなる空気入りタイヤの製造方法において、1本以上のスチールコード製のビードワイヤを未加硫ゴムで被覆されてなるビードワイヤ被覆物を連続的に巻回して環状に形成する工程、ビードコア形状を形成後、前記ビードワイヤを被覆する未加硫ゴムを半加硫する工程、前記ビードワイヤを標準リムのリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満の範囲にある曲率半径Rで癖付けする工程を備えることが好ましい。
【0016】
なお、ここでいう「標準リム」とは、JATMA、TRA、ETRTO等の、タイヤが製造、販売、又は使用される地域において有効な工業基準、規格等に規定されている適用サイズにおける標準リム(または、"Approved Rim"、"Recommended Rim")のことをいうものとする。
【0017】
また、空気入りタイヤ中に埋設されたビードワイヤの癖付けの曲率半径は、以下の手順により特定される。すなわち、タイヤを解体して、ビードワイヤに傷がつかないようにビードコアを取り出した後、タイヤ径方向外側に配置されたビードワイヤの末端から2周分のビードワイヤを新たな癖がつかないように切り出す。次いで、切り出されたビードワイヤを平板上に放置し、ビードワイヤが自然状態で形成する環状体の内径を周上で均等に離間した8箇所で測定し、その平均値の半分を曲率半径Rとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、予め半加硫しておくことにより、タイヤ等の加硫時に、ゴムの流動が抑制されるため、形状安定性が良好なゴム・スチールコード複合体、該複合体の製造方法、該複合体を用いたビードコア及びタイヤ並びに該タイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に従う空気入りタイヤの右半部のタイヤ幅方向断面図であり、標準リムに取り付けた状態で示す。
【図2】本発明のビードコア及び従来技術のビードコアの1態様の断面図であり、(a)本発明の形状安定性に優れたビードコアの1態様の断面図であり、(b)未加硫ゴムを用いたため変形した従来技術のビードコアの1態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、半加硫ゴムとスチールコードからなる複合体であることを特徴とする。
【0021】
[半加硫ゴム・スチールコード複合体]
本発明に用いる半加硫ゴム・スチールコード複合体は半加硫ゴムとスチールコードからなる複合体であり、予め半加硫しておくことにより、加硫時にゴムの流動が抑制されるため、形状安定性が良好である。特に、空気入りタイヤにおいては、ゴムを加硫する時に高温の熱が作用しても形状が安定で、ゲージが安定で、ビードが形くずれせず、リムフィット性が高く、ユニフォミティが高いゴム・スチールコード複合体である。
ここで、半加硫ゴムとスチールコードからなる複合体とは、ビード部材ゴムを半加硫する為、ビード部材ゴムについてビード断面の100%を半加硫ゴムが占めることを言い、ビード部材ゴムでない部分、つまり複合体の形状変形に関係ない部分を加硫ゴムや未加硫ゴムにする等を排除するものである。
【0022】
[スチールコード]
本発明に用いるスチールコードは、特に限定されず、例えば、通常のタイヤに用いるスチールコードが好適である。
【0023】
[半加硫ゴム]
本発明に用いる半加硫ゴムは、特に限定されず、例えば、通常のタイヤに用いるゴムであって半加硫であるものが好適である。半加硫状態とは、未加硫(加硫度0%)ゴム配合物を、所定加硫温度で完全に加硫(加硫度100%)する前に処理を止めた状態を言い、半加硫ゴムとは、かかる予備加硫を施したゴムである。加硫度曲線(JIS K6300−2)から求めた加硫度により半加硫状態を定義できる。
さらに、上記ゴムの加硫度が20%〜80%の範囲にあることが好ましい。加硫度が20%未満の場合、該複合体が、ゴム加硫時に高温の熱が作用するため流動し変形等が起こるおそれがあり、加硫度が80%を越えると、その後の加硫によりゴム複合体として加硫一体化が不十分な場合があるからである。
ここで、「加硫度」は、ある加硫温度で加硫したときの加硫時間と加硫温度とで定まる、反応状態を示す尺度(S−S架橋反応の度合い)であり、例えば、NMR法などの機器分析によって、実験的に測定でき、また、JIS K6300−2:2001に準拠したキュラストメーター法などにより加硫挙動(加熱温度−加熱時間−トルクの関係)を把握し、実験的に予測することができる。完全に加硫してしまうと、ゴムの柔らかさがなくなりゴム硬度が上がって、ゴム同士が加硫接着しなくなり、加硫一体化できなくなる。そこで、工場など現場での実際的な管理においては、ゴム硬度による加硫度管理を好適に使用できる。
【0024】
(半加硫処理方法)
半加硫処理は、スチールコードに未加硫ゴムを被覆した後、加熱装置は特に限定されないが、好適には電気釜や電気炉等によって予め該未加硫ゴムを半加硫する。加硫挙動から予測した又は硬度を管理しながら、所定加硫温度で所定加硫時間、加熱処理することにより半加硫処理を行う。
スチールコードに未加硫ゴムを被覆した被覆物が単線である時に、該未加硫ゴムを半加硫することが好ましい。予め半加硫してあるため、巻きやすく、半加硫であるため、その後の加硫処理で一体化でき、さらに形状安定性に優れるためである。また、スチールコードと未加硫ゴムとでビードコア形状を形成後、該未加硫ゴムを半加硫することが好ましい。ある程度組んでから加硫したほうが巻きくずれが起こりにくいためである。
【0025】
(複合体の製造方法)
複合体の製造方法は、未加硫ゴムでスチールコードを被覆する工程、被覆後、該未加硫ゴムを半加硫する工程を備えることを特徴とする。成形工程において、装置は特に限定されないが、たとえば、スチールコードにタイヤビードコアゴムを被覆するビードインシュレーション装置が好適例として挙げられる。半加硫工程において、加硫挙動から予測した又は硬度を管理しながら、所定加硫温度で所定加硫時間、加熱処理することにより半加硫処理を行う。複合体をさらに加硫して一体化する。半加硫ゴム複合体を形成してさらに加硫してもよく、未加硫ゴムの被覆物を形成して半加硫した後に加硫してもよい。
【0026】
[半加硫ゴムとスチールコードの複合体の用途]
本発明の半加硫ゴムとスチールコードの複合体は、ビードコア、ベルト、又はカーカスプライに用いることが好適であり、タイヤに用いることがより好適であり、特に、空気入りタイヤに用いた場合には、ゴムを加硫する時に高温の熱が作用しても、形状が安定で、ゲージが安定で、ビードが形くずれせず、リムフィット性が高く、ユニフォミティが高くできる。
【0027】
(ビードワイヤ及びタイヤ)
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う空気入りタイヤ(以下「タイヤ」という)を標準リムに取り付けた状態の右半部のタイヤ幅方向断面を示し、図2aは、図1に示すタイヤのビードコアの断面図である。半加硫ゴムとスチールコードの複合体であるビードコアをタイヤに用いているため、加硫によっても断面形状が保たれ、図1のように変形のない矩形外形のビードコア断面形状を呈する。そのため、図2bに示すビードコア全体に変形が見られ、略菱形外形を呈する従来技術のタイヤのビードコアやビードワイヤ(ビードのスチールコード)に変形の影響が見られるビードコアと区別することができる。
【0028】
図1に示すタイヤ1は、路面に接地するトレッド部2と、このトレッド部2の両側部からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3のタイヤ径方向内側に設けられ、標準リム4に嵌合される一対のビード部5とを具える。一対のビード部5の間には、トロイド状のカーカス6が装架され、その端部がビード部5に埋設されたビードコア7の回りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に向かって折り返されている。また、カーカス6のクラウン部外周には、補強素子をゴム被覆してなるベルト8が配設されている。
【0029】
図2aに示すように、ビードコア7は、スチールコード製のビードワイヤ9がタイヤ径方向に積層された多層構造を有しており、さらに半加硫ゴムと複合体を形成している。このビードワイヤ9には、予め標準リム4のリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満、好ましくは0.2D以上0.4D以下の範囲にある曲率半径Rで連続的な癖付けが施されている。ここで、曲率半径Rを0.05D以上とするのは、曲率半径Rを0.05D未満とする加工は困難である上、ビードワイヤ9の剛性が低下し過ぎ、リム組性は向上するものの嵌合圧が低くなり過ぎ、リム組後のRFV変化量が増加するからである。一方、曲率半径Rを0.5D未満とするのは、これが0.5D以上では、ビードワイヤ9の剛性の低下が不十分であり、リム組性が十分に向上せず、やはりリム組後のRFV変化量が増加するからである。
【0030】
そして、ビードコア7は、このような癖付けが施された1本のビードワイヤ9で未加硫ゴムの被覆物又は半加硫ゴムとの複合体を、タイヤ幅方向における位置をずらしながら、周方向に連続してらせん巻回して1つの層を構成し、この層の上に同様の手順で複数の層を構成し、未加硫ゴムの被覆物の場合さらにビード成形後に半加硫することで形成することができる。あるいは、このような癖付けが施された複数本のビードワイヤ9で未加硫ゴムの被覆物又は半加硫ゴムとの複合体をタイヤ幅方向に平行に並べ、同時に周方向に巻回して1つの層を構成し、この層の上に同様の手順で複数の層を構成し、未加硫ゴムの被覆物の場合さらにビード成形後に半加硫することで形成することもできる。半加硫ゴムとの複合体でビードコアを構成又は未加硫ゴムの被覆物でビードコアを構成しビード成形後に半加硫することにより、加硫時のビード型崩れを防止することができ、それによってビード背面部の隙間がなくなるため、ビードフィット性が向上し、RFVが向上する。
【0031】
一般にタイヤのリム組に際しては、特にハンプ付のリムの場合に、ビード部5を拡径させてリム4のビードシート部にセットする必要があるが、上記のようにして構成されたビードコア7は、それを構成するビードワイヤ9の剛性が低いことから、比較的小さな力でも拡径するので、周上で均一にビード部をリムに嵌合(フィット)させることが可能である。また、リム組後は、リム径Dよりも小さな曲率半径Rをもつビードワイヤ9の作用により、ビードコア7が縮径しようとするので、リム4に対するビード部5の嵌合圧が向上する。
【0032】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したにすぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。この発明によれば、ビードワイヤを比較的小さな曲率半径で癖付けしてビードワイヤの剛性を低減しているので、タイヤのリム組に要する力が減り、したがって、タイヤのリム組性の向上、ひいてはタイヤとリムの組立体におけるRFV量の低減を行うことが可能となる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜4]
【0034】
次に、この発明に従うタイヤを試作し性能評価を行ったので、以下に説明する。
【0035】
実施例1〜4のタイヤは、タイヤサイズが205/55R16の乗用車用スチールラジアルタイヤであり、直径1.3mmのビードワイヤにより構成された4×4のストランドビードコアを有する。これら実施例のタイヤのビードワイヤは、加硫曲線から予測した半加硫状態になるよう、表1に示す半加硫条件で処理した複合体であり、標準リム(6.5JJ)のリム径Dに対して表1に示す曲率半径Rにより癖付けが施されている。
【0036】
比較のため、ビードワイヤの癖付けが2R/D=0.8、1.2であり、半加硫ゴムとスチールコードの複合体を用いたことを除いて、実施例1〜4と同様の構成を有する従来例のタイヤも併せて試作した。
【0037】
これら各供試タイヤに対して以下の項目の評価を行った。
【0038】
[評価方法]
(リムフィット性)
供試タイヤをリムに装着してタイヤ車輪とし、内圧220kPaのビード部を観察し、リムとビード部との間の隙間を測定し、周上10ヵ所での隙間の合計値より、リムフィット性を評価した。比較例のタイヤの値を100とした指数で表わしており、数値が小さいほど、リムフィット性に優れている。
【0039】
(RFV)
前記供試タイヤを、6.5JJ×16のリムにリム組みして、自動車規定JASOC607の「自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法」に準拠してRFV(N)を測定し、この測定結果からユニフォミティを評価した。数値が小さいほど、RFVが小さく、タイヤ性能に優れていることを示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示す結果から、実施例1〜4のタイヤは、従来例のタイヤに比べて、リムフィット性及びRFVが両立して大幅に向上していることが分かる。したがって、実施例1〜4のタイヤは、総合的な嵌合特性に優れており、リム組後のRFV変化量を最小限に抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
形状安定性に優れたゴム・スチールコード複合体を提供することが可能になった。特に、ビードコア形状を形成後、未加硫ゴムを半加硫する事により、リム組後のRFVの変化量を最小限に抑制可能なタイヤのリムフィット性を向上させた空気入りタイヤを提供することが可能になった。
【符号の説明】
【0043】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 リム
5 ビード部
6 カーカス
7 ビードコア
8 ベルト
9 ビードワイヤ(スチールコード)
10 半加硫ゴム
11 未加硫ゴム
D リム径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半加硫ゴムとスチールコードからなる複合体。
【請求項2】
ビードコア、ベルト又はカーカスプライに用いることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記スチールコードに未加硫ゴムを被覆した被覆物が単線である時に、該未加硫ゴムを半加硫することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記スチールコードと未加硫ゴムとでビードコア形状を形成後、該未加硫ゴムを半加硫することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体を用いたタイヤ。
【請求項6】
未加硫ゴムでスチールコードを被覆する工程、被覆後、該未加硫ゴムを半加硫する工程を備えることを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項7】
前記半加硫ゴムの加硫度が20%〜80%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
1本以上のスチールコード製のビードワイヤを未加硫ゴムで被覆されてなるビードワイヤ被覆物を連続的に巻回して環状に形成された、空気入りタイヤ用ビードコアにおいて、
ビードコア形状を形成後、前記ビードワイヤを被覆する未加硫ゴムを、半加硫することを特徴とするビードコア。
【請求項9】
前記ビードワイヤは、標準リムのリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満の範囲にある曲率半径Rで癖付けされてなることを特徴とする請求項8に記載のビードコア。
【請求項10】
1本以上のスチールコード製のビードワイヤを未加硫ゴムで被覆されてなるビードワイヤ被覆物を連続的に巻回して環状に形成された、ビードコアをビード部に埋設してなる空気入りタイヤにおいて、
ビードコア形状を形成後、前記ビードワイヤを被覆する未加硫ゴムを、半加硫し、前記ビードワイヤは、標準リムのリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満の範囲にある曲率半径Rで癖付けされてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項11】
環状のビードコアをビード部に埋設してなる空気入りタイヤの製造方法において、
1本以上のスチールコード製のビードワイヤを未加硫ゴムで被覆されてなるビードワイヤ被覆物を連続的に巻回して環状に形成する工程、
ビードコア形状を形成後、前記ビードワイヤを被覆する未加硫ゴムを半加硫する工程、
前記ビードワイヤを標準リムのリム径Dに対して0.05D以上0.5D未満の範囲にある曲率半径Rで癖付けする工程を備えることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−179136(P2011−179136A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44533(P2010−44533)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】