複合光活性吸着剤及びその製造法
【課題】 本発明は、産業廃棄物の塗料に含有している、ルチル型酸化チタンを光学活性化し、炭化竹・木質バイオマス資源との結合により、光触媒機能を持った吸着剤を創出することを目的とする。
【解決手段】 炭化竹・木質バイオマス資源を炭化し粉砕後廃塗料と混合賦活することによりルチル型酸化チタンの光学活性化を実現する。さらに上記吸着剤に小量のアナターゼ型酸化チタンを添加し、開発吸着剤の光学活性性能を増進し、本発明は産業廃棄物を利用して高付加価値吸着剤を供給する。
【解決手段】 炭化竹・木質バイオマス資源を炭化し粉砕後廃塗料と混合賦活することによりルチル型酸化チタンの光学活性化を実現する。さらに上記吸着剤に小量のアナターゼ型酸化チタンを添加し、開発吸着剤の光学活性性能を増進し、本発明は産業廃棄物を利用して高付加価値吸着剤を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造業に於ける塗装作業時発生する廃塗料と、炭化バイオマス資源との組合せ賦活により、廃塗料中に含まれるルチル型酸化チタンの光活性化を可能にし、これに少量のアナターゼ型酸化チタンを混合することによりルチル型酸化チタンの光触媒活性を高感度化するものである。また、これにより、バイオマス資源と廃塗料との組合せによる、ハイブリット光触媒吸着剤の製造を行い、該吸着剤への吸着物の光学分解を可能にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能光触媒機能をもつアナターゼ型酸化チタン微粒子は高価である。一方、安価なルチル型酸化チタンは塗料原料として使用され、光触媒材料としては使用されていなかった。また、バイオマス系廃棄物は、切断チップ処理化後家畜の敷き藁代用品、最近はウッド発電所の発電燃料に使用されているが、前者は安価で採算ベースに合わず、後者は大量の供給体制が必要であり、物流コストに問題がある。また、ルチル型酸化チタンを含有する産業廃棄物である廃塗料は、現在その処理に有効な方策がなく社会的な問題になっている。
【0003】
従来、環境浄化用や冷蔵庫の脱臭用の触媒として二酸化チタンを活性炭等に担持した光分解触媒が知られている。例えば特許文献1は、吸着、分解効率が高く、経済的に安価な光分解触媒、その製造方法及びそれを使用した有害化学成分の処理方法を提供すること、及びその製造方法として、バイオマス材料の細胞室内、細胞内腔及び細胞表面のいずれか1以上に、酸化チタン原料を複合化した酸化チタン複合化バイオマスを加熱により炭化処理することを開示している。しかし、前記技術には廃塗料に多量含有せる光活性を抑止したルチル型酸化チタンの活性化の記述は無い。
【特許文献1】特開2000−264495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、光触媒機能をもつ吸着剤には、高価なアナターゼ型酸化チタンが原油による海洋汚染、湖沼の環境汚染浄化等に使用されていた。本発明は、安価なルチル型チタニア、しかも廃塗料含まれるものを利用して、光触媒機能を持たせることにより、安価な光触媒吸着剤を提供するものである。
【0005】
現在社会的に問題になっている、産業廃棄物である廃塗料は、その処理に有効な方策が無い、同様に採算ベースで大量処理が困難な、竹材・間伐材等バイオマス系資源を組合せて高付加価値化を実現させようとする中で、廃塗料に含まれる光学活性を抑止されたルチル型酸化チタンの光学活性化を、バイオマス炭との組合せで実現可能にすることが、本発明の解決しようとする第一の課題である。
【0006】
更に上記吸着剤に微量のアナターゼ型酸化チタンを混合する事により更なる光活性化性能の向上を目指す事が第二の課題である。
【0007】
更に竹材等の微粉末を安価に製造し、廃塗料と均一混合を可能にし、混合物の光学活性化を可能にする製造プロセスの構築を第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これ等の問題を解決するために、本発明は、竹材、間伐材等バイオマス系資源の一次低温炭化材を粉砕し、これに廃塗料粉を均一混合したのち賦活処理し得たものである。
【0009】
本発明請求項1の発明は、竹や樹木の間伐材、さとうきびバイオマス等の植物系材料を炭化して得られた多孔質の一次低温炭化粉と廃塗料粉の均一混合物を水蒸気賦活することにより、光学活性を抑止された廃塗料中に含有するルチル型酸化チタン表面の露出と多孔性・結晶性の増加をもたらし、光学活性化させたものである。
竹や樹木の間伐材、さとうきびバイオマス等の植物系材料バイオマス系産業廃棄物を利用することができるので、廃塗料とバイオマス系産業廃棄物の二種類の産業廃棄物を利用して、吸着機能と光触媒機能を併せ持つハイブリッド型光活性吸着剤を得ることができる。
【0010】
また本発明請求項2の発明は、請求項1により得た吸着剤に1〜20重量パーセントの少量の光活性を有するアナターゼ型酸化チタンを添加することによりその光学活性性能を大幅に向上させたものである。
【0011】
また本発明請求項3、4は、それぞれ請求項1、2の複合光活性吸着剤の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、安価な光触媒吸着剤とその製造方法を提供することができるので、今まで事業採算が取れなかった環境浄化等の応用分野にも利用することができる。
【0013】
さらに本発明では処理困難であった廃塗料産業廃棄物の有効利用に道を開き、これを経済的量産処理と事業採算性に問題のある竹材、間伐材等バイオマス系材料との組合せにより、高複価値高採算性製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明実施の一形態を示すが、これに限定されるものではない。本発明では、バイオマス炭化物資源の持つ細胞由来の規則性のある多孔質構造による吸着特性と、酸化チタン光触媒との複合化により、有害物質をバイオマス炭化物資源で効率よくかつ選択的に吸着し、濃縮することで酸化チタン単独での分解反応より飛躍的に性能が向上する。即ち、本発明のバイオマス炭化物資源と光触媒とのハイブリッド化による協奏効果により、処理上問題となっている産業廃棄物が、高性能の環境浄化剤として利用が可能となる。
【0015】
間伐木材チップサイズは、長さ1mm〜50mm、幅1mm〜20mmくらいの大きさが良い。これより小いと、粉砕費増大の問題があり、大きいと炭化時間増大の問題がある。1次炭化条件として、温度の時間の兼ね合いであるが、炭化温度は400〜600℃が良い、炭化温度がこれより低いと炭化の進行が遅く、炭化温度がこれより高いと炭化歩留まりの減少し加熱エネルギーコストが増大するという問題がある。炭化時間は20分〜60分位が良い。炭化時間が短かすぎると不完全炭化により粉砕工程で木片が残留するという問題があり、長すぎると炭化歩留りの減少という問題がある。1次炭は、粉砕し微粉末状にしたのち、廃塗料と用途により適正重量比により混合調製するのが良い。廃塗料粉については、発生状態で使用することができ、粉砕する必要はない。粉砕しても構わないが、工程が増えるので特に必要は特にない。1次炭粉末と廃塗料粉末の混合比は重量比で、1:3〜3:1程度が良い。1次炭粉末がこの重量比より少ないと材料の焼結製品強度が下がりという問題があり、多すぎると光活性度が低下するという問題がある。賦活処理は、水蒸気賦活処理条件としては、賦活温度600〜1000℃、賦活時間20分〜2時間位がよい。賦活温度及び時間が不足すると、賦活が十分ではなく、過剰は無駄である。水蒸気賦活処理は、炭素の燃焼を避けるために、中性雰囲気か還元雰囲気行うことが望ましく、窒素ガス雰囲気で行った。アナターゼ型酸化チタンを添加すると、光学活性性能を増進させることができる。光触媒用として市販されているものであれば通常のもので良く、添加量は、重量%で1〜20%が良い。1%より少ないと、光学活性性能を増進効果が殆ど現れないし、20%より多いとコストが増す割には光活性増進効果が伸びない。
【実施例】
【0016】
[製品吸着剤の調製]
材料として間伐木材チップサイズは長さ約4mm〜15mm、巾2〜5mmのものを使用し、1次炭化条件として炭化温度:500℃、炭化時間:25分で炭化処理を行った。1次炭を磁性乳鉢にて粉砕し、粉末状廃塗料と重量比により混合調製し、賦活処理後に評価試験に供した。賦活処理条件としては、賦活温度800℃、賦活時間60分、窒素ガスによる還元雰囲気下で水蒸気賦活を行った。
【0017】
[評価試験の項目]
間伐材炭化物に付着させたルチル型酸化チタンの活性化評価、及び炭化繊維で形成された吸着構造内の有害物質の分解評価を行った。
[試料]
試料A:1次炭と廃塗料を50%:50%で混合し、賦活処理を800℃で60分行った粉末(図1参照)
試料a:試料AとST-01(表面積300m2/gの石原産業製アナターゼ型酸化チタン)を90%:10%で混合した試料
試料B:1次炭と廃塗料を20%:80%で混合した試料
試料C:1次炭と廃塗料を20%:80%で混合し賦活処理を800℃で60分行った試料
【0018】
[評価方法]
アセトアルデヒドの気相分解反応により光触媒活性を評価した。アセトアルデヒドの光触媒分解反応は、粉末0.1gをシャーレにとり、容器に入れ、排気して500ppmアセトアルデヒド/純空気を充填し、吸着平衡に達した後に500Wキセノンランプで光照射を行った。アセトアルデヒドの減少量およびCO2の発生量をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。参照触媒としてST-01における気相分解反応の結果を示す(図4参照)。
【0019】
[結果]
[試料A]
図5に、1次炭と廃塗料を50%:50%で混合させ、賦活処理を800℃で60分行った粉末(試料A)の結果を示す。500ppmのアセトアルデヒドは吸着だけで約10ppmになり、30分ほどでなくなってしまう。ST-01では吸着により約30ppmになり、アセトアルデヒドがなくなるのは60分ほどである。このことから、試料Aの吸着能力はST-01よりも高いことが分かった。CO2の発生量は8時間光照射しても120ppm程度しか発生せず、24時間光照射したあとでは約180ppmほどであった(図6参照)。ST-01と比較すると非常に活性が低いことが分かる。以上のことから、試料Aは吸着能力が非常に高く、光触媒活性は低いということが分かった。
[試料a]
試料Aの活性を向上させるために試料AとST-01を90%:10%で混合したサンプル(試料a)で気相分解反応を行った。アセトアルデヒドは吸着により全てなくなり試料Aよりも吸着能力が向上した(図7参照)。CO2も4時間の光照射により試料Aよりも発生しており、8時間光照射することで約280ppmとなり、光触媒活性は試料Aの2.5倍に向上した(図8参照)。
また、24時間光照射したあとで測定すると約450ppm発生しており、さらに長時間照射することアセとアルデヒドを全て分解する可能性も考えられる。加えて、ST-01との混合比の最適化により更なる活性向上が期待できる。
[試料B & 試料C]
次に1次炭と廃塗料を20%:80%で混合させた試料(試料B)と混合させ賦活処理を800℃で60分行った試料(試料C)の結果を示す。試料Bは吸着だけで約180ppmになったが8時間光照射を行っても約120ppmまでしか減少しなかった。CO2の発生は8時間光照射しても約50ppmしかなく、24時間光照射したあとも変化はみられなかった。試料Cは吸着だけで約20ppmになったが、8時間光照射してもあまり減少しなかった。CO2の発生は8時間光照射することで約80ppmになり、24時間後では約140ppmだった。
【0020】
この結果から賦活処理を行うことで粉末の吸着能力、触媒活性がともに向上されると考えられる。CO2については3時間ほどまで賦活なしの試料が多く発生しているが、これは発生量が少量であるための誤差であり、実際には同程度の発生量ではないかと考えている。
試料AとCを比較すると光触媒活性は試料Aのほうが高いことが分かる。このことから1次炭と塗料の混合比を変化させることで光触媒活性は変化し、1次炭の量を減らすことで光触媒活性は低下してしまうことが分かった。1次炭と塗料の混合比を最適化することで触媒活性は向上すると考えられる。
【0021】
廃塗料と廃材を混合した試料は焼成、賦活処理することによって活性化されハイブリット型の酸化チタンを製造し、光触媒活性を発現することが明らかになった。また、1次炭と塗料の混合比の最適値を探索し、さらにST-01などの結晶構造が異なる二酸化チタンとの混合比を最適化することで更なる活性向上の可能性を見出した。本発明は、現在地域社会で問題化されている、使用済み廃塗量と竹及び木質系バイオマス資源を原料にして、高付加価値製品の開発を達成し、地域新産業創生に資する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】試料AのSEM写真である。 ×500
【図2】廃棄塗料ハイブリット吸着体断面のSEM写真である。 ×80
【図3】廃棄塗料ハイブリット吸着体断面のSEM写真である。 ×300
【図4】実施例1の酸化チタンST-01を用いた気相分解反応を示す図である。
【図5】実施例1の試料Aを用いたアセトアルデヒドの減少量を示す図である。
【図6】実施例1の試料Aを用いたCO2の発生量を示す図である。
【図7】実施例1の試料aを用いたアセトアルデヒドの減少量を示す図である。
【図8】実施例1の試料aを用いたCO2の発生量を示す図である。
【図9】実施例1の試料B、Cを用いたアセトアルデヒドの減少量を示す図である。
【図10】実施例1の試料B、Cを用いたCO2の発生量を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造業に於ける塗装作業時発生する廃塗料と、炭化バイオマス資源との組合せ賦活により、廃塗料中に含まれるルチル型酸化チタンの光活性化を可能にし、これに少量のアナターゼ型酸化チタンを混合することによりルチル型酸化チタンの光触媒活性を高感度化するものである。また、これにより、バイオマス資源と廃塗料との組合せによる、ハイブリット光触媒吸着剤の製造を行い、該吸着剤への吸着物の光学分解を可能にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能光触媒機能をもつアナターゼ型酸化チタン微粒子は高価である。一方、安価なルチル型酸化チタンは塗料原料として使用され、光触媒材料としては使用されていなかった。また、バイオマス系廃棄物は、切断チップ処理化後家畜の敷き藁代用品、最近はウッド発電所の発電燃料に使用されているが、前者は安価で採算ベースに合わず、後者は大量の供給体制が必要であり、物流コストに問題がある。また、ルチル型酸化チタンを含有する産業廃棄物である廃塗料は、現在その処理に有効な方策がなく社会的な問題になっている。
【0003】
従来、環境浄化用や冷蔵庫の脱臭用の触媒として二酸化チタンを活性炭等に担持した光分解触媒が知られている。例えば特許文献1は、吸着、分解効率が高く、経済的に安価な光分解触媒、その製造方法及びそれを使用した有害化学成分の処理方法を提供すること、及びその製造方法として、バイオマス材料の細胞室内、細胞内腔及び細胞表面のいずれか1以上に、酸化チタン原料を複合化した酸化チタン複合化バイオマスを加熱により炭化処理することを開示している。しかし、前記技術には廃塗料に多量含有せる光活性を抑止したルチル型酸化チタンの活性化の記述は無い。
【特許文献1】特開2000−264495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、光触媒機能をもつ吸着剤には、高価なアナターゼ型酸化チタンが原油による海洋汚染、湖沼の環境汚染浄化等に使用されていた。本発明は、安価なルチル型チタニア、しかも廃塗料含まれるものを利用して、光触媒機能を持たせることにより、安価な光触媒吸着剤を提供するものである。
【0005】
現在社会的に問題になっている、産業廃棄物である廃塗料は、その処理に有効な方策が無い、同様に採算ベースで大量処理が困難な、竹材・間伐材等バイオマス系資源を組合せて高付加価値化を実現させようとする中で、廃塗料に含まれる光学活性を抑止されたルチル型酸化チタンの光学活性化を、バイオマス炭との組合せで実現可能にすることが、本発明の解決しようとする第一の課題である。
【0006】
更に上記吸着剤に微量のアナターゼ型酸化チタンを混合する事により更なる光活性化性能の向上を目指す事が第二の課題である。
【0007】
更に竹材等の微粉末を安価に製造し、廃塗料と均一混合を可能にし、混合物の光学活性化を可能にする製造プロセスの構築を第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これ等の問題を解決するために、本発明は、竹材、間伐材等バイオマス系資源の一次低温炭化材を粉砕し、これに廃塗料粉を均一混合したのち賦活処理し得たものである。
【0009】
本発明請求項1の発明は、竹や樹木の間伐材、さとうきびバイオマス等の植物系材料を炭化して得られた多孔質の一次低温炭化粉と廃塗料粉の均一混合物を水蒸気賦活することにより、光学活性を抑止された廃塗料中に含有するルチル型酸化チタン表面の露出と多孔性・結晶性の増加をもたらし、光学活性化させたものである。
竹や樹木の間伐材、さとうきびバイオマス等の植物系材料バイオマス系産業廃棄物を利用することができるので、廃塗料とバイオマス系産業廃棄物の二種類の産業廃棄物を利用して、吸着機能と光触媒機能を併せ持つハイブリッド型光活性吸着剤を得ることができる。
【0010】
また本発明請求項2の発明は、請求項1により得た吸着剤に1〜20重量パーセントの少量の光活性を有するアナターゼ型酸化チタンを添加することによりその光学活性性能を大幅に向上させたものである。
【0011】
また本発明請求項3、4は、それぞれ請求項1、2の複合光活性吸着剤の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、安価な光触媒吸着剤とその製造方法を提供することができるので、今まで事業採算が取れなかった環境浄化等の応用分野にも利用することができる。
【0013】
さらに本発明では処理困難であった廃塗料産業廃棄物の有効利用に道を開き、これを経済的量産処理と事業採算性に問題のある竹材、間伐材等バイオマス系材料との組合せにより、高複価値高採算性製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明実施の一形態を示すが、これに限定されるものではない。本発明では、バイオマス炭化物資源の持つ細胞由来の規則性のある多孔質構造による吸着特性と、酸化チタン光触媒との複合化により、有害物質をバイオマス炭化物資源で効率よくかつ選択的に吸着し、濃縮することで酸化チタン単独での分解反応より飛躍的に性能が向上する。即ち、本発明のバイオマス炭化物資源と光触媒とのハイブリッド化による協奏効果により、処理上問題となっている産業廃棄物が、高性能の環境浄化剤として利用が可能となる。
【0015】
間伐木材チップサイズは、長さ1mm〜50mm、幅1mm〜20mmくらいの大きさが良い。これより小いと、粉砕費増大の問題があり、大きいと炭化時間増大の問題がある。1次炭化条件として、温度の時間の兼ね合いであるが、炭化温度は400〜600℃が良い、炭化温度がこれより低いと炭化の進行が遅く、炭化温度がこれより高いと炭化歩留まりの減少し加熱エネルギーコストが増大するという問題がある。炭化時間は20分〜60分位が良い。炭化時間が短かすぎると不完全炭化により粉砕工程で木片が残留するという問題があり、長すぎると炭化歩留りの減少という問題がある。1次炭は、粉砕し微粉末状にしたのち、廃塗料と用途により適正重量比により混合調製するのが良い。廃塗料粉については、発生状態で使用することができ、粉砕する必要はない。粉砕しても構わないが、工程が増えるので特に必要は特にない。1次炭粉末と廃塗料粉末の混合比は重量比で、1:3〜3:1程度が良い。1次炭粉末がこの重量比より少ないと材料の焼結製品強度が下がりという問題があり、多すぎると光活性度が低下するという問題がある。賦活処理は、水蒸気賦活処理条件としては、賦活温度600〜1000℃、賦活時間20分〜2時間位がよい。賦活温度及び時間が不足すると、賦活が十分ではなく、過剰は無駄である。水蒸気賦活処理は、炭素の燃焼を避けるために、中性雰囲気か還元雰囲気行うことが望ましく、窒素ガス雰囲気で行った。アナターゼ型酸化チタンを添加すると、光学活性性能を増進させることができる。光触媒用として市販されているものであれば通常のもので良く、添加量は、重量%で1〜20%が良い。1%より少ないと、光学活性性能を増進効果が殆ど現れないし、20%より多いとコストが増す割には光活性増進効果が伸びない。
【実施例】
【0016】
[製品吸着剤の調製]
材料として間伐木材チップサイズは長さ約4mm〜15mm、巾2〜5mmのものを使用し、1次炭化条件として炭化温度:500℃、炭化時間:25分で炭化処理を行った。1次炭を磁性乳鉢にて粉砕し、粉末状廃塗料と重量比により混合調製し、賦活処理後に評価試験に供した。賦活処理条件としては、賦活温度800℃、賦活時間60分、窒素ガスによる還元雰囲気下で水蒸気賦活を行った。
【0017】
[評価試験の項目]
間伐材炭化物に付着させたルチル型酸化チタンの活性化評価、及び炭化繊維で形成された吸着構造内の有害物質の分解評価を行った。
[試料]
試料A:1次炭と廃塗料を50%:50%で混合し、賦活処理を800℃で60分行った粉末(図1参照)
試料a:試料AとST-01(表面積300m2/gの石原産業製アナターゼ型酸化チタン)を90%:10%で混合した試料
試料B:1次炭と廃塗料を20%:80%で混合した試料
試料C:1次炭と廃塗料を20%:80%で混合し賦活処理を800℃で60分行った試料
【0018】
[評価方法]
アセトアルデヒドの気相分解反応により光触媒活性を評価した。アセトアルデヒドの光触媒分解反応は、粉末0.1gをシャーレにとり、容器に入れ、排気して500ppmアセトアルデヒド/純空気を充填し、吸着平衡に達した後に500Wキセノンランプで光照射を行った。アセトアルデヒドの減少量およびCO2の発生量をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。参照触媒としてST-01における気相分解反応の結果を示す(図4参照)。
【0019】
[結果]
[試料A]
図5に、1次炭と廃塗料を50%:50%で混合させ、賦活処理を800℃で60分行った粉末(試料A)の結果を示す。500ppmのアセトアルデヒドは吸着だけで約10ppmになり、30分ほどでなくなってしまう。ST-01では吸着により約30ppmになり、アセトアルデヒドがなくなるのは60分ほどである。このことから、試料Aの吸着能力はST-01よりも高いことが分かった。CO2の発生量は8時間光照射しても120ppm程度しか発生せず、24時間光照射したあとでは約180ppmほどであった(図6参照)。ST-01と比較すると非常に活性が低いことが分かる。以上のことから、試料Aは吸着能力が非常に高く、光触媒活性は低いということが分かった。
[試料a]
試料Aの活性を向上させるために試料AとST-01を90%:10%で混合したサンプル(試料a)で気相分解反応を行った。アセトアルデヒドは吸着により全てなくなり試料Aよりも吸着能力が向上した(図7参照)。CO2も4時間の光照射により試料Aよりも発生しており、8時間光照射することで約280ppmとなり、光触媒活性は試料Aの2.5倍に向上した(図8参照)。
また、24時間光照射したあとで測定すると約450ppm発生しており、さらに長時間照射することアセとアルデヒドを全て分解する可能性も考えられる。加えて、ST-01との混合比の最適化により更なる活性向上が期待できる。
[試料B & 試料C]
次に1次炭と廃塗料を20%:80%で混合させた試料(試料B)と混合させ賦活処理を800℃で60分行った試料(試料C)の結果を示す。試料Bは吸着だけで約180ppmになったが8時間光照射を行っても約120ppmまでしか減少しなかった。CO2の発生は8時間光照射しても約50ppmしかなく、24時間光照射したあとも変化はみられなかった。試料Cは吸着だけで約20ppmになったが、8時間光照射してもあまり減少しなかった。CO2の発生は8時間光照射することで約80ppmになり、24時間後では約140ppmだった。
【0020】
この結果から賦活処理を行うことで粉末の吸着能力、触媒活性がともに向上されると考えられる。CO2については3時間ほどまで賦活なしの試料が多く発生しているが、これは発生量が少量であるための誤差であり、実際には同程度の発生量ではないかと考えている。
試料AとCを比較すると光触媒活性は試料Aのほうが高いことが分かる。このことから1次炭と塗料の混合比を変化させることで光触媒活性は変化し、1次炭の量を減らすことで光触媒活性は低下してしまうことが分かった。1次炭と塗料の混合比を最適化することで触媒活性は向上すると考えられる。
【0021】
廃塗料と廃材を混合した試料は焼成、賦活処理することによって活性化されハイブリット型の酸化チタンを製造し、光触媒活性を発現することが明らかになった。また、1次炭と塗料の混合比の最適値を探索し、さらにST-01などの結晶構造が異なる二酸化チタンとの混合比を最適化することで更なる活性向上の可能性を見出した。本発明は、現在地域社会で問題化されている、使用済み廃塗量と竹及び木質系バイオマス資源を原料にして、高付加価値製品の開発を達成し、地域新産業創生に資する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】試料AのSEM写真である。 ×500
【図2】廃棄塗料ハイブリット吸着体断面のSEM写真である。 ×80
【図3】廃棄塗料ハイブリット吸着体断面のSEM写真である。 ×300
【図4】実施例1の酸化チタンST-01を用いた気相分解反応を示す図である。
【図5】実施例1の試料Aを用いたアセトアルデヒドの減少量を示す図である。
【図6】実施例1の試料Aを用いたCO2の発生量を示す図である。
【図7】実施例1の試料aを用いたアセトアルデヒドの減少量を示す図である。
【図8】実施例1の試料aを用いたCO2の発生量を示す図である。
【図9】実施例1の試料B、Cを用いたアセトアルデヒドの減少量を示す図である。
【図10】実施例1の試料B、Cを用いたCO2の発生量を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタンを含有する廃塗料を、植物系材料を炭化して得られた多孔質炭素粉末と混合後、水蒸気賦活処理することにより、該ルチル型酸化チタンを光学活性化することを特徴とする多孔質炭素とルチル型酸化チタンを含む複合光活性吸着剤
【請求項2】
請求項1記載の複合光活性吸着剤に光活性を有するアナターゼ型酸化チタンを1〜20重量パーセント添加したことを特徴とする光学活性性能を増進させた複合光活性吸着剤
【請求項3】
ルチル型酸化チタンを含有する廃塗料を、植物系材料を炭化して得られた多孔質炭素粉末と混合後、水蒸気賦活処理することにより、該ルチル型酸化チタンを光学活性化することを特徴とする多孔質炭素とルチル型酸化チタンを含む複合光活性吸着剤の製造方法
【請求項4】
光学活性性能を増進させる手段として、請求項5記載の複合光活性吸着剤に光活性を有するアナターゼ型酸化チタンを1〜20重量パーセント添加することを特徴とする光学活性性能を増進させた複合光活性吸着剤の製造方法
【請求項1】
ルチル型酸化チタンを含有する廃塗料を、植物系材料を炭化して得られた多孔質炭素粉末と混合後、水蒸気賦活処理することにより、該ルチル型酸化チタンを光学活性化することを特徴とする多孔質炭素とルチル型酸化チタンを含む複合光活性吸着剤
【請求項2】
請求項1記載の複合光活性吸着剤に光活性を有するアナターゼ型酸化チタンを1〜20重量パーセント添加したことを特徴とする光学活性性能を増進させた複合光活性吸着剤
【請求項3】
ルチル型酸化チタンを含有する廃塗料を、植物系材料を炭化して得られた多孔質炭素粉末と混合後、水蒸気賦活処理することにより、該ルチル型酸化チタンを光学活性化することを特徴とする多孔質炭素とルチル型酸化チタンを含む複合光活性吸着剤の製造方法
【請求項4】
光学活性性能を増進させる手段として、請求項5記載の複合光活性吸着剤に光活性を有するアナターゼ型酸化チタンを1〜20重量パーセント添加することを特徴とする光学活性性能を増進させた複合光活性吸着剤の製造方法
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−307461(P2008−307461A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156882(P2007−156882)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]