説明

複合冷却装置

【課題】簡素化した構成で、被冷却物を短時間で斑無く低温冷却することを可能にするとともに冷却品質を向上させることである。
【解決手段】 冷却室2内の被冷却物8を真空冷却する真空冷却手段4と、前記被冷却物8を冷風冷却する冷風冷却手段5と、前記真空冷却手段4および前記冷風冷却手段5を制御する制御器37を備える複合冷却装置であって、前記真空冷却手段4は減圧手段35によって構成され、この前記減圧手段35と前記冷却用熱交換器14に冷水製造装置17から冷水を供給するように構成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空冷却と冷風冷却とを可能とした複合冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を冷却する装置として、食品を冷風により冷却するブラストチラーと称される冷風冷却装置と、食品を真空冷却する真空冷却装置とが知られている。
【0003】
食品の冷却は、調理後直ちに提供される食品以外は病原菌の増殖を抑制するために10℃以下で管理することが望ましい(厚生労働省 大量調理施設衛生マニュアル)とされている。また、コンビニエンスストアに弁当などの調理食品を供給している食品加工会社では独自の安全基準として5℃までの冷却を実施している。周知のように、真空冷却手段は、被冷却物を収容した冷却室を真空吸引し、減圧することによって飽和蒸気温度を低下させ、前記被冷却物内の水分を蒸発させることにより、その際の気化潜熱を利用して前記被冷却物を冷却するものである。このため、被冷却物によっては、前記真空冷却だけで5℃まで冷却を行うことで被冷却物中の水分が失われ、被冷却物の歩留まりが低下する、食味や外観を損なうといった課題がある。
【0004】
一方、前記冷風冷却装置による冷却は、冷風と食品表面との対流伝熱による冷却が主のため、冷却時間が、たとえば90分と長時間を要する課題があり、かつ食品の表面と中心部とを均一に冷却することが困難である。
【0005】
さらに、チルド域(0℃付近)まで短時間の冷却を可能にするよう真空冷却と冷風冷却とを可能とした特許文献1や特許文献2に記載の複合冷却装置が知られている。この複合冷却装置は、真空冷却により冷却した後、冷風冷却によりチルド域まで冷却するものである。
【0006】
このように、被冷却物の歩留まりを向上させ、品質を高く維持して、食品を5℃まで冷却するには、チルド域まで冷却が可能となる真空冷却手段と冷風冷却手段を複合させた装置を用いなければならないが、チルド域までの冷却能力を持っているため、本来、目標とする冷却温度5℃に対しては能力が過大であって、冷風手段に冷凍機を用いなければならず、真空冷却手段の装置や冷却能力が大掛かりなものにしなければならないといった課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−318051公報
【特許文献2】特開2007−192459公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この出願の発明者等は、前記の課題を解決すべく、研究開発を重ねた結果、真空冷却手段と冷風冷却手段のそれぞれの冷却特性を活かすことにより、5℃までの冷却を簡素化した構成で、安価に実現可能であることを見出した。
【0009】
この発明が解決しようとする主たる課題は、複合冷却装置の構成を簡素化しても短時間で温度の斑無く5℃の冷却を可能にするとともに、冷風冷却後に真空冷却工程を行うことによって、被冷却物の歩留まりの向上、から揚げ冷却時のしっとり感、ゼラチン冷却の白濁防止など被冷却物の品質向上を得ることである。また、付随的な課題としては、減圧手段運転、冷却手段に要するコスト(ランニングコスト)低減に加えて、被冷却物の冷却品質を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、冷却室内の被冷却物を真空冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内の空気を冷却用熱交換器によって冷風を発生させて前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却手段と、前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段を制御する制御器とを備える複合冷却装置であって、
前記真空冷却手段は、減圧手段によって構成され、この前記減圧手段と前記冷却用熱交換器に1台の冷水製造装置から冷水を供給するように構成したことを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、冷風真空複合冷却装置において、減圧手段、冷風冷却手段に用いられる冷水供給手段を冷水製造装置(チラー)として、前記減圧手段に供給する冷却水と冷却室内の冷風冷却手段に用いられる熱交換器へ冷水を供給するようにしたので、被冷却物の品質向上とともに、装置の簡素化を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の前記複合冷却装置における前記減圧手段が、蒸気エゼクタと、前記蒸気エゼクタの下流側に凝縮用熱交換器を設け、さらに前記凝縮用熱交換器の下流側に水封式真空ポンプとを設けた構成であることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記減圧手段の構成を蒸気エゼクタと、水封式真空ポンプと、蒸気エゼクタと真空ポンプの間に設けた凝縮用熱交換器との組み合わせで構成したので、短時間で5℃まで冷却が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複合冷却装置の構成を簡素化するとともに被冷却物を冷却品質を損なうことなく短時間で品温の斑なく5℃まで冷却することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、被冷却物を冷風冷却と真空冷却とによって冷却可能な複合冷却装置に適用される。
【0016】
(実施の形態)
この発明の実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態は、冷却室内の被冷却物を真空冷却する真空冷却手段と、前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却手段と、前記真空冷却手段および冷風冷却手段を制御する制御器を備える複合冷却装置であって、前記減圧手段に構成される凝縮用熱交換器と、前記冷風冷却手段に構成される前記冷却用熱交換器に一つの冷水製造装置から冷水を供給するように構成し、前記制御器は、冷却プログラムに基づき、前記冷風冷却手段による冷却の後に、前記真空冷却手段によって5℃までの冷却を順次行うことを特徴としている。
【0017】
この実施の形態において、前記真空冷却手段による冷却は、被冷却物の周囲の圧力を冷却物の温度(以下、品温という。)に相当する圧力以下とすることで、被冷却物内の水分を蒸発させることにより被冷却物を冷却するものである。この冷却は、被冷却物の表面と中心部との温度差が少ない均一冷却である。この真空冷却特性は、前記真空冷却手段により決まる時間−圧力特性であり、品温は、初期工程を除いてほぼこの真空冷却特性に沿ったカーブを描いて指数関数的に低下して行く。
【0018】
また、前記冷風冷却手段の冷風冷却特性は、被冷却物の表面において周囲の空気と間接熱交換することによる冷却である。このため、被冷却物を短時間では均一冷却はできない。また、冷風冷却特性は、前記冷風冷却手段による時間−品温特性であり、品温の低下の傾きが前記真空冷却特性のそれより緩かな特性曲線としている。
【0019】
そして、前記制御器は、予め記憶した冷却プログラムに基づき、前記冷風冷却手段による冷風冷却を行った後に、前記真空冷却手段による真空冷却工程を行う。この実施の形態の冷却プログラムは、被冷却物を5℃まで短時間で冷却するプログラムを含んでいる。前記冷風冷却は、前記冷却室に載置された被冷却物の粗熱(例えば、10℃までの冷却)を取る。これにより、真空冷却のみで冷却を行う場合に比較して、被冷却物の持つ水分の蒸発量を少なくすることができるため、から揚げのしっとり感の向上ややわらかさが得られるとともに、冷風冷却手段による粗熱取りによって真空冷却開始温度が低くなることから、真空冷却による沸騰量が抑制されて、ゼラチン質を持つ食材で真空冷却時に起こる白濁を抑えることができるなど、被冷却物の品質向上を図ることができる。
【0020】
前記の冷風冷却工程から真空冷却工程への切り換えタイミングは、被冷却物に挿入した品温センサの検出温度や冷却槽内の検出温度に基づいて行われるが、好ましくは、品温センサを使用する場合には、品温センサの検出温度と冷却槽内の温度の両方が所定の切り替え温度まで低下したことを判定して、切り換えを行う方法や、品温センサが使用できない場合には、冷却槽内の温度が所定の切り換え温度まで下がったことを検出し、かつ、予め定めた設定時間が経過した時をもって切り換える方法が取られる。
【0021】
そして、この冷風冷却工程から真空冷却工程へ切り換えることによって、被冷却物の温度を均一に5℃まで冷却させることができる。
【0022】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記冷却室は、被冷却物を収容する密閉空間を形成するとともに、被冷却物を出し入れすることができるものであれば、その形式、種類および大きさは問わない。この冷却室は、冷却槽,冷却区画、冷却容器などと称することができる。前記被冷却物は、好ましくは食材とするが、これに限定されるものではない。
【0023】
前記冷風冷却手段は、被冷却物を冷風により冷却するものである。この冷風冷却手段は、好ましくは、前記冷却室内の空気を冷却する冷却用熱交換器と、前記冷却室内の空気を循環させるファンと、被冷却物と前記冷却用熱交換器との間に前記ファンによって空気の循環流が形成されるように循環路を形成する循環路形成部材とから構成される。前記循環路は、好ましくは、前記熱交換器および前記ファンを前記冷却室内に配置することで、前記冷却室内に形成するが、前記熱交換器および/または前記ファンを前記冷却室外へ配置し、これらと前記冷却室とを通風ダクトにてつなぐことで、循環路を構成することができる。
【0024】
前記真空冷却手段は、前記冷却室と接続される減圧ラインと、この減圧ライン中に設けられる減圧手段とを含んで構成される。この減圧手段は、蒸気エゼクタ,蒸気凝縮用の熱交換器および水封式真空ポンプ、あるいは水封式真空ポンプに代えて水エゼクタを組み合わせたものとすることができる。また、凝縮用熱交換器とその下流側に水エゼクタを組み合わせた構成でもよい。
【0025】
前記冷却用熱交換器は、被冷却物を冷風冷却により10℃程度まで冷却可能な低温とすることができる熱交換器であればよく、冷水製造機(チラー)から供給される冷水と間接熱交換により前記冷却室内の空気を冷却する熱交換器から構成する。前記冷水製造機は、蓄氷型冷水製造装置とすることができる。また、前記被冷却物の所望される冷却温度が20℃程度(例えば、米飯の冷却)の場合は、クーリングタワーを用いた冷水とすることもできる。
【0026】
前記制御器は、予め記憶した前記冷却プログラムにより前記冷風冷却手段および前記真空冷却手段の作動を制御する。前記冷却プログラムには、前記冷風冷却手段による冷風冷却を行った後に、前記真空冷却手段による真空冷却工程を行うプログラムを少なくとも含んでいる。このプログラムの概要は前記した通りである。また、この冷却プログラムには、冷風冷却および真空冷却を順次行うプログラムに加えて、真空冷却のみを行うプログラムを含ませ、これらのプログラムを被冷却物の種類や前記設定冷却温度に応じて選択的に実行するように構成することができる。
【実施例】
【0027】
以下、この発明の複合冷却装置の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例の概略構成図である。
【0028】
前記実施例の複合冷却装置1は、冷風冷却と真空冷却とを行うことができる冷却装置であり、種々の冷却パターンを選択的に実行できるとともに、品温を5℃まで短時間で冷却できる特徴を有している。
【0029】
ここで、制御手段37は、図示を省略しているが、複合冷却装置1を予め記憶したプログラムにより前記冷風冷却手段5および前記真空冷却手段4の作動を制御するために真空減圧ライン35、復圧ライン36、排気ライン2、冷水供給ライン3に設けられた各バルブと、冷却室2内の温度を検出するための冷却室温度センサ9と、品温センサ40と、冷水温度センサ18と、冷水製造装置17などが電気的に接続されている。
【0030】
前記複合冷却装置1は、冷却室2と、前記冷却室2内の被冷却物8を冷風冷却する冷風冷却手段5と、前記被冷却物8を真空冷却する真空冷却手段4と、前記冷風冷却手段5および前記真空冷却手段4とを制御する制御器37とを主要部として備える。そして、前記制御器37には、ソフトウエアによる冷却室温度センサ9および/または品温センサ40の入力、且つ、タイマー38を備えている。前記制御器37は、予め記憶した冷却プログラムに基づき、前記冷風冷却工程の実施と前記冷風冷却工程の終了判定、前記真空冷却工程の実施と前記真空冷却工程の終了判定を行い、前記冷風冷却工程と前記真空冷却の切り換えあるいは前記冷風冷却工程または前記真空冷却工程がそれぞれ単独運転の設定である場合には、それぞれの冷却運転工程に応じた運転終了を行う制御等を行うよう構成されている。
【0031】
前記冷風冷却工程は、前記被冷却物8に挿入された品温センサ40の検出温度および前記冷却室2の温度を検出する冷却室温度センサ9の検出温度の両方が設定温度となったときを終了判定するようにしている。さらに、前記被冷却物8によっては、前記品温センサ40を用いない場合や前記品温センサ40を前記被冷却物8に挿入し忘れる場合があるため、前記冷風冷却工程の終了を、前記冷却室温度センサ9が設定温度まで低下したことを検出し、かつ運転開始からの設定時間を経過した場合でも判定できるようにしている。
【0032】
前記真空冷却工程は、前記被冷却物8に挿入された品温センサ40の検出温度が設定温度に到達し、かつ前記冷却室2の圧力を検出する冷却室圧力センサ6の検出圧力から換算される飽和温度が設定温度となり、または/かつ、一定時間経過すると終了判定する。さらに、前記被冷却物8によって、冷却運転途中で前記品温センサ40が前記被冷却物8から抜け落ちた場合や前記冷却室2内の真空度が所定圧力まで充分に低下しなかった場合として、運転開始からの設定時間を経過した場合でも判定できるようにしている。
【0033】
さらに、前記真空冷却工程は、前記被冷却物8によっては、前記品温センサ40を用いない場合がある。このため、前記真空冷却工程を、前記冷却室圧力センサ6から換算される飽和温度が設定温度となり、または/かつ、一定時間経過すると終了判定するようにしている。また、冷却運転途中で前記品温センサ40が前記被冷却物8から抜け落ちた場合や前記冷却室2内の真空度が所定圧力まで充分に低下しなかった場合として、運転開始からの設定時間を経過した場合でも判定できるようにしている。
【0034】
つぎに、この実施例の各構成要素について説明する。前記冷却室2は、前記被冷却物8を収容する密閉空間を形成し、前記被冷却物8を出し入れするための開口とこれを開閉する扉(いずれも図示省略)を備えている。また、前記冷却室2は、区画壁34により内部を上部の第一領域28と下部の第二領域33とに区画している。前記第一領域28には、前記被冷却物8が収容され、前記第二領域33には、前記冷風冷却手段5の一部を構成する冷却用熱交換器14が配置されている。前記被冷却物8は、容器に収容した食材である。
【0035】
前記冷却用熱交換器14は、冷水製造装置17からの冷水を供給することにより冷却作用をなす周知の熱交換器である。
【0036】
そして、前記冷風冷却手段5は、前記被冷却物8を冷風により冷却するものである。この冷風冷却手段5は、前記冷却室2内の空気を冷却するための前記冷却用熱交換器14と、前記冷却室2外に配置されるモータ16によって駆動される空気循環手段としてファン15とを含む。そして、前記冷却室2の構成壁と前記区画壁34との間に開口(または隙間)7、7を設けて、前記冷却室2内に空気の循環路(符号省略)を形成することにより、冷風冷却機能をなすように構成している。この実施例では、前記区画壁34は前記冷却室2の構成壁とで前記循環路構成部材を構成する。
【0037】
前記真空冷却手段4は、具体的には、つぎのように構成される。すなわち、前記真空冷却手段4は、前記冷却室2と接続される減圧ライン35と、この減圧ライン35中に設けられる減圧器としての蒸気エゼクタ31とその下流側に流入する蒸気を凝縮させるための凝縮用熱交換器30と、さらに、その下流側に水封式の真空ポンプ29とを含んで構成される。
【0038】
この真空冷却手段4は、前記蒸気エゼクタ31と前記真空ポンプ29を作動(運転)させることにより真空冷却工程を実行するように構成される。前記減圧ライン35には、必要に応じて前記冷却室2方向への流れを阻止する逆止弁27を設けている。
【0039】
そして、前記冷風用熱交換器14、前記凝縮用熱交換器30、および水封式真空ポンプ29へは、被冷却物8の温度を均一にかつ確実に5℃以下まで冷却させるために前記冷水製造装置17から、約0℃〜20℃の冷水を供給するように構成される。
【0040】
また、前記冷却室2は、真空冷却工程後に前記冷却室2内を負圧から大気圧に復圧する復圧手段36を備えている。この復圧手段36は、前記冷却室2と接続される復圧ライン39と、この復圧ライン39途中に設ける復圧弁11および除菌フィルター10とを含んで構成される。前記復圧弁11は、復圧速度を調整するために開度が調整可能な弁とするが、開閉のみの弁とすることができる。また、前記復圧ライン39には、前記冷却室2内から外方向への流れを阻止する逆止弁(図示省略)を設けることができる。
【0041】
前記制御器37は、予め記憶した前記冷却プログラムにより前記冷風冷却手段5、前記真空冷却手段4の作動を制御するように構成されている。
【0042】
この冷却プログラムなどの制御を行うために、前記被冷却物8の品温を検出する前記品温センサ40,前記冷却室2内の温度を検出する前記冷却室温度センサ9,前記冷却室2内の圧力を検出する前記冷却室圧力センサ6、前記冷水製造装置17の冷水出口温度を検出する冷水出口温度センサ18を備えている。これらのセンサは、前記制御器37と接続されて、前記冷水製造装置17,前記モータ16,前記減圧手段4、前記復圧手段36などを制御する。
【0043】
前記冷却プログラムには、前記冷風冷却手段5による冷風冷却工程を行った後に、前記真空冷却手段4による真空冷却工程を行うプログラム(第一プログラム),前記真空冷却工程のみを行うプログラム(第二プログラム)を含ませている。これらのプログラムは、使用者による選択,または被冷却物8の種類に応じて自動的に選択的に実行されるように構成している。
【0044】
以下に、この実施例の動作を図1に基づき以下に説明する。
【0045】
<準備段階>
使用者は、前記扉を開いて前記冷却室2内へ被冷却物8を収容し、前記扉を閉じて密閉状態とする。この状態では、前記モータ16,前記真空ポンプ29,前記冷却用熱交冷水供給バルブ20は、全て作動(運転)停止状態である。前記冷水製造装置17は、予め作動状態としておくことができる。
【0046】
<冷却プログラムの選択>
この状態で、使用者は、運転スイッチ(図示省略)により運転を開始した後、前記第一〜前記第二プログラムを選択する。この選択は、冷却開始当初の品温(以下、初期品温という。)および到達すべき冷却温度(設定冷却温度)と被冷却物8の種類とに応じて行うことができる。
【0047】
<第一プログラム:冷風冷却→真空冷却切換>
前記第一プログラムは、初期品温が約90℃で、設定冷却温度が約5℃であって、被冷却物8が水分を含むが、その水分の蒸発量が多くなると食材の品質(味)が低下するものや、低圧沸騰によって外観が悪くなるゼラチンを含む食材の冷却に適している。今、初期品温を90℃,設定冷却温度を5℃とする。
【0048】
(冷風冷却工程)
この第一プログラムが選択されると、図2の処理手順が実行される。まず、S1にて冷風冷却が行われる。この冷風冷却工程は、次のように行われる。前記冷却用熱交冷水供給バルブ20を開き、前記冷水製造装置17および前記ファン15を作動させる。これにより、前記冷却室2内において前記ファン15→前記冷却用熱交換器14→前記開口7→前記被冷却物8→前記開口7→前記ファン15の一点破線矢視の冷風循環流が形成される。この循環流により、前記冷却室2内の空気は、前記冷却用熱交換器14により冷却されて温度低下し、前記被冷却物8を間接熱交換により冷却する。こうした冷風冷却により、品温が約40℃となるまで冷却される。品温が40℃まで低下したことを前記品温センサ40により検出し、または/かつ、前記冷却室内温度センサの検出温度が40℃以下を検出すると、前記冷風冷却工程を終了する。
【0049】
前記冷風冷却工程における終了判定は、前記被冷却物8によっては、前記品温センサ40を用いない場合や前記品温センサ40を前記被冷却物8に挿入し忘れる場合があるため、前記冷風冷却工程の終了を、前記冷却室温度センサ9が設定温度まで低下したことを検出し、かつ運転開始からの設定時間を経過した場合でも判定できるようにしている。
【0050】
この冷風冷却工程においては、前記被冷却物8および前記冷却用熱交換器14の表面から凝縮水(ドレン)が発生し、前記冷却室2内底部に貯留する。このドレンは、つぎのようにして排出される。前記開閉弁12を開き、前記真空ポンプ29を作動させる。すると、前記ドレンは、前記排気ライン41を通して前記冷却室2外へ排出される。
【0051】
(真空冷却工程)
前記冷風冷却工程が終了すると、S3へ移行して、真空冷却工程が行われる。この真空冷却工程は、つぎのように行われる。冷却用熱交冷水供給バルブ20を閉じて、前記冷却用熱交換器14への冷水供給を停止し、凝縮用熱交冷水供給バルブ25を開き、凝縮用熱交冷水供給ライン24から凝縮用熱交換器30へ冷水を供給する。前記復圧弁11を閉じて、前記真空ポンプ29を作動させる。設定圧力に到達するか一定時間経過後、エゼクタ給蒸弁13を開いて駆動用蒸気を蒸気エゼクタ31へ供給し、封水供給バルブ26を開き、前記真空ポンプ29を作動させる。すると、前記冷却室2内の気体は、前記減圧ライン35を通して室外へ排出される。前記冷却室2内の圧力は、前記真空冷却特性に沿って低下し、この圧力低下に従って、被冷却物8が持つ水分の蒸発により、被冷却物8の温度が40℃から低下して行く。そして、前記冷却室圧力センサ6の検出圧力が所定の圧力に到達し、または/かつ、前記品温センサ40の検出温度が目標温度に達する、または/かつ、一定時間経過すると前記真空冷却工程が終了する(S5)。このとき品温は、約5℃である。
【0052】
前記真空冷却工程は、前記被冷却物8に挿入された前記品温センサ40の検出温度が設定温度に到達し、または/かつ、前記冷却室2の圧力を検出する冷却室圧力センサ6の検出圧力から換算される飽和温度が設定温度となったとき、または/かつ、一定時間経過すると終了判定する。さらに、前記被冷却物8によって、冷却運転途中で前記品温センサ40が前記被冷却物8から抜け落ちた場合や前記冷却室2内の真空度が所定圧力まで充分に低下しなかった場合として、運転開始からの設定時間を経過した場合でも判定できるようにしている。
【0053】
さらに、前記真空冷却工程は、前記被冷却物8によっては、前記品温センサ40を用いない場合がある。このため、前記真空冷却工程を、前記冷却室圧力センサ6から換算される飽和温度が設定温度となったとき、または/かつ、一定時間経過すると終了判定するようにしている。また、冷却運転途中で前記品温センサ40が前記被冷却物8から抜け落ちた場合や前記冷却室2内の真空度が所定圧力まで充分に低下しなかった場合として、運転開始からの設定時間を経過した場合でも判定できるようにしている。
【0054】
(復圧工程)
前記復圧工程は、前記復圧弁11を開くことで行う。これにより、外気が前記復圧ライン36を通して前記冷却室2内へ導入され、前記冷却室2内が大気圧に復帰する(S6)。この復圧工程は、前記冷却室圧力センサ6により検出され、大気圧を検出すると、復圧工程を終了する。
【0055】
(冷却運転終了)
この冷風冷却工程が終了すると、使用者は、前記運転スイッチを操作して、冷却運転を停止して、前記冷却室2内の被冷却物8を取り出すことができる。
【0056】
<第二プログラム:真空冷却>
前記第四プログラムは、初期品温が70℃以下で、前記設定冷却温度が約10℃以上であって、被冷却物3が水分を含み、粘度が低く、その水分が蒸発可能な食材の冷却に適している。今、初期温度を65℃とし、前記設定冷却温度を10℃とする。
【0057】
この第二プログラムが選択されると、図3に示すように、真空工程S21→復圧工程S25が順次実行される。
【0058】
この第二プログラムにおいて、前記第一プログラムと異なるのは、図2の冷風冷却工程S2、S3を削除し、真空冷却工程S3の終了をT3℃=10℃、P1Pa=123Paとなった、または/かつ、一定時間経過した後のタイミングとしている点である。
【0059】
以下の説明においては、図3の真空冷却工程S21、復圧工程S23は、それぞれ図2の真空冷却工程S3、復圧工程S5に相当するので、その説明を省略する。また、真空冷却工程S3における前記凝縮用熱交給水バルブ25の動作、前記冷水製造装置17から前記凝縮用熱交換器30への冷水供給および遮断、並びに前記封水供給バルブ26の開閉動作、前記真空ポンプ29の作動などのタイミング、復圧動作への移行判定条件と復圧工程の動作は、それぞれ第一プログラムの前記真空冷却工程S3および復圧工程S5と同じである。
【0060】
図3において、前記真空冷却工程S21は、図2の前記第一プログラムと同様に行われる。前記真空冷却工程S21において、前記品温センサ40による検出温度が10℃になり、または/かつ、冷却室圧力センサ6の検出圧力が123Paを判定するか、または/かつ、一定時間経過した後に前記真空冷却工程S21を終了し、前記復圧工程S23を実行して、冷却運転を終了する。
【0061】
この実施例によれば、冷風真空冷却複合冷却装置において、減圧手段、冷風冷却手段に用いられる冷水供給手段を冷水製造装置(チラー)として、前記減圧手段に供給する冷却水と冷却室内の冷風冷却手段に用いられる熱交換器へ冷水を供給するようにしたので、被冷却物の品質向上とともに、装置の簡素化を図ることができ、前記減圧手段の構成を蒸気エゼクタと、水封式真空ポンプと、蒸気エゼクタと真空ポンプの間に設けた凝縮用熱交換器との組み合わせで構成したので、短時間で5℃まで斑無く冷却を可能とすることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施例の概略構成を説明する説明図である。
【図2】同実施例の冷却プログラム(第一プログラム)を説明するフローチャート図である。
【図3】同実施例の冷却プログラム(第二プログラム)を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0063】
1 複合冷却装置
2 冷却室
3 冷水供給ライン
4 真空冷却手段
5 冷風冷却手段
8 被冷却物
14 冷却用熱交換器
15 冷却用ファン
17 冷水製造装置
29 水封式真空ポンプ
30 凝縮用熱交換器
31 蒸気エゼクタ
35 減圧手段
37 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却室内の被冷却物を真空冷却する真空冷却手段と、前記冷却室内の空気を冷却用熱交換器によって冷風を発生させて前記被冷却物を冷風冷却する冷風冷却手段と、前記真空冷却手段および前記冷風冷却手段を制御する制御器とを備える複合冷却装置であって、
前記真空冷却手段は、減圧手段によって構成され、この前記減圧手段と前記冷却用熱交換器に1台の冷水製造装置から冷水を供給するように構成したことを特徴とする複合冷却装置。
【請求項2】
前記減圧手段が、蒸気エゼクタと、前記蒸気エゼクタの下流側に凝縮用熱交換器を設け、さらに前記凝縮用熱交換器の下流側に水封式真空ポンプとを設けた構成であることを特徴とする、請求項1記載の複合冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−133569(P2010−133569A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307312(P2008−307312)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】