説明

複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法

【課題】火災の発生時に外層が燃焼した場合に、外層から内層に延焼するのを阻止し、内層によって長期荷重を支持し続けることができる複合木質構造材を提供する。
【解決手段】木材又は異種材からなる単材を複数集成してなる集成材ブロック6からなる内層2と、木材又は異種材からなる単材あるいは該単材を複数集成してなる集成材ブロック6からなる外層10とを備えた複合木質構造材であって、内層2と外層10との境界部又は境界部近傍に、耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設ける。火災の発生によって外層10が燃焼した場合、燃焼の進行に従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落し、この接着層15を介して内層2側に延焼するのが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法に関し、特に、優れた耐熱性能を発揮することができる複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築基準法の改正に伴い、木造建築物においても、建築基準法に掲げられる基準に適合するものであれば、高さ、規模に対する制限を受けずに、より高層の建物の建築が可能になり、このため、建築メーカー等においては、各種の集成材やエンジニアウッドを用いた各種の木造建築物の開発が盛んに行われている。
【0003】
このような木造建築物においては、長期荷重及び短期荷重に対する耐力を維持するために必要な断面積を確保するとともに、火災により発生した火炎に晒されて表面が炭化しても、長期荷重を支持することができる木材の開発が必要になっている。
【0004】
しかし、火災による加熱に晒された木質構造部材は燃焼することにより表層部に炭化層を形成するが、この炭化層は火災終了後も燃焼し続けるため、その燃焼熱によって炭化層の内側にある健全部がさらに燃焼して荷重支持能力を失うこととなるため、その欠点を解決することが強く要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、炭化層の燃焼熱が炭化層の内側にある健全部に伝わることを確実に阻止し、荷重支持能力が必要以上に低下することを防止することができる複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、木材又は異種材からなる単材を複数集成してなる集成材ブロックからなる内層と、木材又は異種材からなる単材あるいは該単材を複数集成してなる集成材ブロックからなる外層とを備えた複合木質構造材であって、前記内層と前記外層との境界部又は境界部近傍に、耐熱性の低い接着剤からなる接着層を設けたことを特徴とする。
本発明による複合木質構造材によれば、内層と外層との境界部又は境界部近傍には、耐熱性の低い接着剤からなる接着層が設けられることになるので、火災の発生によって外層が燃焼した場合、燃焼の進行に従ってこの接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが阻止される。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の複合木質構造材であって、前記内層は、長期荷重を支持するに足る荷重支持部を包含し、前記外層は燃え代部を包含することを特徴とする。
本発明による複合木質構造材によれば、火災の発生によって外層が燃え代部として機能して燃焼した場合、燃焼の進行に従って内層と外層との境界部又は境界部近傍の耐熱性の低い接着剤からなる接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが防止され、荷重支持部によって長期荷重を支持し続けることができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の複合木質構造材であって、前記接着剤は、エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤であることを特徴とする。
本発明による複合木質構造材によれば、内層と外層との境界部又は境界部近傍には、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層が設けられているので、火災の発生によって外層が燃焼した場合、燃焼の進行に従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが阻止される。
【0009】
請求項4に係る発明は、木材又は異種材からなる単材を複数集成して、隣接する単材間を接合することにより集成材ブロックを形成し、この集成材ブロックを単材の集成方向が同一方向又は異なる方向となるように複数集成して、隣接する集成材ブロック間を接合することにより、内層と外層とを形成する複合木質構造材の製造方法であって、前記内層と前記外層との境界部又は境界部近傍に、耐熱性の低い接着剤からなる接着層を設けたことを特徴とする。
本発明による複合木質構造材の製造方法によれば、木材又は異種材からなる単材を複数集成し、隣接する単材間を接合することにより集成材ブロックを形成する。そして、このような集成材ブロックを単材の集成方向が同一方向又は異なる方向となるように複数集成し、隣接する集成材ブロック間を接合することにより、内層と外層とからなる複合木質構造材を形成することができる。
この場合、内層と外層との境界部又は境界部近傍には、耐熱性の低い接着剤からなる接着層が設けられることになるので、火災の発生によって外層が燃焼した場合、燃焼の進行に従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが阻止される。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の複合木質構造材の製造方法であって、前記内層は、長期荷重を支持するに足る荷重支持部を包含し、前記外層は燃え代部を包含することを特徴とする。
本発明による複合木質構造材の製造方法によれば、火災の発生によって外層が燃え代部として機能して燃焼した場合、燃焼の進行に従って内層と外層との境界部又は境界部近傍の耐熱性の低い接着剤からなる接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが防止され、内層が荷重支持部として機能し続け、内層によって長期荷重を支持し続けることができる。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の複合木質構造材の製造方法であって、前記接着剤は、エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤であることを特徴とする。
本発明による複合木質構造材の製造方法によれば、内層と外層との境界部又は境界部近傍には、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層が設けられているので、火災の発生によって外層が燃焼した場合、燃焼の進行に従ってこの接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが阻止される。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明による複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法によれば、外層と内層との境界部又は境界部近傍には、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層が設けられることになるので、火災の発生によって外層が燃焼した場合に、燃焼の進行に従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層の接着剤による接合力が次第に低下し、この接着層の外側に位置する外層の部分が崩壊して脱落し、この接着層を介して内層側に延焼するのが阻止される。
また、内層が荷重支持部として機能し、荷重支持部の外側に耐熱性の低い接着剤からなる接着層が設けられているので、外層が燃え代部として機能して燃焼しても、内層にまで延焼するようなことはなく、内層を長期荷重を支持する荷重支持部として機能させ続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができる。
さらに、外層と内層との境界部又は境界部近傍に耐熱性の低い接着剤からなる接着層を設けるだけで足りるので、外層から内層への延焼を防止するために、特殊な材料を使用する必要はなく、製造を容易にすることができて製造コストを安く抑えることができ、安価なものを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本発明による複合木質構造材の第1の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、複合木質構造材1の芯部となる断面略矩形状の内層2と、内層2の外側に内層2を囲むように設けられる断面略角環状の外層10とを備えており、火災の発生時に外層10は燃え代部28として機能し、内層2は長期荷重を支持する荷重支持部26として機能するように構成されている。
【0014】
内層2は、ひき板、単板(LVL)等からなる単材を複数集成し、隣接する単材間を接着剤を介して一体に接合することにより板状の集成材ブロック6を形成したものである。また、この内層2は、このような集成材ブロック6を複数集成して、隣接する集成材ブロック6間を接着剤を介して一体に接合することにより、断面略矩形状に形成することもある。
【0015】
内層2を構成する各単材としては、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築の柱材として使用される樹種が用いられる。また、単材の1本当たりの断面積が小さいので、これらの樹種の間伐材を用いることもできる。
【0016】
内層2を構成する各集成材ブロック6の隣接する単材間は、耐熱性の高いレゾルシノール樹脂接着剤によって一体に接合されるとともに、隣接する集成材ブロック6間も耐熱性の高いレゾシノール樹脂接着剤によって一体に接合されている。
【0017】
外層10は、ひき板、単板(LVL)等からなる単材あるいは該単材を複数集成し、隣接する単材間を接着剤を介して一体に接合することにより集成材ブロック11を形成し、このような集成材ブロック11を複数集成し、隣接する集成材ブロック11間を接着剤を介して一体に接合するか、あるいは、内層2の各集成材ブロック6との間を接着剤を介して一体に接合することにより、断面略角環状に形成したものである。外層10は、火災の発生時に燃え代部28として機能し、所定の時間(例えば、1時間)、火炎が内層2側に侵入するのを阻止する。
【0018】
外層10を構成する各単材は、内層2の単材と同様に、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築の柱材として使用される樹種が用いられる。また、単材の1本当たりの断面積が小さいので、これらの樹種の間伐材を用いることもできる。
【0019】
内層2と外層10との境界部近傍(外層10の内周縁部)には、荷重支持部26を包含する内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤からなる接着層15が設けられている。
【0020】
耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を構成する接着剤は、150℃程度の温度で接着力が著しく低下する接着剤であって、例えば、エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ウレタン系樹脂接着剤等が挙げられる。但し、これらに限らず、同様の機能を有するものであればよい。
なお、図1中、3は火災終了時の燃え代境界部である。
【0021】
上記のように構成した本実施の形態による複合木質構造材1にあっては、内層2と外層10との境界部近傍(外層10の内周縁部)に、荷重支持部26を包含する内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0022】
従って、荷重支持部26として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を荷重支持部26として機能させ続けることができ、内層2によって長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができる。
【0023】
この場合、内層2と外層10との境界部近傍に耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、延焼を阻止するために特殊な材料からなる燃え止り部を配置する必要はなく、製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。なお、前記の説明においては、柱材を例に説明したが、壁(耐震壁、非構造壁)や床に適用してもよいものであり、その場合にも、同様の効果を奏する。
【0024】
図2には、本発明による複合木質構造材の第2の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、内層2の外周部に全周に亘って所定の厚みの燃え止り部27を設け、この燃え止り部27の外側に燃え止り部27を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。この場合、内層2は燃え止り部27及び荷重支持部26として機能し、外層10は燃え代部28として機能する。なお、内層2の燃え止り部27は、荷重支持部26として機能する場合もある。なお、図2中、3は、火災終了時の燃え代境界部である。
【0025】
燃え止り部27は、例えば、複数の異種材を集成し、隣接する異種材間を接着剤(レゾルシノール樹脂接着剤)を介して一体に接合することにより板状の集成材ブロックを形成し、このような集成材ブロックを複数集成し、隣接する集成材ブロック間を接着剤(レゾルシノール樹脂接着剤)を介して接合することにより、断面略角環状に形成したものである。
【0026】
燃え止り部27を構成する異種材は、高熱容量材、断熱材、熱慣性の大きい木材、繊維方向を異ならせた木材等からなり、この燃え止り部27の異種材によって燃え代部28の炭化が燃え止り部27の内側の荷重支持部26に及ぶのが防止される。
【0027】
高熱容量材としては、例えば、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料の他、中空矩形断面の金属製のパイプ内に無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したもの等が挙げられる。また、断熱材としては、例えば、不燃木材、難燃処理材、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウール等が挙げられる。さらに、熱慣性の大きい木材としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等が挙げられる。
【0028】
そして、この実施の形態に示す複合木質構造材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、内層2と外層10との境界部に、荷重支持部26及び燃え止り部27である内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0029】
従って、荷重支持部26及び燃え止り部27として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を燃え止り部27及び荷重支持部26として機能させ続けることができ、内層2の荷重支持部26あるいは燃え止り部27を含めた内層2全体によって長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができることになる。
【0030】
また、燃え止り部27と外層10との間に耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、製造を容易にすることができて製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。
さらに、この実施の形態においては、耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の内側に燃え止り部27を設けているので、さらに効果的に荷重支持部26が延焼するのを防止できる。
なお、前記の説明においては、柱材を例に説明したが、壁(耐震壁、非構造壁)や床に適用してもよいものであり、その場合にも、同様の効果を奏する。
【0031】
図3には、本発明による複合木質構造材の第3の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、荷重支持部26の外側に薄肉の燃え止り部27を設け、その外側に燃え止り部27を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けたものであって、その他の構成は図2に示す第2の実施の形態に示すものと同様である。この場合、内層が荷重支持部26及び燃え止り部27として機能し、外層10が燃え代部28として機能する。なお、図3中、3は、火災終了時の燃え代境界部である。
【0032】
そして、この実施の形態に示す複合木質構造材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、内層2の外側に荷重支持部26及び燃え止り部27である内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0033】
従って、荷重支持部26及び燃え止り部27として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を荷重支持部26及び燃え止り部27として機能させ続けることができ、内層2によって長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができることになる。
【0034】
また、内層2と外層10との境界部に耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、製造を容易にすることができて製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。
さらに、この実施の形態においては、耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の内側に燃え止り部27を設けているので、さらに効果的に荷重支持部26にまで延焼するのを防止できる。
【0035】
図4には、本発明による複合木質構造材の第4の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、中央部に位置する2つの集成材ブロック6、6の隣接する単材7、7間の接合部8と、その外側に位置する集成材ブロック11、11の隣接する単材12、12間の接合部13とが同一線上に位置しないように、複数の集成材ブロック6、6、11、11を組み合わせて全体を断面矩形状に形成し、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0036】
この場合、内層2が荷重支持部26として機能し、外層10が燃え代部28として機能する。なお、図4中、3は、火災終了時の燃え代境界部である。
【0037】
そして、この実施の形態に示す複合木質構造材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、内層2の外側に荷重支持部26である内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0038】
従って、荷重支持部26として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を荷重支持部26として機能させ続けることができ、内層2によって長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができることになる。
【0039】
また、内層2の外側に耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、延焼を阻止するために特殊な材料からなる燃え止り部を配置する必要はなく、製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。
【0040】
図5には、本発明による複合木質構造材の第5の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、隣接する集成材ブロック6、6、11、11間の6箇所に断面矩形状の単材19を介装させ、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けたものであって、その他の構成は図4に示す第4の実施の形態に示すものと同様である。なお、図中3は、火災終了時の燃え代境界部である。
【0041】
そして、この実施の形態に示す複合木質構造材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、内層2の外側に荷重支持部26である内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0042】
従って、荷重支持部26として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を荷重支持部26として機能させて長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができることになる。
【0043】
また、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、延焼を阻止するために特殊な材料からなる燃え止り部を配置する必要はなく、製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。
【0044】
図6には、本発明による複合木質構造材の第6の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、複数の単材7を集成し、隣接する単材7、7間を接着剤を介して一体に接合することにより、板状の集成材ブロック6を形成するとともに、このような集成材ブロック6を複数、90度向きを変えながら交互に並べることにより全体が断面矩形状をなすように構成したものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0045】
この場合、中心部に断面略矩形状の内層2が設けられ、その外側に内層2を囲むように断面略角環状の外層10が設けられ、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15が設けられている。また、内層2が荷重支持部26と機能し、外層10が燃え代部28として機能するように構成されている。なお、図6中、3は、火災終了時の燃え代境界部である。
【0046】
そして、この実施の形態に示す複合木質構造材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、内層2の外側に荷重支持部26である内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0047】
従って、荷重支持部26として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を荷重支持部26として機能させ続けることができ、内層2によって長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができることになる。
【0048】
また、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、延焼を阻止するために特殊な材料からなる燃え止り部を配置する必要はなく、製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。
【0049】
図7には、本発明による複合木質構造材の第7の実施の形態が示されていて、この複合木質構造材1は、第6の実施の形態に示す集成材ブロック6と同一構成のものを、中心部に略井桁状をなすように配置して、その井桁状に形成した部分によって断面略矩形状の内層2を構成し、その外側に内層2を囲むように断面略角環状の外層10を設けて全体を断面矩形状とし、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。なお、図7中、3は火災終了時の燃え代境界部である。
【0050】
そして、この実施の形態に示す複合木質構造材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、内層2の外側に荷重支持部26である内層2を囲むように、耐熱性の低い接着剤(エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤)からなる接着層15を設けているので、火災の発生時に外層10が火炎に晒されて燃焼した場合に、外層10が燃焼するに従って耐熱性の低い接着剤からなる接着層15の接着剤の接合力が次第に低下し、この接着層15の外側に位置する外層10の部分が崩壊して脱落することになる。
【0051】
従って、荷重支持部26として機能する内層2にまで延焼することはないので、内層2を荷重支持部26として機能させ続けることができ、内層2によって長期荷重を支持し続けることができ、建築物の崩壊を阻止することができることになる。
【0052】
また、内層2の外側に内層2を囲むように耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を設けるだけで足りるので、延焼を阻止するために特殊な材料からなる燃え止り部を配置する必要はなく、製造コストを安く抑えることができ、安価な製品を提供することができる。
【0053】
図8には、本発明による複合木質構造材の製造方法の一実施の形態が示されていて、この複合木質構造材の製造方法は、図2に示す第2の実施の形態の複合木質構造材1の製造に適用したものである。
【0054】
すなわち、まず、複数の単材7を集成して、隣接する単材7、7間を接着剤を介して一体に接合することにより、同一形状の板状の集成材ブロック20、25を2つ形成し、一方を第1集成材ブロック20とし、他方を第6集成材ブロック25とする。
【0055】
次に、複数の異種材18を集成して、隣接する異種材18、18間を接着剤を介して接合するとともに、両端の異種材18の外側にその異種材18よりも大幅の異種材18を右端部が右方向に突出するように集成し、両異種材18、18間を接着剤を介して接合し、さらに、外側の両異種材18の外側に内側の異種材18と同一幅の単材7をそれぞれ集成し、各単材7と各異種材18との間をそれぞれ接着剤を介して一体に接合することにより同一形状の板状の集成材ブロック21、24を形成し、一方を第2集成材ブロック21とし、他方を第5集成材ブロック24とする。
【0056】
次に、第1及び6集成材ブロック20、25の単材7よりも大幅の単材7を複数集成し、隣接する単材7、7間を接着剤を介して一体に接合するとともに、両端の単材7の外側にそれぞれ単材7よりも小幅の異種材18を幅方向の両端面が単材7よりも内方に凹むように集成し、各異種材18と各単材7との間を接着剤を介して一体に接合し、さらに、外側の異種材18の外側にそれぞれ内側の単材7と同一幅の複数の単材7を集成し、各異種材18と単材小7の間及び隣接する単材7、7間をそれぞれ接着剤を介して接合することにより同一形状の板状の集成材ブロック22、23を2つ形成し、一方を第3集成材ブロック22とし、他方を第4集成材ブロック23とする。
【0057】
そして、第1集成材ブロック20、第2集成材ブロック21、第3集成材ブロック22、第4集成材ブロック23、第5集成材ブロック24(第2集成材ブロック21と逆向き)、第6集成材ブロック25をそれらの順に集成する。この場合、第3集成材ブロック22の各異種材18と第4集成材ブロック23の各異種材18との間にそれぞれ異種材18を介装させる。
【0058】
そして、第1集成材ブロック20と第2集成材ブロック21との間、第2集成材ブロック21と第3集成材ブロック22との間、第3集成材ブロック22と第4集成材ブロック23との間、第4集成材ブロック23と第5集成材ブロック24との間、第5集成材ブロック24と第6集成材ブロック26との間をそれぞれ接着剤を介して一体に接合する。
【0059】
この場合、第1集成材ブロック20と第2集成材ブロック21との間、及び第5集成材ブロック21と第6集成材ブロック22との間をそれぞれ耐熱性の低い接着剤を介して一体に接合し、それらの間に耐熱性の低い接着剤からなる接着層(図示せず)を形成する。
【0060】
なお、第2集成材ブロック21の外側の異種材18と単材7との間、第3集成材ブロック22の異種材18と外側の単材7との間、第4集成材ブロック23の異種材18と外側の単材7との間、第5集成材ブロック24の外側の異種材18と単材7との間も耐熱性の低い接着剤を介して一体に接合し、それらの間にも耐熱性の低い接着剤からなる接着層(図示せず)を形成する。
【0061】
このようにして、図2に示すような、中心部に断面略矩形状の内層2が設けられ、その外側に内層2を囲むように断面略角環状の燃え止り部27が設けられ、その外側に燃え止り部27を囲むように断面略角環状の外層10が設けられる断面略矩形状の複合木質構造材1が製造される。
【0062】
なお、上記の場合、第1集成材ブロック20に預けながら、第2集成材ブロック21の異種材18及び単材7を第1集成材ブロック20に接合するようにしてもよい。また、上記の方法に限らず、内層2の外側に内層2を囲むように外層10を配置し、内層2と外層10との境界部又は境界部近傍に耐熱性の低い接着剤からなる接着層15を配置できる方法であればよい。さらに、前記の説明においては、本発明による複合木質構造材を木造建築物の柱に適用したが、梁、壁、床等に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による複合木質構造材の第1の実施の形態を示した平面図である。
【図2】本発明による複合木質構造材の第2の実施の形態を示した平面図である。
【図3】本発明による複合木質構造材の第3の実施の形態を示した平面図である。
【図4】本発明による複合木質構造材の第4の実施の形態を示した平面図である。
【図5】本発明による複合木質構造材の第5の実施の形態を示した平面図である。
【図6】本発明による複合木質構造材の第6の実施の形態を示した平面図である。
【図7】本発明による複合木質構造材の第7の実施の形態を示した平面図である。
【図8】本発明による複合木質構造材の製造方法の一実施の形態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 複合木質構造材 2 内層
3 火災終了時の燃え代境界部 6 集成材ブロック
7、12、19 単材 8、13 接合部
10 外層 11 集成材ブロック
15 耐熱性の低い接着剤からなる接着層
18 異種材 19 単材
20 第1集成材ブロック 21 第2集成材ブロック
22 第3集成材ブロック 23 第4集成材ブロック
24 第5集成材ブロック 25 第6集成材ブロック
26 荷重支持部 27 燃え止り部
28 燃え代部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材又は異種材からなる単材を複数集成してなる集成材ブロックからなる内層と、木材又は異種材からなる単材あるいは該単材を複数集成してなる集成材ブロックからなる外層とを備えた複合木質構造材であって、
前記内層と前記外層との境界部又は境界部近傍に、耐熱性の低い接着剤からなる接着層を設けたことを特徴とする複合木質構造材。
【請求項2】
前記内層は、長期荷重を支持するに足る荷重支持部を包含し、前記外層は燃え代部を包含することを特徴とする請求項1に記載の複合木質構造材。
【請求項3】
前記接着剤は、エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合木質構造材。
【請求項4】
木材又は異種材からなる単材を複数集成して、隣接する単材間を接合することにより集成材ブロックを形成し、この集成材ブロックを単材の集成方向が同一方向又は異なる方向となるように複数集成して、隣接する集成材ブロック間を接合することにより、内層と外層とを形成する複合木質構造材の製造方法であって、
前記内層と前記外層との境界部又は境界部近傍に、耐熱性の低い接着剤からなる接着層を設けたことを特徴とする複合木質構造材の製造方法。
【請求項5】
前記内層は、長期荷重を支持するに足る荷重支持部を包含し、前記外層は燃え代部を包含することを特徴とする請求項4に記載の複合木質構造材の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤は、エポキシ系樹脂接着剤、イソシアネート系樹脂接着剤、又はウレタン系樹脂接着剤であることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合木質構造材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218707(P2006−218707A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33531(P2005−33531)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】