説明

複合材及び複合材の製造方法

【課題】軽量化を損なうことなく、剛性・強度を大きくできる繊維強化樹脂製の複合材を提供する。
【解決手段】バンパレインフォース11は、筒形状に形成された繊維強化樹脂製の複数の骨格部材12,13,14と、複数の骨格部材12,13,14の周囲にフィラメント150を巻いて筒状に形成された繊維強化樹脂製の結束部15とから構成されている。骨格部材12,13,14の外周面の一部には平面の接合部121,131,132,141が形成されている。隣り合う骨格部材12と骨格部材13とは、平面の接合部121,131で平面接合されており、隣り合う骨格部材13と骨格部材14とは、平面の接合部132,141で平面接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維で強化した繊維強化樹脂製の複合材及び複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時における衝撃を緩和するバンパ装置を構成する荷重エネルギー吸収材は、バンパ装置を構成するバンパレインフォースに加えられた衝撃荷重のエネルギーを吸収する。このようなバンパ装置の軽量化のため、バンパレインフォースや荷重エネルギー吸収材を繊維強化樹脂で形成するものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、樹脂を付着したフィラメントを発泡体製のバンパ基体に巻いて形成された樹脂製バンパレインフォースが開示されている。
特許文献2には、フィラメントを巻いて筒状に形成した第1の筒状体の筒内に、フィラメントを巻いて筒状に形成した複数の第2の筒状体を配置した荷重エネルギー吸収材が開示されている。この開示例の中には、複数の第2の筒状体が第1の筒状体に接触し、隣り合う第2の筒状体同士が1点で接触(線接触)する構成の荷重エネルギー吸収材がある。第1の筒状体は、熱硬化性樹脂を付着したフィラメントを筒状に巻いた複数の第2の筒状体の周りに、熱硬化性樹脂を付着したフィラメントを巻いて形成される。複数の第2の筒状体の周りに第1の筒状体を形成した後、熱硬化性樹脂が硬化され、隣り合う第2の筒状体同士が熱硬化性樹脂の硬化によって線接触状態に結合されると共に、第1の筒状体と複数の第2の筒状体とが熱硬化性樹脂の硬化によって結合される。
【特許文献1】特開平2−215519号公報
【特許文献2】特開平5−32147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンパレインフォースは、荷重エネルギーを吸収するまで剛性を保つことが望ましい。特許文献1のバンパレインフォースでは、その周面にのみフィラメント層があるため、バンパレインフォースの横断面形状によっては必要な剛性・強度を確保することが難しい。
【0005】
特許文献2の荷重エネルギー吸収材のうち、第1の筒状体の筒内に配置された複数の第2の筒状体を隣り合わせで線接触状態に結合した荷重エネルギー吸収材では、その筒内を横断するフィラメント部分がある。そのため、この複合材(荷重エネルギー吸収材)は、特許文献1に開示の横断面形状の複合材(バンパレインフォース)に比べ、必要な剛性・強度を確保し易い。しかし、複数の第2の筒状体を線接触状態に結合する構成では、剛性・強度を大きくするには限界がある。第1の筒状体や第2の筒状体のフィラメント巻き厚みを大きくすれば強度、剛性をさらに大きくすることができるが、これは、軽量化の妨げとなる。
【0006】
本発明は、フィラメントを巻いて形成した複数の骨格部材の周囲に、フィラメントを巻いて形成された結束部とを備えた繊維強化樹脂製の複合材において、軽量化を損なうことなく、剛性・強度を大きくできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィラメントを巻いて筒状に形成された複数の骨格部材と、前記複数の骨格部材を外周面の一部で接合させた状態にある前記複数の骨格部材の周囲に、フィラメントを巻いて形成された結束部とを備えた繊維強化樹脂製の複合材を対象とし、請求項1の発明は、前記複数の骨格部材がいずれも少なくとも他の1つの骨格部材と筒方向に沿って面接合していることを特徴とする。
【0008】
筒方向とは、骨格部材の各横断面の垂直方向が連続した方向である。複数の骨格部材が隣同士で面接合しているため、本発明の複合材は、軽量化を損なうことなく、従来の線接触構成の複合材に比べて、剛性・強度を大きくできる。
【0009】
好適な例では、隣り合う前記骨格部材の接合する面は、平面である。
隣り合う骨格部材の接合する面を平面とした構成は、フィラメントを巻いて複合材を形成する上で好ましい。
【0010】
好適な例では、前記結束部と前記複数の骨格部材との間、及び隣り合う骨格部材の間は、樹脂で充填されている。
結束部と複数の骨格部材との間、及び隣り合う骨格部材の間を樹脂で隙間なく充填した構成は、結束部と複数の骨格部材との間、及び隣り合う骨格部材の間の結合強度を高めて複合材の剛性を高める上で有効である。
【0011】
好適な例では、前記骨格部材の横断面に対して垂直な方向かつ前記フィラメントと交差する線を垂直方向線とし、前記垂直方向線と前記フィラメントとの交差部を中心にして、右巻きのフィラメントに対しては前記垂直方向線を基点とした右回りの角度を前記骨格部材及び前記結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度とし、左巻きのフィラメントに対しては前記垂直方向線を基点とした左回りの角度を前記骨格部材及び前記結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度とすると、前記複数の骨格部材におけるフィラメントの巻き付け方向の角度は、前記結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度よりも小さくしてある。
【0012】
フィラメントの巻き付け方向の角度とは、骨格部材の横断面に対して垂直な方向に対するフィラメントの傾き角度のことである。骨格部材におけるフィラメントの巻き付け方向の角度を結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度よりも小さくした構成では、骨格部材が複合材の曲げ剛性を高める主役を果たす。
【0013】
好適な例では、前記複合材は、車両の衝突時における衝撃を緩和するためのバンパ装置を構成するバンパレインフォースである。
バンパレインフォースは、荷重エネルギーを吸収するまで剛性を保つことが望ましい。前記の面接合の部分の幅を調整すれば、荷重エネルギーを吸収するまで剛性を保ち易いバンパレインフォースの形成が可能である。
【0014】
好適な例では、前記複合材は、前記溝の方向における荷重のエネルギーを吸収する荷重エネルギー吸収用複合材である。
荷重エネルギー吸収用複合材は、先端側から順次破壊してゆくことが望ましい。面接合の部分の幅の大きさを筒方向における位置で調整すれば、荷重エネルギー吸収用複合材を先端側から順次破壊させてゆくようにすることができる。
【0015】
請求項7の発明は、フィラメントを巻いて筒状に形成された複数の骨格部材と、前記複数の骨格部材を外周面の一部で接合させた状態にある前記複数の骨格部材の周囲に、フィラメントを巻いて形成された結束部とを備えた繊維強化樹脂製の複合材の製造方法において、前記複数の骨格部材のフィラメントに付着された樹脂が完全硬化する前の複数の骨格部材を筒方向に沿って面接合し、面接合された前記複数の骨格部材の周囲にフィラメントを巻き付けて前記結束部を形成することを特徴とする。
【0016】
樹脂が完全硬化する前の複数の骨格部材を面接合した場合の面接合の部分での結合強度は、樹脂が完全硬化した以後の複数の骨格部材を面接合した場合に比べて高くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、フィラメントを巻いて筒形状に形成した複数の骨格部材の周囲に、フィラメントを巻いて筒状に形成された結束部とを備えた繊維強化樹脂製の複合材において、軽量化を損なうことなく、剛性・強度を大きくできるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、バンパ装置を構成するバンパレインフォースに本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、バンパレインフォース11は、筒形状に形成された繊維強化樹脂製の複数の骨格部材12,13,14と、複数の骨格部材12,13,14の周囲にフィラメント150を巻いて筒状に形成された繊維強化樹脂製の結束部15とから構成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、骨格部材12,13,14の外周面の一部には平面の接合部121,131,132,141が形成されている。隣り合う骨格部材12と骨格部材13とは、平面の接合部121,131で平面接合されており、隣り合う骨格部材13と骨格部材14とは、平面の接合部132,141で平面接合されている。
【0020】
図1(a)に示すように、バンパレインフォース11には筒形状の荷重エネルギー吸収材10が接続される。バンパレインフォース11に矢印Rの方向の大きな衝撃荷重が加わると、荷重エネルギー吸収材10は、破壊しながら荷重エネルギーを吸収してゆく。
【0021】
複合材としてのバンパレインフォース11は、以下のように作られる。図2(a)に示すように、熱硬化性樹脂を付着したフィラメント120を図示しないマンドレルに巻いて骨格部材12を形成する。同様に、図1(b)に示すように、熱硬化性樹脂を付着したフィラメント130を図示しないマンドレルに巻いて骨格部材13を形成し、図2(c)に示すように、熱硬化性樹脂を付着したフィラメント140を図示しないマンドレルに巻いて骨格部材14を形成する。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル等が用いられる。次に、図2(d)に示すように、熱硬化性樹脂を完全硬化させることなく半硬化状態で骨格部材12,13の接合部121,131同士、及び骨格部材13,14の接合部132,141同士を接合するように骨格部材12,13,14を束ねる。このように平面接合するように束ねられた完全硬化前の骨格部材12,13,14の周囲にフィラメント150を巻き付けて筒形状の結束部15を形成する。そして、熱硬化性樹脂を加熱して完全硬化した後、前記各マンドレルを取り除き、完全硬化後の骨格部材12,13,14及び結束部15の端部を切断等により仕上げれば、図1(a)のバンパレインフォース11が得られる。
【0022】
なお、図1(b)に示す空隙Sには熱硬化性樹脂を充填してもよい。つまり、結束部15と複数の骨格部材12,13,14との間、隣り合う骨格部材12,13の間、及び隣り合う骨格部材13,14の間は、熱硬化性樹脂で充填されていてもよい。骨格部材12,13,14の角部の曲率が大きくて空隙Sが小さい場合には、フィラメント120,130,140,150に付着している熱硬化性樹脂によって空隙Sが満たされることもある。
【0023】
フィラメント120,130,140,150としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が用いられる。あるいは炭素繊維にアラミド繊維を混ぜたフィラメント、ガラス繊維にアラミド繊維を混ぜたフィラメントが用いられる。
【0024】
図2(a),(b),(c)に示すように、骨格部材12,13,14の横断面に対して垂直な方向かつフィラメント120,130,140と交差する線を垂直方向線T1,T2,T3とする。垂直方向線T1,T2,T3とフィラメント120,130,140との交差部P1,P2,P3を中心にして、右巻きのフィラメント〔以下、120R,130R,140Rと記し、図2(a),(b),(c)に2点鎖線で図示〕に対しては、垂直方向線T1,T2,T3を基点とした右回りの角度θ1を骨格部材12,13,14におけるフィラメント120R,130R,140Rの巻き付け方向の角度とする。又、左巻きのフィラメント〔以下、120L,130L,140Lと記し、図2(a),(b),(c)に2点鎖線で図示〕に対しては、交差部P1,P2,P3を中心にして、垂直方向線T1,T2,T3を基点とした左回りの角度θ2を骨格部材12,13,14におけるフィラメント120L,130L,140Lの巻き付け方向の角度とする。さらに、図2(d)に示すように、骨格部材12,13,14の横断面に対して垂直な方向かつフィラメント150と交差する線を垂直方向線Toとする。垂直方向線Toとフィラメント150との交差部Poを中心にして、右巻きのフィラメント150に対しては、垂直方向線Toを基点とした右回りの角度を結束部15におけるフィラメント150の巻き付け方向の角度とする。左巻きのフィラメント150に対しては、垂直方向線Toを基点とした左回りの角度を結束部15におけるフィラメント150の巻き付け方向の角度とする。
【0025】
図2(a)に示すように、骨格部材12におけるフィラメント120の巻き付け方向の角度θ1,θ2(骨格部材12の横断面に対して垂直な方向に対するフィランメント120の傾き角度)は、45°よりも小さい角度にしてある。図2(b)に示すように、骨格部材13におけるフィラメント130の巻き付け方向の角度θ1,θ2(骨格部材13の横断面に対して垂直な方向に対するフィランメント120の傾き角度)は、45°よりも小さい角度にしてある。図2(c)に示すように、骨格部材14におけるフィラメント140の巻き付け方向の角度θ1,θ2(骨格部材13の横断面に対して垂直な方向に対するフィランメント120の傾き角度)は、45°よりも小さい角度にしてある。つまり、骨格部材12,13,14におけるフィラメント120,130,140の巻き付け方向は、骨格部材12,13,14の横断面に対して垂直な方向の成分が前記垂直な方向と直交する方向の成分よりも大きい。
【0026】
又、図2(d)に示すように、結束部15におけるフィラメント150の巻き付け方向の角度(筒形状の結束部15の横断面に対して垂直な方向に対するフィランメント150の傾き角度)は、90°に近い角度にしてある。
【0027】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)複数の骨格部材12,13,14が隣同士で面接合しており、隣り合う骨格部材12,13,14は、この面接合の部分にて完全硬化した熱硬化性樹脂によって結合されている。そのため、バンパレインフォース11は、軽量化を損なうことなく、筒形状の骨格部材を外周面で線接触させたバンパレインフォースに比べて剛性・強度を大きくできる。しかも、平面の接合部121,131,132,141における接合面積を適宜選択(例えば接合部121,131,132,141の幅を適宜に設定)することによって、バンパレインフォース11の剛性・強度を望ましいレベルに設定することができる。
【0028】
(2)接合部121,131,132,141は、平面であり、隣り合う骨格部材12,13,14の接合する面は、平面である。マンドレルの周面に平面あるいは凹面を設ければ、このマンドレルにフィラメントを巻き付けることにより、前記の平面あるいは凹面に対応する部分ではフィラメントが平面に配列され、結束部の表面が平面となる。つまり、平面の接合部121,131,132,141の形成は、容易であり、接合部121,131,132,141を平面とする構成は、フィラメントを巻いて形成される複数の骨格部材12,13,14を束ねてバンパレインフォース11を形成する上で、好ましい。
【0029】
(3)衝撃荷重が掛かると見なした方向〔図1(a)の矢印Rの方向〕に掛かる衝撃荷重は、バンパレインフォース11を曲げようとする曲げ荷重として作用する。平面の接合部121,131,132,141は、バンパレインフォース11の長手方向に延びており、バンパレインフォース11の長手方向に延びる接合部121,131,132,141の平面方向は、衝撃荷重が掛かると見なした方向〔図1(a)の矢印Rの方向〕に合わせられている。このような接合部121,131,132,141において結合された骨格部材12,13,14は、高い曲げ剛性をもつ。つまり、衝撃荷重が掛かると見なした方向〔図1(a)の矢印Rの方向〕に接合部121,131,132,141の平面方向を合わせた構成は、バンパレインフォース11の曲げ剛性を高める上で、好適である。
【0030】
(4)複数の骨格部材12,13,14におけるフィラメント120,130,140の巻き付け方向の角度は、結束部15におけるフィラメント150の巻き付け方向の角度よりも小さくしてある。従って、骨格部材12,13,14がバンパレインフォース11の曲げ剛性を高める主役を果たす。バンパレインフォース11の曲げ剛性を高める主役を複数の骨格部材12,13,14に与えた構成は、バンパレインフォース11の曲げ剛性を高める上で、バンパレインフォース11の曲げ剛性を高める主役を単一の結束部15に与える場合よりも効果的である。
【0031】
(5)複数の骨格部材12,13,14は、フィラメント120,130,140に付着されている熱硬化性樹脂の完全硬化前に面接合され、その後にフィラメント150が骨格部材12,13,14の周囲に巻き付けられる。熱硬化性樹脂が完全硬化する前の複数の骨格部材12,13,14を面接合した場合の接合部121,131,132,141での結合強度は、熱硬化性樹脂が完全硬化した後の複数の骨格部材を面接合した場合に比べて高くなる。つまり、フィラメント120,130,140に付着されている熱硬化性樹脂の完全硬化前に複数の骨格部材12,13,14を面接合させた構成は、バンパレインフォース11の曲げ剛性を高める上で、特に好ましい。
【0032】
(6)結束部15と複数の骨格部材12,13,14との間、隣り合う骨格部材12,13の間、及び隣り合う骨格部材13,14の間を熱硬化性樹脂で充填した構成では、
結束部15と複数の骨格部材12,13,14との間、及び隣り合う骨格部材12,13,14の間に隙間がない。このような隙間のない構成は、結合強度を高めてバンパレインフォース11の剛性を高める上で有効である。
【0033】
(7)骨格部材12,13,14の横断面形状や壁厚を適宜選択すれば、荷重エネルギーを吸収するまで剛性を保ち易いバンパレインフォース11の形成が可能である。骨格部材12,13,14の横断面形状は、マンドレルの横断面形状の選択によって所望の形状に容易に設定可能であり、骨格部材12,13,14の壁厚は、フィラメント120,130,140の巻き厚の選択によって所望の壁厚に容易に設定可能である。
【0034】
(8)バンパレインフォース11の横断面形状の外形は、複数の骨格部材12,13,14の横断面形状の選択によって、バンパレインフォース11の剛性を高めつつ所望の形状に容易に設定可能である。
【0035】
次に、図3の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
第2の実施形態のバンパレインフォース11Bを構成する骨格部材12B,13B,14Bは、曲面の接合部121B,131B,132B,141Bを有する。骨格部材12B,13B,14Bにおけるフィラメントの巻き方、及び結束部15におけるフィラメントの巻き方は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0036】
接合部121B,141Bは、凹面であり、接合部131B,132Bは、接合部121B,141Bの凹面形状に対応した凸面である。隣り合う骨格部材12B,13B,14Bは、接合部121B,131B,132B,141Bで曲面接合している。骨格部材12B,14Bにフィラメント120,140を巻いたときには、凹面の接合部121B,141Bに対応するフィラメント120,140は、平面に配列される。しかし、凹面の接合部121B,141Bの凹みの深さが小さい場合には、フィラメント120,140が若干伸びることにより、骨格部材12B,13B同士が曲面接合し、骨格部材13B,14B同士が曲面接合する。
【0037】
第2の実施形態では、第1の実施形態における(1)項及び(3)〜(7)項と同様の効果が得られる。
次に、図4の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0038】
第3の実施形態におけるバンパレインフォース11Cの骨格部材12C,13C,14Cは、一定の曲率で曲がっている。つまり、骨格部材12C,13C,14Cは、円弧の曲がり形状のマンドレルにフィラメントを巻き付けて形成されたものであり、このマンドレルは、バンパレインフォース11Cの形成後に取り除くことができる。曲がったバンパレインフォース11Cは、衝撃荷重に対して高い曲げ剛性を有する。
【0039】
次に、図5の第4の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
第4の実施形態におけるバンパレインフォース11Dの骨格部材12D,13D,14Dは、両端に近い所で屈曲した形状をしており、各骨格部材12D,13D,14Dの筒内には発泡樹脂製のマンドレル16,17,18が残されている。つまり、骨格部材12C,13C,14Cは、両端近くに屈曲部を有する発泡樹脂製のマンドレル16,17,18にフィラメントを巻き付けて形成されたものである。
【0040】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
・図6に示すように、バンパレインフォース11Eを構成する骨格部材12E,13Eの平面の接合部121E,131Eと、骨格部材13E,14Eの平面の接合部132E,141Eとが平行ではなく、衝撃荷重が掛かる方向と見なされる矢印Rの方向に対して傾いているようにしてもよい。
【0041】
・図7に示すように、バンパレインフォース11Fを構成する骨格部材19,20,21,22が少なくとも他の2つの骨格部材と面接合しているようにしてもよい。
・2つの筒形状の骨格部材を面接合してバンパレインフォースを構成してもよい。
【0042】
・衝撃荷重が掛かる方向と見なされる矢印Rの方向に対して骨格部材の平面の接合部が直交するようにバンパレインフォースを構成してもよい。
・結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度を45°程度にしてもよい。
【0043】
・結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度として、90°近くと45°程度との両方を混在して用いてもよい。
・骨格部材におけるフィラメントの巻き付け方向の角度として、90°近くと45°より小さい角度との両方を混在して用いてもよい。
【0044】
・バンパレインフォースの結束部の巻き厚が長手方向の両端部よりも中央部ほど大きくなるようにしてもよい。
・バンパレインフォースの長手方向の両端部のみに結束部を設けるようにしてもよい。
【0045】
・第1の実施形態において、骨格部材12,13,14を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させてから骨格部材12,13,14を束ね、その後にフィラメントを巻き付けて結束部15を形成してもよい。
【0046】
・第1の実施形態において、熱硬化性樹脂を硬化処理する前に骨格部材12,13,14を束ねてから加熱して半硬化させ、その後にフィラメントを巻き付けて結束部15を形成してもよい。
【0047】
・第1の実施形態において、束ねた骨格部材12,13,14にフィラメントを巻き付けてから、熱硬化性樹脂をフィラメント全体に付着させてもよい。
・バンパ装置を構成する荷重エネルギー吸収材に本発明を適用してもよい。例えば、図8に示すように、骨格部材23,24を面接合させて荷重エネルギー吸収用複合材25を構成し、荷重エネルギー吸収用複合材25の端部をバンパレインフォースに結合すればよい。複合材である荷重エネルギー吸収用複合材25を構成する骨格部材23,24におけるフィラメント230,240の巻き付け方向の角度は、90°近くの角度でもよいし、荷重エネルギー吸収用複合材25を構成する結束部26におけるフィラメント260の巻き付け方向の角度は、45°よりも小さい角度でもよい。
【0048】
荷重エネルギー吸収材は、先端側から順次破壊してゆくことが望ましい。骨格部材23,24の面接合部の幅の大きさを筒方向における位置で調整すれば、荷重エネルギー吸収用複合材25を先端側から順次破壊させてゆくようにすることができる。あるいは各骨格部材23,24におけるフィラメントの巻き厚を筒方向における位置で調整したり、結束部26におけるフィラメントの巻き厚を筒方向における位置で調整したりすることにより、荷重エネルギー吸収用複合材25を先端側から順次破壊させてゆくようにすることができる。
【0049】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
〔1〕前記複合材は、バンパレインフォースであり、前記複数の骨格部材におけるフィラメントの巻き付け方向は、前記骨格部材の横断面と垂直な方向の成分が前記垂直な方向と直交する方向の成分よりも大きい請求項5に記載の複合材。
【0050】
このような巻き付け方向の角度の設定は、バンパレインフォースの曲げ剛性を高める上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)は斜視図。(b)は断面図。
【図2】(a),(b),(c)は、完全硬化前の骨格部材を示す斜視図。(d)は、完全硬化前の骨格部材及び結束部を示す一部破断斜視図。
【図3】第2の実施形態を示す断面図。
【図4】第3の実施形態を示す一部省略斜視図。
【図5】第4の実施形態を示す一部省略断面図。
【図6】別の実施形態を示す断面図。
【図7】別の実施形態を示す断面図。
【図8】本発明を荷重エネルギー吸収用複合材に適用した実施形態を示す一部破断斜視図。
【符号の説明】
【0052】
11,11B,11C,11D,11E,11F…複合材としてのバンパレインフォース。12,13,14,12B,13B,14B,12C,13C,14C,12D,13D,14D,12E,13E,14E,19,20…骨格部材。120,130,140,150,120R,130R,140R,120L,130L,140L…フィラメント。121,131,132,141,121B,131B,132B,141B,121E,131E,132E,141E…接合部。15…結束部。23,24…骨格部材。230,240,260…フィラメント。25…荷重エネルギー吸収用複合材。26…結束部。T1,T2,T3,To…垂直方向線。θ1,θ2…角度。P1,P2,P3,Po…交差部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントを巻いて筒状に形成された複数の骨格部材と、前記複数の骨格部材を外周面の一部で接合させた状態にある前記複数の骨格部材の周囲に、フィラメントを巻いて形成された結束部とを備えた繊維強化樹脂製の複合材において、
前記複数の骨格部材は、いずれも少なくとも他の1つの骨格部材と筒方向に沿って面接合している複合材。
【請求項2】
隣り合う前記骨格部材の接合する面は、平面である請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
前記結束部と前記複数の骨格部材との間、及び隣り合う骨格部材の間は、樹脂で充填されている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項4】
前記骨格部材の横断面に対して垂直な方向かつ前記フィラメントと交差する線を垂直方向線とし、前記垂直方向線と前記フィラメントとの交差部を中心にして、右巻きのフィラメントに対しては前記垂直方向線を基点とした右回りの角度を前記骨格部材及び前記結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度とし、左巻きのフィラメントに対しては前記垂直方向線を基点とした左回りの角度を前記骨格部材及び前記結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度とすると、前記複数の骨格部材におけるフィラメントの巻き付け方向の角度は、前記結束部におけるフィラメントの巻き付け方向の角度よりも小さくしてある請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項5】
前記複合材は、車両の衝突時における衝撃を緩和するためのバンパ装置を構成するバンパレインフォースである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項6】
前記複合材は、前記骨格部材の筒方向における荷重のエネルギーを吸収する荷重エネルギー吸収用複合材である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項7】
フィラメントを巻いて筒状に形成された複数の骨格部材と、前記複数の骨格部材を外周面の一部で接合させた状態にある前記複数の骨格部材の周囲に、フィラメントを巻いて形成された結束部とを備えた繊維強化樹脂製の複合材の製造方法において、
前記複数の骨格部材のフィラメントに付着された樹脂が完全硬化する前の複数の骨格部材を筒方向に沿って面接合し、面接合された前記複数の骨格部材の周囲にフィラメントを巻き付けて前記結束部を形成する複合材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−347073(P2006−347073A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177968(P2005−177968)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】