説明

複合材料の芯体

【課題】レジントランスファーモールディング法を採用しながらも軽量化を図ることができる複合材料の芯体を提供すること。
【解決手段】芯体13は、レジントランスファーモールディング法でサンドイッチパネル11を製造する際に用いられ、ハニカム構造体14を有する。ハニカム構造体14の各セル14a内には独立気泡状の発泡体15が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体を有する複合材料の芯体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、船舶等の輸送機器分野では、高い剛性を持ち、かつ軽い材料として、中空部に芯体を設けた複合材料が用いられている。この複合材料としては、例えば、上下一対のスキン材(例えば、繊維強化織物の積層体)の間に、芯体としてのハニカム構造体を介在させたもの(サンドイッチパネル)がある(例えば、特許文献1参照)。このようなサンドイッチパネルにおいて、ハニカム構造体をスキン材に一体化する方法としては、オートクレーブ成形がある。このオートクレーブ成形は、ハニカム構造体と、スキン材を形成するためのプリプレグとの間に、熱硬化性樹脂の接着層を介在させ、オートクレーブにより、プリプレグを熱硬化させて繊維強化複合材製のスキン材を形成するのと同時にハニカム構造体と一体化させる。
【0003】
しかし、プリプレグをオートクレーブで加熱・加圧して、スキン材とハニカム構造体とを一体化させてサンドイッチパネルを製造する方法においては、高価なオートクレーブが必要であり、また、加圧時にハニカム構造体が損傷する虞がある。
【0004】
そこで、オートクレーブ成形以外の方法で、複合材料を製造する方法として、レジントランスファーモールディング法(RTM法)がある。このRTM法では、成形型内に繊維材料製のスキン材と、ハニカム構造体を配置し、成形型内に樹脂を注入してスキン材に樹脂を含浸させて複合化することで、複合材料が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−289646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、RTM法で複合材料を製造する場合、注入した樹脂がスキン材を通過して、ハニカム構造体のセル(小部屋)内に入り込んで堆積してしまい、ハニカム構造体の重量が増加して、複合材料の重量が増加してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、レジントランスファーモールディング法を採用しながらも軽量化を図ることができる複合材料の芯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明は、マトリックス樹脂を用い、レジントランスファーモールディング法で複合材料を製造する際に用いられるとともにハニカム構造体を有する複合材料の芯体であって、前記ハニカム構造体の各セル内に、少なくとも外側は気泡が独立に形成された独立気泡状である発泡体が充填されてなるものである。
【0009】
これによれば、レジントランスファーモールディング法により複合材料を製造する際、マトリックス樹脂がハニカム構造体のセル内に侵入しようとしても、発泡体によってセル内に侵入するマトリックス樹脂の量を少なくすることができ、芯体の軽量化を図ることができる。
【0010】
また、前記ハニカム構造体における前記セルの開口端には繊維束の集合体であるスキン材が一体化され、前記発泡体は、少なくとも前記スキン材に対向する端面が前記独立気泡状に形成されていてもよい。
【0011】
これによれば、発泡体におけるスキン材に対向する端面では、気泡が一つに繋がっておらず、気泡一つ一つが独立している。このため、発泡体に向けてマトリックス樹脂が流れても、マトリックス樹脂は発泡体の端面に接触するのみで各セル内に侵入しない。
【0012】
また、前記発泡体は、中央ほど前記気泡が粗に形成されるとともに、中央から表面側ほど前記気泡が密に形成されていてもよい。
これによれば、スキン材に対向する発泡体の端面では、樹脂の各セル内への侵入をより一層防止することができ、発泡体の中央側で軽量化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レジントランスファーモールディング法を採用しながらも軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のサンドイッチパネルを示す分解斜視図。
【図2】(a)は実施形態のサンドイッチパネルを示す断面図、(b)はハニカム構造体のセル内を拡大して示す図。
【図3】(a)はハニカム構造体を支持板上に配置した状態を示す図、(b)はハニカム構造体上に蓋板を配置し、各セル内に樹脂を注入した状態を示す図、(c)は芯体を示す図、(d)は成形型内に強化繊維織物及び芯体を配置した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複合材料の芯体を、サンドイッチパネルの芯体に具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、サンドイッチパネル11は、繊維束の集合体(一方向材、織物、又はそれらの積層体)からなるスキン材12と、それらのスキン材12の間に介装された芯体13とが一体化されて形成されている。スキン材12は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維あるいは、アラミド繊維、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の高強度、高弾性率の有機繊維等で形成された強化繊維集合体(繊維材料)で構成されている。強化繊維集合体は、例えば繊維がX方向に揃えられた一方向材、X,Y方向に配列された織物等が使用され、サンドイッチパネル11の目的とする物性に応じて1枚又は複数枚の所定枚数使用される。
【0016】
芯体13は、ハニカム構造体14と、このハニカム構造体14の六角形のセル14a(小部屋)内に充填された発泡体15とから構成されている。なお、ハニカム構造体14とは、同一形状のセル14aの集合体のことであり、セル14aは、六角形以外にもOX、フレックス、バイセクト、フェザーセル等であってもよい。
【0017】
各セル14aに充填された発泡体15は、高発泡倍率のものが採用され、発泡倍率は5〜20倍に設定されるのが好ましい。これは、発泡倍率の高いものほど、発泡体15の気泡密度が高くなり、発泡体15の軽量化が図られるためである。図2(a)及び(b)に示すように、発泡体15は、気泡一つ一つが独立して形成されるとともに、気泡が一繋がりになっていない。すなわち、発泡体15は、独立気泡で形成された独立発泡体である。本実施形態では、発泡体15の全体に亘って独立気泡となっている。また、発泡体15は、その中央ほど気泡が粗に形成されるとともに、中央から各セル14aの内面寄り、及び各スキン材12に対向する端面(表面)側ほど気泡が密に形成されている。
【0018】
次に、芯体13及びサンドイッチパネル11の製造方法について説明する。
まず、芯体13の製造方法について説明する。図3(a)に示すように、支持板21上にハニカム構造体14を載置し、次に、図3(b)に示すように、ハニカム構造体14上に蓋板22を載置する。なお、蓋板22には、ハニカム構造体14の各セル14aに対応する位置に注入口22aが形成されている。そして、注入口22aから各セル14a内に、溶融した発泡体15の材料を注入する。その後、注入口22aを閉鎖して、蓋板22を介して発泡体15の材料を加熱し、発泡させる。すると、図3(c)に示すように、ハニカム構造体14のセル14aに発泡体15が充填された芯体13が製造される。
【0019】
次に、芯体13を基材として用いたサンドイッチパネル11の製造方法について説明する。サンドイッチパネル11は、レジントランスファーモールディング法(RTM法)によって製造される。具体的には、図3(d)に示すように、成形型30のキャビティ31内に、スキン材12の材料となる強化繊維集合体としての強化繊維織物12aを配置するとともに、その強化繊維織物12aの間に芯体13を配置する。そして、成形型30の注入口30aからキャビティ31内にマトリックス樹脂を注入し、強化繊維織物12aにマトリックス樹脂を含浸硬化させるとスキン材12が形成されるとともに、そのスキン材12によって芯体13を挟んだサンドイッチパネル11が製造される。マトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の他、ナイロンやABS樹脂等の熱可塑性樹脂が使用される。また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合樹脂も使用可能である。
【0020】
次に、芯体13及びサンドイッチパネル11の作用について説明する。
図1及び図2に示すように、芯体13及びサンドイッチパネル11においては、ハニカム構造体14におけるセル14aの開口端と、スキン材12とはマトリックス樹脂が硬化することで接合されるとともに、発泡体15において、スキン材12に対向する端面と、スキン材12ともマトリックス樹脂が硬化することによって接合されている。
【0021】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)サンドイッチパネル11の芯体13は、ハニカム構造体14と、そのハニカム構造体14の各セル14aに充填された独立気泡状の発泡体15と、から構成されている。このため、強化繊維織物12aの間に芯体13を挟み、RTM法によりサンドイッチパネル11を製造する際、マトリックス樹脂が強化繊維織物12aを通過しても、発泡体15によってセル14a内に侵入するマトリックス樹脂の量を少なくすることができる。したがって、サンドイッチパネル11の軽量化を図ることができる。
【0022】
(2)芯体13におけるハニカム構造体14のセル14aに、発泡体15を充填した。そして、芯体13のスキン材12への接合部位は、ハニカム構造体14の開口端だけでなく、発泡体15の端面となり、面接触による接合となる。このため、芯体13とスキン材12との接合部が、ハニカム構造体14の開口端(線接触による接合)だけの場合と比べると、芯体13とスキン材12との接合面積を広くして、芯体13とスキン材12との接合に関する信頼性が向上する。
【0023】
(3)発泡体15は、独立気泡で形成された独立発泡体であり、多数の気泡がそれぞれ独立しており一つに繋がっていない。このため、発泡体15において、マトリックス樹脂が気泡を通して発泡体15の内部にまで侵入することが防止される。その結果として、ハニカム構造体14内に侵入するマトリックス樹脂量を最小に抑えることができ、芯体13、ひいてはサンドイッチパネル11の重量増加を抑えることができる。
【0024】
(4)発泡体15は、その中央ほど気泡が粗に形成されるとともに、各セル14aの内面寄り、及び各スキン材12に対向する端面側ほど気泡が密に形成されている。このため、スキン材12に対向する端面では、気泡へのマトリックス樹脂の侵入量を抑えつつ、発泡体15の中央側で軽量化に寄与することができる。
【0025】
(5)サンドイッチパネル11は、RTM法によって製造される。このため、サンドイッチパネル11をオートクレーブ成形で製造する場合のように高価なオートクレーブのような機材を必要とせず、サンドイッチパネル11を安価に製造することができる。
【0026】
(6)発泡体15は、発泡倍率が5〜20倍の高発泡倍率のものが使用される。このため、発泡体15は、ハニカム構造体14のセル14a内全体に充填されてマトリックス樹脂のセル14aへの侵入を抑えながらも密度を小さくして軽量化に寄与することができる。
【0027】
(7)芯体13は、ハニカム構造体14に加え、そのセル14a内に発泡体15が充填されている。このため、ハニカム構造体14と発泡体15の両方でサンドイッチパネル11の強度を確保することができ、芯体13がハニカム構造体14だけの場合と比べると、サンドイッチパネル11の強度を高めることができる。
【0028】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、発泡体15は、中央ほど気泡が粗に形成されるとともに、中央から表面側ほど気泡が密に形成されるものに具体化したが、これに限らない。発泡体15の全体に亘って気泡が均一に形成されていてもよいし、発泡体15の全体に亘って気泡がランダムに形成されていてもよい。
【0029】
○ 実施形態では、発泡体15の全体が独立気泡となっていたが、発泡体15へのマトリックス樹脂の侵入を抑制するために、スキン材12に対向する端面だけが独立気泡になっていてもよい。
【0030】
○ マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂に限らず、例えば、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0031】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記発泡体の発泡倍率は5〜20倍である請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の複合材料の芯体。
【0032】
(ロ)前記スキン材は、前記発泡体における前記スキン材に対向する端面と接合される請求項2又は請求項3に記載の複合材料の芯体。
【符号の説明】
【0033】
11…複合材料としてのサンドイッチパネル、12…スキン材、12a…繊維束の集合体としての強化繊維織物、13…芯体、14…ハニカム構造体、14a…セル、15…発泡体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂を用い、レジントランスファーモールディング法で複合材料を製造する際に用いられるとともにハニカム構造体を有する複合材料の芯体であって、
前記ハニカム構造体の各セル内に、少なくとも外側は気泡が独立に形成された独立気泡状である発泡体が充填されてなる複合材料の芯体。
【請求項2】
前記ハニカム構造体における前記セルの開口端には繊維束の集合体であるスキン材が一体化され、前記発泡体は、少なくとも前記スキン材に対向する端面が前記独立気泡状に形成されている請求項1に記載の複合材料の芯体。
【請求項3】
前記発泡体は、中央ほど前記気泡が粗に形成されるとともに、中央から表面側ほど前記気泡が密に形成されている請求項1又は請求項2に記載の複合材料の芯体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−59950(P2013−59950A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200921(P2011−200921)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】