説明

複合材料

【課題】微細炭素繊維が有する特異な性質を最大限に利用した新規な複合材料を提供すること。
【解決手段】外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状を呈しており、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ、当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなる炭素繊維構造体を、炭素により3次元に接合させることにより形成される骨格構造体を有し、当該骨格構造体の内部に形成される空隙部には樹脂、ゴム、金属、またはカーボン系材料が含浸された、複合材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な炭素繊維(いわゆる、カーボンナノチューブ)を利用した複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂にカーボンブラックなどのフィラーを配合することによって、所望の特性、(例えば導電性や力学特性など)が付与された樹脂組成物、いわゆる複合材料が提案されている。
【0003】
近年においては、複合材料によって成形された成形体にさらに優れた導電性、力学特性を付与するために、従来用いられていたカーボンブラックに代えて、微細な炭素繊維(いわゆるカーボンナノチューブ)を配合する試みが行われている。カーボンナノチューブを構成するグラファイト層は、通常では規則正しい六員環配列構造を有し、その特異な電気的性質とともに、化学的、機械的および熱的に安定した性質を持つ物質である。従って、例えば、各種樹脂、セラミックス、金属等の固体材料、あるいは燃料油、潤滑剤等の液体材料中に、このような微細炭素繊維を分散配合して前記したような物性を生かすことができれば、優れた複合材料を提供することができると期待されている。
【0004】
具体的には、例えば、特許文献1、2には、カーボンナノチューブをマトリクス中に含む複合材料が提案されている。また、特許文献3には、樹脂組成物中にカーボンナノチューブを配合するにあっては、単にカーボンナノチューブをそのまま配合するのではなく、カーボンナノチューブにより凝集体を形成し、または互いを絡み合わせたものを形成し、これを配合することも知られている。
【特許文献1】特許第2641712号公報
【特許文献2】特開2003−12939号公報
【特許文献3】特許第3034027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に挙げた各文献に代表される従来の複合材料にあっては、未だ微細炭素繊維(カーボンナノチューブ)の優れた特性を充分に利用できておらず、また、微細炭素繊維自体の改良の余地があった。
【0006】
本発明はこのような状況においてなされた発明であり、微細炭素繊維が有する特異な性質を最大限に利用した新規な骨格構造体および複合材料を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討の結果、複合材料に対して、導電性や強度特性等の種々の特性を付与するためには、可能な限り微細な炭素繊維が一本一本ばらばらになることなく互いに強固に結合した構造体であって、当該構造体を構成する炭素繊維自体の一本一本が極力欠陥の少ないものを、炭素を用いて3次元に結合せしめた骨格構造体を用いること、並びに、当該骨格構造体の内部に形成される空隙部に樹脂等を含浸せしめることが有効であることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状を呈しており、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ、当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなる炭素繊維構造体を、炭素により3次元に接合させることにより形成されることを特徴とする骨格構造体である。
【0009】
また、前記骨格構造体には、ホウ素が含有されていてもよい。
【0010】
また、前記ホウ素の含有量が、前記骨格構造体に対して0.001〜10質量%であってもよい。
【0011】
また、前記炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜500μmであってもよい。
【0012】
また、前記骨格構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが、1.4以下であり、且つ、IG’/Iが1.5以下であってもよい。
【0013】
また、前記骨格構造体は、嵩密度が、0.2〜2.3g/cmであってもよい。
【0014】
また、前記骨格構造体は、空気中での燃焼開始温度が700℃以上であってもよい。
【0015】
また、前記炭素繊維の結合箇所において、前記粒状部の粒径が、前記炭素繊維の外径よりも大きくてもよい。
【0016】
また、前記炭素繊維構造体は、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いて、生成されたものであってもよい。
【0017】
また、上記課題を解決する本発明は、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状を呈しており、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ、当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなる炭素繊維構造体を、炭素により3次元に接合させることにより形成される骨格構造体を有し、当該骨格構造体の内部に形成される空隙部には樹脂、ゴム、金属、またはカーボン系材料が含浸されていることを特徴とする複合材料である。
【0018】
また、前記骨格構造体には、ホウ素が含有されていてもよい。
【0019】
また、前記ホウ素の含有量が、前記骨格構造体に対して0.001〜10質量%であってもよい。
【0020】
また、前記炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜500μmであってもよい。
【0021】
また、前記骨格構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが、1.4以下であり、且つ、IG’/Iが1.5以下であってもよい。
【0022】
また、前記骨格構造体は、嵩密度が、0.2〜2.3g/cmであってもよい。
【0023】
また、前記骨格構造体は、空気中での燃焼開始温度が700℃以上であってもよい。
【0024】
また、前記炭素繊維の結合箇所において、前記粒状部の粒径が、前記炭素繊維の外径よりも大きくてもよい。
【0025】
また、前記炭素繊維構造体は、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いて、生成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、複合材料の骨組みとなる骨格構造体が、上記したように3次元ネットワーク状に配された微細径の炭素繊維が、前記炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって互いに強固に結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を有する炭素繊維構造体を、炭素により3次元に結合してなるものであるために、炭素繊維構造体自体が有する3次元的な広がりに加えて、当該炭素繊維構造体同士がさらに3次元に結合しているため、従来にない広がりを持った、骨格構造体とすることができ、微細炭素繊維が有する導電性や力学特性及び熱伝導特性を充分に発揮することが可能となる。
【0027】
また、元々3次元ネットワーク状を呈する炭素繊維を出発物質としているため、従来のように外力を加えて無理に作った凝集体とは異なり、炭素繊維の一本一本に欠陥がないことも本発明の特徴であり、当該特徴によっても導電性や力学特性及び熱伝導特性を向上せしめることができる。
【0028】
さらに、本願発明において、骨格構造体にホウ素を含有せしめたときは、構造に多少の欠陥を含んでいる場合であっても、高い導電性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0030】
本発明の複合材料は、炭素繊維構造体からなる骨格構造体と、当該骨格構造体の内部に形成される空隙部に含浸される樹脂、ゴム、金属、またはカーボン系材料と、から構成される。
【0031】
まずは、本発明の特徴の1つである骨格構造体について説明する。
【0032】
骨格構造体は、炭素繊維構造体を炭素により3次元に結合させることにより形成されている。
【0033】
ここで、本発明において用いられる炭素繊維構造体は、例えば、図1に示すSEM写真または図2に示すTEM写真に見られるように、外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有していることを特徴とする炭素繊維構造体である。
【0034】
炭素繊維構造体を構成する炭素繊維の外径を、15〜100nmの範囲のものとするのは、外径が15nm未満であると、後述するように炭素繊維の断面が多角形状とならず、一方、炭素繊維の物性上直径が小さいほど単位量あたりの本数が増えるとともに、炭素繊維の軸方向への長さも長くなり、高い導電性が得られるためであり、100nmを越える外径を有することは、樹脂等のマトリックスへ改質剤、添加剤として配される炭素繊維構造体として適当でないためである。なお、炭素繊維の外径としては特に、20〜70nmの範囲内にあることがより望ましい。この外径範囲のもので、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層したもの、すなわち多層であるものは、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質が付与されるためである。
【0035】
なお、1800℃以上でアニール処理すると、積層したグラフェンシートの面間隔が狭まり真密度が増加するとともに、炭素繊維の軸直交断面が多角形状となり、この構造の炭素繊維は、積層方向および炭素繊維を構成する筒状のグラフェンシートの面方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとなるため、曲げ剛性(EI)が向上する。
【0036】
加えて、当該微細炭素繊維は、その外径が軸方向に沿って変化するものであることが望ましい。このように炭素繊維の外径が軸方向に沿って一定でなく、変化するものであると、樹脂等を含浸させた際に当該炭素繊維に一種のアンカー効果が生じるものと思われ、含浸される樹脂等が移動することを生じにくくすることができる。
【0037】
そして本発明に用いられる炭素繊維構造体においては、このような所定外径を有する微細炭素繊維が3次元ネットワーク状に存在するが、これら炭素繊維は、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているものである。このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、骨格構造体を形成した際に強固な構造とすることができる。また、本発明に用いられる炭素繊維構造体においては、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであり、例えば、一定圧縮密度において測定した電気抵抗値は、微細炭素繊維の単なる絡合体、あるいは微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等の値と比較して、非常に低い値を示し、複合材料とした場合に良好な導電パスを形成することができる。
【0038】
当該粒状部は、上述するように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、当該粒状部における炭素間結合は十分に発達したものとなり、正確には明らかではないが、sp結合およびsp結合の混合状態を含むと思われる。そして、生成後(後述する中間体および第一中間体)においては、粒状部と繊維部とが、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合せたような構造をもって連続しており、その後の高温熱処理後においては、、粒状部を構成するグラフェン層の少なくとも一部は、当該粒状部より延出する微細炭素繊維を構成するグラフェン層に連続するものとなる。本発明に用いられる炭素繊維構造体において、粒状部と微細炭素繊維との間は、上記したような粒状部を構成するグラフェン層が微細炭素繊維を構成するグラフェン層と連続していることに象徴されるように、炭素結晶構造的な結合によって(少なくともその一部が)繋がっているものであって、これによって粒状部と微細炭素繊維との間の強固な結合が形成されているものである。
【0039】
なお、本願明細書において、粒状部から炭素繊維が「延出する」とは、粒状部と炭素繊維とが他の結着剤(炭素質のものを含む)によって、単に見かけ上で繋がっているような状態をさすものではなく、上記したように炭素結晶構造的な結合によって繋がっている状態を主として意味するものである。
【0040】
また、当該粒状部は、上述するように炭素繊維の成長過程において形成されるが、その痕跡として粒状部の内部には、少なくとも1つの触媒粒子、あるいはその触媒粒子がその後の熱処理工程において揮発除去されて生じる空孔を有している。この空孔(ないし触媒粒子)は、粒状部より延出している各微細炭素繊維の内部に形成される中空部とは、本質的に独立したものである(なお、ごく一部に、偶発的に中空部と連続してしまったものも観察される。)。
【0041】
この触媒粒子ないし空孔の数としては特に限定されるものではないが、粒状部1つ当りに1〜1000個程度、より望ましくは3〜500個程度存在する。このような範囲の数の触媒粒子の存在下で粒状部が形成されたことによって、後述するような所望の大きさの粒状部とすることができる。
【0042】
また、この粒状部中に存在する触媒粒子ないし空孔の1つ当りの大きさとしては、例えば、1〜100nm、より好ましくは2〜40nm、さらに好ましくは3〜15nmである。
【0043】
さらに、特に限定されるわけではないが、この粒状部の粒径は、図2に示すように、前記微細炭素繊維の外径よりも大きいことが望ましい。具体的には、例えば、前記微細炭素繊維の外径の1.3〜250倍、より好ましくは1.5〜100倍、さらに好ましくは2.0〜25倍である。なお、前記値は平均値である。このように炭素繊維相互の結合点である粒状部の粒径が微細炭素繊維外径の1.3倍以上と十分に大きなものであると、当該粒状部より延出する炭素繊維に対して高い結合力がもたらされ、これを用いて骨格構造体を形成し本発明の複合材料を得た場合に、ある程度のせん弾力を加えた場合であっても、3次元ネットワーク構造を保持したままとなる。一方、粒状部の大きさが微細炭素繊維の外径の250倍を超える極端に大きなものとなると、炭素繊維構造体の繊維状の特性が損なわれる虞れがあり、本発明の複合材を形成する骨格構造体を構成する上で適当なものとならない虞れがあるために望ましくない。なお、本明細書でいう「粒状部の粒径」とは、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして測定した値である。
【0044】
その粒状部の具体的な粒径は、炭素繊維構造体の大きさ、炭素繊維構造体中の微細炭素繊維の外径にも左右されるが、例えば、平均値で20〜5000nm、より好ましくは25〜2000nm、さらに好ましくは30〜500nm程度である。
【0045】
さらにこの粒状部は、前記したように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、比較的球状に近い形状を有しており、その円形度は、平均値で0.2〜<1、好ましくは0.5〜0.99、より好ましくは0.7〜0.98程度である。
【0046】
加えて、この粒状部は、前記したように炭素繊維の成長過程において形成されるものであって、例えば、微細炭素繊維同士の接合点を当該炭素繊維合成後に炭素質物質ないしその炭化物によって付着させてなる構造体等と比較して、当該粒状部における、炭素繊維同士の結合は非常に強固なものであり、炭素繊維構造体における炭素繊維の破断が生じるような条件下においても、この粒状部(結合部)は安定に保持される。具体的には例えば、後述する実施例において示すように、当該炭素繊維構造体を液状媒体中に分散させ、これに一定出力で所定周波数の超音波をかけて、炭素繊維の平均長がほぼ半減する程度の負荷条件としても、該粒状部の平均粒径の変化率は、10%未満、より好ましくは5%未満であって、粒状部、すなわち、繊維同士の結合部は、安定に保持されているものである。
【0047】
また、本発明において用いられる炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜500μm程度であることが望ましい。ここで面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。この円相当平均径が50μm以下であると、3次元構造体として導電性、強度等の効果を十分に発揮することができない。なお、骨格構造体に用いられる炭素繊維構造体は、大きいほうが好ましいが、大きすぎると粉体としての取扱が困難となるため、500μm以下であることが好ましい。
【0048】
また、本発明において用いられる炭素繊維構造体は、上記したように、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているが、1つの炭素繊維構造体において、炭素繊維を結合する粒状部が複数個存在して3次元ネットワークを形成している場合、隣接する粒状部間の平均距離は、例えば、0.5μm〜300μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜50μm程度となる。なお、この隣接する粒状部間の距離は、1つの粒状体の中心部からこれに隣接する粒状部の中心部までの距離を測定したものである。粒状体間の平均距離が、0.5μm未満であると、炭素繊維が3次元ネットワーク状に十分に発展した形態とならないため、最終的に複合材料とした場合に良好な導電パスや熱伝導パスを形成し得ないものとなる虞れがあり、一方、平均距離が300μmを越えるものであると、複合材料を構成する骨格構造体が粗になってしまい、充分な強度が得られない虞れがあるためである。
【0049】
また、本発明において用いられる炭素繊維構造体は、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維がその成長過程において形成された粒状部において互いに結合されていることから、上記したように構造体自体の電気的特性等も非常に優れたものであるが、例えば、一定圧縮密度0.8g/cmにおいて測定した粉体抵抗値が、0.02Ω・cm以下、より望ましくは、0.001〜0.010Ω・cmであることが好ましい。粉体抵抗値が0.02Ω・cmを超えるものであると、複合材料となった場合に良好な導電パスを形成することが難しくなるためである。
【0050】
次に上記で説明した炭素繊維構造体を用いて形成する骨格構造体について説明する。
【0051】
本発明の複合材料の骨格をなす骨格構造体は、上記3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体がさらに炭素により3次元に接合されることにより構成されている。このような骨格構造体によれば、従来の、炭素繊維単体を接合してなる骨格構造体に比べて、出発物質である炭素繊維自体が3次元ネットワークを有している分だけ、強固な結合力と、高い導電性を持った骨格構造体となっている。
【0052】
また、本発明に用いられる骨格構造体にあっては、ホウ素が含有されていてもよい。ホウ素を含有することにより、炭素繊維一本一本を結晶性の高い炭素繊維とすることができる。本発明において、「骨格構造体にホウ素が含有されている」とは、骨格構造体を構成する炭素原子の一部がホウ素に置換されている状態の他、骨格構造体の表面にホウ素が付着した状態をも含むものをいう。
【0053】
骨格構造体を構成する炭素繊維および接合炭素にホウ素を含有(ドーピング)する方法については、本発明は特に限定することはないが、例えば、低温(例えば1500℃以下)で熱処理されたのみで未だ結晶の発達していない状態の炭素繊維、さらには熱処理していない(アズグロウン)状態の炭素繊維とホウ素(ホウ素化合物を含む)とを混合し、その後、高温でアニーリング処理することにより、炭素繊維および接合炭素にホウ素を含有せしめることができる。2000℃以上、さらには2300℃以上の温度で黒鉛化処理された状態の炭素繊維にホウ素を含有せしめることも不可能ではないが、ホウ素をドーピングさせるためのエネルギーの面から考えれば好ましくなく、ホウ素は炭素繊維の結晶化を促進するための触媒としても作用するため、黒鉛化処理の前段階でホウ素を含有せしめることが好適である。
【0054】
骨格構造体に含有されるホウ素としても、本発明は特に限定することはない。なおここで、本発明における「ホウ素」とは、元素状のホウ素のみならずホウ素化合物も包含する概念である。前記のように骨格構造体にホウ素を含有せしめるにあっては、高温(例えば1800℃以上)でアニーリング処理を行う関係上、少なくとも1800℃に達する前に分解などによって蒸発しない状態のホウ素を用いることが必要である。この条件を満たすホウ素としては、例えば、元素状のホウ素、B,HBO,BC,BNなどを挙げることができる。
【0055】
ホウ素の含有量としては、骨格構造体に対して0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜3.0質量%であることが特に好ましい。ホウ素の含有量が0.001質量%未満の場合、ホウ素含有による効果、つまり炭素繊維の結晶性を向上せしめることが難しくなる。一方、含有量が10質量%を超えると、処理コストが高くなるだけでなく、熱処理の段階で、溶融燒結し易く、固まったり、繊維表面をホウ素が被覆してしまい、逆に導電性を悪化させる場合がある。
【0056】
また、本発明の複合材料を構成する骨格構造体の大きさや形状については、特に限定されることはなく利用分野や要求される性能などにより適宜選択することが可能であるが、例えば、その嵩密度が、具体的には、0.2〜2.3g/cm、より好ましくは0.4〜2.1cmであることが望ましい。嵩密度が2.3g/cmを超えるものであると、骨格構造体の空隙に対して樹脂等を含浸させることが困難となるためである。
【0057】
また、本発明において用いられる骨格構造体は、高い強度および導電性を有する上から、炭素繊維を構成するグラフェンシート中における欠陥が少ないことが望ましく、具体的には、例えば、ラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.25以下、より好ましくは0.1以下であり、且つ、IG’/Iが0.6〜1.5であることが望ましい。ここで、2000cm−1までのラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。また、測定範囲を広げると、2700cm−1付近にG’バンドが出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)及びG’バンドとGバンドの強度比(I2700/I1580=IG’/I)が上記したように所定範囲であると、グラフェンシート中における欠陥量が少ないことが認められるためである。
【0058】
なお、構造に多少の欠陥を含んでいても高い導電性を得ることが目的の用途である場合は、グラフェンシート中にホウ素を添加することが望ましく、具体的には、例えば、ラマン分光分析法で測定されるI/I比が0.2〜1.4であり、且つ、IG’/Iが0.2〜0.8であることが望ましい。このDバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)及びG’バンドとGバンドの強度比(I2700/I1580=IG’/I)が上記したように所定範囲であると、グラフェンシート中にホウ素が含有されていると考えられるからである。なお、ホウ素がグラフェンシート内に含有されるとラマン分光におけるGバンドの波形が非対称となり、高波数側に肩が認められるようになる。
【0059】
また、本発明において用いられる骨格構造体は、空気中での燃焼開始温度が700℃以上、より好ましくは800〜900℃であることが望ましい。前記したように骨格構造体を構成する炭素繊維構造体が欠陥が少なく、かつ炭素繊維が所期の外径を有するものであることから、このような高い熱的安定性を有するものとなる。
【0060】
上記したような所期の形状を有する炭素繊維構造体は、特に限定されるものではないが、例えば、次のようにして調製することができる。
【0061】
基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、中間体という)を得る。金属繊維にホウ素を含有する場合には、この段階、若しくは、タールなどの炭化水素を分離したのち、ホウ素またはホウ素化合物を混合した状態とする。そしてさらに高温熱処理する。なお、ホウ素またはホウ素化合物は、炭化水素等の有機化合物に予め混合せしめておいてもよく(つまり中間体を得る前段階でホウ素を添加しておく)、さらには、高温熱処理後にホウ素を混合せしめることも可能である。
【0062】
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、本発明において用いる繊維構造体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。
【0063】
なお、熱分解反応系において炭素源としてこのように2種以上の炭素化合物を存在させた場合、それぞれの炭素化合物の分解温度は、炭素化合物の種類のみでなく、原料ガス中の各炭素化合物のガス分圧ないしモル比によっても変動するものであるため、原料ガス中における2種以上の炭素化合物の組成比を調整することにより、炭素化合物として比較的多くの組み合わせを用いることができる。
【0064】
例えば、メタン、エタン、プロパン類、ブタン類、ペンタン類、へキサン類、ヘプタン類、シクロプロパン、シクロヘキサンなどといったアルカンないしシクロアルカン、特に炭素数1〜7程度のアルカン;エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンテン類、ヘプテン類、シクロペンテンなどといったアルケンないしシクロオレフィン、特に炭素数1〜7程度のアルケン;アセチレン、プロピン等のアルキン、特に炭素数1〜7程度のアルキン;ベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、インデン、フェナントレン等の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、特に炭素数6〜18程度の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール類、特に炭素数1〜7程度のアルコール類;その他、一酸化炭素、ケトン類、エーテル類等の中から選択した2種以上の炭素化合物を、所期の熱分解反応温度域において異なる分解温度を発揮できるようにガス分圧を調整し、組み合わせて用いること、および/または、所定の温度領域における滞留時間を調整することで可能であり、その混合比を最適化することで効率よく本発明に用いる炭素繊維構造体を製造することができる。
【0065】
このような2種以上の炭素化合物の組み合わせのうち、例えば、メタンとベンゼンとの組み合わせにおいては、メタン/ベンゼンのモル比が、>1〜600、より好ましくは1.1〜200、さらに好ましくは3〜100とすることが望ましい。なお、この値は、反応炉の入り口におけるガス組成比であり、例えば、炭素源の1つとしてトルエンを使用する場合には、反応炉内でトルエンが100%分解して、メタンおよびベンゼンが1:1で生じることを考慮して、不足分のメタンを別途供給するようにすれば良い。例えば、メタン/ベンゼンのモル比を3とする場合には、トルエン1モルに対し、メタン2モルを添加すれば良い。なお、このようなトルエンに対して添加するメタンとしては、必ずしも新鮮なメタンを別途用意する方法のみならず、当該反応炉より排出される排ガス中に含まれる未反応のメタンを循環使用することにより用いることも可能である。
【0066】
このような範囲内の組成比とすることで、炭素繊維部および粒状部のいずれもが十分を発達した構造を有する炭素繊維構造体を得ることが可能となる。
【0067】
なお、雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
【0068】
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
【0069】
中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cmから数十センチの大きさの集合体を合成する。
【0070】
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に係る炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受け、また、前記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度およびガス温度等によっても影響受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長方向を一定方向とすることなく、制御下に多方向として、本発明に係るような三次元構造を形成することができるものである。なお、生成する中間体において、繊維相互が粒状体により結合された前記したような三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。
【0071】
なお、本発明に用いる炭素繊維構造体を効率良く製造する方法としては、上記したような分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物を最適な混合比にて用いるアプローチ以外に、反応炉に供給される原料ガスに、その供給口近傍において乱流を生じさせるアプローチを挙げることができる。ここでいう乱流とは、激しく乱れた流れであり、渦巻いて流れるような流れをいう。
【0072】
反応炉においては、原料ガスが、その供給口より反応炉内へ導入された直後において、原料混合ガス中の触媒としての遷移金属化合物の分解により金属触媒微粒子が形成されるが、これは、次のような段階を経てもたらされる。すなわち、まず、遷移金属化合物が分解され金属原子となり、次いで、複数個、例えば、約100原子程度の金属原子の衝突によりクラスター生成が起こる。この生成したクラスターの段階では、微細炭素繊維の触媒として作用せず、生成したクラスター同士が衝突により更に集合し、約3nm〜10nm程度の金属の結晶性粒子に成長して、微細炭素繊維の製造用の金属触媒微粒子として利用されることとなる。
【0073】
この触媒形成過程において、上記したように激しい乱流による渦流が存在すると、ブラウン運動のみの金属原子又はクラスター同士の衝突と比してより激しい衝突が可能となり、単位時間あたりの衝突回数の増加によって金属触媒微粒子が短時間に高収率で得られ、又、渦流によって濃度、温度等が均一化されることにより粒子のサイズの揃った金属触媒微粒子を得ることができる。さらに、金属触媒微粒子が形成される過程で、渦流による激しい衝突により金属の結晶性粒子が多数集合した金属触媒微粒子の集合体を形成する。このようにして金属触媒微粒子が速やかに生成されるため、炭素化合物の分解が促進されて、十分な炭素物質が供給されることになり、前記集合体の各々の金属触媒微粒子を核として放射状に微細炭素繊維が成長し、一方で、前記したように一部の炭素化合物の熱分解速度が炭素物質の成長速度よりも速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向にも成長し、前記集合体の周りに粒状部を形成し、所期の三次元構造を有する炭素繊維構造体を効率よく形成する。なお、前記金属触媒微粒子の集合体中には、他の触媒微粒子よりも活性の低いないしは反応途中で失活してしまった触媒微粒子も一部に含まれていることも考えられ、集合体として凝集するより以前にこのような触媒微粒子の表面に成長していた、あるいは集合体となった後にこのような触媒微粒子を核として成長した非繊維状ないしはごく短い繊維状の炭素物質層が、集合体の周縁位置に存在することで、本発明に係る炭素繊維構造体の粒状部を形成しているものとも思われる。
【0074】
反応炉の原料ガス供給口近傍において、原料ガスの流れに乱流を生じさせる具体的手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、原料ガス供給口より反応炉内に導出される原料ガスの流れに干渉し得る位置に、何らかの衝突部を設ける等の手段を採ることができる。前記衝突部の形状としては、何ら限定されるものではなく、衝突部を起点として発生した渦流によって十分な乱流が反応炉内に形成されるものであれば良いが、例えば、各種形状の邪魔板、パドル、テーパ管、傘状体等を単独であるいは複数組み合わせて1ないし複数個配置するといった形態を採択することができる。
【0075】
このようにして、触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱生成して得られた中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような(生焼け状態の、不完全な)構造を有し、ラマン分光分析をすると、Dバンドが非常に大きく、欠陥が多い。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属を含んでいるため、800〜1200℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後に骨格構造体に用いてもよい。また高温熱処理(1800℃以上)を中間体に施した後、骨格構造体に用いてもよいが、上記したようにホウ素をドーピングさせるエネルギーの面からすると好ましくない。
【0076】
なお、このような高温熱処理前もしくは処理後において、炭素繊維構造体の円相当平均径を50〜500μmに解砕・粉砕処理する工程を経ることで、所望の円相当平均径を有する炭素繊維構造体を得る。
【0077】
このような特性を有する本発明における骨格構造体の製造方法については、特に限定されることはないが、具体例を示すと以下の通りである。
【0078】
まず、上記で説明した炭素繊維構造体と、有機バインダーとを双腕型ニーダーやミキサー型混練機を用いて混合混練する。バインダーとしては、熱硬化性樹脂あるいはピッチなどが挙げられる。熱硬化性樹脂は、常温では液体状態のもの、固形状であるが加熱温度50〜90℃程度で液体状になるものがあるが、100〜200℃程度の加熱による硬化工程により架橋・重合して高分子となり固化する性質を有し、加えて、高温に加熱しても流動状態とならずに分解して炭素化するという性質を有しているものであればいずれのものであってもよい。ピッチは様々な種類のものがあるが、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ等、いずれのものであってもよい。
【0079】
なお、混練時に溶剤を用いる熱硬化性樹脂においては、混練後において熱硬化性樹脂を硬化させない程度の温度で溶剤を乾燥させておく。
【0080】
続いて、炭素繊維構造体が熱硬化性樹脂と混合混練されて塊状になっている場合には、解砕して次工程である成形工程に供することとする。
【0081】
成形工程においては、金型を用いて上下からプレスする方法、ゴム型を用いて静水圧にて等方的にプレスする方法などが好適である。
【0082】
プレス時における成形圧力は、1〜2000kg/cm程度が好ましい。なお、成形時に炭素繊維構造体間が熱硬化性樹脂にて結合されるが、熱硬化性樹脂が硬化していないと結合力が弱く、圧力を抜くと、炭素繊維構造体が有する復元性により結合したのものが外れてしまうため、プレス時に100〜200℃程度の温度に加熱して熱硬化性樹脂を硬化させて結合力を高めておくことが好ましい。
【0083】
次に、熱硬化性樹脂を硬化して得た成形体を脱酸素雰囲気または不活性ガス雰囲気中で加熱することにより熱硬化性樹脂を炭化させる。熱硬化性樹脂は、300〜900℃の範囲で分解して炭素化し、さらに高温にてアニーリング処理を施すことにより、炭素繊維構造体を構成するパッチ状のシート片は、それぞれ結合して複数のグラフェンシート状の層を形成する。なお、アニーリング処理の際に、熱硬化性樹脂が炭化した部分も炭素繊維構造体と同様改質され、黒鉛化することとなる。
【0084】
バインダーにピッチを用いる場合は、プレス成形後150〜400℃で酸化性雰囲気で不融化処理し、その後、800〜1500℃で炭素化する。
【0085】
なお、当該高温熱処理をする段階において、成形体とホウ素とを混合しておくことにより、炭素繊維の結晶内にホウ素を含有せしめる(ドーピングする)ことができる。ここで、炭素繊維構造体の結晶内にホウ素を効率良く含有せしめるためには、炭素繊維構造体とホウ素とをよく混合し、これらが均一に接触するようにすることが必要である。そのためには、ホウ素(またはホウ素化合物)の粒子はできるだけ粒径の小さいものを使用することが好ましい。粒子が大きいと部分的に高濃度領域が発生することになり、固結化の原因になりかねない。具体的にはホウ素の粒度は平均粒径で100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下とする。また、ホウ素源として硼酸等を用いる場合は、水溶液として添加し、予め水分を蒸発させる方法や加熱過程で水分を蒸発する方法も用いることができる。水溶液を均一に混合すれば水分蒸発後はホウ素化合物を繊維表面に均一に付着させることができる。
【0086】
熱硬化性樹脂またはピッチのいずれを用いてもバインダーが硬化あるいは不融化するまでは成形体に圧力を加え、炭素繊維構造体の復元による接合部分の接離を防止することが好ましい。さらに好ましくは、炭素化及び黒鉛化工程においてのバインダーが炭素化し、炭素繊維構造体およびバインダー由来の炭素が黒鉛化する際も圧力を加えておくことが好ましい。1800℃以上の温度の高温にて熱処理を施すと炭素繊維構造体が拘束されたまま熱処理され、アニーリングにより成形体内での炭素繊維構造体の形状は固定化することができる。
【0087】
次に、上記の炭素化及び黒鉛化工程を終えた、炭素繊維構造体が炭素で接合してなる骨格構造体の内部に形成される空隙部に樹脂、ゴム、金属、カーボン系材料を含浸させる含浸工程を行う。
【0088】
含浸工程において含浸せしめる樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び液晶ポリマー等の各種熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂およびユリア樹脂等の各種熱硬化性樹脂等を挙げることができる。また、含浸させるゴムとしては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム、エチレンアクリルゴム、ノルボルネンゴム等を挙げることができる。また、含浸せしめる金属としては、アルミニウム、マグネシウム、鉛、銅、タングステン、チタン、ニオブ、ハフニウム、バナジウム、並びにこれらの合金及び混合物等が挙げられる。さらに含浸せしめるカーボン系材料としては、例えばグラッシーカーボンを挙げることができる。
【0089】
含浸方法としては、圧力方式と吸引方式のいずれもが適用可能である。圧力方式の含浸装置を用いる場合には、雌金型と雄金型からなる圧縮用金型の中に前述の骨格構造体と含浸材料を挿入し、圧力により含浸材料を骨格構造体の内部に形成された空隙部に含浸させる。前記圧縮用金型はヒーターにより加熱することができる。含浸材料が硬化剤により硬化させる樹脂モノマーである場合には前記ヒーターによる加熱は必要としない。この圧力方式は、上記の含浸材料のすべてに適用可能である。
【0090】
一方、吸引方式の含浸装置を用いる場合、含浸材料が金属やカーボン系材料の場合には適用できないが、硬化剤により硬化させる樹脂モノマーなどに対して有効な方法である。
【0091】
本発明の複合材料全体に対する骨格構造体の体積%については、骨格構造体の空隙率や含浸材料の種類によって左右されるものであり、一概に特定することはできないが、10〜99.9%であることが好ましく、30〜90%が特に好ましい。骨格構造体の体積%が10%以下であると、骨格構造体の強度が充分なものとならない。一方、骨格構造体の体積%が、99.9%以上であると、空隙部への材料の含浸が困難となるためである。
【0092】
さらに、本発明に係る複合材料に関して、これを、配合される炭素繊維構造体の機能別に具体例を示すと、次のようなものが例示されが、もちろん、これらに何ら限定されるものではない。
【0093】
1)導電性を利用するもの
樹脂を含浸することによる、導電性樹脂及び導電性樹脂成型体として,例えば包装材、ガスケット、容器、抵抗体、電線、等に好適に用いられる。また、樹脂との複合材に加え、無機材料、特にセラミックス、金属等の材料を含浸した複合材料においても同様の効果が期待できる。
【0094】
2)熱伝導性を利用するもの
上記導電性の利用の場合と同様の用い方ができる。
【0095】
3)電磁波遮蔽性を利用するもの
樹脂を含浸することにより、電磁波遮蔽材等として好適である。
【0096】
4)物理的特性を利用するもの
摺動性を高めるために樹脂、金属を含浸することで、ロール、ブレーキ部品、タイヤ、ベアリング、潤滑油、歯車、パンタグラフ等に利用することができる。
【0097】
また、軽量で強靭な特性を活かして電線、家電・車輌・飛行機等のボディ、機械のハウジングに利用することも可能であろう。このほか、従来の炭素繊維、ビーズの代替としても使用でき、例えば電池の極材、スイッチ、防振材に応用することもできる。
【0098】
5)フィラー特性を利用するもの
炭素繊維構造体の有する微細繊維は優れた強度を持ち、柔軟性があり、網目構造を構成するフィラー特性が優れている。この特性を利用することによって、リチウムイオン2次電池、鉛蓄電池、キャパシター、燃料電池等のエネルギーディバイスの電極の強化とサイクル特性の向上に寄与できる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
なお、以下において、本発明に用いられる炭素繊維構造体の各物性値は次のようにして測定した。
【0101】
<面積基準の円相当平均径>
まず、粉砕品の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。対象とされた各炭素繊維構造体の輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化した。
【0102】
<嵩密度の測定>
内径70mmで分散板付透明円筒に1g粉体を充填し、圧力0.1Mpa、容量1.3リットルの空気を分散板下部から送り粉体を吹出し、自然沈降させる。5回吹出した時点で沈降後の粉体層の高さを測定する。このとき測定箇所は6箇所とることとし、6箇所の平均を求めた後、嵩密度を算出した。
【0103】
<ラマン分光分析>
堀場ジョバンイボン製LabRam800を用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
【0104】
<導電性>
得られた板状試験片の導電性を、四探針低抵抗率計(三菱化学(株)製、ロレスタGP)を用いて測定し、同抵抗計により体積抵抗(Ω・cm)に換算し、平均値を算出した。
【0105】
<TG燃焼温度>
マックサイエンス製TG−DTAを用い、空気を0.1リットル/分の流速で流通させながら、10℃/分の速度で昇温し、燃焼挙動を測定した。燃焼時にTGは減量を示し、DTAは発熱ピークを示すので、発熱ピークのトップ位置を燃焼開始温度と定義した。
【0106】
<復元性>
CNT粉体1gを秤取り、樹脂製ダイス(内寸40L、10W、80Hmm)に充填圧縮し、変位および荷重を読み取る。0.9g/cmの密度まで測定したら、圧力を解除し復元後の密度を測定した。
【0107】
<粒状部の平均粒径、円形度、微細炭素繊維との比>
面積基準の円相当平均径の測定と同様に、まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。
【0108】
対象とされた各炭素繊維構造体において、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして、その輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各粒状部の円相当径を計算し、これを平均化して粒状部の平均粒径とした。また、円形度(R)は、前記画像解析ソフトウェアを用いて測定した輪郭内の面積(A)と、各粒状部の実測の輪郭長さ(L)より、次式により各粒状部の円形度を求めこれを平均化した。
【0109】
R=A*4π/L2
さらに、対象とされた各炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径を求め、これと前記各炭素繊維構造体の粒状部の円相当径から、各炭素繊維構造体における粒状部の大きさを微細炭素繊維との比として求め、これを平均化した。
【0110】
<粒状部の間の平均距離>
面積基準の円相当平均径の測定と同様に、まず、炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真において、炭素繊維構造体の輪郭が明瞭なもののみを対象とし、炭素繊維構造体が崩れているようなものは輪郭が不明瞭であるために対象としなかった。1視野で対象とできる炭素繊維構造体(60〜80個程度)はすべて用い、3視野で約200個の炭素繊維構造体を対象とした。
【0111】
対象とされた各炭素繊維構造体において、粒状部が微細炭素繊維によって結ばれている箇所を全て探し出し、このように微細炭素繊維によって結ばれる隣接する粒状部間の距離(一端の粒状体の中心部から他端の粒状体の中心部までを含めた微細炭素繊維の長さ)をそれぞれ測定し、これを平均化した。
【0112】
<炭素繊維構造体の破壊試験>
蓋付バイアル瓶中に入れられたトルエン100mlに、30μg/mlの割合で炭素繊維構造体を添加し、炭素繊維構造体の分散液試料を調製した。
【0113】
このようにして得られた炭素繊維構造体の分散液試料に対し、発信周波数38kHz、出力150wの超音波洗浄器((株)エスエヌディ製、商品名:USK-3)を用いて、超音波を照射し、分散液試料中の炭素繊維構造体の変化を経時的に観察した。
【0114】
まず超音波を照射し、30分経過後において、瓶中から一定量2mlの分散液試料を抜き取り、この分散液中の炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影する。得られたSEM写真の炭素繊維構造体中における微細炭素繊維(少なくとも一端部が粒状部に結合している微細炭素繊維)をランダムに200本を選出し、選出された各微細炭素繊維の長さを測定し、D50平均値を求め、これを初期平均繊維長とした。
【0115】
一方、得られたSEM写真の炭素繊維構造体中における炭素繊維相互の結合点である粒状部をランダムに200個を選出し、選出された各粒状部をそれぞれ1つの粒子とみなしてその輪郭を、画像解析ソフトウェア WinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各粒状部の円相当径を計算し、このD50平均値を求めた。そして得られたD50平均値を粒状部の初期平均径とした。
【0116】
その後、一定時間毎に、前記と同様に瓶中から一定量2mlの分散液試料を抜き取り、この分散液中の炭素繊維構造体の写真をSEMで撮影し、この得られたSEM写真の炭素繊維構造体中における微細炭素繊維のD50平均長さおよび粒状部のD50平均径を前記と同様にして求めた。
【0117】
そして、算出される微細炭素繊維のD50平均長さが、初期平均繊維長の約半分となった時点(本実施例においては超音波を照射し、500分経過後)における、粒状部のD50平均径を、初期平均径と対比しその変動割合(%)を調べた。
【0118】
(実施例1)
i)炭素繊維構造体の合成
CVD法によって、トルエンを原料として炭素繊維構造体を合成した。
【0119】
触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気で行った。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、生成炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体(第一中間体)を得た。
【0120】
また、この第一中間体をトルエン中に分散して電子顕微鏡用試料調製後に観察したSEMおよびTEM写真を図1、2に示す。
【0121】
なお、この炭素繊維構造体(第一中間体)を製造する際に用いられた生成炉の概略構成を図4に示す。図4に示すように、生成炉1は、その上端部に、上記したようなトルエン、触媒および水素ガスからなる原料混合ガスを生成炉1内へ導入する導入ノズル2を有しているが、さらにこの導入ノズル2の外側方には、円筒状の衝突部3が設けられている。この衝突部3は、導入ノズル2の下端に位置する原料ガス供給口4より反応炉内に導出される原料ガスの流れに干渉し得るものとされている。なお、この実施例において用いられた生成炉1では、導入ノズル2の内径a、生成炉1の内径b、筒状の衝突部3の内径c、生成炉1の上端から原料混合ガス導入口4までの距離d、原料混合ガス導入口4から衝突部3の下端までの距離e、原料混合ガス導入口4から生成炉1の下端までの距離をfとすると、各々の寸法比は、おおよそa:b:c:d:e:f=1.0:3.6:1.8:3.2:2.0:21.0に形成されていた。また、反応炉への原料ガス導入速度は、1850NL/min、圧力は1.03atmとした。
【0122】
上記のようにして合成された中間体を窒素中で900℃で焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、第二中間体を得た。この第二中間体のラマン分光測定のR値は0.82であった。
【0123】
また、得られた炭素繊維構造体をそのまま電子顕微鏡用試料ホルダーに載置して観察したSEM写真を図3に、またその粒度分布を表1に示した。
【0124】
また、得られた炭素繊維構造体の円相当平均径は、155μm、嵩密度は0.0029g/cm、ラマンI/I比値は、復元後の密度は0.25g/cmであった。
【0125】
さらに炭素繊維構造体における粒状部の粒径は平均で、443nm(SD207nm)であり、炭素繊維構造体における微細炭素繊維の外径の7.38倍となる大きさであった。また粒状部の円形度は、平均値で0.67(SD0.14)であった。
【0126】
また、前記した手順によって炭素繊維構造体の破壊試験を行ったところ、超音波印加30分後の初期平均繊維長(D50)は、12.8μmであったが、超音波印加500分後の平均繊維長(D50)は、6.7μmとほぼ半分の長さとなり、炭素繊維構造体において微細炭素繊維に多くの切断が生じたことが示された。しかしながら、超音波印加500分後の粒状部の平均径(D50)を、超音波印加30分後の初期平均径(D50)と対比したところ、その変動(減少)割合は、わずか4.8%であり、測定誤差等を考慮すると、微細炭素繊維に多くの切断が生じた負荷条件下でも、切断粒状部自体はほとんど破壊されることなく、繊維相互の結合点として機能していることが明らかとなった。
【0127】
なお、実施例1で合成した炭素繊維構造体の各種物性値を表2にまとめた。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

ii)骨格構造体の形成
上記i)で合成した炭素繊維構造体を用いて骨格構造体を形成した。
【0130】
具体的には、i)で合成した炭素繊維構造体にメタノールを溶剤としたフェノール樹脂(群栄化学工業株式会社レヂトップ)をバインダーとして添加混合した。バインダーは、炭素繊維構造体に対して25質量%添加し、混錬はミキサー方式の混錬機(株式会社シンキー製あわとり錬太郎)を用いた。次に、得られた混錬物を70℃のホットプレート上で乾燥し、乾燥後、150℃で加熱成形してフェノール樹脂を硬化した。次に得られた成形体をアルゴンガス雰囲気において、2500℃に加熱し、バインダー成分を炭化及び黒鉛化させた骨格構造体を得た。
【0131】
実施例1における骨格構造体の物性値を表3に示す。
【0132】
(実施例2)
実施例1と同様に樹脂を硬化して得た成形体に、Bをメタノールに溶解した溶液を含浸後乾燥する工程をホウ素添加量が成形体に対して3.5質量%となるよう繰り返した。ホウ素を担持させた成形体を実施例1と同様に、アルゴンガス雰囲気中において、2500℃に加熱し、バインダー成分を炭化及び黒鉛化させた骨格構造体を得た。
【0133】
実施例2における骨格構造体の物性値を表3に示す。
【0134】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の骨格構造体に用いる炭素繊維構造体の中間体のSEM写真である。
【図2】本発明の骨格構造体に用いる炭素繊維構造体の中間体のTEM写真である。
【図3】本発明の骨格構造体に用いる炭素繊維構造体のSEM写真である。
【図4】本発明の実施例において炭素繊維構造体の製造に用いた生成炉の概略構成を示す図面である。
【符号の説明】
【0136】
1 生成炉
2 導入ノズル
3 衝突部
4 原料ガス供給口
a 導入ノズルの内径
b 生成炉の内径
c 衝突部の内径
d 生成炉の上端から原料混合ガス導入口までの距離
e 原料混合ガス導入口から衝突部の下端までの距離
f 原料混合ガス導入口から生成炉の下端までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状を呈しており、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ、当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなる炭素繊維構造体を、炭素により3次元に接合させることにより形成されることを特徴とする骨格構造体。
【請求項2】
ホウ素が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の骨格構造体。
【請求項3】
前記ホウ素の含有量が、前記骨格構造体に対して0.001〜10質量%であることを特徴とする請求項2に記載の骨格構造体。
【請求項4】
前記炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の骨格構造体。
【請求項5】
前記骨格構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが1.4以下であり、且つ、IG’/Iが1.5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の骨格構造体。
【請求項6】
前記骨格構造体は、嵩密度が、0.2〜2.3g/cmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の骨格構造体。
【請求項7】
前記骨格構造体は、空気中での燃焼開始温度が700℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の骨格構造体。
【請求項8】
前記炭素繊維の結合箇所において、前記粒状部の粒径が、前記炭素繊維の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の骨格構造体。
【請求項9】
前記炭素繊維構造体は、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いて、生成されたものである請求項1〜8のいずれか1つに記載の骨格構造体。
【請求項10】
外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状を呈しており、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ、当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなる炭素繊維構造体を、炭素により3次元に接合させることにより形成される骨格構造体を有し、
当該骨格構造体の内部に形成される空隙部には樹脂、ゴム、金属、またはカーボン系材料が含浸されていることを特徴とする複合材料。
【請求項11】
前記骨格構造体には、ホウ素が含有されていることを特徴とする請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記ホウ素の含有量が、前記骨格構造体に対して0.001〜10質量%であることを特徴とする請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜500μmであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項14】
前記骨格構造体は、ラマン分光分析法で測定されるI/Iが1.4以下であり、且つ、IG’/Iが1.5以下であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項15】
前記骨格構造体は、嵩密度が、0.2〜2.3g/cmであることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項16】
前記骨格構造体は、空気中での燃焼開始温度が700℃以上であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項17】
前記炭素繊維の結合箇所において、前記粒状部の粒径が、前記炭素繊維の外径よりも大きいことを特徴とする請求項10〜16のいずれか1つに記載の複合材料。
【請求項18】
前記炭素繊維構造体は、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いて、生成されたものである請求項10〜17のいずれか1つに記載の複合材料。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−138338(P2007−138338A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334472(P2005−334472)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(502205145)株式会社物産ナノテク研究所 (101)
【Fターム(参考)】