複合材料
マトリックスに結合した繊維の層を含む複合材料であって、該マトリックスおよび繊維の一方は、第1の方向に沿った荷重に対してオーセチック挙動を示す第1の構成要素を含み、該マトリックスおよび繊維の他方は、該第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック挙動を示す第2の構成要素を含む複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、形態および化学組成で異なり、互いに本質的に不溶性である2以上のミクロまたはマクロ成分の混合または組合せから構成される材料系であると伝統的に考えられている。それぞれの個々の成分の特性より優れる特性を有するために複合材料は重要である。複合系は、ポリマー、金属またはセラミックベースの系、あるいはこれらのクラスの材料の一部の組合せであり得る。最近、同じポリマーの高融点および低融点成分を有する複合材料が開発されており、ナノスケールで成分を含む複合材料(いわゆるナノ複合材料)も開発されている。
【0003】
ポリマー複合材料において、通常、補強材料には、連続繊維、短チョップド繊維、繊維織物構造および球状包接体を含む様々な形態のガラス、炭素、アラミド、ホウ素、炭化ケイ素および酸化アルミニウムなどがある。天然のポリマー繊維、例えば、麻およびセルロースも補強材料として使用される。一般的なポリマーマトリックス材料には、熱硬化性ポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド、ならびに熱可塑性ポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などがある。
【0004】
セラミック複合材料において、通常、補強材料には、連続モノフィラメントおよびマルチフィレメントのトウ繊維、ウィスカー、小板状体、ならびに粒子を含む様々な形態の炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、二ホウ素チタンおよび窒化ホウ素などがある。一般的なセラミックマトリックス材料には、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸リチウム、アルミノケイ酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素および窒化アルミニウムなどがある。
【0005】
金属マトリックス複合材料において、通常、補強材料には、連続繊維、非連続繊維、ウィスカー、粒子および線(wires)を含む様々な形態のタングステン、ベリリウム、チタン、モリブデン、ホウ素、グラファイト(炭素)、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素およびアルミナ−シリカなどがある。一般的な金属マトリックス材料には、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄および銅の合金ならびに超合金などがある。
【0006】
複合材料は通常、積層体の形態にあり、すなわち、それらは、それぞれが、マトリックス内に埋め込まれた連続長さの一方向補強繊維を含むいくつかの層(薄層)から構成される。機械的特性は、特定の用途のための積層順序および配向を選択することによって最適化される。
【0007】
高温(通常120から190℃)で製造中に硬化される先進ポリマー複合材料の特性は、成分、すなわちマトリックスと補強材とが、周囲温度(通常20から30℃)に冷却する間に異なる速度で収縮する際に複合材料中に生じる残留応力によって低下することはよく知られている。
【0008】
先進複合材料がだんだん熱くなりそして冷える際に、内部応力は複合材料構造の形状を変形させることもよく知られている。
【0009】
この変形を減少させる試みとして、補強材に対して軸をはずして位置付けされるさらなる材料の層を導入することが知られている。この工程は、バランシングとして知られる。しかし、これは、機械特性が最適化され得ない積層体を生じる作用を有し、製造段階で時間と費用を増加させ、構成要素の重量も増加させる。
【0010】
他の手法は、複合材料全体の、平均して所望のゼロまたは低熱膨張を達成するために、同じ複合材料内の正および負の両方の熱膨張係数(CTE)材料を組み合わせることであった。この後者の点の例には、高温の打ち上げからより低い温度の宇宙条件まで寸法と形状を維持するべく人工衛星のケーシングにおける使用のための、正のCTEシアナートエステルマトリックス内の負の軸方向CTE炭素繊維などがある。プリント基板における使用のために低いまたはゼロのCTE基板を製造するべく、正のCTE熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ)を補強するために不織布アラミド材料(負のCTE)が用いられる。大望遠鏡の鏡基板および航空機におけるレーザージャイロスコープ用の低いまたはゼロのCTE複合材料を製造するために、ガラス石英(正のCTE)内に水晶粒子(負のCTE)が用いられる。オプトエレクトロニクスシステムにおける使用のために温度範囲にわたって一定の反射波長を示す低いまたはゼロのCTE繊維ブラッグ格子装置を製造するために負のCTEタングステン酸ジルコニウムのパッケージングおよび支持体は、正のCTEシリカ繊維と組み合わされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、負と正のCTE材料を組み合わせることは、いくつかの不利点を有し、これらには以下が含まれる:a)特定の用途のための他の物理特性の適切な範囲を有する負のCTE材料の相対的な不足が存在するための使用の制限;b)積層体系において、薄層間せん断を増加させる傾向の存在;およびc)負のCTE材料の追加による、複合材料の重量および加工の避けがたい増加。これらを考慮すると結果として最終複合材料の費用増加をもたらす。
【0012】
したがって、複合材料をだんだん熱くしそして冷却することから生じる材料のいずれの変形も最小化するために、その構成要素が異なる膨張率を有する材料を含む複合材料を提供することが望ましい。さらに、複合材料が広く用いられ得るために、構成要素材料は適当な範囲の物理特性をもつことが望ましい。複合材料が部分を形成する複合材料または構造の様々な構成要素間の接合(機械的な力であるか接着されているかのいずれかである)の性能を改善するために、複合材料をその周囲構造または他の複合材料に適合させ得ることも望ましい。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、マトリックスに結合した繊維の層を含む複合材料であって、該マトリックスおよび繊維の一方は、第1の方向に沿った荷重に対してオーセチック(auxetic)挙動を示す第1の構成要素を含み、該マトリックスおよび繊維の他方は、第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック(non-auxetic)挙動を示す第2の構成要素を含む複合材料が提供される。
【0014】
オーセチック挙動は、材料に関して特定の方向で測定して、負(ゼロ未満)であるポアッソン比で定義される。結果として、材料を、引張り荷重をかけてその方向に伸張する場合、材料はその方向に対して横方向に膨張する。これに対して、その方向に圧縮する場合、材料はその方向に対して横方向に収縮する。同様に、非オーセチック挙動は、正(ゼロを超える)であるポアッソン比で定義される。
【0015】
用語「第1の方向」は、引張り荷重がかけられる方向であり、したがって、オーセチック挙動がポアッソン比で定義される方向であると理解される。
【0016】
用語「ヤング率」は、当該技術分野で知られており、剛性の測定単位であると理解される。小さい歪みについて、歪みに対する応力の変化率として定義される。ヤング率が材料について全ての方向で同じであれば、その材料は、等方性であると呼ばれる。力がかけられる方向に依存してヤング率が変化する材料は、異方性と呼ばれる。ヤング率のSI単位はパスカル(Pa)、または別に、ギガパスカルと同じ数値を与えるkN/mm2である。
【0017】
用語「熱膨張係数」は当該技術分野において知られており、温度の変化による材料の寸法の変化についていう。正の膨張係数を有する材料は、加熱されると膨張し、冷却されると収縮する。一部の物質は、負の膨張係数を有し、冷却される(例えば、水を凍らせる)と膨張する。
【0018】
繊維の層は、マトリックス中に埋め込まれても、マトリックス中に部分的に埋め込まれてもよく、マトリックスと接触した別個の層を形成してもよい。
【0019】
繊維の層は、以下の任意の好適な構成を有し得る;例えば、一方向の繊維の束、または織られた、編まれた、もしくは不織のメッシュを含み得る。好ましくは、繊維の層は、一方向の繊維、または織られた、編まれた、もしくは不織のメッシュを含む。さらに好ましくは、繊維の層は一方向の繊維を含む。
【0020】
繊維の層が一方向の繊維を含む場合、好ましくは、オーセチック挙動の評価のために荷重がそれに沿ってかけられる第1の方向は、繊維の方向と平行である。
【0021】
疑いを回避するために、複合材料の相(繊維およびマトリックス)のいずれかまたは両方は、第1の構成要素、第2の構成要素、または、第1および第2の構成要素の両方を含み得る。
【0022】
好ましい実施形態において、繊維の層は第1の構成要素を含み、マトリックスは第2の構成要素を含む。さらに好ましくは、複合材料は、第1の方向に沿う荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス中に埋め込まれた繊維の層を含み、その一部は第1の方向に沿う荷重に対してオーセチック挙動を示し、その一部は第1の方向に対して非オーセチック挙動を示す。
【0023】
好ましい実施形態において、複合材料の熱膨張係数は、第1の方向に対して平行および垂直で測定して、実質的に等しい。
【0024】
長手方向(すなわち、第1の方向と平行に測定して)と横方向(すなわち、第1の方向と垂直に測定して)との複合材料の熱膨張係数間の関係を調節するために、熱膨張係数、ポアッソン比、およびヤング率の特定の値を有する複合材料の材料を選択すること、ならびにそれぞれの材料によって占められる複合材料の容積割合を調節することが必要である。
【0025】
他の実施形態において、繊維は第2の構成要素を含み、マトリックスは第1の構成要素を含む。
【0026】
好ましくは、両者を第1の方向に平行な方向で測定して、第2の構成要素の熱膨張係数は、第1の構成要素のものより低い。好ましくは、第1の方向に平行な方向で測定して、第2の構成要素の熱膨張係数は、1×10-5K-1未満である。好ましくは、第1の方向に平行な方向で測定して、第1の構成要素の熱膨張係数は、5.4×10-5K-1を超える。
【0027】
好ましくは、第2の構成要素の容積割合は、60%から70%、より好ましくは62%である。好ましくは、第1の構成要素の容積割合は、40%未満、より好ましくは15%から25%、最も好ましくは19%である。
【0028】
好ましくは、複合材料は、第1の方向に沿う荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス材料をさらに含む。好ましくは、非オーセチックマトリックス構成要素の容積割合は、40%未満、より好ましくは15%から25%、最も好ましくは19%である。
【0029】
マトリックス材料および第1の構成要素がマトリックス相の成分である実施形態において、第1の構成要素およびマトリックス材料の容積割合は、全体で好ましくは38%であり得る。
【0030】
例えば、1つの実施形態において、複合材料は、
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、横方向ポアッソン比+0.28、軸方向ヤング率230GPa、横方向ヤング率3GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向繊維構成要素;
容積割合0.19、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素;ならびに
容積割合0.19、等方性ポアッソン比−2、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数9.61×10-5K-1を有するオーセチックマトリックス構成要素
を含み、複合材料は、繊維の方向に対して平行および垂直の両方で、ゼロの熱膨張係数を有する。
【0031】
他の実施形態において、第2の構成要素の容積割合は、60%から70%、より好ましくは62%である。第1の構成要素の容積割合は、好ましくは40%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは3.5%であり得る。
【0032】
好ましくは、複合材料は、第1の方向に沿う荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス材料をさらに含む。非オーセチックマトリックス構成要素の容積割合は、40%から30%、最も好ましくは34.5%である。
【0033】
マトリックス材料および第1の構成要素がマトリックス相の成分である実施形態において、第1の構成要素およびマトリックス材料の容積割合は、全体で好ましくは38%であり得る。
【0034】
例えば、他の実施形態において、複合材料は、
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、横方向ポアッソン比+0.28、軸方向ヤング率230GPa、横方向ヤング率3GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向繊維構成要素;
容積割合0.3455、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素;ならびに
容積割合0.0345、等方性ポアッソン比−4、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数2.86×10-4K-1を有するオーセチックマトリックス構成要素
を含み、複合材料は、繊維の方向に対して平行および垂直の両方で、ゼロの熱膨張係数を有する。
【0035】
したがって、オーセチック材料は、複合材料の熱膨張性を調節するために用いることができる。
【0036】
理論によって拘束されることを望むことなしに、本発明の第2の態様の複合材料の硬化の間に、第1および第2の構成要素が複合材料内で結合されるようになると考えられる。加工中に生じる温度の変化を含む、複合材料が温度を変える際にオーセチック材料(第1の構成要素)において生じた歪みが、複合材料における非オーセチック材料(第2の構成要素を含む)の収縮および膨張に反して、オーセチック構成要素を第1の方向に対して膨張および収縮させる。熱歪みが複合材料において生じる際に、オーセチック構成要素および非オーセチック構成要素の膨張および収縮は均衡したままであり、複合材料内のオーセチック材料の比率と分布によって膨張係数をもたないかまたは調節された膨張率を有する複合材料を作り出す。
【0037】
本発明の複合材料の特定の実施形態は、1つまたは複数の以下の利点も示し得る:
a)長手方向および横方向(すなわち、第1の方向に対して平行および垂直)で等しい熱膨張係数;
b)本発明の複合材料が積層体の形態にある場合、オーセチック構成要素を含む積層複合材料における熱膨張挙動の方向性依存の除去の結果として、オーセチック構成要素を含まない積層複合材料に比べて、必要とされる材料の層の数の減少;
c)従来技術の複合材料に比べて残留応力のレベル減少;
d)別個のバランス層の必要の除去(これは設計分析減少、さらなる設計選択余地、複合材料性能改善および複合材料質量減少を与える);
e)冷却工程中の変形減少;ならびに
f)オーセチック構成要素を欠く材料についてのこのような結合に比べて、異なる膨張率を有する本発明の複合材料と周囲材料との間の結合の性能改善。この改善は、複合材料内または複合材料と周囲材料との間の中間層、例えば、フィルム接着剤内のオーセチック構成要素の追加によって、複合材料の熱膨張挙動を周囲材料と適合させる能力による。
【0038】
様々なオーセチック材料が報告されており、これらには、オーセチック熱可塑性(ポリエステルウレタン)、熱硬化性(シリコーンゴム)および金属(銅)発泡体(Friis, E.A.、Lakes, R.S.およびPark, J.B.、J. Mater. Sci. 1988年、23、4406頁);オーセチック熱可塑性微小孔性ポリマーシリンダー(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE);ポリプロピレン(PP)、およびナイロン)(Evans, K.E.およびAinsworth, K.L.、International Patent Application WO91/01210、1991年;Alderson, K.L.およびEvans, K.E.、Polymer 、1992年、33、4435〜8頁;Pickles, A.P.、Alderson, K.L.およびEvans, K.E、Polymer Engineering and Science、1996年、36、636〜42頁;Alderson, K.L.、Alderson, A.、Webber, R.S.およびEvans, K.E.、J. Mater. Sci. Lett.、1998年、17、1415〜19頁)、モノフィラメント(PP、ナイロンおよびポリエステル)(Alderson, K.L.、Alderson, A.、Smart, G.、Simkins, V.R.および Davies, P.J.、Plastics, Rubber and Composites 2002年、31(8)、344頁;Ravirala, N.、Alderson, A.、Alderson, K.L. およびDavies, P.J.、Phys. Stat. Sol. B2005、242(3)、653頁)およびフィルム(PP)(Ravirala, N., Alderson, A., Alderson, K.L.および Davies, P.J., Polymer Engineering and Science 45(4)(2005年)517頁)、天然ポリマー(結晶性セルロース)(Peura, M.、Grotkopp, I.、Lemke, H.、Vikkula, A.、Laine, J.、Muller, M およびSemimaa, R.、Biomacromolecules 2006、7(5)、1521頁およびNakamura, K.、Wada, M.、 Kuga, S.およびOkano, T.、J Polym Sci B Polym Phys Ed 2004年;42、1206頁)、複合積層体(炭素繊維−補強エポキシ、ガラス繊維−補強エポキシおよびアラミド−補強エポキシ)(Alderson, K.L.、Simkins, V.R.、Coenen, V.L.、Davies, P.J.、Alderson, A. およびEvans, K.E.、Phys. Stat. Sol. B 242(3)(2005年)509頁)、特定の銅酸ビスマス超伝導多結晶性化合物(Dominec, J.、Vasek, P.、Svoboda, P.、Plechacek, V. および Laermans, C.、Modern Physics Letters B、1992年、6、1049〜54頁)、69%立方晶系元素金属(Baughman, R.H.、Schacklette, J.M.、Zakhidov, A.A. およびStafstrom, S.、Nature、1998年、392、362〜5頁)、および結晶性シリカの天然多形体(α−クリストバライトおよびα−石英)(Yeganeh-Haeri, Y.、Weider, D.J.およびParise, J.B.、Science、1992年、257、650〜2頁;Keskar, N.R.およびChelikowsky, R.J.、Phys. Rev. B48、16227頁(1993年))。−12程度に低いポアッソン比がオーセチックポリマーにおいて測定されており(Caddock, B.D. およびEvans, K.E.、J. Phys. D:Appl. Phys.、1989年、22、1877〜82頁)、非常に大きな横方向歪み(適用された長手方向歪みを超える大きさの程度にわたる)が可能であることを示す。
【0039】
ポリマー複合材料における好適な繊維(補強材料)は、当該分野内で広く知られており、ガラス、炭素、アラミド、ホウ素、炭化ケイ素および酸化アルミニウムから作られた連続繊維、短チョップド繊維、繊維織物構造および球状包接体が含まれ得る。前記繊維および形態の任意の組合せを用い得る。ナノ繊維およびナノチューブも本発明と一緒の使用に好適な繊維を形成し得る。当業者に直ちに明らかとなるであろうように、上記に特定されたものに対する他の代わりのポリマー、金属またはセラミック材料が繊維として含まれ得ることは、当然、認められる。
【0040】
本発明のマトリックス材料は、1つまたは複数のポリマー材料を含み得る。該マトリックス材料は、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、または熱硬化性と熱可塑性ポリマーの両方を含み得る。好適な熱硬化性ポリマーの例は、当業者によく知られており、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂およびポリイミドの任意のものを単独または組合せで含む。好適な熱可塑性ポリマーの例は当業者によく知られており、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の任意のものを単独または組合せで含む。
【0041】
マトリックス材料は、硬化剤、硬化促進剤、顔料、柔軟剤、難燃剤および強化剤の任意のものを単独または組合せで含み得る1つまたは複数のさらなる構成要素をさらに含み得る。さらなる構成要素は、事実上、有機(ポリマー性を含む)、無機(セラミックを含む)または金属であり得る。
【0042】
さらなる構成要素は、考えにある所望の特性の複合材料と共に加えられる。
【0043】
本発明のオーセチック構成要素は、オーセチックモノフィラメントおよびマルチフィラメンントによって繊維中に取り込むことができ、ならび/またはマトリックス材料中に取り込むことができる。
【0044】
オーセチックモノフィラメントおよびマルチフィラメントは、連続繊維、短チョップド繊維、または繊維織物構造の形態で取り込むことができる。
【0045】
オーセチック構成要素がマトリックス材料に取り込まれる仕方は、所望の複合材料の性質に依存する。
【0046】
例えば、微粉化したオーセチック材料は、充填剤の形態でマトリックスに加えられ得る。α−クリストバライトの多結晶性凝集体は、このようにマトリックス中への取込みに好適である。オーセチック充填剤は、他のセラミック材料、ポリマーまたは金属でもあり得る。オーセチック特性は、マトリックスそれ自体内の分子レベルでオーセチック作用を巧みに操作することによって複合材料中に取り込むこともできる。オーセチック分子レベル材料の例には、液晶ポリマー(He, C.、Liu, P. およびGriffin, A.C.、Macromolecules、31、3145頁(1998年))、結晶性セルロース、立方晶系元素金属、ゼオライト、α−クリストバライト、およびα−石英が含まれる。
【0047】
オーセチック熱可塑性および/または熱硬化性樹脂は、当業者に知られており、本発明におけるマトリックス材料としての使用に好適である。
【0048】
オーセチック特性は、オーセチック金属材料およびセラミック材料によって金属およびセラミック系複合材料に与えられ得る。
【0049】
セラミックマトリックス複合材料における好適な繊維は、当該分野内で広く知られており、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、二ホウ化チタンおよび窒化ホウ素の、連続モノフィラメントおよびマルチフィラメントのトウ繊維、ウィスカー、小板状体ならびに粒子を含み得る。該材料および形態の任意の組合せを用いることができる。セラミックマトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、オーセチックセラミックの、モノフィラメントおよびマルチフィラメント、ウィスカー、小板状体ならびに粒子によって繊維中に取り込むことができる。知られたオーセチックセラミックには、シリカのα−クリストバライトおよびα−石英多形体、窒化炭素(Guo, Y. およびGoddard III, W.A.、Chem. Phys. Lett.、1995年、237、72頁)、ならびに特定の銅酸ビスマス化合物が含まれる。
【0050】
セラミックマトリックス複合材料におけるマトリックス材料は当業者によく知られており、酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸リチウムおよびアルミノケイ酸カルシウムを含む。非酸化物セラミックマトリックス材料には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、および窒化アルミニウムが含まれる。セラミックマトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、例えば、充填剤の形態でマトリックスに加えられる微粉化オーセチックセラミック材料としてマトリックス材料中に取り込むことができる。他に、セラミックマトリックスは、本質的にオーセチックであり得る。
【0051】
金属マトリックス複合材料における好適な繊維は、当該分野内で広く知られており、タングステン、ベリリウム、チタン、モリブデン、ホウ素、グラファイト(炭素)、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素およびアルミナ−シリカの連続繊維、非連続繊維、ウィスカー、粒子および線を含み得る。
【0052】
金属マトリックス複合材料におけるマトリックス材料は当業者によく知られており、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄および銅の合金ならびに超合金が含まれる。
【0053】
金属マトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、オーセチックセラミックまたは金属材料の、連続繊維、非連続繊維、ウィスカー、粒子および線によって該繊維中に取り込むことができる。金属マトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、例えば、充填剤の形態でマトリックスに加えられる微粉化オーセチックセラミックまたは金属材料としてマトリックス材料中に取り込むこともできる。他に、金属マトリックスは、本質的にオーセチックであり得る。知られたオーセチックセラミックには、シリカのα−クリストバライトおよびα−石英多形体、窒化炭素、ならびに特定の銅酸ビスマス化合物が含まれる。知られたオーセチック金属には、ヒ素、カドミウムおよび69%立方晶系元素金属が含まれる。
【0054】
本発明では、本明細書において記載される複合材料の製造方法も提供される。
【0055】
本発明の第2の態様によれば、繊維の層、未硬化マトリックス、オーセチック挙動を示すオーセチック、および非オーセチック挙動を示す第2の構成要素を混合する工程を含む、第1の態様の未硬化複合材料を製造する方法が提供される。
【0056】
好ましくは、オーセチック材料が異方性である場合、第2の態様による方法には、複合材料の他の構成要素に比べて所要の配向を有するオーセチック材料を含む未硬化複合材料を形成する工程がさらに含まれる。
【0057】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様による未硬化複合材料を形成する工程、および該未硬化複合材料を硬化させる工程を含む複合材料を製造する方法が提供される。
【0058】
第2および第3の態様の方法に用いられるオーセチック材料は、所要の特性を有するために選択され、所要の量で用いられる。第2の態様の未硬化複合材料を硬化させて、所要の熱膨張性を有する硬化複合材料を得る。
【0059】
好ましい実施形態において、マトリックスは硬化中に繊維の層に含浸する。
【0060】
第1の態様の硬化性複合材料の典型的な製造方法は、以下を含む:
a)支持テーブル上に3−相のプレプレグ補強繊維−エポキシ−オーセチック材料を配置する工程。該プレプラグは、部分的に硬化したエポキシマトリックス中の連続一方向補強繊維および連続一方向オーセチック繊維からなる。
【0061】
b)いく枚かのプレプレグシートを切り出し、積層体を形成するために所要の形状の用具上に、互いの上面上に層をなして置く工程。該層は、複合材料の特性を最適化するために異なる方向に置いてもよい。
【0062】
c)真空バッグ中に構築された積層体および用具を置き、真空をかけて、複合材料部分から取り込まれた空気を除去する工程。
【0063】
d)エポキシ樹脂の硬化を起こさせるためにオートクレーブ内に複合材料および用具を含む真空バッグを入れる工程。硬化条件は、用いられる特定のエポキシ材料に依存する。複合材料を、通常350から700kPaの圧力で120から190℃の範囲の温度に通常加熱する間、通常、硬化サイクルは長い時間続く。
【0064】
e)複合材料および用具を含む真空バッグをオートクレーブから取り出し、複合材料および用具を真空バッグから取り出し、さらなる仕上げ作業前に用具から複合材料部分を取り外す工程。
【0065】
他に、硬化性複合材料のもう1つの製造方法は、以下を含む:
a)ゲルコートをオープン型に塗布する工程。
【0066】
b)オーセチック繊維を取り込んでいる補強繊維を型に手作業で入れる工程。該補強繊維およびオーセチック繊維は、布またはマットの形態であり得る。
【0067】
c)触媒および硬化促進剤と一緒に混合された、通常ポリエステルである樹脂を該補強繊維−オーセチック繊維プライの上および中に注入、刷毛塗り、またはスプレーする工程。
【0068】
d)スキージーまたはローラーを用いて樹脂で補強繊維およびオーセチック繊維をぬらし、取り込まれた空気を除去する工程。
【0069】
e)部分の厚さを増すためにさらなる補強繊維−オーセチック繊維プライおよび樹脂を場合によって加える工程。
【0070】
f)外部熱なしに複合材料を硬化させる、室温硬化樹脂を用いて硬化させ、樹脂系中の触媒によって硬化を開始する工程。
【0071】
他に、中空円筒の形態における硬化性複合材料の製造方法であって、以下を含む方法が提供される:
a)補強繊維およびオーセチック繊維を、樹脂浴を通過させる工程。
【0072】
b)樹脂含浸補強繊維およびオーセチック繊維を回転マンドレルに巻く工程。
【0073】
c)十分な層が供給された場合に、室温またはオーブン中の高温で該構成要素を硬化させる工程。
【0074】
d)成形された複合材料をマンドレルから取り外す工程。
【0075】
他に、硬化性複合材料のもう1つの製造方法であって、以下を含む方法:
a)3−相のプレプレグ補強繊維−エポキシ−オーセチック材料を支持テーブル上に配置する工程。該プレプレグは、オーセチック充填剤粒子を含む部分的に硬化したエポキシマトリックス中の連続一方向補強繊維からなる。
【0076】
b)いく枚かのプレプレグシートを切り出し、積層体を形成するために所要の形状の用具上に、互いの上面上に層をなして置く工程。該層を複合材料の特性を最適化するために異なる方向に置いてもよい。
【0077】
c)真空バッグ中に構築された積層体および用具を置き、真空をかけて、複合材料部分から取り込まれた空気を除去する工程。
【0078】
d)エポキシ樹脂の硬化を起こさせるためにオートクレーブ内に複合材料および用具を含む真空バッグを置く工程。硬化条件は、用いられる特定のエポキシ材料に依存する。複合材料を、通常350から700kPaの圧力で120から190℃の範囲の温度に通常加熱する間、通常、硬化サイクルは長い時間続く。
【0079】
e)複合材料および用具を含む真空バッグをオートクレーブから取り出し、真空バッグから複合材料および用具を取り出し、さらなる仕上げ作業前に用具から複合材料部分を取り外す工程。
【0080】
他に、硬化性複合材料のもう1つの製造方法は、以下を含む:
a)ゲルコートをオープン型に塗布する工程。
【0081】
b)補強繊維を型に手作業で入れる工程。該補強繊維は、布またはマットの形態であり得る。
【0082】
c)オーセチック充填剤粒子を取り込んでいる、通常はポリエステルである樹脂を触媒および硬化促進剤と混合し、次いで補強繊維プライの上および中に注入、刷毛塗り、またはスプレーする工程。
【0083】
d)スキージーまたはローラーを用いて、オーセチック充填剤を含む樹脂で補強繊維をぬらし、取り込まれた空気を除去する工程。
【0084】
e)部分の厚さを増すためにさらなる補強繊維プライおよびオーセチック充填剤含有樹脂を場合によって加える工程。
【0085】
f)外部熱なしに複合材料を硬化させる、室温硬化樹脂を使用して、樹脂系中の触媒によって硬化を開始する工程。
【0086】
他に、中空円筒の形態における硬化性複合材料の製造方法であって、以下を含む方法が提供される:
a)補強繊維を、樹脂内にオーセチック充填剤粒子を含む樹脂浴を通過させる工程。
【0087】
b)オーセチック充填剤含有樹脂−含浸補強繊維を回転マンドレルに巻く工程。
【0088】
c)十分な層が適用された場合に、室温またはオーブン中の高温のいずれかで該構成要素を硬化させる工程。
【0089】
d)成形された複合材料をマンドレルから取り外す工程。
【0090】
別に特記されない限り、ポアッソン比、ヤング率、および熱膨張係数は大気圧および室温(すなわち、20℃)で測定されることが理解される。
【0091】
本発明の材料は、以下の用途における利用性を見出すことが想定される:
a)かなりの重量の減少または性能の増加、例えば、荷重耐力が望ましく、かつオーセチック材料の積層体中への導入による内部応力の減少によって達成され得る複合材料構造。用途には、航空機、道路車両、オフロード車、軍用車両、精密機械、ボート、船舶、および潜水艦用の構成要素が含まれる。
【0092】
b)以下の例:高価な炭素繊維が低コストのオーセチック繊維または充填剤によって一部置き換えられ得る低コスト用途;熱的適合による改善された精度および長寿命を含む、改善された性能の複合材料工具。
【0093】
c)高温硬化により熱的に不適合である材料(マトリックスまたは補強材)を含む複合構造。オーセチック成分の使用は、複合材料の質量減少、設計コスト減少、設計余地増加から生じる設計性能改善、ならびに製造コストおよびタイムスケール減少を可能にする。
【0094】
d)熱的に不適合であり、低温用途を含む相当な温度範囲にわたって機能する材料(マトリックスまたは補強材)を含む複合構造。低温燃料タンクおよび宇宙船の構成要素などの低温構造は、複合材料内にオーセチック成分を取り込む場合に、残留応力の減少の結果としての微小割れ減少によって恩恵を受ける。
【0095】
e)光学装置、RF装置および測定装置などの安定性が重要な用途に対して高められた安定性を示す複合構造。安定性改善は、微小割れ減少、積重ね均衡および製造誤りの影響減少によって生じる。
【0096】
f)高温打ち上げから低温宇宙条件まで寸法および形状を維持するための人工衛星用のケーシングを含む、ゼロまたは低CTE挙動を要する複合構造;プリント回路基板における使用のための基板;光学台を含む安定構造;大望遠鏡の鏡基板;航空機におけるレーザージャイロスコープ;オプトエレクトロニクスシステムにおける使用のために温度範囲にわたって一定の反射波長を示す繊維ブラッグ格子装置。
【0097】
g)成形後に機械加工を要する複合構造は、積層体中にオーセチック材料を含むことから利益を得る。当該技術分野の現状では、機械加工は積層体において不均衡を生じ、一部に変形を生じ得る。これは、複合工具上の成形表面の機械加工に特有の用途を有する。
【0098】
h)積層体へオーセチック材料を加えることによって基本的に不均衡な積層体を有する複合構造を製造することができる。これは、一部分はキャスティングを置き換えるか、あるいは手加工、編み加工および/または織り加工によって製造された不均衡な予備形態から作ることができる部品の用途を有する。
【0099】
j)局在不均衡積層体配置と組み合わせてオーセチック材料を加えることによって、構成要素に対して異なる熱膨張係数を有する局所領域を生じさせることができる。これは、金属ベアリングにおけるように実質的に異なるCTEを有する構成要素の調整に好適な領域を作製するために用い得る。
【0100】
k)高価な高性能補強材、例えば、炭素繊維の実質的な量が高比率の低コストのオーセチック繊維で置き換えられる場合に、低コスト構成要素を作製することができる。
【0101】
l)オーセチック配置が貫通に対して改善された抵抗性を有することは当業者によく知られている。加えて、オーセチック材料の添加から得られる積層体内の内部応力のレベル低下は、耐衝撃性および、破砕中に吸収されるエネルギーを増加させる。これは、軽量防護具および自動車衝突構造の製造において用途を有する。
【0102】
m)高性能構造(smart structures)として知られる、機械的、熱的または電気的入力に応じて変形する構造は、優れた性能の航空機などの製品を製造するのに有用である。熱均衡問題を無視することができ、機械的、熱的または電気的入力に応じて積層体の最適化および調整を可能にするので、高性能構造に用いられる複合積層体へオーセチック材料を加えることは設計のコストおよび複雑さを低減させる。
【0103】
実施例のみとして、以下の図面を参照して本発明についてこれからさらに説明する。図面には以下がある:
図1は、従来技術による一方向複合積層体を表した図を示す;
図2は、本発明による一方向複合積層体を表した図を示す;
図3は、図2の積層体について、第3相のポアッソン比の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す;
図4は、非オーセチックマトリックスおよび第3オーセチック相に対して等しい容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す;
図5は、非オーセチックマトリックスの容積割合10%に等しい第3オーセチック相の容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す;
図6は、30℃から80℃そして30℃に戻す加熱サイクルを受けるオーセチックポリプロピレン繊維について、時間の関数として長さを表すグラフを示す;
図7は、図2の積層体について第3相のヤング率の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す;
図8は、繰返し単位のそれぞれの場所にあるマトリックス相および第3(繊維)相により囲まれた中央の補強繊維相を含む3−相複合材料の有限要素モデル(FEM)を示す;
図9は、複合材料を120℃まで加熱する結果として補強繊維相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す;
図10は、複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチックマトリックス相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す;
図11は、複合材料を120℃まで加熱する結果として第3相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す;
図12は、複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチック第3相に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す;
図13は、複合材料を120℃まで加熱する結果としてオーセチック第3相に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す;
図14は、複合材料を150℃まで加熱する結果として2−相複合材料(非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す;および
図15は、複合材料を150℃まで加熱する結果として3−相複合材料(オーセチック第3相を有する非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す。
【0104】
図1は、従来技術による複合積層材料1を示す。複合材料1は、2層の炭素繊維補強材2および3層のエポキシマトリックス構成要素3を含む。炭素繊維補強材層2は、エポキシマトリックス構成要素層3間に配置される。
【0105】
図2は、本発明の複合積層材料4を示す。複合材料4は、炭素繊維補強材層5、およびエポキシマトリックス構成要素層6を含む。複合材料は、炭素繊維補強材層5間にあるオーセチック構成要素層7も含む。
【0106】
以下の本文では、図1に示される種類の従来技術の複合材料、および図2に示される種類の本発明の複合材料について異方性熱膨張および残留応力を比較することによって本発明がさらに説明される。
【0107】
熱膨張挙動
従来技術の複合材料
図1の複合材料1の補強繊維2が、密接に結合した界面であると仮定される場合、繊維層2の方向(x1)に対して沿ったおよび横方向の熱膨張係数は、以下の式(Kollar, L.P.およびSpringer, G.S.、Mechanics of Composite Structure、Cambridge、443〜444頁):
【0108】
【数1】
【0109】
α2=Vfαf2+Vmαm+Vfvf12(αf1−α1)+Vmvm(αm−α1) (2)
によってよく再現されることが知られている
(ここで、
α1およびα2は、それぞれ、繊維層2に対して沿うおよび横方向の複合材料1の熱膨張係数であり、
VfおよびVmは、それぞれ、繊維層2およびマトリックス3の容積割合であり、
Ef1およびEmは、それぞれ、繊維層2の軸方向ヤング率およびマトリックス層3のヤング率であり、
αf1,αf2およびαmは、それぞれ、繊維2軸方向、繊維2径方向およびマトリックス3の熱膨張係数であり、そして
vf12およびvmは、それぞれ、繊維2軸方向およびマトリックス3のポアッソン比である)。
【0110】
繊維層2として炭素繊維およびマトリックス3としてエポキシ樹脂についてパラメータの典型的な値(Vf=0.62、Vm=0.38、Ef1=230GPa、Em=3GPa、αf1=−6×10-7K-1、αf2=7×10-6K-1、αm=5.4×10-5K-1、vf12=+02およびvm=+0.38)を用いると、式(1)および(2)は、複合材料の熱膨張係数についてα1=−1.67×10-7K-1およびα2=3.26×10-5K-1の値を生じ、図1の複合材料の熱膨張の異方性性質を明らかに示す。
【0111】
本発明の複合材料
式(1)および(2)に示されるような確立された分析モデルを、第3相の存在を含めるように拡張することができ、図2の3−相複合材料4の熱膨張係数は、
【0112】
【数2】
【0113】
α2=Vfαf2+Vmαm+Vaαa+Vfvf12(αf1−α1)+Vmvm(αm−α1)+Vava(αa−α1) (4)
で与えられる
(ここで、
Vaは、第3オーセチック相7の容積割合であり、
Eaは、第3オーセチック相7のヤング率であり、
αaは、第3オーセチック相7の熱膨張係数であり、
vaは、第3相7のポアッソン比であり、
他の符号は式(1)および(2)について既に定義したとおりである)。
【0114】
第3オーセチック相7の1つまたは複数の特性は、(ほとんど)ゼロの熱膨張の可能性を含む、繊維層5の方向に沿ったおよび横方向の等しい熱膨張性を達成するために変更することができる。例えば、第3オーセチック相7の他の特性全てがエポキシマトリックス6の特性と同じであり、エポキシ6と第3オーセチック相7が等しい容積割合0.19(すなわち、繊維層5の容積割合は0.62である)を有すると仮定すると、ほとんど−3のポアッソン比を有する第3オーセチック相7を選択することによって繊維層5の方向に沿ったおよび横方向の、等しく、かつほとんどゼロの熱膨張性が達成される。これは、補強繊維5の容積割合の関数として第3オーセチック相7のポアッソン比および熱膨張係数を示す図3に示され、ここで、第3オーセチック相の容積割合は、非オーセチックマトリックス6の容積割合10%に等しい。−12と同程度に低いポアッソン比を有するポリマーオーセチック材料が知られている。
【0115】
繊維6の方向に沿ったおよび横方向の両方で、熱膨張係数がゼロである場合、第3相7の熱膨張係数およびポアッソン比について
【0116】
【数3】
【0117】
の関係が成り立つ。
【0118】
式(5)は、非オーセチック補強材5およびマトリックス相6の相対的量および特性を第3(オーセチック)相7の利用可能な熱膨張係数およびヤング率に適合するように慎重に選択することを可能にし、逆もそうである。式(6)は、非オーセチック補強材5およびマトリックス相6の相対的比率および特性ならびに第3相7のヤング率に基づいて第3相7についてポアッソン比の適切な符号および大きさの選択を与える。
【0119】
第3相7の熱膨張係数およびポアッソン比は、上記に定義されたとおりの成分の比率および特性について補強材相5の容積割合の関数として図4に示される。積層複合材料系4における現実の補強繊維5の容積割合(Vf=0.6〜0.7)について、第3相7の熱膨張係数は、ほぼ1×10-4K-1程度である。範囲0.6〜0.7のVfについて第3相7のポアッソン比は、ほぼ−2程度である。
【0120】
他に、第3オーセチック相7の低い容積割合を有することが望ましいことがあり得る。第3相の熱膨張係数およびポアッソン比は、上記に定義されたとおりの成分の特性について補強材相5の容積割合の関数として図5に示され、マトリックス相6の容積割合の10%に等しい第3相7の容積割合を有する。積層複合材料系4における現実の補強繊維5の容積割合(Vf=0.6〜0.7)について、第3相7の熱膨張係数は、ほぼ3×10-4K-1である。範囲0.6〜0.7のVfについて第3相のポアッソン比は、ほぼ−4である。
【0121】
範囲0〜−12のポアッソン比を有するオーセチックポリマーが知られている。高いおよび低いオーセチック繊維容積割合それぞれについて、範囲1×10-4〜3×10-4K-1の熱膨張係数は、多くのポリマーに典型的であり、オーセチックポリプロピレン繊維について測定して2×10-4K-1の膨張係数に相当する。
【0122】
図6は、30℃から80℃までそして30℃に戻す加熱サイクルを受けるオーセチックポリプロピレン繊維について時間の関数として長さを表すグラフを示す。80℃で該繊維は、30℃での13mmの初期長さから0.14mm伸長する。これは、50℃(50K)の温度増加にわたって0.01の歪みに相当し、該繊維について2×10-4K-1の熱膨張係数をもたらす。
【0123】
他に、上記のようなヤング率を除く他のパラメータ全てと共にポアッソン比va=−0.6(文献に報告されたオーセチックポリマー繊維に典型的)を有し、等しい第3相7とマトリックス6の容積割合を有する第3オーセチック相7について、第3オーセチック相7のヤング率が補強(炭素)繊維5の軸方向のヤング率の程度である場合、等しい(しかしゼロではない)熱膨張係数が複合材料4について実現される。これは、図2の複合材料4について第3相7のヤング率の関数としての熱膨張係数のグラフである図7によって示される。
【0124】
残留応力
図1に概略的に示される2−相の炭素−エポキシ複合構造1は通常、高温で硬化され、その後周囲温度まで冷却される。冷却の間に、マトリックス3および補強材2は異なる速度で縮小する。これはそれぞれの構成要素に熱的に生じた機械的応力をもたらす。
【0125】
長手方向の膨張(すなわち、繊維2の方向に沿って)について、炭素繊維2は、この方向における繊維2の熱膨張係数がほとんどゼロのため、冷却後の熱的膨張または収縮はほとんどない。一方、エポキシ3は大きな正の熱膨張係数を有し、したがって長さが収縮する。しかし、エポキシ3と炭素2との間の界面が損なわれていない一方、比較的高い係数の炭素繊維2は、比較的低い係数のエポシキマトリックス3が収縮することを抑制し、そのようにして熱的負荷はマトリックス3上の機械的引張り応力に変換される。繊維2方向に沿った引張り応力は、エポキシ3を横方向に収縮させる傾向があり(エポキシの正のポアッソン比のために)、繊維2−マトリックス3界面での残留応力の増加および、それゆえに、複合材料1の機械的特性の低下をもたらす。
【0126】
図2に概略的に示される3−相複合材料4について、成分上の、熱歪みの機械的応力への変換は、複合材料4が冷えると、エポキシ6およびオーセチック7(第3オーセチック相)の両方を繊維方向5における引張り応力下に置く傾向があるであろう。エポキシ6の収縮する傾向に対して、負のポアッソン比の結果としてオーセチック相7は横方向に膨張する。これは複合材料4内の残留応力の減少をもたらし、その結果、そうでなければ図1に示されるような2−相複合材料1に生じる機械特性の低下を減少させる。
【0127】
同様に、3−相複合材料4の加熱の間に、マトリックス6、オーセチック7、および補強材5の相は異なる速度で膨張する。やはり、炭素繊維5は、この方向における繊維5のほとんどゼロの熱膨張係数のために、加熱後に熱的膨張または収縮は少ない。一方、エポキシ6およびオーセチック7(第3)相は、大きい正の熱膨張係数を有し、したがって長さが増加しようとする。しかし、比較的高い係数の炭素繊維5が比較的低い係数のエポキシマトリックス6およびオーセチック相7を伸長から抑制し、そのようにして、熱負荷は、繊維5の方向におけるマトリックス6およびオーセチック相7に対する機械的圧縮応力に変換される。結果として、炭素繊維それ自体におけるほとんどゼロの軸方向の歪みに比べて、大きな圧縮歪みが繊維5の方向に沿ってエポキシ6およびオーセチック相7に成長する。繊維5の方向に沿った圧縮応力は、エポキシ6を横方向に膨張させ(エポキシ6の正のポアッソン比のために)、オーセチック相7を横方向に収縮させる(負のポアッソン比の結果として)。この場合も、複合材料4内の残留応力の減少、したがって、そうでなければ図1に示されるような2−相複合材料1に生じるであろう機械的特性の低下の減少が存在する。
【0128】
図8〜15の以下の有限要素モデルFEMについて、図に示されるキーは、キーの左側に示される陰影に対応するものとして比較的高い圧縮歪みまたは応力の領域を特定する。比較的低い圧縮(または一部の場合に引張り)歪みまたは応力の領域は、キーの右側のものに対応する陰影によって示される。
【0129】
図8は、0℃から120℃までの加熱を受ける図2に示される種類の3−相複合材料のFEMを示す。図8は、FEMシミュレーションに用いられる3−相単位セル80を示し、該単位セル80は、以下を含む:
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、軸方向ヤング率230GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向補強繊維構成要素81;
容積割合0.19、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素82;ならびに
容積割合0.19、等方性ヤング率3GPa、および等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する第3相一方向繊維構成要素83。
【0130】
図9、図10および図11は、図8に示される種類の単位セルを構成する個々の構成要素のFEMを示す。図9は、補強繊維90のFEMを示す。図10は、マトリックス100のFEMを示し、図11は、第3オーセチック相110のFEMを示す。補強繊維90、非オーセチックマトリックス100および第3相110において軸(繊維)方向に沿って120℃まで加熱後に成長する歪みは、マトリックス100および第3相成分110において成長する圧縮歪み、およびこれらの歪みが補強繊維相90において成長するものより約2桁大きいことを明らかに示す。
【0131】
図12および図13は、複合材料を120℃まで加熱することにより非オーセチック第3相120および130に対して作用する横方向歪みのFEMを示す。第3相120および130について軸方向に垂直な横方向のz方向に成長する歪みは、それぞれ、ポアッソン比+0.38(すなわち、非オーセチックマトリックス相と同じ)および−0.6(すなわち、オーセチック)を示す。
【0132】
図12および図13は、第3相120および130の横方向変形が、図11と比べた場合加熱後増加する軸方向圧縮の結果として、それぞれ非オーセチックおよびオーセチック成分について横方向の膨張および収縮を受ける材料のポアッソン比の符号に依存することを明らかに示す。
【0133】
図14および図15は、150℃まで加熱後2−相140および3−相150内に成長する横方向(z方向)応力を示す。
【0134】
図14に用いられる2−相複合材料140は、図1に示される種類のものであり、以下を含む:
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、軸方向ヤング率230GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向補強繊維構成要素141;ならびに
容積割合0.38、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、および等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素142。
【0135】
図15に用いられる3−相複合材料150は、図2に示される種類のものであり、以下を含む:
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、軸方向ヤング率230GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向補強繊維構成要素151;
容積割合0.19、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、および等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素152;ならびに
容積割合0.19、等方性ポアッソン比−0.6、等方性ヤング率0.3GPa、および等方性熱膨張係数8.5×10-5K-1を有するオーセチック一方向性繊維構成要素153。
【0136】
図14および図15は、2−相複合材料140と比べた場合、3−相複合材料150において残留圧縮応力の減少が達成されることを明らかに示す。これは、第3オーセチック相153の存在による。
【0137】
直接かけられた機械的負荷を受ける図2に示される種類のマルチ−構成要素複合材料におけるオーセチック相による強化の例が、エポキシ樹脂に埋め込まれた単一のオーセチック繊維が、図1に示される種類の同等の非オーセチック繊維と比べて、エポキシから繊維を引き抜くために2倍の力および3倍のエネルギーを要することが見出された試験において証明された。現行の発明において、効果は、機械的負荷を直接かけることによってではなく、複合材料の冷却および/または加熱の間の熱歪みの機械的応力への変換によって達成される。
【0138】
複合材料を作製する方法
実施例1
柔軟化された冷硬化エポキシマトリックス内に埋め込まれたオーセチックポリプロピレン繊維を含む図2に示される種類の複合材料系を調製した。オーセチック繊維を、Plast−Labor S.A.によって製造され、Univar Plc.によって供給されるグレードPB0580ポリプロピレンパウダーの溶融押出しを用いて製造した。用いた冷硬化エポキシ樹脂は、硬化剤HY5084を添加したAraldite LY5052であった。硬化処理の間の架橋結合に対する抑制剤としてジブチルフタレートを樹脂に添加し、このように図2に示される種類の最終の製造された複合材料系における架橋結合の程度の慎重な調節を可能にした。
【0139】
実施例2
冷硬化エポキシマトリックス内に埋め込まれたオーセチックポリプロピレン繊維およびガラス補強繊維を含む図2に示される種類の複合材料系を調製した。オーセチック繊維を、Plast−Labor S.A.によって製造され、Univar Plc.によって供給されるグレードPB0580ポリプロピレンパウダーの溶融押出しを用いて製造した。ガラス繊維は、PPM Glassによって提供された。冷硬化エポキシ樹脂は、図2に示される種類の、Huntsmanによって供給される硬化剤HY5082を添加したAraldite LY5052であった。
【0140】
本発明は、ほんの一例として説明される上記実施形態の詳細に制限されることを意図しないことは当然理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】従来技術による一方向複合積層体を表した図を示す。
【図2】本発明による一方向複合積層体を表した図を示す。
【図3】図2の積層体について、第3相のポアッソン比の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図4】非オーセチックマトリックスおよび第3オーセチック相に対して等しい容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図5】非オーセチックマトリックスの容積割合10%に等しい第3オーセチック相の容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図6】30℃から80℃そして30℃に戻す加熱サイクルを受けるオーセチックポリプロピレン繊維について、時間の関数として長さを表すグラフを示す。
【図7】図2の積層体について第3相のヤング率の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図8】繰返し単位のそれぞれの場所にあるマトリックス相および第3(繊維)相により囲まれた中央の補強繊維相を含む3−相複合材料の有限要素モデル(FEM)を示す。
【図9】複合材料を120℃まで加熱する結果として補強繊維相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す。
【図10】複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチックマトリックス相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す。
【図11】複合材料を120℃まで加熱する結果として第3相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す。
【図12】複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチック第3相に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す。
【図13】複合材料を120℃まで加熱する結果としてオーセチック第3相に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す。
【図14】複合材料を150℃まで加熱する結果として2−相複合材料(非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す。
【図15】複合材料を150℃まで加熱する結果として3−相複合材料(オーセチック第3相を有する非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、形態および化学組成で異なり、互いに本質的に不溶性である2以上のミクロまたはマクロ成分の混合または組合せから構成される材料系であると伝統的に考えられている。それぞれの個々の成分の特性より優れる特性を有するために複合材料は重要である。複合系は、ポリマー、金属またはセラミックベースの系、あるいはこれらのクラスの材料の一部の組合せであり得る。最近、同じポリマーの高融点および低融点成分を有する複合材料が開発されており、ナノスケールで成分を含む複合材料(いわゆるナノ複合材料)も開発されている。
【0003】
ポリマー複合材料において、通常、補強材料には、連続繊維、短チョップド繊維、繊維織物構造および球状包接体を含む様々な形態のガラス、炭素、アラミド、ホウ素、炭化ケイ素および酸化アルミニウムなどがある。天然のポリマー繊維、例えば、麻およびセルロースも補強材料として使用される。一般的なポリマーマトリックス材料には、熱硬化性ポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド、ならびに熱可塑性ポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などがある。
【0004】
セラミック複合材料において、通常、補強材料には、連続モノフィラメントおよびマルチフィレメントのトウ繊維、ウィスカー、小板状体、ならびに粒子を含む様々な形態の炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、二ホウ素チタンおよび窒化ホウ素などがある。一般的なセラミックマトリックス材料には、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸リチウム、アルミノケイ酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素および窒化アルミニウムなどがある。
【0005】
金属マトリックス複合材料において、通常、補強材料には、連続繊維、非連続繊維、ウィスカー、粒子および線(wires)を含む様々な形態のタングステン、ベリリウム、チタン、モリブデン、ホウ素、グラファイト(炭素)、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素およびアルミナ−シリカなどがある。一般的な金属マトリックス材料には、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄および銅の合金ならびに超合金などがある。
【0006】
複合材料は通常、積層体の形態にあり、すなわち、それらは、それぞれが、マトリックス内に埋め込まれた連続長さの一方向補強繊維を含むいくつかの層(薄層)から構成される。機械的特性は、特定の用途のための積層順序および配向を選択することによって最適化される。
【0007】
高温(通常120から190℃)で製造中に硬化される先進ポリマー複合材料の特性は、成分、すなわちマトリックスと補強材とが、周囲温度(通常20から30℃)に冷却する間に異なる速度で収縮する際に複合材料中に生じる残留応力によって低下することはよく知られている。
【0008】
先進複合材料がだんだん熱くなりそして冷える際に、内部応力は複合材料構造の形状を変形させることもよく知られている。
【0009】
この変形を減少させる試みとして、補強材に対して軸をはずして位置付けされるさらなる材料の層を導入することが知られている。この工程は、バランシングとして知られる。しかし、これは、機械特性が最適化され得ない積層体を生じる作用を有し、製造段階で時間と費用を増加させ、構成要素の重量も増加させる。
【0010】
他の手法は、複合材料全体の、平均して所望のゼロまたは低熱膨張を達成するために、同じ複合材料内の正および負の両方の熱膨張係数(CTE)材料を組み合わせることであった。この後者の点の例には、高温の打ち上げからより低い温度の宇宙条件まで寸法と形状を維持するべく人工衛星のケーシングにおける使用のための、正のCTEシアナートエステルマトリックス内の負の軸方向CTE炭素繊維などがある。プリント基板における使用のために低いまたはゼロのCTE基板を製造するべく、正のCTE熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ)を補強するために不織布アラミド材料(負のCTE)が用いられる。大望遠鏡の鏡基板および航空機におけるレーザージャイロスコープ用の低いまたはゼロのCTE複合材料を製造するために、ガラス石英(正のCTE)内に水晶粒子(負のCTE)が用いられる。オプトエレクトロニクスシステムにおける使用のために温度範囲にわたって一定の反射波長を示す低いまたはゼロのCTE繊維ブラッグ格子装置を製造するために負のCTEタングステン酸ジルコニウムのパッケージングおよび支持体は、正のCTEシリカ繊維と組み合わされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、負と正のCTE材料を組み合わせることは、いくつかの不利点を有し、これらには以下が含まれる:a)特定の用途のための他の物理特性の適切な範囲を有する負のCTE材料の相対的な不足が存在するための使用の制限;b)積層体系において、薄層間せん断を増加させる傾向の存在;およびc)負のCTE材料の追加による、複合材料の重量および加工の避けがたい増加。これらを考慮すると結果として最終複合材料の費用増加をもたらす。
【0012】
したがって、複合材料をだんだん熱くしそして冷却することから生じる材料のいずれの変形も最小化するために、その構成要素が異なる膨張率を有する材料を含む複合材料を提供することが望ましい。さらに、複合材料が広く用いられ得るために、構成要素材料は適当な範囲の物理特性をもつことが望ましい。複合材料が部分を形成する複合材料または構造の様々な構成要素間の接合(機械的な力であるか接着されているかのいずれかである)の性能を改善するために、複合材料をその周囲構造または他の複合材料に適合させ得ることも望ましい。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、マトリックスに結合した繊維の層を含む複合材料であって、該マトリックスおよび繊維の一方は、第1の方向に沿った荷重に対してオーセチック(auxetic)挙動を示す第1の構成要素を含み、該マトリックスおよび繊維の他方は、第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック(non-auxetic)挙動を示す第2の構成要素を含む複合材料が提供される。
【0014】
オーセチック挙動は、材料に関して特定の方向で測定して、負(ゼロ未満)であるポアッソン比で定義される。結果として、材料を、引張り荷重をかけてその方向に伸張する場合、材料はその方向に対して横方向に膨張する。これに対して、その方向に圧縮する場合、材料はその方向に対して横方向に収縮する。同様に、非オーセチック挙動は、正(ゼロを超える)であるポアッソン比で定義される。
【0015】
用語「第1の方向」は、引張り荷重がかけられる方向であり、したがって、オーセチック挙動がポアッソン比で定義される方向であると理解される。
【0016】
用語「ヤング率」は、当該技術分野で知られており、剛性の測定単位であると理解される。小さい歪みについて、歪みに対する応力の変化率として定義される。ヤング率が材料について全ての方向で同じであれば、その材料は、等方性であると呼ばれる。力がかけられる方向に依存してヤング率が変化する材料は、異方性と呼ばれる。ヤング率のSI単位はパスカル(Pa)、または別に、ギガパスカルと同じ数値を与えるkN/mm2である。
【0017】
用語「熱膨張係数」は当該技術分野において知られており、温度の変化による材料の寸法の変化についていう。正の膨張係数を有する材料は、加熱されると膨張し、冷却されると収縮する。一部の物質は、負の膨張係数を有し、冷却される(例えば、水を凍らせる)と膨張する。
【0018】
繊維の層は、マトリックス中に埋め込まれても、マトリックス中に部分的に埋め込まれてもよく、マトリックスと接触した別個の層を形成してもよい。
【0019】
繊維の層は、以下の任意の好適な構成を有し得る;例えば、一方向の繊維の束、または織られた、編まれた、もしくは不織のメッシュを含み得る。好ましくは、繊維の層は、一方向の繊維、または織られた、編まれた、もしくは不織のメッシュを含む。さらに好ましくは、繊維の層は一方向の繊維を含む。
【0020】
繊維の層が一方向の繊維を含む場合、好ましくは、オーセチック挙動の評価のために荷重がそれに沿ってかけられる第1の方向は、繊維の方向と平行である。
【0021】
疑いを回避するために、複合材料の相(繊維およびマトリックス)のいずれかまたは両方は、第1の構成要素、第2の構成要素、または、第1および第2の構成要素の両方を含み得る。
【0022】
好ましい実施形態において、繊維の層は第1の構成要素を含み、マトリックスは第2の構成要素を含む。さらに好ましくは、複合材料は、第1の方向に沿う荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス中に埋め込まれた繊維の層を含み、その一部は第1の方向に沿う荷重に対してオーセチック挙動を示し、その一部は第1の方向に対して非オーセチック挙動を示す。
【0023】
好ましい実施形態において、複合材料の熱膨張係数は、第1の方向に対して平行および垂直で測定して、実質的に等しい。
【0024】
長手方向(すなわち、第1の方向と平行に測定して)と横方向(すなわち、第1の方向と垂直に測定して)との複合材料の熱膨張係数間の関係を調節するために、熱膨張係数、ポアッソン比、およびヤング率の特定の値を有する複合材料の材料を選択すること、ならびにそれぞれの材料によって占められる複合材料の容積割合を調節することが必要である。
【0025】
他の実施形態において、繊維は第2の構成要素を含み、マトリックスは第1の構成要素を含む。
【0026】
好ましくは、両者を第1の方向に平行な方向で測定して、第2の構成要素の熱膨張係数は、第1の構成要素のものより低い。好ましくは、第1の方向に平行な方向で測定して、第2の構成要素の熱膨張係数は、1×10-5K-1未満である。好ましくは、第1の方向に平行な方向で測定して、第1の構成要素の熱膨張係数は、5.4×10-5K-1を超える。
【0027】
好ましくは、第2の構成要素の容積割合は、60%から70%、より好ましくは62%である。好ましくは、第1の構成要素の容積割合は、40%未満、より好ましくは15%から25%、最も好ましくは19%である。
【0028】
好ましくは、複合材料は、第1の方向に沿う荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス材料をさらに含む。好ましくは、非オーセチックマトリックス構成要素の容積割合は、40%未満、より好ましくは15%から25%、最も好ましくは19%である。
【0029】
マトリックス材料および第1の構成要素がマトリックス相の成分である実施形態において、第1の構成要素およびマトリックス材料の容積割合は、全体で好ましくは38%であり得る。
【0030】
例えば、1つの実施形態において、複合材料は、
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、横方向ポアッソン比+0.28、軸方向ヤング率230GPa、横方向ヤング率3GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向繊維構成要素;
容積割合0.19、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素;ならびに
容積割合0.19、等方性ポアッソン比−2、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数9.61×10-5K-1を有するオーセチックマトリックス構成要素
を含み、複合材料は、繊維の方向に対して平行および垂直の両方で、ゼロの熱膨張係数を有する。
【0031】
他の実施形態において、第2の構成要素の容積割合は、60%から70%、より好ましくは62%である。第1の構成要素の容積割合は、好ましくは40%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは3.5%であり得る。
【0032】
好ましくは、複合材料は、第1の方向に沿う荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス材料をさらに含む。非オーセチックマトリックス構成要素の容積割合は、40%から30%、最も好ましくは34.5%である。
【0033】
マトリックス材料および第1の構成要素がマトリックス相の成分である実施形態において、第1の構成要素およびマトリックス材料の容積割合は、全体で好ましくは38%であり得る。
【0034】
例えば、他の実施形態において、複合材料は、
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、横方向ポアッソン比+0.28、軸方向ヤング率230GPa、横方向ヤング率3GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向繊維構成要素;
容積割合0.3455、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素;ならびに
容積割合0.0345、等方性ポアッソン比−4、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数2.86×10-4K-1を有するオーセチックマトリックス構成要素
を含み、複合材料は、繊維の方向に対して平行および垂直の両方で、ゼロの熱膨張係数を有する。
【0035】
したがって、オーセチック材料は、複合材料の熱膨張性を調節するために用いることができる。
【0036】
理論によって拘束されることを望むことなしに、本発明の第2の態様の複合材料の硬化の間に、第1および第2の構成要素が複合材料内で結合されるようになると考えられる。加工中に生じる温度の変化を含む、複合材料が温度を変える際にオーセチック材料(第1の構成要素)において生じた歪みが、複合材料における非オーセチック材料(第2の構成要素を含む)の収縮および膨張に反して、オーセチック構成要素を第1の方向に対して膨張および収縮させる。熱歪みが複合材料において生じる際に、オーセチック構成要素および非オーセチック構成要素の膨張および収縮は均衡したままであり、複合材料内のオーセチック材料の比率と分布によって膨張係数をもたないかまたは調節された膨張率を有する複合材料を作り出す。
【0037】
本発明の複合材料の特定の実施形態は、1つまたは複数の以下の利点も示し得る:
a)長手方向および横方向(すなわち、第1の方向に対して平行および垂直)で等しい熱膨張係数;
b)本発明の複合材料が積層体の形態にある場合、オーセチック構成要素を含む積層複合材料における熱膨張挙動の方向性依存の除去の結果として、オーセチック構成要素を含まない積層複合材料に比べて、必要とされる材料の層の数の減少;
c)従来技術の複合材料に比べて残留応力のレベル減少;
d)別個のバランス層の必要の除去(これは設計分析減少、さらなる設計選択余地、複合材料性能改善および複合材料質量減少を与える);
e)冷却工程中の変形減少;ならびに
f)オーセチック構成要素を欠く材料についてのこのような結合に比べて、異なる膨張率を有する本発明の複合材料と周囲材料との間の結合の性能改善。この改善は、複合材料内または複合材料と周囲材料との間の中間層、例えば、フィルム接着剤内のオーセチック構成要素の追加によって、複合材料の熱膨張挙動を周囲材料と適合させる能力による。
【0038】
様々なオーセチック材料が報告されており、これらには、オーセチック熱可塑性(ポリエステルウレタン)、熱硬化性(シリコーンゴム)および金属(銅)発泡体(Friis, E.A.、Lakes, R.S.およびPark, J.B.、J. Mater. Sci. 1988年、23、4406頁);オーセチック熱可塑性微小孔性ポリマーシリンダー(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE);ポリプロピレン(PP)、およびナイロン)(Evans, K.E.およびAinsworth, K.L.、International Patent Application WO91/01210、1991年;Alderson, K.L.およびEvans, K.E.、Polymer 、1992年、33、4435〜8頁;Pickles, A.P.、Alderson, K.L.およびEvans, K.E、Polymer Engineering and Science、1996年、36、636〜42頁;Alderson, K.L.、Alderson, A.、Webber, R.S.およびEvans, K.E.、J. Mater. Sci. Lett.、1998年、17、1415〜19頁)、モノフィラメント(PP、ナイロンおよびポリエステル)(Alderson, K.L.、Alderson, A.、Smart, G.、Simkins, V.R.および Davies, P.J.、Plastics, Rubber and Composites 2002年、31(8)、344頁;Ravirala, N.、Alderson, A.、Alderson, K.L. およびDavies, P.J.、Phys. Stat. Sol. B2005、242(3)、653頁)およびフィルム(PP)(Ravirala, N., Alderson, A., Alderson, K.L.および Davies, P.J., Polymer Engineering and Science 45(4)(2005年)517頁)、天然ポリマー(結晶性セルロース)(Peura, M.、Grotkopp, I.、Lemke, H.、Vikkula, A.、Laine, J.、Muller, M およびSemimaa, R.、Biomacromolecules 2006、7(5)、1521頁およびNakamura, K.、Wada, M.、 Kuga, S.およびOkano, T.、J Polym Sci B Polym Phys Ed 2004年;42、1206頁)、複合積層体(炭素繊維−補強エポキシ、ガラス繊維−補強エポキシおよびアラミド−補強エポキシ)(Alderson, K.L.、Simkins, V.R.、Coenen, V.L.、Davies, P.J.、Alderson, A. およびEvans, K.E.、Phys. Stat. Sol. B 242(3)(2005年)509頁)、特定の銅酸ビスマス超伝導多結晶性化合物(Dominec, J.、Vasek, P.、Svoboda, P.、Plechacek, V. および Laermans, C.、Modern Physics Letters B、1992年、6、1049〜54頁)、69%立方晶系元素金属(Baughman, R.H.、Schacklette, J.M.、Zakhidov, A.A. およびStafstrom, S.、Nature、1998年、392、362〜5頁)、および結晶性シリカの天然多形体(α−クリストバライトおよびα−石英)(Yeganeh-Haeri, Y.、Weider, D.J.およびParise, J.B.、Science、1992年、257、650〜2頁;Keskar, N.R.およびChelikowsky, R.J.、Phys. Rev. B48、16227頁(1993年))。−12程度に低いポアッソン比がオーセチックポリマーにおいて測定されており(Caddock, B.D. およびEvans, K.E.、J. Phys. D:Appl. Phys.、1989年、22、1877〜82頁)、非常に大きな横方向歪み(適用された長手方向歪みを超える大きさの程度にわたる)が可能であることを示す。
【0039】
ポリマー複合材料における好適な繊維(補強材料)は、当該分野内で広く知られており、ガラス、炭素、アラミド、ホウ素、炭化ケイ素および酸化アルミニウムから作られた連続繊維、短チョップド繊維、繊維織物構造および球状包接体が含まれ得る。前記繊維および形態の任意の組合せを用い得る。ナノ繊維およびナノチューブも本発明と一緒の使用に好適な繊維を形成し得る。当業者に直ちに明らかとなるであろうように、上記に特定されたものに対する他の代わりのポリマー、金属またはセラミック材料が繊維として含まれ得ることは、当然、認められる。
【0040】
本発明のマトリックス材料は、1つまたは複数のポリマー材料を含み得る。該マトリックス材料は、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、または熱硬化性と熱可塑性ポリマーの両方を含み得る。好適な熱硬化性ポリマーの例は、当業者によく知られており、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂およびポリイミドの任意のものを単独または組合せで含む。好適な熱可塑性ポリマーの例は当業者によく知られており、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の任意のものを単独または組合せで含む。
【0041】
マトリックス材料は、硬化剤、硬化促進剤、顔料、柔軟剤、難燃剤および強化剤の任意のものを単独または組合せで含み得る1つまたは複数のさらなる構成要素をさらに含み得る。さらなる構成要素は、事実上、有機(ポリマー性を含む)、無機(セラミックを含む)または金属であり得る。
【0042】
さらなる構成要素は、考えにある所望の特性の複合材料と共に加えられる。
【0043】
本発明のオーセチック構成要素は、オーセチックモノフィラメントおよびマルチフィラメンントによって繊維中に取り込むことができ、ならび/またはマトリックス材料中に取り込むことができる。
【0044】
オーセチックモノフィラメントおよびマルチフィラメントは、連続繊維、短チョップド繊維、または繊維織物構造の形態で取り込むことができる。
【0045】
オーセチック構成要素がマトリックス材料に取り込まれる仕方は、所望の複合材料の性質に依存する。
【0046】
例えば、微粉化したオーセチック材料は、充填剤の形態でマトリックスに加えられ得る。α−クリストバライトの多結晶性凝集体は、このようにマトリックス中への取込みに好適である。オーセチック充填剤は、他のセラミック材料、ポリマーまたは金属でもあり得る。オーセチック特性は、マトリックスそれ自体内の分子レベルでオーセチック作用を巧みに操作することによって複合材料中に取り込むこともできる。オーセチック分子レベル材料の例には、液晶ポリマー(He, C.、Liu, P. およびGriffin, A.C.、Macromolecules、31、3145頁(1998年))、結晶性セルロース、立方晶系元素金属、ゼオライト、α−クリストバライト、およびα−石英が含まれる。
【0047】
オーセチック熱可塑性および/または熱硬化性樹脂は、当業者に知られており、本発明におけるマトリックス材料としての使用に好適である。
【0048】
オーセチック特性は、オーセチック金属材料およびセラミック材料によって金属およびセラミック系複合材料に与えられ得る。
【0049】
セラミックマトリックス複合材料における好適な繊維は、当該分野内で広く知られており、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、二ホウ化チタンおよび窒化ホウ素の、連続モノフィラメントおよびマルチフィラメントのトウ繊維、ウィスカー、小板状体ならびに粒子を含み得る。該材料および形態の任意の組合せを用いることができる。セラミックマトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、オーセチックセラミックの、モノフィラメントおよびマルチフィラメント、ウィスカー、小板状体ならびに粒子によって繊維中に取り込むことができる。知られたオーセチックセラミックには、シリカのα−クリストバライトおよびα−石英多形体、窒化炭素(Guo, Y. およびGoddard III, W.A.、Chem. Phys. Lett.、1995年、237、72頁)、ならびに特定の銅酸ビスマス化合物が含まれる。
【0050】
セラミックマトリックス複合材料におけるマトリックス材料は当業者によく知られており、酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸リチウムおよびアルミノケイ酸カルシウムを含む。非酸化物セラミックマトリックス材料には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、および窒化アルミニウムが含まれる。セラミックマトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、例えば、充填剤の形態でマトリックスに加えられる微粉化オーセチックセラミック材料としてマトリックス材料中に取り込むことができる。他に、セラミックマトリックスは、本質的にオーセチックであり得る。
【0051】
金属マトリックス複合材料における好適な繊維は、当該分野内で広く知られており、タングステン、ベリリウム、チタン、モリブデン、ホウ素、グラファイト(炭素)、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素およびアルミナ−シリカの連続繊維、非連続繊維、ウィスカー、粒子および線を含み得る。
【0052】
金属マトリックス複合材料におけるマトリックス材料は当業者によく知られており、アルミニウム、チタン、マグネシウム、鉄および銅の合金ならびに超合金が含まれる。
【0053】
金属マトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、オーセチックセラミックまたは金属材料の、連続繊維、非連続繊維、ウィスカー、粒子および線によって該繊維中に取り込むことができる。金属マトリックス複合材料のオーセチック構成要素は、例えば、充填剤の形態でマトリックスに加えられる微粉化オーセチックセラミックまたは金属材料としてマトリックス材料中に取り込むこともできる。他に、金属マトリックスは、本質的にオーセチックであり得る。知られたオーセチックセラミックには、シリカのα−クリストバライトおよびα−石英多形体、窒化炭素、ならびに特定の銅酸ビスマス化合物が含まれる。知られたオーセチック金属には、ヒ素、カドミウムおよび69%立方晶系元素金属が含まれる。
【0054】
本発明では、本明細書において記載される複合材料の製造方法も提供される。
【0055】
本発明の第2の態様によれば、繊維の層、未硬化マトリックス、オーセチック挙動を示すオーセチック、および非オーセチック挙動を示す第2の構成要素を混合する工程を含む、第1の態様の未硬化複合材料を製造する方法が提供される。
【0056】
好ましくは、オーセチック材料が異方性である場合、第2の態様による方法には、複合材料の他の構成要素に比べて所要の配向を有するオーセチック材料を含む未硬化複合材料を形成する工程がさらに含まれる。
【0057】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様による未硬化複合材料を形成する工程、および該未硬化複合材料を硬化させる工程を含む複合材料を製造する方法が提供される。
【0058】
第2および第3の態様の方法に用いられるオーセチック材料は、所要の特性を有するために選択され、所要の量で用いられる。第2の態様の未硬化複合材料を硬化させて、所要の熱膨張性を有する硬化複合材料を得る。
【0059】
好ましい実施形態において、マトリックスは硬化中に繊維の層に含浸する。
【0060】
第1の態様の硬化性複合材料の典型的な製造方法は、以下を含む:
a)支持テーブル上に3−相のプレプレグ補強繊維−エポキシ−オーセチック材料を配置する工程。該プレプラグは、部分的に硬化したエポキシマトリックス中の連続一方向補強繊維および連続一方向オーセチック繊維からなる。
【0061】
b)いく枚かのプレプレグシートを切り出し、積層体を形成するために所要の形状の用具上に、互いの上面上に層をなして置く工程。該層は、複合材料の特性を最適化するために異なる方向に置いてもよい。
【0062】
c)真空バッグ中に構築された積層体および用具を置き、真空をかけて、複合材料部分から取り込まれた空気を除去する工程。
【0063】
d)エポキシ樹脂の硬化を起こさせるためにオートクレーブ内に複合材料および用具を含む真空バッグを入れる工程。硬化条件は、用いられる特定のエポキシ材料に依存する。複合材料を、通常350から700kPaの圧力で120から190℃の範囲の温度に通常加熱する間、通常、硬化サイクルは長い時間続く。
【0064】
e)複合材料および用具を含む真空バッグをオートクレーブから取り出し、複合材料および用具を真空バッグから取り出し、さらなる仕上げ作業前に用具から複合材料部分を取り外す工程。
【0065】
他に、硬化性複合材料のもう1つの製造方法は、以下を含む:
a)ゲルコートをオープン型に塗布する工程。
【0066】
b)オーセチック繊維を取り込んでいる補強繊維を型に手作業で入れる工程。該補強繊維およびオーセチック繊維は、布またはマットの形態であり得る。
【0067】
c)触媒および硬化促進剤と一緒に混合された、通常ポリエステルである樹脂を該補強繊維−オーセチック繊維プライの上および中に注入、刷毛塗り、またはスプレーする工程。
【0068】
d)スキージーまたはローラーを用いて樹脂で補強繊維およびオーセチック繊維をぬらし、取り込まれた空気を除去する工程。
【0069】
e)部分の厚さを増すためにさらなる補強繊維−オーセチック繊維プライおよび樹脂を場合によって加える工程。
【0070】
f)外部熱なしに複合材料を硬化させる、室温硬化樹脂を用いて硬化させ、樹脂系中の触媒によって硬化を開始する工程。
【0071】
他に、中空円筒の形態における硬化性複合材料の製造方法であって、以下を含む方法が提供される:
a)補強繊維およびオーセチック繊維を、樹脂浴を通過させる工程。
【0072】
b)樹脂含浸補強繊維およびオーセチック繊維を回転マンドレルに巻く工程。
【0073】
c)十分な層が供給された場合に、室温またはオーブン中の高温で該構成要素を硬化させる工程。
【0074】
d)成形された複合材料をマンドレルから取り外す工程。
【0075】
他に、硬化性複合材料のもう1つの製造方法であって、以下を含む方法:
a)3−相のプレプレグ補強繊維−エポキシ−オーセチック材料を支持テーブル上に配置する工程。該プレプレグは、オーセチック充填剤粒子を含む部分的に硬化したエポキシマトリックス中の連続一方向補強繊維からなる。
【0076】
b)いく枚かのプレプレグシートを切り出し、積層体を形成するために所要の形状の用具上に、互いの上面上に層をなして置く工程。該層を複合材料の特性を最適化するために異なる方向に置いてもよい。
【0077】
c)真空バッグ中に構築された積層体および用具を置き、真空をかけて、複合材料部分から取り込まれた空気を除去する工程。
【0078】
d)エポキシ樹脂の硬化を起こさせるためにオートクレーブ内に複合材料および用具を含む真空バッグを置く工程。硬化条件は、用いられる特定のエポキシ材料に依存する。複合材料を、通常350から700kPaの圧力で120から190℃の範囲の温度に通常加熱する間、通常、硬化サイクルは長い時間続く。
【0079】
e)複合材料および用具を含む真空バッグをオートクレーブから取り出し、真空バッグから複合材料および用具を取り出し、さらなる仕上げ作業前に用具から複合材料部分を取り外す工程。
【0080】
他に、硬化性複合材料のもう1つの製造方法は、以下を含む:
a)ゲルコートをオープン型に塗布する工程。
【0081】
b)補強繊維を型に手作業で入れる工程。該補強繊維は、布またはマットの形態であり得る。
【0082】
c)オーセチック充填剤粒子を取り込んでいる、通常はポリエステルである樹脂を触媒および硬化促進剤と混合し、次いで補強繊維プライの上および中に注入、刷毛塗り、またはスプレーする工程。
【0083】
d)スキージーまたはローラーを用いて、オーセチック充填剤を含む樹脂で補強繊維をぬらし、取り込まれた空気を除去する工程。
【0084】
e)部分の厚さを増すためにさらなる補強繊維プライおよびオーセチック充填剤含有樹脂を場合によって加える工程。
【0085】
f)外部熱なしに複合材料を硬化させる、室温硬化樹脂を使用して、樹脂系中の触媒によって硬化を開始する工程。
【0086】
他に、中空円筒の形態における硬化性複合材料の製造方法であって、以下を含む方法が提供される:
a)補強繊維を、樹脂内にオーセチック充填剤粒子を含む樹脂浴を通過させる工程。
【0087】
b)オーセチック充填剤含有樹脂−含浸補強繊維を回転マンドレルに巻く工程。
【0088】
c)十分な層が適用された場合に、室温またはオーブン中の高温のいずれかで該構成要素を硬化させる工程。
【0089】
d)成形された複合材料をマンドレルから取り外す工程。
【0090】
別に特記されない限り、ポアッソン比、ヤング率、および熱膨張係数は大気圧および室温(すなわち、20℃)で測定されることが理解される。
【0091】
本発明の材料は、以下の用途における利用性を見出すことが想定される:
a)かなりの重量の減少または性能の増加、例えば、荷重耐力が望ましく、かつオーセチック材料の積層体中への導入による内部応力の減少によって達成され得る複合材料構造。用途には、航空機、道路車両、オフロード車、軍用車両、精密機械、ボート、船舶、および潜水艦用の構成要素が含まれる。
【0092】
b)以下の例:高価な炭素繊維が低コストのオーセチック繊維または充填剤によって一部置き換えられ得る低コスト用途;熱的適合による改善された精度および長寿命を含む、改善された性能の複合材料工具。
【0093】
c)高温硬化により熱的に不適合である材料(マトリックスまたは補強材)を含む複合構造。オーセチック成分の使用は、複合材料の質量減少、設計コスト減少、設計余地増加から生じる設計性能改善、ならびに製造コストおよびタイムスケール減少を可能にする。
【0094】
d)熱的に不適合であり、低温用途を含む相当な温度範囲にわたって機能する材料(マトリックスまたは補強材)を含む複合構造。低温燃料タンクおよび宇宙船の構成要素などの低温構造は、複合材料内にオーセチック成分を取り込む場合に、残留応力の減少の結果としての微小割れ減少によって恩恵を受ける。
【0095】
e)光学装置、RF装置および測定装置などの安定性が重要な用途に対して高められた安定性を示す複合構造。安定性改善は、微小割れ減少、積重ね均衡および製造誤りの影響減少によって生じる。
【0096】
f)高温打ち上げから低温宇宙条件まで寸法および形状を維持するための人工衛星用のケーシングを含む、ゼロまたは低CTE挙動を要する複合構造;プリント回路基板における使用のための基板;光学台を含む安定構造;大望遠鏡の鏡基板;航空機におけるレーザージャイロスコープ;オプトエレクトロニクスシステムにおける使用のために温度範囲にわたって一定の反射波長を示す繊維ブラッグ格子装置。
【0097】
g)成形後に機械加工を要する複合構造は、積層体中にオーセチック材料を含むことから利益を得る。当該技術分野の現状では、機械加工は積層体において不均衡を生じ、一部に変形を生じ得る。これは、複合工具上の成形表面の機械加工に特有の用途を有する。
【0098】
h)積層体へオーセチック材料を加えることによって基本的に不均衡な積層体を有する複合構造を製造することができる。これは、一部分はキャスティングを置き換えるか、あるいは手加工、編み加工および/または織り加工によって製造された不均衡な予備形態から作ることができる部品の用途を有する。
【0099】
j)局在不均衡積層体配置と組み合わせてオーセチック材料を加えることによって、構成要素に対して異なる熱膨張係数を有する局所領域を生じさせることができる。これは、金属ベアリングにおけるように実質的に異なるCTEを有する構成要素の調整に好適な領域を作製するために用い得る。
【0100】
k)高価な高性能補強材、例えば、炭素繊維の実質的な量が高比率の低コストのオーセチック繊維で置き換えられる場合に、低コスト構成要素を作製することができる。
【0101】
l)オーセチック配置が貫通に対して改善された抵抗性を有することは当業者によく知られている。加えて、オーセチック材料の添加から得られる積層体内の内部応力のレベル低下は、耐衝撃性および、破砕中に吸収されるエネルギーを増加させる。これは、軽量防護具および自動車衝突構造の製造において用途を有する。
【0102】
m)高性能構造(smart structures)として知られる、機械的、熱的または電気的入力に応じて変形する構造は、優れた性能の航空機などの製品を製造するのに有用である。熱均衡問題を無視することができ、機械的、熱的または電気的入力に応じて積層体の最適化および調整を可能にするので、高性能構造に用いられる複合積層体へオーセチック材料を加えることは設計のコストおよび複雑さを低減させる。
【0103】
実施例のみとして、以下の図面を参照して本発明についてこれからさらに説明する。図面には以下がある:
図1は、従来技術による一方向複合積層体を表した図を示す;
図2は、本発明による一方向複合積層体を表した図を示す;
図3は、図2の積層体について、第3相のポアッソン比の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す;
図4は、非オーセチックマトリックスおよび第3オーセチック相に対して等しい容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す;
図5は、非オーセチックマトリックスの容積割合10%に等しい第3オーセチック相の容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す;
図6は、30℃から80℃そして30℃に戻す加熱サイクルを受けるオーセチックポリプロピレン繊維について、時間の関数として長さを表すグラフを示す;
図7は、図2の積層体について第3相のヤング率の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す;
図8は、繰返し単位のそれぞれの場所にあるマトリックス相および第3(繊維)相により囲まれた中央の補強繊維相を含む3−相複合材料の有限要素モデル(FEM)を示す;
図9は、複合材料を120℃まで加熱する結果として補強繊維相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す;
図10は、複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチックマトリックス相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す;
図11は、複合材料を120℃まで加熱する結果として第3相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す;
図12は、複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチック第3相に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す;
図13は、複合材料を120℃まで加熱する結果としてオーセチック第3相に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す;
図14は、複合材料を150℃まで加熱する結果として2−相複合材料(非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す;および
図15は、複合材料を150℃まで加熱する結果として3−相複合材料(オーセチック第3相を有する非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す。
【0104】
図1は、従来技術による複合積層材料1を示す。複合材料1は、2層の炭素繊維補強材2および3層のエポキシマトリックス構成要素3を含む。炭素繊維補強材層2は、エポキシマトリックス構成要素層3間に配置される。
【0105】
図2は、本発明の複合積層材料4を示す。複合材料4は、炭素繊維補強材層5、およびエポキシマトリックス構成要素層6を含む。複合材料は、炭素繊維補強材層5間にあるオーセチック構成要素層7も含む。
【0106】
以下の本文では、図1に示される種類の従来技術の複合材料、および図2に示される種類の本発明の複合材料について異方性熱膨張および残留応力を比較することによって本発明がさらに説明される。
【0107】
熱膨張挙動
従来技術の複合材料
図1の複合材料1の補強繊維2が、密接に結合した界面であると仮定される場合、繊維層2の方向(x1)に対して沿ったおよび横方向の熱膨張係数は、以下の式(Kollar, L.P.およびSpringer, G.S.、Mechanics of Composite Structure、Cambridge、443〜444頁):
【0108】
【数1】
【0109】
α2=Vfαf2+Vmαm+Vfvf12(αf1−α1)+Vmvm(αm−α1) (2)
によってよく再現されることが知られている
(ここで、
α1およびα2は、それぞれ、繊維層2に対して沿うおよび横方向の複合材料1の熱膨張係数であり、
VfおよびVmは、それぞれ、繊維層2およびマトリックス3の容積割合であり、
Ef1およびEmは、それぞれ、繊維層2の軸方向ヤング率およびマトリックス層3のヤング率であり、
αf1,αf2およびαmは、それぞれ、繊維2軸方向、繊維2径方向およびマトリックス3の熱膨張係数であり、そして
vf12およびvmは、それぞれ、繊維2軸方向およびマトリックス3のポアッソン比である)。
【0110】
繊維層2として炭素繊維およびマトリックス3としてエポキシ樹脂についてパラメータの典型的な値(Vf=0.62、Vm=0.38、Ef1=230GPa、Em=3GPa、αf1=−6×10-7K-1、αf2=7×10-6K-1、αm=5.4×10-5K-1、vf12=+02およびvm=+0.38)を用いると、式(1)および(2)は、複合材料の熱膨張係数についてα1=−1.67×10-7K-1およびα2=3.26×10-5K-1の値を生じ、図1の複合材料の熱膨張の異方性性質を明らかに示す。
【0111】
本発明の複合材料
式(1)および(2)に示されるような確立された分析モデルを、第3相の存在を含めるように拡張することができ、図2の3−相複合材料4の熱膨張係数は、
【0112】
【数2】
【0113】
α2=Vfαf2+Vmαm+Vaαa+Vfvf12(αf1−α1)+Vmvm(αm−α1)+Vava(αa−α1) (4)
で与えられる
(ここで、
Vaは、第3オーセチック相7の容積割合であり、
Eaは、第3オーセチック相7のヤング率であり、
αaは、第3オーセチック相7の熱膨張係数であり、
vaは、第3相7のポアッソン比であり、
他の符号は式(1)および(2)について既に定義したとおりである)。
【0114】
第3オーセチック相7の1つまたは複数の特性は、(ほとんど)ゼロの熱膨張の可能性を含む、繊維層5の方向に沿ったおよび横方向の等しい熱膨張性を達成するために変更することができる。例えば、第3オーセチック相7の他の特性全てがエポキシマトリックス6の特性と同じであり、エポキシ6と第3オーセチック相7が等しい容積割合0.19(すなわち、繊維層5の容積割合は0.62である)を有すると仮定すると、ほとんど−3のポアッソン比を有する第3オーセチック相7を選択することによって繊維層5の方向に沿ったおよび横方向の、等しく、かつほとんどゼロの熱膨張性が達成される。これは、補強繊維5の容積割合の関数として第3オーセチック相7のポアッソン比および熱膨張係数を示す図3に示され、ここで、第3オーセチック相の容積割合は、非オーセチックマトリックス6の容積割合10%に等しい。−12と同程度に低いポアッソン比を有するポリマーオーセチック材料が知られている。
【0115】
繊維6の方向に沿ったおよび横方向の両方で、熱膨張係数がゼロである場合、第3相7の熱膨張係数およびポアッソン比について
【0116】
【数3】
【0117】
の関係が成り立つ。
【0118】
式(5)は、非オーセチック補強材5およびマトリックス相6の相対的量および特性を第3(オーセチック)相7の利用可能な熱膨張係数およびヤング率に適合するように慎重に選択することを可能にし、逆もそうである。式(6)は、非オーセチック補強材5およびマトリックス相6の相対的比率および特性ならびに第3相7のヤング率に基づいて第3相7についてポアッソン比の適切な符号および大きさの選択を与える。
【0119】
第3相7の熱膨張係数およびポアッソン比は、上記に定義されたとおりの成分の比率および特性について補強材相5の容積割合の関数として図4に示される。積層複合材料系4における現実の補強繊維5の容積割合(Vf=0.6〜0.7)について、第3相7の熱膨張係数は、ほぼ1×10-4K-1程度である。範囲0.6〜0.7のVfについて第3相7のポアッソン比は、ほぼ−2程度である。
【0120】
他に、第3オーセチック相7の低い容積割合を有することが望ましいことがあり得る。第3相の熱膨張係数およびポアッソン比は、上記に定義されたとおりの成分の特性について補強材相5の容積割合の関数として図5に示され、マトリックス相6の容積割合の10%に等しい第3相7の容積割合を有する。積層複合材料系4における現実の補強繊維5の容積割合(Vf=0.6〜0.7)について、第3相7の熱膨張係数は、ほぼ3×10-4K-1である。範囲0.6〜0.7のVfについて第3相のポアッソン比は、ほぼ−4である。
【0121】
範囲0〜−12のポアッソン比を有するオーセチックポリマーが知られている。高いおよび低いオーセチック繊維容積割合それぞれについて、範囲1×10-4〜3×10-4K-1の熱膨張係数は、多くのポリマーに典型的であり、オーセチックポリプロピレン繊維について測定して2×10-4K-1の膨張係数に相当する。
【0122】
図6は、30℃から80℃までそして30℃に戻す加熱サイクルを受けるオーセチックポリプロピレン繊維について時間の関数として長さを表すグラフを示す。80℃で該繊維は、30℃での13mmの初期長さから0.14mm伸長する。これは、50℃(50K)の温度増加にわたって0.01の歪みに相当し、該繊維について2×10-4K-1の熱膨張係数をもたらす。
【0123】
他に、上記のようなヤング率を除く他のパラメータ全てと共にポアッソン比va=−0.6(文献に報告されたオーセチックポリマー繊維に典型的)を有し、等しい第3相7とマトリックス6の容積割合を有する第3オーセチック相7について、第3オーセチック相7のヤング率が補強(炭素)繊維5の軸方向のヤング率の程度である場合、等しい(しかしゼロではない)熱膨張係数が複合材料4について実現される。これは、図2の複合材料4について第3相7のヤング率の関数としての熱膨張係数のグラフである図7によって示される。
【0124】
残留応力
図1に概略的に示される2−相の炭素−エポキシ複合構造1は通常、高温で硬化され、その後周囲温度まで冷却される。冷却の間に、マトリックス3および補強材2は異なる速度で縮小する。これはそれぞれの構成要素に熱的に生じた機械的応力をもたらす。
【0125】
長手方向の膨張(すなわち、繊維2の方向に沿って)について、炭素繊維2は、この方向における繊維2の熱膨張係数がほとんどゼロのため、冷却後の熱的膨張または収縮はほとんどない。一方、エポキシ3は大きな正の熱膨張係数を有し、したがって長さが収縮する。しかし、エポキシ3と炭素2との間の界面が損なわれていない一方、比較的高い係数の炭素繊維2は、比較的低い係数のエポシキマトリックス3が収縮することを抑制し、そのようにして熱的負荷はマトリックス3上の機械的引張り応力に変換される。繊維2方向に沿った引張り応力は、エポキシ3を横方向に収縮させる傾向があり(エポキシの正のポアッソン比のために)、繊維2−マトリックス3界面での残留応力の増加および、それゆえに、複合材料1の機械的特性の低下をもたらす。
【0126】
図2に概略的に示される3−相複合材料4について、成分上の、熱歪みの機械的応力への変換は、複合材料4が冷えると、エポキシ6およびオーセチック7(第3オーセチック相)の両方を繊維方向5における引張り応力下に置く傾向があるであろう。エポキシ6の収縮する傾向に対して、負のポアッソン比の結果としてオーセチック相7は横方向に膨張する。これは複合材料4内の残留応力の減少をもたらし、その結果、そうでなければ図1に示されるような2−相複合材料1に生じる機械特性の低下を減少させる。
【0127】
同様に、3−相複合材料4の加熱の間に、マトリックス6、オーセチック7、および補強材5の相は異なる速度で膨張する。やはり、炭素繊維5は、この方向における繊維5のほとんどゼロの熱膨張係数のために、加熱後に熱的膨張または収縮は少ない。一方、エポキシ6およびオーセチック7(第3)相は、大きい正の熱膨張係数を有し、したがって長さが増加しようとする。しかし、比較的高い係数の炭素繊維5が比較的低い係数のエポキシマトリックス6およびオーセチック相7を伸長から抑制し、そのようにして、熱負荷は、繊維5の方向におけるマトリックス6およびオーセチック相7に対する機械的圧縮応力に変換される。結果として、炭素繊維それ自体におけるほとんどゼロの軸方向の歪みに比べて、大きな圧縮歪みが繊維5の方向に沿ってエポキシ6およびオーセチック相7に成長する。繊維5の方向に沿った圧縮応力は、エポキシ6を横方向に膨張させ(エポキシ6の正のポアッソン比のために)、オーセチック相7を横方向に収縮させる(負のポアッソン比の結果として)。この場合も、複合材料4内の残留応力の減少、したがって、そうでなければ図1に示されるような2−相複合材料1に生じるであろう機械的特性の低下の減少が存在する。
【0128】
図8〜15の以下の有限要素モデルFEMについて、図に示されるキーは、キーの左側に示される陰影に対応するものとして比較的高い圧縮歪みまたは応力の領域を特定する。比較的低い圧縮(または一部の場合に引張り)歪みまたは応力の領域は、キーの右側のものに対応する陰影によって示される。
【0129】
図8は、0℃から120℃までの加熱を受ける図2に示される種類の3−相複合材料のFEMを示す。図8は、FEMシミュレーションに用いられる3−相単位セル80を示し、該単位セル80は、以下を含む:
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、軸方向ヤング率230GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向補強繊維構成要素81;
容積割合0.19、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素82;ならびに
容積割合0.19、等方性ヤング率3GPa、および等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する第3相一方向繊維構成要素83。
【0130】
図9、図10および図11は、図8に示される種類の単位セルを構成する個々の構成要素のFEMを示す。図9は、補強繊維90のFEMを示す。図10は、マトリックス100のFEMを示し、図11は、第3オーセチック相110のFEMを示す。補強繊維90、非オーセチックマトリックス100および第3相110において軸(繊維)方向に沿って120℃まで加熱後に成長する歪みは、マトリックス100および第3相成分110において成長する圧縮歪み、およびこれらの歪みが補強繊維相90において成長するものより約2桁大きいことを明らかに示す。
【0131】
図12および図13は、複合材料を120℃まで加熱することにより非オーセチック第3相120および130に対して作用する横方向歪みのFEMを示す。第3相120および130について軸方向に垂直な横方向のz方向に成長する歪みは、それぞれ、ポアッソン比+0.38(すなわち、非オーセチックマトリックス相と同じ)および−0.6(すなわち、オーセチック)を示す。
【0132】
図12および図13は、第3相120および130の横方向変形が、図11と比べた場合加熱後増加する軸方向圧縮の結果として、それぞれ非オーセチックおよびオーセチック成分について横方向の膨張および収縮を受ける材料のポアッソン比の符号に依存することを明らかに示す。
【0133】
図14および図15は、150℃まで加熱後2−相140および3−相150内に成長する横方向(z方向)応力を示す。
【0134】
図14に用いられる2−相複合材料140は、図1に示される種類のものであり、以下を含む:
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、軸方向ヤング率230GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向補強繊維構成要素141;ならびに
容積割合0.38、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、および等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素142。
【0135】
図15に用いられる3−相複合材料150は、図2に示される種類のものであり、以下を含む:
容積割合0.62、軸方向ポアッソン比+0.2、軸方向ヤング率230GPa、軸方向熱膨張係数−6×10-7K-1、および横方向熱膨張係数7×10-6K-1を有する非オーセチック一方向補強繊維構成要素151;
容積割合0.19、等方性ポアッソン比+0.38、等方性ヤング率3GPa、および等方性熱膨張係数5.4×10-5K-1を有する非オーセチックマトリックス構成要素152;ならびに
容積割合0.19、等方性ポアッソン比−0.6、等方性ヤング率0.3GPa、および等方性熱膨張係数8.5×10-5K-1を有するオーセチック一方向性繊維構成要素153。
【0136】
図14および図15は、2−相複合材料140と比べた場合、3−相複合材料150において残留圧縮応力の減少が達成されることを明らかに示す。これは、第3オーセチック相153の存在による。
【0137】
直接かけられた機械的負荷を受ける図2に示される種類のマルチ−構成要素複合材料におけるオーセチック相による強化の例が、エポキシ樹脂に埋め込まれた単一のオーセチック繊維が、図1に示される種類の同等の非オーセチック繊維と比べて、エポキシから繊維を引き抜くために2倍の力および3倍のエネルギーを要することが見出された試験において証明された。現行の発明において、効果は、機械的負荷を直接かけることによってではなく、複合材料の冷却および/または加熱の間の熱歪みの機械的応力への変換によって達成される。
【0138】
複合材料を作製する方法
実施例1
柔軟化された冷硬化エポキシマトリックス内に埋め込まれたオーセチックポリプロピレン繊維を含む図2に示される種類の複合材料系を調製した。オーセチック繊維を、Plast−Labor S.A.によって製造され、Univar Plc.によって供給されるグレードPB0580ポリプロピレンパウダーの溶融押出しを用いて製造した。用いた冷硬化エポキシ樹脂は、硬化剤HY5084を添加したAraldite LY5052であった。硬化処理の間の架橋結合に対する抑制剤としてジブチルフタレートを樹脂に添加し、このように図2に示される種類の最終の製造された複合材料系における架橋結合の程度の慎重な調節を可能にした。
【0139】
実施例2
冷硬化エポキシマトリックス内に埋め込まれたオーセチックポリプロピレン繊維およびガラス補強繊維を含む図2に示される種類の複合材料系を調製した。オーセチック繊維を、Plast−Labor S.A.によって製造され、Univar Plc.によって供給されるグレードPB0580ポリプロピレンパウダーの溶融押出しを用いて製造した。ガラス繊維は、PPM Glassによって提供された。冷硬化エポキシ樹脂は、図2に示される種類の、Huntsmanによって供給される硬化剤HY5082を添加したAraldite LY5052であった。
【0140】
本発明は、ほんの一例として説明される上記実施形態の詳細に制限されることを意図しないことは当然理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】従来技術による一方向複合積層体を表した図を示す。
【図2】本発明による一方向複合積層体を表した図を示す。
【図3】図2の積層体について、第3相のポアッソン比の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図4】非オーセチックマトリックスおよび第3オーセチック相に対して等しい容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図5】非オーセチックマトリックスの容積割合10%に等しい第3オーセチック相の容積割合を有する図2の積層体について、補強繊維の容積割合の関数として第3相のポアッソン比および熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図6】30℃から80℃そして30℃に戻す加熱サイクルを受けるオーセチックポリプロピレン繊維について、時間の関数として長さを表すグラフを示す。
【図7】図2の積層体について第3相のヤング率の関数として熱膨張係数を表すグラフを示す。
【図8】繰返し単位のそれぞれの場所にあるマトリックス相および第3(繊維)相により囲まれた中央の補強繊維相を含む3−相複合材料の有限要素モデル(FEM)を示す。
【図9】複合材料を120℃まで加熱する結果として補強繊維相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す。
【図10】複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチックマトリックス相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す。
【図11】複合材料を120℃まで加熱する結果として第3相に作用する軸方向歪みのFEMモデルを示す。
【図12】複合材料を120℃まで加熱する結果として非オーセチック第3相に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す。
【図13】複合材料を120℃まで加熱する結果としてオーセチック第3相に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す。
【図14】複合材料を150℃まで加熱する結果として2−相複合材料(非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)のFEMモデルを示す。
【図15】複合材料を150℃まで加熱する結果として3−相複合材料(オーセチック第3相を有する非オーセチックマトリックスによって囲まれた中央の補強繊維相を含む)に作用する横方向(z方向)歪みのFEMモデルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスに結合した繊維の層を含む複合材料であって、前記マトリックスおよび繊維の一方が、第1の方向に沿った荷重に対してオーセチック挙動を示す第1の構成要素を含み、前記マトリックスおよび繊維の他方が、第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック挙動を示す第2の構成要素を含む、複合材料。
【請求項2】
前記繊維の層が、第1の構成要素を含み、前記マトリックスが第2の構成要素を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記繊維の層が、第2の構成要素を含み、前記マトリックスが第1の構成要素を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記繊維の層が、前記マトリックスに埋め込まれるか、前記マトリックスに部分的に埋め込まれるか、または前記マトリックスと接触した別個の層を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記繊維の層が、一方向の繊維または織られた、編まれたもしくは不織のメッシュを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記繊維の層が、一方向の繊維を含み、オーセチック挙動の評価のためにそれに沿って荷重がかけられる第1の方向が、前記繊維の方向と平行である、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料の熱膨張係数が、第1の方向に対して平行および垂直で測定して、実質的に等しい、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第2の構成要素の容積割合が、60から70%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第1の構成要素の容積割合が、40%未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料が、第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス材料をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記非オーセチックマトリックス材料の容積割合が、40%未満である、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記オーセチック材料が、オーセチック熱可塑性(ポリエステルウレタン)、熱硬化性(シリコーンゴム)および金属(銅)発泡体、オーセチック熱可塑性微小孔ポリマーシリンダー(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、およびナイロン)、モノフィラメント(PP、ナイロンおよびポリエステル)およびフィルム(PP)、天然ポリマー(結晶性セルロース)、複合積層体(炭素繊維補強エポキシ、ガラス繊維補強エポキシおよびアラミド補強エポキシ)、特定の銅酸ビスマス超伝導多結晶性化合物、69%立方晶系元素金属、ならびに結晶性シリカ(α-クリストバライトおよびα−石英)の天然多形体から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記マトリックス材料が、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、または熱硬化性と熱可塑性両方のポリマーから選択される1つまたは複数のポリマー材料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記マトリックス材料が、硬化剤、硬化促進剤、顔料、柔軟剤、難燃剤および強化剤の任意のものを単独または組合せのいずれかで含む1つまたは複数のさらなる構成要素をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項15】
繊維の層および未硬化マトリックスを含み、それにより前記マトリックスの硬化が請求項1に記載の複合材料を生じる複合材料。
【請求項16】
前記マトリックスが、硬化中に繊維の層に含浸する、請求項16に記載の複合材料。
【請求項17】
前記繊維の層を前記マトリックスに結合させる工程を含む、請求項1に記載の複合材料を製造する方法。
【請求項1】
マトリックスに結合した繊維の層を含む複合材料であって、前記マトリックスおよび繊維の一方が、第1の方向に沿った荷重に対してオーセチック挙動を示す第1の構成要素を含み、前記マトリックスおよび繊維の他方が、第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック挙動を示す第2の構成要素を含む、複合材料。
【請求項2】
前記繊維の層が、第1の構成要素を含み、前記マトリックスが第2の構成要素を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記繊維の層が、第2の構成要素を含み、前記マトリックスが第1の構成要素を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記繊維の層が、前記マトリックスに埋め込まれるか、前記マトリックスに部分的に埋め込まれるか、または前記マトリックスと接触した別個の層を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記繊維の層が、一方向の繊維または織られた、編まれたもしくは不織のメッシュを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記繊維の層が、一方向の繊維を含み、オーセチック挙動の評価のためにそれに沿って荷重がかけられる第1の方向が、前記繊維の方向と平行である、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料の熱膨張係数が、第1の方向に対して平行および垂直で測定して、実質的に等しい、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第2の構成要素の容積割合が、60から70%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第1の構成要素の容積割合が、40%未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料が、第1の方向に沿った荷重に対して非オーセチック挙動を示すマトリックス材料をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記非オーセチックマトリックス材料の容積割合が、40%未満である、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記オーセチック材料が、オーセチック熱可塑性(ポリエステルウレタン)、熱硬化性(シリコーンゴム)および金属(銅)発泡体、オーセチック熱可塑性微小孔ポリマーシリンダー(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、およびナイロン)、モノフィラメント(PP、ナイロンおよびポリエステル)およびフィルム(PP)、天然ポリマー(結晶性セルロース)、複合積層体(炭素繊維補強エポキシ、ガラス繊維補強エポキシおよびアラミド補強エポキシ)、特定の銅酸ビスマス超伝導多結晶性化合物、69%立方晶系元素金属、ならびに結晶性シリカ(α-クリストバライトおよびα−石英)の天然多形体から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記マトリックス材料が、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、または熱硬化性と熱可塑性両方のポリマーから選択される1つまたは複数のポリマー材料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記マトリックス材料が、硬化剤、硬化促進剤、顔料、柔軟剤、難燃剤および強化剤の任意のものを単独または組合せのいずれかで含む1つまたは複数のさらなる構成要素をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項15】
繊維の層および未硬化マトリックスを含み、それにより前記マトリックスの硬化が請求項1に記載の複合材料を生じる複合材料。
【請求項16】
前記マトリックスが、硬化中に繊維の層に含浸する、請求項16に記載の複合材料。
【請求項17】
前記繊維の層を前記マトリックスに結合させる工程を含む、請求項1に記載の複合材料を製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−537359(P2009−537359A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511579(P2009−511579)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001946
【国際公開番号】WO2007/135447
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508347742)オーゼティック テクノロジーズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AUXETIC TECHNOLOGIES LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001946
【国際公開番号】WO2007/135447
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508347742)オーゼティック テクノロジーズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AUXETIC TECHNOLOGIES LIMITED
【Fターム(参考)】
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