説明

複合材部品の表面に出現する不整合を最小化するための方法および装置

【課題】予備硬化複合材ストリップを複合材部品に貼付けるための方法および装置を提供する。
【解決手段】熱硬化樹脂を有する予備硬化複合材ストリップを、当て板シームが位置することが予定される複合材部品の一部分の表面上に配置する。予備硬化複合材ストリップを配置した後に複合材部品上に当て板を配置して、当て板シームを形成する。当て板を複合材部品上に配置した後に、複合材部品を硬化させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して複合材部品に関し、特に、複合材部品を製造するための方法および装置に関する。さらに詳細には、本開示は複合材部品の外観を改良するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の設計および製造に占める複合材料の割合がますます増大しつつある。主要な構造の50%以上が複合材料からなる航空機もある。複合材料を航空機に使用して、航空機を軽量化することができる。この軽量化によって、収益荷重容量および燃費が向上し得る。さらに、複合材料によって、航空機のさまざまな部品の耐用年数を延ばし得る。
【0003】
複合材料は堅い軽量材料であり、2つ以上の異質な部品を組合せることによって作製し得る。たとえば、複合材は繊維および樹脂を含み得る。繊維および樹脂を組合せて、硬化複合材料を形成し得る。
【0004】
さらに、複合材料を用いることによって、航空機の部分をより大きなピースまたはセクションに作製し得る。たとえば、航空機の胴体は、組み立てると航空機の胴体を構成し得る円筒形のセクションに形成することができる。他の例には、限定はしないが、翼を形成するために接合される翼セクション、または安定板を形成するために接合される安定板セクションが含まれ得る。
【0005】
複合材料または構造を湾曲もしくは環状の形状に作製するにあたって、複合材部品の内側モールドライン(IML)に対向して配置し得るモールドを用いて、複合材料を成形および/または積層し得る。その結果、複合材部品の内側モールドラインに接触する内側モールドを用いて、異なる特徴、テクスチャもしくは外観を、複合材部品および/または複合積層材の内面上に作製し得る。航空機の胴体の形態の複合材部品では、これらの特徴、テクスチャ、または外観を客室内部において使用し得る。これらの特徴、テクスチャ、または外観は、たとえば限定はしないが、窓、美観のために窓を囲む目に見えるライン、および客室壁上のテクスチャを含む。
【0006】
複合材料で複合材部品を形成する際、複合材料からなる外側面または外側モールドライン(OML)は、内側モールドを使用する場合は、外側モールドに制約されない。胴体のセクションの場合は、この外側モールドラインが胴体および/または胴セクションの表面の外観を生じさせ得る。この種の複合材部品では、滑らかな表面が望まれる。
【0007】
部品の寸法によっては、複合材部品の硬化または形成中に、複数の当て板を複合材部品の外側面上に配置する必要があり得る。当て板は薄ゲージシートであり、限定はしないが、金属または複合材料で形成され得る。これらの当て板は、外側モールドラインを制御し、滑らかな表面を作成するために使用し得る。大きな複合材部品は、複数の当て板を必要とし得る。複数の当て板が使用される場合、これらの板は互いに隣り合って配置させ得る。複合材部品の製造中の硬化および/または加熱処理による当て板の熱膨張に対応するために、隣接する当て板同士の間に隙間を残し得る。
【0008】
当て板のエッジにおいては、視認できる型あと、繊維のうねり、および/または繊維の歪みなどの不整合が生じ得る。この型あとおよび繊維の歪みは、視認できるラインまたはシームとなり得る。当て板同士の間の隙間に露出した複合材料に真空バッグが接触した場合、および/または硬化処理中に当て板が重なった場合にも、この種の不整合が生じ得る
。さらに、容認し難い型あとまたは他の種類の不整合が硬化した複合材上に視認でき、かつ硬化中に当て板が存在していた隙間に位置している状態では、繊維のうねりが生じるおそれがある。これらの種類の不整合は望ましくない。
【0009】
これらの不整合の視認性を低下させるために、充填材および表面仕上げ法を使用し得る。充填材は、航空機表面の定期再塗装前に複合材部品から分離するおそれがある。さらに、複合材部品の表面は、塗装の準備の際に単に軽くサンディングするだけの場合がある。過度のサンディングは、完成した航空機の望ましくない外観に繋がり得る。
【0010】
現在、不整合が生じ得る隙間が完成品において明確に視認できないように、当て板を航空機のいくつかの場所に配置または位置決めすることによって、航空機におけるこの種の不整合を制御し得る。これらの隙間を、当て板シームとも称する。たとえば、翼が胴体に取付けられる胴体セクションまたは胴体の底面に沿って位置決めされる当て板シームとの不整合は、容易に視認できない。さらに、当て板シームが窓の切抜き領域に沿うように当て板を配置することによっても、不整合を最小化し得る。
【0011】
したがって、複合材部品の表面上に出現する不整合を最小化するための、上記の課題を解決する方法および装置が必要である。本開示の実施形態は、この必要性を満たすことを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
本開示の有利な実施形態は、予備硬化複合材ストリップを複合材部品に貼付けるための方法および装置を提供する。熱硬化樹脂を有する予備硬化複合材ストリップを、当て板シームが位置することが予定され得る複合材部品の一部分の表面上に配置し得る。予備硬化複合材ストリップを配置した後に当て板を複合材部品上に配置して、当て板シームを形成する。当て板を複合材部品上に配置した後、複合材部品を硬化させ得る。
【0013】
別の有利な実施形態において、複合材ストリップを形成することによって、予備硬化複合材ストリップを製造し得る。複合材ストリップを硬化させて、予備硬化複合材ストリップを形成し得る。
【0014】
別の有利な実施形態は、予備硬化複合材ストリップと、複合材テープ層と、第2の複合材生地層とを含む。第1の複合材生地層は第1の幅を有する。複合材テープ層は、第1の複合材生地層上に配置され、第1の幅よりも小さい第2の幅を有し得る。第2の複合材生地層は、複合材テープ層上に配置され、第2の幅よりも小さい第3の幅を有し得る。
【0015】
この発明は、異なる観点からとらえると以下のようにまとめられる。
1.予備硬化複合材ストリップを製造する方法は、予備硬化複合材ストリップを積層するステップと、予備硬化複合材ストリップを硬化させるステップとを含む。
【0016】
2.上記1の方法において、形成するステップは、複合材テープ層を第1の複合材生地層上に配置するステップと、第2の複合材生地層を複合材テープ層上に配置して、複合材層を形成するステップとを含む。
【0017】
3.上記2の方法において、形成するステップはさらに、第1の剥離プライ層を複合材層上に配置するステップと、第2の剥離プライ層を複合材層下に配置するステップとを含む。
【0018】
4.上記2の方法において、第1の複合材生地層は第1の幅を有する。複合材テープ層は、第1の幅よりも小さい第2の幅を有する。第2の複合材生地層は、第2の幅よりも小さい第3の幅を有する。
【0019】
5.上記1の方法において、予備硬化複合材ストリップはある幅およびある長さを有し、予備硬化複合材ストリップは、予備硬化複合材ストリップの幅の対向するエッジに向かって先細りとなる厚さを有する。
【0020】
6.上記2の方法において、複合材テープ、第1の複合材生地層、および第2の複合材生地層は、熱硬化樹脂を含む。
【0021】
7.上記3の方法はさらに、予備硬化複合材ストリップを硬化した後に、第1の剥離プライ層を接着剤層で置換するステップと、予備硬化複合材ストリップを硬化した後に、第2の剥離プライ層を接着剤層で置換するステップとを含む。
【0022】
8.上記2の方法において、複合材ストリップは熱硬化樹脂を含む。
本開示のさまざまな実施形態において、特徴、機能、および利点を別個に実現することができる、またはさらに他の実施形態において組合せ得る。さらなる詳細は、以下の説明および図面を参照すると分かる。
【0023】
有利な実施形態に固有と考えられる新規な特徴を添付の請求項に記載する。しかし有利な実施形態自体は、好ましい使用形態、さらなる目的、およびその利点と同様に、本開示の有利な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、添付の図面と併せて読まれると最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
詳細な説明
図面をさらに詳細に参照して、図1に示す航空機製造修理方法100および図2に示す航空機102に関連して本開示の実施形態を説明する。準備段階において、例示的な方法100は、航空機102の仕様および設計104と、材料調達106とを含み得る。製造中、航空機102の部品および半組立品製造108と、システム統合110とが行なわれる。その後航空機102は、就航114のために承認および出荷112を経る。顧客の利用に供されている間、航空機102は定期保守および修理116(改修、再構成、修繕等も含み得る)が予定される。
【0025】
方法100の各処理は、システムインテグレータ、第三者、および/またはオペレータ(たとえば顧客)によって実行され得る。説明の目的で、システムインテグレータは、限定はしないが、いずれかの数の航空機製造業者および主要システムの下請業者を含み得る。第三者は、限定はしないが、いずれかの数の納入業者、下請業者、および供給業者を含み得る。オペレータは、エアライン、リース会社、軍、行政機関等であり得る。
【0026】
図2に示すように、例示的な方法100によって製造される航空機102は、複数のシステム120および内装122を有する機体118を含み得る。高レベルシステム120の例には、1つ以上の推進システム124、電気システム126、油圧システム128、および環境システム130を含む。いずれかの数の他のシステムも含み得る。航空宇宙産業の例が示されているが、本開示の原理は、他の業界たとえば自動車業界に適用し得る。
【0027】
ここに例示する装置および方法は、製造修理方法100のいずれか1つ以上の段階において採用し得る。たとえば、製造処理108に対応する部品または半組立品は、航空機102が使用されている間に製造される部品または半組立品と同様に製作または製造し得る
。また、たとえば、航空機102の組立を実質的に迅速化する、またはコストを削減することによって、1つ以上の装置実施形態、方法実施形態、またはそれらの組合せを製造段階108および110において利用し得る。同様に、航空機102がたとえば限定はしないが保守および修理116に使用されている間、1つ以上の装置実施形態、方法実施形態、またはそれらの組合せを利用し得る。
【0028】
別の有利な実施形態によって、複合材部品の表面上のラインまたは他の種類の不整合を最小化するための方法および装置がもたらされ得る。特に、これらの別の有利な実施形態は、型あとおよび繊維のマイグレーション(migration)などの不整合を制御、減少または最小化して、複合材部品の美観を向上させ得る。
【0029】
別の例において、当て板同士の間の当て板シームによって生じる不整合は、予備硬化複合材を使用することで減少し得る。これらの例では、複合材部品であり得る基板に複合材を接着および/または貼付け得る。予備硬化複合材は、当て板の貼付けおよび/または配置前に複合材部品の外側モールドライン上に配置される予備硬化複合材ストリップであり得る。予備硬化複合材ストリップは、たとえば、隣り合う当て板同士の間の当て板シームが生じ得る場所に配置すればよい。
【0030】
これらの例において、予備硬化複合材ストリップは、硬化すると十分堅くなり、隣接する当て板が硬化処理中に複合材ストリップ上で移動または摺動した場合に、複合材部品において隣接する当て板が不整合を生じるのを防ぎ得る。その結果、当て板を予備硬化複合材ストリップ上で移動可能にすることによって、不整合を引起し得る繊維および樹脂の移動または他の変化を防ぎ得る。その結果、硬化中の当て板の移動によって引起される不整合を、美的要件を満たす表面外観がもたらされる程度に除去または減少し得る。
【0031】
さらに、別の例では、面外繊維うねりを減少させ、部品表面の外観品質を向上させ得る。面外繊維うねりは、硬化していないプライ積層または硬化した部分における繊維の面外配置であり、1つ以上のプライが永続的に硬化して、部分形状と一致しない隆起、窪み、または折り目となるおそれがある。面外方向は、当該部分から離れる方向または当該部分への方向のいずれかであり得る。
【0032】
また、別の実施例では、部品の表面を充填する必要性をなくし得る。また、予備硬化複合材ストリップを使用することで、当て板を互いに隣接して配置する際により大きな隙間公差を使用し得る。
【0033】
次に図3(A)〜(D)を参照し、複合材構造中の繊維のマイグレーションにおける型あとを制御するための方法および装置の例を、有利な実施形態に従って図示する。この例では、複合材部品300は、図1に示す航空機100の胴体106などの航空機の胴体であり得る。複合材部品300の構成または組立は、図1の航空機製造修理方法100中の部品および半組立品製造108において実行され得る。
【0034】
この例では、複合材部品300の材料がモールド302の周りに配置される、またはモールド302を複合材部品300の内側モールドライン部分に配置し得る(図3(A))。これらの材料は、たとえば限定はしないが、複合材テープおよび/または複合材生地であり得る。これらおよび他の種類の複合材料の層をモールド302の上に載置して、複合材部品300を形成する。この例において、モールド302は、複合材部品300の内側モールドラインの形を含み得る内側モールドである。表面304は、複合材部品300の外側モールドラインの表面である。
【0035】
次に、複合材ストリップ306を複合材部品300の表面304上に配置し得る(図3
(B))。これらの例において、複合材ストリップ306は、予備硬化複合材ストリップであり得る。さらに、複合材ストリップ306を接着剤によって複合材部品300の表面304に付着させ得る。たとえば、接着膜を複合材ストリップ306の表面上に配置し得る。複合材部品300を複合材ストリップ306とともに硬化させることによって、接着剤膜および複合材ストリップ306を複合材部品300に一体化、および/または付着させ得る。
【0036】
複合材ストリップ306を複合材部品300に貼付けた後、当て板308および310を複合材部品300上に配置し得る(図3(C))。これらの当て板を使用して、平滑な表面をもたらし、かつ複合材部品300の表面304上に望ましくない不整合が生じるのを回避し得る。
【0037】
また、当て板308および310の間には、当て板シーム312が存在し得る。当て板シーム312は、当て板308および310の間に存在する隙間であり得る。当て板シーム312の寸法は、複合材部品300が当て板308および310に沿って加熱される際の膨張率および圧縮率の差を考慮して選択し得る。複合材ストリップ306によって、複合材部品300の視覚的美観を損ない得る当て板シーム312の領域における不整合を減少および/または除去し得る。
【0038】
より詳細には、当て板308および310を形成するのに使用される材料によっては、これらの当て板は複合材部品300とは異なる速度で膨張し得る。さらに、複合材部品300は、硬化処理中に直径が減少し得る。その結果、当て板シーム312によって当て板308および310が膨張および/または摺動することが可能となり、座屈または互いに当たることが回避される。複合材ストリップ306は、当て板308および310の膨張および/または摺動による不整合を低減するのを補助し得る。
【0039】
この例では、当て板シーム312が複合材部品300の長手方向に延び得るように、当て板308および310を配置し得る。特定の実施例によっては、当て板シームは、当て板シーム312で示すように長手方向ではなく、複合材部品300の周方向に延在してもよい。
【0040】
次に、複合材部品を硬化させる準備をし、当て板308および310が所定位置にある状態で炉314内に配置し得る(図3(D))。複合材部品300内の複合材料を硬化させるのに必要な適切な温度に炉314を加熱することによって、このアセンブリを硬化させ得る。
【0041】
これらの例では、炉314は複合材硬化炉であり、炉314内で硬化処理が生じると、複合材部品300に熱および圧力が加えられ得る。炉314は、約350℃の温度を加えて複合材部品300を硬化させ得る。この例において、炉314は、圧力および熱を加えるオートクレーブであり得る。もちろん、複合材部分を硬化させることができるいずれの種類の炉を、これらの異なる実施形態において使用し得る。炉314を使用するのに加え、他の種類の硬化処理を採用してもよい。たとえば、炉314などの熱硬化システムを用いるのではなく、電子ビームシステムを用いて複合材部品を硬化させてもよい。
【0042】
次に図4を参照し、複合材部品の等角投影図を、有利な実施形態に従って図示する。この例では、複合材部品400は図3の複合材部品300の一例である。特に、複合材部品400は、図3の炉314などの炉で硬化された航空機の胴体セクションの一例であり得る。この例では、複合材部品400の表面408上に予備硬化複合材ストリップ402、404、および406が存在し得る。予備硬化複合材ストリップ402、404、および406は、当て板シームが存在していたセクションまたは領域に位置決めすればよい。
【0043】
次に図5を参照し、トリムルーティング後の複合材部品の等角投影図を、有利な実施形態に従って図示する。これは、トリムルーティング処理が複合材部品400に対して行なわれた例である。この処理により、窓たとえば窓500、502、504、506、508、510、および512が作製され得る。また、複合材部品400に対してトリムルーティング処理を行なった後には、乗客用ドアトリム514および516も存在し得る。これらの例では、予備硬化複合材ストリップ402および406が窓上に位置合わせされ得るが、このような位置合わせは必要ではない場合がある。
【0044】
次に図6を参照し、所定の位置に複合材ストリップおよび当て板を有する複合材部品の断面図を、有利な実施形態に従って図示する。この例において、複合材部品600は、図3の複合材部品300の線6−6に沿った断面図の一例であり得る。この例では、複合材ストリップ602を複合材部品600の表面604上に配置し得る。複合材ストリップ602は、図3の複合材ストリップ306の一例であり得る。この例では、表面604は複合材部品600の外側モールドラインの外側面である。この例では、当て板606および608を複合材部品600および複合材ストリップ602の上に配置すればよい。当て板606および608は、図3の当て板308および310の一例であり得る。
【0045】
この例では、当て板606のエッジ612と当て板608のエッジ614との間に当て板シーム610が存在し得る。この例において、当て板シーム610は10ミリメートルの隙間を有し得る。当て板シーム610のための隙間の寸法は、たとえば当て板606および608の熱膨張および/または寸法などの要因に依存して変動し得る。
【0046】
さらに、この特定の例では、複合材ストリップ602は、複合材ストリップ602の中央部分616からエッジ618および620に先細りになり得る。生じるテーパの量は実施例によって異なり得る。複合材ストリップ602のテーパは、このストリップを十分なプライから遷移させて、単一のプライに硬化する間に不整合が形成されるのを阻止し得る。これらの例では、複合材部品の外観に悪影響を及ぼすことなく下地プライが段差を吸収し得るように、各プライの幅を逓減させてもよい。これは、下地の積層板の厚さによって促進され得る。
【0047】
複合材ストリップの幅は、別の要因、たとえば当て板同士の間の隙間、予備硬化ストリップを位置合わせするのに用いられる方法、または重量の制約に基づき得る。これらの例では、予備硬化ストリップの幅を設定する際の要因の1つは、当て板のエッジを完全に支持し得る最少数のプライおよび最大厚さの領域を用いることであり得る。さらに、熱膨張および圧縮要因を考慮し得る。
【0048】
次に図7を参照し、複合材ストリップにおける層の断面図を、有利な実施形態に従って図示する。この例では、複合材ストリップ700をベースプレート702上に形成し得る。ベースプレート702は、複合材ストリップ700がその上に作製され得る構造である。さらに、複合材ストリップ700を硬化させて、上記のようにベースプレート702上に予備硬化複合材ストリップを形成し得る。この特定の例において、複合材ストリップ700は、剥離プライ層704、複合材生地層706、複合材テープ層708、複合材生地層710、および剥離プライ層712を含み得る。
【0049】
複合材生地層706および710は、特定の実施例によっては、ともに同じ種類の材料、または異なる材料で作製され得る。これらの生地は、繊維および樹脂を含み得る。繊維は、たとえばカーボンファイバであり得る。これらの例において、樹脂は熱硬化樹脂であり得る。熱硬化樹脂は、一旦硬化するとリフローも軟化もしない樹脂であり得る。これらの複合材生地層は、これらの例では、いずれの種類の複合材生地を用いて実現してもよい

【0050】
複合材テープ層708も、いずれの種類の複合テープを用いて実現してもよい。これらの特定の例では、複合材テープ層708の樹脂も熱硬化樹脂である。これらの例において、テープは一連の一方向の繊維からなり、90°または当て板シームに対して垂直であり得る外側モールドライン方向に堅くなり得る。この堅さを利用して、当て板が硬化中に予備硬化ストリップにおいて不整合を形成するのを阻止し得る。一部の繊維はシーム方向にあって予備硬化ストリップの取扱いを可能にするものの、当て板シームに平行に走る繊維は、当て板が不整合を形成するのを阻止しない可能性がある。これらの例では、複合材部品の表面の残りの部分と調和するように生地が選択された。他の用途では、テープを外側プライとして使用してもよい。
【0051】
これらの例では、剥離プライ層704および712を使用して、機械的接合に備えた表面をもたらし得る。詳細には、これらの層を複合材ストリップ700から除去すると、粗面がもたらされ得る。剥離プライ層704および712は任意の層であり得る。代替的に、複合材ストリップ700上の表面は、きれいな粗面を得るためのサンディングまたは他の表面準備処理などの他の機構によって機械的接合に備え得る。
【0052】
複合材ストリップ700を硬化させた後、剥離プライ層704を除去し得る。剥離プライ層704の除去後、接着剤層を複合材生地層706の表面714上に配置し得る。剥離プライ層712は、複合材ストリップ700を硬化させた後に除去し、サーフェイサー層を複合材ストリップ700の表面716上に配置し得る。サーフェイサー層は、複合材部品の仕上げ中に研かれる層をもたらし、複合材ストリップ700を複合材部品の外側モールドラインに羽毛化または平滑化し得る。これらの例では、予備硬化前に真空バッグ処理を用いて複合材ストリップ700を圧縮する必要はない。
【0053】
この例では、複合材ストリップ700は先細りであってもよく、複合材生地層706の幅は複合材テープ層708よりも大きい。複合材生地層710の幅は、複合材テープ層708および複合材生地層706よりさらに小さくてもよい。
【0054】
これらの特定の例では、剥離プライ層704および剥離プライ層712の幅は約3.0インチであり得る。複合材生地層706の幅は約3.0インチであり、複合材テープ層708の幅は約2.25インチであり得る。複合材生地層710の幅は、これらの例では約1.5インチであり得る。
【0055】
次に図8を参照し、完成された複合材ストリップの断面図を、有利な実施形態に従って図示する。この例では、図7の複合材ストリップ700が接着膜層802およびサーフェイサー層800を含み得る。この形態において、複合材ストリップ700は、当て板の配置に基づいて当て板シームが位置することが予定または計画され得る領域またはセクションに貼付ける準備ができた状態であり得る。
【0056】
複合材ストリップ700は3層の複合材料で例示するが、特定の実施例によっては、他の数の複合材料層を使用してもよい。たとえば、複合材ストリップ700は、複合材生地層および複合材テープ層からなる2層を有してもよい。代替的に、複合材ストリップ700はより多くの層、たとえば4または5つの層を有してもよい。使用される層の数は、複合材ストリップの所望の厚さに対する層の厚さに依存し得る。典型的に、複合材部品上の重量を減らすために、厚さが薄い方が望ましい。また、複合材ストリップ700の幅は、複合材ストリップ700の重量および隙間寸法の要件に基づいて選択し得る。
【0057】
これらの例では、複合材ストリップ700において使用される複合材料は異なり得る。
これらの例では、複合材ストリップ700において使用される複合材料は、硬化後に加熱される際にリフローまたは軟化し得ないものであればよい。特に、複合材料は熱硬化材料または樹脂で作製してもよく、これは最初の硬化後に溶けたり軟化したりしない。このように、複合材ストリップを複合材部品の残りの部分に接合する際に、ある程度の剛性が存在し得る。この剛性により、複合材部品の表面の外観に不整合を生じさせることなく、当て板が複合材ストリップ上を摺動することが可能となり得る。この例では、複合材ストリップ700は、図7の表面714上の予備硬化された平坦部分であり得る。他の実施形態では、複合材ストリップ700は、胴体セクションの外側モールドラインと半径がほぼ同じである湾曲面上に予備硬化してもよい。
【0058】
特に、航空機の複合材構造または部品の硬化中に、隣接する当て板が移動および/または膨張することによる不整合の出現を減少させるまたはなくすように、別の有利な実施形態を実施してもよい。
【0059】
次に図9を参照し、複合材ストリップの断面図を、有利な実施形態に従って図示する。この例では、複合材ストリップ900は、複合材部品上への貼付けまたは使用前に、予備硬化され得る。
【0060】
この例では、複合材ストリップ900は、剥離プライ層902、テープ層904、テープ層906、生地層908、およびサーフェイサー層910を含み得る。この特定の例では、テープ層904が最小幅を有し得る。テープ層906は二番目に幅が小さく、生地層908は最大幅を有し得る。
【0061】
この特定の例では、剥離プライ層902の幅は約3.5インチであり得る。テープ層904の幅は約1.0インチであり、テープ層906の幅は約2.0インチであり得る。生地層908の幅は、この例では約3.0インチであり得る。サーフェイサー層910の幅は約3.0インチであり得る。剥離プライ層902は、接着剤層が付加された状態で複合材部品の表面に貼付けられる前に除去し得る。
【0062】
次に図10を参照し、複合材ストリップの別の例の断面図を、有利な実施形態に従って図示する。この例では、複合材ストリップ1000は、剥離プライ層1002、テープ層1004、テープ層1006、生地層1008、サーフェイサー層1010、および剥離プライ層1012を含む。この特定の例では、剥離プライ層1012の幅は約3.5インチであり得る。サーフェイサー層1010の幅は約3.0インチであり得る。生地層1008の幅は約3.0インチであり得る。テープ層1006の幅は約2.0インチであり、テープ層1004の幅は約1.0インチであり得る。剥離プライ層1002の幅は、この例では約3.5インチであり得る。
【0063】
図7〜図10に示す異なる種類の層および幅は、実施し得るいくつかの異なる構成を例示する目的で示される。これらの例は、層を選択し得る方法または幅を限定するものではない。別の例では、当て板シームが位置することが予定され得る領域に使用するために先細りになった複合材ストリップをもたらすために、幅が異なる層の一実施形態を例示する。
【0064】
これらの例では、複合材ストリップの長さは約60インチであり得る。さらに、これらの例において、0度プライ方向は複合材ストリップの長さに平行であり得る。これらの例において、テープ材料の最適な利用法の1つは、外側モールドライン面内の繊維方向が90度または当て板シームの長さに垂直な状態での使用であり得る
生地層およびテープ層において使用し得る材料のいくつかの例は、たとえば限定はしないが、カーボン、ファイバガラス、ボロン、セラミック、およびアラミドを含む。これら
の種類の層に存在し得る樹脂は、たとえばアルキドポリエステル、エポキシ、ユリアホルムアルデヒド、液晶、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホンを含み得る。図示した例において使用される接着膜層は、エポキシの形態を取り得る。一部の樹脂/プリプレグ系では、プリプレグ中の樹脂は自己接着性と考えられ得るため、接着膜は必要ではない。剥離プライ層は、別の例ではナイロンまたはポリエステルを使用して形成され得る。
【0065】
これらの例では、生地およびテープはプリプレグ部品であり得る。他の例において、複合材ストリップは、乾燥生地および/または粘着性を付与した生地の樹脂注入によって製造してもよい。
【0066】
次に図11を参照し、複合材ストリップを作製するための処理のフローチャートを有利な実施形態に従って図示する。図11に示す処理を用いて、図6の複合材ストリップ604、または図7もしくは図8の複合材ストリップ700などの複合材ストリップを作製し得る。
【0067】
複合材ストリップの層のための複合材料を選択することによって処理が開始される(動作1100)。動作1100は、材料の種類および材料の寸法の選択を含み得る。生地、テープ、剥離プライまたは他の材料の選択を行ない得る。選択される寸法は、長さ、幅、および厚さを含み得る。
【0068】
この例では、第1の層は複合材生地の形態を取り得る。もちろん、実施例によっては他の種類の複合材料を使用してもよい。この例では、ベースは図7のベースプレート702などのベースであり得る。実施例によっては、ストリップはベース上に既に存在するストリップまたは剥離プライ層上に配置してもよい。選択された複合材料のストリップをベース上に配置して、層を形成する(動作1102)。ストリップは、最初の層に続く層として、ベース上の別の層上に配置してもよい。
【0069】
次に、複合材ストリップに追加の層が必要かどうかを判断する(動作1104)。追加の層が必要であれば、処理は動作1100に戻り、複合材ストリップの次の層のための別の材料を選択する。別の層を選択する際、生地、テープ、剥離プライ、サーフェイサー、または他の材料を選択し得る。この選択は、この次の層の寸法も含み得る。この次の層の幅は、複合材ストリップを先細りにするために先の層よりも小さくてもよい。
【0070】
再び動作1104を参照し、追加の層が必要でなければ、複合材ストリップを硬化させる(動作1106)。その後、処理が終了する。
【0071】
次に図12を参照し、複合材部品を製造するための処理を有利な実施形態に従って図示する。図12に例示する処理を用いて、図3の複合材部品300などの複合材部品を作製し得る。
【0072】
当て板シームが位置することが予定され得る複合材部品の表面上に、予備硬化複合材ストリップを配置することによって、処理が開始される(動作1200)。次に、予備硬化複合材ストリップが複合材部品の表面に接合される(動作1202)。接合は、これらの例では接着剤層の使用によって行ない得る。当て板シームは、複合材部品上に配置された隣接する2枚の当て板の間の隙間が位置することが予定される領域またはセクションであり得る。次に、当て板を複合材部品上に配置する(動作1204)。その後、複合材部品を硬化させ(動作1206)、処理が終了する。
【0073】
図12に例示した異なるステップは、複合材部品を所望量の表面仕上げまたは外観で製
造する際に必要なステップの一部のみを示す。もちろん、複合材部品を形成する際と複合材部品の硬化の準備を行う際との両方において、他のステップを複合材部品の準備に含んでもよい。
【0074】
このように、別の有利な実施形態によって、予備硬化複合材ストリップを複合材部品に貼付けるための方法および装置がもたらされる。熱硬化樹脂を有する予備硬化複合材ストリップは、当て板シームが位置することが予定される複合材部品の一部分の表面上に配置され得る。当て板シームを形成するために、複合材ストリップを配置した後で当て板を複合材部品上に配置してもよい。当て板を複合材部品上に配置した後で、複合材部品を硬化させてもよい。
【0075】
このように、別の有利な実施形態により、完成した複合材部品上の不整合が減少し得る。別の例は、有利な実施形態のすべてまたは一部において見られ得る特徴を示す。これらの特徴の異なる組合せを用いて、複合材部品の表面の外観における不整合を減少させ得る。
【0076】
異なる有利な実施形態の説明を例示および説明の目的で示したが、網羅するものではなく、実施形態を開示した形態に限定するものでもない。多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。たとえば、図示した実施形態によれば、当該方法および装置を複合材胴体の製造に適用し得る。別の有利な実施形態を、他の部品またはパーツ上の欠陥を減少させるのに適用してもよい。たとえば、一部の有利な実施形態を、他の部材、たとえば限定はしないが航空機の翼または尾翼に適用し得る。さらに、別の有利な実施形態は、他の有利な実施形態と比べて異なる利点をもたらし得る。選択される実施形態は、本開示の原理、実際の用途を最もよく説明し、かつさまざまな修正を含むさまざまな実施形態が意図される特定の使用に適することを当業者に理解させるために、選択および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】有利な実施形態に係る航空機の製造修理方法のフローチャートである。
【図2】有利な実施形態に係る航空機のブロック図である。
【図3】有利な実施形態に係る複合材構造中の繊維のマイグレーションにおける型あとを制御するための方法および装置の図である。
【図4】有利な実施形態に係る複合材部品の等角投影図である。
【図5】有利な実施形態に係る、トリムルーティング後の複合材部品の等角投影図である。
【図6】有利な実施形態に係る、複合材ストリップおよび当て板を所定の位置に有する複合材部品の断面図である。
【図7】有利な実施形態に係る複合材ストリップにおける層の断面図である。
【図8】有利な実施形態に係る完成した複合材ストリップの断面図である。
【図9】有利な実施形態に係る複合材ストリップの断面図である。
【図10】有利な実施形態に係る、複合材ストリップの別の例の断面図である。
【図11】有利な実施形態に係る、複合材ストリップを作製するための処理のフローチャートである。
【図12】有利な実施形態に係る複合材部品を製造するための処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
300 複合材部品、302 モールド、304 表面、306 複合材ストリップ、308,310 当て板、312 当て板シーム、314 炉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備硬化複合材ストリップを複合材部品に貼付けるための方法であって、
前記予備硬化複合材ストリップを、当て板シームが位置することが予定される複合材部品の一部分の表面上に配置するステップと、
予備硬化複合材ストリップを配置した後に当て板を複合材部品上に配置して、当て板シームを形成するステップと、
当て板を複合材部品上に配置した後、複合材部品を硬化させるステップとを備える、方法。
【請求項2】
前記配置するステップは、予備硬化複合材ストリップを、当て板シームが位置することが予定される複合材部品の一部分の表面に接着剤層によって付着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配置するステップは、
予備硬化複合材ストリップから剥離プライ層を除去するステップと、
予備硬化複合材ストリップの表面、および当て板シームが位置することが予定される複合材部品の一部分の表面の間において、当て板シームが位置することが予定される複合材部品の一部分の表面に、予備硬化複合材ストリップを接着剤層によって付着させるステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
剥離プライ層は第1の剥離プライ層であり、前記配置するステップはさらに、
予備硬化複合材ストリップから第2の剥離プライ層を除去して、第2の表面を露出させるステップと、
第2の表面上にサーフェイサー層を配置するステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
予備硬化複合材ストリップは、当て板シームが位置することが予定される一部分における繊維および樹脂の移動を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複合材ストリップの組を形成するステップと、
複合材ストリップの組を硬化させて、予備硬化複合材ストリップを形成するステップとをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記形成するステップは、複合材生地層を複合材テープ層上に配置するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記形成するステップはさらに、
第1の剥離プライ層を複合材生地層上に配置するステップと、
第2の剥離プライ層を複合材テープ層の下に配置するステップとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複合材ストリップであって、
第1の幅を有する第1の複合材生地層と、
前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する、第1の複合材生地層上の複合材テープ層と、
前記第2の幅よりも小さい第3の幅を有する、複合材テープ層上の第2の複合材生地層とを備える、複合材ストリップ。
【請求項10】
複合材テープ層、第1の複合材生地層、および第2の複合材生地層は熱硬化樹脂を含む
、請求項9に記載の複合材ストリップ。
【請求項11】
複合材ストリップは予備硬化される、請求項9に記載の複合材ストリップ。
【請求項12】
複合材テープ層、第1の複合材生地層、および第2の複合材生地層のうち少なくとも1つはプリプレグ層である、請求項9に記載の複合材ストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−35001(P2009−35001A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198002(P2008−198002)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】