説明

複合部材、家具および複合部材の製造方法

【課題】
電波吸収性能や電波遮蔽性能等の電磁波防護性能、吸音性能、および適度な曲げ強さに優れ、これまでの電磁波防護材や吸音材が使用不可能であった曲げ強度が必要とされる用途、例えば建築材料や家具の最表材や芯材などの幅広い用途で用いることができる複合部材を提供する。
【解決手段】
導電性材料を含んだシート状物が基材を挟んで2枚以上積層されてなり、当該シート状物が導電性材料の配合比率または種類の異なる2種以上のシート状物であることを特徴とする複合部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築資材や家具などに用いられる複合部材およびその製造方法に関する。詳しくは、電磁波吸収性能又は電磁波遮蔽性能に代表される電磁波防護性能と、吸音性能の双方を有し、かつ適度な曲げ強さを有する複合ボードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタスネットワーク社会を目指したワイヤレス化の進展により、住宅、オフィス、医療施設、公共交通施設などにおいて様々な電波が利用され始めている。しかしながら、それらの電波が原因で装置や設備に誤作動が発生したり、情報の漏洩、人体への悪影響などの電波障害が懸念されている。このような電磁波環境を改善するための手段の一つとして、電磁波遮蔽材や電磁波吸収材が開発され、具体的には20dB以上(10GHz)程度の電磁波遮蔽材が求められている。
【0003】
また、音響機器や映像機器の発達にともない、一般家庭や公共施設においても音楽や映画を鑑賞する、いわゆるルームシアターなどが普及し始めている。これら娯楽設備の発展とともに、近年では上述の機器のみならず、これらの周辺材料である内装材などの建築材料においても優れた音響性能、すなわち吸音性能が求められ、具体的には20%以上(100〜2000Hzの平均値)程度の吸音性能が求められている。
【0004】
このように、建築材料や家具等の用途においても、上記電磁波遮蔽・吸収性能や吸音性能を有する新規材料が求められているが、これらの両機能を併せ持つ材料は未だ開発されていないのが現状である。
【0005】
従来の電波吸収材や吸音材は、これらの単独の機能を向上すべく開発がなされており、電波吸収材の一例としては、導電性繊維と非導電性繊維を含む混抄紙からなる電波吸収体が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような電波吸収体は、優れた電波吸収性能を有するものの、実体は紙状体であることから、建築資材や家具等に用いるに当たっては曲げ強さ等の強度が低く、幅広い用途での適用が困難であるという問題があった。また、紙状体のみでは吸音性能を向上することは困難である。
【0006】
また、電波遮蔽、或いは吸収性能と、適度な強度を併せ持つ材料として、パーティクルボードや繊維板の表層、または中間層に金属箔や磁性材料からなる電波遮蔽層を設けた電波遮蔽または吸収板が提案されている(特許文献2、3、4参照)。しかしながら、このような電波遮蔽、吸収材料は一定の電波防護機能を有するもののその性能は近年求められている電波防護性能にはほど遠く、かつ、吸音性能との両立を達成できるものではない。また、金属や磁性体を材料中に多量に含むこと、及び使用後の分別が困難であることから、再生や廃棄が困難であるという問題があった。
【0007】
同様に、電波遮蔽性能と、適度な強度を有する材料として、ヤシ繊維と金属長繊維とを分散させた繊維利用資材が提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、このような電波遮蔽材料は一定の電波防護機能を有するもののその性能は近年求められている電波防護性能にはほど遠く、かつ、吸音性能との両立を達成できるものではない。また、金属繊維を材料中に含むことにより使用後の分別が困難であることから、再生や廃棄が困難であるという問題があった。
【0008】
その他、吸音材料としては、有機繊維の不織布の表面に、一定の通気量の紙が積層された吸音材(特許文献6参照)が開示されている。しかしながら、上記の材料は吸音性能には優れるが、電磁波防護材としての性能を得ることはできなかった。さらに、近年では天然繊維と植物由来のポリ乳酸が混在したボードが提案されているが(特許文献7参照)、環境負荷が少ないという効果を有するものの、電磁波防護性能や、吸音性は得られない。
【特許文献1】特開2004-247720号公報(請求項2)
【特許文献2】特開昭59−78598号公報(請求項1)
【特許文献3】特開昭61−293804号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2001−118711号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平6−257044号公報(請求項1、図2)
【特許文献6】特開2005−208599号公報(請求項1、請求項4)
【特許文献7】特開2004−130796号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点に鑑み、電磁波吸収性能又は電磁波遮蔽性能に代表される電磁波防護性能と、吸音性能および適度な曲げ強さに優れ、これまでの電磁波防護材や吸音材が使用不可能であった曲げ強度が必要とされる用途、例えば建築材料や家具の最表材や芯材などの幅広い用途で用いることができる複合部材、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、導電性材料を含んだシート状物が基材を挟んで2枚以上積層されてなり、当該シート状物が導電性材料の配合比率または種類の異なる2種以上のシート状物であることを特徴とする複合部材である。
【0011】
また本発明は、本発明の複合部材を用いた家具である。
【0012】
また本発明は、熱可塑性樹脂からなる短繊維および天然繊維を含んでなるウェブまたはその積層体の表面、及び/又は層間に、導電性材料の配合比率または種類の異なる2種以上を含むシート状物を積層し、これらを積層したものを圧縮して一体に成形することを特徴とする複合部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合部材は、電磁波吸収性能や電磁波遮蔽性能の電磁波防護性能、吸音性能、および適度な曲げ強さに優れる。そのため、これまでの電磁波防護材や吸音材が使用不可能であった曲げ強度が必要とされる用途、例えば建築材料や家具の最表材や芯材などの幅広い用途で用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の複合部材は、導電性材料を含んだシート状物を有する。シート状物が含む導電性材料の共鳴・共振作用により電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換し、電磁波を吸収または遮蔽することが可能となる。
【0015】
また、吸音性能も向上させることができる。そのメカニズムとしては、シート状物内の導電性材料の振動による共鳴作用によるものと考える。
【0016】
また、シート状物そのものの効果としても、吸音性を向上させることができる。シート状物と基材ボードとの間で音波の共鳴作用が得られ、音波を熱エネルギーに変換することができるからと考えられる。
【0017】
また、表面にシート状物を設けたときには、吸引搬送性、及び化粧板や化粧紙等への接着性に優れた複合部材とすることができる。
【0018】
導電性材料の電気比抵抗度としては1×10Ω・cm以下が好ましく、より好ましくは、1×10−1Ω・cm以下である。
【0019】
導電性材料としては、シート状物中に均一に導電性材料を分散せしめるために、繊維状の導電性材料、すなわち導電性繊維であることが好ましく、例えば、炭素繊維、カーボンマイクロコイル、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、金属繊維、金属メッキした繊維、金属酸化物薄膜で被覆した繊維、カーボン粉や金属粉を付着させた繊維、或いは炭素繊維や炭化ケイ素繊維を製造する際の焼成温度を制御することによって得られる半導体繊維などを用いることができる。中でも、錆びず、軽く、金属メッキ等も必要でない、炭素繊維、カーボンマイクロコイル、カーボンナノファイバー、またはカーボンナノチューブが特に好ましい。
【0020】
また、導電性繊維の平均繊維長としては1〜10mmが好ましい。1mm以上とすることで、少量の導電性繊維でも良好な電磁波遮蔽性能または電磁は吸収性能を得ることができ、また、シート化した際それぞれの繊維同士が凝集してシート状物における分散性が悪くなるのを防ぐことができる。一方、10mm以下とすることで、繊維同士で絡み合ってしまい分散性が低下するのを防ぐことができる。
【0021】
また、導電性繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)としては、5以上であることが好ましい。アスペクト比を5以上とすることで、少量の導電性繊維でも良好な電磁波遮蔽性能または電磁は吸収性能を得ることができ、繊維同士が凝集し分散性が低下するのを防ぐことができる。
【0022】
シート状物には、その形状を形成するために、導電性材料以外の材料(以下、「非導電性材料」という。)を含むことが好ましい。
【0023】
天然繊維の非導電性繊維としては、木材から得られる木質パルプの他、バガス、ムギワラ、アシ、パピルス、タケ類等のイネ科植物、木綿、ケナフ、ローゼル、アサ、アマ、ラミー、ジュート、ヘンプ、まお等の靭皮繊維、サイザルアサおよびマニラアサ等の葉脈繊維等を用いることができる。
【0024】
無機繊維の非導電性繊維としては、ガラスファイバー、や各種の鉱物繊維を用いることができる。
【0025】
合成繊維の非導電性繊維としては、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキザゾール繊維、ポリ乳酸繊維、耐炎化繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維等を用いることができる。熱により軟化または溶融して熱融着性を発現するものであればなお好ましい。
【0026】
上記の中でも、使用後の廃棄、或いは再生の容易性を向上させるためには木質パルプが好ましく使用される。また、用途によっては防炎性を向上させるためにガラスファイバーや鉱物繊維が好ましく用いられる。
【0027】
本発明の複合部材は、導電性材料を含んだシート状物が基材を挟んで2枚以上積層されてなり、当該シート状物が導電性材料の配合比率、または種類の異なる2種以上のシート状物であることが重要である。シート状物中における導電性材料の配合比率、または導電性材料の種類を異ならしめることにより、シート状物の電気的特性を異ならしめ、導電性材料の配合比率が高いシート状物は電磁波を反射して電磁波遮蔽性能を呈し、一方、導電性材料の配合比率が比較的低いシート状物は導電性材料の共鳴作用により電磁波吸収性能を呈する。導電性材料の配合比率およびその種類が同じ、すなわち電気的特性が同じシート状物のみを用いた場合では、電磁波遮蔽性能と電磁波吸収性能との双方を満足することは困難である。尚、導電性材料の材質が同じで、例えば導電性繊維の繊維長や繊維径が異なるものも、導電性材料の種類が異なるものとする。
【0028】
導電性材料の配合比率の比較的低いシート状物における配合比率としては、0.08〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.08〜2質量%である。この範囲内とすることで、電磁波の反射を抑えつつ電磁波を吸収することができる。
【0029】
また、導電性材料の配合比率の比較的高いシート状物における配合比率としては、5〜30質量%が好ましい。この範囲内とすることで必要とする電磁波遮蔽性能の実効を得ることができる。また、シートの形態保持の点からは5〜20質量%がより好ましく、この範囲内とすることで導電性材料の分散性を維持でき、導電性繊維同士が絡み合い分散性が低下するのを防ぐことができる。
【0030】
本発明の複合部材におけるシート状物の積層の態様としては、導電性材料の配合比率の比較的低いシート状物を複合部材の表側に配し、導電性材料の配合比率の比較的高いシート状物を複合部材の裏側に配することが好ましい。そうすることで、例えば壁材として使用する場合、部屋の内部で発生する電磁波を導電性材料の配合比率の比較的低いシート状物で反射する電磁波と、導電性材料の配合比率の比較的高いシート状物で反射する電磁波とが干渉相殺することにより吸収するとともに、部屋の内部からの電磁波および部屋の外界からの電磁波をそれぞれ、複合部材の裏側の導電性材料の配合比率の比較的高いシート状物により遮断することができる。
【0031】
また、導電性材料の配合比率の比較的低いシート状物を複合部材の表裏の双方に配し、導電性材料の配合比率の比較的高いシート状物を複合部材の中層部に配することも、ボード状の複合部材の両面からの電波の吸収・遮断に対応できるので、例えばパーテーション用途として好ましい。
【0032】
また、上記2種以上のシート状物の間隔の長さを適宜設定することにより、所定の波長の電磁波の吸収性能を大幅に向上することができる。シート状物の間隔の長さと、吸収しようとする電磁波の波長との間には強い関係があり、この間隔の長さは複合部材の使用される用途に応じて適宜設定される。例えば、通常、携帯電話や無線通信機などから発せられる周波数2〜7GHzの一般的な電磁波を吸収する場合、2種以上のシート状物間の間隔の長さは1〜300mmであることが好ましく、更に好ましくは2〜40mmの範囲内である。
【0033】
本発明の複合部材は、シート状物が基材を挟んで2枚以上積層されてなる。基材の厚さを選択することにより複数のシート状物の間隔を調整することが可能であり、また、シート状物を基材と積層させることにより、適度な曲げ強さを付与し、これまでの電磁波防護材や吸音材が使用不可能であった用途にも適用可能となる。
【0034】
基材としては、繊維の集合体を圧縮成形してなる部材(以下、繊維系部材と呼ぶ。)が好ましい。繊維系部材とすることにより、入射した音波がその内部で乱反射し、吸音効率を高めることができるからである。
【0035】
繊維系部材としては、天然繊維およびバインダ(結合剤)としてポリ乳酸樹脂からなるものが、石油由来原料の使用比率を低減させ環境負荷を低減する上で好ましい。
【0036】
天然繊維としては、その中でもセルロース系繊維であることが好ましい。例えば、木質系や草本系のセルロース系繊維である。そして、強度の高い複合ボードを得るには、できるだけ繊維長の長いセルロース系繊維を用いることが好ましい。具体的には、木材パルプ、バガス、ムギワラ、アシ、パピルス、タケ類等のイネ科植物、パルプ、木綿、ケナフ、ローゼル、アサ、アマ、ラミー、ジュート、ヘンプ、まお等の靭皮繊維、サイザルアサおよびマニラアサ等の葉脈繊維等であり、これらの中から選ばれる1種以上の繊維が含まれていることが好ましい。これらのうちでも、比較的繊維長が長く、一年草であって熱帯地方及び温帯地方での成長が極めて早く容易に栽培できる草本類に属するケナフあるいはジュートから採取される繊維を採用することで、曲げ強度に優れた複合ボードを得ることができる。特に、ケナフの靭皮にはセルロースが60%以上と高い含有率で存在しており、かつ高い強度を有していることから、ケナフ靭皮から採取されるケナフ繊維を用いることが好ましい。
【0037】
天然繊維の平均繊維長としては、5〜100mmが好ましい。平均繊維長がこの範囲内の短繊維の天然繊維で繊維系部材を構成することにより、優れた強度の繊維系ボード、ひいては複合ボードを得ることができる。5mm以上、より好ましくは20mm以上、さらに好ましくは50mm以上とすることにより、搬送・施工・使用に耐える強度を得ることができる。一方、平均繊維長が100mmを超えると、繊維系部材の製造において、短繊維とポリ乳酸樹脂とを均一に分散させることが困難となり、生産性が低下すると共に強度が不均一となる。
【0038】
ポリ乳酸樹脂は、非石油系原料、すなわちトウモロコシなどの植物を原料とするものであり、製造工程においても石油系の溶剤をほとんど使用せず、また生分解性を有する。よって、複合ボードの製造・廃棄の各段階において、環境への負荷を少なくすることができる。また、ポリ乳酸樹脂は、生分解性プラスチックの中でも、またポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂に比べても強度が高く、融点が170℃程度と適度な耐熱性を有すると共に、成形性に優れ、他の天然繊維や木質系材料との接着性も優れている。
【0039】
ポリ乳酸樹脂としては、ポリ乳酸のホモポリマーでもよいし、ポリ乳酸同士の共重合体もしくはブレンドポリマーでもよい。ポリ乳酸樹脂におけるL−乳酸単位とD−乳酸単位との構成モル比(L/D)は、100/0〜0/100にわたり採用しうるが、高い融点を得るにはL−乳酸単位あるいはD−乳酸単位のいずれかを90モル%以上含むことが好ましい。
【0040】
また、ポリ乳酸の重量平均分子量としては5〜50万が好ましい。
【0041】
また、ポリ乳酸樹脂には、カルボジイミド化合物を添加することが好ましい。ポリ乳酸またはこれに含まれるオリゴマーの反応活性末端を不活性化し、ポリ乳酸の加水分解を抑制するものである。加水分解を抑制することにより、高温・高湿環境下での使用による劣化を防ぐことができる。カルボジイミド化合物としては例えば、ジイソシアネート化合物を重合したものを好適に用いることができ、中でも、4,4−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの重合体やテトラメチルキシリレンカルボジイミドの重合体やその末端をポリエチレングリコールなどで封鎖したものを好ましく用いることができる。
【0042】
また、ポリ乳酸樹脂は結晶核剤を含有することも好ましい。結晶核剤により、ポリ乳酸の結晶核の形成を促進させ、複合ボードの曲げ強度を向上することができる。結晶核剤としては、ポリ乳酸樹脂中に均一に分散し効率良く結晶核を形成できる点でタルクが特に好ましい。タルクの組成としては、燃焼時の損失分を除いた成分中のSiOおよびMgOの割合が93質量%以上であることが好ましい。タルクの平均粒径としては分散性の点から0.5〜7μmが好ましい。結晶核剤は1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。結晶核剤の含有量としては、ポリ乳酸樹脂の全質量に対して0.1〜20質量%が、ポリ乳酸のバインダとしての働きを阻害することなく結晶核形成の促進効果を得る上で好ましい。
【0043】
シート状物の形態としては、導電性繊維と非導電性繊維とからなる混抄紙または不織布が好ましい。前記形態とすることにより、導電性繊維をシート状物の面内のタテ方向及びヨコ方向並びに厚さ方向のそれぞれについて均一に分散させることができるため、導電性繊維の共鳴・共振作用が促進され、優れた電磁波防護性能が得られると共に、均一な電磁波防護性能を有する複合ボードを得ることができる。また、上記の形態とすることで織物や編み物に比べて導電性繊維の方向性が少なくなるため、例えば電磁波遮蔽率に方向性が生じることが少ない。また、フィルムに比べて導電性材料が拘束されず、電磁波の共振作用による優れた電波吸収性能や音波の共振作用による優れた吸音性能を得ることができる。
【0044】
また、特に優れた吸音性能を得るために、シート状物の通気度は0.01〜5mL/cm2・secが好ましく、より好ましくは0.05〜2mL/cm2・secである。基材の表面にシート状物を配することにより、シート状物が音波により振動し、吸音作用を奏するが、シート状物の通気孔内で音波を振動エネルギーに変化させることで吸音作用が促進され、複合部材全体として優れた吸音性が得られるからである。0.01mL/cm2・sec未満であるとシート状物内の空隙の振動による吸音効果が得られず好ましくなく、5mL/cm2・secを超えるとシート状物自体の振動による吸音効果が少なくなりやすい。
【0045】
また、上述のシート状物の目付については、30〜400g/mの範囲内であることが、優れた吸音性能を得るために好ましい。目付が30g/mを下回るとシート状物自体の振動による吸音効率が低下し好ましくなく、一方で、目付が400g/mを超えると、シート状物の剛性が高くなり、振動しにくくなるため、同様に吸音効率が低下する。
【0046】
更に優れた吸音性を得る場合には、基材とシート状物層間での接着面積比率を35%以下、より好ましくは20%以下にすることで、音波によるシート状物の振動面積を増加することができ、その結果、シート状物そのものの共振作用により吸音性能が向上し、厳しい吸音性が要求される例えば壁材や、天井材などの建築材料に適用することが可能となる。一方、基材ボードとシート状物との接着を確保し剥離を防ぐ上で、接着面積比率は5%以上とすることが好ましい。
【0047】
上記の接着面積比率を得るための手段としては例えば、基材を成形後、基材ボードの表面に接着剤をドット状、縞状、枠状等に塗布し、その塗布面積により接着面積比率を調節する方法が挙げられる。また、接着面積比率を低く抑えるべく接着剤を基材の端部に偏らせて塗布してもよい。
【0048】
接着剤としては樹脂溶液や加熱溶融した樹脂が好ましく、樹脂溶液としてはポリ乳酸が好ましい。
【0049】
前述のとおり、本発明の複合部材は、植物由来のポリ乳酸樹脂や、セルロース系繊維などの天然繊維を含むことが好ましいが、環境負荷低減の観点から、前記のような天然由来原料を複合部材の全重量に対して95質量%以上含むことが好ましい。
【0050】
また、本発明の複合部材の見かけ密度としては、0.2〜0.95g/cmの範囲内であることが、目標とする強度および吸音性能を得る点で好ましい。見かけ密度を0.95g/cm以下にすると、複合部材としては多孔質性のものが形成される。当該孔を音波が通り抜ける際に孔壁付近で空気の乱流が発生し、この乱流が音波を摩擦エネルギーに変化させることで吸音作用が行われ、吸音材として必要な吸音率が得られる。また、見かけ密度0.95g/cm以下は軽量性の点からも好ましい。一方、見かけ密度が0.2g/cmを下回ると強度が損なわれるため好ましくない。
【0051】
本発明の複合部材の厚さとしては、用途にもよるが、厳しい電磁波吸収性や吸音性が要求される建築材料、自動車内装材用電磁波防護材や吸音材などに適用する場合、5mm以上であることが好ましい。
【0052】
本発明の複合部材は、曲げ強さが80N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは200N/cm以上、さらに好ましくは500N/cm以上である。80N/cm以上とすることで、施工時の搬送性、使用時の耐久性を満足する。また、上限としては8000N/cmでもあればよい。このような曲げ強さは、例えば基材の密度を0.2〜0.95g/cmとすることで得られる。
【0053】
次に、本発明に係る複合部材を効率的に得るための製造方法の例を説明する。
【0054】
(基材の原料)
基材の原料としては、前述のとおり天然繊維およびバインダとしてポリ乳酸樹脂等の熱可塑性樹脂を好ましく採用できる。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、短繊維の形態のものを用いるのが好ましい。そうすることで、カーディング工程等により天然繊維と短繊維同士で均一に分散させることができる。天然繊維の平均繊維長としては前述のとおり5〜100mmが好ましいので、熱可塑性樹脂繊維も平均繊維長20〜100mmが好ましい。この範囲内とすることで、分散斑を防ぐことができる。
【0056】
基材の原料における天然繊維および熱可塑性樹脂の配合量としては、天然繊維を基材に対して90〜30質量%、熱可塑性樹脂を基材に対して10〜70質量%とすることが好ましい。熱可塑性樹脂の比率が10質量%未満であると、後述する圧縮成形により基材とシート状物とを一体化させることが困難となる。一方、熱可塑性樹脂の比率が70重量%を超えると、圧縮成形時の加熱により成形機から熱可塑性樹脂が流出して成形が困難となる。
【0057】
(ウェブ)
基材の原料である天然繊維および熱可塑性樹脂繊維はローラーカードによるカーディング法にて均一に混合させることができる。
【0058】
そして、前記混合物からウェブを形成する。ウェブの態様としては、不織布でもよい。かかる不織布は、前記混合物をニードルパンチ処理することにより得ることができる。
【0059】
不織布の目付としては、50〜2000g/mが好ましい。
【0060】
(シート状物)
シート状物の原料となる導電性材料、および非導電性材料は繊維状であることが好ましく、分散性を向上させるためには、平均繊維長1〜10mmの導電性繊維および非導電性繊維とを、水中で混合し、分散させると良い。導電繊維の分散性が良好であると、均一な電磁波防護性能のシート状物を得ることができる。
【0061】
導電性繊維および非導電性繊維を水中で分散させる際、浴液に分散剤を添加すると、分散性が向上するので好ましい。添加する分散剤としては、界面活性剤などを用いることができる。
【0062】
水中に分散させた繊維を、メッシュドラムを用いて漉きあげる。
【0063】
漉きあげた繊維混合物を、ローラ間で搾水し、次いでドラムドライヤーの表面で乾燥を行う。ドラムドライヤーの表面温度としては、80〜150℃が効率良く乾燥させる上で好ましい。
【0064】
さらに、カレンダーロールを用いて熱プレスを行い、繊維同士を結合させ、シート状物を得る。
【0065】
(積層・成形)
本発明の複合ボードの製造方法においては、前記ウェブまたはその積層体の少なくとも層間に、2種以上のシート状物を積層し、これらを積層したものを圧縮して一体に成形することが重要である。そうすることで、ウェブに含まれ天然繊維とともに基材を形成する熱可塑性樹脂が、圧縮成形においてシート状物との接着剤の役目を担うので、接着剤の塗布工程を別途設ける必要が無く、簡略な工程で本発明の複合部材を効率良く製造することができる。
【0066】
シート状物は、ウェブの少なくとも層間に配されるが、好ましくは両面にシート状物を配することで電磁波吸収性能と遮蔽性能の双方を向上することができる。
【0067】
ウェブの積層枚数としては、用途にもよるが2〜60枚程度が好ましい。このウェブの各層間に複数種のシート状物を配することで、電磁波吸収性能と遮蔽性能を適宜調節することができる。
【0068】
圧縮成形工程においては、ウェブおよびシート状物を積層したものを圧縮前に加熱するか、または圧縮と同時に加熱することが好ましい。加熱を行うことで、熱可塑性樹脂を溶融させ、極端に大きな圧力で圧縮を行わなくても強固な成形が可能となるので、全体的なエネルギーコストとしても好ましく、また、部材の密度の調節も容易に行うことができる。均質な部材を成形する上では、圧縮と同時に加熱することが好ましい。
【0069】
加熱温度としては、熱可塑性樹脂を溶融して均一に分散させる上で180〜220℃が好ましい。また、加熱時間としては3〜20分が好ましい。
【0070】
圧縮の圧力としては、繊維材料や加熱温度にもよるが0.5〜12MPaが好ましい。
【0071】
圧縮成形に用いる加熱・加圧装置としては、上下2枚の加熱平板を用いるいわゆる平板加熱プレス装置を採用することができる。
【0072】
また、厚みが10mm以上の比較的厚い複合部材を成形する場合には、高周波誘導加熱装置を用いるのが好ましい。当該装置は、ウェブの積層体の内部まで均一に加熱することができるため、曲げ強さ、針やネジなどに対する突き刺し性、その保持性等、均一な特性の複合部材が得られる。
【実施例】
【0073】

[測定方法]
(1)平均繊維長
JIS A 1015:1999 8.4.1に準じて測定した。
試料を800mg量り取り、ステープルダイヤグラムを作成し、図記したステープルダイヤグラムを50の繊維長群に等分し、各区分の境界及び両端の繊維長を測定し、両端繊維長の平均に49の境界繊維長を加えて50で除し、平均繊維長(mm)を算出し、2回の平均値をとった。
【0074】
(2)シート状物の通気度
JIS L 1096:1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じて測定した。試料の異なる5か所から約20cm×20cmの試験片を採取し、フラジール形試験機を用い、円筒の一端(吸気側)に試験片を取り付けた。試験片の取り付けに際し、円筒の上に試験片を置き、試験片上から吸気部分を塞がないように均等に約98N(10kgf)の荷重を加え試験片の取り付け部におけるエアーの漏れを防止した。試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファンを調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、試験機に付属の表によって試験片を通過する空気量を求め、5枚の試験片についての平均値を算出した。
【0075】
(3)複合部材の見かけ密度
JIS A 5905:2003 6.3に準じて測定した。
複合部材を温度20℃、湿度65%RHの標準状態にて24hr放置後、10cm×10cmの試験片を3枚切り出した。1枚の試験片について、上記規定中図5に示す測定箇所の幅、長さ及び厚さを測定し、それぞれについての平均値を求め試験片の幅、長さ及び厚さとし、体積(v)を求めた。次に、質量(m)を測定し、次式によって算出した。厚さは0.05mm、幅及び長さは0.1mm、質量は0.1gの精度まで測定し、密度は0.01g/cm単位まで算出した。1枚の試験片ごとに密度を求めた上で、3枚の試験片の平均値を求めた。
密度(g/cm)=m/v
ここに、m:質量(g)
v:体積(cm)。
【0076】
(4)基材とシート状物との接着面積比率
基材とシート状物との接着面積比率を次の方法で求めた。
シート状物を基材から全て剥離した後、前記シート状物に付着した接着剤より、mm単位の透明な方眼フィルムを用いて接着面積を測定した。まず、透明なフィルムに1mmの距離を置いて直角に交わる縦線と横線を引き、多数の1mm角の正方形が描いた透明な方眼フィルムを作成した。線の太さは0.28mmとした。次に前記方眼フィルムを前記シート状物に当て、接着部分の1mm角正方形の数を測定し、正方形の合計より接着面積を算定した。この場合、1mmに満たない接着剤部分は接着していないものとみなした。なお、シート状物に接着剤が付着しない場合は、シート状物を剥離した後の基材表面より前記方眼シートを用いて同様の方法で求める。また、基材表面とシート状物とにそれぞれ接着剤が残った場合は、基材及びシート状物の両方より前記方眼シートを用いて同様の方法で接着面積を求める。以上より、接着面積比率を下記の式より求めた。
接着面積比率(%)=接着面積(m)/基材の全表面積(m)×100。
【0077】
(5)複合部材の曲げ強さ
JIS A 5905:2003 6.6に準じて測定した。複合部材から、縦方向および横方向のそれぞれについて、幅50mm、長さ150mmの試験片を3枚ずつ採取した。上記規定に準じた曲げ強さ試験装置(支点及び荷重作用点の曲率半径はそれぞれ5.0mm)に、スパン(L)100mmとして試験片を設置し、スパンの中間位置にて試験片の表面から平均変形速度50mm/分の荷重を加え、その最大荷重(P)を測定し、次式によって曲げ強さを求め、6枚の平均値を算出した。
曲げ強さ(MPa)=3PL/2bt
ここに、P:最大荷重(N)
L:スパン(mm)
b:試験片の幅(mm)
t:試験片の厚さ(mm)。
【0078】
(6)複合部材の電磁波遮断率
試料の異なる3か所から約100mm×100mmの試験片を採取し、30mm×15mmの方形導波管を用い試料を挿入したときの透過波電力と挿入していないときの透過波電力の差をとり、電磁波遮蔽率とした。電磁波の周波数は10GHzとし、測定器はアジレントテクノロジー社製(HP8719ES)のネットワークアナライザを用いて測定し、3枚の試験片についての平均値を算出した。
【0079】
(7)複合部材の電磁波吸収量
ブランクとして、縦30cm×横30cm×厚さ5mmのアルミニウム板に、1.5m離れたアンテナから、垂直に2〜6GHzの電波を入射し、その内2.4GHz、5.2GHzの反射レベルを、アジレントテクノロジー社製(HP8719ES)のネットワークアナライザを用いて測定した。
また、縦30cm×横30cmの複合部材を前記アルミニウム板に重ねて置いて電波の入射に対する反射レベルをブランクと同様にして測定した。
両者の反射レベルから次式により電波吸収量を求めた。
電波吸収量(dB)=複合部材の反射レベル(dB)−アルミニウム板の反射レベル(dB)。
【0080】
(8)複合部材の垂直入射吸音率
JIS A 1405:1998に拠って垂直入射吸音率を測定した。
試料から直径90mmの円形の試験片を3枚採取した。試験装置としては、電子測器株式会社製の自動垂直入射吸音率測定器(型式10041A)を用いた。この試験装置におけるインピーダンス管は、外径101.6mm、内径91.6mm、全長2160mmであった。
試験片を、インピーダンス管の一端に金属反射板との間に空気層がないように設置した。そして、100〜2000Hzの周波数域の音波を段階的に試験片に垂直に入射させ、その周波数の平面波について入射音響パワーに対して試験体表面に入る(戻ってこない)音響パワーの比を測定し、3枚の試験片についての平均値を算出した。
【0081】
[実施例1]
(不織布)
ポリ乳酸樹脂を溶融紡糸法により紡糸し、捲縮付与し、カットして、繊度6.6dtex、平均繊維長51mmのポリ乳酸短繊維を得た。このポリ乳酸短繊維と平均繊維長75mmのケナフ靭皮繊維とを30:70の質量比でローラーカードを用いて混綿し、開繊して目付100g/mの不織布を得た。
【0082】
(表層用シート状物)
導電性材料として平均繊維長3mmの炭素繊維と、非導電性材料として平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ1.6質量%、78.4質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.25mm、目付152g/m2、通気度0.12mL/cm2・secの表層用シート状物を得た。
【0083】
(中間層用状物)
導電性材料として平均繊維長3mmの炭素繊維と、非導電性材料として平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ10.0質量%、70.0質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.27mm、目付148g/m2、通気度0.16mL/cm2・secの中間層用シート状物を得た。
【0084】
(積層・成形)
上記の不織布を35枚積層し、次いで、この積層体の上から17層目と18層目との層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記表層用シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体を平板加熱プレス装置の2枚の鉄板の間に5mmのスペーサーと共に挟み、温度200℃、圧力2.4MPaで7分間、加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0085】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は3735g/m、厚さは5.6mm、見かけ密度は0.67g/cm、表層シート状物と中間層シート状物との間隔は2.8mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は79.2%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、及び吸音性能を併せ持つものであった。
【0086】
[実施例2]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0087】
(表層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の表層用シート状物を用いた。
【0088】
(中間層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の中間層用シート状物を用いた。
【0089】
(積層・成形)
上記の不織布を100枚積層し、次いで、この積層体の上から50層目と51層目との層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記表層用シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体に対して実施例1と同様にして加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0090】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は9615g/m、厚さは16.2mm、見かけ密度は0.59g/cm、表層シート状物と中間層シート状物との間隔は8.1mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は80.9%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、及び吸音性能を併せ持つものであった。
【0091】
[実施例3]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0092】
(表層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の表層用シート状物を用いた。
【0093】
(中間層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の中間層用シート状物を用いた。
【0094】
(積層・成形)
上記の不織布を100枚積層し、次いで、この積層体の上から50層目と51層目との層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、この積層体に対して実施例1と同様にして加熱加圧成形を行い、表層無しの複合部材を得た。
【0095】
(表層無しの複合部材と表層用シート状物との接着)
この表層無しの複合部材の最上側と最下側に、接着剤となる熱可塑性の樹脂(ポリ乳酸)溶液を大きさ15mm×15mm、間隔60mmで点状に置き、その上から上記表層用シート状物を接着し、複合部材を得た。
【0096】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は9805g/m、厚さは15.9mm、見かけ密度は0.62g/cm、表層シート状物と中間層シート状物との間隔は8.0mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は12.3%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、及び吸音性能を併せ持つものであった。
【0097】
[実施例4]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0098】
(表層用シート状物)
導電性繊維として平均繊維長3mmの炭素繊維と、非導電性繊維として平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ5.0質量%、75.0質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.24mm、目付152g/m2、通気度0.18mL/cm2・secの表層用シート状物を得た。
【0099】
(中間層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の中間層用シート状物を用いた。
【0100】
(積層・成形)
上記の不織布を35枚積層し、次いで、この積層体の上から17層目と18層目との層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記表層用シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体に対して実施例1と同様にして加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0101】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は3705g/m、厚さは5.7mm、見かけ密度は0.65g/cm、表層シート状物と中間層シート状物との間隔は2.8mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は78.1%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、及び吸音性能を併せ持つものであった。
【0102】
[実施例5]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0103】
(表層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の表層用シート状物を用いた。
【0104】
(中間層用シート状物)
導電性繊維として平均繊維長3mmの炭素繊維と、非導電性繊維として平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ3.0質量%、77.0質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.28mm、目付152g/m2、通気度0.15mL/cm2・secの中間層用シート状物を得た。
【0105】
(積層・成形)
上記の不織布を35枚積層し、次いで、この積層体の上から17層目と18層目の層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記表層用シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体に対して実施例1と同様にして加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0106】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は3785g/m、厚さは5.6mm、見かけ密度は0.68g/cm、表層シート状物と中間層シート状物の間隔は2.8mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は77.6%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、及び吸音性能を併せ持つものであった。
【0107】
[実施例6]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0108】
(表層用シート状物)
導電性材料として平均繊維長3mmの炭素繊維と、非導電性材料として平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ1.0質量%、79.0質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.12mm、目付100g/m2、通気度0.08mL/cm2・secの表層用シート状物を得た。
【0109】
(中間層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の中間層用シート状物を用いた。
【0110】
(積層・成形)
上記不織布を140枚積層し、次いで、この積層体の上から70層目と71層目との層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記表層用シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体に対して実施例1と同様にして加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0111】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は、14421g/m、厚さは24.0mm、見かけ密度は、0.60g/cm、表層シート状物と中間層シート状物との間隔は12.0mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は79.5%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、および吸音性能を併せ持つものであった。
【0112】
[実施例7]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0113】
(表層用シート状物)
導電性材料として平均繊維長3mmの炭素繊維と、非導電性材料として平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ0.4質量%、76.0質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.30mm、目付200g/m2、通気度0.18mL/cm2・secの表層用シート状物を得た。
【0114】
(中間層用シート状物)
実施例1で得たのと同様の中間層用シート状物を用いた。
【0115】
(積層・成形)
上記不織布を46枚積層し、次いで、この積層体の上から23層目と24層目との層間に上記中間層用シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記表層用シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体に対して実施例1と同様にして加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0116】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は、4885g/m、厚さは8mm、見かけ密度は、0.61g/cm、表層シート状物と中間層シート状物との間隔は4.0mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は79.5%であった。この複合部材は、優れた曲げ強さ、電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、および吸音性能を併せ持つものであった。
【0117】
[比較例1]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0118】
(表層用シート状物)
表層用シート状物は、用いなかった。
【0119】
(中間層用シート状物)
中間層用シート状物は、用いなかった。
【0120】
(積層・成形)
上記の不織布を35枚積層し、この積層体を平板加熱プレス装置の2枚の鉄板の間に5mmのスペーサーと共に挟み、実施例1におけるのと同様の条件で加熱加圧成形を行い、繊維系部材を得た。
【0121】
得られた繊維系部材の単位面積当たりの質量は3453g/m、厚さは5.5mm、見かけ密度は0.63g/cmであった。この繊維系部材は、曲げ強さには優れるが、電磁波吸収性能、電磁波遮蔽性能、及び吸音性能に劣るものであった。
【0122】
[比較例2]
(不織布)
実施例1で得たのと同様の不織布を用いた。
【0123】
(表層用シート状物・中間層用シート状物)
平均繊維長7mmのガラスチョップドファイバーと平均繊維長2mmの木質パルプとを、それぞれ80.0質量%、20.0質量%秤量して湿式抄紙し、厚み0.23mm、目付155g/m2、通気度0.10mL/cm2・secの表層用シート状物および中間層用シート状物を得た。
【0124】
(積層・成形)
上記の不織布を35枚積層し、次いで、この積層体の上から17層目と18層目との層間に上記シート状物を1枚、挿入・積層し、積層体の最上側と最下側に、上記シート状物を1枚ずつ積層し、この積層体を平板加熱プレス装置の2枚の鉄板の間に5mmのスペーサーと共に挟み、実施例1におけるのと同様の条件で加熱加圧成形を行い、複合部材を得た。
【0125】
得られた複合部材の単位面積当たりの質量は3739g/m、厚さは5.6mm、見かけ密度は0.67g/cm、表層シート状物と中間層シート状物の間隔は2.8mm、表側(吸音率測定における音波入射側)の表層シート状物と基材との接着面積比率は79.8%であった。この複合部材は、曲げ強さに優れるものの、電磁波吸収性能、電磁波遮蔽性能、及び吸音性能に劣るものであった。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
表より、実施例については一定の電磁波遮蔽性能、電磁波吸収性能、吸音性能の双方を有しているが、比較例については電磁波遮蔽性能および電磁波吸収性能の双方が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の複合部材は、優れた電磁波防護性能と、吸音性能とを併せ持つため、電波暗室、船舶や航空機等の移動体、橋梁、鉄塔等の構造物、無線通信のための装置・設備、住宅、医療施設、オフィスビル等の建築物、オフィス用品等として貼り付けたり装着したりして電波障害を防止するのに使用することができる。特に従来曲げ強度が低いがために今まで電磁波防護材や吸音材が使用不可能であった、例えば壁材、床材などの建築材料、パーテーション等の家具の表層材や内面材などにも好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料を含んだシート状物が基材を挟んで2枚以上積層されてなり、当該シート状物が導電性材料の配合比率または種類の異なる2種以上のシート状物であることを特徴とする複合部材。
【請求項2】
導電性材料の配合比率の異なる2枚以上のシート状物が、導電性材料の配合比率0.08〜3質量%のものと、導電性材料の配合比率5〜30質量%のものとを含む、請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
隣り合うシート状物同士の間隔が1〜300mmである、請求項1または2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記シート状物が混抄紙または不織布である、請求項1〜3のいずれかに記載の複合部材。
【請求項5】
前記導電性材料が炭素繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載の複合部材。
【請求項6】
前記シート状物の通気度が0.01〜5mL/cm2・secである、請求項1〜5のいずれかに記載の複合部材。
【請求項7】
前記基材と前記シート状物との接着界面の少なくとも一つにおいて接着面積比率が35%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の複合部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複合部材を用いたことを特徴とする家具。
【請求項9】
熱可塑性樹脂からなる短繊維および天然繊維を含んでなるウェブまたはその積層体の表面、及び/又は層間に、導電性材料の配合比率または種類の異なる2種以上のシート状物を積層し、これらを積層したものを圧縮して一体に成形することを特徴とする複合部材の製造方法。

【公開番号】特開2008−155627(P2008−155627A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306920(P2007−306920)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】