説明

複合酸化物及び排ガス浄化用触媒

【課題】固体塩基性を適切な範囲に制御することで、酸化ロジウムの安定性と易還元性とを両立させる。
【解決手段】アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、第3族元素及びZrを除く第4族元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(a)と、ZrO2と、を含み、1000℃で3時間以上熱処理された後の単位重量当たりのCO2吸着量を8.2〜29μmol/gとし、単位比表面積当たりのCO2吸着量を0.2〜2.3μmol/m2とした。
固体塩基性が適切な範囲となり酸化ロジウムの安定性と易還元性とが両立するので、低温域から浄化活性が高く、高温雰囲気に曝された後も高い浄化活性が維持され耐久性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒の担体として利用できる複合酸化物と、その複合酸化物を担体とした排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化用触媒の触媒金属として、Pt、Rh、Pdなどの白金族貴金属が広く用いられている。中でもRhは、酸化活性はPtに比べて劣るものの、NOx の還元活性が高いため三元触媒などには必須の成分となっている。またZrO2にRhを担持したRh/ZrO2触媒は、排ガス中のHCを改質して水素を生成する活性を備えているので、Pt/Al2O3触媒とRh/ZrO2触媒を併用した三元触媒も知られている。
【0003】
たとえば特開平09−141098号公報には、少なくともRhとZrO2を含み、ZrO2にMg、Ca、Sr、Ba、Y、Laから選ばれる少なくとも1種を含有させた触媒が提案されている。この触媒によれば、ZrO2がMgなどによって安定化されるため、耐熱性が向上する。しかしこの触媒では、高温雰囲気でRhが粒成長し、活性点が減少して浄化性能が低下するという問題があった。
【0004】
そこで特開2003−020227号公報には、ZrO2と、ZrO2と固溶しない金属Mの酸化物とよりなり、ZrO2と金属Mの酸化物とがナノスケールで均一に分散した複合酸化物が提案されている。この複合酸化物にRhを担持した触媒では、ZrO2と固溶しない金属Mの酸化物とが互いの拡散の障壁となるため同種の酸化物どうしの凝集が抑制され、Rhの粒成長も抑制することができる。しかし自動車の排ガスのように変動する雰囲気下では、耐熱性が十分とは言えなかった。
【0005】
またRhは、メタル状態で触媒活性を発現する。したがって使用雰囲気で酸化されたRhは速やかにメタル状態のRhとする必要がある。酸化ロジウムの還元性は、担体とRhとの相互作用に大きく影響されることがわかっている。一般的に、固体塩基性が強い酸化物を担体とした場合には、担体から貴金属への電子供与によって貴金属上の電子密度が上昇し、酸素との共有結合性が強化されるため貴金属は酸化物として安定化される。逆に、固体酸性が強い酸化物を担体とした場合には、貴金属から担体への電子供与によって貴金属上の電子密度が低下し、酸素との親和性が低下する。
【0006】
一方、固体塩基性が強い酸化物を担体とした場合には、担体上で貴金属が酸化物として安定化され、担体と強く相互作用するため、貴金属の粒成長が抑制される。しかし酸化ロジウムとして安定化したRhは触媒活性をほとんど発現せず、また難還元性となるために、特に低温域における浄化性能が低下してしまう。また固体酸性が強い酸化物を担体とした場合には、酸化ロジウムは易還元性となるものの、担体との相互作用が弱いために移動しやすく、粒成長により浄化性能が低下する。
【特許文献1】特開平09−141098号
【特許文献2】特開2003−020227号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、固体塩基性を適切な範囲に制御することで酸化ロジウムの安定性と易還元性とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の複合酸化物の特徴は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、第3族元素及びZrを除く第4族元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(a)と、酸化ジルコニウムと、を含み、1000℃で3時間以上熱処理された後の単位重量当たりのCO2吸着量が8.2〜29μmol/gであり、単位比表面積当たりのCO2吸着量が0.2〜2.3μmol/m2であることにある。
【0009】
1000℃で3時間以上熱処理された後の単位比表面積当たりのCO2吸着量は、0.3〜1.8μmol/m2であることが望ましく、0.3〜0.7μmol/m2であることがさらに望ましい。
【0010】
本発明の複合酸化物は、ZrO2と固溶しない金属元素(b)の酸化物をさらに含むことが好ましく、金属元素(a)の少なくとも一部が金属元素(b)の酸化物又はZrO2に固溶していることが望ましい。
【0011】
さらに本発明の複合酸化物は、大気中又は非酸化雰囲気中にて800℃以上で加熱する処理を1時間以上行った後に前記熱処理を行うことで、CO2吸着量が請求項1に記載の範囲となることが好ましい。
【0012】
そして本発明の排ガス浄化用触媒の特徴は、本発明の複合酸化物に少なくともRhを担持してなることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合酸化物によれば、1000℃で3時間以上熱処理された後の単位重量当たりのCO2吸着量が8.2〜29μmol/gであり、単位比表面積当たりのCO2吸着量が0.2〜2.3μmol/m2であるので、固体塩基性が適切な範囲となり酸化ロジウムの安定性と易還元性とが両立する。したがって本発明の排ガス浄化用触媒によれば、低温域から浄化活性が高く、高温雰囲気に曝された後も高い浄化活性が維持され耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の複合酸化物は、1000℃で3時間以上熱処理された後の単位重量当たりのCO2吸着量が8.2〜29μmol/gであり、単位比表面積当たりのCO2吸着量が0.2〜2.3μmol/m2である。CO2吸着量は固体塩基性の指標であり、この範囲とすることで、酸化ロジウムの安定性と易還元性とに関して固体塩基性が適切な範囲となる。したがって本発明の排ガス浄化用触媒では、酸化ロジウムと担体との相互作用がある程度強いためRhの粒成長が抑制される。また酸化ロジウムはある程度易還元性となるためメタルとして存在するRhも多く、低温域においても高い浄化活性を示す。
【0015】
1000℃で3時間以上熱処理された後の単位比表面積当たりのCO2吸着量は、0.3〜1.8μmol/m2であることが望ましく、0.3〜0.7μmol/m2であることがさらに望ましい。
【0016】
ZrO2は、貴金属の担体として用いられることが多いアルミナと比較して耐熱性が低く、排ガス浄化用触媒としての使用時の熱により比表面積が減少し、これにより担持されているRhの分散性が低下して浄化性能が低下するという不具合がある。そこで本願発明の複合酸化物では、ZrO2と共に金属元素(a)を含んでいる。これにより耐熱性が格段に向上するため、触媒として使用時にRhの高分散状態が維持される。
【0017】
金属元素(a)は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、第3族元素及びZrを除く第4族元素から選ばれる少なくとも1種であり、Ca、K、Tb、La、Nd、Pr、Ba、Y、Mg及びCeから選ばれる1種であることが特に望ましい。
【0018】
ZrO2と金属元素(a)との組成割合は、金属元素(a)種によっても異なるが、ZrO2に対して金属元素(a)が酸化物として少なくとも1モル%含まれていることが望ましい。上限は特に制限されないが、金属元素(a)濃度が高くなり過ぎると酸化ロジウムと担体との親和性が強くなり、NOx 浄化性能が低下するようになるため好ましくない。
【0019】
本発明の複合酸化物を製造するには、共沈法、ゾルゲル法などによって製造することができる。共沈法では、ジルコニウム化合物と金属元素(a)の化合物が溶解した溶液から共沈させ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥・焼成することで、金属元素(a)で安定化されたZrO2よりなる複合酸化物が得られる。またゾルゲル法では、ジルコニウムのアルコキシドと金属元素(a)のアルコキシドとの混合溶液に水を加えて加水分解し、得られたゾルを乾燥・焼成することで、金属元素(a)で安定化されたZrO2よりなる複合酸化物が得られる。
【0020】
さらに、上記方法で得られる酸化物前駆体の沈殿物又はゾルを静水圧処理することが望ましい。これによりZrO2結晶子を安定化させて耐熱性を向上させることができ、また比表面積も適切な範囲とすることができる。
【0021】
なお上記のようにして得られた複合酸化物では、X線回折によると、ZrO2のピークのみ現れて金属元素(a)に由来するピークは観察されない。したがって金属元素(a)は酸化物としてZrO2に固溶しているものと推察される。
【0022】
本発明の複合酸化物は、ZrO2と固溶しない金属元素(b)の酸化物をさらに含むことが望ましい。ZrO2と金属元素(b)の酸化物とが互いの拡散の障壁となるため同種の酸化物どうしの凝集が抑制され、Rhの粒成長も抑制することができる。
【0023】
金属元素(b)を含む本発明の複合酸化物は、ZrO2と金属元素(b)の酸化物とがナノスケールで均一に分散し、金属元素(a)がZrO2と金属元素(b)の酸化物の少なくとも一方に固溶している。ナノスケールで均一に分散している状態は、FE−STEMにおいて、重なりのない一つの粒子に対して直径 0.5nmの範囲の EDX分析を行った時の各分析点の90%以上で、Zrと金属元素(b)とが仕込み組成の±20%以内の組成比で検出されることで確認することができる。
【0024】
この複合酸化物における一次粒子は、金属元素(a)が固溶したZrO2と金属元素(b)の酸化物とからなり、その一次粒子が凝集した二次粒子が粉末を構成している。そして一次粒子では、ZrO2と金属元素(b)の酸化物がナノスケールときわめて小さい状態で均一に存在しているために、酸化物どうしの間に形成される細孔もナノスケールの微細なメソ細孔となり、高比表面積を実現できる。なおメソ細孔とは、 IUPACでは径が2〜50nmの細孔をいうが、分子の吸着特性などから 1.5〜 100nmの細孔を意味する場合もある。本明細書でいうメソ細孔は、水銀ポロシメータを用いて原理上測定可能な下限値 3.5nmから 100nmの範囲の細孔を意味する。
【0025】
この複合酸化物では、互いに固溶しないZrO2と金属元素(b)の酸化物が互いの障壁として作用するために、高温時のシンタリングが抑制され、高温耐久後にもメソ細孔の細孔容積を高く維持することができる。 そしてこの複合酸化物にRhを担持した本発明の触媒によれば、Rhの粒成長を大きく抑制することができる。
【0026】
金属元素(b)の酸化物は、ZrO2と固溶しないものであり、Al2O3、MgAl2O4、SiO2、TiO2などが挙げられ、このうちの一種又は複数種を用いることができる。触媒担体として用いる場合は、比表面積が大きく耐熱性に優れたAl2O3が特に好ましいので、金属元素(b)としてはAlが特に好ましい。
【0027】
金属元素(b)は、複合酸化物中の金属元素のモル数に対して30〜80mol%であることが好ましく、30〜60mol%が特に望ましい。この組成比が80mol%より大きくなると、ZrO2の作用が小さくなって金属元素(b)の酸化物上に担持されるRh量が相対的に増加し、水素改質反応活性が低下する。また、30mol%より金属元素(b)が少なくなると、酸化物どうしが互いにシンタリングを抑制し合う効果が得られず、高温耐久性に劣るようになる。
【0028】
そして例えば金属元素(b)の酸化物がアルミナの場合には、複合酸化物は、700℃で5時間の焼成後の平均一次粒子径が6〜10nmとなる特性をもつことが望ましい。このような構成とすれば、高温に曝された後にも粒成長が少なくなり、700℃で5時間の焼成後に細孔径が1〜15nmの細孔容積が0.09cc/g以上という特性をもち、かつ 800℃で5時間の焼成後に細孔径が1〜15nmの細孔容積が0.06cc/g以上という特性を有するようになる。これにより高温耐久後にも細孔容積が十分に確保される。さらに、700℃で5時間の焼成後に細孔径が1〜15nmの細孔容積が0.11cc/g以上であり、900℃で5時間の焼成後に細孔径が1〜15nmの細孔容積が0.09cc/g以上という特性をもつことがより望ましい。また700℃で5時間の焼成後に細孔径が1〜15nmの細孔容積が0.18cc/g以上であり、900℃で5時間の焼成後に細孔径が1〜15nmの細孔容積が0.11cc/g以上という特性をもつことがさらに望ましい。
【0029】
したがって、この複合酸化物にRhを担持してなる本発明の触媒においては、高温耐久後にもRhの担持サイトである細孔が十分に存在するとともに、比表面積も充分に大きく確保され、高温耐久後の活性の低下が抑制される。
【0030】
この複合酸化物は、前に述べた共沈法あるいはゾルゲル法などで製造することができる。さらに、前述したように静水圧処理を行うことが望ましい。
【0031】
また本発明の複合酸化物は、大気中又は非酸化雰囲気中にて800℃以上で加熱する処理を1時間以上行った後に、1000℃で3時間以上の熱処理を行うことで、CO2吸着量が請求項1に記載の範囲となることが好ましい。このようにすれば、Rhと複合酸化物との相互作用をさらに適切に制御できる。
【0032】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記した本発明の複合酸化物に少なくともRhを担持してなるものである。Rhの担持量は、活性とコストの観点から0.05〜3重量%とすることが好ましい。またRhを担持するには、吸着担持法、吸水担持法のいずれも用いることができる。Pt、Pd、Irあるいは卑金属など他の触媒金属をRhと共に担持することができることは言うまでもない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0034】
(実施例1)
所定量のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液及び硝酸ランタン水溶液を混合し、十分に撹拌しながら、含有するカチオンに対して中和当量の1.2倍のNH3を含有するアンモニア水(pH9以上)を添加し、酸化物前駆体の沈殿を得た。この沈殿物を遠心分離し十分に洗浄した後、沈殿物の体積の2倍量の純水中に分散させ、1.2MPa、120℃の圧力容器中で2時間の静水圧処理を行った。処理後の沈殿物を大気中にて400℃で5時間仮焼した後、さらに大気中に800℃で5時間焼成し、本実施例の複合酸化物粉末を調製した。複合酸化物中のZrO2とLa2O3の組成は、モル比でZrO2/La2O3=95/2.5である。
【0035】
この複合酸化物粉末に所定量の硝酸ロジウム水溶液を含浸させ。大気中にて300℃で3時間焼成して、本実施例の触媒粉末を調製した。Rhの担持量は、複合酸化物粉末100gに対して0.3gである。
【0036】
(実施例2)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸ネオジウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0037】
(実施例3)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸イットリウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0038】
(実施例4)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸プラセオジウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0039】
(実施例5)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸セリウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0040】
(実施例6)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸テルビウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0041】
(実施例7)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸カルシウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0042】
(実施例8)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸バリウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0043】
(実施例9)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸マグネシウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0044】
(実施例10)
硝酸ランタン水溶液に代えて硝酸カリウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0045】
(実施例11)
オキシ硝酸ジルコニウム水溶液、硝酸ランタン水溶液及び硝酸アルミニウム水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。複合酸化物粉末中のZrO2、La2O3及びAl2O3の組成は、モル比でAl2O3/ZrO2/La2O3=50/95/2.5である。
【0046】
(比較例1)
硝酸ランタン水溶液にを用いずオキシ硝酸ジルコニウム水溶液のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0047】
(比較例2)
硝酸ランタン水溶液に代えて四塩化チタン水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0048】
(比較例3)
静水圧処理を行わなかったこと以外は実施例5と同様にして複合酸化物粉末を調製し、この複合酸化物粉末に実施例1と同様にしてRhを担持した。
【0049】
<試験・評価>
実施例及び比較例の各触媒粉末を圧粉成形後に粉砕し、0.5〜1mmのペレット状に整粒して、それぞれペレット触媒を調製した。それぞれのペレット触媒を石英反応管に充填し、表1に示すリッチガスを1分間とリーンガスを5分間とで交互にSV=10,000h-1で流す変動雰囲気下にて1000℃で5時間加熱する耐久試験を行った。
【0050】
【表1】

【0051】
耐久試験後の各ペレット触媒を石英反応管に充填し、CO2吸着量を測定した。CO2吸着量の測定は、自動昇温脱離分析装置(大倉理研社製)にセットし、CO2の検出は質量分析計(ULVAC社製MASSMATE2000)を用いて行った。反応条件は以下のとおりである。
【0052】
触媒量:0.4g
ガス流量:20ml/min.
前処理:O2(20%)/He、600℃、10min.
CO2吸着過程:CO2(2%)/He、300℃、30min.
CO2脱離過程:He、100℃→600℃、25℃/min.
また、比表面積測定装置(MicroData社製)を用い、各触媒の耐久試験後のBET比表面積をBET-1点法にて測定した。測定条件は以下のとおりである。結果を表3に示す。
【0053】
前処理雰囲気:N2
前処理温度:200℃、15min.
前処理ガス流量:反応管1本当たり25ml/min.
吸着ガス:N2(30%)/He
吸着ガス流量:反応管1本当たり25ml/min.
吸着温度:-196℃(液体窒素使用)
そしてCO2吸着量を単位重量当たりと単位比表面積当たりで整理し、結果を表3と図1及び図2に示す。なお、Rhを担持した触媒のCO2吸着量を測定しているが、Rhを担持しない複合酸化物のみの場合も結果は同一であることがわかっている。
【0054】
さらに耐久試験後の各触媒の活性を評価した。表2に示すストイキモデルガスを定常状態で流しながら、100℃から500℃まで12℃/min.の昇温速度で昇温し、その間のC3H6浄化率を連続的に測定した。そして50%浄化温度を算出し、結果を表3に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
表3及び図1〜2より、各実施例の複合酸化物は比較例に比べて低温域からC3H6を浄化できていることがわかる。これは、耐久試験時におけるRhの粒成長が抑制されたことに起因し、1000℃で3時間以上熱処理された後の単位重量当たりのCO2吸着量を8.2〜29μmol/gとし、かつ単位比表面積当たりのCO2吸着量を0.2〜2.3μmol/m2としたことによる効果であることが明らかである。
【0058】
また図1から、単位比表面積当たりのCO2吸着量は0.3〜1.8μmol/m2の範囲が好ましく、0.3〜0.7μmol/m2の範囲がさらに好ましいことも明らかである。さらに、酸化ジルコニウムと固溶しない金属元素(b)の酸化物をさらに含む実施例11の複合酸化物が特に望ましいことも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の複合酸化物は、酸化触媒、三元触媒、NOx 吸蔵還元触媒など種々の排ガス浄化用触媒、あるいはメタン浄化用触媒の担体として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】

【図1】単位重量当たりのCO2吸着量と50%C3H6浄化温度との関係を示すグラフである。
【図2】単位比表面積当たりのCO2吸着量と50%C3H6浄化温度との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、第3族元素及びZrを除く第4族元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(a)と、酸化ジルコニウムと、を含み、1000℃で3時間以上熱処理された後の単位重量当たりのCO2吸着量が8.2〜29μmol/gであり、単位比表面積当たりのCO2吸着量が0.2〜2.3μmol/m2であることを特徴とする複合酸化物。
【請求項2】
1000℃で3時間以上熱処理された後の単位比表面積当たりのCO2吸着量が0.3〜1.8μmol/m2である請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項3】
1000℃で3時間以上熱処理された後の単位比表面積当たりのCO2吸着量が0.3〜0.7μmol/m2である請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項4】
前記金属元素(a)はCa、K、Tb、La、Nd、Pr、Ba、Y、Mg及びCeから選ばれる1種である請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項5】
前記酸化ジルコニウムと固溶しない金属元素(b)の酸化物をさらに含む請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項6】
前記金属元素(b)はAlである請求項5に記載の複合酸化物。
【請求項7】
前記金属元素(a)の少なくとも一部が前記金属元素(b)の酸化物及び前記酸化ジルコニウムの少なくとも一方に固溶している請求項5に記載の複合酸化物。
【請求項8】
大気中又は非酸化雰囲気中にて800℃以上で加熱する処理を1時間以上行った後に前記熱処理を行うことで、CO2吸着量が請求項1に記載の範囲となる請求項1〜7のいずれかに記載の複合酸化物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合酸化物に少なくともRhを担持してなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−137651(P2006−137651A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330884(P2004−330884)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】