説明

複層ガラスのスペーサ形成方法

本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法は、多関節ロボットによりスペーサ成形材料を塗布する塗布ヘッドを一方のガラス板の上面の周縁部に沿って移動させながら、塗布ヘッドからスペーサ成形材料を塗布してスペーサを形成する。その際に、周縁部の直線領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出し、周縁部のコーナー領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出するのを停止する。吐出停止中に、塗布ヘッドを回転させて吐出口の向きをコーナー領域に続く次の直線領域を塗布するのに適した方向に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスのスペーサ形成方法に関し、さらに詳しくは、生産性を向上することができる複層ガラスのスペーサ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野や自動車分野などにおいて、断熱、結露防止、防音などを目的として、従来から複層ガラスが用いられている。このような複層ガラスとして、ガラス板の周縁部間に乾燥剤を混入したゴムや樹脂などからなるスペーサを設け、ガラス板間に外気と遮断した気密の空気層を形成した複層ガラスが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
上記複層ガラスを製造する場合、所定の間隔に保持した2枚のガラス板間の周縁部に沿ってスペーサ成形材料を押し出してスペーサを形成する方法と、一方のガラス板上面の周縁部に沿ってスペーサ成形材料を押し出してスペーサを形成した後、他方のガラス板を圧着する方法が周知である(例えば、特許文献3,4参照)。
【0004】
後者の方法では、スペーサ成形材料を塗布する塗布ヘッドを備えた多関節ロボットを使用し、水平に保持された一方のガラス板の上面周縁部に沿って多関節ロボットにより塗布ヘッドを移動させながら、一定の塗布量でスペーサ成形材料を塗布することにより、スペーサを自動形成している。塗布ヘッドがガラス板のコーナーに達すると、多関節ロボットが塗布ヘッドを回転させ、スペーサ成形材料を吐出する塗布ヘッドの吐出口の向きを変更する。
【0005】
ところで、近年、企業間の競争の激化により、複層ガラスのコスト削減が求められている。そこで、多関節ロボットを用いた上記方法において、塗布ヘッドの移動速度を高速化(60mm/sec.以上)することで、生産性を高めて低コスト化を図ろうとすると、ガラス板のコーナー領域において、所定の塗布領域から外側に多量のスペーサ成形材料がはみ出し、形成されたスペーサの外観が悪化する。構造上、高速化した塗布ヘッドの移動速度に対して、塗布ヘッドの回転速度を追従させることができないためである。
【0006】
そこで、多関節ロボットを用いたスペーサ自動形成工程では、良好なスペーサ形状を得ため、塗布ヘッドの回転速度に合わせて、塗布ヘッドを周縁部に沿って一定速度で移動させるようにしており、塗布ヘッドの移動速度、即ちスペーサの成形速度が塗布ヘッドの回転速度に依存せざるを得ず、それが生産性を改善する妨げになっていた。
【特許文献1】日本国特開平10−110072号公報
【特許文献2】日本国特開2001−354949号公報
【特許文献3】日本国特開平8−67537号公報
【特許文献4】日本国特表平10−511072号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、良好な外観を有するスペーサを塗布ヘッドの回転速度に依存することなく形成し、生産性を向上することが可能な複層ガラスのスペーサ形成方法を提供することにある。
【0008】
上記目的を達成する本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法は、スペーサ成形材料を塗布する塗布ヘッドを回転可能に取り付けた多関節ロボットを使用し、該多関節ロボットにより塗布ヘッドを一方のガラス板の上面の周縁部に沿って移動させながら、該塗布ヘッドからスペーサ成形材料を塗布してスペーサを形成する複層ガラスのスペーサ形成方法であって、塗布ヘッドは一方向に向いたスペーサ成形材料の吐出口を有し、ガラス板の周縁部は直線領域とそれに続くコーナー領域を有し、直線領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出し、コーナー領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出するのを停止し、かつ塗布ヘッドを回転させて塗布ヘッドの吐出口の向きをコーナー領域に続く次の直線領域を塗布するのに適した方向に変更することを特徴とする。
【0009】
上述した本発明によれば、コーナー領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出するのを停止するので、ガラス板の所定の塗布領域から外側に多量のスペーサ成形材料がはみ出すことがない。そのため、直線領域でスペーサ成形材料を吐出する塗布ヘッドを塗布ヘッドの回転速度に依存することなく高速で移動させる一方、コーナー領域で塗布ヘッドの回転速度に対応した速度以下に落として塗布ヘッドを移動させても、外観が良好なスペーサを形成することができる。従って、良好な外観を有するスペーサを直線領域で塗布ヘッドの回転速度に依存することなく形成し、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[図1]本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法により形成されるスペーサを有する複層ガラスの一例を示す断面図である。
[図2]本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法で使用される多関節ロボットの一例を示す側面図である。
[図3]本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法で使用される塗布ヘッドの部分拡大断面図である。
[図4]塗布ヘッドに接続されるスペーサ成形材料供給手段と1次シーリング剤供給手段を示す説明図である。
[図5]本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法を説明する平面図である。
[図6]塗布ヘッドの吐出口の向きを変更する好ましい方法を説明する部分平面図である。
[図7]本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法により形成されるスペーサを有する複層ガラスの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法により形成されるスペーサを備えた複層ガラスの一例を示す。図1に示す複層ガラスG1は、矩形状のガラス板1,2の周縁部1a,2a間に、上下両面に1次シーリング剤層3,4を備えたスペーサ5を設け、ガラス板1,2間にスペーサ5に囲まれた気密の空気層6を形成した構造になっている。ガラス板1,2間のスペーサ5の外周側には2次シーリング材層7が設けられている。
【0013】
上記複層ガラスG1は、水平に載置した一方のガラス板1の上面1Xの周縁部1aにスペーサ5を形成した後冷却し、次いで他方のガラス板2を圧着した後、2次シーリング剤層7を形成して得られる。本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法は、このような複層ガラスG1のスペーサ5を形成するのに用いられる。
【0014】
以下、図2〜6を参照しながら、本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法の実施形態を説明する。
【0015】
図2は、本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法に使用する多関節ロボットの一例を示す。この多関節ロボットRは、回転テーブル10、第1旋回アーム11、第2旋回アーム12、第3旋回アーム13を備えている。回転テーブル10はベース部14上に突設した回転軸15の上端に固定されている。回転軸15が上下に延在する回転中心軸15aを中心に回転することで、回転テーブル10が回転するようになっている。
【0016】
回転テーブル10には、上下に延在する第1旋回アーム11の下端部が連結されている。第1旋回アーム11は、下端部の左右水平方向に延在する旋回中心軸11aを中心に前後(図3の左右)に旋回可能になっている。
【0017】
第1旋回アーム11の上端部に、前後に延在する第2旋回アーム12の後部が連結されている。第2旋回アーム12は、後部の左右水平方向に延在する旋回中心軸12aを中心に上下に旋回可能になっている。
【0018】
第2旋回アーム12は、第1旋回アーム11に連結された連結アーム部12Xとこの連結アーム部12Xに回転可能に取り付けた回転アーム部12Yとから構成されている。回転アーム部12Yが、前後に延在する回転中心軸yを中心に回転するようになっている。
【0019】
第2旋回アーム12の先端に、上下に延在する第3旋回アーム13の上端部が連結されている。第3旋回アーム13は、上部の左右水平方向に延在する旋回中心軸13aを中心に前後に旋回可能になっている。
【0020】
第3旋回アーム13の下端に、スペーサ成形材料を塗布する塗布ヘッドHの上端が連結されている。塗布ヘッドHは、上下に延在する回転中心軸Haを中心に回転可能になっている。
【0021】
不図示のアクチュエータにより作動し、回転テーブル10、第1旋回アーム11、第2旋回アーム12、第3旋回アーム13を適宜作動させることで、塗布ヘッドHをセットされた一方のガラス板1の周縁部1aに沿って移動させるようにしている。
【0022】
塗布ヘッドHは、図3に示すように、下端部にスペーサ成形材料を吐出する吐出口20を備えている。一方向(横方向)に向いた吐出口20には、乾燥剤を配合したスペーサ成形材料を供給する通路21が連通している。吐出口20近傍の通路21の上下壁面22,23には、1次シーリング剤層3,4を形成するための1次シーリング剤を供給する供給路24,25が開口している。吐出口20からは、スペーサ成形材料とシーリング剤を積層状態にし、スペーサ5とその上下両面に積層した1次シーリング剤層3,4とからなる積層体が吐出されるようになっている。
【0023】
塗布ヘッドHには、図4に示すように、配管31,32,33とバルブ34,35,36を介して乾燥剤を配合したスペーサ成形材料を供給する手段37と1次シーリング剤を供給する手段38が接続されている。
【0024】
本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法は、上述した多関節ロボットRと塗布ヘッドHを用いて以下のように行う。
【0025】
先ず、図5に示すように、矩形状の一方のガラス板1を水平にセットし、次いで、ガラス板1の上面1Xの周縁部1aの第1直線領域a1の開始位置に塗布ヘッドHを位置させる。この時、塗布ヘッドHの吐出口20は矢印Kで示す塗布ヘッドHの移動方向と逆方向を向いている。この逆方向が周縁部1aの4つの直線領域a1,a2,a3,a4での塗布ヘッドHの塗布方向である。
【0026】
多関節ロボットRにより塗布ヘッドHを周縁部1aに沿って第1直線領域a1を矢印Kで示す方向に移動させながら、吐出口20からスペーサ成形材料と1次シーリング剤がストリップ状に定量吐出され、スペーサ5とその上下両面に積層した1次シーリング剤層3,4とからなる積層体8が第1直線領域a1に形成される。直線領域1aにおける塗布ヘッドHの移動速度は、周縁部1aのコーナー領域の塗布ヘッドHの移動速度より大幅に速い速度(例えば、120mm/sec.)である。
【0027】
第1直線領域a1からそれに続く周縁部1aの第1コーナー領域b1に塗布ヘッドHが達した時に、バルブ34,35,36を閉止し、吐出口20からスペーサ成形材料と1次シーリング剤を吐出するのを停止する。第1コーナー領域b1移動中、多関節ロボットRが塗布ヘッドHを回転させ、スペーサ成形材料と1次シーリング剤の吐出を停止した塗布ヘッドHの吐出口20の向きを第1コーナー領域b1に続く周縁部1aの第2直線領域a2を塗布するのに適した方向に変更する。コーナー領域b1における塗布ヘッドHの移動速度は、塗布ヘッドHの回転速度に対応する速度(例えば、60mm/sec.)以下である。
【0028】
図6に、好ましい変更方法の一例を示す。第1直線領域a1の塗布中心ラインc1と第2直線領域a2の塗布中心ラインc2の第1コーナー領域b1での交点をAとすると、第1コーナー領域b1に達し、スペーサ成形材料と1次シーリング剤の吐出を停止した塗布ヘッドHを、吐出口20が交点Aを過ぎる位置Bまで移動させる。この移動距離mとしては、スペーサ成形材料と1次シーリング剤にもよるが、例えば、5mm程度にすることができる。この移動時、好ましくは、塗布ヘッドH’で示すように、吐出口20の向きを若干内側に向くように塗布ヘッドHを回転させるのがよい。その回転角度としては、1〜2°程度である。
【0029】
吐出口20が位置Bまで移動すると、矢印Qで示すように、吐出口20を外側に向くように塗布ヘッドHを回転させながら、塗布ヘッドHを第2直線領域a2に向け、かつ第2直線領域a2の塗布中心ラインc2に向けて移動させる。第2直線領域a2に達した時に、塗布中心ラインc2まで吐出口20の塗布中心nが戻るようにする。
【0030】
第2直線領域a2に塗布ヘッドHが達すると、バルブ34,35,36を開にして吐出口20からスペーサ5とその上下両面に積層した1次シーリング剤層3,4とからなる積層体8を再びストリップ状にして吐出する。
【0031】
位置Bからスペーサ成形材料と1次シーリング剤を停止する位置Dまでの距離L1及び再びスペーサ成形材料と1次シーリング剤を吐出する位置Eまでの距離L2は、通常、配管31,32,33中の残圧を考慮してそれぞれ10mm程度にすることができるが、配管寸法やスペーサ成形材料などの種類により適宜決められるものである。吐出を再び開始する位置Eでは、吐出口20の向く角度αが塗布中心ラインc2に対して約5°程度となるようにし、そこから角度αを徐々に減少させ、位置Eから約20mmの位置Fで0°となり、吐出口20の吐出中心nが塗布中心ラインc2と重なるようにするのが、多関節ロボットRにより塗布ヘッドHを円滑に移動させ、かつ外観が良好なスペーサ5を形成するためによい。
【0032】
図6において、二点鎖線で示すSは、位置Dから位置Fまでの区域における吐出口20の吐出中心nの移動軌跡である。それ以外の区域での吐出口20の吐出中心nの移動軌跡は、塗布中心ライン上にある。また、図6の塗布ヘッドHは、図面を見易くするため、両端を折り曲げた線で描いて簡略化している。折り曲げ方向が吐出口20の向く方向である。
【0033】
塗布ヘッドHは、第2直線領域a2から、第2コーナー領域b2、第3直線領域a3、第3コーナー領域b3、第4直線領域a4、第4コーナー領域b4を経て、第1直線領域まで移動するが、第2〜4コーナー領域b2,b3,b4では、上記第1コーナー領域b1と同様にして、塗布ヘッドHの吐出口20からスペーサ成形材料と1次シーリング剤を吐出するのを停止し、塗布ヘッドHを回転させて吐出口20の向きを変更する。
【0034】
上述した本発明によれば、コーナー領域b1,b2,b3,b4で塗布ヘッドHの吐出口20からスペーサ成形材料と1次シーリング剤を吐出するのを停止するので、ガラス板1の所定の塗布領域から外側に多量のスペーサ成形材料と1次シーリング剤とがはみ出すことがない。そのため、直線領域a1,a2,a3,a4で塗布ヘッドHを塗布ヘッドHの回転速度に依存することなく高速で移動させる一方、コーナー領域b1,b2,b3,b4で塗布ヘッドHの回転速度に対応した速度以下に落として塗布ヘッドHを移動させても、1次シーリング剤層3,4を備えた外観が良好なスペーサ5を形成することができる。従って、良好な外観を有する1次シーリング剤層3,4を備えたスペーサ5を直線領域a1,a2,a3,a4で塗布ヘッドHの回転速度に依存することなく形成でき、生産性を向上することが可能になる。
【0035】
スペーサ成形材料及び1次シーリング剤は溶融状態にあり、柔かいため、コーナー領域b1,b2,b3,b4でスペーサ成形材料と1次シーリング剤の吐出を停止しても、吐出されたストリップ状の積層体8が切れるような不具合が発生することがない。
【0036】
また、塗布ヘッドHからの塗布量と塗布ヘッドHの移動速度を容易に連動させて自動制御しながら、良好な外観を有する1次シーリング剤層3,4を備えたスペーサ5を形成することができる。
【0037】
また、塗布ヘッドHを各コーナー領域b1,b2,b3,b4で移動させる際に、吐出口20が交点Aを過ぎる位置まで移動させ、次いで各コーナー領域b1,b2,b3,b4に続く次の各直線領域a2,a3,a4,a1に向けて移動させながらその塗布中心ラインまで戻るようにしたので、1次シーリング剤層3,4を備えたスペーサ5(積層体8)のコーナー部9を直角に近い鋭角状にすることができる。そのため、外観を一層良好にすることができ、かつ2次シーリング剤層7を設ける幅を十分に確保することができる。
【0038】
本発明において、スペーサ5を構成するスペーサ成形材料としては、従来公知の乾燥剤を配合したゴム、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどからなるスペーサ成形材料を使用することができる。好ましくは、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性材料、例えば、日本国特開2000−119537号公報に開示される熱可塑性エラストマー組成物や、日本国特開2001−354949号公報に開示されるスペーサ機能とシーリング機能を備えたシーリング剤組成物などを好ましく挙げることができる。
【0039】
1次シーリング層3,4に使用するシーリング剤としては、ガラス板1,2とのシーリング機能があれば特に限定されるものではなく、例えば、ブチル系シーリング剤組成物などのホットメルトタイプの接着剤などを用いることができる。
【0040】
複層ガラスG1に使用されるガラス板1,2としては、通常、建材や車両などに広く使用されている窓、ドアなどのガラス板や、強化ガラス板、金属網入りガラス板、熱線吸収ガラス板などのように、内面に金属や他の無機物を薄くコーティングしたガラス板や、有機ガラス板と呼ばれるアクリル樹脂板、ポリカーボネート板などを例示することができる。
【0041】
本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法が使用される複層ガラスは、図1の複層ガラスG1に限定されず、例えば、図7に示す複層ガラスG2などであってもよい。この複層ガラスG2は1次シーリング層3,4がなく、ガラス板1,2間にスペーサ5と2次シーリング剤層7のみを配置したものである。このスペーサ5はスペーサ機能とシーリング機能を備えたスペーサ成形材料から構成されている。このような複層ガラスG2のスペーサ5を形成するには、1次シーリング剤を供給する供給路24,25がない塗布ヘッドを使用することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、2枚のガラス板1,2を有する複層ガラスにおいて、スペーサ5を形成する方法を説明したが、各ガラス板間にスペーサを介在させた3枚以上のガラス板を有する複層ガラスであっても、各スペーサを形成するのに本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法を使用することができる。また、2次シーリング剤層7がない構造の複層ガラスであってもよい。
【0043】
また、塗布ヘッドHからの塗布量と塗布ヘッドHの移動速度を連動させて自動制御しながら、良好な外観を有する1次シーリング剤層3,4を備えたスペーサ5を形成することが可能であれば、コーナー領域において、塗布ヘッドHから塗布される塗布量を減少させて塗布するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述した優れた効果を有する本発明の複層ガラスのスペーサ形成方法は、建築分野や自動車分野などにおいて、断熱、結露防止、防音などを目的とする複層ガラスのスペーサを形成するのに極めて有効に利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサ成形材料を塗布する塗布ヘッドを回転可能に取り付けた多関節ロボットを使用し、該多関節ロボットにより塗布ヘッドを一方のガラス板の上面の周縁部に沿って移動させながら、該塗布ヘッドからスペーサ成形材料を塗布してスペーサを形成する複層ガラスのスペーサ形成方法であって、
塗布ヘッドは一方向に向いたスペーサ成形材料の吐出口を有し、ガラス板の周縁部は直線領域とそれに続くコーナー領域を有し、
直線領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出し、
コーナー領域で塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料を吐出するのを停止し、かつ塗布ヘッドを回転させて塗布ヘッドの吐出口の向きをコーナー領域に続く次の直線領域を塗布するのに適した方向に変更する複層ガラスのスペーサ形成方法。
【請求項2】
直線領域の塗布中心ラインのコーナー領域での交点をAとすると、一方の直線領域からそれに続くコーナー領域に達した塗布ヘッドをコーナー領域で移動させる際に、塗布ヘッドを吐出口が交点Aを過ぎる位置まで移動させ、次いでコーナー領域に続く他方の直線領域に向けて移動させながら他方の直線領域の塗布中心ラインまで吐出口を戻すようにした請求項1に記載の複層ガラスのスペーサ形成方法。
【請求項3】
コーナー領域における塗布ヘッドの移動速度を塗布ヘッドの回転速度に対応する速度以下にし、直線領域における塗布ヘッドの移動速度をコーナー領域の塗布ヘッドの移動速度より速くした請求項1または2に記載の複層ガラスのスペーサ形成方法。
【請求項4】
ガラス板が矩形状である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複層ガラスのスペーサ形成方法。
【請求項5】
スペーサ成形材料が乾燥剤を配合した熱可塑性材料からなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複層ガラスのスペーサ形成方法。
【請求項6】
塗布ヘッドがスペーサ成形材料とシーリング剤とを塗布し、塗布ヘッドの吐出口からスペーサ成形材料とシーリング剤を積層状態にして吐出する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複層ガラスのスペーサ形成方法。

【国際公開番号】WO2005/000763
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511041(P2005−511041)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008973
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】