説明

複数の微細構造光学要素を有する光源

微細構造光学要素(11)を備えた光源であって、該微細構造光学要素が一次光源(3)の光を受容し、スペクトル拡散する光源において、スペクトル拡散された光が少なくとも更にもう1つの微細構造光学要素(14,19,21)を通過すること、を特徴とする光源。この光源は走査型顕微鏡、とりわけSTED顕微鏡において効率的に利用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造光学要素を備え、該微細構造光学要素が一次光源の光を受容し、スペクトル拡散する光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、可視スペクトル範囲および赤外スペクトル範囲の広帯域スペクトルを生成するための装置を開示している。この装置は、パルスレーザーの光がカップリング(入射結合)される微細構造ファイバーをベースとしている。ポンプ光は、微細構造ファイバー内で非線形効果により拡散される。微細構造ファイバーとしては、いわゆるフォトニックバンドギャップ材、またはフォトニック・クリスタルファイバー(photonic crystal fibres)、ホーリーファイバー(holey fibers)、ミクロ構造ファイバー(microstructured fibers)が使用される。いわゆる「中空ファイバー」も知られている。
【0003】
広帯域スペクトルを生成するための他の装置が非特許文献1に開示されている。この装置には、ファイバーコアを備えた従来の光ファイバーが使用され、この光ファイバーは少なくとも部分的に先細り部を有している。この種の光ファイバーはいわゆる「テーパーファイバー」として知られている。
【0004】
特に顕微鏡、内視鏡、フローサイトメーター、クロマトグラフィー、リソグラフィーにおいては、対象物(被検物)を照明するため、高い光照明密度を持った万能型の照明装置が重要である。走査型顕微鏡では、試料は光線で走査される。このため、光源としてしばしばレーザーが使用される。たとえば特許文献2に記載の「多色蛍光用共焦点顕微鏡システム」からは、複数のレーザー光線を放出する1つのレーザーを備えた装置が知られている。最近ではほとんどが混合ガスレーザー、特にArKrレーザーが使用される。試料としては、たとえば蛍光色素でプレパラート化された生物組織または切片が検査される。試料によって反射した照明光は大抵、材料検査領域において検出される。固体レーザーおよび色素レーザー、並びにファイバーレーザー、およびポンプレーザーが配置される光パラメトリック発振器(OPO)も頻繁に使用される。
【0005】
特許文献3より、レーザー光をスペクトル拡散する微細構造光学要素を含んだ、対象物の照明のための装置が公知である。この装置はスペクトル拡散させた光を照射光へと整形する光学系を備えて成る。更に特許文献3には照明装置の顕微鏡への、特に走査型顕微鏡への利用が開示されている。
【0006】
特許文献4より、走査型顕微鏡で顕微プレパラートを検査するための装置および走査型顕微鏡用照明装置が公知である。この装置はレーザーと光学的手段から成り、レーザーによって生じた光は被検査対象である試料上で結像する。レーザーと光学的手段の間に光学要素が設けられ、レーザーによって生じた光は最初の通過時にスペクトル拡散し、フォトニックバンドギャップ材からなる光学要素が存在し、好適には光ファイバーとして構成されている。
【0007】
非特許文献2にはエア−石英ガラスファイバー(Luft-Quarzglas-Faser)を用いた500から1600nmの広帯域スペクトルの光の生成が示されている。
【0008】
微細構造光学要素、例えばフォトニック・クリスタルファイバーを用いて生成された光の特性は一次光源の波長に依存すると共に、微細構造光学要素のパラメータ、例えばゼロ分散波長または孔構造や微細構造(Loch-bzw. Mikrostruktur)の種類や寸法にも依存する。通例、一次光が同じ波長の場合には、2つの異なるフォトニック・クリスタルファイバーは異なる放射スペクトルを有する。とりわけ実験の再現性を考慮すると、このことは重大な短所である。
【0009】
スペクトル拡散された光のパワー/出力は普通、広範囲にわたり均一に、広いスペクトル範囲全体に分散するので、個々の波長の光だけが、あるいは単一の小さな波長範囲の光だけが必要とされるような応用時には、比較的わずかな光パワー(典型的には1〜5mW/m)が利用出来るに過ぎない。
【0010】
特許文献5は走査型顕微鏡における照明用光源および走査型顕微鏡を開示する。光源は、1つの波長の光を発生する電磁的エネルギー源と、光を少なくとも2つの分割光線に空間的に分割するための手段とを含んでいる。少なくとも1つの分割光線に、波長変化のための中間素子が設けられている。光源はSTED顕微鏡に据え付けることが出来る。
【0011】
走査型顕微鏡では、試料から放出される反射光または蛍光を観察するために、試料は光線により照射される。照射光の焦点は、調整可能な光線偏向装置を用いて、通常は2つのミラーの傾動操作により、対象物(試料)面で移動させられる。その際、偏向軸線は大抵互いに垂直に位置しているので、1つのミラーはx方向へ、別のミラーはy方向へ偏向させる。ミラーの傾動は、例えばガルバノメータ調整素子を用いて行われる。対象物から発する光パワーは検出光路を介して、走査光線の位置に応じて測定される。通常、ミラーの実際位置の算定のためにセンサを有する調整素子が装備される。
【0012】
特に共焦点走査型顕微鏡においては、対象物は光線の焦点を用いて三次元で走査される。
【0013】
共焦点走査型顕微鏡は一般的に、光源、光源の光をピンホール遮光器−いわゆる励起絞り−上で焦点する結像光学系、ビームスプリッター、検出絞り、検出光あるいは蛍光を検出するための検出器とを備えて成る。照射光は大抵、ビームスプリッターを介してカップリングされる。ビームスプリッターは、例えばニュートラルスプリッターまたは二色性ビームスプリッターとして構成されていて良い。ニュートラルスプリッターには、分割率によっては多くの励起光または検出光が消失するという欠点がある。
【0014】
対象物から来る検出光(例えば蛍光または反射光)は、光線偏向装置を介してビームスプリッターへと戻り、これを通過し、続いて検出絞りで焦点される。検出絞りの後ろには検出器が存在する。焦点領域から直接発したものではない検出光は別の光路を進み、検出絞りを通過しない。それ故、対象物の連続的な走査により、三次元画像を形成する点情報が得られる。三次元画像データは大抵、断層的な画像データの取得によって得られ、スキャン光線の軌跡(Bahn/track)は対象物上もしくは対象物中で、理想的には蛇行線(波形模様)を描く(一定のy位置に対して列をx方向にラインをスキャンし、続いてxスキャニングを中断し、y調整により次の走査されるべきラインに旋回し、然る後に一定のy位置に対してこのラインをマイナスのx方向へスキャンする等々)。断層的な画像データーの取得を可能とするために、1つの層を走査した後は試料台または対物レンズが動かされ、次の走査されるべき層が対物レンズの焦点面にもたらされる。
【0015】
多くの応用に際し、試料は複数のマーカー、例えば複数の異なる蛍光色素により準備される。これら色素は、例えば異なる励起波長を有する照射光ビームにより、逐次励起される。
【0016】
特許文献6(発明の名称:「二重共焦点走査型顕微鏡(Doppelkonfokales Rastermikroskop)」)に記載されているように、二重対物レンズ装置(4Pi装置)により光軸方向での分解能を上げることができる。照射系から来た光は2つの分割光線に分割され、鏡対称に配置された2つの対物レンズにより、試料を同時に、互いに逆方向に照射する。2つの対物レンズは、両者に共通する対象物面上の異なる側に配置されている。この干渉的な照射により、対象物点において、構造的な干渉の際に1つの一次極大と複数の二次極大を示す干渉パターン(しま模様)が形成される。二重共焦点走査型顕微鏡を用いることで、従来の走査型顕微鏡と比較すると、干渉照射により軸方向の分解能を高めることが達成され得る。
【0017】
蛍光の利用のために分解能を高めるための装置が特許文献7より公知である。ここでは励起光線の焦点空間の側方縁範囲は、第1レーザーの光で励起された試料領域を誘導して基礎状態に戻すために、第2レーザーから放射される別の波長の光線、いわゆる誘導光線を用いて照らし出される。その場合、検出されるのは第2レーザーにより照射されない領域から自然に放射された光だけであり、結果として全体的に分解能が改善され得る。この方法に対してSTED(Stimulated Emission Deletion:誘導放射減少)という表示が付けられている。
【0018】
新たな開発により、誘導光線の焦点を窪み状に出来れば、横方向と軸方向で同時に、分解能の改善が達成できることが示された。そのために誘導光線の光路内に円形の位相遅れ板が設置される。この位相遅れ板は、光学路長さλ/2に相応する位相だけ部分領域で波長を遅れさせる。位相遅れ板はその直径が光線径よりも小さいので、結果的に過剰照射(ueberleuchten)される。内側での誘導光線窪みを得るためには、λ/2の位相遅れを受ける光量が遅れない光量と等しくなくてはならない。
【0019】
目下のところ、STED顕微鏡は3つの異なる形状で実施されている。
【0020】
蛍光色素の誘導された無励起(stimulierten Abregen;沈静、緩和)のためにチタン・サファイアレーザー(TiSa)を用い、また蛍光色素の励起のためにTiSaによりポンピングされた光パラメトリック発振器(OPO)を用いる(非特許文献3)。
【0021】
2つの同期されたレーザーダイオードを用いる。1つのレーザーダイオードは色素の吸収スペクトルの波長領域で1つの波長を有し、別のレーザーダイオードは色素の放射スペクトル領域で1つの波長を有する(非特許文献4)。
【0022】
パルス化された固体レーザーを用いて、その固体レーザーの光は、一方で、蛍光色素の誘導された無励起のために使用される。また他方では、該光の周期は二倍にされ、色素の励起に用いられる(非特許文献5、非特許文献6)。
【0023】
例えばチタン・サファイアレーザーは光パラメトリック発振器(OPO)と連携して、STED顕微鏡において光源として使用される。この種の光源には、極めて限定された波長スペクトルの光だけしか利用のために供することが出来ず、その上操作が難しいという欠点がある。とりわけ、この様な光源では調達コストが非常に高いのが欠点である。今日では、STED顕微鏡における光源として、互いに同期された半導体レーザーも使用される。この場合、誘導された無励起のために使用されるレーザーダイオードのパワーがしばしば満足のいくものではない、といのが欠点である。その上、投入されたダイオードレーザーの両方の波長に拘束されざるを得ない。代案として、今日ではSTED顕微鏡では、後から周期を二倍にする固体レーザーも使用される。その場合、試料の励起のための光と誘導発光に作用する光とのために、2つの互いに依存する波長に拘束されざるを得ない。このことがこのタイプの光源の設置の可能性を僅かなものへ限定している。
【0024】
【特許文献1】US 6、098、870
【特許文献2】EP 0 495 930
【特許文献3】DE 101 15 488 A1
【特許文献4】DE 101 15 509 A1
【特許文献5】DE 100 56 382 A1
【特許文献6】EP 0 491 289
【特許文献7】DE 44 16 558
【非特許文献1】Birks他著、"Supercontinuum generation in tapered fibers"、Opt.Lett.、第25巻、1415頁、2000年発行
【非特許文献2】Ranka他著、Optics Letters、第25巻、No.1中の論文
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第97巻、8206-8210頁、2000年発行
【非特許文献4】Appl. Pys. Lett.、第82巻、No.18、3125-3127頁、2003年発行
【非特許文献5】Hell, S. W.著、1997年発行、"Increasing the Resolution of Far-Field Flourenscence Microscopy by Point-Spread-Function Engineering"
【非特許文献6】Fluorencence Spectroscopy 5の中のトピックス:"Nonliner and Two Photon-Induced Fluorence"、J. Lakowicz著、ニューヨーク、Plenum Press.5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の課題は、微細構造光学要素を備えた光源において、微細構造光学要素の放射スペクトルが夫々の利用に適している光源を提供することであり、その光源が特に走査型顕微鏡、とりわけSTED顕微鏡に利用可能であることである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この課題は、スペクトル拡散された光が少なくとも更にもう1つの微細構造光学要素を通過すること、を特徴とする光源により解決される。
【0027】
2つ以上の微細構造光学要素を前後に並べた配置が、光源から放射された光のスペクトル特性に影響を及ぼし、これを意図された応用のための要求に適応させ得る。特に微細構造光学要素と別の微細構造光学要素の各パラメータを適切に選択することで、応用のために特に重要であるスペクトル小領域(spektrale Unterbereiche)において、光源から放射された光のパワーが増大され得る。例えばSTED顕微鏡において光源を用いる場合、使用される試料色素の吸収スペクトル範囲と使用される試料色素の放射スペクトル範囲で光パワーは最大化される。従って、本発明に従う光源は高解像度顕微鏡での使用、例えば既述したSTED顕微鏡またはSTED−4Pi走査型顕微鏡(二重共焦点走査型顕微鏡)、ならびにCARS顕微鏡での使用に並外れて適合している。
【0028】
本発明に従う光源により放射光が発生し、そのスペクトル幅が夫々個々の微細構造光学要素から発生されるであろうスペクトル幅を超えているならば有利である。その種の光源はとりわけ多波長STED顕微鏡への応用にとって有望である。非常に幅の広いスーパーコンティニウム(sehr breite Superkontinuum)が必要とされるからである。
【0029】
光源のとりわけ好適な実施例では、微細構造光学要素と別の微細構造光学要素は互いに重ね継ぎ(組み継ぎ、接合)されている。光ファイバーの重ね継ぎは当業者にはずっと以前から公知の技術である。US2003/0081915には更に、如何にして従来の光ファイバーと微小構造ファイバーが、透過損失が最小限となるように、互いに重ね継ぎされるかが記載されている。
【0030】
光源のとりわけ好適な変形実施例では、微細構造光学要素から出た光は、レンズ装置を通って、更なる微細構造光学要素へカップリングされる。
【0031】
本発明に従う光源を用いて、ポンププローブ(Pump-Probe)実験を効率的に行うことが出来る。
【0032】
有利には、一次光源がパルス光源であり、好適な変形例においてはパルスレーザーを備えて成る。パルスレーザーは、例えばパルス化されたチタン・サファイアレーザーとして構成されていて良い。
【0033】
特に好適な実施例では、少なくとも1つの波長および/または少なくとも1つの波長範囲の光成分を選択するための手段が設けられている。この手段は例えば、カラーフィルターあるいは二色フィルターであって良い。望ましくは音響光学要素または電気光学要素を含んでいる。好適な変形例においては、選択のための手段はAOTF(Acousto Optical Tunable Filter)またはAOBS(Acousto Optical Beam Splitter)として構成されている。
【0034】
上述したように、この光源はSTED顕微鏡用の、またはポンププローブ実験用の照射光の発生のための方法においても並外れて適合している。この際、光源から放射されスペクトル拡散された光は、選択のための手段を用いて、使用される夫々の蛍光色素の励起スペクトル内で1つの波長を有する光成分と、使用される蛍光色素の放射スペクトル内で1つの波長を有する光成分とに分割され、照射光線に整形される。蛍光色素の励起スペクトル内で1つの波長を有する光成分が、照明領域において試料を励起するのに供される一方、放射スペクトル内で1つの波長を有する光成分は、励起試料領域(Anregungsprobenbereich)と一部重複する試料領域において誘導発光を引き起こすのに供される。一次光源がパルス光源であれば、2つの分割された光成分の中のパルスは必然的に互いに同期されている。これはSTED顕微鏡にとって極めて重要な特性である。
【0035】
好適には、一次光源の光は微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素を1回限り通過する。しかしながら複数回通過しても良い。
【0036】
好適には、微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素はフォトニックバンドギャップ材を含んでいる。好適には、微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素は光ファイバー(フォトニック・クリスタルファイバー(PCS);中空ファイバー等)として構成されている。
【0037】
別の変形例においては、光ファイバーとして構成された微細構造光学要素は先細り部(テーパーファイバー)を備えている。
【0038】
微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素は、走査型顕微鏡の有利な実施形態においては、少なくとも2つの異なる光学密度を有する多数の微小光学的構成要素から構成されている。特に有利な実施形態では、光学要素は第1の領域と第2の領域を内包し、第1の領域は均質な構造を備え、第2の領域においては微小光学構造要素から成る顕微構造が形成されている。更に、第2の領域が第1の領域を取り囲んでいれば有利である。好適には、微小光学構造要素はカニューレ、細条片、ハニカム体、管片または中空空間である。
【0039】
特別な変形例では、微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素は、互いに並置されたガラス材またはプラスチック材と中空空間とから成る。変形実施例において、微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素がフォトニック・バンド・ギャップ材から成り、光ファイバーとして構成されているならば特に有利である。好適には、レーザーと光ファイバーの間に、光ファイバーの端部からの光線の逆反射を抑制する光ダイオードが設けられている。
【0040】
特に好適で、簡単に実現されうる変形実施例は、微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素として、直径約9μmのファイバーコアを有する従来の光ファイバーを含み、この光ファイバーは少なくとも一部に沿って先細り部を有する。この種の光ファイバーは、いわゆる「テーパーファイバー」として知られている。好適には光ファイバーが全体で1mの長さで、30mmから90mmの長さにおいて先細り部を有している。全体のファイバーの直径は、好適な実施例では、先細り部範囲では約2μmである。
【0041】
別の好適な変形実施例は、微細構造光学要素と更なる微細構造光学要素を含み、ここでこれら構成要素は連続的に互いに移行し合体する。特に好適な変形例においては微細構造光学要素と更なる微細構造光学要素は、連続的な移行部を備えた光ファイバーとして構成されている。
【0042】
本発明に従う光源は、例えばフローサイトメーター、内視鏡、クロマトグラフィー、リソグラフィー装置でも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明のサブジェクトマターは図面に概略的に示されており、図面に基づいて以下に詳細に説明する。
【0044】
図1は本発明に従う、パルス化されたチタン・サファイアレーザー5として構成されている一次光源3を備えた光源1を示す。一次光源の光7はカップリング型光学系(Einkoppeloptik)9を用いて、フォトニック・クリスタルファイバー13として構成されている微細構造光学要素11に結ばれて(入射結合)いる。フォトニック・クリスタルファイバー13に直接、更なる(第2の)フォトニック・クリスタルファイバー17として構成された更なる(第2の)微細構造光学要素15が重ね継ぎ(接合)されている。同様に、第3、第4のフォトニック・クリスタルファイバー23,25として重ね継ぎされている微細構造光学要素19,21が続いている。第4のフォトニック・クリスタルファイバー25から出るスペクトル拡散された光は、光学系27を用いて照射光線29へ整形される。照射光線29は続いて、少なくとも1つの波長および/または少なくとも1つの波長範囲の光成分(光部分)を選択するための手段31(AOTF33として形成されている)を通過する。AOTF33から出た照射光線29は、選択された波長もしくは選択された波長範囲の光成分だけを含んでいるに過ぎない。また一方で、残りの光成分はAOTFによりビームトラップ(図示せず)へ偏向される。光源は外部の影響からの保護、特に防汚のためにケーシング35を備えている。
【0045】
図2には本発明に従う別の光源が示されている。一次光源3の光7は最初に、カップリング型光学系9を用いて従来の光ファイバー12へ結合される。従来の光ファイバー12はフォトニック・クリスタルファイバー13として構成された微細構造光学要素11と重ね継ぎされている。光7はフォトニック・クリスタルファイバー13の中でスペクトル拡散され、ファイバーから離れる。スペクトル拡散された光16は続いて、レンズ装置14を用いて、更なる(第2の)フォトニック・クリスタルファイバー17の形状をした、更なる(第2の)微細構造光学要素15に結合される。レンズ装置を用いた2つの光ファイバーの結合はファイバー光学系において標準であり、容易に作ることが可能である。第2のフォトニック・クリスタルファイバー17に続いて、第3のフォトニック・クリスタルファイバー23から成る、第3の微細構造光学要素19が存在する。グラデーションの付いた灰色の移行部で描かれた移行領域20において、構造要素は連続的に互いに移行する。全ての光学要素を通過した後、光線は1つのスペクトルを有する。他の全てのスペクトル範囲と比較して、特に大量の光が特定のスペクトル範囲に転換されている。次いでこのスペクトル整形された光線28は、AOTF33として形成されている、少なくとも1つの波長および/または少なくとも1つの波長範囲の光成分を選択するための手段31を通過する。スペクトル整形された光線28は続いて、ビームスプリッター36により励起光線30と誘導光線32に分けられる。STED顕微鏡において位相遅れ板が使用されている場合と同じ様に、誘導光線32は位相遅れ板34を通過する。この手法は当業者にはずっと以前から既知である。2つの光線はビーム結合器38を介して再び互いに一つにまとめられる。この光線は更に続いて、図3に示されるように、照射光線29として本発明に従う走査型顕微鏡において結合され、STED顕微鏡のために利用される。
【0046】
図3は、本発明に従う走査型顕微鏡を示しており、これは共焦点走査型顕微鏡として構成されている。本発明に従う、微細構造光学要素(本図では図示せず)を備えた光源1から出た照射光線29は、レンズ61により、照明ピンホール絞り37上に集束され、続いてメインビームスプリッター39に到達する。メインビームスプリッターは照射光線29を、カルダン式に懸架されたスキャンミラー43を含んだ光線偏向装置41へ誘導する。光線偏向装置41は照射光線29をスキャンレンズ45と鏡胴レンズ47を通過させ、また対物レンズ49を通過させて、試料51上に導くかまたは試料51を通過させる。図中では破線で示されている、試料から出た検出光53は反対の(逆方向)の光路へ到達する。つまり対物レンズ49、鏡胴レンズ47を通り、またスキャンレンズ45を通り、光線偏向装置41へ、そしてメインビームスプリッター39へと戻り、これを通過し、検出ピンホール絞り55を通過した後、マルチバンド検出器59として構成されている検出器57へ到達する。マルチバンド検出器59において、検出光は様々なスペクトル化された検出路へ検出され、パワーに比例した電気的信号を発生させる。この信号は試料51の結像を表示するための処理システム(図示せず)へ伝達される。
【0047】
以上、本発明を特定の実施形態に関して説明したが、本願の特許請求の範囲の権利保護範囲を逸脱することがなければ、変更および改変を行うことが出来ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従う光源である。
【図2】本発明に従う、別の光源である。
【図3】本発明に従う共焦点顕微鏡である。
【符号の説明】
【0049】
1 光源
3 一次光源
5 チタン・サファイアレーザー
7 光
9 カップリング型光学系
11 微細構造光学要素
12 従来の光ファイバー
13 フォトニック・クリスタルファイバー
14 レンズ装置
15 更なる(第2の)微細構造光学要素
16 スペクトル拡散された光
17 更なる(第2の)フォトニック・クリスタルファイバー
19 第3の微細構造光学要素
20 移行領域
21 第4の微細構造光学要素
23 第3のフォトニック・クリスタルファイバー
25 第4のフォトニック・クリスタルファイバー
27 光学系
28 スペクトル整形された光線
29 照射光
30 励起光線
31 光成分選択手段
32 誘導光線
33 AOTF
34 位相遅れ板
35 ケーシング
36 ビームスプリッター
37 照明ピンホール絞り
38 光線結合器
39 メインビームスプリター
41 光線偏向装置
43 スキャンミラー
45 スキャンレンズ
47 鏡胴レンズ
49 対物レンズ
51 試料
53 検出光線
55 検出ピンホール絞り
57 検出器
59 マルチバンド検出器
61 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造光学要素を備えて構成され、該微細構造光学要素が一次光源からの光を受容し、スペクトル拡散する光源において、
スペクトル拡散された光が少なくとも1つの更なる微細構造光学要素を通過することを特徴とする光源。
【請求項2】
前記微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素がフォトニックバンドギャップ材を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の光源。
【請求項3】
前記微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素が光ファイバーとして構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光源。
【請求項4】
前記微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素が先細り部(テーパーファイバー)を備えていることを特徴とする請求項3に記載の光源。
【請求項5】
前記微細構造光学要素と更なる微細構造光学要素が連続して、互いへ移行することを特徴とする請求項3に記載の光源。
【請求項6】
前記微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素がフォトニック・クリスタルファイバー(ミクロ構造ファイバー、ホーリーファイバー)であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光源。
【請求項7】
前記微細構造光学要素と更なる微細構造光学要素が互いに重ね継ぎされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光源。
【請求項8】
前記微細構造光学要素から出た光が、レンズ装置により前記更なる微細構造光学要素にカップリングされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光源。
【請求項9】
前記一次光源がパルスレーザーを備えて構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光源。
【請求項10】
前記一次光源の光が、前記微細構造光学要素および/または更なる微細構造光学要素を繰り返し通過することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光源。
【請求項11】
少なくとも1つの波長および/または少なくとも1つの波長範囲の光成分を選択するための手段を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光源。
【請求項12】
フローサイトメーターまたは内視鏡またはクロマトグラフィーまたはリソグラフィー装置において利用されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光源。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光源を備えた顕微鏡。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光源を備えた走査型顕微鏡。
【請求項15】
走査型顕微鏡が共焦点走査型顕微鏡および/または二重共焦点走査型顕微鏡および/またはSTED走査型顕微鏡および/またはSTED−4Pi走査型顕微鏡および/またはCARS走査型顕微鏡であることを特徴とする請求項14に記載の走査型顕微鏡。
【請求項16】
照射光を生成する方法において、
−請求項1から11のいずれか一項に記載の光源を用いてスペクトル拡散された光を生成するステップ、
−少なくとも1つの照射光波長および/または少なくとも1つの照射光波長範囲を選択するステップ、
−スペクトル拡散された光から少なくとも1つの照射光波長および/または少なくとも1つの照射光波長範囲の照射光を分割するステップ、
を特徴とする方法。
【請求項17】
照射光が試料を光学的に励起することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
−少なくとも1つの別の照射光波長および/または少なくとも1つの別の照射光波長範囲を選択するステップ、
−スペクトル拡散された光から少なくとも1つの別の照射光波長および/または少なくとも1つの別の照射光波長範囲を分割するステップ、
を特徴とする請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記別の照射光が誘導発光を生じさせることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
STED顕微鏡における、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法の利用法。
【請求項21】
ポンププローブ実験遂行のための、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法の利用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504499(P2007−504499A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525153(P2006−525153)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052053
【国際公開番号】WO2005/024482
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】