説明

複数の画像を得るための顕微鏡システム

【課題】複数の画像を得るための顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】顕微鏡システム1は顕微鏡システム1の倍率範囲にわたって顕微鏡システム1の倍率を連続的に変動させるよう構成されるズーム系20を含み、ズーム系20は顕微鏡システム1の共通の光軸OAに沿って可動に配置される2つの可動ズーム構成要素21,22を含み、顕微鏡システム1はさらに、ズーム系20を横断する、顕微鏡システム1の複数の異なる観察ビーム経路が選択可能であるように構成される開口絞り60を含み、開口絞り60は光軸OAに沿って見て2つの可動ズーム構成要素21,22間に配置され、倍率範囲内の倍率のすべての値について開口絞り60は光軸OAに沿って測定され顕微鏡システムのひとみ位置Pを取囲む開口絞り範囲SR内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、「顕微鏡システム」と題される、ドイツにおける特許出願番号第10 2010 026 171.8号の優先権を主張し、その内容をここにおいてその全体を引用により援用する。
【0002】
分野
この発明は顕微鏡システムに関し、特に、デジタル顕微鏡システムに関する。より具体的には、この発明は、画像化条件に適合可能な開口を含み、および/または立体画像もしくは立体映像シーケンスなどのような対象物の個々の画像の群から空間情報を得ることができる、デジタル顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
当該技術分野においては、観察者に対して対象物の立体視野を与える、公知の顕微鏡がある。典型的には、対象物は、立体顕微鏡の、互いに異なる2つの観察ビーム経路によって、同時に、または連続的に、画像化される。2つの観察ビーム経路の光線束は、物面において立体角を形成する。
【0004】
2つのタイプの立体顕微鏡が一般的に公知である。これらのタイプのうちの1つは、望遠鏡型の立体顕微鏡であり、2つの観察ビーム経路は共通の光学的構成要素を横断しない。第2のタイプは、共通の枠内に取付けられてもよい2つの対物レンズを有するグリノー型立体顕微鏡である。
【0005】
立体顕微鏡は、医療分野において広く用いられており、目の手術に対して特に有用である。それらは、生物学およびマイクロエレクトロニクスの分野においても重要な検査器具であることがわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの適用例のいくつかにおいては、顕微鏡を設置するのに利用可能な空間はほんのわずかに限られている。例として、手術室においては、多数の検査器具が手術野に接近して配置され、顕微鏡を位置決めするために利用可能な空間を制限している。さらに、手術医が手術手順を実行できるよう、手術医の手およびさまざまな器具のためにさらなる空間が必要である。
【0007】
したがって、この発明の目的は、コンパクトなサイズの多用途顕微鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
実施例に従うと、複数の画像を得るための顕微鏡システムであって、顕微鏡システムの倍率範囲にわたって顕微鏡システムの倍率を連続的に変動させるよう構成されるズーム系を含み、ズーム系は、顕微鏡システムの共通の光軸に沿って可動に配置される2つの可動ズーム構成要素を含み、顕微鏡システムはさらに、ズーム系を横断する、顕微鏡システムの複数の異なる観察ビーム経路が選択可能であるように構成される開口絞りを含み、開口絞りは、光軸に沿って見た場合、2つの可動ズーム構成要素間に配置され、倍率範囲内の倍率のすべての値に対して、開口絞りは、光軸に沿って測定され顕微鏡システムのひとみ位置を取囲む開口絞り範囲内に位置する、顕微鏡システムが提供される。
【0009】
したがって、開口絞りはズーム系内にあるので、コンパクトなサイズの顕微鏡システムが得られる。特に、所与のfナンバーに対して、コンパクトな顕微鏡システムが得られる。顕微鏡は、レンズ直径および顕微鏡システムの全長に関してサイズがコンパクトであってもよい。さらに、画像に現われる輝度勾配などのようなアーチファクト(たとえば口径食または非対称の画像クロッピングなど)が低減される。
【0010】
さらに、観察ビーム経路を開口絞りで選択することにより、左右の観察ビーム経路に対して別々の光学素子を設けることなく立体画像および/または映像シーケンスが取得可能である。加えて、または代替的に、観察ビーム経路を開口絞りで選択することにより、開口の形状およびサイズを、画像化条件およびズーム系の倍率設定に依って選択することが可能である。これにより、顕微鏡システムは多用途となる。
【0011】
さらに、この顕微鏡システムは非常に多用途であり、なぜならば、それは具体的な適用例のニーズを満たすよう適合可能であるからである。観察ビーム経路は開口絞りによって選択可能であるため、顕微鏡システムは、対象物に対する顕微鏡システムの位置、対象物に対する顕微鏡システムの向き、対象物に対する観察者の位置、および/または対象物に対する観察者の向きに関して、適合可能であってもよい。さらに、観察ビーム経路の輝度および/または焦点深度が調整可能であってもよい。さらに、開口絞りによる観察ビーム経路の選択は、左側および右側ステレオチャネルを選択することによって立体画像を生成することが可能である。
【0012】
顕微鏡システムは、3つ以上の可動ズーム構成要素を含んでもよい。可動ズーム構成要素の少なくとも1つまたは各々は、レンズ、複合素子またはミラーからなってもよい。可動ズーム構成要素の少なくとも1つまたは各々は、レンズ、複合素子および/またはミラーの群を含んでもよい。
【0013】
ズーム系の可動ズーム構成要素は、光軸に沿って可動であるように設計されてもよい。ズーム系の構成は、光軸に沿った可動ズーム構成要素の少なくとも1つまたはすべての移動の結果、顕微鏡システムの倍率の変化がもたらされるようになされてもよい。ズーム系は、2つの可動ズーム構成要素および1つ以上の定置ズーム構成要素からなってもよい。換言すると、顕微鏡システムの可動ズーム構成要素の数は2つであってもよい。
【0014】
ズーム系は1つ以上のアクチュエータを含んでもよく、それらは、可動ズーム構成要素に取付けられ、顕微鏡システムのコントローラと信号通信状態で接続される。コントローラの構成は、コントローラからアクチュエータに信号を送信することによって顕微鏡システムの倍率が調整可能であるようになされてもよい。
【0015】
少なくとも2つの可動ズーム構成要素を移動させることによって、顕微鏡システムの倍率が、ある倍率範囲にわたって連続的に調整可能であってもよい。ズーム系は、たとえば、少なくとも4:1(つまり4x)、少なくとも5:1(つまり5x)、または少なくとも6:1(つまり6x)のズーム比を有してもよい。ズーム比は10:1(つまり10x)未満であってもよい。
【0016】
顕微鏡システムは、デジタル顕微鏡システムとして構成されてもよい。顕微鏡システムは、顕微鏡システムの像面に配置され、像面において生成される画像を得るよう構成される画像センサを含む画像捕捉システムを含んでもよい。画像センサはCCD画像センサであってもよい。加えて、または代替的に、画像捕捉装置は、1CCDセンサ、1CMOSセンサ、および/または3CCD画像センサなどのような画像センサを含んでもよい。
【0017】
顕微鏡システムは、検査中の対象物の画像の群を得るよう構成されてもよい。画像の群の画像の各々に対して、対応の観察ビーム経路を開口絞りによって選択してもよい。画像の群の画像を得るために選択される観察ビーム経路は互いと異なっていてもよい。顕微鏡システムは、立体画像が画像の群に依存して生成されるように構成されてもよい。立体画像は左半分および右半分の画像を含んでもよい。画像の群は連続的に得られてもよい。「連続的に」という表現は、画像の群のうちの第1の画像が得られた後に画像の群の第2の画像が得られることを意味してもよい。第1の画像と第2の画像との間において、さらなる画像が得られてもよい。さらに、個々の画像からなる群のうちの複数の画像が、同じ観察ビーム経路で得られることも考えられる。たとえば、同じ観察ビーム経路で得られる画像を平均して、画像化アーチファクトを低減してもよい。
【0018】
開口絞りはコントローラと信号通信状態で接続されてもよく、コントローラは、観察ビーム経路を選択するために開口絞りに制御信号を送信するよう構成される。
【0019】
開口絞りは、不透明領域および光透過領域を含んでもよく、それらは、両方とも、光軸に対して垂直に向き付けられ、ビーム経路において、光透過領域に入射する光線の一部が開口絞りを通過するように位置する。これにより、光透過領域は開口を形成してもよい。ある形状の光透過領域が構成可能であってもよい。開口絞りの、その形状の光透過領域を設定することにより、観察ビーム経路が選択可能であってもよい。顕微鏡システムは、たとえば、その形状の光透過領域を設定することによって、観察ビーム経路を選択するよう開口絞りに制御信号を送信するよう構成されるコントローラを含んでもよい。さらに、開口絞りに入射するすべての光線を通過させることによって1つの観察ビーム経路を選択することも考えられる。
【0020】
開口絞りは、定置配置されてもよい。代替的に、開口絞りは、光軸に沿って可動に配置されてもよい。顕微鏡システムは、開口絞りに取付けられ顕微鏡システムのコントローラと信号通信状態で接続されるアクチュエータを含んでもよい。可動開口絞りの移動は、コントローラからアクチュエータに送信される信号によって制御可能であってもよい。
【0021】
「ひとみ」という語は、ここにおいては、物面における異なる位置から発出する重心光線が交差する位置として規定される。顕微鏡システムの光学素子の設計および収差によって、ひとみは複数の異なる点を含んでもよい。したがって、重心光線が交差する位置は1つの点ではなく、延長された領域を表わしてもよい。
【0022】
「重心光線」という語は、ここにおいては、物面におけるある点から発出し顕微鏡システムを物面から像面に横断するすべての光の、エネルギ重み付けされた平均として規定されてもよい。像面において、画像は、画像センサによって検出されるか、または観察者によって接眼レンズで観察される。物面において同じ点から発出する光線は、同じエネルギで重み付けされてもよい。したがって、像面における対応の点に結像される、物面における各点に対して、重心光線を割当ててもよい。重心光線は、顕微鏡システムを、物面におけるある点から像面における対応の点に横断する。
【0023】
ひとみの位置を決める重心光線を判断する際には、開口絞りはどのような光線も遮断しないよう仮定される。換言すると、重心光線を判断する際には、開口絞りを無視して顕微鏡システムを横断する光線のエネルギ重み付けされた平均を計算する。
【0024】
開口絞りは、光軸上におけるひとみの位置に近い位置に配置されてもよい。この場合においては、口径食または非対称の画像クロッピングは生じない。
【0025】
開口絞りは、光軸上のひとみの位置に正確に位置しなくてもよく、この位置からわずかに逸れていてもよい。これは、画像に対して大きな影響を引起さない限り、受入れ可能である。その影響が大きくないかもしれないのは、それが観察者によって気掛かりなものであると認められないとき、および/またはそれが、画像に適用される画像処理ルーチンの結果に致命的な影響を有さないときである。したがって、開口絞りは、ひとみの位置または領域を取囲む開口絞り範囲内に配置されてもよい。
【0026】
換言すると、開口絞り範囲は光軸に沿ったある領域として規定されてもよく、この領域は光軸上のひとみの位置を取囲み、開口絞り範囲内に配置される開口絞りは、依然として、受入れ可能な画像を生じさせる。
【0027】
開口絞り範囲は、光軸に沿って測定した顕微鏡システムの全長の半分より小さくてもよい。特に、開口絞り範囲は、顕微鏡システムの全長の5分の1未満、または10分の1未満、または100分の1未満、または1000分の1未満であってもよい。
【0028】
さらに、顕微鏡システムの構成は、ひとみがすべての倍率に対してある一定の、または実質的に一定の位置にあるようになされてもよい。この場合、開口絞りは、ひとみの位置に、または実質的にひとみの位置に配置されてもよい。この場合、開口絞り範囲は、0の長さ、または実質的に0の長さを有してもよい。
【0029】
ある実施例に従うと、顕微鏡システムは、少なくとも、連続的に得られる物体の画像の群からその物体の空間情報を得るためのデジタル顕微鏡システムとして構成され、開口絞りは、さらに、画像の群の各画像毎に、異なるビーム経路の1つが選択可能であり、画像の群のうちの少なくとも2つの画像の観察ビーム経路が互いと異なるように構成される。開口絞りは、シャッタとしても動作するよう構成されてもよい。
【0030】
ある実施例に従うと、顕微鏡システムは、光軸に沿って測定したひとみ範囲が2つの可動ズーム構成要素のレンズ頂点の位置の最大距離より小さい長さを有するように構成される。
【0031】
レンズの頂点の位置の最大距離は、光軸に沿って測定してもよい。可動ズーム構成要素のレンズの頂点は、ズーム系の倍率によって、光軸上の異なる位置を有してもよい。最大距離は、すべての倍率の位置によって判断される。したがって、最大距離を判断するために、2つの可動ズーム構成要素に対する異なる倍率のレンズ頂点の位置を考慮してもよい。たとえば、最大距離は、第1の倍率における第1の可動ズームの頂点位置、および第1の倍率とは異なる第2の倍率における第2の可動ズーム構成要素の位置から計算されてもよい。換言すると、最大距離は、開口絞りからの第1の可動ズーム構成要素のレンズ頂点の最大距離、および開口絞りからの第2の可動ズーム構成要素のレンズ頂点の最大距離によって、計算される。可動ズーム構成要素が2つ以上のレンズ頂点を有する場合には、最大距離は、すべてのレンズ頂点のうち、最も大きい距離を生じさせるレンズ頂点から測定される。
【0032】
可動ズーム構成要素のレンズの頂点の位置の最大距離は、たとえば、80mm未満、または50mm未満、または40mm未満であってもよい。最大距離は、30〜80mmの範囲内、30〜50mmの範囲内,または30〜40mmの範囲内であってもよい。
【0033】
光軸上のひとみの位置は、光軸に沿って、特に、顕微鏡システムの倍率の変動によって引起されて、変動してもよい。ひとみの位置は、顕微鏡システムの作動距離の変動によって変動してもよい。
【0034】
顕微鏡システムのひとみ範囲は、顕微鏡システムのすべての倍率のひとみ位置の和を表わす、光軸に沿った範囲として規定されてもよい。ひとみ範囲は、加えて、顕微鏡システムのすべての作動距離のひとみ位置の和であってもよい。換言すると、調整可能な全範囲において顕微鏡システムの倍率および/または作動距離を調整することは、ひとみ範囲を規定するひとみの位置または領域の変動に至る。短いひとみ範囲は、したがって、ひとみ範囲が倍率および/または作動距離の調整によってほんのわずかに変動することを意味してもよい。
【0035】
短いひとみ範囲は、すべての倍率に対して開口絞りがひとみの位置近くに配置されるように開口絞りを配置することを可能にする。それにより、開口絞りがひとみ位置に正確に位置しないことによって生ずる画像中のアーチファクトが低減される。
【0036】
ある実施例に従うと、ひとみ範囲は、光軸に沿って測定して、2つの可動ズーム構成要素のレンズ頂点の位置の最大距離の2分の1未満、5分の1未満、10分の1未満、または100分の1未満の長さを有してもよい。
【0037】
ある実施例に従うと、顕微鏡システムは、可動合焦構成要素を含む対物側合焦系をさらに含み、顕微鏡システムは、可動合焦構成要素を光軸に沿って移動させることによって顕微鏡システムの作動距離が調整可能であるよう構成される。
【0038】
作動距離は、光軸に沿った、物面と顕微鏡システムのすべての屈折面のうち物面に最も近く位置する屈折面との間の距離として規定されてもよい。可動合焦構成要素を移動させることにより、顕微鏡システムの作動距離は、少なくとも50mm〜150mmの範囲にわたって、または少なくとも100mm〜300mmの範囲にわたって、または少なくとも200mm〜500mmの範囲にわたって調整可能であってもよい。
【0039】
対物側合焦系は、光軸に沿って、物面とズーム系との間において配置されてもよい。可動合焦構成要素は、レンズ、複合素子、および/またはミラーからなってもよい。代替的に、可動合焦構成要素は、レンズの群、複合素子の群、および/またはミラーの群を含んでもよい。
【0040】
対物側合焦系は、1つ以上のアクチュエータを含んでもよく、それらは、可動合焦構成要素に取付けられ、顕微鏡システムのコントローラと信号通信状態で接続される。コントローラの構成は、コントローラの信号をアクチュエータに送信することによって顕微鏡システムの作動距離が調整可能であるようになされてもよい。
【0041】
したがって、対物側合焦系を有する顕微鏡システムを提供することにより、作動距離が調整可能である。特に、これにより、医師は、顕微鏡システムの固定された作動距離による制約を受けることなく、顕微鏡システムを患者に対して位置決めすることができる。これにより、顕微鏡システムは、取扱いがより容易になり、位置決めおよび調整の多用性が改善される。
【0042】
ある実施例に従うと、顕微鏡システムは、すべての作動距離に対して開口絞りがひとみの位置を取囲む開口絞り範囲内に位置するように構成される。
【0043】
ある実施例に従うと、2つの可動ズーム構成要素の少なくとも1つまたは2つの可動ズーム構成要素の各々は負の屈折力を有する。
【0044】
負の屈折力は、負の球状屈折力であってもよい。
ある実施例に従うと、2つの可動ズーム構成要素は互いに対して対称であるかまたは実質的に対称である。
【0045】
対称という語は、可動ズーム構成要素の屈折面が、光軸に垂直に配置されかつ2つの可動ズーム構成要素間に位置する面に関して対称であることを意味してもよい。
【0046】
ある実施例に従うと、ズーム系は、さらに、光軸上において2つの可動ズーム構成要素間に配置される2つの定置ズーム構成要素からなる第1の群を含む。
【0047】
開口絞りは、第1の群の定置ズーム構成要素間に配置されてもよい。
ある実施例に従うと、第1の群の定置ズーム構成要素の少なくとも1つまたは両方は、正の屈折力を有してもよい。あるさらなる実施例に従うと、第1の群の定置ズーム構成要素は、対称または実質的に対称であってもよい。あるさらなる実施例に従うと、開口絞りは、光軸上において、第1の群のズーム構成要素間に配置される。定置ズーム構成要素は、光軸に沿って非可動であるよう構成されてもよい。対称という語は、第1の群の定置ズーム構成要素の屈折面が、光軸に対して垂直に配置されかつ2つの定置ズーム構成要素間に位置する面に関して対称であることを意味してもよい。
【0048】
第1の群の2つの定置ズーム構成要素は第1の屈折面を含んでもよく、物面から発出する光線は、まず、開口絞りを通過した後この第1の屈折面を横断する。加えて、または代替的に、第1の群のこれら2つの定置ズーム構成要素は第2の屈折面を含んでもよく、第2の屈折面は、物面から発出する光線によって開口絞りに入射する前または開口絞りを横断する前に横断される最後の屈折面である。
【0049】
換言すれば、光軸上において、第1の群の定置ズーム構成要素の屈折面間において、開口絞りを封じ込めるようなさらなる屈折面は配置されない。
【0050】
ある代替的実施例においては、2つの可動ズーム構成要素は、物面から来る光線によって開口絞りを通過した後まず横断される第1の屈折面を含む。さらに、2つの可動ズーム構成要素は、物面から来る光線によって開口絞りに入る前に最後に横断される最後の屈折面を含む。
【0051】
換言すれば、この実施例に従うと、光軸上において、2つの可動ズーム構成要素の屈折面間において、開口絞りを封じ込めるようなさらなる屈折面は配置されない。
【0052】
あるさらなる実施例に従うと、ズーム系は、さらに、光軸上に配置される2つの定置ズーム構成要素からなる第2の群を含み、可動ズーム構成要素は第2の群の2つの定置ズーム構成要素間に配される。
【0053】
可動ズーム構成要素と第2の群のズーム構成要素との間には、ズーム系のさらなる構成要素が配置されることが考えられる。
【0054】
あるさらなる実施例に従うと、第2の群の定置ズーム構成要素の1つまたは各々は正の屈折力を有する。
【0055】
正の屈折力は、球状の正の屈折力であってもよい。
あるさらなる実施例に従うと、第2の群の定置ズーム構成要素は互いに対して対称であるかまたは実質的に対称である。
【0056】
ある実施例に従うと、開口絞りは、観察ビーム経路が開口絞りの可変開口によって選択可能であるように構成される。
【0057】
特に、開口絞りは、開口の形状、サイズおよび位置の1つまたはそれらの組合せを適合するよう構成されてもよい。したがって、開口絞りは可変開口を含む。開口絞りの可変開口は、光軸に対して垂直に、または実質的に垂直に配置されてもよい。
【0058】
したがって、開口絞りは可変開口を有するため、顕微鏡システムの観察ビーム経路を、対象物、倍率、対象物に対する顕微鏡システムの位置、および/または対象物に対する観察者の位置に対して適合させることが可能である。さらに、それは、立体画像の左半分の画像および右半分の画像が得られるように、2つの画像間で観察ビーム経路を変動させることを可能にする。
【0059】
ある実施例に従うと、開口絞りは、すべての光線を遮断するよう構成可能であってもよい。開口絞りはシャッタ素子を含んでもよい。したがって、開口絞りは、シャッタとしても動作するよう構成されてもよい。
【0060】
あるさらなる実施例に従うと、開口絞りは1つ以上のエリア要素を含み、1つ以上のエリア要素の各々は開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能であるよう構成される。
【0061】
エリア要素の各々は、開いた状態と閉じた状態との間において切換え可能であってもよい。エリア要素はシャッタ素子であってもよい。エリア要素の1つ以上は残りのエリア要素から独立して切換え可能であってもよい。換言すれば、開口絞りのエリア要素は、エリア要素の第1の部分が開いた状態でありかつエリア要素の第2の部分が閉じた状態であるように切換え可能であってもよい。第1および第2の部分は、1つ以上のエリア要素からなってもよい。開口絞りは、エリア要素の少なくとも2つまたはすべてが開いた状態と閉じた状態との間において同時に切換え可能であるように構成されてもよい。
【0062】
エリア要素は、光軸に対して垂直に向き付けられる開口絞りの共通面に配置されてもよい。エリア要素は重なっていても、重なっていなくてもよい。開口絞りは、開口絞りの少なくとも2つの異なる開口が選択可能であるように構成されてもよい。したがって、開口絞りは可変開口を与えてもよい。少なくとも2つの異なる開口の各々によって、観察ビーム経路が選択可能であってもよい。選択された観察ビーム経路は互いと異なっていてもよい。エリア要素の1つ以上を開いた状態にあるように選択することによって、開口およびしたがって観察ビーム経路が選択可能である。残りのエリア要素は閉じた状態にあってもよい。
【0063】
ある実施例に従うと、開口絞りは、開口絞りの開口が光軸の周りを回転可能であるように構成される。
【0064】
開口絞りは、回転可能に取付けられる構成要素を含んでもよく、この回転可能に取付けられる構成要素を回転させることによって、開口絞りの開口を変動させる。したがって、開口絞りは可変開口を含む。たとえば、回転可能に取付けられる構成要素は、1つ以上の開口を有する回転可能なディスクであってもよい。
【0065】
例として、開口絞りは、光軸の周りに回転可能に取付けられる構成要素を含むよう構成されてもよい。これにより、開口の位置は、光軸の周りを回転可能であってもよい。加えて、または代替的に、開口絞りのエリア要素の開閉を介して、開口絞りの可変開口は回転可能であってもよいことが考えられる。
【0066】
例として、可変開口は、+/−45°、または+/−90°、または+/−135°および/または180°回転可能であってもよい。加えて、または代替的に、可変開口は、光軸の周りを連続的に回転可能であってもよい。
【0067】
あるさらなる実施例に従うと、開口絞りは、機械的なシャッタ素子、ポリマーシャッタ素子およびLCDマトリックスのうちの1つまたはそれらの組合せを含む。
【0068】
例として、機械的シャッタ素子は、1つまたは複数のフラップおよび/またはブレードを含んでもよい。フラップまたはブレードは旋回可能に取付けられてもよい。フラップおよび/またはブレードは、閉じた位置と開いた位置との間で切換え可能であるように構成されてもよい。フラップまたはブレードの表面の少なくとも一部は、開口絞りの、あるエリア要素に対応してもよい。開口絞りは、複数のフラップおよび/またはブレードを含んでもよく、フラップおよび/またはブレードの各々またはある群は、開いた状態と閉じた状態との間において切換え可能である。
【0069】
ポリマーシャッタ素子は、ECポリマーシャッタ素子であってもよい。ポリマーシャッタ素子は、ポリマーシャッタ素子の複数の部分の各々が入射光を散乱させるよう個々に制御可能であるよう構成されてもよい。外部の電界を印加することによって、ポリマーシャッタ素子内の結晶を、ポリマーシャッタ素子が入射光線に関して不透明であるかまたは実質的に不透明であるように整列させる。閉じた状態においては、ポリマーシャッタ素子は、着色状態にあってもよく、つまり、予め定められた波長範囲に対して不透明であってもよい。
【0070】
電界をオフに切換えると、ポリマーシャッタ素子は、光を透過するよう、または実質的に光を透過するよう切換えられる。ポリマーシャッタ素子は、1ミリ秒未満の切換え時間を有してもよい。さらに、ポリマーシャッタ素子は、透明な面平行プレートの対と、面平行プレート間に配置される能動層とを含んでもよい。能動層は自由な液体分子を含んでもよく、それらは、従来の液晶の存在下において光重合によって得られる。ポリマーシャッタ素子は、さらに、電界を形成するよう構成され光を透過するよう構成されてもよい電極を含んでもよい。
【0071】
ここに記載される実施例は、そのようなポリマーシャッタ素子に限定されるものではない。顕微鏡システムは他の設計のポリマーシャッタを含むことが考えられる。
【0072】
ポリマーシャッタ素子は、個々の画像を比較的短い露出時間で得ることを可能にする。さらに、ポリマーシャッタ素子は、光軸の方向においてサイズが比較的コンパクトである。したがって、ポリマーシャッタ素子は、可動ズーム構成要素の移動に対して必要な空間をほんのわずかにしか制限しない。
【0073】
あるさらなる実施例に従うと、複数の異なる観察ビーム経路は左側および右側ステレオチャネルを含む。
【0074】
左側ステレオチャネルは観察ビーム経路として規定されてもよく、立体画像の左半分の画像は、左側ステレオチャネルが選択されたときに得られてもよい。したがって、立体画像の右半分の画像は、右側ステレオチャネルが選択されたときに得られてもよい。さらに、右側ステレオチャネルは、顕微鏡システムの観察ビーム経路の1つであってもよい。第1の画像は左側ステレオチャネルで得られてもよく、第2の画像は右側ステレオチャネルで得られてもよい。立体画像の左半分の画像は第1の画像によって生成されてもよく、立体画像の右半分の画像は第2の画像によって生成されてもよい。
【0075】
左側および右側ステレオチャネルは対称である必要はない。たとえば、左側ステレオチャネルを与えるための開口のサイズは、右側ステレオチャネルを与えるための開口のサイズと異なっていてもよい。
【0076】
立体画像の左および右半分の画像は、同じ対象物の2つのパースペクティブを表してもよい。これらのパースペクティブは、観察者によって左半分の画像が左目で観察されかつ右半分の画像が右目で観察されるときに観察者に対して物体の三次元的印象を与えるようなものであってもよい。
【0077】
顕微鏡システムは、さらに、画像処理ユニットを含み、それは、立体的な半分の画像を得るために左側および/または右側ステレオチャネルの個々の画像を処理するよう構成される。
【0078】
例として、左側ステレオチャネルは、開口絞りの第1のエリア要素またはエリア要素の第1の群の開口部によって選択されてもよい。したがって、右側ステレオチャネルは、第2のエリア要素またはエリア要素の第2の群の開口部によって選択されてもよい。第1の群のエリア要素と第2の群のエリア要素とは互いに異なっていてもよい。第1の群および第2の群は、共通のエリア要素を含んでもよく、または共通のエリア要素を含まなくてもよい。
【0079】
さらに、回転可能な構成要素を光軸の周りにおいて回転させることによって、顕微鏡システムは、左側ステレオチャネルから右側ステレオチャネルへ、または右側ステレオチャネルから左側ステレオチャネルへ切換えられることが考えられる。回転可能に取付けられる構成要素は開口を含んでもよい。例として、開口は、左側ステレオチャネルと右側ステレオチャネルとの間で切換わるよう、光軸の周りを180°回転させられてもよい。
【0080】
さらに、左側ステレオチャネルと右側ステレオチャネルとの間における切換えのために開口絞りの可変開口を回転させることにより、物面における左側ステレオチャネルの観察ビーム経路の軸の向き、および物面における右側ステレオチャネルの観察ビーム経路の軸の向きが調整可能であってもよい。
【0081】
したがって、観察ビーム経路の軸の向きを、対象物に対する顕微鏡システムの位置、および/または対象物に対する観察者の位置に適合することが可能である。さらに、したがって、物面に関して異なる位置および/または向きを有する立体的な半分の画像を複数の観察者に対して生成することが可能である。
【0082】
可変開口の回転は、ステレオチャネルの画像と同期して回転させられてもよい。したがって、立体的な半分の画像を、得られた画像によって生成することが可能であり、立体的な半分の画像は、左側および右側の立体パースペクティブを表わし、人の観察者によって見られたときに三次元の印象を生み出す。
【0083】
あるさらなる実施例に従うと、複数の観察ビーム経路の各々は、16未満、12未満、10未満、8未満、または6未満のfナンバーを有する。
【0084】
fナンバーは、対物側焦点距離を観察ビーム経路の入射ひとみの直径で除算したものとして規定されてもよい。対物側焦点距離は、対物側合焦系の焦点距離であってもよい。
【0085】
より小さなfナンバーは、顕微鏡システムの大きなレンズ速度に対応する。大きなレンズ速度は、短い露出時間で画像を生成することを可能にする。したがって、画像の画像鮮明度が増大されてもよい。さらに、小さなfナンバーは、高い空間および時間分解能を有する映像シーケンスを生成することを可能にする。fナンバーは、右側および左側ステレオチャネルのfナンバーであってもよい。
【0086】
あるさらなる実施例に従うと、顕微鏡システムの全長は、200mm未満、150mm未満、120mm未満、または100mm未満である。
【0087】
顕微鏡システムの全長は、光軸に沿った、物面に最も近く位置する顕微鏡システムの屈折面と像面との間の長さとして規定されてもよい。物面に最も近く位置する屈折面は、顕微鏡システムのすべての屈折面のうち、物面から発出する光線によって最初に横断される屈折面である。全長は、80mmより大きくてもよく、または100mmより大きくてもよい。
【0088】
あるさらなる実施例に従うと、顕微鏡システムのズーム比は、少なくとも4x、少なくとも5x、または少なくとも6xである。
【0089】
大きなズーム比を有する顕微鏡システムを提供することによって、顕微鏡システムは多用途となる。特に、顕微鏡システムの倍率は、手術医によって行なわれる特定の手術に適合されてもよい。たとえば、手術医が、大きな視野を与える第1の動作モードと、高い倍率を与える第2の動作モードとの間において選択を行なうことが可能であり、ズーム比は、15x未満、または20x未満、または30x未満であってもよい。
【0090】
あるさらなる実施例に従うと、顕微鏡システムは像側合焦系をさらに含み、像側合焦系の焦点距離は、光軸に沿った、ズーム系に最も近く位置する像側合焦系の屈折面と像面との間の距離よりも大きい。
【0091】
像側合焦系は、光軸上において、ズーム系と像面との間に配置されてもよい。
例として、像側合焦系の焦点距離は、49mm以上;または50mm以上であってもよい。像側合焦系の焦点距離は、70mm未満または80mm未満であってもよい。光軸に沿った、ズーム系に最も近く配置される像側合焦系の屈折面と像面との間の距離は、たとえば、50mm未満、または45mm未満、または40.11mm未満であってもよい。
【0092】
したがって、全長が短い顕微鏡システムが提供され、なぜならば、ズーム系と像面との間の距離は、像側合焦系の設計の結果、比較的短いためである。
【0093】
あるさらなる実施例に従うと、開口絞りは、開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能である。あるさらなる実施例に従うと、開口絞りの開いている時間は、500ms未満、または200ms未満、または100ms未満である。
【0094】
短い露出時間を伴う開口絞りを有する顕微鏡システムを提供することによって、高い空間分解能を有する鮮明な画像を得ることが可能である。さらに、短い露出時間は、高い時間分解能を有する映像シーケンスを得ることを可能にする。したがって、手術医が実時間で自分の手の動きを観察することが可能である。開いている時間は、少なくとも50msまたは少なくとも100msであってもよい。
【0095】
ある実施例に従うと、開口絞りは、開口、特に可変開口またはシャッタを含み、開口およびシャッタは、両方とも、顕微鏡システムの開口絞り範囲内に配置される。
【0096】
開口はシャッタの直前または直後に配置されてもよい。換言すると、シャッタと開口との間には、さらなる屈折面または開口は存在しない。例として、開口絞りは第1および第2の開口を含んでもよく、第1の開口は左側ステレオチャネルを規定するよう構成され、第2の開口は右側ステレオチャネルを規定するよう構成される。シャッタは、光を第1の開口または第2の開口を通過させるよう構成されてもよい。
【0097】
あるさらなる実施例に従うと、ズーム系は、無限焦点、実質的に無限焦点、対称および実質的に対称の少なくとも1つである。
【0098】
無限焦点ズーム系は、顕微鏡システムの対物側合焦系および/または像側合焦系などのような他の構成要素を適合する必要なく、ズーム系の倍率を変動させることを可能にする。したがって、無限焦点ズーム系を提供することによって、比較的単純な設計を有しサイズがコンパクトである顕微鏡システムが得られる。
【0099】
対称的なズーム系をズーム系として規定してもよく、ズーム系の対称面に関して第1の側に位置するズーム系の屈折面は、該対称面に関して他方の側に位置するズーム系の屈折面と対称的に同一であるかまたは実質的に対称的に同一である。換言すれば、ズーム系の屈折面は、顕微鏡システムの光軸に垂直に向き付けられる対称面に関して鏡映または実質的に鏡映である。光軸上の屈折面の位置は、対称面に関して鏡映である必要はない。特に、可変ズーム構成要素の位置は、対称面に関して対称である必要はない。むしろ、可動ズーム構成要素の位置は、設定される倍率に依存してもよい。対称面と光軸との間における交差点または実質的に交差点に、ひとみが位置してもよい。
【0100】
したがって、対称的なズーム系を提供することによって、製造するのに費用効率のよい顕微鏡システムが得られてもよく、なぜならば、レンズおよび/または複合素子などのような複数の屈折面が、同じ製造ステップで製造されてもよいからである。さらに、対称的なズーム系を提供することによって、ひとみの位置が、ズーム系の真ん中または真ん中近くに位置する。したがって、全長が短く、比較的小さなレンズ直径を有し、それでいて十分に高いズーム率を有する、コンパクトなズーム系が得られる。
【0101】
この発明の前述および他の有利な特徴は、添付の図面を参照するこの発明の例示的実施例の以下の詳細な記載から、より明らかとなる。この発明のすべての可能な実施例が必ずしもここに特定される利点の各々およびすべてまたは任意のものを呈するというわけではないことが注記される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1a】第1の例示的実施例に従う顕微鏡システムを概略的に示す図である。
【図1b】第1の例示的実施例に従う顕微鏡システムにおける重心光線を含む2つの光束のビーム経路を概略的に示す図である。
【図1c】第2の例示的実施例に従う顕微鏡システムを概略的に示す図である。
【図2a】第1の例示的実施例に従う顕微鏡システムにおける選択された左側ステレオチャネルを示す図である。
【図2b】第1の例示的実施例に従う顕微鏡システムにおける選択された右側ステレオチャネルを示す図である。
【図3】異なる倍率設定における、第1の例示的実施例に従う顕微鏡システムを概略的に示す図である。
【図4a】開口絞りの例示的実施例を概略的に示す図である。
【図4b】開口絞りの例示的実施例を概略的に示す図である。
【図4c】開口絞りの例示的実施例を概略的に示す図である。
【図5】ある例示的実施例に従う、開口絞り、開口絞りを制御するためのコントローラ、および画像獲得システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
例示的実施例の詳細な記載
以下に記載される例示的実施例においては、機能および構造において同様の構成要素は、可能な限り、同様の参照番号によって指定される。したがって、特定の実施例の個々の構成要素の特徴を理解するために、この発明の他の実施例および概要の記載が参照されるべきである。
【0104】
図1aは、第1の例示的実施例に従う顕微鏡システム1を概略的に示す。顕微鏡システム1は、対物側合焦光学系10、ズーム系20、および像側合焦光学系30を含む。物面40上の点から発出する光線が、像面41における点上に合焦される。対物側合焦光学系10は、光軸OA上においてズーム系20と物面40との間に配置される。像側合焦系は、光軸上においてズーム系20と像面41との間に配置される。
【0105】
説明を簡単にするため、物面40と対物側合焦光学系10との間の距離は、尺度からはずして示される。
【0106】
顕微鏡システム1は、さらに、画像捕捉システム(以下において図4を参照して論ずる)を含む。画像捕捉システムは、像面41において生成される像を捕捉するよう構成される。画像捕捉システムは画像センサを含んでもよく、それは像面41に配置されてもよい。例として、画像センサは、1CCD、1CMOSおよび/または3CCD画像センサを含んでもよい。3CCD画像センサは3つのCCDセンサを含み、それらは、三色性ビームスプリッタプリズムアセンブリに配置される。
【0107】
ズーム系20は、2つの可動ズーム構成要素21および22を含み、それらは、図1において二重矢印95および96によって示されるように、光軸OAに沿って可動であるよう構成される。アクチュエータ92、93は、可動ズーム構成要素21、22の各々に取付けられる。アクチュエータは、顕微鏡システム1のコントローラ70と信号通信状態で接続される。コントローラ70は、顕微鏡システム1の倍率がコントローラ70からアクチュエータ92および93に送信される制御信号によって調整可能であるように設計される。
【0108】
さらに、ズーム系20は、4つの定置構成要素23、24、25、26を含む。定置ズーム構成要素の各々は、正の屈折力を有してもよい。顕微鏡システム1の倍率は、可動ズーム構成要素21、22を光軸OAに沿って移動させることにより調整可能である。顕微鏡システム1のズーム系20は6xズームである。可動ズーム構成要素の各々は、負の屈折力を有する。
【0109】
第1の定置構成要素24は第1の屈折面28を含む。物面40から発出し開口絞り60を通過した光が、まず、屈折面28を横断する。さらに、第2の定置構成要素23は最後の屈折面27を含む。物面40から発出し最後の屈折面27を通過した光線は、まず開口絞り60を横断する。
【0110】
ズーム系20の可動構成要素および定置構成要素の屈折面は、ズーム系20の対称面Sに関し対称または実質的に対称である。ここに用いられる「対称であるよう構成される」という表現は、対称面Sに関し第1の側におけるズーム構成要素の屈折面は対称面Sの他方の側におけるズーム構成要素と同一または実質的に同一であるように構成されることを意味してもよい。特に、対称面Sの両側におけるズーム構成要素の対称的に対応する屈折面は、同一または実質的に同一であるよう構成されてもよい。ズーム系の構成要素の位置は、対称面Sに関して必ずしも対称でなくてもよい。
【0111】
対物側合焦系10は可動合焦構成要素11を含み、それは、二重矢印94で示されるように、光軸OAに沿って可動であるよう構成される。可動合焦構成要素11は複合素子である。対物側合焦系10は、さらに、定置複合素子13および定置レンズ12を含む。アクチュエータ91が可動合焦構成要素11に取付けられる。コントローラ70は、アクチュエータ91と信号通信状態にて接続される。コントローラ70は、顕微鏡システム1の作動距離WDがコントローラ70からアクチュエータ91に制御信号を送信することによって調整可能であるように構成される。
【0112】
可動合焦構成要素11を光軸OAに沿って移動させることにより、顕微鏡システム1の作動距離WDが調整可能である。作動距離WDは、物面40と屈折面14との間の距離として規定されてもよい。屈折面14は、顕微鏡システム1のすべての屈折面のうち、物面に最も近く配置される屈折面である。顕微鏡システムの1の作動距離WDは、100mmから300mmの範囲にわたって調整可能である。
【0113】
顕微鏡システム1の倍率がズーム系20によって調整可能である倍率の範囲は、設定された作動距離WDに依存してもよい。たとえば、200mmの作動距離において、画像化スケール対象物−画像は0.126と0.76との間の範囲内であってもよい。さらに、500mmの対象物距離に対しては、画像化スケール対象物−画像は0.045と0.27との間の範囲内であってもよい。
【0114】
図1aにおいて、2つの重心光線101および102が示されており、それらは、顕微鏡システム1を横断する。重心光線101、102は、顕微鏡システム1のひとみPの位置において交差する。顕微鏡システム1の倍率を、可動ズーム構成要素21、22を移動させることによって変化させると、ひとみPの位置は変動してもよい。さらに、ひとみPの位置は、さらに、可動合焦構成要素11を光軸OAに沿って移動させることにより、つまり、作動距離WDを変動させたときに、変動してもよい。
【0115】
ひとみ範囲PRは、光軸OAに沿ったひとみの変位の範囲を示す。
顕微鏡システム1の開口絞り60は、定置ズーム構成要素23、24の間に配置される。開口絞り60は、顕微鏡システム1において定置状態で配置される。さらに、開口絞り60は、顕微鏡システム1のすべての調整可能な倍率およびすべての調整可能な作動距離WDに対して開口絞り60がひとみPの位置を取囲む開口絞り範囲SR内に位置するように、配置される。開口絞り60は、コントローラ70と信号通信状態にて接続される。コントローラ70は、観察ビーム経路の選択を制御するために開口絞り60に信号を送信するよう構成される。
【0116】
開口絞り60は、ひとみPを取囲む開口絞り範囲SRに配置されるため、開口絞り60によって生ずるアーチファクトは観察者によって気掛かりなものとしては認識されず、および/または画像がさらに処理される際に画像に対して致命的な影響を有しはしない。
【0117】
開口絞り60は、得られる画像の群からの各画像に対して、顕微鏡システム1の観察ビーム経路を選択するよう構成される。例として、開口絞り60は、2つの画像に対して、左側ステレオチャネルおよび右側ステレオチャネルを選択するよう構成される。左側および右側ステレオチャネルの画像は、画像捕捉システムによって捕捉される。左半分の画像は、左側ステレオチャネルで得られた画像によって生成される。右半分の画像は、右側ステレオチャネルで得られた画像によって生成される。左半分の画像および右半分の画像は、立体画像を形成する。顕微鏡システム1は、頭部に取付けられるディスプレイ(図示せず)を含んでもよい。頭部に取付けられるディスプレイは、観察者が左半分の画像を左目で、および右半分の画像を右目で観察するよう構成されてもよい。
【0118】
像側合焦系30は、光軸OA上において、ズーム系20と像面41との間に配置される。像側合焦系30は、2つの定置複合素子31、34および2つの定置レンズ32、33を含む。像側合焦系30は、さらに、屈折面35を含み、それは、像側合焦系のすべての屈折面のうちズーム系20に最も近く位置する。光軸OAに沿った、ズーム系20に最も近く位置する屈折面35と像面41との間の距離Kは、像側合焦系30の焦点距離よりも短い。したがって、短い全体長Lを有する顕微鏡システム1が提供され、なぜならば、ズーム系20と像面41との間には比較的小さな空間が要求されるのみであるからである。
【0119】
図1bは、図1aに示される顕微鏡システム1における第1および第2の光線束103、104のビーム経路1−1および1−2を示す。第1の光線束103は、物面40における第1の点OP−1から発出する。説明を簡単にするため、物面40と顕微鏡システム1との間の距離は尺度からはずれて示される。第2の光線束104は、物面40における点OP−2から発出する。開口絞り60は、すべての入射光線を通過させるよう構成される。第1の光線束103のエネルギ重み付けされた平均は、第1の重心光線101によって表現される。第2の光線束104のエネルギ重み付けされた平均は、第2の重心光線102によって表現される。第1の光線束103は、像面41における第1の像の点IP−1上に結像される。第2の光線束104は、像面41の第2の像の点IP−2上に結像される。重心光線を判断する際には、開口絞り60はどの光線も遮断しないと仮定される。換言すれば、重心光線は、開口絞り60を考慮せずに判断される。
【0120】
図1cは、顕微鏡システム1aの第2の例示的実施例を概略的に示す。顕微鏡システム1aは、物面41における点を像面41aにおける点上に結像するよう構成される。顕微鏡システム1aは、対物側合焦系10aと、ズーム系20aと、像側合焦系30aとを含む。ズーム系20aは2つの可動ズーム構成要素21a、22aを含む。顕微鏡システム1aの倍率は、可動ズーム構成要素21aを移動させることによって調整可能である。対物側合焦系10aは可動合焦構成要素11aを含む。対物側合焦系10aは、可動合焦構成要素11aを移動させることによって作動距離WDが調整可能であるように構成される。
【0121】
可動ズーム構成要素21aは最後の屈折面S19を含み、物面40aから発出し最後の屈折面S19を横断した光線は、まず、開口絞り60aを横断する。さらに、可動ズーム構成要素22aは第1の屈折面S24を含み、物面40aから発出し開口絞り60aを横断した光線は、まず、第1の屈折面S24を横断する。
【0122】
可動ズーム構成要素21a、22aは屈折面S19、S24を含む。開口絞り60aに関する各側について、それぞれ、屈折面S19および屈折面S24は、顕微鏡システム1のすべての屈折面のうち、開口絞り60aに最も近く位置する屈折面である。換言すれば、屈折面S19およびS24と開口絞り60aとの間には、屈折面は位置しない。
【0123】
表1は、顕微鏡システム1aの面S2〜S40の幾何学的および光学的パラメータをリスト化したものである。S1は、物面40の表面を示す。S41は像面41の表面を示す。表面S2〜S40は、表1にリスト化される順序で物面40aから発出する観察ビーム経路の光線によって横断される。パラメータRは、それぞれの面の曲率半径をミリメートルで示す。パラメータDは、光軸に沿った表面間の距離をミリメートルで示す。パラメータDMは、表面の、有用な自由半径または自由直径の半分を示す。さらに、レンズを形成するガラス材料はインデックスで示される。これらガラス材料の各々の屈折率の波長依存性を下に表3において示す。
【0124】
【表1】

【0125】
表面S2は、顕微鏡システム1aのすべての屈折面のうち、物面40aに最も近く位置する屈折面である。物面40aと表面S2との間には、200mmの作動距離WDがある。対物側合焦系10aは表面S2〜S9を含む。可動合焦構成要素11aは表面S7〜S9を含む。ズーム系20aは表面S10〜S19およびS24〜S33を含む。第1の可動ズーム構成要素は表面S15〜S19を含む。第2の可動ズーム構成要素は表面S24〜S28を含む。ズーム系20aは対称である。像側合焦系30aは表面S34〜S40を含む。表面S41は、像面41aの位置を示す。
【0126】
表面S34は、像側合焦系30aのすべての屈折面のうち、ズーム系20に最も近く位置する屈折面である。表面S34と像面41aとの間には、40.11mmの距離が光軸に沿ってある。合焦系30aの像側の焦点距離は30mmである。したがって、合焦系30aの像側の焦点距離は、屈折面S34と像面41aとの間の距離よりも大きい。したがって、短い全長Lを有する顕微鏡システム1aが提供される。顕微鏡システム1aの全長Lは、屈折面S2と像面41aとの間の距離である。屈折面S2は、顕微鏡システム1のすべての屈折面のうち、物面40aに最も近く位置する屈折面である。
【0127】
顕微鏡システム1aのシャッタおよび開口は、両方とも開口絞り60aを形成するものであり、表面S20〜S23を含む。
【0128】
表2は、3つの倍率設定Z1、Z2およびZ3に関して、光軸に沿ったレンズ表面S14、S19、S23、S28間の距離をミリメートルで示す。
【0129】
【表2】

【0130】
表3は、表1において挙げられるガラス材料の屈折率を示し、光の波長はnmで与えられている。
【0131】
【表3】

【0132】
図2aは顕微鏡システム1を概略的に示しており、開口絞り60は、個々の画像からなる群のうちの第1の個別の画像に対して観察ビーム経路を選択する。観察ビーム経路は、たとえば、左側ステレオチャネルである第1のステレオチャネルを表わす。換言すれば、左半分の画像は、図2aにおいて示されるステレオチャネルで得られる画像によって生成される。
【0133】
開口絞り60は第1のエリア要素61を含み、それは、開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能である。さらに、開口絞り60は第2のエリア要素62を含み、それも、開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能であるよう構成される。第1のステレオチャネルを選択するためには、第2のエリア要素62を閉じた状態に切換え、第1のエリア要素61を開いた状態に切換える。さらに、第1のエリア要素61および第2のエリア要素62は、閉じた状態に切換え可能であってもよい。これにより、開口絞り60は開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能である。換言すると、開口絞りはシャッタとしても作用する。
【0134】
光線束105、106は、物面40内において物体点OP−3およびOP−4から発出する。光線束105、106は、顕微鏡システム1を横断し、像面41における点IP−3およびIP−4上に結像される。
【0135】
図2bは顕微鏡システムを概略的に示し、開口絞り60は、個々の画像の群のうちの第2の個別の画像に対して観察ビーム経路を選択する。観察ビーム経路は、たとえば、右側ステレオチャネルである第2のステレオチャネルを表わす。光線束は、物面40内において物体点OP−3およびOP−4から発出する。光線束は、顕微鏡システム1を横断し、点IP−3およびIP−4上に結像される。第2のステレオチャネルを選択するためには、第1のエリア要素61を閉じた状態に切換え、第2のエリア要素62を開いた状態に切換える。
【0136】
図3は、顕微鏡システム1の3つのビーム経路3−1、3−2および3−3の光線束を示し、可動ズーム構成要素21、22の位置は3つのビーム経路の各々において異なっている。ビーム経路3−1、3−2およびおよび3−3は異なる倍率を表わす。可動ズーム構成要素を光軸OAに沿って移動させることにより、顕微鏡システム1の倍率は、ビーム経路3−1、3−2および3−3によって表わされる倍率間で連続的に調整可能である。
【0137】
顕微鏡システム1は、ズーム系が少なくとも4x、または少なくとも5xまたは少なくとも6xのズーム比を有するよう構成されてもよい。
【0138】
図4a〜図4cは、開口絞りの例示的実施例60b、60cおよび60dを示す。開口絞り60b、60cおよび60dは、光軸OAが図4a〜図4cの紙面に垂直に位置するよう示される。
【0139】
開口絞り60bは、第1のエリア要素61bと第2のエリア要素62bを含む。エリア要素61bおよび62bの各々は半円の形状を有する。
【0140】
第1のステレオチャネル、たとえば左側ステレオチャネルは、第1のエリア要素61bを開いた状態に切換え、および第2のエリア要素62bを閉じた状態に切換えることによって、選択可能である。第2のステレオチャネル、たとえば右側ステレオチャネルは、第2のエリア要素62bを開いた状態に切換え、および第1のエリア要素61bを閉じた状態に切換えることによって、選択可能である。
【0141】
代替的に、または代替的な動作モードにおいて、右側ステレオチャネルは、第1のエリア要素61bを開いた状態に切換え、および第2のエリア要素62bを閉じた状態に切換えることによって、選択可能であってもよく、左側ステレオチャネルは、第1のエリア要素61bを閉じた状態に切換え、および第2のエリア要素62bを閉じた状態に切換えることによって、選択可能であってもよい。これにより、ステレオチャネルの開口は180°回転される。
【0142】
開口絞り60cは、異なる例示的実施例を表わす。開口絞り60cは4つのエリア要素61c、62c、63cおよび64cを含む。これらのエリア要素は、等しいサイズの複数の扇形を形成する。開口絞り60cは、エリア要素61c、62c、63cおよび64cが開いた状態と閉じた状態との間において個々に切換え可能であるよう構成される。これにより、4つの観察ビーム経路が選択可能である。加えて、または代替的に、開口絞り60cは、2つ以上のエリア要素が開いた状態と閉じた状態との間において同時に切換え可能であるよう構成されてもよい。例として、エリア要素61cおよび62cは同時に開いた状態に切換え可能であってもよく、それによって、軸Aに関する第1のステレオチャネルの観察ビーム経路が選択可能である。したがって、軸Aに対する第2のステレオチャネルの観察ビーム経路は、エリア要素63cおよび64cを開いた状態に切換えることによって選択可能である。第1および第2のステレオチャネルは、立体画像を得るための左側および右側ステレオチャネルを表わしてもよい。
【0143】
さらに、エリア要素61cおよび64cを開いた状態に同時に切換えることによって、軸Bに関する第3のステレオチャネルの観察ビーム経路が選択可能である。したがって、エリア要素62cおよび63cを同時に開いた状態に切換えることによって、軸Bに関する第4のステレオチャネルの観察ビーム経路が選択可能である。第3および第4のステレオチャネルは、立体画像を得るための左側および右側ステレオチャネルを表現してもよい。
【0144】
したがって、開口絞り60cは、左側および右側ステレオチャネルの開口を+90°、−90°または180°回転させることを可能にする。
【0145】
さらに、顕微鏡システム1は、ステレオチャネルの開口の回転と同時に個々の画像の画像の回転が実行されるよう構成されてもよい。画像の回転は画像処理ユニットよって実行されてもよい。それにより、ステレオチャネルの開口が回転されたときであっても、観察者は依然として左半分および右半分の画像を提供され、それにより、観察者は、対象物から三次元的印象を得ることができる。
【0146】
図4cは、開口絞り60dのさらなる例示的実施例を示す。開口絞り60dは8つのエリア要素61d〜68dを含む。エリア要素61d〜68dは、等しいサイズの扇形を形成する。したがって、エリア要素61d〜68dの各々は、円の8分の1(つまりオクタント)の形状を有する。例として、エリア要素61d〜68dは、開いた状態と閉じた状態との間において個々に切換え可能である。これにより、8つの異なる観察ビーム経路が選択可能であってもよい。
【0147】
さらに、開口絞り60cは、左側および右側ステレオチャネルの開口を、+/−45°、+/−90°、+/−135°または180°回転させることを可能にする。
【0148】
図4a〜図4cに示される開口絞り60b、60cおよび60dは、それぞれの開口絞りのすべてのエリア要素を同時に開いた状態に切換えることによって、単眼画像を得ることを可能にする観察ビーム経路が選択可能であるよう構成されてもよい。これにより、顕微鏡システム1は、立体的な半分の画像よりも高い解像度を有する対象物の単眼画像を得ることができるよう構成されてもよい。
【0149】
たとえば、左側および右側ステレオチャネルを選択することによって2つの画像を得ることに加えて、大きな開口を有するさらなる画像が得られてもよい。
【0150】
単眼画像を立体的な半分の画像と数値的に組合せることによって、立体的な半分の画像の解像度を上げることが可能である。
【0151】
さらに、顕微鏡システム1は異なる動作モードで動作可能であることが考えられる。動作モードは、単眼画像化獲得モードおよび立体画像化モードを含んでもよい。単眼画像化モードで得られる個々の画像は、立体画像化モードで得られる画像よりも高い解像度を有してもよい。単眼画像化モードの観察ビーム経路は、立体画像化モードにおける開口の直径よりも大きな直径を有する開口に切換えることによって選択されてもよい。
【0152】
立体画像化モードにおいては、左側および右側の立体的な半分の画像が左側および右側ステレオチャネルで得られる。さらに、動作モードは混合画像化モードを含んでもよく、そのモードにおいては、数値的な画像処理ルーチンを適用することによって、単眼画像が立体的な半分の画像と組合せられる。これにより、より高い分解能を有する、および/またはアーチファクトが低減された、立体的な半分の画像が得られてもよい。
【0153】
これにより、多用途の顕微鏡システム1が得られ、なぜならば、手術の具体的な要件によって、顕微鏡システム1の好適な動作モードが選択可能であるからである。単眼画像化モードは、高い空間分解能を有する画像を得ることを可能にする。さらに、単眼画像化モードは、高い時間分解能を有する画像を得ることを可能にする。他方、立体画像化モードは、観察者に対して、対象物の空間的な印象を与えてもよい。
【0154】
図5は顕微鏡システム1のコントローラ70を示し、それは、画像捕捉システム80に信号通信状態で接続される。画像捕捉システム80は画像センサ81を含む。画像捕捉システム80は、たとえば、1CCD画像センサ、1CMOS画像センサ、および/または3CCD画像センサを含んでもよい。画像センサ81は、1/4″、1/3″、1/2″、3/4″または1″のサイズを有してもよい。
【0155】
コントローラ70は第1の信号線71を介して第1のエリア要素61bと接続される。さらに、コントローラは第2の信号線72を介して第2のエリア要素62bに接続される。コントローラ70は、制御信号を第1の信号線71を介して送信することにより第1のエリア要素61bを開いた状態と閉じた状態との間で切換えるよう構成される。したがって、コントローラ70は、制御信号を第2のエリア要素62bに第2の信号線72を介して送信することにより第2のエリア要素62bを開いた状態と閉じた状態との間で切換えるよう構成される。
【0156】
さらに、コントローラは、第3および第4の信号線73、74を介して画像捕捉システム80に接続される。コントローラ70は、制御信号を画像捕捉システム80に送信して第1の画像を捕捉するよう構成される。第1の画像が得られるのは、第1のエリア要素61aが開いた状態に切換えられ、第2のエリア要素62aが閉じた状態に切換えられるときである。たとえば、コントローラ70は開く時間を制御し、その時間においては、画像センサ81は第1の個別の画像に対して光強度を記録する。
【0157】
したがって、コントローラ70は、開く時間を制御するために制御信号を信号線74を介して送信するよう構成され、その時間内においては、画像センサ81は第2の画像に対する光強度を検出する。第2の個別の画像が得られるのは、第1のエリア要素61aが閉じた状態に切換えられ、第2のエリア要素62aが開いた状態に切換えられるときである。たとえば、コントローラ70は、第4の信号線74を介して、開く時間を制御する信号を送信するよう構成され、その時間内においては、画像センサ81は第2の画像に対する光強度を検出する。
【0158】
第1の個別の画像を得るための時間窓(つまり画像センサが光を検出する期間)は、第1のエリア要素61aの開いている時間(つまり第1のエリア要素61aが開いた状態に切換えられる期間)より長くてもよく、等しくてもよく、または短くてもよい。したがって、第2の個別の画像を得るための時間窓は、第2のエリア要素の開いている時間(つまり第2のエリア要素62aが開いた状態に切換えられる期間)より長くてもよく、等しくてもよく、または短くてもよい。
【0159】
この発明をそのある例示的実施例に関して記載してきたが、数多くの代替物、修正物および変形物が当業者には明らかである。したがって、ここに述べられるこの発明の例示的実施例は、例示的であるものとして意図され、如何様にも限定的には意図されない。特許請求の範囲に規定されるこの発明の精神および範囲から逸脱することなくさまざまな変更がなされてもよい。
【符号の説明】
【0160】
1 顕微鏡システム、20 ズーム系、21,22 可動ズーム構成要素、60 開口絞り、OA 光軸、P ひとみ、SR 開口絞り範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を得るための顕微鏡システムであって、
前記顕微鏡システムの倍率範囲にわたって前記顕微鏡システムの倍率を連続的に変動させるよう構成されるズーム系を含み、前記ズーム系は、前記顕微鏡システムの共通の光軸に沿って可動に配置される2つの可動ズーム構成要素を含み、前記顕微鏡システムはさらに、
前記ズーム系を横断する、前記顕微鏡システムの複数の異なる観察ビーム経路が選択可能であるように構成される開口絞りを含み、
前記開口絞りは、前記光軸に沿って見た場合、前記2つの可動ズーム構成要素間に配置され、
前記倍率範囲内の倍率のすべての値に対して、前記開口絞りは、前記光軸に沿って測定され前記顕微鏡システムのひとみ位置を取囲む開口絞り範囲内に位置する、顕微鏡システム。
【請求項2】
前記顕微鏡システムは、前記光軸に沿って測定したひとみ範囲が前記2つの可動ズーム構成要素のレンズ頂点の位置の最大距離より小さい長さを有するように構成される、請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
可動合焦構成要素を含む対物側合焦系をさらに含み、前記顕微鏡システムは、前記可動合焦構成要素を前記光軸に沿って移動させることによって前記顕微鏡システムの作動距離が調整可能であるよう構成される、請求項1または2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記2つの可動ズーム構成要素の少なくとも1つまたは前記2つの可動ズーム構成要素の各々は負の屈折力を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記2つの可動ズーム構成要素は互いに対して対称であるかまたは実質的に対称である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記ズーム系は、さらに、前記光軸上において前記2つの可動ズーム構成要素間に配置される2つの定置ズーム構成要素からなる第1の群を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記ズーム系は、さらに、前記光軸上に配置される2つの定置ズーム構成要素からなる第2の群を含み、前記可動ズーム構成要素は前記第2の群の前記2つの定置ズーム構成要素間に配される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
前記第2の群の前記定置ズーム構成要素の1つまたは各々は正の屈折力を有する、請求項7に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
前記第2の群の前記定置ズーム構成要素は互いに対して対称であるかまたは実質的に対称である、請求項7または8に記載の顕微鏡システム。
【請求項10】
前記開口絞りは、前記観察ビーム経路が前記開口絞りの可変開口によって選択可能であるように構成される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項11】
前記開口絞りは1つ以上のエリア要素を含み、前記1つ以上のエリア要素の各々は開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能であるよう構成される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
前記開口絞りは、前記開口絞りの開口が前記光軸の周りを回転可能であるように構成される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項13】
前記開口絞りは、機械的なシャッタ素子、ポリマーシャッタ素子およびLCDマトリックスのうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項14】
前記複数の異なる観察ビーム経路は左側および右側ステレオチャネルを含む、請求項1〜13のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項15】
前記複数の観察ビーム経路の各々は、16未満、12未満、10未満、8未満、または6未満のfナンバーを有する、請求項1〜14のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項16】
前記顕微鏡システムの全長は、200mm未満、150mm未満、120mm未満、または100mm未満である、請求項1〜15のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項17】
前記顕微鏡システムのズーム比は、少なくとも4x、少なくとも5x、または少なくとも6xである、請求項1〜16のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項18】
前記顕微鏡システムは像側合焦系をさらに含み、前記像側合焦系の焦点距離は、前記光軸に沿った、前記ズーム系に最も近く位置する前記像側合焦系の屈折面と像面との間の距離よりも大きい、請求項1〜17のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項19】
前記ズーム系は、無限焦点、実質的に無限焦点、対称および実質的に対称の少なくとも1つである、請求項1〜18のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項20】
前記開口絞りは開いた状態と閉じた状態との間で切換え可能である、請求項1〜19のいずれか1つに記載の顕微鏡システム。
【請求項21】
前記開口絞りの開いている時間は、500ms未満、200ms未満、または100ms未満である、請求項20に記載の顕微鏡システム。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−73586(P2012−73586A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−150090(P2011−150090)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany
【Fターム(参考)】