説明

複素係数トランスバーサルフィルタおよび周波数変換器

【課題】周波数変換器におけるイメージ抑圧比を良好にする複素係数トランスバーサルフィルタを提供する。
【解決手段】複素RF信号の実数部を生成する第1のフィルタ,および,複素RF信号の虚数部を生成する第2のフィルタは,それぞれ,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置し,入力側の駆動方式はシングルであり,出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする。シングル/バランス(Single/Balance)駆動させたとき,バランス(Balance)駆動側の端子に伝播する直達波を互いにキャンセルさせることができるため,周波数変換器におけるイメージ抑圧比を良好にすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高性能無線通信端末に使用する複素係数トランスバーサルフィルタおよびこれを用いた周波数変換器にかかり,特に,高い周波数の複素係数フィルタの実現に適した弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)フィルタを用いた複素係数トランスバーサルフィルタおよびこれを用いた周波数変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
RF信号を復調部入力に入力する周波数に周波数変換と目的の信号を選択するチャンネル選択を行う受信機のフロントエンドの構成として,RFからIF周波数に変換するヘテロダイン方式,RFからDCに変換する零IF方式(ダイレクトコンバージョン),ミキサでイメージを抑圧するイメージリジェクションミキサを用いる低IF方式がある。
【0003】
(ヘテロダイン方式)
ヘテロダイン方式はイメージ信号妨害を避けるために,IF周波数を高くすることで周波数変換前のRFで目的信号とイメージ周波数信号の差を大きくし,RFフィルタでイメージ周波数信号を抑圧している。送受信が同時に動作するフルデュープレックス型の無線機においては送信周波数信号や送信と受信のローカル信号を共通化した時の送信信号のイメージを抑圧するためと,RFフィルタでは抑圧しきれないような強力なシステム帯域外からの妨害を避けるためにIF周波数は無線通信方式毎に異なる。このため,マルチモード無線機においてはモード毎にチャンネル帯域幅が異なることと合わせて,モード毎にIF周波数が異なるIFフィルタを用意する必要が生じ,回路規模が非常に大きくなるという問題があった。
【0004】
(零IF方式)
零IF方式はIFフィルタがIC化できることから,小型化に適した方式である。しかし,DCに変換するので,周波数変換後のDCオフセットの抑圧,IM2もDC付近に発生するのでミキサにも非常に高いリニアリティが必要とされ,EVMの劣化など幾つかの問題がある。EVMの劣化は,ミキサとローカル信号の実部と虚部の信号とその処理が完全に直交しない処理の不完全性によって生じる。この対策のために,ローカル信号の出力I/出力Q間(以下,単にIQ間ともいう。)の振幅誤差と位相誤差の低減,ミキサを構成するトランジスタ間の誤差の低減などの回路技術による改善技術のほか,複素ベースバンド信号をデジタル化した後にデジタル信号処理によりIQ間の誤差を補償する数多くの技術が開発されている。
【0005】
しかし,回路技術による改善はアナログ回路の持つ不完全性のために限界があり,多値変調では符号間干渉の劣化,OFDMにおけるキャリア間干渉の劣化が生じ,MIMO方式のような限られた周波数帯域で従来方式より高速な通信を行うことを目的とする通信方式においては,この誤差改善の限界が,理論限界に対する劣化として,通信速度高速化の限界を生じることになる。
【0006】
(低IF方式)
低IF方式は周波数変換処理にイメージリジェクションミキサを用いることで,目的信号周波数に対してローカル信号周波数の反対側にある目的外周波数の信号を抑圧し,RFフィルタとIFフィルタの周波数特性に依存することなくイメージ周波数信号を抑圧する。その抑圧比はイメージ抑圧比で表され,RFフィルタの特性に依存しないことから,急峻な特性のIFフィルタが不要でIF周波数を低くできる特徴がある。IF周波数の2倍の周波数が目的周波数信号とイメージ周波数信号の周波数間隔になることから,IF周波数がチャンネル間隔に等しいとき,目的チャンネルと目的チャンネルのイメージ周波数は,目的チャンネルの次隣接チャンネルとなる。
【0007】
ダウンコンバータを使用する無線通信方式において,IF周波数の2倍離れたイメージ周波数信号に対するブロッキングなどの仕様がイメージ抑圧比以下であるときに,このダウンコンバータは無線方式の使用を満足する。IF周波数が低いことからIFフィルタはアクティブフィルタで構成することができ,IC化による小型化が容易である。また,IF周波数は無線通信方式毎に異なる周波数が要求されるわけではなく,マルチモード無線機においてIF周波数を共通化することも容易である。周波数は固定できても帯域幅は固定にできないが,gmCフィルタ等ではフィルタ特性の可変が容易であるので,複数のフィルタを用意することなくマルチモードに対応できる。
【0008】
しかし,低IF方式のイメージ抑圧比はミニマムで30dB程度しか保証されない(フィリップス社SA1920データシート,SA1921データシート)。そのため,イメージ周波数信号対するブロッキングなどの仕様が甘い無線通信方式においては実用化可能であるが,30dBを超える妨害耐性を要求する方式においては仕様を満足しなくなるので実用化できない。
【0009】
以上示したように,零IF方式や低IF方式は,ヘテロダイン方式に比べ小型化の面で優れているが,零IF方式の場合はEVMの劣化,低IF方式ではイメージ抑圧比の劣化の問題が生じている。この問題点を解決する方法の一つとして,RF複素係数トランスバーサルフィルタにより90度の位相差を得て,RF信号を複素化し,複素化したRF信号を複素ローカル信号との複素乗算により周波数変換を行うことで,イメージの抑圧およびEVMの劣化歪の抑圧を行う方式が考えられる(本件出願人により出願された特願2005−117458,特願2005−133240参照)。
【0010】
上記特願2005−117458,特願2005−133240に開示された方式について以下に説明する。RF信号を90度の位相差を持たせ複素化させる複素係数フィルタは,トランスバーサル型SAWフィルタを用いて実現できる。複素係数フィルタはSAWフィルタのほかにスイッチドキャパシタ回路,電荷領域素子等によっても実現できるが,高い周波数の複素係数フィルタの実現にはSAWフィルタが適している。
【0011】
トランスバーサル型SAWフィルタの基本原理について説明する。圧電基板上に交差幅が場所ごとに異なるすだれ状電極(Inter-digital Transducer:IDT)にインパルス電気信号が印加されると,圧電性により機械的歪みが生じ,弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)が励振され,基板の左右双方向に伝搬する。SAW信号のインパルス応答は各タップでの重み関数(交差幅)Wi,各タップからの距離xi,弾性表面波の位相速度vで決まり,その周波数伝達関数H(ω)は下記数式で与えられる。
【0012】
【数1】

【0013】
上記数式は重み関数Wiの線形結合であり,トランスバーサルフィルタの基本原理と同じである。このSAW信号は,SAWの伝搬方向に設けたもう一方のトランデューサにより,再び電気信号に変換され,所望のフィルタ特性が得られる。また,トランスバーサルフィルタはWiとxiを設計することで振幅特性と位相特性を独立に制御できる。そのため,複素係数トランスバーサルフィルタの所望の特性もトランスバーサル型SAWフィルタのWiとxiを設計することで実現できる。
【0014】
具体的には,図6に示すように,同一基板上に設けられた2つの実係数トランスバーサル型SAWフィルタで構成される。各SAWフィルタの入力トランデューサには同時に実信号を入力し,一方の出力トランデューサには実部のインパルス応答に対応した重みづけが施され,他方の出力トランデューサには虚部のインパルス応答に対応した重みづけが施される。これにより,一方の出力端子からは実部のインパルス応答が出力され,他方からは虚部のインパルス応答が出力されることになる。
【0015】
図7に,イメージ抑圧特性(負の周波数領域の減衰特性)を示す。ここで,USBは正の周波数領域での特性で,LSBは負の周波数領域での特性を示し,周波数の絶対値を取って同時に示してある。図8に示したように,IQの振幅差はほとんど零であり,図9に示したように,IQの位相差は90度となっており,負の周波数領域における抑圧比(イメージ抑圧比)は設計上40dB以上の良好な特性が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら,実際に素子を作製すると,寄生効果の影響により所望のイメージ抑圧比が得られないという問題が生じる。すなわち,複素係数トランスバーサルフィルタ入出力間の直達波(Feed Through)により,複素係数トランスバーサルフィルタを用いた低IF方式と呼ばれる周波数変換器におけるイメージ抑圧比が劣化し,また,複素係数トランスバーサルフィルタを用いた零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性が劣化してしまう問題が生じている。
【0017】
複素係数トランスバーサルフィルタの入出力間の電気容量は,トランスデューサ間の容量の他に引き回しによる配線パターン間やワイヤーパッド間によるもので構成されている。上記背景技術の構造(図6)では,入力側がシングル(Single)駆動で出力側がシングル(Single)駆動させたときのものである。かかる構造では,入力−Iチャンネル出力間容量C1による直達波D1および入力−Qチャンネル出力間容量C2による直達波D2がそれぞれ同相として出力される。それによって,直達波などの寄生成分を無視した複素係数トランスバーサルフィルタの特性がIチャンネルとQチャンネルで位相差が90度となるように設計されていても,同相に加わる直達波成分により位相差が90度からずれてしまい,所望の性能が得られない。
【0018】
図10は,イメージ抑圧特性の測定結果を示す。イメージ抑圧比の測定値は33dB程度であり,設計値と比べ10dB程度劣化してしまう。
【0019】
本発明は,上記背景技術が有する問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,実部と虚部の複素インパルスとのたたみ込み積分を行う複素係数トランスバーサルフィルタにおいて,直達波の影響を改善し,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性の良好な,新規かつ改良された複素係数トランスバーサルフィルタおよび周波数変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため,本発明の第1の観点によれば,RF信号を周波数変換する周波数変換器が提供される。本発明の周波数変換器は,入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1のフィルタと,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2のフィルタとからなる複素係数トランスバーサルフィルタと;所定の周波数を有するローカル信号を出力する局部発振器と;前記複素係数トランスバーサルフィルタと前記局部発振器とに接続され,前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素RF信号と前記局部発振器から出力される前記ローカル信号とを乗算して周波数変換する複素ミキサと;を備え,前記第1,第2のフィルタは,それぞれ,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置し,前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする。
【0021】
かかる周波数変換器によれば,複素係数トランスバーサルフィルタを構成する第1,第2のフィルタにおいて,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置している。そして,駆動方式は,入力がシングル(Single)であり,出力がバランス(Balance)である。かかる構成によれば,シングル/バランス(Single/Balance)駆動させたとき,バランス(Balance)駆動側の端子に伝播する直達波を互いにキャンセルさせることができる。このようにして,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性の良好な周波数変換器が実現できる。
【0022】
上記課題を解決するため,本発明の第2の観点によれば,RF信号を周波数変換する周波数変換器が提供される。本発明の周波数変換器は,入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1のフィルタと,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2のフィルタとからなる複素係数トランスバーサルフィルタと;所定の周波数を有するローカル信号を出力する局部発振器と;前記複素係数トランスバーサルフィルタと前記局部発振器とに接続され,前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素RF信号と前記局部発振器から出力される前記ローカル信号とを乗算して周波数変換する複素ミキサと;を備え,前記第1,第2のフィルタは,それぞれ,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,1つのトランデューサを配置し,前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする。
【0023】
かかる周波数変換器によれば,上記本発明の第1の観点にかかる周波数変換器と同様の効果を得ることが可能である。すなわち,出力側に1つのトランデューサを配置した場合でも,その駆動方式をバランス(Balance)とすることにより,入力端子に対して,出力端子(−)と出力端子(+)を対称にすることができる。従って,入出力間の容量が等しくなり,直達波がキャンセルされることから,直達波が抑圧され,所望の特性を得ることができる。このようにして,上記と同様に,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性の良好な周波数変換器が実現できる。
【0024】
上記課題を解決するため,本発明の第3の観点によれば,入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1のフィルタと,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2のフィルタと,からなる複素係数トランスバーサルフィルタが提供される。本発明の複素係数フィルタにおいて,前記第1,第2のフィルタは,それぞれ,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置し,前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする。
【0025】
かかる複素係数トランスバーサルフィルタによれば,第1,第2のフィルタにおいて,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置している。そして,駆動方式は,入力がシングル(Single)であり,出力がバランス(Balance)である。かかる構成によれば,シングル/バランス(Single/Balance)駆動させたとき,バランス(Balance)駆動側の端子に伝播する直達波を互いにキャンセルさせることができるため,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性を良好にすることが可能である。
【0026】
上記課題を解決するため,本発明の第4の観点によれば,入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1のフィルタと,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2のフィルタと,からなる複素係数トランスバーサルフィルタが提供される。本発明の複素係数フィルタにおいて,前記第1,第2のフィルタは,それぞれ,入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,1つのトランデューサを配置し,前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする。
【0027】
かかる複素係数トランスバーサルフィルタによれば,上記本発明の第3の観点にかかる複素係数フィルタと同様の効果を得ることが可能である。すなわち,出力側に1つのトランデューサを配置した場合でも,その駆動方式をバランス(Balance)とすることにより,入力端子に対して,出力端子(−)と出力端子(+)を対称にすることができる。従って,入出力間の容量が等しくなり,直達波がキャンセルされることから,直達波が抑圧され,所望の特性を得ることができる。このようにして,上記と同様に,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性を良好にすることが可能である。
【0028】
以上説明した本発明において,第1,第2のフィルタは,弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)とすることが可能である。
【発明の効果】
【0029】
以上のように,本発明によれば,シングル/バランス(Single/Balance)駆動させたとき,バランス(Balance)駆動側の端子に伝播する直達波を互いにキャンセルさせることができるため,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性の良好な複素係数トランスバーサルフィルタおよびこれを用いた周波数変換器が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら,本発明にかかる複素係数トランスバーサルフィルタおよび周波数変換器の好適な実施形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
(1)全複素周波数変換器(図1)
図1は,本実施形態にかかる全複素周波数変換器100の概略構成を示す説明図である。
全複素周波数変換器100は,図1に示したように,アンテナ111と,LNA112と,複素係数トランスバーサルフィルタ120と,全複素フィルタ130と,LPF141,145と,AGC142,145と,ADC143,146とから構成されている。なお,図1は本実施形態に必要な構成部分のみを示したものであり,その他の構成要素については図示および説明を省略する。
【0032】
LNA(Low Noise Amplifier)112は,アンテナ111から入力されたRF信号を増幅する増幅器である。複素係数トランスバーサルフィルタ120は,正の周波数または負の周波数成分を抑圧するためのフィルタである。複素係数トランスバーサルフィルタ120の詳細については,図2を参照しながらさらに後述する。
【0033】
全複素ミキサ130は,周波数変換するためのものであり,乗算器であるミキサ131132,133,134と,加算器(または減算器)135,136とから構成される。全複素ミキサ130には,ローカル信号生成器137から実数軸ローカル信号(cos)が入力され,また,ローカル信号生成器137から虚数軸ローカル信号(−sin)が入力される。全複素ミキサ130は,ローカル信号生成器137から入力された複素信号に対して周波数ゼロまたはゼロ近くの周波数となる周波数変換を行い,複素信号を出力する。
【0034】
LPF141は複素信号の高周波成分の除去を行う。そして,高周波成分が除去された複素信号は,AGC(Auto Gain Control)142およびADC(Analog/Digital
Converter)143を介して,複素ベースバンド信号の実数軸成分として出力端Iから出力される。同様に,LPF144は複素信号の高周波成分の除去を行う。そして,高周波成分が除去された複素信号は,AGC145およびADC146を介して,複素ベースバンド信号の虚数軸成分として出力端Qへ出力される。
【0035】
以上,本実施形態にかかる全複素周波数変換器100について説明した。次いで,全複素周波数変換器100の構成要素のうち,本実施形態に特徴的な構成要素である複素係数トランスバーサルフィルタ120について説明する。
【0036】
(2)複素係数トランスバーサルフィルタ(図2)
まず,複素係数トランスバーサルフィルタの原理について説明する。インパルス電気信号が印加された場合に弾性表面波として出力されるSAW信号のインパルス応答は,各電極指での重み関数(交差幅)Wi,各電極指からの距離xi,弾性表面波の位相速度vによって算出され,インパルス応答の周波数伝達関数H(ω)は,下記数式によって示される。下記数式は,重み関数Wiの線形結合であり,トランスバーサルフィルタの基本原理と同じものになる。
【0037】
【数2】

【0038】
当該周波数伝達関数H(ω)を有するトランスバーサルフィルタは,Wiとxiを設計することで振幅特性と位相特性を独立に制御することができる。そのため,トランスバーサル型SAWフィルタのWiとxiを設計することで所望の特性の複素係数トランスバーサルフィルタを実現することができる。実数軸の成分を出力する出力端Iに接続されたトランデューサ123は,実数部のインパルス応答,すなわち偶対称インパルス応答に対応した重み付けを行うため,包絡線の中心に対して偶対称となるように各電極指が設けられる。虚数軸の成分を出力する出力端Iに接続されたトランデューサ125は,虚数部のインパルス応答,すなわち奇対称インパルス応答に対応した重み付けを行うため,包絡線の中心に対して奇対称となるように各電極指が設けられる。この構成によって,実RF信号を実数部と虚数部で90°の位相差を有する複素RF信号へ変換することが可能となる。
【0039】
本実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタ120は,図2に示したように,圧電基板121と,圧電基板121上に設けられた交差幅が場所ごとに異なるトランデューサ(IDT:Inter-digital Transducer,またはすだれ状電極とも言われる。)122〜125によって構成されている。以下では説明の便宜上,入力端に接続されるトランデューサ122,123を入力側トランデューサといい,出力端に接続されるトランデューサ124,125を出力側トランデューサという。
【0040】
入力側トランデューサ122と出力側トランデューサ124は,入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する。本発明では,入力側トランデューサ122と出力側トランデューサ124とからなる部分を第1のフィルタと称する。また,入力側トランデューサ123と出力側トランデューサ125は,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する。本発明では,入力側トランデューサ123と出力側トランデューサ125とからなる部分を第2のフィルタと称する。以下,各トランデューサ122〜125の構成について説明する。
【0041】
入力端子I−1に接続される入力側トランデューサ122は,2つのトランデューサ122a,122bによって構成されていることを特徴とする。2つのトランデューサ122a,122bは,信号伝達方向に対して線対称に並べて接続されている。トランデューサ122a,122bは接地端子(グランド)I−2,I−3に接続されている。入力側トランデューサ122にインパルス電気信号が印加されると,圧電性により機械的歪みを生じ,2つのトランデューサ122a,122bに弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)126a,126bが励振され,圧電基板121の左右方向に伝搬する。
【0042】
同様に,入力端子Q−1に接続される入力側トランデューサ123は,2つのトランデューサ123a,123bによって構成されていることを特徴とする。2つのトランデューサ123a,123bは,信号伝達方向に対して線対称に並べて接続されている。トランデューサ123a,123bは接地端子Q−2,Q−3に接続されている。入力側トランデューサ123にインパルス電気信号が印加されると,圧電性により機械的歪みを生じ,2つのトランデューサ123a,123bに弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)126c,126dが励振され,圧電基板121の左右方向に伝搬する。
【0043】
出力側トランデューサ124は,2つのトランデューサ124a,124bによって構成されていることを特徴とする。2つのトランデューサ124a,124bは,同一構造であり,信号伝達方向と垂直方向に並べて接続されている。2つのトランデューサ124a,124bは,実数軸の成分を出力する出力(+)端子I−4,出力(−)端子I−5に接続され,入力側トランデューサ122からの弾性表面波126a,126bを受信できる位置に設けられる。すなわち,出力側トランデューサ124からの出力信号は,出力(+)端子I−4,出力(−)端子I−5からバランス(Balance)出力される。
【0044】
出力側トランデューサ124の上記構造は,入力端子I−1から見て,出力(+)端子I−4および出力(−)端子I−5への対称性がよい。したがって,入力−出力(+)端子間容量C1+と,入力−出力(−)端子間容量C1−の値はほぼ等しくなり,C1+とC1−による直達波はキャンセルされることになる。
【0045】
同様に,出力側トランデューサ125は,2つのトランデューサ125a,125bによって構成されていることを特徴とする。2つのトランデューサ125a,125bは,同一構造であり,信号伝達方向と垂直方向に並べて接続されている。2つのトランデューサ125a,125bは,虚数軸の成分を出力する出力(+)端子Q−4,出力(−)端子Q−5に接続され,入力側トランデューサ123からの弾性表面波126c,126dを受信できる位置に設けられる。すなわち,出力側トランデューサ125からの出力信号は,出力(+)端子Q−4,出力(−)端子Q−5からバランス(Balance)出力される。
【0046】
出力側トランデューサ125の上記構造は,入力端子Q−1から見て,出力(+)端子Q−4および出力(−)端子Q−5への対称性がよい。したがって,入力−出力(+)端子間容量C2+と,入力−出力(−)端子間容量C2−の値はほぼ等しくなり,C2+とC2−による直達波はキャンセルされることになる。
【0047】
以上の構成を採用することにより,IチャンネルとQチャンネルにおける直達波(同相信号成分)はそれぞれキャンセルされるので,IチャンネルとQチャンネルで位相差が90度からずれずに,所望の特性が得られることとなる。
【0048】
次に,複素係数トランスバーサルフィルタ120の動作について説明する。最初に,入力端に実RF信号が入力されると,入力側トランデューサ122と入力側トランデューサ123において弾性表面波が励振され,弾性表面波の基づくSAW信号が伝搬される。入力側トランデューサ122と入力側トランデューサ123とから伝搬されるSAW信号は,それぞれの弾性表面波の伝搬方向に設けられた出力側トランデューサ124と出力側トランデューサ125によって受信され,それぞれに対応するインパルス応答に基づくたたみ込み積分が行われつつ再び電気信号に変換される。
【0049】
このとき,出力側トランデューサ124では,RF信号の実数成分が出力端I−4,I−5から出力され,出力側トランデューサ125では,RF信号の虚数成分が出力端Q−4,Q−5から出力される。これにより,負の周波数を抑圧しつつ,目的信号が存在する周波数側において目的信号の周波数帯域外を高い抑圧比で抑圧するフィルタが得られる。
【0050】
(3)複素係数トランスバーサルフィルタのイメージ抑圧特性(図3)
図3は,本実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタ120のイメージ抑圧特性(負の周波数領域の減衰特性)を示す。ここで,USBは正の周波数領域での特性で,LSBは負の周波数領域での特性を示し,周波数の絶対値を取って同時に示してある。図3より明らかなように,負の周波数領域における抑圧比(イメージ抑圧比)は設計上40dB以上の良好な特性が得られた。本実施形態の構造を用いることで,直達波が抑圧され,所望の特性を得ることができる。
【0051】
(第1の実施形態の効果)
複素係数トランスバーサルフィルタの入出力間の電気容量は,トランスデューサ間の容量の他に引き回しによる配線パターン間やワイヤーパッド間によるもので構成されている。上記背景技術の構造(図6)では,入力側がシングル(Single)駆動で出力側がシングル(Single)駆動させたときのものである。かかる構造では,入力−Iチャンネル出力間容量C1による直達波D1および入力−Qチャンネル出力間容量C2による直達波D2がそれぞれ同相として出力される。それによって,直達波などの寄生成分を無視した複素係数トランスバーサルフィルタの特性がIチャンネルとQチャンネルで位相差が90度となるように設計されていても,同相に加わる直達波成分により位相差が90度からずれてしまい,所望の性能が得られない。
【0052】
この点,本実施形態の複素係数トランスバーサルフィルタ120は,図2に示したように,同一構造の2つのトランスバーサル型SAWフィルタを,線対称となるように上下に配置し,入力側は並列接続され,出力側は直列接続されている。駆動方式は,入力がシングル(Single)で出力がバランス(Balance)である。かかる構成によれば,シングル/バランス(Single/Balance)駆動させたとき,バランス(Balance)駆動側の端子に伝播する直達波を互いにキャンセルさせることができるため,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性の良好な複素係数フィルタおよびこれを用いた周波数変換器が実現できる。
【0053】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では,出力側トランスデューサ123を2分割し,2つのトランデューサ123a,123bを直列接続させた構成(出力側トランスデューサ124も同様)について説明した。本実施形態では,上記第1の実施形態の変形例として,出力側トランスデューサを2分割しない構成について説明する。
【0054】
図4は,本実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタの構成を示す説明図である。複素係数トランスバーサルフィルタ220は,図4に示したように,圧電基板221と,圧電基板221上に設けられた交差幅が場所ごとに異なるトランデューサ(IDT:Inter-digital Transducer,またはすだれ状電極とも言われる。)222〜225によって構成されている。以下では説明の便宜上,入力端に接続されるトランデューサ222,223を入力側トランデューサといい,出力端に接続されるトランデューサ224,225を出力側トランデューサという。
【0055】
入力側トランデューサ222は,2つのトランデューサ222a,222bによって構成されており,上記第1の実施形態にかかる入力側トランデューサ122と実質的に同様の構造である。同様に,入力側トランデューサ223,2つのトランデューサ223a,223bによって構成されており,上記第1の実施形態にかかる入力側トランデューサ123と実質的に同様の構造である。
【0056】
一方,出力側トランデューサ224,225は,本実施形態では,2つのトランデューサに分割せずに,1つのトランデューサによって構成されていることを特徴とする。
【0057】
出力側トランデューサ224は,実数軸の成分を出力する出力(+)端子I−4,出力(−)端子I−5に接続され,入力側トランデューサ222からの弾性表面波226a,226bを受信できる位置に設けられる。すなわち,出力側トランデューサ224からの出力信号は,出力(+)端子I−4,出力(−)端子I−5からバランス(Balance)出力される。
【0058】
同様に,出力側トランデューサ225は,2つのトランデューサ225a,225bによって構成されていることを特徴とする。2つのトランデューサ225a,225bは,虚数軸の成分を出力する出力(+)端子Q−4,出力(−)端子Q−5に接続され,入力側トランデューサ223からの弾性表面波226c,226dを受信できる位置に設けられる。すなわち,出力側トランデューサ225からの出力信号は,出力(+)端子Q−4,出力(−)端子Q−5からバランス(Balance)出力される。
【0059】
本実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタ220によれば,第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。なぜならば,入力端子に対して,出力端子(−)と出力端子(+)が対称にあれば,入出力間の容量が等しいため,第1の実施形態と同様に,直達波がキャンセルされるからである。図5は,本実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタ220のイメージ抑圧特性(負の周波数領域の減衰特性)を示す。ここで,USBは正の周波数領域での特性で,LSBは負の周波数領域での特性を示し,周波数の絶対値を取って同時に示してある。図5より明らかなように,負の周波数領域における抑圧比(イメージ抑圧比)は設計上40dB以上の良好な特性が得られた。本実施形態の構造を用いることで,直達波が抑圧され,所望の特性を得ることができる。
【0060】
(第2の実施形態の効果)
以上のように,本実施形態によれば,第1の実施形態と同様に,直達波が抑圧され,所望の特性を得ることができる。すなわち,本実施形態の複素係数トランスバーサルフィルタ220は,図4に示したように,入力側は並列接続され,出力側は直列接続されている。駆動方式は,入力がシングル(Single)で出力がバランス(Balance)である。かかる構成によれば,シングル/バランス(Single/Balance)駆動させたとき,バランス(Balance)駆動側の端子に伝播する直達波を互いにキャンセルさせることができるため,低IF方式の周波数変換器におけるイメージ抑圧比,また,零IF方式の周波数変換器におけるEVM(Error Vector Magnitude)特性の良好な複素係数フィルタおよびこれを用いた周波数変換器が実現できる。このように,本実施形態によれば,第1の実施形態と同様に,直達波が抑圧され,所望の特性を得ることができる(図5)。
【0061】
また,第1の実施形態では,従来設計に対して出力インピーダンスが変化するため,ミキサ側の入力インピーダンスを合わせないと,インピーダンス不整合が生じる。このため,出力インピーダンスを適切に変更しないと,挿入損失が増加するおそれがある。この点,本実施形態によれば,従来設計と同じインピーダンスにすることができる。
【0062】
ただし,入力側トランスデューサの中央に配線パターンが必要になり,その箇所では弾性表面波は励振されない。本実施形態では,出力側トランスデューサにおいては,弾性表面波が伝搬しない中央部分は負荷となってしまうため,受波効率が低下するおそれがある。したがって,システムの仕様・目的などに応じて,第1,第2の実施形態の構成を使い分けることが好ましい。
【0063】
以上,添付図面を参照しながら本発明にかかる複素係数トランスバーサルフィルタおよび周波数変換器の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば,上記実施形態では,図2,図4の紙面左側のトランスデューサを入力側トランスデューサとし,図2,図4の紙面右側のトランデューサを出力側トランジスタとして説明したが,本発明はこれに限定されない。反対に,図2,図4の紙面右側のトランスデューサを入力側トランスデューサとし,図2,図4の紙面左側のトランデューサを出力側トランジスタとしてもよく,上記と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は,高性能無線通信端末に使用する複素係数トランスバーサルフィルタおよびこれを用いた周波数変換器に利用可能であり,特に,高い周波数の複素係数フィルタの実現に適した弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)フィルタを用いた複素係数トランスバーサルフィルタおよびこれを用いた周波数変換器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】全複素周波数変換器の説明図である。
【図2】第1の実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタを示す説明図である。
【図3】第1の実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタのイメージ抑圧特性を示す説明図である。
【図4】第2の実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタを示す説明図である。
【図5】第2の実施形態にかかる複素係数トランスバーサルフィルタのイメージ抑圧特性を示す説明図である。
【図6】従来の複素係数トランスバーサルフィルタの構成を示す説明図である。
【図7】従来のイメージ抑圧特性を示す説明図である。
【図8】出力I/出力Qの振幅差を示す説明図である。
【図9】出力I/出力Qの位相差を示す説明図である。
【図10】従来のイメージ抑圧特性の測定結果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
100 全複素周波数変換器
120 複素係数トランスバーサルフィルタ
121 圧電基板
122 入力側トランデューサ(Iチャンネル)
122a,122b トランデューサ
123 入力トランデューサ(Qチャンネル)
123a,123b トランデューサ
124 出力側トランデューサ(Iチャンネル)
124a,124b トランデューサ
125 出力側トランデューサ(Qチャンネル)
125a,125b トランデューサ
126a,126b,126c,126d 弾性表面波
130 全複素ミキサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF信号を周波数変換する周波数変換器であって,
入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1の弾性表面波フィルタと,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2の弾性表面波フィルタとからなる複素係数トランスバーサルフィルタと;
所定の周波数を有するローカル信号を出力する局部発振器と;
前記複素係数トランスバーサルフィルタと前記局部発振器とに接続され,前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素RF信号と前記局部発振器から出力される前記ローカル信号とを乗算して周波数変換する複素ミキサと;
を備え,
前記第1,第2の弾性表面波フィルタは,それぞれ,
入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置し,
前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする,周波数変換器。
【請求項2】
RF信号を周波数変換する周波数変換器であって,
入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1の弾性表面波フィルタと,入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2の弾性表面波フィルタとからなる複素係数トランスバーサルフィルタと;
所定の周波数を有するローカル信号を出力する局部発振器と;
前記複素係数トランスバーサルフィルタと前記局部発振器とに接続され,前記複素係数トランスバーサルフィルタから出力される前記複素RF信号と前記局部発振器から出力される前記ローカル信号とを乗算して周波数変換する複素ミキサと;
を備え,
前記第1,第2の弾性表面波フィルタは,それぞれ,
入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,1つのトランデューサを配置し,
前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする,周波数変換器。
【請求項3】
入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1の弾性表面波フィルタと,
入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2の弾性表面波フィルタと,
からなり,
前記第1,第2の弾性表面波フィルタは,それぞれ,
入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向と垂直方向に並べて配置し,
前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする,複素係数トランスバーサルフィルタ。
【請求項4】
入力されるRF信号に対し偶関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の実数部を生成する第1の弾性表面波フィルタと,
入力されるRF信号に対し奇関数に基づいて生成されるインパルス応答によりたたみ込み積分を行い複素RF信号の虚数部を生成する第2の弾性表面波フィルタと,
からなり,
前記第1,第2の弾性表面波フィルタは,それぞれ,
入力側に,同一構造の2つのトランデューサを信号伝達方向に対して線対称に並べて配置し,出力側に,1つのトランデューサを配置し,
前記入力側の駆動方式はシングルであり,前記出力側の駆動方式はバランスであることを特徴とする,複素係数トランスバーサルフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−166489(P2007−166489A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363175(P2005−363175)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】