説明

複素環式化合物およびアルドステロンシンターゼ阻害薬としてのそれらの使用

本願は、一般式(I)(式中、R、R、R、W、X、Y、Zおよびnは、明細書中に定義する意味を有する)の新規な複素環式化合物、それらの製造方法およびこれらの化合物の薬物としての、特にアルドステロンシンターゼ阻害薬としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複素環、本発明の化合物の製造方法、それらを含有する医薬品、および活性な医薬成分、特にアルドステロンシンターゼ阻害薬としてのそれらの使用に関する。
【0002】
本発明は、第一に、一般式:
【化3】


(式中、
XはCであり;
YはCであるか、またはZがCである場合には、Nでもあり;
ZはCまたは結合であり;
Rは、水素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、ハロゲンまたはトリフルオロメチルであり;
は、不飽和ヘテロシクリル−C〜C−アルキルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリールによって置換されており、ここで、ヘテロシクリルまたはアリールは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはC〜C−アルコキシカルボニルによって置換されており;
は、a)水素であるか;または
b)C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、ハロゲン、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシカルボニル−C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、アリール−C〜C−アルキルまたは不飽和ヘテロシクリル−C〜C−アルキルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリールによって置換されており、ここで、ヘテロシクリルまたはアリールは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ―アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはC〜C−アルコキシカルボニルによって置換されており;
nは、数0、1または2であり;
Zが結合でありかつRが水素である場合には、Rは、カルバゾール、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピリジリル、ピリミジニル、ピラジニルまたはピリダジニルでなく;あるいは
Zが結合であり、Rが水素でありかつRが不飽和単環式S含有複素環ラジカルである場合には、これらのラジカルは、C〜C−アルキルカルボニル、シアノ、アリールまたはヘテロシクリルによって置換されている)
で示される化合物およびその塩、好ましくは薬学的に使用可能な塩に関する。
【0003】
アリールなる用語は、一般に炭素原子5〜14個、好ましくは6〜10個を含む芳香族炭化水素ラジカルを表わし、例えばフェニル、インデニル、例えば2−もしくは4−インデニル、またはナフチル、例えば1−もしくは2−ナフチルである。炭素原子6〜10個を有するアリール、特にフェニルまたは1−もしくは2−ナフチルが好適である。これらのラジカルは、非置換でもまたは1度以上、例えば1度もしくは2度置換されてもよく、置換基は、任意の位置、例えばフェニルラジカルのo、mもしくはp位または1−もしくは2−ナフチルラジカルの3もしくは4位にあることが可能であり、かつまた複数の同一のもしくは異なる置換基が存在することも可能である。
【0004】
ヘテロシクリルなる用語は、飽和された、一部飽和されたまたは不飽和の、4〜8員、特に好ましくは5員の単環系、飽和された、一部飽和されたまたは不飽和の、7〜12員、特に好ましくは9〜10員の二環系かつまた飽和された、一部飽和されたまたは不飽和の、7〜12員の三環系を表し、各々の場合において少なくとも1つの環にN、OまたはS原子を含み、また、1つの環に更なるN、OまたはS原子が存在することも可能である。これらのラジカルは、非置換でもまたは1度以上、例えば1度もしくは2度置換されてもよく、また、複数の同一のもしくは異なる置換基が存在することも可能である。不飽和単環式S含有複素環ラジカルとしてのRは、それ程好適でない。
【0005】
不飽和単環ヘテロシクリル−C〜C−アルキルは、例えばフラニル、ピロリル、チオフェニル、チアゾリルまたはオキサゾリルである。
【0006】
不飽和二環ヘテロシクリル−C〜C−アルキルは、例えばベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、インドリル、イソキノリニルまたはキノリニルである。
【0007】
一部飽和された二環ヘテロシクリル−C〜C−アルキルは、例えば4,5,6,7−テトラヒドロベンゾフラニルまたは4,5,6,7−テトラヒドロベンゾチアゾリルである。
【0008】
〜C−アルキルは、直鎖でもまたは枝分かれしていてもおよび/または橋かけされていてもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチル基である。
【0009】
〜C−アルコキシは、例えばC〜C−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシまたはペンチルオキシであるが、また、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシ基でもよい。
【0010】
〜C−アルコキシ−C〜C−アルキルは、C〜C−アルコキシについて述べた意味に加えて、例えばC〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、例えばメトキシエチル、エトキエチルシ、プロピルオキシメチル、イソプロピルオキシブチル、ブチルオキシメチル、イソブチルオキシメチル、第二ブチルオキシプロピル、第三ブチルオキシブチルまたはペンチルオキシメチルであるが、また、ヘキシルオキシメチルまたはヘプチルオキシメチル基でもよい。
【0011】
〜C−アルコキシカルボニルは、C〜C−アルコキシカルボニルは、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、第二ブチルオキシカルボニルまたは第三ブチルオキシカルボニルであるのが好ましい。
【0012】
〜C−アルコキシカルボニル−C〜C−アルキルは、例えばメトキシカルボニル−もしくはエトキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニル−もしくは2−エトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニル−もしくは3−エトキシカルボニルプロピルまたは4−エトキシカルボニルブチルである。
【0013】
〜C−アルキルカルボニルは、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、第二ブチルカルボニルまたは第三ブチルカルボニルである。
【0014】
カルボキシ−C〜C−アルキルは、例えばカルボキシメチル、2−カルボキシエチル、2−もしくは3−カルボキシプロピル、2−カルボキシ−2−メチルプロピル、2−カルボキシ−2−エチルブチルまたは4−カルボキシブチル、特にカルボキシメチルである。
【0015】
〜C−シクロアルキルは、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、またシクロプロピル、シクロブチルまたはシクロオクチルである。
【0016】
モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニルは、例えばC〜C−アルキルアミノカルボニル、例えばメチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニルまたはブチルアミノカルボニル、あるいはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、例えばジメチルアミノカルボニル、N−メチル−N−エチルアミノカルボニル、ジエチルアミノカルボニル、N−メチル−N−プロピルアミノカルボニルまたはN−ブチル−N−メチルアミノカルボニルである。
【0017】
〜C−アルキルカルボニルアミノは、例えばホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノ、ブチルカルボニルアミノ、イソブチルカルボニルアミノ、第二ブチルカルボニルアミノまたは第三ブチルカルボニルアミノである。
【0018】
〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノは、例えばホルミル−、アセチル−、プロピオニル−、プロピルカルボニル−、イソプロピルカルボニル−、ブチルカルボニル−、イソブチルカルボニル−、第二ブチルカルボニル−または第三ブチルカルボニル−メチルアミノ、ホルミル−、アセチル−、プロピオニル−、プロピルカルボニル−、イソプロピルカルボニル−、ブチルカルボニル−、イソブチルカルボニル−、第二ブチルカルボニル−または第三ブチルカルボニル−エチルアミノ、ホルミル−、アセチル−、プロピオニル−、プロピルカルボニル−、イソプロピルカルボニル−、ブチルカルボニル−、イソブチルカルボニル−、第二ブチルカルボニル−または第三ブチルカルボニル−プロピルアミノあるいはホルミル−、アセチル−、プロピオニル−、プロピルカルボニル−、イソプロピルカルボニル−、ブチルカルボニル−、イソブチルカルボニル−、第二ブチルカルボニル−または第三ブチルカルボニル−ブチルアミノである。
【0019】
ハロゲンは、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0020】
下記に記述する化合物群は、限定されたと見なすべきでない;それとは反対に、これらの化合物群の一部は、意味を持って、互いに換えてももしくは上に挙げた定義によって換えても、または省いて、例えば一般的な定義をより具体的な定義に換えてもよい。
【0021】
式(1)の好適な化合物は、一般式:
【化4】


(式中、置換基R、RおよびRの意味は、式(1)の化合物について示した通りである)
で示される化合物である。
【0022】
Rは、水素、C〜C−アルキル、ハロゲンまたはトリフルオロメチルであるのが好ましく、水素またはメチルであるのが特に好ましい。
【0023】
は、ピロリル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニルまたはイソキノリニルであるのが好ましく、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリールによって置換され、特に好ましくは、シアノ、アセチル、オキサゾリル、チアゾリル、チオフェニルまたはピロリジニルによって置換される。
【0024】
は、水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、アリール−C〜C−アルキルまたは不飽和ヘテロシクリル−C〜C−アルキルであるのが好ましく、水素またはC〜C−アルキルであるのが特に好ましい。
【0025】
従って、一般式(1)および(1a)の極めて特に好適な化合物の例は、
Rが水素またはメチルであり;
は、ピロリル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニルまたはイソキノリニルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリールによって置換され、特に好ましくは、シアノ、アセチル、オキサゾリル、チアゾリル、チオフェニルまたはピロリジニルによって置換され:および
が水素またはC〜C−アルキルである
ものである。
【0026】
少なくとも1個の不斉炭素原子を有する式(1)の化合物は、光学的に純粋な鏡像体、鏡像体の混合物の形態でまたはラセミ体として存在することができる。第二の不斉炭素原子を有する化合物は、光学的に純粋なジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー性ラセミ体、ジアステレオマー性ラセミ体の混合物の形態でまたはメソ化合物として存在することができる。本発明は、これらのすべての形態を含む。鏡像体の混合物、ラセミ体、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマー性ラセミ体またはジアステレオマー性ラセミ体の混合物は、従来の方法、例えばラセミ体分割、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、HPLC等によって分別することができる。
【0027】
「薬学的に使用可能な塩」なる用語は、無機酸または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩を含む。塩形成性基を有する化合物の塩は、特に酸付加塩、塩基との塩であるかまたは複数の塩形成性基が存在する場合には、場合により、混合塩もしくは分子内塩である。
【0028】
式(1)の化合物は、文献に開示されている製造法に類似した様式で製造することができる。具体的な製法変形の詳細は、実施例に見ることができる。
【0029】
式(1)の化合物は、また、光学的に純粋な形態で製造することもできる。対掌体への分離は、それ自体知られている方法により、好ましくは光学的に活性な酸、例えば(+)−もしくは(−)−マンデル酸と塩形成しそして分別晶出によってジアステレオマー性塩を分離することによる合成の早い段階でまたは好ましくは、例えば(+)−もしくは(−)−カンファニルクロリドのようなキラル補助成分により誘導体化しそしてクロマトグラフィーおよび/または晶出によってジアステレオマー性生成物を分離し、その後キラル補助剤への結合を切断することによるやや後の段階でのいずれかで可能である。純粋なジアステレオマー性塩および誘導体は、従来の分光法を用いて分析して含有される化合物の絶対配置を決めることができ、特に適した方法は単結晶X線分光分析法である。
【0030】
塩は、主として、式(1)の化合物の薬学的に使用可能なまたは無毒の塩である。そのような塩は、例えば酸性基、例えばカルボキシ基またはスルホ基を有する式(1)の化合物によって形成され、そして例えば、式(1)の化合物と適した塩基との塩、例えば元素の周期表のIa、Ib、IIaおよびIIb族の金属に由来する無毒の金属塩、例えばアルカリ金属、特にリチウム、ナトリウムもしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウムもしくはカルシウム塩、また亜鉛塩もしくはアンモニウム塩、および有機アミン、例えば場合によりヒドロキシ置換されたモノ−、ジ−もしくはトリアルキルアミン、特にモノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルキルアミンにより、または第四アンモニウム塩基、例えばメチル−、エチル−、ジエチル−もしくはトリエチルアミン、モノ−、ビス−もしくはトリス(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン、例えばエタノール−、ジエタノール−もしくはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンまたは2−ヒドロキシ−第三−ブチルアミン、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミン、例えばN,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはN−メチル−D−グルカミン、または第四アンモニウムヒドロキシド、例えばテトラブチルアンモニウムヒドロキシドによって形成されるそれらの塩である。
【0031】
塩基性基、例えばアミノ基を有する式(1)の化合物は、酸付加塩、例えば適した無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、一方もしくは両方のプロトンが置換された硫酸、1個以上のプロトンが置換されたリン酸、例えばオルトリン酸もしくはメタリン酸、または1個以上のプロトンが置換されたピロリン酸との、あるいは有機カルボン酸、スルホン酸もしくはホスホン酸またはN−置換されたスルファミド酸、例えば酢酸、ピロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、グリコン酸、グリカリ酸、グリクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸(embonic acid)、ニコチン酸、イソニコチン酸、また、アミノ酸、例えばα−アミノ酸、およびメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、2−もしくは3−ホスホグリセラ−ト、グルコース6−ホスフェート、N−シクロヘキシルスルファミド酸(シクラメートを形成するため)との、あるいはその他の酸性有機化合物、例えばアスコルビン酸との酸付加塩を形成することができる。酸性基および塩基性基を有する式(1)の化合物は、また、分子内塩を形成することもできる。
【0032】
薬学的に使用可能な塩は、また、単離および精製のために使用することもできる。
【0033】
式(1)の化合物は、また、1個以上の原子をそれらの安定な非放射性同位体で置換された;例えば水素原子を重水素に替えた化合物も含む。
【0034】
上記した化合物のプロドラッグ誘導体は、インビボで使用する際に、化学的または生理学的プロセスを通して元の化合物を放出するそれらの誘導体である。プロドラッグは、例えば生理学的pHに達した時にまたは酵素転化によって元の化合物に転化されることができる。可能なプロドラッグ誘導体の例は、自由に入手し得るカルボン酸のエステル、チオール、アルコールまたはフェノールのS−およびO−アシル誘導体(アシル基は、上に定義した通りである)である。生理学的媒体中で加溶媒分解によって転化されて元のカルボン酸になる薬学的に使用可能なエステル誘導体、例えば低級アルキルエステル、シクロアルキルエステル、低級アルケニルエステル、ベンジルエステル、一−もしくは二置換された低級アルキルエステル、例えば低級ω−(アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル)−アルキルエステルあるいは例えば低級α−(アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニルまたはジアルキルアミノカルボニル)−アルキルエステルが好ましい;ピバロイルオキシメチルエステルおよび同様なエステルが従来そのようなものとして用いられている。
【0035】
フリーの化合物、プロドラッグ誘導体および塩化合物の間の関係が近いことから、本発明において定義される化合物は、また、可能でありかつ適切である場合には、そのプロドラッグ誘導体および塩形態も含む。
【0036】
アルドステロンは、副腎皮質の球状帯細胞内で酵素アルドステロンシンターゼ(CYP11B2)によって合成されるステロイドホルモンである。アルドステロン産生および分泌は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アンギオテンシンII、カリウムおよびナトリウムイオンによって制御される。アルドステロンは、腎ろ液からのナトリウムイオンの再吸収およびカリウムイオンの腎ろ液中への分泌を制御するので、アルドステロンの主要な生物学的機能は、塩バランスを調整することである。過剰のアルドステロン分泌の状態は、また高アルドステロン症とも呼ばれ、高血圧、低カリウム血症、アルカローシス、筋脱力、多尿症、多渇症、浮腫、脈管炎、コラーゲン形成の増大、線維症および内皮機能障害に至り得る。
【0037】
本発明において記載される化学化合物は、シトクロムP450酵素アルドステロンシンターゼ(CYP11B2)を阻害し、従って、アルドステロンによって誘発される状態を治療するのに使用することができる。記載される化学化合物は、低カリウム血症、高血圧症、うっ血性心不全、急性のおよび特に慢性の腎不全、心臓血管再狭窄、アテローム硬化症、メタボリックシンドローム(シンドロームX)、肥満(肥胖病)、脈管炎、一次および二次高アルドステロン症、蛋白尿、腎症、糖尿病腎症のような合併症、心筋梗塞、冠状心臓病、コラーゲン形成の増大、線維症、高血圧症に副次的な脈管および冠状組織変化(リモデリング)、肝硬変、ネフローゼおよびうっ血性心不全に副次的な内皮機能障害および浮腫のような状態を予防する、状態の進行を遅らせる、または状態を治療するために使用することができる。
【0038】
コルチゾールは、ほぼ例外なく副腎皮質の束状帯細胞内でシトクロムP450酵素11−β−ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)によって合成されるステロイドホルモンである。コルチゾール産生は、ACTHによって制御される。コルチゾールの主要な生物学的機能は、脳およびその他の代謝的に活性な組織用の炭水化物の産生および利用可能性を調節することである。コルチゾールの産生および分泌の増大は、ストレスへの正常な生理学的な反応であり、体によるエネルギーについての要求の増大を満たすための脂肪、蛋白質および炭水化物の不可欠な可動化に至る。慢性的な過剰のコルチゾール放出は、クッシングシンドロームの症状を表わす。クッシングシンドロームは、一方で、コルチゾールの過合成(hypersynthesis)によって生じさせられ得、コルチゾールの過合成は副腎皮質腫瘍によって発生され得、または他方で、ACTHによる副腎皮質の過度の刺激の結果として生じさせられ得る。第一の形態は、一次副腎皮質機能亢進と呼ばれ、第二の形態は、二次副腎皮質機能亢進と呼ばれる。過剰のかつ持続性コルチゾール分泌もまた、ストレス反応に付随し得、うつ病、高血糖に至りおよび免疫系を阻害するに至り得る。
【0039】
本発明において記載される化学化合物は、酵素11−β−ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)を阻害し、従って、コルチゾール合成を阻害することにより、クッシングシンドロームおよびストレスの状態における過剰のかつ持続性コルチゾール分泌の身体的および精神的な結果を予防する、これらの進行を遅らせる、またはこれらを治療するために使用することができる。従って、これらの化合物は、異所性副腎皮質刺激(ACTH)ホルモンシンドローム、副腎偶発症、一次色素性小結節副腎皮質病(PPNAD)およびカーニー複合(CNC)、神経性食欲不振、慢性アルコール中毒、タバコの喫煙、ニコチンおよびコカイン禁断症状、外傷後ストレス障害、発作後の認知機能障害並びにコルチゾール媒介ミネラルコルチコイド過剰のような症状を治療および予防するために有用になり得る。
【0040】
上記した化合物による、アルドステロンシンターゼ(Cyp11B2)および11−β−ヒドロキシラーゼ(Cyp11B1)およびアロマターゼ(Cyp19)の阻害は、下記のインビトロアッセイによって求めることができる:
【0041】
細胞系NCl−H295Rは、最初に副腎皮質癌から単離され、文献にステロイドホルモンの刺激的な分泌およびステロイド生成のために必要なキー酵素の存在により特性表示された。これらは、Cyp11A(コレステロール側鎖開列)、Cyp11B1(ステロイド11−β−ヒドロキシラーゼ)、Cyp11B2(アルドステロンシンテターゼ)、Cyp17(ステロイド17α−ヒドロキシラーゼおよび/または17,20リアーゼ))、Cyp19(アロマターゼ)、Cyp21B2(ステロイド21−ヒドロキシラーゼ)および3β−HSD(ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ)を含む。細胞は、帯状未分化のヒト胎生副腎細胞の生理学的特性を有し、成人副腎皮質に見出される3つの表現上別個の帯域の各々のステロイドホルモンを産生する能力を有する。
【0042】
NCl−H295R細胞(American Type Culture Collection,ATCC,Rockville,MD,USA)を、75cm細胞培養フラスコ中で温度37℃および空気95%/CO5%加湿雰囲気において、ダルベッコ変法イーグルハムF−12培地(DME/F12)にUltroser SF血清(Soprachem,Cergy−Saint−Christophe、フランス)並びにインスリン、トランスフェリン、亜セレン酸塩(I−T−S,Becton Dickinson Biosiences,Franklin Lakes,NJ,USA)および抗生物質を補充した中で培養する。その後、細胞を24ウエル板に移しそしてUltroser SF血清の代わりに0.1%ウシ血清アルブミンを補充したDME/F12培地の存在において播種する。0.1%ウシ血清アルブミンを補充したDME/F12培地および試験化合物中で細胞刺激剤の存在または不存在において細胞を72時間インキュベートすることによって、実験を開始する。試験化合物は、0.2ナノモル〜20ミリモル濃度範囲で加える。アンギオテンシン−II(10または100ナノモル濃度)、カリウムイオン(16ミリモル)、ホルスコリン(10マイクロモル)または2種の薬剤の組合せが、細胞刺激剤としての役割を果たすことができる。アルドステロン、コルチゾール、コルチステロンおよびエストラジオール/エストロンの細胞培地中への細胞分泌は、市販されている免疫学的アッセイおよび特定のモノクローナル抗体により製造業者の使用説明書に従って定量評価することができる。
【0043】
選択ステロイドの分泌度は、試験化合物の存在または不存在における酵素活性、酵素阻害のそれぞれの尺度として用いられる。化合物の用量依存性酵素阻害活性は、IC50値により特性表示される阻害曲線において反映される。活性な試験化合物についてのIC50値は、単純な線状回帰分析によって作成してデータ重み付けしないで抑制曲線を確立する。阻害曲線は、最小二乗法アプローチを使用して4−パラメーターロジスティック関数をサンプルの生データに適合させることによって作成する。関数は、下記の通りに記載される:
Y=(d−a)/((1+(x/c)−b))+a
式中:
a=最小
b=勾配
c=IC50
d=最大
x=阻害剤濃度
【0044】
本発明の化合物は、インビトロ系において最小濃度約10−3〜約10−10mol/lで阻害効果を示す。
【0045】
本明細書中に記載する化合物のアルドステロン低減効果は、下記のプロトコルによりインビボ試験することができる:
【0046】
重さが125〜150グラムの成体雄Sprague Dawleyラットを、光および温度の通常の条件下で飼い、個々に収容する。実験の第1日目の16:00時に、動物は、貯蔵ACTH生成物の皮下注射を投与量1.0mg/体重1kg(SYNACTEN−Depot,Novartis,Basel,CH)で受ける。パイロット研究は、このACTH投与量が、血漿アルドステロンおよびコルチコステロンを少なくとも18時間の期間にわたりそれぞれ15倍および25倍と相当に増大させることを示した。第2日目の朝8:00時に、動物は、5匹の動物の試験グループに分けられ、経口で水かまたは胃管栄養法により経口で0.01〜10mg/kgの可変投与量範囲の化合物のいずれかの投与を受ける。2時間後に、血液をEDTA処理したEppendorf容器中に採取する。血漿サンプルを、血液を遠心分離することによって得、−20℃で保存することができる。アルドステロン分泌を刺激するための代わりの方法は、体重250〜350グラムの成体雄のカテーテルを入れたWistarラットに48時間減塩食餌療法を施し、16時間後にフロセミド10mg/kgを皮下または腹膜内適用することによって、実験を開始する。フロセミド適用を2時間繰り返した後に、実験を開始してもよい。パイロット研究は、この処理が、12〜24時間の期間にわたり血漿アルドステロンレベルを5〜20倍増大させることになることを示した。カテーテルを動物の頸動脈に長期にわたって移植し、こうしてAccuSampler(DiLab Europe,Lund,Sweden)を使用して血液0.2mlまでの周期的なサンプリングを可能にする。実験は、試験化合物を0.01〜10mg/kgの投与量範囲で経口投与することによって開始する。AccuSamplerによる血液サンプリングは、試験化合物を投与する1時間前並びに試験化合物を投与して2、4、6、8、12、16および24時間後に行う。血液サンプルをヘパリンで凝固を阻止しかつ遠心分離する。
【0047】
両方のプロトコルに由来する血漿サンプルを、前記した放射免疫測定法でステロイド含量について試験する。ステロイドレベル、例えばアルドステロンの減少は、本明細書に記載する化合物のインビボ生物学的利用能および酵素阻害活性の尺度としての役割を果たす。
【0048】
本明細書に記載する化合物によりアルドステロンシンターゼを阻害する際の心臓損傷の低減は、下記のプロトコルによって評価することができる。プロトコルは、Rocha等による刊行物(Endocrinology,Vol.141,pp 3871−3878,2000)に記載されているプロトコルに大部分一致する。成体Wistarラットを個々のケージに収容し、ラットに実験全体を通して飲料液として0.9%塩水を適宜与える。3日後に、ラットを3つの投与プロトコルの内の1つの状態に置く。グル−プI(8匹の動物による対照グル−プ)は、一酸化窒素シンターゼ阻害薬L−NAME(N−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル、SIGMA,St.Louis,MO,USA)を14日間受ける。L−NAME処理の11日目に、塩水だけを収容する浸透ミニポンプを各々の動物内に皮下移植する。グル−プII(8匹の動物によるL−NAME/Ang II)は、L−NAMEを14日間受け,L−NAME処理の11日目に、Ang IIを収容する浸透ミニポンプを各々の動物内に皮下移植する。グル−プIII(8匹の動物によるL−NAME/Ang II/試験化合物)は、グル−プIIと同様に処理するが、試験化合物を日々の投与量範囲0.2〜10mg/ラット体重1kgで受ける。試験化合物を蒸留水に溶解して経口胃管栄養法によって与える;これに対し、グル−プIおよびIIは、ビヒクルを試験化合物無しで受ける。L−NAME処理の14日目に、実験を終える。L−NAMEを0.9%塩水含有飲料水中濃度60mg/100mlで投与し、これは、日々の摂取量およそ60mg/kgになる。アンギオテンシンIIをAlzet浸透ミニポンプ(モデル2001,Alza Corp,Palo Alto,CA,USA)を経て投与する。ミニポンプを首筋に皮下移植する。アンギオテンシンII(ヒト、ペプチド純度99%)をSigma Chemical Corp,St.Louis,MO,USAから購入し、塩水中225μg/kg/日の投与量で投与する。ポンプに充填するのに用いるアンギオテンシンIIの濃度は、下記に基づいて計算する:a)製造業者によって提供される平均ポンプレート;b)ポンプを移植する前の動物の体重およびc)計画投与量。ラットを14日目に犠牲にする。それらの心臓を取り出し、心室/心房を通して「ブレッド−ローフ」様式で薄く切り、下記の全体の心臓領域:上位、中位および下位から3つのサンプルをもたらす。サンプルを10%緩衝化したホルマリン中に固定する。パラフィンセクションを切断し、ヘマトキシリン/エオシンで染色する。実験グル−プを知らない一人の調査員がスライドを調べる。3つの全体の心臓サンプル領域の各々からの1つのスライドをラット毎に分析する。心臓部位(左心室、右心室および隔壁)を別々に評価する。全体のセクションを、心筋損傷(重症度にかかわらず)の存在について、筋細胞壊死、炎症性細胞、出血および全体的な組織破壊の存在によって証明される通りに組織学的に判断する。組織学的データの評価は、グル−プIIとグル−プIII、すなわち試験化合物を有するまたは試験化合物を有しないアンギオテンシンIIとを比較することによって行う。サンプルの評価は、半定量的に行なってもよくかつ点数表で表すことができる。
【0049】
本明細書中に記載する化合物によってアルドステロンシンターゼを阻害する際の血圧の低下並びに心臓損傷および腎症の低減は、下記のプロトコルによって評価してもよい。実験は、ヒトアンギオテンシノゲン並びにヒトレニンを過剰発現し、従って高血圧を発現する4週齢の雄のダブルトランスジェニックラット(dTGR)で行う。年齢対のSprague−Dawley(SD)ラットは、非高血圧の対照動物としての役割を果たす。動物を、試験化合物かまたはビヒクル(対照グル−プ)のいずれかを3〜4週間受ける試験グル−プに分ける。実験全体の間、動物に標準の餌を与えかつ動物は自由に飲料水を得る。収縮期血圧および拡張期血圧ならびに心搏度数を移植した遠隔測定式変換器によってモニターし、それで動物は自由でありかつ動くのに制限がない。24時尿中アルブミン排泄を測定するために、ラットを1週に1度24時間代謝ケージに移す。心臓の大きさ(左心室質量、拡張終期直径および壁厚み、隔壁の厚み、短縮分画)および拡張期充填を処理の初めと終わりにイソフラン麻酔下で超音波心臓検査法によって求める(15MHzプローブを装着した商用超音波心臓検査図計器を使用する短軸におけるM−モードモニタリングおよび組織Doppler描写)。研究の終わりに動物を犠牲にし、腎臓および心臓を取り出して秤量しかつ免疫組織化学判定(繊維症、マクロファージ/T−細胞浸潤等)をする。
【0050】
治療する患者において所望の効果を達成するために、本発明の化合物を、経口または腸内、例えば静脈内、腹膜内、筋肉内、直腸、皮下に投与するかまたはさもなければ活性物質を局所の組織もしくは腫瘍に直接注入することによって投与することができる。患者なる用語は、温血種および哺乳動物、例えばヒト、霊長類、牛、犬、猫、馬、羊、マウス、ラットおよび豚を包含する。化合物は、医薬品として投与することができまたは化合物を確実に永続して放出する投与手段の中に組み込むことができる。投与する物質の量は、広範囲に渡って変えることができかつあらゆる有効な投与量を表わすことができる。治療する患者または治療する症状または投与の仕方に応じて、毎日の有効な物質の投与量は、約0.005〜50ミリグラム/体重1キログラムにすることができるが、毎日約0.05〜5ミリグラム/体重1キログラムにするのが好ましい。
【0051】
経口投与用には、化合物は、固体または液体薬剤形態、例えばカプセル、ピル、錠剤、被覆錠剤、顆粒、粉末、溶液、懸濁液またはエマルションとしてのような形態で配合すことができる。固体薬剤形態の投与は、一種の通常の硬質ゼラチンカプセルにすることができ、これに活性成分および賦形剤、例えば滑剤および充填剤、例えばラクトース、スクロースおよびトウモロコシでんぷんを充填してよい。投与の別の形態は、本発明の活性物質を錠剤化することによって表わしてもよい。錠剤化は、従来の錠剤用賦形剤、例えばラクトース、スクロース、トウモロコシでんぷんに、アラビアゴム、トウモロコシでんぷんもしくはゼラチンからの結合剤、ジャガイモでんぷんもしくは架橋されたポリビニルピロリドン(PVPP)のような崩壊剤およびステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムのような滑剤を組み合わせて行うことができる。
【0052】
軟質ゼラチンカプセル用に適した賦形剤の例は、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオール等である。
【0053】
溶液およびシロップを製造するのに適した賦形剤の例は、水、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース等である。
【0054】
直腸投与用には、化合物は、固体もしくは液体薬剤形態、例えば坐薬のような形態で配合することができる。坐薬用に適した賦形剤の例は、天然もしくは硬化油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオール等である。
【0055】
非経口投与用には、化合物は、液体または懸濁体中の活性成分の注入可能な投薬として配合することができる。製剤は、生理学的に許容される殺菌した溶媒を含むのが普通であり、このような溶媒は、油中水型エマルションで、界面活性剤を有するもしくは有しないもの、およびその他の薬学的に許容される賦形剤を含んでよい。そのような調剤用に使用することができる油は、パラフィンおよび植物、動物もしくは合成起源のトリグリセリドであり、例えば落花生油、大豆油および鉱油である。注入可能な溶液は、液体担体、例えば好ましくは水、塩水、ブドウ糖または関連する糖溶液、エタノールおよびグリコール、例えばプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含むのが普通である。
【0056】
配合物が活性成分の持続される送達を可能に場合には、物質は、経皮的パッチ系として、蓄積注射または移植として投与してもよい。活性物質は、顆粒としてまたは狭いシリンダーに圧縮し、蓄積注射または移植として皮下または筋肉内投与することができる。
【0057】
医薬は、加えてまた、防腐剤、可溶化剤、粘度上昇性物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、着香剤、浸透圧を変えるための塩、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤も含んでよい。それらは、また、その他の治療上有用な物質も含んでよい。
【0058】
本明細書中に記載する化合物は、下記の使用方法を可能にする:
本明細書中に記載する化合物からなる、自由な形態のもしくは薬学的に使用可能な塩としての個々の成分と、少なくとも一種の薬剤形態であって、それの活性成分が血圧低下、変力性、抗糖尿病性、肥満減少または脂質低下効果を有するものとで構成される生成物またはキットの形態の治療的組合せであって、同時にまたは逐次にのいずれかで使用することができるものとして。生成物およびキットは、使用説明書を含み得る。
治療上有効な量の本明細書中に記載する自由な形態もしくは薬学的に使用可能な塩形態の化合物と、血圧低下、変力性、抗糖尿病性、肥満減少または脂質低下効果を有する第二の活性成分とを組み合わせ、例えば同時にまたは逐次連続して使用する方法として。
【0059】
本明細書中に記載する化合物およびそれらの薬学的に使用可能な塩は、下記と組み合わせて使用することができる
(i)一種以上の血圧低下活性成分、例えば:
レニン阻害薬、例えばアリスキレン
アンギオテンシン II受容体遮断薬、例えばカンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン等;
ACE阻害薬、例えばキナプリル、ラミプリル、トランドラプリル(trandlapril)、リシノプリル、カプトプリル、エナラプリル等;
カルシウム拮抗薬、例えばニフェジピン、ニカルジピン、ベラパルミ、イスラジピン、ニモジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニソルジピン、ジルチアゼム、フェンジリン、フルナリジン、ペルヘキシリン、ガロパミル等;
利尿剤、例えばヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アセタゾルアミド、アミロリド、ブメタニド、ベンズサイアザイド、エタクリル酸、フロセミド、インダクリノン(indacrinone)、メトラゾン、トリアムテレン、クロルサリドン等;
アルドステロン受容体遮断薬、例えばスピロノラクトン、エプレレノン;
エンドセリン受容体遮断薬、例えばボセンタン;
ホスホジエステラーゼ阻害薬、例えばアムリノン、シルデナフィル;
直接血管拡張薬、例えばジヒドララジン、ミノキシディル、ピナシディール、ジアゾキシド、ニトロプルシド、フロセキナン(flosequinan)等;
α−およびβ−受容体遮断薬、例えばフェントラミン、フェノキシベンザミン、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、カルベジロール、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、カルテオロール等;
中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬;
交感神経遮断剤、例えばメチルドーパ、クロニジン、グアナベンズ、レセルピン
【0060】
(ii)変力活性を有する一種以上の薬剤、例えば:
強心配糖体、例えばジゴキシン;
β−受容体刺激薬、例えばドブタミン
甲状腺ホルモン、例えばチロキシン
【0061】
(iii)抗糖尿病活性を有する一種以上の薬剤、例えば:
インスリン、例えばインスリンアスパルト、ヒトインスリン、インスリンリプソ、インスリングラルギン並びに更に速効的−、中期的−および持続的作用性インスリン誘導体並びに組合せ
インスリン抵抗改善薬、例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン;
スルホニルウレア、例えばグリメピリド、クロルプロパミド、グリピザイド、グリブリド等;
ビグアニド、例えばメトホルミン;
グルコシダーゼ阻害薬、例えばアカルボース、ミグリトール;
メグリチナイド、例えばレパグリニド、ナテグリニド;
【0062】
(iv)一種以上の肥満減少成分、例えば:
リパーゼ阻害薬、例えばオルリスタット;
食欲阻害薬、例えばシブトラミン、フェンタミン;
【0063】
(v)一種以上の脂質低下活性成分、例えば、
HMG−CoA還元酵素阻害薬、例えばロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン等;
フィブラート誘導体、例えばフェノフィブラート、ゲムフィブロジル等;
胆汁酸結合活性成分、例えばコレスチポール、コレスチラミン、コレセベラム
コレステロール吸収阻害薬、例えばエゼチミブ
ニコチン酸、例えばナイアシン
並びにヒトおよび動物における高血圧、心不全または糖尿病および急性もしくは慢性の腎不全のような腎臓疾患に付随する脈管疾患を治療するために適したその他の剤。そのような組合せは、別々にまたは複数の成分を含む生成物で使用することができる。
【0064】
現時点で記載する化合物およびそれらの薬学的に使用可能な塩は、下記との組合せとしての使用を見つけることができる:
(i)血漿レニン濃度(PRC)の定量を可能にする診断試験システム
(ii)血漿アルドステロン濃度(PAC)の定量を可能にする診断試験システム
(iii)血漿レニン活性(PRA)の定量を可能にする診断試験システム
(iV)血漿アルドステロン対レニン濃度比(ARC)の定量を可能にする診断試験システム
(V)血漿アルドステロン対レニン活性比(ARR)の定量を可能にする診断試験システム
(Vi)血漿コルチゾール濃度(PCC)の定量を可能にする診断試験システム
【0065】
診断試験システムと治療とのそのような組合せは、別々に使用してもまたは個々の成分との調合において使用してもよい。
【0066】
下記の例は、本発明を例示する。温度は、全て摂氏温度で、圧力は、mbarで示す。他に記述しない場合には、反応は、室温で行なわれる。略語「Rf=xx(A)」は、例えばRfが溶媒系Aにおいて値xxを有することが検出されることを意味する。溶媒の互いに対する量比は、常に容積による割合で示す。最終生成物および中間体の化学名は、AutoNom 2000(Automatic Nomenclature)プログラムを利用して発生させた。
【0067】
Hypersil BDS C−18(5μm)でのHPLC勾配;カラム:4×125mm:
95%/アセトニトリル5%〜水0%/アセトニトリル100%で10分+水0%/アセトニトリル100%で2分(1ml/分)
トリフルオロ酢酸0.1%を含有する
【0068】
下記の略語を用いる:
Rf 薄層クロマトグラフィーにおける出発点からの物質が移動した距離対溶媒の距離の比
Rt HPLC中の物質の滞留時間(分で表す)
m.p. 融点(温度)
【実施例】
【0069】
実施例1:
【化5】


5−ベンゾフラン−3−イル−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン
テトラヒドロフラン10ml中のジイソプロピルアミン2.710mmolの0℃の溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M)1.4mlを滴下して加え、混合物をこの温度で30分間撹拌した。このようにして得られた溶液を、テトラヒドロフラン10ml中の1−ベンゾフラン−3−イルメチル−5−(3−クロロプロピル)−1H−イミダゾール1.270mmolおよびN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン2.780mmolの−78℃の溶液に滴下して加えた。反応混合物を−78℃で1時間および室温で2時間撹拌し、次いで、飽和塩化アンモニウム水溶液で急冷した。有機相を分別し、水性相をジクロメタンで抽出した(2×)。一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分をフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によって精製し、エタノール性HClを加えることによって塩酸塩に転化させて表題の化合物をオフホワイト固体としてもたらした。Rf(遊離塩基)=0.45(ジクロメタン−メタノール−アンモニア濃度25%=200:20:1);Rt=5.68(I)。
【0070】
出発原料を下記の通りにして製造した:
a)1−ベンゾフラン−3−イルメチル−5−(3−クロロプロピル)−1H−イミダゾール
ジクロロメタン100ml中の3−(3−ベンゾフラン−3−イルメチル−3H−イミダゾル−4−イル)プロパン−1−オール17.947mmolおよび塩化チオニル22.434mmolの溶液を1時間加熱して還流にした。反応溶液を冷却して室温にしかつ蒸発させた。残分をジクロロメタン中に取り込ませ、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で慎重に洗浄した。有機相を分別し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分から粗製の表題の化合物が金褐色油として得られた。Rf=0.40(トルエン/メタノール=85:15);Rt=6.20(I)
【0071】
b)3−(3−ベンゾフラン−3−イルメチル−3H−イミダゾル−4−イル)プロパン−1−オール
アセトニトリル100ml中の4−(3−トリメチルシラニルオキシプロピル)イミダゾール−1−ジメチルカルボキサミド[102676−27−7]18.240mmolおよび3−ブロモメチルベンゾフラン[38281−49−1]18.240mmolの溶液を3時間加熱して還流した。反応混合物を冷却して室温にし、次いで、氷の中で冷却している間に、ガス状アンモニを30分間中に通した。1M塩酸水溶液を加えることによって、反応混合物を調整してpH=1にし、ジエチルエーテルで洗浄した(2×)。エーテル相を捨て、水性相を、2M水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって調整してpH=9にし、ジクロロメタンで抽出した(3×)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分から粗製の表題の化合物が黄色油として得られた。Rf=0.18(トルエン/メタノール=85:15);Rt=4.89(I)
【0072】
下記の化合物を、実施例1に記載するプロセスに類似した様式で製造した。
【0073】
実施例:
2 5−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン
3 6−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)イソキノリン
4 5−(6−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
5 5−(5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
6 5−(2−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
7 5−(1,1−ジオキソ−1H−1ラムダ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
8 5−(1−メチル−1H−インドル−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
9 1−メチル−3−(5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)−1H−インダゾール
10 5−(7−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
11 5−(5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)−チオフェン−2−カルボニトリル
12 5−(5−フェニル−チオフェン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリジン
【0074】
実施例13:
【化6】


1−[4−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)フラン−2−イル]エタノン
4−(3−トリメチルシラニルオキシプロピル)イミダゾール−1−ジメチルカルボキサミド[102676−27−7]および2−(4−ブロモメチルベンゾフラン−2−イル)−2−メチル[1,3]ジオキソランから出発した。
【0075】
出発原料を下記の通りにして製造した:
a)2−(4−ブロモメチルフラン−2−イル)−2−メチル[1,3]ジオキソラン
テトラクロロメタン30ml中の2−メチル−2−(4−メチルフラン−2−イル)−[1,3]ジオキソラン2mmolの撹拌した溶液を加熱して還流にし、次いで、N−ブロモスクシンイミド2.2mmolおよび過酸化ベンゾイル0.2mmolの混合物を、固体として分けて5分の時間をかけて加えた。生成した反応混合物を還流下で4.5時間加熱し、冷却して室温にした。反応混合物をCeliteを通してろ過することによって、沈殿したスクシンイミドを取り出し、溶媒を真空中で蒸発させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0076】
b)2−メチル−2−(4−メチルフラン−2−イル)−[1,3]ジオキソラン
エチレングリコール5ml中の1−(4−メチルフラン−2−イル)エタノン[33342−43−7]2mmolおよびオルトギ酸メチル2mmolの溶液に、p−トルエンスルホン酸0.2mmolを加え、反応混合物を25℃で16時間撹拌した。次いで、溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液10ml中に注ぎ、毎度酢酸エチル30mlで2度抽出し、一緒にした有機相を無水炭酸カリウムで乾燥させた。有機相をろ過し、真空中で蒸発させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0077】
2−(4−ブロモメチルフラン−2−イル)−2−メチル[1,3]ジオキソランを製造する代わりの可能性は、下記の工程によるものである:
c)2−(4−ブロモメチルフラン−2−イル)−2−メチル[1,3]ジオキソラン
テトラクロロメタン20ml中のトリフェニルホスフィン2.4mmolの0℃の溶液に、臭素2.2mmolを加えた。生成した混合物を0℃で10分間撹拌し、次いで、テトラクロロメタン5ml中の[5(−2−メチル[1,3]ジオキソラン−2−イル)フラン−3−イル)メタノール2mmolの溶液を2分の間に加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。次いで、溶媒を真空中で除いた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0078】
d1) [5−(2−メチル[1,3]ジオキソラン−2−イル)フラン−3−イル)メタノール
テトラヒドロフラン10ml中の5−(2−メチル[1,3]ジオキソラン−2−イル)フラン−3−イル)カルボン酸[308341−64−2]2mmolの0℃の溶液に、テトラヒドロフラン中の水素化リチウムアルミニウム(1.0M)の溶液3mmolを加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、50℃で1時間加熱した。続いて、0℃で、水を慎重に加え、混合物を酢酸エチルで3度抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0079】
d2) 5−(2−メチル[1,3]ジオキソラン−2−イル)フラン−3−イル)メタノールを製造する代わりの可能性は、また、5−(2−メチル[1,3]ジオキソラン−2−イル)フラン−3−イル)カルボン酸[308341−64−2]のメチルエステルおよび続くジクロロメタン中水素化ジイソブチルアルミニウムによる−78℃における還元を経るものでもある。
【0080】
下記の化合物を、実施例13に記載するプロセスに類似した様式で製造した。
【0081】
14 1−[4−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)オキサゾル−2−イル]エタノン
15 1−[3−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)ピロール−1−イル]エタノン
【0082】
1−[3−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)ピロール−1−イル]エタノンを製造する代わりの可能性は、また、下記の合成ルートを経るものでもある:
【0083】
1−[3−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)ピロール−1−イル]エタノン
ジクロロメタン中10ml中の5−(1H−ピロール−3−イル)−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン2mmol、ジイソプロピルエチルアミン2.4mmolおよびジメチルアミノピリジン0.1mmolの溶液に、塩化エチル2.2mmolを加え、混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、水5mlを加え、有機相を飽和重炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ溶媒を除いた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0084】
出発原料を下記の通りにして製造した:
a)5−(1H−ピロール−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン
テトラヒドロフラン10ml中の5−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン2mmolの溶液に、テトラヒドロフラン中フッ化テトラブチルアンモニウム(1.0M)の溶液4mmolをアルゴン下で滴下して加えた。4時間後に、水5mlを反応混合物に加え、有機相を分別した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0085】
b)5−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン
アセトニトリル50ml中の4−(4−クロロ−4−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)ブチル−1−トリチル−1H−イミダゾール2mmolの溶液をアルゴン下還流下で15時間沸騰させ、次いで、冷却して室温にした。メタノール50mlを加え、混合物を還流下で更に15時間沸騰させた。反応混合物を蒸発乾固させ、残分を水とエーテルとの間に分配した。エーテル相を分別し、1N HCl水溶液で2度洗浄した。一緒にした水性相を調整してpH8にし、ジクロロメタンで2度抽出した。
一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0086】
c1) 4−[4−クロロ−4−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)ブチル]−1−トリチル−1H−イミダゾール
ジクロロメタン20ml中の1−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)−4−(1−トリチル−1H−イミダゾル−4−イル)ブタン−1−オール2mmolおよび塩化チオニル6mlの溶液を還流下で1時間沸騰させ、冷却し、氷令した飽和重炭酸ナトリウム水溶液3ml中に注いだ。有機相を分別し、硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0087】
4−[4−クロロ−4−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)ブチル]−1−トリチル−1H−イミダゾールを製造する代わりの可能性は、下記の手順によるものである:
c2)テトラクロロメタン5ml中の1−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)−4−(1−トリチル−1H−イミダゾル−4−イル)ブタン−1−オール2mmolおよびトリフェニルホスフィン2mmolの溶液を還流下で4時間加熱した。反応混合物を冷却して室温にし、次いで蒸発乾固させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。
【0088】
d) 1−(1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール−3−イル)−4−(1−トリチル−1H−イミダゾル−4−イル)ブタン−1−オール
テトラヒドロフラン30ml中の3−ブロモ−1−トリイソプロピルシラニル−1H−ピロール[87630−36−2]2mmolの−23℃の溶液に、ヘキサン中の水素化ブチルリチウム(1.6M)の溶液2mmolを加えた。−23℃で2時間撹拌した後に、テトラヒドロフラン10ml中の4−(1−トリチル−1H−イミダゾル−4−イル)ブチルアルデヒド[184030−88−4]4mmolの溶液を−23℃でゆっくり加えた。反応混合物を20分の間温めて室温にし、水2mlで急冷した。混合物を酢酸エチルで3度抽出し、一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させかつ蒸発させた。残分からフラッシュクロマトグラフィー(SiO60F)によってRfに基づいて表題の化合物を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】


(式中、
XはCであり;
YはCであるか、またはZがCである場合には、Nでもあり;
ZはCまたは結合であり;
Rは、水素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、ハロゲンまたはトリフルオロメチルであり;
は、不飽和ヘテロシクリル−C〜C−アルキルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリールによって置換されており、ここで、ヘテロシクリルまたはアリールは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル−、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはC〜C−アルコキシカルボニルによって置換されており;
は、a)水素であるか;または
b)C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、ハロゲン、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシカルボニル−C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、アリール−C〜C−アルキルまたは不飽和ヘテロシクリル−C〜C−アルキルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリールによって置換されており、ここで、ヘテロシクリルまたはアリールは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリ−C〜C−アルキルシリル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ―C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシまたはC〜C−アルコキシカルボニルによって置換されており;
nは、数0、1または2であり;
Zが結合でありかつRが水素である場合には、Rは、カルバゾール、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニルまたはピリダジニルでなく;あるいは
Zが結合であり、Rが水素でありかつRが不飽和単環式S含有複素環ラジカルである場合には、これらのラジカルは、C〜C−アルキルカルボニル、シアノ、アリールまたはヘテロシクリルによって置換されている)
で示される化合物およびその塩、特に薬学的に使用可能なその塩、プロドラッグまたは1個以上の原子がそれらの安定な非放射性同位体で置換された化合物。
【請求項2】
一般式:
【化2】


(式中、置換基R、RおよびRの意味は、請求項1に記載の式(1)の化合物について示した通りである)
に一致することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが水素、C〜C−アルキル、ハロゲンまたはトリフルオロメチル、特に好ましくは水素またはメチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、ピロリル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニルまたはイソキノリニルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリール、特に好ましくはシアノ、アセチル、オキサゾリル、チアゾリル、チオフェニルまたはピロリジニルによって置換される、請求項1〜3のいずれか一に記載の化合物。
【請求項5】
が水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、アリール−C〜C−アルキルまたは不飽和ヘテロシクリル−C〜C−アルキル、特に好ましくは水素またはC〜C−アルキルである、請求項1〜4のいずれか一に記載の化合物。
【請求項6】
nが数0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Rが水素またはメチルであり;
が、ピロリル、フラニル、オキサゾリル、チアゾリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニルまたはイソキノリニルであり、これらのラジカルは、非置換であるかまたは1〜4の、C〜C−アルキル、C〜C−アルキルカルボニル、ハロゲン、シアノ、オキソ、トリフルオロメチル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルカルボニル−C〜C−アルキルアミノ、カルバモイル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、カルボキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、ヘテロシクリルまたはアリール、特に好ましくはシアノ、アセチル、オキサゾリル、チアゾリル、チオフェニルまたはピロリジニルによって置換され;そして
が水素またはC〜C−アルキルである、
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項8】
薬剤を製造するための、請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物の使用。
【請求項9】
高アルドステロン症によって引き起こされるかまたは部分的に引き起こされる病状を予防するか、この病状の進行を遅らせるかまたはこの病状を治療するためのヒト薬剤を製造するための、請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物の使用。
【請求項10】
過剰のコルチゾール放出によって引き起こされるかまたは部分的に引き起こされる病状を予防するか、この病状の進行を遅らせるかまたはこの病状を治療するためのヒト薬剤を製造するための、請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物の使用。
【請求項11】
高アルドステロン症によって引き起こされるまたは部分的に引き起こされる病状を予防するか、この病状の進行を遅らせるかまたはこの病状を治療する方法であって、請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物を治療上有効な量で使用する方法。
【請求項12】
過剰のコルチゾール放出によって引き起こされるかまたは部分的に引き起こされる病状を予防するか、この病状の進行を遅らせるまたはこの病状を治療する方法であって、請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物を治療上有効な量で使用する方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物および慣用の賦形剤を含む医薬品。
【請求項14】
a)請求項1〜7のいずれか一に記載の一般式(1)または(1a)の化合物、およびb)少なくとも一種の医薬形態であって、それの活性成分が血圧低下効果、変力効果、代謝効果または脂質低下効果を有するものからなる個々の成分で構成される生成物またはキットの形態の医薬組合せ。

【公表番号】特表2008−500999(P2008−500999A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513941(P2007−513941)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052418
【国際公開番号】WO2005/118541
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506250206)シュペーデル・エクスペリメンタ・アーゲー (36)
【氏名又は名称原語表記】SPEEDEL EXPERIMENTA AG
【Fターム(参考)】