説明

親水性組成物、及びアルコキシシリル含有モノマーの精製方法

【課題】無機イオン等の不純物の含有量が少ない親水性組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(A)で表される基を有し、含水率が以下1.0質量%であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマーを含有することを特徴とする親水性組成物。


一般式(A)に於いて、R104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性組成物、アルコキシシリル含有モノマーの精製方法、アルコキシシリル含有モノマー、及び親水性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
各種基材表面に親水処理を施すことで防曇性やセルフクリーニング性を付与させることが知られている。例えば建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、丑、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、ルームエアコン用アルミフィン材などが知られている。
本発明は、このような親水処理に用いられる親水性組成物、及び該親水性組成物に用いられるアルコキシシリル含有モノマーの精製方法、アルコキシシリル含有モノマー、及び親水性ポリマーに関する。
精製アルコキシシランの製造方法として、特許文献1にはアルコキシシランを活性炭又はゼオライトと接触させる方法が記載されているが、無機イオン等の不純物の除去が不十分であったり、アルコキシシランの親水性が損なわれる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−36377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
親水性ポリマーの合成時に無機イオンが生じ、得られた親水性ポリマーに不純物として混入する。無機不純物を含む親水性ポリマーを用いた親水性組成物に含有される無機不純物は、親水性ポリマーの架橋反応を妨げ、親水性組成物より形成される親水性膜の性能に悪影響を与える。
本発明は、無機イオン等の含有量が少なく、密着性及び親水性に優れた親水性膜を形成し得る親水性組成物を提供するものである。
また、本発明は、無機イオン等の含有量が少なく、親水性に優れたアルコキシシリル含有モノマーの精製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の通りである。
【0006】
〔1〕
下記一般式(A)で表される基を有し、含水率が以下1.0質量%であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマーを含有することを特徴とする親水性組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(A)に於いて、
104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
pは1〜3の整数を表す。
〔2〕
下記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを、無機系吸着剤に接触させる工程を含むことを特徴とするアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(A)に於いて、
104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
pは1〜3の整数を表す。
〔3〕
さらに、前記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを水系溶媒で洗浄する工程を含むことを特徴とする〔2〕に記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
〔4〕
前記水系溶媒で洗浄する工程がpH5.8〜8.8の水系溶媒で洗浄する工程であることを特徴とする〔2〕又は〔3〕に記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
〔5〕
前記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーの含水率が1.0質量%以下となるまで乾燥させることを特徴とする〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
〔6〕
前記吸着剤がシリカゲルであることを特徴とする〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
〔7〕
前記〔2〕〜〔6〕の精製方法により精製されたことを特徴とするアルコキシシリル含有モノマー。
〔8〕
前記アルコキシシリル含有モノマーが、含水率が1.0質量%以下であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマーであることを特徴とする〔7〕に記載のアルコキシシリル含有モノマー。
〔9〕
〔7〕又は〔8〕に記載のアルコキシシリル含有モノマーにより形成されたことを特徴とする親水性ポリマー。
〔10〕
前記親水性ポリマーが、下記一般式(I−1)で表される構造及び下記一般式(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることを特徴とする〔1〕に記載の親水性組成物。
【0011】
【化3】

【0012】
一般式(I−1)および(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101およびL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
〔11〕
前記親水性ポリマーが、下記一般式(II−1)で表される構造及び下記一般式(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることを特徴とする〔1〕に記載の親水性組成物。
【0013】
【化4】

【0014】
一般式(II−1)および(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
〔12〕
前記親水性ポリマーが、下記一般式(III−1)で表される構造及び下記一般式(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることを特徴とする〔1〕に記載の親水性組成物。
【0015】
【化5】

【0016】
一般式(III−1)および(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、無機イオン等の不純物の含有量が少なくし得るアルコキシシリル含有モノマーの精製方法を提供することができる。
また、本発明により、無機イオン等の含有量が少なく、親水性に優れた親水性ポリマーを形成し得る親水性組成物、該親水性組成物に用いられるアルコキシシリル含有モノマー、及び親水性ポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
本発明の親水性組成物は、下記一般式(A)で表される基を有し、含水率が1.0質量%以下であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマー(以下、単に「アルコキシシリル含有モノマー」と称する場合がある)により形成された親水性ポリマーを含有する。含水率は0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。含水率は、カールフィッシャー(k.f法)によって測定することができる。また、無機イオン含有率は好ましくは0〜500ppmであり、より好ましくは0〜150ppmである。無機イオン含有率は、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。対象となる無機イオンとしてはクロルイオン,メタンスルホン酸イオンが挙げられる。これらの無機イオンはアルコキシシリル基含有モノマー合成の際に混入すると考えられる。
【0020】
〔一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマー〕
【0021】
【化6】

【0022】
一般式(A)に於いて、
104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
pは1〜3の整数を表す。
【0023】
上記一般式(A)において、R104〜R105は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R101〜R108は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0024】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0025】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0026】
[アルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマー]
アルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマーは、下記一般式(I−1)で表される構造及び下記一般式(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー、下記一般式(II−1)で表される構造及び下記一般式(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー、又は下記一般式(III−1)で表される構造及び下記一般式(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることが好ましい。
【0027】
〔一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)〕
アルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマーは、下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)が好ましい。
【0028】
【化7】

【0029】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0030】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、R101〜R108はそれぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R101〜R108は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0031】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0032】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0033】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R101〜R108において挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(GCO−)におけるGとしては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0034】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0035】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状ならびにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0036】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0037】
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
【0038】
101〜L102は単結合または有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。
101〜L102が有機連結基を表す場合、L101〜L102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0039】
【化8】

【0040】
一般式(I−1)において、L101は単結合、または、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
【0041】
一般式(I−2)中、A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R101〜R108がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0042】
〜Rにおいて、直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
また、R〜Rにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウムまたはスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることでき、無機アニオンとしては硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
【0043】
101としては、具体的には、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COOH、−SONMe、−SO、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−SO、−(CHCHO)H、である。尚、上記において、nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0044】
pは1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0045】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーにおいて、x及びyは、親水性ポリマー(I)における、一般式(I−1)で表される構造単位と一般式(I−2)で表される構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<100である。xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることがさらに好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることがさらに好ましい。
【0046】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(I−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(I−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基量を有する一般式(I−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0047】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含むポリマーの質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0048】
以下に、一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)の具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体またはブロック共重合体であることを意味する。
【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0059】
〔一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)〕
一般式(A)で表される基を有する親水性ポリマーは、下記一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)が好ましい。
【0060】
【化18】

【0061】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0062】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)は、上記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に上記一般式(II−1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0063】
前記一般式(II−1)及び(II−2)において、R201〜R205は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R201〜R205が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0064】
201及びL202は、より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−CH−である。
【0065】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
【0066】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0067】
【化19】

【0068】
上記式(i)及び(ii)において、R201〜R205、L201、L202、A201、qは、上記一般式(II−1)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基A201を有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
【0069】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)において、加水分解性シリル基量を有する一般式(II−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(II−2)の構造単位のモル数が、1000〜10倍の範囲が好ましく、500〜20倍の範囲がより好ましく、200〜30倍の範囲が最も好ましい。30倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0070】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0071】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマー(II)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。具体例中、*はポリマーへの結合位置を表す。
【0072】
【化20】

【0073】
【化21】

【0074】
【化22】

【0075】
【化23】

【0076】
【化24】

【0077】
【化25】

【0078】
【化26】

【0079】
【化27】

【0080】
【化28】

【0081】
【化29】

【0082】
【化30】

【0083】
〔一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)〕
一般式(A)で表される基を有する親水性ポリマーは、下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)が好ましい。親水性ポリマー(III)は、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーであることが好ましい。
【0084】
【化31】

【0085】
一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0086】
上記一般式(III−1)及び(III−2)において、R301〜R311は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、R301〜R311が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
301、L302及びL303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA301、側鎖及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L301、L302及びL303が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
rは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0087】
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、及び“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0088】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0089】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と反応性基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0090】
親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0091】
一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)において、xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることがさらに好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることがさらに好ましい。
【0092】
親水性ポリマー(III)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(III−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(III−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基量を有する一般式(III−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0093】
親水性ポリマー(III)は、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0094】
以下に、一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)の具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体またはブロック共重合体であることを意味する。
【0095】
【化32】

【0096】
【化33】

【0097】
【化34】

【0098】
【化35】

【0099】
【化36】

【0100】
親水性ポリマー(I)、(II)または(III)は、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0101】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0102】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0103】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0104】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0105】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0106】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)及び/又は親水性ポリマー(III)を添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)及び/又は親水性ポリマー(III)中の他のモノマーから得られる繰り返し単位の好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0107】
本発明に用いられる親水性ポリマーは、親水性ポリマー(I)又は(II)であることがより好ましく、親水性ポリマー(I)であることがさらに好ましい。
【0108】
親水性ポリマー(I)、(II)または(III)の共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
【0109】
本発明における親水性組成物は親水性ポリマー(I)、(II)または(III)を単独あるいは2種以上混合しても良い。
親水性ポリマー(I)、(II)または(III)は硬化性と親水性の観点から、親水性組成物の全固形分に対して20〜99.5質量%使用されることが好ましく、30〜99.5質量%使用されることがさらに好ましい。
【0110】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、20℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0111】
[アルコキシシリル含有モノマーの精製方法]
本発明のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法は下記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを、無機系(例えば、無機、粘度鉱物)吸着剤に接触させる工程を含む。
【0112】
【化37】

【0113】
一般式(A)に於いて、
104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
pは1〜3の整数を表す。
【0114】
本発明に用いることのできる吸着剤としては、シリカゲル、アルミナ、粘土等を挙げることができる。好ましくはシリカゲルである。
吸着剤に接触させる工程により無機イオンを除去することができる。
上記の吸着剤であれば、無機イオンを吸着処理することにより密着性及び親水性等の膜性能に優れた親水性膜が得られる親水性ポリマーとすることができる。
シリカゲルとしては、例えば、ワコーゲルC−200、K−200,MERCK シリカゲル等を使用することができる。
アルミナとしては、例えば、キョーワード500,キョーワード700 等を使用することができる。
粘土としては、例えば、活性白土、モンモリロナイト等を使用することができる。
【0115】
一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを、吸着剤に接触させる工程において、アルコキシシリル含有モノマーを吸着剤に接触させるには、例えば、アルコキシシリル含有モノマーを有機溶剤に溶解させてアルコキシシリル含有モノマー溶液を調製する。
有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、THF、酢酸ブチル等を挙げることができる。
アルコキシシリル含有モノマー溶液中のアルコキシシリル含有モノマー濃度は、1〜50質量%とすることが好ましく、5〜30質量%とすることがより好ましい。
次いで、アルコキシシリル含有モノマー溶液に吸着剤を添加し、攪拌する。
アルコキシシリル含有モノマーに対する吸着剤の添加量は、アルコキシシリル含有モノマー100質量部に対して55〜50質量部とすることが好ましく、10〜30質量部とすることがより好ましい。
攪拌時間は、5〜120分間とすることが好ましく、1〜45分間とすることがより好ましい。
アルコキシシリル含有モノマーを吸着剤に接触させた後には、セライト濾過、KCフロック等により吸着剤を除去した後に、エバポレーター、真空ポンプ等により有機溶剤を除去することが好ましい。
【0116】
アルコキシシリル含有モノマーの精製方法においては、さらに、前記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを水系溶媒で洗浄する工程を含むことが好ましい。
水系溶媒で洗浄する工程における水の使用量は反応液の0.5質量倍〜3質量倍であることが好ましく、反応液の1質量〜2質量倍であることがより好ましい。水の使用量がこの範囲であれば加水分解を抑制し、無機不純物を除去とすることができる。
【0117】
さらに、本発明においては、水系溶媒で洗浄する工程がpH5.8〜8.8の水系溶媒で洗浄する工程であることが好ましい。pH5.8〜8.8の水系溶媒で洗浄する工程であることがより好ましく、pH6.2〜8.5の水系溶媒で洗浄する工程であることが更に好ましい。
pH5.8〜8.8の水を用いることによりアルコキシシリル基含有モノマーの加水分解を抑制することができる。
pHの調整は、必要に応じて、苛性ソーダ、炭酸水素ナトリウム,硫酸ナトリウム,塩化ナトリウム等のアルカリ、塩酸、リン酸等の酸を用いてすることができる。
【0118】
一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを含水率が1.0質量%以下となるまで乾燥させることが好ましい。含水率が0.8質量%以下となるまで乾燥させることがより好ましく、0.5質量%以下となるまで乾燥させることが更に好ましい。
硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウム等により含水率を上記の範囲内とすることができる。
【0119】
本発明の親水性組成物は、上述したように一般式(A)で表される基を有し、含水率が1.0質量%以下であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマーを含有するため、一般式(A)で表される基を有する親水性ポリマーを含有し、含水率が1.0質量%以下であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下とすることができる。
本発明の親水性組成物の含水率及び無機イオン含有率の好ましい範囲は、アルコキシシリル含有モノマーにおける好ましい範囲と同じである。
親水性組成物の無機イオン含有率が上記の範囲であると、親水性ポリマーの重合性能に優れ、親水性組成物により形成した親水膜に高い膜性能を与えることができ、好ましい。
【0120】
本発明の親水性組成物は、一般式(A)で表される親水性ポリマーの他に、架橋剤、触媒、界面活性剤等を有機溶剤に溶解させることにより調製することができる。
【0121】
〔架橋剤〕
親水性組成物中に、親水性ポリマー(II)を含有する場合は、良好な硬化性を得るために架橋剤を含有することが好ましい。また、親水性組成物中に親水性ポリマー(I)を含有する場合は架橋剤を含有しない場合でも良好な硬化性を得ることはできるが、膜強度が非常に優れた塗膜を得るためには架橋剤を含有してもよい。
【0122】
架橋剤としては、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物(金属アルコキシドともいう)がとくに好ましい。金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに前記親水性ポリマーとも化学結合することができる。金属アルコキシドは一般式(V−1)または一般式(V−2)で表すことができ、式中、R20は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R21およびR22はアルキル基またはアリール基を表し、ZはSi、TiまたはZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R20およびR21がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0123】
(R20−Z−(OR214−m (V−1)
Al−(OR22 (V−2)
【0124】
以下に、一般式(V−1)または一般式(V−2)で表される金属アルコキシドの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0125】
ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0126】
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0127】
上記のなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0128】
Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物は、親水性ポリマー(I)を用いる場合は親水性組成物の全固形分に対して、0〜80質量%使用されることが好ましく、0〜70質量%使用されることがさらに好ましい。親水性ポリマー(II)を用いる場合は親水性組成物の全固形分に対して、0〜80質量%使用されることが好ましく、0〜70質量%使用されることがさらに好ましい。
【0129】
〔触媒〕
本発明の親水性組成物においては、好ましくは、親水性ポリマー(I)、より好ましくはさらに親水性ポリマー(II)、架橋剤、などの架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために触媒を用いることが好ましい。触媒を使用することにより、親水性層を形成するための乾燥温度を低く設定することが可能であり、基材上での熱変形を抑制できる。
【0130】
本発明で用いることができる触媒としては、前記架橋剤を加水分解、重縮合し、親水性ポリマー(I)、(II)と結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0131】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0132】
また、前記の触媒の他に金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0133】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0134】
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0135】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。
中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0136】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0137】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0138】
触媒は、親水性組成物中に、全固形分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0139】
〔その他の添加剤〕
さらにこの他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基材への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0140】
(界面活性剤)
本発明においては、親水性組成物および下塗り層用組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0141】
本発明に用いられるノニオン系界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0142】
本発明に用いられるアニオン系界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0143】
本発明に用いられるカチオン系界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0144】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、全固形分に対して、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0145】
好ましい界面活性剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0146】
【化38】

【0147】
(無機微粒子)
本発明の親水性組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、親水性層中に安定に分散して、親水性層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0148】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の親水性組成物中に、全固形分に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0149】
(酸化防止剤)
親水性部材の安定性向上のため、親水性組成物に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0150】
(高分子化合物)
親水性組成物には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0151】
〔親水性部材〕
本発明における親水性部材は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ステンレス、およびアルミ等から選ばれた基材上に上記親水性組成物により形成される親水性層を有する。
親水性部材は、基材上に、親水性組成物が塗設されてなる親水性層を有しており、親水性組成物が上記に説明した親水性組成物であるため、充分な親水性、耐摩擦性、防汚性及び密着性を有するとともに、優れた潤滑性を長期に維持可能な親水性部材とすることができる。
親水性部材は、基材と親水性層との間の密着性を向上させるために、基材と親水性層との間に、さらに、下塗り層を有していても良い。
ここで、下塗り層は、上記した触媒を含有する組成物を塗布することにより形成されたものであるのが好ましく、これによって、基材と親水性層との間の密着性をより向上させることができる。ここで、触媒は、上記同様、不揮発性の触媒であることが好ましい。
触媒は、下塗り層用組成物中に、全固形分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは1〜25質量%の範囲で使用される。また、触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0152】
また、下塗り層は、さらに上記した架橋剤を含有する組成物を塗布することにより形成されたものであることが好ましく、これにより、さらに確実に、基材と親水性層との間の密着性を向上させることができる。
架橋剤は、下塗り層用組成物中の、全固形分に対して、好ましくは5〜99質量%、更に好ましくは10〜95質量%の範囲で使用される。また、架橋剤は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0153】
親水性組成物および下塗り層用組成物には、耐摩耗性、耐酸性及び耐アルカリ性の観点から、ジルコニアの塩化物、硝酸塩、アルコキシド類および有機錯体を含有することができる。ジルコニアの塩化物としては、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム(8水和物)、塩素含有ジルコニウムアルコキシドZr(OC2m+1Cl(m、x、y:整数、x+y=4)などが挙げられ、ジルコニウムの硝酸塩としては、オキシ硝酸ジルコニウム(2水和物)が挙げられ、ジルコニウムのアルコキシドとしては、ジルコニウムエトキシド,ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシドなどが挙げられ、有機錯体としては、アセチルアセトン誘導体が挙げられ、具体的にはテトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナト)ジルコニウムジブトキシド、ビス(アセチルアセトナト)ジルコニウムジクロリド、テトラキス(3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウム、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウムジイソプロポキシドなどが挙げられる。
上記ジルコニウム化合物は、本発明の親水性組成物および下塗り層用組成物中に、全固形分に対して、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。
このような親水性組成物を、適切な基材上に塗布し、乾燥することで、親水性層を形成することができる。即ち、本発明の親水性部材は、基材上に、親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水性層を有するものである。
親水性層の形成において、親水性組成物を塗布した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点から、乾燥温度を130〜230℃とすることが好ましい。乾燥温度が低いと十分な架橋反応が進まず塗膜強度が低くなり、温度が高すぎると塗膜のひび割れを生じやすく部分的に防曇性が不十分になる。乾燥時間は5分〜1時間が好ましい。更に好ましくは10分〜30分間である。乾燥時間が短いと乾燥不十分により塗膜強度が低下することがある。必要以上に乾燥時間を長くしすぎると基材が劣化したりする。
【0154】
親水性部材は、公知の塗布方法で作製することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0155】
親水性層の表面の中心線平均粗さRaは、10nm〜100nmであることが好ましい。
また、親水性層のTgは、塗膜強度の観点から、40℃〜150℃が好ましい。また、親水性層の弾性率は1GPa〜7GPaが好ましい。
なお、上記の親水性層の表面性状は、使用する無機微粒子の粒子サイズ、含有量、基材自体の表面粗さ、親水性組成物の粘度、親水性層の加熱温度、速度などを調節することによって制御できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0156】
基材と親水性層との間には、密着性の向上などのため、必要に応じて中間層を設けてもよい。
例えば、基材がアルミニウム板の場合、防食性、基材との密着性を向上させることなどを目的とし、アルミニウム板と親水性層との間に中間層を設けてもよい。中間層は特に限定されない。組成の異なる親水性層を設けてもよいし、クロメート系に代表される公知の耐食防止層を付与してもよい。
【0157】
親水性組成物の調液
親水性組成物の調製は、加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー、架橋剤、触媒、界面活性剤および特定アルコキシドをエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0158】
前記親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0159】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性層を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
【0160】
下塗り層用組成物の調液
下塗り層用組成物についても、上記親水性組成物同様の方法により調製可能である。
【0161】
親水性部材は、基材上に、必要に応じて下塗り層用組成物を塗布し、加熱、乾燥することで下塗り層を有してもよい。
下塗り層用組成物の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。
また、下塗り用組成物の加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0162】
また、親水性部材は、親水性層及び下塗り層を基材上に塗布する場合、基材に塗布する直前に触媒を混合することができる。具体的には触媒混合直後〜1時間以内で塗布することが好ましい。触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると下塗り層用組成物または親水性組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
【0163】
〔基材〕
本発明に用いられる基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、タイル、ゴム、ラテックス、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、プラスチック、金属等の柔軟性のあるフレキシブルな基材である。フレキシブルな基材を用いることで、物品の変形などが自由に可能になり、取り付け作業や取り付け場所の自由度が増すばかりでなく、耐久性も増すことができる。基材及び表面親水化処理特開2008−308661に記載のものを挙げることができる。
【0164】
親水性部材使用時の層構成
本発明の親水性部材を、防汚性及び/または防曇性効果の発現を期待して使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。
【0165】
構造体の形態
本発明の親水性層を有する親水性部材は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基材に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
【0166】
表面自由エネルギー
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10℃以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。
【0167】
基材、親水性部材使用時の層構成、構造体の形態、及び表面自由エネルギーについては、特開2008−308661の段落番号〔0090〕〜〔0113〕に記載の例示、処理などを適宜選択して行うことができる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0169】
〔実施例1〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーA20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてワコーゲルC−200(シリカゲル)を7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(1)を取り出した。
【0170】
〔実施例2〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーA20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてワコーゲルC−200(シリカゲル)を13g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(2)を取り出した。
【0171】
〔実施例3〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーA20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(3)を取り出した。
【0172】
〔実施例4〕
アルコキシ基含有モノマーA20gを酢酸エチル80gに溶解し、0.1molHClにて5.8にpH調製した水を30ml添加後、5分間攪拌を行い、有機層を分液し取り出した。その液にMgSOを10g添加し、30分間攪拌する。その後、ワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し、30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(4)を取り出した。
【0173】
〔実施例5〕
アルコキシ基含有モノマーA20gを酢酸エチル80gに溶解し、0.1molNaOHにて8.8にpH調製した水を30ml添加後、5分間攪拌を行い、有機層を分液し取り出した。その液にMgSOを10g添加し、30分間攪拌する。その後、ワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し、30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(5)を取り出した。
【0174】
〔実施例6〕
アルコキシ基含有モノマーA20gを酢酸エチル80gに溶解し、0.1molHClにて7.1にpH調製した水を30ml添加後、5分間攪拌を行い、有機層を分液し取り出した。その液にMgSOを10g添加し、30分間攪拌する。その後、ワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し、30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(6)を取り出した。
【0175】
〔実施例7〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーA20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてモンモリロナイトを7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(7)を取り出した。
【0176】
〔実施例8〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーA20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてキョーワードを7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(8)を取り出した。
【0177】
〔実施例9〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてワコーゲルC−200(シリカゲル)を7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(9)を取り出した。
【0178】
〔実施例10〕
アルコキシ基含有モノマーB20gを酢酸エチル80gに溶解し、0.1molHClにて5.9にpH調製した水を30ml添加後、5分間攪拌を行い、有機層を分液し取り出した。その液にMgSOを10g添加し、30分間攪拌する。その後、ワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し、30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(10)を取り出した。
【0179】
比較例1
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤として活性炭を7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(11)を取り出した。
【0180】
比較例2
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤として活性炭を13g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(12)を製造した。
【0181】
比較例3
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤として活性炭を20g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(13)を製造した。
【0182】
比較例4
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてゼオライトを7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(14)を取り出した。
【0183】
比較例5
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてゼオライトを13g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(15)を製造した。
【0184】
比較例6
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてゼオライトを20g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(16)を製造した。
【0185】
比較例7
アルコキシ基含有モノマーA20gを酢酸エチル80gに溶解し、0.1molHClにて5.6にpH調製した水を30ml添加後、5分間攪拌を行い、有機層を分液し取り出した。その液にMgSOを10g添加し、30分間攪拌する。その後、ワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し、30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(17)を取り出した。
【0186】
比較例8
アルコキシ基含有モノマーA20gを酢酸エチル80gに溶解し、0.1molNaOHにて9.1にpH調製した水を30ml添加後、5分間攪拌を行い、有機層を分液し取り出した。その液にMgSOを10g添加し、30分間攪拌する。その後、ワコーゲルC−200(シリカゲル)を20g添加し、30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマー(18)を取り出した。
【0187】
以下に実施例及び比較例に使用したモノマーの構造を示す。
【0188】
【化39】

【0189】
<親水性ポリマー(1)〜(8)、(17)、(18)>
200ml4つ口フラスコにアクリルアミド20g、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アクリルアミド(N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide)(アルコキシ基含有モノマー(1))18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌する。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後親水性ポリマー(1)を得た。
乾燥後の重量は30gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)によりMn:16252,Mw/Mn:1.38。同様の操作により親水性ポリマー(2)〜(8)、(17)、(18)を得た。
【0190】
【化40】

【0191】
<親水性ポリマー(9)〜(16)>
200ml三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(アルコキシ基含有モノマー(9))3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて65℃窒素気流下、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻し、メタノール1.5L中に投入したところ固体が析出した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水性ポリマー(9)を得た。乾燥後の質量は21.7gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量6,000のポリマーであった。同様の操作により親水性ポリマー(10)〜(16)を得た。
【0192】
【化41】

【0193】
【表1】

【0194】
<親水性組成物(1)〜(18)>
純水560質量部に上記親水性ポリマー(1)〜(18)を各々29.4質量部を溶かし、下記触媒2質量部(固形分)を加えて2時間攪拌し、下記界面活性剤1質量部(固形分)を加えて攪拌して調製した。
<塗布>
脱脂済みアルミニウム板に親水性組成物を#8バーにて塗布し、200℃で15秒間加熱、乾燥して親水性層を形成し、試験片とした。
尚、親水性層の膜厚は、0.4μmであった。
【0195】
<触媒液>
エタノール1.8g、アセチルアセトン0.1g、テトラエトキシチタン0.1g、蒸留水0.015gを混合し、1時間攪拌して調製した。
【0196】
<界面活性剤水溶液>
下記構造式のアニオン系界面活性剤の5質量%水溶液を用いた。
【0197】
【化42】

【0198】
〔含水率〕
2.5mlテルモシリンジでアルコキシシリル基含有モノマーを1.0gを分取し、アルコキシシリル基含有モノマーの含水率(%)を京都電子工業(株)製 KF水分計 MKA−610(滴定液:アクアミクロンSS−Z 3mg 脱水溶剤:SU)を用いて測定した。結果を表2、3、5、6に記載した。
【0199】
〔不純物(無機イオン)含有率〕
アルコキシシリル基含有モノマーを0.2gを20mlの酢酸エチルで溶解後、超純水20mlを加えてシェーカーで1時間攪拌後10分間静置して水層を抽出しアルコキシシリル基含有モノマーの無機イオンの含有率(%)(測定機器:DIONEX製 DX−320 カラム:Ionpac AS4A−SC)で測定した。
【0200】
〔密着性〕
試験片上にセロハンテープを3cm貼着し、20回人差し指で擦ったのちに剥がし、親水性層が剥がれるか目視で確認した。
◎:剥れなし
○:剥れないが、僅かに曇る
△:部分的に剥れ有り
×:全面的に剥れ
【0201】
〔親水性〕
試験片について、協和界面科学(株)製 接触角計DropMaster500にて蒸留水を用いて水滴接触角を測定した。
◎:接触角が20°未満
○:接触角が20°以上35°未満
△:接触角が35°以上50°未満
×:接触角が50°以上
【0202】
評価結果を下記表2に示す。
【0203】
【表2】

【0204】
【表3】

【0205】
【表4】

【0206】
【表5】

【0207】
【表6】

【0208】
表2〜6から、本発明の方法により製造された精製アルコキシ基含有モノマーは、不純物の含有量が少なく、これを用いて得られた親水性層は密着性、親水性に優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される基を有し、含水率が以下1.0質量%であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマーにより形成された親水性ポリマーを含有することを特徴とする親水性組成物。
【化1】

一般式(A)に於いて、
104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
pは1〜3の整数を表す。
【請求項2】
下記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを、無機系吸着剤に接触させる工程を含むことを特徴とするアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
【化2】

一般式(A)に於いて、
104及びR105は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
pは1〜3の整数を表す。
【請求項3】
さらに、前記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーを水系溶媒で洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
【請求項4】
前記水系溶媒で洗浄する工程がpH5.8〜8.8の水系溶媒で洗浄する工程であることを特徴とする請求項2又は3に記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
【請求項5】
前記一般式(A)で表される基を有するアルコキシシリル含有モノマーの含水率が1.0質量%以下となるまで乾燥させることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
【請求項6】
前記吸着剤がシリカゲルであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のアルコキシシリル含有モノマーの精製方法。
【請求項7】
前記請求項2〜6の精製方法により精製されたことを特徴とするアルコキシシリル含有モノマー。
【請求項8】
前記アルコキシシリル含有モノマーが、含水率が1.0質量%以下であり、且つ無機イオン含有率が500ppm以下であるアルコキシシリル含有モノマーであることを特徴とする請求項7に記載のアルコキシシリル含有モノマー。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のアルコキシシリル含有モノマーにより形成されたことを特徴とする親水性ポリマー。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが、下記一般式(I−1)で表される構造及び下記一般式(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
【化3】

一般式(I−1)および(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101およびL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項11】
前記親水性ポリマーが、下記一般式(II−1)で表される構造及び下記一般式(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
【化4】

一般式(II−1)および(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201およびL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項12】
親水性ポリマーが、下記一般式(III−1)で表される構造及び下記一般式(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
【化5】

一般式(III−1)および(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、または有機アニオンを表す。

【公開番号】特開2010−241846(P2010−241846A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88515(P2009−88515)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】