説明

角度調節金具

【課題】一方の金具に対する他方の金具の逆方向の回動を確実に阻止することができ、更に小型化を図ることができる角度調節金具を提供する。
【解決手段】角度調節金具10は、受け部材3を備えた第1金具1、第2金具9及び楔部材7を具備している。受け部材3は、第2金具9のギヤ部9cに対して対向状に配置された受け板部3aと、その幅方向両側縁から屈曲形成された一対の対向状の両側板部3b,3bとを有する断面コ字状の金属板の屈曲成形品からなる。楔部材7は、両側板部3b,3bの間であって且つ受け板部3aとギヤ部9cとの間の楔状隙間5内に、該楔状隙間5の長さ方向に移動可能に且つ両側板部3b,3bにより幅方向の移動が規制された状態に配置されている。更に、楔部材7は、その歯部7bがギヤ部9cに噛合し且つその背面7cが受け板部3aの板面3kに当接して受けられることにより、第2金具9の逆方向の回動を阻止するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニングシート(例:座椅子)等に用いられる角度調節金具及び該角度調節金具を用いたリクライニングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、座椅子や車両座席等のリクライニングシートにおける背フレームの傾倒角度を調節するための角度調節金具として、例えば特開平9−19339号公報や特許第3766669号公報に記載されたものが知られている(特許文献1又は2参照)。
【0003】
前者の公報(特開平9−19339号公報)の角度調節金具(関節金具)は、第1金具と、該第1金具に回動可能に枢着された第2金具と、受けカム部材とを具備したものであって、第2金具に形成された凸曲面と受けカム部材に形成された凹曲面との間に、上方側へ漸次幅広となる楔状の隙間が形成されるとともに、この楔状隙間内にローラが転動自在に介挿されており、第2金具の所定方向の回動動作に伴いローラが楔状隙間の狭まり側へ転動移動することにより、ローラが凸曲面と凹曲面との間で強く挟まれて第2金具の展開方向回動が阻止されるように構成されている。この角度調節金具によれば、角度を無段階に調節することができるという利点がある。
【0004】
後者の公報(特許第3766669号公報)の角度調節金具(角度調整金具)は、ケース部を備えた第1金具(第1アーム)と、第1アームのケース部にて回動可能に枢着された第2金具(第2アーム)と、浮動楔部材と、を具備したものであって、第1金具のケース部に設けられた楔形窓部内には浮動楔部材が移動可能に配設されており、楔部材の歯部が第2金具のギヤ部に噛合し且つ楔部材の背面が楔形窓部の楔面に当接することにより、楔部材がギヤ部と楔形窓部の楔面との間に強く挟まれて第2金具の展開方向回動が阻止されるように構成されている。この角度調節金具によれば、ギヤ部の歯を小さくし得るので、ギヤ部の歯数を増やすことができ、そのため、角度の調節段数をより多くすることができるという利点がある。
【特許文献1】特開平9−19339号公報
【特許文献2】特許第3766669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の公報の角度調節金具では、ローラが凸曲面と凹曲面との間で挟まれることで第2金具の回動が阻止されるから、第2金具の回動阻止時には凹曲面に非常に大きな荷重が加わる。そのため、この荷重に耐えうるべく凹曲面を有する受けカム部材の肉厚を厚く設定する必要があり、その結果、角度調節金具の大きさが増大するという欠点があった。
【0006】
また、後者の公報の角度調節金具では、第1金具のケース部は互いに対向状に離間して配置された一対の壁部を有するものであって(同公報の特に段落[0011]及び図[図2]、[図3]参照)、該両壁部にそれぞれ楔形窓部(同公報の特に段落[0015]参照)が穿設されており、これら両方の楔形窓部の縁面からなる楔面に跨る態様にして楔部材が両楔形窓部内に配置されている。そのため、両方の楔形窓部の相互位置がずれている場合には、楔部材が両楔形窓部内でがたつきを生じ、その結果、両楔形窓部内での楔部材の移動がスムーズに行えなくなったり、更には楔部材が両楔形窓孔のいずれか一方から脱落したりして第2金具の回動を確実に阻止できなくなるという問題がある。特に、両楔形窓部が設けられる第1金具の両壁部は、第1金具を形成する平板状の金属板における当該両壁部となる部位にそれぞれ予め楔形窓孔を穿設しておき、当該両壁部が対向状に配置されるように金属板を屈曲して形成されるのが一般的であるから、両楔形窓部の相互位置は非常にずれ易い。そのため、上記の問題が発生し易かった。
【0007】
さらに、楔部材の背面が当接する各楔形窓部の楔面には、第2金具の回動阻止時に非常に大きな荷重が加わることから、この荷重に耐えうるようにすべく各楔面の幅はなるべく広い方が望ましい。しかしながら、各楔面の幅は第1金具の各壁部の肉厚寸法に対応しているので、各楔面の幅を広くするためには第1金具の各壁部の肉厚を厚くする必要があり、その結果、角度調節金具の大きさが増大するという問題も発生する。
【0008】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、互いに相対的に回動可能に連結された二つの金具のうち一方の金具に対する他方の金具の所定方向の回動を確実に阻止することができ、しかも小型化を図ることができる角度調節金具及びこれを用いたリクライニングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1] 受け部材を備えた第1金具と、
前記受け部材に対して相対的に正逆両方向に回動可能に回動軸を介して前記第1金具に連結されるとともに、周縁部にギヤ部が形成された第2金具と、
楔部材と、を具備し、
前記受け部材は、前記ギヤ部に対して対向状に配置された受け板部と、その幅方向両側縁から屈曲形成された一対の対向状の両側板部とを有する断面コ字状の金属板の屈曲成形品からなり、
前記楔部材は、前記受け部材の両側板部の間であって且つ前記受け板部と前記ギヤ部との間の楔状隙間内に、該楔状隙間の長さ方向に移動可能に且つ前記両側板部により幅方向の移動が規制された状態に配置されており、更に、前記ギヤ部側に向いた腹面に形成された歯部がギヤ部に噛合し且つ前記受け板部側に向いた背面が前記受け板部の板面に当接して受けられることにより、前記第2金具の逆方向の回動を阻止するものであることを特徴とする角度調節金具。
【0011】
[2] 前記楔部材をその歯部が前記ギヤ部と噛合しない状態に保持する保持凹部が、前記受け部材の両側板部の間における前記楔状隙間の広がり側に側板部と略平行に配置された保持板の縁部に形成されている前項1記載の角度調節金具。
【0012】
[3] 前記保持板は、前記受け部材とは別体に形成されており、
前記受け部材の受け板部の幅方向中間部に設けられた係合凹部と、前記保持板に設けられた係合凹部とが互いに嵌合されることにより、前記保持板が前記受け部材の受け板部の幅方向中間部に受け板部の幅方向に移動不能に係合されている前項2記載の角度調節金具。
【0013】
[4] 前記楔部材は、付勢ばねによって前記ギヤ部に向かって付勢されており、
前記付勢ばねは、該付勢ばねの両端部が前記保持板を跨いだ状態で付勢ばねの中間部が前記保持板に設けられた係止部に係止保持されており、
前記付勢ばねの両端部が付勢ばねに生じた復元力によって前記楔部材の背面の幅方向両端部に圧接することにより、前記楔部材が付勢されている前項2又は3記載の角度調節金具。
【0014】
[5] 前記受け部材の両側板部における前記保持板側の部位の間に、前記保持板における前記受け板部側の部位が配置された状態で、これらの部位が連結軸を介して互いに連結されており、
前記付勢ばねは、該付勢ばねの中間部で二つに分かれたコイル部を有するねじりコイルばねで形成されており、
前記付勢ばねの二つのコイル部が前記保持板を跨いだ状態で該両コイル部が前記連結軸に外挿されるとともに、前記両コイル部同士を連結した連結ばね線部が前記保持板の係止部に係止保持されており、
前記付勢ばねの両コイル部の両端部が各コイル部に生じたねじり復元力によって前記楔部材の背面の幅方向両端部に圧接することにより、前記楔部材が付勢されている前項4記載の角度調節金具。
【0015】
[6] 前記受け部材の両側板部における前記保持板側の部位の間に、前記保持板における前記受け板部側の部位が配置された状態で、これらの部位が連結軸を介して互いに連結されるとともに、
前記受け部材の両側板部における前記回動軸側の部位と、前記保持板における前記回動軸側の部位とが前記回動軸に枢支されている前項2〜5のいずれかに記載の角度調節金具。
【0016】
[7] 前記受け部材の受け板部における前記楔部材の背面と当接する部位には、前記ギヤ部側に屈曲するとともに受け板部の長さ方向に延びた第1ビード部が形成されている前項1〜6のいずれかに記載の角度調節金具。
【0017】
[8] 前記受け部材の受け板部における前記楔部材の背面とは当接しない部位には、受け板部の幅方向に延びた第2ビード部が形成されている前項1〜7ののいずれかに記載の角度直接金具。
【0018】
[9] 前項1〜8のいずれかに記載の角度調節金具の第1金具に座フレームが連結されるとともに、角度調節金具の第2金具に背フレームが連結されていることを特徴とするリクライニングシート。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以下の効果を奏する。
【0020】
[1]の発明では、第1金具の受け部材は、受け板部と両側板部とを有する断面コ字状の金属板の屈曲成形品からなるので、受け部材を容易に製作することができる。
【0021】
さらに、楔部材の腹面の歯部がギヤ部に噛合し且つ楔部材の背面が受け部材の受け板部の板面に当接して受けられることにより、第2金具の逆方向の回動が阻止されることから、第2金具の逆方向の回動阻止時には受け部材の受け板部に楔部材から大きな荷重が加わる。しかるに、この受け板部は、その幅方向両側縁から一対の対向状の両側板部が屈曲形成されることによって補強されている。そのため、受け板部の肉厚を必ずしも厚くしなくてもこの荷重を受け板部でしっかりと受けることができる。これにより、角度調節金具の小型化を図ることができるし、第2金具の逆方向の回動を確実に阻止することをできる。
【0022】
しかも、楔部材の背面は、上記従来の後者の角度調節金具のように互いに離間して配置された二つの楔形窓部の縁面からなる楔面で受けられるのではなく、受け部材の受け板部の板面で受けられるので、楔部材の背面を安定良く受けることができるし、更に、楔部材は受け部材の両側板部によって幅方向の移動が規制されているので、第2金具の逆方向の回動阻止時に楔部材が楔状隙間から幅方向に脱落する問題が発生せず、そのため第2金具の逆方向の回動を更に確実に阻止することができる。
【0023】
[2]の発明では、第2金具の逆方向の回動を許容させる場合には、楔部材を楔状隙間の広がり側へ移動させて保持凹部内に配置させることにより、楔部材の歯部がギヤ部と噛合しない状態に楔部材が保持される。これにより、第2金具の逆方向の回動を許容することができる。さらに、この状態では、楔部材の歯部はギヤ部と噛合していないので、保持板には大きな荷重が加わらない。これにより、保持板の肉厚を必ずしも厚くしなくても楔部材を保持することができ、すなわち保持板の肉厚をなるべく薄く設定することができ、もって角度調節金具の更なる小型化を図ることができる。
【0024】
[3]の発明では、保持板は、受け部材と別体に形成されているので、保持板を容易に製作することができる。
【0025】
さらに、保持板は受け部材の受け板部の幅方向中間部に受け板部の幅方向に移動不能に係合されているので、保持板が受け板部の幅方向に移動する不具合を防止することができ、もって楔部材を確実に保持することができる。
【0026】
[4]の発明では、楔部材が付勢ばねによってギヤ部に向かって付勢されているので、楔部材の歯部をギヤ部に確実に噛合させることができる。
【0027】
さらに、付勢ばねは、該付勢ばねの両端部が保持板を跨いだ状態で付勢板の中間部が保持板の係止部に係止保持されることにより、付勢ばねを確実に保持することができる。
【0028】
しかも、付勢ばねの両端部が楔部材の背面の幅方向両端部に圧接することにより、楔部材が付勢されているので、楔部材をその幅方向においてバランス良くギヤ部に向かって付勢することができ、これにより楔部材の歯部をギヤ部に更に確実に噛合させることができる。
【0029】
[5]の発明では、受け部材の両側板部における保持板側の部位の間に、保持板における受け板部側の部位が配置された状態で、これらの部位が連結軸を介して互いに連結されているので、受け部材の両側板部の間に保持板を確実に配置させることができるし、受け部材と保持板とを連結軸を介して一体的に連結することができ、もって角度調節金具を容易に組立製作することができる。
【0030】
さらに、付勢ばねの二つのコイル部が保持板を跨いだ状態で該両コイル部が連結軸に外挿されるとともに、両コイル部同士を連結した連結ばね線部が保持板の係止部に係止保持されることにより、付勢ばねを更に確実に保持することができるし、付勢ばねを保持する構成を簡素化することができる。
【0031】
しかも、付勢ばねの両コイル部の両端部が各コイル部に生じたねじり復元力によって楔部材の背面の幅方向両端部に圧接することにより、楔部材が付勢されているので、楔部材をその幅方向においてバランス良くギヤ部に向かって付勢することができ、これにより楔部材の歯部をギヤ部に更に一層確実に噛合させることができる。
【0032】
[6]の発明では、受け部材の両側板部における保持板側の部位の間に、保持板における受け板部側の部位が配置された状態で、これらの部位が連結軸を介して互いに連結されているので、受け部材の両側板部の間に保持板を確実に配置させることができるし、保持板と受け部材とを連結軸を介して一体的に連結することができ、もって角度調節金具を容易に組立製作することができる。
【0033】
さらに、受け部材の両側板部における回動軸側の部位と、保持板における回動軸側の部位とが回動軸に枢支されているので、受け部材と保持板と第2金具とを回動軸を介して一体的に連結することができ、もって角度調節金具を更に容易に組立製作することができる。
【0034】
[7]の発明では、受け部材の受け板部に第1ビード部が形成されることにより、受け板部を第1ビード部によって補強することができる。これにより、受け板部の肉厚を必ずしも厚くしなくても楔部材からの荷重を受け板部で確実にしっかりと受けることができる。
【0035】
さらに、この第1ビード部は、受け部材の受け板部における楔部材の背面と当接する部位においてギヤ部側に屈曲するとともに受け板部の長さ方向に延びて形成されているので、受け板部とギヤ部との間の隙間寸法、すなわち楔状隙間の寸法について、第2金具の逆方向の回動阻止時に楔部材の歯部がギヤ部に確実に噛合するように微調節を容易に行うことができる。
【0036】
[8]の発明では、受け部材の受け板部に第2ビード部が形成されることにより、受け板部を第2ビード部によって補強することができる。これにより、受け板部の肉厚を必ずしも厚くしなくても楔部材からの荷重を受け板部で確実にしっかりと受けることができる。
【0037】
さらに、第2ビード部は、受け板部における楔部材の背面とは当接しない部位に形成されているので、楔状隙間内における楔部材の移動が第2ビード部により阻害されるのを防止することができる。
【0038】
[9]の発明では、リクライニングシートの角度調節金具において上記発明の効果と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0040】
本実施形態に係る角度調節金具10は、図1に示すように、リクライニングシートとして例えば座椅子20に用いられるものである。座椅子20は、一方の部材としての座フレーム21と、他方の部材としての背フレーム22とを具備している。座フレーム21及び背フレーム22はそれぞれ略U字状に屈曲された金属製丸パイプからなるものである。そして、座フレーム21の左右両側枠部21a、21aの後端部と背フレーム22の左右両側枠部22a、22aの下端部とがそれぞれ本実施形態の左右一対の角度調節金具10、10を介して連結されることにより、座フレーム21に対して背フレーム22が展開状態から起立状態までの角度範囲内で傾倒可能なものとなされている。
【0041】
本実施形態の角度調節金具10は、図5Aに示すように、第1金具1、第2金具9、楔部材7、付勢ばね8等を具備している。
【0042】
第1金具1は、座フレーム21に取り付けられるものであり、第1金具本体部2と、楔部材7を受ける受け部材3と、保持板4とを備えている。第1金具本体部2と受け部材3と保持板4とは互いに別体に形成されるとともに、受け部材3と保持板4は第1金具本体部2に固定状態に連結されている。したがって、第1金具1は受け部材3と保持板4を固定状態に備えている。
【0043】
第1金具本体部2は、図5A、5Bに示すように、鋼板等の一枚の金属板が所定形状に屈曲されて成形された金属板の屈曲成形品からなるものであり、座フレーム21の左右各側枠部21aの後端部に固定状態に取り付けられる円筒状の座フレーム取付け部2aと、該座フレーム取付け部2aの後端部に一体形成された一対の対向状の板状外側壁部2b、2bと、該両外側壁部2b、2bの前側の下端部同士を連結した板状底壁部2cとを有しており、両外側壁部2b、2b間の上方及び後方は開口している。
【0044】
受け部材3は、鋼板等の一枚の金属板が断面コ字状に屈曲されて成形された屈曲成形品からなるものであり、受け板部3aと、該受け板部3aの幅方向両側縁から屈曲形成された一対の対向状の両側板部3b、3bとを有している。両側板部3b、3bは互いに離間して平行に配置されている。この受け部材3は、第1金具本体部2の両外側壁部2b、2b間に配置されるとともに、この状態で第1金具本体部2に後述する連結軸2f及び回動軸9jを介して一体に連結されている。
【0045】
保持板4の構成については後述する。
【0046】
第2金具9は、背フレーム22に取り付けられるものであり、第1金具1に回動軸9jを介して第1金具1(第1金具本体部2)及び受け部材3に対して相対的に正逆両方向に回動可能に連結されている。この第2金具9は、鋼板等の一枚の金属板が所定形状に屈曲されて成形された金属板の屈曲成形品からなるものであり、背フレーム22の左右各側枠部22aの下端部に固定状態に取り付けられる円筒状の背フレーム取付け部9aと、該背フレーム取付け部9aの下端部に一体形成された一対の対向状の板状ラチェット本体部9b、9bとを有している。両ラチェット本体部9b、9bは互いに同一形状及び同一寸法であり、互いに僅かに離間して配置されている。
【0047】
そして、図2、3、6A、6Bに示すように、第2金具9の両ラチェット本体部9b、9bが第1金具1の第1金具本体部2の両外側壁部2b、2b間に配置されるとともに、この状態で、第1金具本体部2の両外側壁部2b、2bにそれぞれ設けられた回動軸孔2eと第2金具9の両ラチェット本体部9b、9bの中心部にそれぞれ設けられた回動軸孔9iとに、リベットからなる回動軸9jがこれら回動軸孔2e、9iを連通した状態に挿通されており、これにより、第2金具9は回動軸9jに枢支されて該回動軸9jを中心に第1金具1(詳述すると第1金具本体部2及び受け部材3)に対して相対的に正逆両方向S、Gに回動可能に回動軸9jを介して第1金具1(詳述すると第1金具本体部2及び受け部材3)に連結されている。
【0048】
ここで本実施形態では、説明の便宜上、図4に示すように、第1金具1(第1金具本体部2)に対する第2金具9の正逆回動方向について、第1金具1に対する第2金具9の開き角度が小さくなる回動方向、すなわち第1金具1に対する第2金具9の折畳み方向を「正回動方向S(又は単に「正方向S」)」といい、第1金具1に対する第2金具9の開き角度が大きくなる回動方向、すなわち第1金具1に対する第2金具9の展開方向を「逆回動方向G(又は単に「逆方向G」)」という。
【0049】
さらに、図5Aに示すように、第2金具9の両ラチェット本体部9b、9bの先端側の周縁部は、回動軸9j(即ち回動軸孔9i)を中心とした円弧状に形成されるとともに、この円弧状周縁部にギヤ部9cが形成されている。このギヤ部9cは、円弧状周縁部に周方向に所定ピッチで並んだ複数個のギヤ歯部9dから構成されている。ギヤ歯部9dの個数は例えば5〜25個(詳述すると例えば15〜20個)の範囲内である。ただし本発明では、ギヤ歯部9dの個数は上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0050】
また、図3、6A、6Bに示すように、受け部材3は第1金具本体部2の両外側壁部2b、2b間に配置されている。さらに、この受け部材3の受け板部3aは、図4、7Aに示すように第2金具9のギヤ部9cに対して僅かに離間して対向状に配置されており、これにより、受け板部3aとギヤ部9cとの間に楔状隙間5が形成されている。この楔状隙間5は、その上側が狭まり側、下側が広がり側となっている。受け板部3aは、該受け板部3aに沿う長さ方向が円弧状には屈曲しておらず真直になるように形成されており、更に、ギヤ部9cとは交差しないように配置されている。また、受け部材3の両側板部3b、3bは、図6A、6Bに示すように第2金具9の両ラチェット本体部9b、9bのギヤ部9c、9cの両外側に配置されており、換言すると、受け部材3の両側板部3b、3bの間に、第2金具9の両ラチェット本体部9b、9bのギヤ部9c、9cが配置されている。
【0051】
楔部材7は、図4、7Aに示すように、受け部材3の両側板部3b、3bの間であって且つ楔状隙間5内に、該楔状隙間5の長さ方向に移動可能(すなわち楔状隙間5の狭まり側と広がり側とに移動可能)に且つ両側板部3b、3bにより幅方向の移動が規制された状態に配置されている。
【0052】
楔部材7は鋼等の金属製であり、図5Cに示すように、楔部材7のギヤ部9c側に向いた面7a(この面を「腹面7a」という)は、第2金具9におけるギヤ部9cが形成された両ラチェット本体部9b、9bの円弧状周縁部に対応する円弧面に形成されるとともに、この腹面7aにギヤ部9c(詳述するとギヤ部9cのギヤ歯部9d)と噛合する1個又は複数個の歯部7bが形成されている。歯部7bの個数は、ギヤ歯部9dの個数よりも少なく、例えば1〜8個である。本実施形態では歯部7bの個数は2〜6個である。ただし本発明では、歯部7bの個数は上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0053】
楔部材7の受け板部3a側に向いた面7c(この面を「背面7c」という)は、略円弧面に形成されており、受け板部3aの板面3kにその幅方向に沿って当接する面である。
【0054】
楔部材7の幅寸法は、受け部材3の両側板部3b、3b間の隙間寸法に対応して設定されており、すなわち例えば当該隙間寸法に対して等しいか又は若干小寸に設定されている。
【0055】
そして、この楔部材7は、図4、図7Aに示すように、楔状隙間5の狭まり側に移動された状態でその歯部7bがギヤ部9cに噛合し且つその背面7cが受け板部3aの板面3kに当接して受けられることにより、第2金具9の逆方向Gの回動を阻止するものである。一方、この楔部材7が楔状隙間5の広がり側に移動されることにより、その歯部7bがギヤ部9cと噛合しなくなって第2金具9の逆方向Gの回動が許容される(図8D参照)。
【0056】
保持板4は、図5Aに示すように受け部材3とは別体であって鋼板等の一枚の金属板から形成されており、楔状隙間5の広がり側(即ち下側)に移動された楔部材7をその歯部7bがギヤ部9cと噛合しない状態に保持する保持凹部4eを有するものである(図8D照)。
【0057】
この保持板4は、受け部材3の両側板部3b、3bの間における楔状隙間5の広がり側に両側板部3b、3bと平行に配置されている。そして、この保持板4における楔状隙間5側に向いた縁部(詳述すると上縁部)に、保持凹部4eがその開口を楔状隙間5に臨ませて切欠き形成されている。さらに、図4に示すように、この保持板4は、第1金具本体部2の底壁部2c上に当接して起立状に配置されている。
【0058】
図5Aに示すように、保持板4における受け板部3a側の端縁部(詳述すると上端縁部)には、略上向きに開口した係合凹部4fが切欠き形成されている。一方、受け部材3の受け板部3aにおける保持板4側の端縁部(詳述すると下端縁部)の幅方向中間部には、略下向きに開口した係合凹部3gが切欠き形成されている。そして、図6A、6Bに示すように、保持板4の係合凹部4fと受け板部3aの係合凹部3gとが互いに嵌合されることにより、保持板4は受け板部3aの下端縁部の幅方向中間部に受け板部3aの幅方向に移動不能に係合されている。
【0059】
また、図6A、6Bに示すように、保持板4における受け板部3a側の端部4aが、受け部材3の両側板部3b、3bにおける保持板4側の端部3c、3c(即ち下端部)の間に配置されるとともに、第1金具本体部2の両外側壁部2b、2bの間に受け部材3が配置されている。そしてこの状態で、これらの端部4a、3c、3cにそれぞれ設けられた連結軸孔4b、3d、3dと第1金具本体部2の両外側壁部2b、2bにそれぞれ設けられた連結軸孔2d、2dとに、リベットからなる連結軸2fがこれらの連結軸孔4b、3d、3d、2d、2dを連通した状態に挿通されている。これにより、保持板4における受け板部3a側の端部4aと受け部材3の両側板部3b、3bにおける保持板4側の端部3c、3cとが連結軸2fを介して互いに連結されるとともに、更に、これらの端部4a、3c、3cが第1金具本体部2の両外側壁部2b、2bに連結軸2fを介して連結されている。
【0060】
さらに、受け部材3の両側板部3b、3bにおける回動軸9j側の端部3e、3eが、第2金具9の両ラチェット本体部9b、9bの両外側に配置されるとともに、保持板4における回動軸9j側の端部4cは両ラチェット本体部9b、9bの間に配置されている(図3、4参照)。そしてこの状態で、図6A、6Bに示すように、これらの端部4c、3e、3eにそれぞれ設けられた回動軸孔4d、3f、3fに、前記回動軸9jがこれらの回動軸孔4d、3f、3fを連通した状態に挿通されることにより(図4参照)、受け部材3の両側板部3b、3bにおける回動軸9j側の端部3e、3eと保持板4における回動軸9j側の端部4cとが前記回動軸9jに枢支されている。
【0061】
したがって、受け部材3と保持板4は、連結軸2f及び回動軸9jを介して第1金具本体部2に固定状態に連結されている。一方、第2金具9は、第1金具本体部2と受け部材3と保持板4とに対して相対的に回動可能に回動軸9jに枢支されている。
【0062】
付勢ばね8は、楔状隙間5内に配置された楔部材7をギヤ部9cに向かって常時付勢するものである。この付勢ばね8は、図5Aに示すように該付勢ばね8の中間部で二つに分かれたコイル部8a、8aを有するねじりコイルばねで形成されている。両コイル部8a、8a同士は、両者の間に形成された中間部としての連結ばね線部8bを介して互いに一体に連結されている。
【0063】
そして、図6A、6Bに示すように、付勢ばね8の両コイル部8a、8aは、保持板4における受け板部3a側の端部4aを跨いだ状態に配置されるとともに、付勢ばね8の連結ばね線部8bは、保持板4の係合凹部4fの底部に形成された係止部としての係止溝部4gに差し込まれて係止保持されている。そしてこの状態で、付勢ばね8の両コイル部8a、8aが連結軸2fに外挿されて保持されている。さらに、図7Aに示すように、付勢ばね8の両コイル部8a、8aの直線状の両端部8c、8cが、各コイル部8aに生じたねじり復元力(詳述するとねじり弾性復元力)によって楔部材7の背面7cの幅方向両端部に均等に圧接しており、これにより楔部材7がギヤ部9cに向かって常時付勢されている。
【0064】
ここで、係止溝部4gは保持板4の係合凹部4fの底部に形成されていることから、この係止溝部4gに係止された付勢ばね8の連結ばね線部8bが、保持板4の係合凹部4fに嵌合された受け板部3aの係合凹部3gによって係止溝部4gから不慮に抜出するのを防止することができる。
【0065】
また、図5B、7Aに示すように、受け部材3の受け板部3aにおける楔部材7の背面7cと当接する部位には、ギヤ部9c側に屈曲するとともに受け板部3aの全幅領域に亘って受け板部3aの長さ方向に延びた第1ビード部3hが形成されている。この第1ビード部3hによって、受け板部3aが補強されるとともに、受け板部3aとギヤ部9cとの間の隙間寸法、すなわち楔状隙間5の寸法が微調節されている。
【0066】
さらに、受け部材3の受け板部3aにおける楔部材7の背面7cとは当接しない上端側の部位には、ギヤ部9c側に屈曲するとともに受け板部3aの幅方向に延びた第2ビード部3iが形成されている。この第2ビード部3iによって、受け板部3aが更に補強されている。
【0067】
また、図8A〜8Dに示すように、第2金具9のギヤ部9cにおける正回動方向Sの終端部には、楔状隙間5の狭まり側に移動された楔部材7を楔状隙間5の広がり側へ押圧して保持板4の保持凹部4e内に押し込む押圧突部9fが、ギヤ部9cよりも外側に突出して一体形成されている。
【0068】
一方、図9A、9Bに示すように、第2金具9のギヤ部9cにおける逆回動方向Gの終端部には、保持板4の保持凹部4e内に配置された楔部材7を保持凹部4e内から楔状隙間5へ押し出す押出突部9eが、ギヤ部9cよりも外側に突出して一体形成されている。
【0069】
また、図7A、7Bに示すように、保持板4の保持凹部4eにおける回動軸9j側の側縁部の開口側の端部には、歯部7bがギヤ部9cに噛合した楔部材7を第2金具9の正回動動作によって付勢ばね8の付勢力に抗して受け板部3a側へ案内する案内段部4hが、ギヤ部9cの位置よりも外側に突出するとともに下り勾配に傾斜した状態に形成されている。第2金具9の正回動動作時においては、歯部7bがギヤ部9cに噛合した楔部材7は、この押出段部4hによって受け板部3a側へ案内されて移動されることで、歯部7bとギヤ部9cとの噛合が解除される。
【0070】
次に、本実施形態の角度調節金具10の動作について以下に説明する。
【0071】
図7A〜7Cは、本実施形態の角度調節金具10の第2金具9を正方向Sに回動させる操作を説明する図である。
【0072】
図7Aに示した角度調節金具10では、楔部材7の歯部7bが付勢ばね8の付勢力によって第2金具9のギヤ部9c(詳述するとギヤ部9cのギヤ歯部9d)に噛合するとともに、この噛合状態で楔部材7が楔状隙間5の狭まり側に移動されることで該楔部材7の背面7cが受け部材3の受け板部3aの板面3kに当接して受けられており、これにより、第2金具9は第1金具1(詳述すると第1金具本体部2と受け部材3と保持板4)に対して相対的に逆方向Gの回動が阻止されている。この状態では、第2金具9は第1金具1に対して最大の開き角度約180°に配置されており、すなわち第2金具9は第1金具1に対して展開状態に配置されている。
【0073】
さらに、この状態では、第2金具9の後壁部の下端縁部に設けられた被ストッパ部9gが、第1金具1(詳述すると第1金具1の保持板4の後縁部)に設けられたストッパ部4iに衝合しており、これにより、もし仮に第2金具9に逆回動方向Gの過荷重が加わった場合であっても、第2金具9の逆方向Gの回動は、第2金具9の被ストッパ部9gが第1金具1のストッパ部4iに衝合することで更に強固に阻止される。
【0074】
図7Aに示した状態から第2金具9を正方向Sに回動させると、図7Bに示すように、この第2金具9の正回動動作に伴い、楔部材7が楔状隙間5の広がり側へ移動されるとともに、該楔部材7が案内段部4hに当接することで付勢ばね8の付勢力に抗して楔部材7が受け板部3a側へ案内され、その結果、楔部材7の歯部7bとギヤ部9cとの噛合が解除される。
【0075】
さらに第2金具9を正方向Gに回動させることにより、図7Cに示すように、付勢ばね8の付勢力によって楔部材7の歯部7bがギヤ部9の次段のギヤ歯部9dに「カチッ」と音を立てて噛合する。この噛合状態のもとで第2金具9が逆方向Gに回動すると、この逆回動動作に伴い楔部材7が楔状隙間5の狭まり側へ僅かに移動されて、該楔部材7の背面7cが受け部材3の受け板部3aの板面3kに当接して受けられる。これにより、第2金具9の逆方向Gの回動が阻止される。
【0076】
このように第2金具9を正方向Sに回動させることに伴い、楔部材7の歯部7bはギヤ部9cのギヤ歯部9dに次々と噛合される。
【0077】
図8A〜8Dは、本実施形態の角度調節金具10の第2金具9を逆方向Gに回動させる操作を説明する図である。
【0078】
図8Aに示した角度調節金具10では、第2金具9は第1金具1に対して正方向Sに最大に回動しており、第1金具1に対する第2金具9の開き角度は約95°である。この状態では、楔部材7の歯部7bが付勢ばね8の付勢力によって第2金具9のギヤ部9cに噛合するとともに、この噛合状態で楔部材7が楔状隙間5の狭まり側に移動されることで該楔部材7の背面7cが受け部材3の受け板部3aの板面3kに当接して受けられており、これにより、第2金具9は逆方向Gの回動が阻止されている。
【0079】
図8Aに示した状態から第2金具9を正方向Sに回動させると、図8Bに示すように、この第2金具9の正回動動作に伴い、楔部材7が押圧突部9fにより楔状隙間5の広がり側へ押圧されて楔部材7が保持板4の保持凹部4eに向かって移動されるとともに、その途中で該楔部材7が案内段部4hに当接することで付勢ばね8の付勢力に抗して楔部材7が受け板部3a側へ案内され、その結果、楔部材7の歯部7bとギヤ部9cとの噛合が解除される。さらに第2金具9を正方向Sに回動させることにより、図8Cに示すように、楔部材7が押圧突部9fにより保持凹部4e内に押し込まれて配置され、もって楔部材7は付勢ばね8の付勢力に抗してその歯部7bがギヤ部9cと噛合しない状態に保持されて、第2金具9の逆方向Gの回動が許容される。また、押圧突部9fで押圧されている楔部材7が保持凹部4eの底部に当接することにより、第2金具9の正方向Sの更なる回動が阻止される。
【0080】
さらに、この状態では、第2金具9の前壁部の前端縁部に設けられた被ストッパ部9hが、第1金具1(詳述すると第1金具1の受け部材3の受け板部3aの上端縁部)に設けられたストッパ部3jに衝合しており、これにより、もし仮に第2金具9に正回動方向Sの過荷重が加わった場合であっても、第2金具9の正方向Sの回動は、第2金具9の被ストッパ部9hが第1金具1のストッパ部3jに衝合することで更に強固に阻止される。
【0081】
図8Cに示した状態では、上述したように第2金具9の逆方向Sの回動が許容されているので、図8Dに示すように、第2金具9を逆方向Gに回動させることができる。
【0082】
図9A、9Bは、本実施形態の角度調節金具10の第2金具9の逆方向Gの回動を阻止するために、保持凹部4e内の楔部材7を保持凹部4e内から押し出す操作を説明する図である。
【0083】
図9に示した角度調節金具10では、楔部材7は保持凹部4e内に配置保持されてその歯部7bがギヤ部9cと噛合しておらず、したがって第2金具9は逆方向Gの回動が許容された状態なっている。この状態から、第1金具1に対して略展開状態に配置された第2金具9を逆方向Gに強く回動させることにより、押出突部9eで楔部材7を保持凹部4e内から楔状隙間5側へ押し出す。すると、図9Bに示すように、楔部材7は、付勢ばね8の付勢力によってその歯部7bがギヤ部9cに噛合するとともに、第2金具9の逆回動動作に伴い楔部材7が楔状隙間5の狭まり側へ僅かに移動されて、該楔部材7の背面7cが受け部材3の受け板部3aの板面3kに当接して受けられる。これにより、第2金具9の逆方向Gの回動が阻止される。
【0084】
而して、本実施形態の角度調節金具10には次の利点がある。
【0085】
この角度調節金具10によれば、第2金具9の逆方向Gの回動は、楔部材7の歯部7bが第2金具9のギヤ部9cに噛合することのみで阻止されるものではなく、更に、歯部7bがギヤ部9cに噛合した状態で楔部材7の背面7cが受け部材3の受け板部3aの板面3kに当接して受けられることにより阻止されるものなので、第2金具9の逆方向Gの回動阻止時にギヤ部9cのギヤ歯部9dに加わる荷重を低減することができる。そのため、ギヤ部9cのギヤ歯部9dを小さくすることができ、もってギヤ歯部9dの個数を増大することができる。これにより、角度の調節段数をより多くすることができる。
【0086】
また、第1金具1の受け部材3は、受け板部3aと両側板部3b、3bとを有する断面コ字状の金属板の屈曲成形品からなるので、受け部材3を容易に製作することができる。
【0087】
さらに、楔部材7の腹面7aの歯部7bがギヤ部9cに噛合し且つ楔部材7の背面7cが受け部材3の受け板部3aの板面3kに当接して受けられることにより、第2金具9の逆方向Gの回動が阻止されることから、第2金具9の逆方向Gの回動阻止時には受け部材3の受け板部3aに楔部材7から大きな荷重が加わる。しかるに、この受け板部3aは、その幅方向両側縁から一対の対向状の両側板部3b、3bが屈曲形成されることによって補強されている。そのため、受け板部3aの肉厚を必ずしも厚くしなくてもこの荷重を受け板部3aでしっかりと受けることができる。これにより、角度調節金具10の小型化(更には軽量化)を図ることができるし、第2金具9の逆方向Gの回動を確実に阻止することをできる。
【0088】
しかも、楔部材7の背面7cは、上記従来の後者の角度調節金具のように互いに離間して配置された二つの楔形窓部の縁面からなる楔面で受けられるのではなく、受け部材3の受け板部3aの板面3kで受けられるので、楔部材7の背面7cを安定良く受けることができるし、更に、楔部材7は受け部材3の両側板部3b、3bにより幅方向の移動が規制されているので、第2金具9の逆方向Gの回動阻止時に楔部材7が楔状隙間5から幅方向に脱落する問題が発生せず、そのため第2金具9の逆方向Gの回動を更に確実に阻止することができる。
【0089】
また、楔部材7をその歯部7bがギヤ部9cと噛合しない状態に保持する保持凹部4eが、受け部材3の両側板部3b、3bの間における楔状隙間5の広がり側に側板部3bと略平行に配置された保持板4の縁部に形成されている。したがって、第2金具9の逆方向Gの回動を許容させる場合には、楔部材7を楔状隙間5の広がり側へ移動させて保持凹部4e内に配置させることにより、楔部材7の歯部7bがギヤ部9cと噛合しない状態に楔部材7が保持される。これにより、第2金具9の逆方向Gの回動を許容することができる。さらに、この状態では、楔部材7の歯部7bはギヤ部9cと噛合していないので、保持板4には大きな荷重が加わらない。これにより、保持板4の肉厚を必ずしも厚くしなくても楔部材7を保持することができ、すなわち保持板4の肉厚をなるべく薄く設定することができ、もって角度調節金具10の更なる小型化を図ることができる。
【0090】
また、保持板4は、受け部材3とは別体に形成されているので、保持板4を容易に製作することができる。
【0091】
さらに、保持板4が受け部材3の受け板部3aの幅方向中間部に受け板部3aの幅方向に移動不能に係合されているので、保持板4が受け板部3aの幅方向に移動する不具合を防止することができ、もって楔部材7を確実に保持することができる。
【0092】
また、楔部材7が付勢ばね8によってギヤ部9cに向かって常時付勢されているので、楔部材7の歯部7bをギヤ部9cに確実に噛合させることができる。
【0093】
さらに、受け部材3の両側板部3b、3bにおける保持板4側の端部3c、3cの間に、保持板4における受け板部3a側の端部4aが配置された状態で、これらの端部4a、3c、3cが連結軸2fを介して互いに連結されているので、受け部材3の両側板部3b、3bの間に保持板4を確実に配置させることができるし、受け部材3と保持板4とを連結軸2fを介して一体的に連結することができ、もって角度調節金具10を容易に組立製作することができる。
【0094】
さらに、受け部材3と保持板4と更に第1金具本体部2の両外側壁部2b、2bとが連結軸2fを介して互いに連結されているので、受け部材3と保持板4と第1金具本体部2とを一体化することができる。
【0095】
さらに、受け部材3の両側板部3b、3bにおける回動軸9j側の端部3e、3eと、保持板4における回動軸9j側の端部4cとが回動軸9jに枢支されているので、受け部材3と保持板4と第2金具9とを回動軸9jを介して一体的に連結することができ、もって角度調節金具10を容易に組立製作することができる。
【0096】
また、付勢ばね8の二つのコイル部8a、8aが保持板4を跨いだ状態で該両コイル部8a、8aが連結軸2fに外挿されるとともに、両コイル部8a、8a同士を連結した連結ばね線部8bが保持板4の係止溝部4g(係止部)に係止保持されることにより、付勢ばね8を更に確実に保持することができるし、付勢ばね8を保持する構成を簡素化することができる。
【0097】
しかも、付勢ばね8の両コイル部8a、8aの両端部8c、8cが各コイル部8aに生じたねじり復元力によって楔部材7の背面7cの幅方向両端部に圧接することにより、楔部材7が付勢されているので、楔部材7をその幅方向においてバランス良くギヤ部9cに向かって付勢することができ、これにより楔部材7の歯部7bをギヤ部9cに更に一層確実に噛合させることができる。
【0098】
また、受け部材3の受け板部3aに第1ビード部3hが形成されることにより、受け板部3aを第1ビード部3hによって補強することができる。これにより、受け板部3aの肉厚を必ずしも厚くしなくても楔部材7からの荷重を受け板部3aで確実にしっかりと受けることができる。
【0099】
さらに、この第1ビード部3hは、受け部材3の受け板部3aにおける楔部材7の背面7cと当接する部位においてギヤ部9c側に屈曲するとともに受け板部3aの長さ方向に延びて形成されているので、受け板部3aとギヤ部9cとの間の隙間寸法、すなわち楔状隙間5の寸法について、第2金具9の逆方向Gの回動阻止時に楔部材7の歯部7bがギヤ部9cに確実に噛合するように微調節を容易に行うことができる。
【0100】
また、受け部材3の受け板部3aに第2ビード部3iが形成されているので、受け板部3aを第2ビード部3iによって補強することができる。これにより、受け板部3aの肉厚を必ずしも厚くしなくても楔部材7からの荷重を受け板部3aで確実にしっかりと受けることができ、もって角度調節金具10の更なる小型化を図ることができる。
【0101】
さらに、第2ビード部3iは、受け板部3aにおける楔部材7の背面7cとは当接しない部位に形成されているので、楔状隙間5内における楔部材7の移動が第2ビード部3iにより阻害されることはない。
【0102】
また、本実施形態の座椅子20では、角度調節金具10の第1金具1(第1金具本体部2)の座フレーム取付け部2aに座フレーム21の所定部位が固定状態に取り付けられて連結されるとともに、第2金具9の背フレーム取付け部9aに背フレーム22の所定部位が固定状態に取り付けられて連結されている。したがって、この座椅子20では、その角度調節金具10において上記効果と同様の効果を奏する。
【0103】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【0104】
また、本発明に係る角度調節金具は、座椅子や車両座席等のリクライニングシートに用いられるものであることに限定されるものではなく、その他に、ベッドや椅子におけるフットレスト、ヘッドレスト、アームレスト等に用いても良し、液晶ディスプレイパネル等のパネルの角度を調節する金具などに用いても良く、すなわち、一方の部材と他方の部材とを両部材のなす角度を任意に調節可能に連結する関節金具などに用いることができる。
【0105】
また、上記実施形態では、角度調節金具10における第1金具1に対する第2金具9の開き角度範囲は約95°〜約180°であるが、本発発明では、この開き角度は上記範囲であることに限定されるものではなく、使用目的や用途に応じて様々に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、リクライニングシート(例:座椅子や車両座席)などに用いられる角度調節金具に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る角度調節金具を備えたリクライニングシートとしての座椅子を示す斜視図である。
【図2】図2は、同角度調節金具の斜視図である、
【図3】図3は、同角度調節金具の平面図である。
【図4】図4は、図3中のZ−Z線断面図である。
【図5A】図5Aは、同角度調節金具の分解斜視図である。
【図5B】図5Bは、同角度調節金具の受け部材の断面図である。
【図5C】図5Cは、同角度調節金具の楔部材の斜視図である。
【図6A】図6Aは、同角度調節金具の組立途中の状態の斜視図である。
【図6B】図6Bは、同角度調節金具の一部切欠き斜視図である。
【図7A】図7Aは、同角度調節金具において第2金具の逆方向の回動が阻止された状態の概略断面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示した状態から第2金具を正方向に回動させる途中の状態の概略断面図である。
【図7C】図7Cは、図7Bに示した状態から第2金具の逆方向の回動が阻止された状態の概略断面図である。
【図8A】図8Aは、同角度調節金具において正方向に最大に回動した第2金具について逆方向の回動が阻止された状態の概略断面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに示した状態から第2金具の押圧突部で楔部材を楔状隙間の広がり側へ押圧する途中の状態の概略断面図である。
【図8C】図8Cは、図8Bに示した状態から第2金具の押圧突部で楔部材を保持凹部内に押し込んで保持させた状態の概略断面図である。
【図8D】図8Dは、図8Cに示した状態から第2金具を逆方向に回動させる途中の状態の概略断面図である。
【図9A】図9Aは、同角度調節金具において保持凹部内に保持された楔部材を第2金具の押出突部で保持凹部内から押し出す途中の状態の概略断面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに示した状態から楔部材が保持凹部内から押し出されて第2金具の逆方向の回動が阻止された状態の概略断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1:第1金具
2:第1金具本体部
2f:連結軸
3:受け部材
3a:受け板部
3b:側板部
3g:係合凹部
3h:第1ビード部
3i:第2ビード部
3k:板面
4:保持板
4e:保持凹部
4f:係合凹部
4g:係止溝部(係止部)
5:楔状隙間
7:楔部材
7a:腹面
7b:歯部
7c:背面
8:付勢ばね
8a:コイル部
8b:連結ばね線部(中間部)
8c:端部
9:第2金具
9c:ギヤ部
9j:回動軸
10:角度調節金具
20:座椅子(リクライニングシート)
S:正回動方向
G:逆回動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け部材を備えた第1金具と、
前記受け部材に対して相対的に正逆両方向に回動可能に回動軸を介して前記第1金具に連結されるとともに、周縁部にギヤ部が形成された第2金具と、
楔部材と、を具備し、
前記受け部材は、前記ギヤ部に対して対向状に配置された受け板部と、その幅方向両側縁から屈曲形成された一対の対向状の両側板部とを有する断面コ字状の金属板の屈曲成形品からなり、
前記楔部材は、前記受け部材の両側板部の間であって且つ前記受け板部と前記ギヤ部との間の楔状隙間内に、該楔状隙間の長さ方向に移動可能に且つ前記両側板部により幅方向の移動が規制された状態に配置されており、更に、前記ギヤ部側に向いた腹面に形成された歯部がギヤ部に噛合し且つ前記受け板部側に向いた背面が前記受け板部の板面に当接して受けられることにより、前記第2金具の逆方向の回動を阻止するものであることを特徴とする角度調節金具。
【請求項2】
前記楔部材をその歯部が前記ギヤ部と噛合しない状態に保持する保持凹部が、前記受け部材の両側板部の間における前記楔状隙間の広がり側に側板部と略平行に配置された保持板の縁部に形成されている請求項1記載の角度調節金具。
【請求項3】
前記保持板は、前記受け部材とは別体に形成されており、
前記受け部材の受け板部の幅方向中間部に設けられた係合凹部と、前記保持板に設けられた係合凹部とが互いに嵌合されることにより、前記保持板が前記受け部材の受け板部の幅方向中間部に受け板部の幅方向に移動不能に係合されている請求項2記載の角度調節金具。
【請求項4】
前記楔部材は、付勢ばねによって前記ギヤ部に向かって付勢されており、
前記付勢ばねは、該付勢ばねの両端部が前記保持板を跨いだ状態で付勢ばねの中間部が前記保持板に設けられた係止部に係止保持されており、
前記付勢ばねの両端部が付勢ばねに生じた復元力によって前記楔部材の背面の幅方向両端部に圧接することにより、前記楔部材が付勢されている請求項2又は3記載の角度調節金具。
【請求項5】
前記受け部材の両側板部における前記保持板側の部位の間に、前記保持板における前記受け板部側の部位が配置された状態で、これらの部位が連結軸を介して互いに連結されており、
前記付勢ばねは、該付勢ばねの中間部で二つに分かれたコイル部を有するねじりコイルばねで形成されており、
前記付勢ばねの二つのコイル部が前記保持板を跨いだ状態で該両コイル部が前記連結軸に外挿されるとともに、前記両コイル部同士を連結した連結ばね線部が前記保持板の係止部に係止保持されており、
前記付勢ばねの両コイル部の両端部が各コイル部に生じたねじり復元力によって前記楔部材の背面の幅方向両端部に圧接することにより、前記楔部材が付勢されている請求項4記載の角度調節金具。
【請求項6】
前記受け部材の両側板部における前記保持板側の部位の間に、前記保持板における前記受け板部側の部位が配置された状態で、これらの部位が連結軸を介して互いに連結されるとともに、
前記受け部材の両側板部における前記回動軸側の部位と、前記保持板における前記回動軸側の部位とが前記回動軸に枢支されている請求項2〜5のいずれかに記載の角度調節金具。
【請求項7】
前記受け部材の受け板部における前記楔部材の背面と当接する部位には、前記ギヤ部側に屈曲するとともに受け板部の長さ方向に延びた第1ビード部が形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の角度調節金具。
【請求項8】
前記受け部材の受け板部における前記楔部材の背面とは当接しない部位には、受け板部の幅方向に延びた第2ビード部が形成されている請求項1〜7ののいずれかに記載の角度直接金具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の角度調節金具の第1金具に座フレームが連結されるとともに、角度調節金具の第2金具に背フレームが連結されていることを特徴とするリクライニングシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2010−88682(P2010−88682A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262121(P2008−262121)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(391035256)株式会社ヒカリ (10)
【Fターム(参考)】