説明

解凍装置

【課題】 対向電極の間隔を解凍対象物の高さ寸法に合わせて調節できながら、解凍対象物の高さ寸法にかかわらずより好適な状態に解凍を行うことのできる解凍装置を提供する。
【解決手段】 解凍対象物Fを挟んだ対向電極20と、この対向電極20の間隔を解凍対象物Fの高さ寸法に合わせて調節する電極間隔調節機構(電極間隔調節機構部)120と、対向電極20に高周波電力を供給する高周波供給回路100と、対向電極20の間隔に応じて、高周波電力の対向電極20への供給条件を変更する条件変更部(制御部)60とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解凍対象物を挟む対向電極に高周波電力を供給する解凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、解凍装置は、冷凍食品等の解凍対象物を介在する対向電極と、対向電極に高周波電力を供給する高周波供給回路と、この高周波電力の供給を制御する制御部とを備える。対向電極に高周波電力が供給されることで、解凍対象物は対向電極間に生じる高周波電磁界によって通常−5℃〜−1℃程度まで誘電加熱解凍される。解凍対象物の解凍が進行して氷の一部が水に変化し始めると、解凍対象物の誘電体損失係数が変化して解凍対象物のインピーダンスが大きく変化する。
【0003】
かかる解凍装置では、解凍対象物の誘電体損失係数の変化に応じて、制御部が高周波供給回路の供給する高周波電力を適切に負荷に導くよう調節するものが知られている(例えば、特許文献1)。この解凍装置では、高周波供給回路は、高周波電力を発生する高周波電源部と、この高周波電源部と前記対向電極との間に直列に接続された、可変コンデンサ及び可変インダクタンス部材からなる整合回路とを備え、解凍対象物の誘電体損失係数の変化に応じて、可変コンデンサの容量を調整することで高周波電源部の出力インピーダンスと解凍対象物を含む負荷側のインピーダンスとの整合を図っている。これによって、高周波電源部と負荷側とのインピーダンスの整合がずれているときに生じる、負荷側からの反射波を原因とした、高周波電源部の不必要な電力負担が防止されている。
【0004】
また、近年、大きさや形状の異なる解凍対象物や、種類の異なる解凍対象物を同じ解
凍装置で解凍する機会が増えており、これに応じて対向電極間を解凍対象物の高さ寸法に合わせて調節することの可能な解凍装置が提供されている。
【特許文献1】特許第3249701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術にかかる解凍装置では、高周波電源部と負荷側とのインピーダンスの整合のために高周波電力の供給条件が調節されることが可能な一方で、解凍対象物の高さ寸法に合わせて電極間隔を調節する場合に、電極間隔の変化に応じて高周波電力の供給条件を好適に調節することができず、解凍対象物を好適な状態に解凍するには一定の限界があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、対向電極の間隔を解凍対象物の高さ寸法に合わせて調節できながら、解凍対象物の高さ寸法にかかわらずより好適な状態に解凍を行うことのできる解凍装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、解凍対象物を挟む対向電極と、この対向電極の間隔を解凍対象物の高さ寸法(対向電極の対向方向での寸法)に合わせて調節する電極間隔調節機構と、対向電極に高周波電力を供給する高周波供給回路と、対向電極の間隔に応じて、高周波電力の対向電極への供給条件を変更する条件変更部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電極間隔調節機構によって、対向電極の間隔が解凍対象物の高さ寸法に合わせて調節され、このとき条件変更部によって、対向電極の間隔に応じて高周波電力の対向電極への供給条件が変更され、この状態で高周波供給回路によって、対向電極に高周波電力が供給される。このため、対向電極の間隔の調節に対応して、対向電極へ供給される高周波電力が調節されることが可能になる。
【0009】
本発明では、上記高周波供給回路は、高周波電力を発生する高周波電源部と、この高周波電源部と対向電極との間に直列に接続された、キャパシタンス部材及びインダクタンス部材からなる整合回路とを備え、条件変更部は、対向電極の間隔の変更に応じて、インダクタンス部材のインダクタンスを可変に調節することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、条件変更部によって、対向電極の間隔の変更に応じてインダクタンス部材のインダクタンスが調節されることで、対向電極への高周波電力の供給条件がより適切に調節されることになる。すなわち、対向電極の電極間隔が変わると、解凍対象物を含めたキャパシタンス成分が変化し、この変化分を初期条件として、整合回路のインダクタンス成分を調節することで、インダクタンス成分とキャパシタンス成分とのより好ましいバランスをとった状態で、高周波電力の供給が可能になる。
【0011】
本発明では、上記対向電極のうち移動可能に構成された一方の電極(対向電極の双方が移動可能に構成されている場合におけるいずれか一方の電極を含む)から腕状の中継線が延設され、上記インダクタンス部材は、対向電極の対向方向に延びる長尺の金属製配線であり、かつ中継線の先端が所定範囲における長尺方向のいずれの位置においても摺接可能に配置され、対向電極の間隔の調節動作に連動して、中継線の先端との接触位置が長尺方向で移動されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、対向電極のうち移動可能に構成された一方の電極から延設された腕状の中継線が、対向電極の移動にともなって移動されることで、中継線の先端と対向電極の対向方向に延びる長尺の金属配線との接触位置が移動され、金属製配線のうち給電配線として機能する長さ寸法が変更されることで、整合回路のインダクタンス部材におけるインダクタンスが変更され、簡易な構成によって、対向電極の間隔の変化に連動して、インダクタンス部材のインダクタンスが変更されることが可能となる。
【0013】
本発明では、上記金属製配線は、長尺方向と直交する方向の幅寸法が長尺方向で連続的に変化する形状(幅寸法が連続的に変化する部分を有していれば連続的に変化しない部分を有する形状であっても含まれる)であることを特徴とする。この構成によれば、金属製配線における給電線路として機能する部位が長尺方向の長さ寸法の他、長尺方向と直交する方向の幅寸法によって、形状が変わるので、解凍対象物の高さ寸法に対応して変化する負荷インピーダンス変化に対してインダクタンス変更の調節が可能となる。
【0014】
本発明では、上記対向電極の間隔を検出する電極間隔検出部と、対向電極の電極間隔に応じた、高周波電力の出力レベルを示す出力レベル情報を記憶する記憶部とを更に備え、条件変更部は、電極間隔検出部で検出された対向電極の電極間隔に対応した、出力レベル情報の示す高周波電力の出力レベルで、高周波電力を出力させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、対向電極の電極間隔に応じた、高周波電力の出力レベルを示す出力レベル情報が記憶部で記憶されるとともに、電極間隔検出部で対向電極の間隔が検出され、条件変更部によって、検出された対向電極に対応した、出力レベル情報の示す高周波電力の出力レベルで高周波電力が出力されるため、対向電極の電極間隔に対応した出力レベルで高周波電力が出力されることが可能となる。
【0016】
本発明では、上記記憶部は、出力レベル情報とともに、対向電極の電極間隔に応じた高周波電力の出力時間を示す出力時間情報を記憶し、条件変更部は、電極間隔検出部で検出された対向電極の電極間隔に対応した、出力時間情報の示す出力時間で、高周波電力を出力させることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、出力レベル情報とともに、対向電極の電極間隔に応じた高周波電力の出力時間を示す出力時間情報が記憶部で記憶され、条件変更部によって、電極間隔検出部で検出された対向電極の電極間隔に対応した、出力時間情報の示す出力時間で、高周波電力が出力させられるため、対向電極の間隔に対応した出力時間及び出力レベルで高周波電力が出力されることが可能になる。また、高周波電力の出力レベル及び出力時間の双方から、高周波電力の出力が制御されるため、対向電極の間隔に応じた高周波電力の出力条件すなわち供給条件が、より綿密に変更されることが可能になる。
【0018】
本発明では、上記解凍対象物の重量を検出する重量検出部を更に備え、記憶部は、対向電極の電極間隔に対応した、解凍対象物の単位重量あたりの高周波電力の出力レベルを前記出力レベル情報として記憶し、条件変更部は、重量検出部の検出結果及び出力レベル情報に基づいて(解凍対象物の重量に単位重量あたりの出力レベルを乗じることを含む)、対向電極に出力するための高周波電力の出力レベルを算出し、この算出結果に従って高周波電力を出力させることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、解凍対象物の重量が重量検出部で検出され、対向電極の電極間隔に対応した、解凍対象物の単位重量あたりの高周波電力の出力レベルが出力レベル情報として記憶部で記憶され、条件変更部によって、重量検出部の検出結果及び出力レベル情報に基づいて、例えば、解凍対象物の重量に単位重量あたりの出力レベルを乗じる等によって、対向電極に供給される高周波電力の出力が制御されるため、解凍対象物の重量が高周波電力の出力レベルの調節に反映されることが可能となる。
【0020】
本発明では、上記高周波電力は、対向電極の電極間隔が大きい程、出力レベルが小さくなるとともに、出力時間が長くなるように設定されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、対向電極の電極間隔が大きい程、出力レベルが小さくなるとともに、出力時間が長くなるように、高周波電力の出力が制御されるため、解凍対象物の形状がいびつな場合であっても、解凍対象物をより好適な状態に解凍することが可能となる。経験的に、解凍対象物の高さ寸法が大きい程、解凍対象物の高さ寸法にばらつきがある場合や、高さ方向に突出した部位がある場合、すなわち解凍対象物の形状がいびつな場合が多い。この様に解凍対象物の高さ寸法にばらつきがある場合や解凍対象物の形状がいびつな場合に、所定以上の大きさで高周波電圧が印加されると、高さ寸法の小さい部位と比較して対向電極との間の距離が短いため、高さ寸法が大きい部位の解凍のみが著しく進んでしまったり、突出した部位での解凍が著しく進んでしまい、解凍対象物の解凍状態が不均一になってしまう。本発明では、対向電極の電極間隔が大きい程、すなわち解凍対象物の高さ寸法が大きい程、出力レベルが小さくなるとともに、出力時間が長くなるように高周波電力の出力が制御されるため、解凍対象物の形状がいびつな場合であっても、解凍対象物の解凍状態が不均一になることが効果的に防止される。
【0022】
本発明では、上記記憶部は、解凍対象物の種類毎に出力レベル情報を記憶し、条件変更
部は出力レベル情報のうち、解凍対象物の種類に対応する出力レベル情報に基づいて、前
記高周波電力の出力を制御することを特徴とする。この構成に従えば、解凍対象物の種類
毎に出力レベル情報が記憶部で記憶され、解凍対象物の種類に対応する出力レベル情報に
基づいて、条件変更部によって高周波電力の出力が制御されるため、解凍対象物の種類に
応じて、対向電極の間隔に応じた高周波電力の出力の調整が行われ、これによって、より
綿密に高周波電力の出力の調節が行われる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従えば、この対向電極の間隔の調節に対応して、対向電極へ供給される高周波電力が調節されるため、対向電極の間隔を解凍対象物の高さ寸法に合わせて調節できながら、解凍対象物の高さ寸法にかかわらず、従来よりも好適に解凍対象物を誘電加熱することができる。
【0024】
本発明に従えば、対向電極の電極間隔の変更に応じた、解凍対象物を含めたキャパシタンス成分の変化に対応して、整合回路のインダクタンス成分が調節され、インダクタンス成分とキャパシタンス成分とのより好ましいバランスをとった状態で、高周波電力を供給することができるため、対向電極の電極間隔を解凍対象物の高さ寸法に応じて変更できながら、従来よりも好適に解凍対象物を誘電加熱することができる。
【0025】
本発明に従えば、簡易な構成を用いて、対向電極の間隔の変化に連動して、整合回路のインダクタンス部材のインダクタンスが変更され、対向電極に供給される高周波電力を調節することができる。
【0026】
本発明に従えば、金属製配線における給電線路として機能する部分が長尺方向の長さ寸法の他、長尺方向と直交する方向の幅寸法によって、形状が変わるので、解凍対象物の高さ寸法に対応して変化する負荷インピーダンス変化に対してインダクタンスの変更の調節が可能となるため、簡易な構成によって、インダクタンス部材のインダクタンスの変更を調節することができる。
【0027】
本発明に従えば、対向電極の電極間隔に対応した出力レベルで高周波電力を出力することが可能となるため、対向電極の間隔を解凍対象物の高さ寸法に応じて変更することができながら、従来に比較して好適な状態に解凍対象物を解凍することができる。
【0028】
本発明に従えば、対向電極の間隔に対応した出力時間及び出力レベルで高周波電力が出力されるため、従来に比較して好適な状態に解凍対象物を解凍することができる。また、高周波電力の出力レベル及び出力時間の双方から、高周波電力の出力が制御され、対向電極の間隔に応じた高周波電力の出力条件すなわち供給条件が、より綿密に変更されることが可能となるため、より好適な状態に解凍対象物を解凍することができる。
【0029】
本発明に従えば、解凍対象物の重量が高周波電力の出力レベルの調節に反映されることが可能となるため、解凍対象物をより好適な状態に解凍することができる。
【0030】
本発明に従えば、高周波電力が、解凍対象物の高さ寸法が大きい程、すなわち対向電極の電極間隔が大きい程、出力レベルが小さくなるとともに、出力時間が長くなるように設定されることで、解凍対象物の形状がいびつな場合であっても、高さ寸法の大きい部位や突出した部位を他の部位に比較して著しく進ませてしまうことが効果的に防止されるため、解凍対象物をより均一な状態に解凍することができる。
【0031】
本発明に従えば、解凍対象物の種類に応じて、対向電極の間隔に応じた高周波電力の出力の調整が行われ、より綿密に高周波電力の出力の調節が行われるため、解凍対象物をより好適な状態に解凍することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための一形態について、図1〜図5を用いて説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる解凍装置1の外観斜視図である。解凍装置1は、略直方体の装置本体2の前方中央部に開閉自在なドア3が形成されるとともに、ドア3の上部にディスプレイ4及び操作ボタン5を備えてなるものである。ドア3は、上部に取り付けられた取手300が操作者によって前方下方側に引き倒されることで、下側を中心として傾倒可能に取り付けられ、解凍対象物Fを内部に入れるための出入り口となるように構成されている。ディスプレイ4は、LCD(Liquid Crystal Display )等から成り、操作者に対して解凍装置1の解凍動作(解凍対象物Fを解凍する動作)に関する設定等を表示するためのものである。操作ボタン5は、操作者に押下されて、解凍動作の開始等の解凍動作に関する所定の指示を受け付けるものである。
【0033】
図2は、図1に示す解凍装置1の内部構成を概略的に示す正面構成図である。装置本体2は、略直方体の金属製の筐体10を備え、筐体10内は間仕切り11、12で上下方向に仕切られ、上から収納室13、14、15が形成されている。収納室14には、陽極201及び陰極202からなる一対の対向電極20が収納されている。収納室14の上方には、陽極201が配置され、収納室14の下方で間仕切り12に近接して陰極202が配置されている。対向電極20は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる平板状の電極板からなる。陰極202は、接点部材21を介して例えば筐体10の側壁に接地されている。
【0034】
陰極202の下方には、所定の周波数(例えば、数MHz〜数十MHz)の高周波電力(例えば1kW〜数十kWのような比較的小〜中電力)を発生するための高周波電源部22が配設されている。筐体10内の片側(図1の左側)には、上下方向に長尺で平板状の金属製(例えば銅製)の板状部材(金属製配線部材)23が立設され、下部の接点部材25を介して高周波電源部22と電気的に接続されている。板状部材23は、絶縁部材24によって筐体10の底部から支持されている。
【0035】
陽極201(対向電極20のうち移動可能に構成された一方の電極)の上面の適所には、金属製の中継線部26が上方に延設され、途中で水平方向に屈曲されて腕状になり、板状部材23の側面に接触するように(摺接可能に)なっている。
【0036】
中継線部26の先端部には、好ましい態様としては金属製(例えば、アルミニウム製)のエアシリンダ27が取り付けられ、このエアシリンダ27内でピストンが板状部材23側に付勢されて、ピストンに取り付けられた金属製(例えば、アルミニウム製)の接触部材28を板状部材23に当接(押圧接触)させ、これによって中継線部26と板状部材23とが電気的に確実に接続されるように構成されている。接触部材28の板状部材23との当接面は、板状部材23の幅寸法以上の所定の幅寸法に対応しており、板状部材23との接触位置において、接触部材28が板状部材23の横幅全てに接触するように構成されている。
【0037】
対向電極20の上部には、昇降機構30が設けられている。昇降機構30は、陽極201を昇降させるためのものである。昇降機構30には、昇降源としてのモータ(図略)と、このモータに連結されたピニオンラック機構(図略)のラック(図略)に連結され、昇降可能に支持された長尺で金属製の支持部材31とからなる。支持部材31の下部には、陽極201が取り付けられている。この結果、モータ駆動により、陽極201が昇降し、この陽極201の昇降に応じて(合わせて)、接触部材28が上下方向にスライドするため、中継線部26と板状部材23との接触位置が上下方向に変化して、板状部材23の給電線路として機能する長さ寸法が対向電極20の間隔に応じて変化するようになっている。
【0038】
昇降機構30には、解凍対象物検知機構32が取り付けられている。図3は、解凍対象物検知機構32の詳細を示す構成図である。解凍対象物検知機構32は、下方に開口する金属製の略コ字状の部材321と、部材321の上部に重ねるように取り付けられた、部材321より小サイズの部材322と、部材321及び部材322の間に取り付けられたリミットスイッチ323とからなる。部材321は、2つの孔3210が形成された天板部3211とその両側に垂直腕3212とを持ち、垂直腕3212の下端が絶縁部材3213を介して陽極201の上面に固着されている。部材322は、支持部材31の下端に固着される天板部3221と、その両側に垂直腕3212とを持ち、垂直腕3212は孔3210に嵌挿され、かつ抜け止め材で抜け止め構造とされている。リミットスイッチ323は、部材321上面に取り付けられ、上側に可動切片が設けられている常開式であり、この可動切片が押し込められて、内部の固定切片と接することで、オン信号が制御部60に出力されるようになっている。
【0039】
部材322は、支持部材31の上昇にともなって上昇し、部材321を引き上げるようになっている。また、部材322は、支持部材31の下降にともなって、部材311とともに下降して、陽極201の表面の保護層203に解凍対象物Fが当接することで、部材311の移動が規制された後も単独で下降し、これによってリミットスイッチ323の可動切片を押圧して没入させる(固定切片と接触させる)構成となっている。
【0040】
収納室15には、高周波電源部22及び昇降機構30等の装置本体2の各部の動作を制御する制御部60が収納されている。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され、リミットスイッチ323からの電気信号を受信し、この電気信号に基づいて陽極201と陰極202との間の距離を調節するようになっている。具体的には、制御部60は、支持部材31を下降させ、リミットスイッチ323がオンされた電気信号を受信してから所定時間あるいは所定の駆動パルス数分、支持部材31を反転上昇させることで、陽極201の高さを、解凍対象物から所定距離(例えば、15mm)だけ上方に位置するように調節するものである。
【0041】
間仕切り12上には、一対のガイドレール50が平行に形成されており、ガイドレール50は、解凍対象物Fを載せた台車40の車輪41を案内するようになっており、後方(図面奥側)に車輪41を嵌挿させて移動を規制する凹部501が形成され、これによって、台車40を収納室14内における所定位置に収納し、解凍対象物Fを収納室14内に収納できるようになっている。
【0042】
図4は、図1に示す解凍装置1のブロック図である。高周波供給回路100は、陽極201に対して高周波電力を供給するためのものであり、高周波電力を発生する高周波電源回路101と、高周波電源回路101から高周波電力が出力される整合回路102とを備える。高周波電源回路101は、所定の周波数(例えば、数MH Z〜数十MH Z)の高周波電力(例えば1kW〜数十kWのような比較的小〜中電力)を発生し、配線を介して電気的に接続された整合回路102に出力する。
【0043】
整合回路102は、高周波電源回路101に対して直列及び並列に接続されるコンデンサ(キャパシタンス部材)1021、可変コンデンサ(キャパシタンス部材)1022と、コンデンサ1021及び可変コンデンサ1022の接続点に接続されるインダクタンス部材1023とからなる。可変コンデンサ1022の容量及びインダクタンス部材1023のインダクタンスは可変に調節されることができるようになっている。この構成によって、高周波電源回路101の出力インピーダンスと解凍対象物Fを含む負荷側のインピーダンスとの整合を図ることができて、対向電極20の電極間隔に応じて、高周波電力を効率良く負荷側に供給し得るようにしている。
【0044】
インダクタンス部材1023は、本実施の形態では、図2に示す板状部材23で実現され、陽極201の昇降に(対向電極20の間隔の調節動作に)連動して、接触部材28と板状部材23との接触位置が高さ方向で(板状部材23の長尺方向で)移動されることで、インダクタンスが変更されるようになっている。具体的には、陽極201が上昇すると、接触部材28の板状部材23との接触位置も高くなるため、板状部材23の配電線路として機能する長さ寸法が長くなり、インダクタンスが大きくなる。一方、陽極201が下降すると、接触部材28の板状部材23との接触位置も低くなるため、板状部材23の配電線路として機能する長さ寸法が短くなり、インダクタンスが小さくなる。これによって、簡易な構成で、対向電極20の間隔に連動して、キャパシタンスの変更分に対応させてインダクタンスを調節することができるようになっており、インピーダンスの整合が可動的に確保される。
【0045】
また、電極間隔調節機構部120は、昇降機構30及び解凍対象物検知機構32等によって実現されており、陽極201を昇降させることで対向電極20間の電極間隔を調節するものである。表示部130は、ディスプレイ4等によって実現され、高周波電源回路101からの高周波電力の出力レベル(電圧や電流の大きさレベル)や、出力時間についての設定等を操作者に対して表示するものである。
【0046】
操作部140は、操作ボタン5や、タッチパネルとして機能するディスプレイ4等によって実現されており、上記高周波電力の出力レベルや出力時間についての条件設定や、解凍動作の開始や中止等、解凍動作に関する所定動作を解凍装置1に実行させるための指示を操作者から受け付けるものである。
【0047】
制御部60は、高周波供給回路100の対向電極20への高周波電力の供給を制御するものであり、操作部140で受け付けられた設定等に基づいて、高周波電力の供給がなされるようにするものである。すなわち、制御部60は、電力供給の条件変更部としての機能を果たすものである。また、制御部60は、電極間隔調節機構部120の対向電極20の電極間隔の調節を制御して、陽極201と解凍対象物Fとの距離が所定の距離になるように調節させるものである。さらに、制御部60は、表示部130による表示を制御して、高周波供給回路100の高周波電力の供給に関する現在の設定や、操作部140で受け付けられた、解凍対象物Fの種類(例えば、豚肉、牛肉、魚等の食品の種類)の選択等を表示させるものである。
【0048】
以下、解凍装置1が解凍対象物Fを解凍する動作を説明する。ドア3が操作者によって開けられて、解凍対象物Fを搭載する台車40がガイドレール50に沿って収納室13内に入れられて、対向電極20に挟まれた状態になる。ドア3が操作者によって閉められ、操作部140に解凍動作の開始が入力され、これによって解凍動作が開始される。具体的には、昇降機構30が対向電極20の間隔を調節するため、支持部材31を下降させる。支持部材31の下降にともなって、陽極201が下降する。陽極201が保護層203を介して解凍対象物Fに当接した後、部材321の下降が規制されて部材322のみが下降し、天板部3221に押圧されて、リミットスイッチ323がオンされる。リミットスイッチ323のオン信号は制御部60に入力され、制御部60がオン信号を入力してから所定時間だけ支持部材31を反転上昇させることで、解凍対象物Fと陽極201との間隔が所定距離だけあけられて、対向電極20の間隔の調節が行われる。
【0049】
また、陽極201の昇降にともなって、中継線部26も昇降されるため、接触部材28と板状部材23との接触位置も上下することになり、対向電極20の間隔の変更によるキャパシタンス成分の変更に対応して、インダクタンス成分が自動的に調節される。すなわち、対向電極20の間隔が大きくなるほど、すなわち、キャパシタンス成分が小さくなるほど、接触部材28と板状部材23との接触位置が高くなって、給電線路として機能する寸法が長くなるため、インダクタンス成分が大きく設定されて、インダクタンス成分とキャパシタンス成分との整合が図られる。一方、対向電極20の間隔が小さくなるほど、すなわち、キャパシタンス成分が大きくなるほど、接触部材28と板状部材23との接触位置が低くなって、給電線路として機能する寸法が短くなるため、インダクタンス成分が小さく設定されて、インダクタンス成分とキャパシタンス成分との整合が図られる。
【0050】
上記対向電極20の電極間隔の調整及び電極間隔の調整に対応したキャパシタンス成分の変更に合わせてインダクタンス成分の調節後、解凍動作に関する種々の設定が表示部130に表示される。そして、高周波電源部22によって高周波電力の出力がなされ、対向電極20に対して高周波電力の供給がなされるため、対向電極20間に高周波電圧が印加される。これによって、対向電極20に介在される、通常−25℃〜−15℃の冷凍状態にある解凍対象物Fは、対向電極20の間に生じる高周波電磁界によって誘電加熱され、例えば次加工に適したマイナス温度(例えば−1℃〜−5℃)まで昇温される。
【0051】
上記構成によって、本実施の形態にかかる解凍装置1では、対向電極20の電極間隔に応じて、キャパシタンス成分の変更分を初期設定として、インダクタンス部材1023のインダクタンスが調節されるため、解凍対象物Fの高さに応じて対向電極20の間隔を変更できるとともに、リアクタンス成分とキャパシタンス成分とのバランスをとった状態で高周波電力を出力できるため、解凍対象物Fをより好適な状態に解凍することができる。さらに、整合回路102におけるインダクタンス部材1023のインダクタンスは、陽極201の昇降に連動した板状部材23と中継線部26との接触位置の変更によって調節されるため、簡易な構成で対向電極20に供給される高周波電力を調節することができる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、陽極201の昇降に連動した板状部材23と中継線部26との接触位置の変更によって、インダクタンス部材1023のインダクタンスを変更する構成であるが、必ずしもこの構成に限定されず、陽極201の昇降に連動してインダクタンス部材1023のインダクタンスが変更される構成でなくてもよい。たとえば、解凍装置1は、対向電極20の電極間隔を検出する機構を備え、該機構によって検出された対向電極20の電極間隔に基づいて、インダクタンス部材1023のインダクタンスが制御部60によって調節される構成であってもよい。また、本発明では、整合回路102におけるインダクタンス部材1023のインダクタンスを調節することで、対向電極20に供給される高周波電力の供給条件を変更可能にする構成に限定されず、可変コンデンサ1022の容量等の他の高周波電力の供給条件が調節されてもよい。
【0053】
また、対向電極20の間隔は、陽極201が移動されることで調節されるに限定されず、陰極202が移動されて調節されてもよく、解凍対象物Fの高さ寸法に応じて陽極201と陰極202との間の間隔が相対的に変化すればよい。
【0054】
なお、本実施の形態では、対向電極20の間隔を調節するために、解凍対象物検知機構32を用いて解凍対象物Fの存在が検知されているが、これに限定されず光学的なセンサ等によって解凍対象物Fの高さが検知される態様としたものでもよい。また、対向電極20の間隔を調節するための昇降機構30が用いられているが、これに限定されず、手動で調節されてもよい。
【0055】
以下、本発明の第2の最良の実施の形態について図5を用いて説明する。図5(A)は、第2の実施の形態で用いられる板状部材23、23A、23Bを示し、(B)は板状部材23、23A、23Bと接触部材28との接触位置の変化に応じたインダクタンスの変化を示すグラフである。本実施の形態では、板状部材23が取り外し可能に構成され、板状部材23A、板状部材23Bに取り替えることが可能に構成されていることが、上述した第1の最良の実施形態とは異なっている。
【0056】
図5(A)で示すように、板状部材23は、横幅寸法(長尺方向と直交する方向の幅寸法)が高さ方向(長尺方向)で同寸法であるに対し、板状部材23Aは、横幅寸法が下方に向かって大きくなるように連続的に変化する形状に形成され、板状部材23Bは、横幅寸法が上方に向かって大きくなるように連続的に変化する形状に形成されている。
【0057】
図5(B)では、板状部材23と接触部材28との接触位置の変化に応じたインダクタンスの変化をグラフCで、板状部材23Aと接触部材28との接触位置の変化に応じたインダクタンスの変化をグラフAで、板状部材23Bと接触部材28との接触位置の変化に応じたインダクタンスの変化をグラフBで示す。
【0058】
グラフA,、グラフBで示すように、板状部材23A、23Bは、横幅寸法が高さ方向で連続的に異なるように形成されているため、接触部材28と接触する横幅寸法が接触部材28の高さ位置で異なるようになっている。板状部材23Aでは、対向電極20の間隔が大きくなるに比例して、インダクタンスの増加分が板状部材23より小さくなる。一方、板状部材23Bでは、対向電極20の間隔が大きくなるに比例して、インダクタンスの増加分が板状部材23より大きくなる。このように、板状部材23、23A、23Bのうちいずれが取り付けられるかによって、対向電極20の間隔の変化に応じた好適なインダクタンスの変化量のものが選択的に採用可能となる。
【0059】
上記のように構成されることで、本実施の形態では、配線部材23における給電線路として機能する長さ寸法によってだけでなく、横幅寸法によっても、中継線部26と接触部材28との接触位置の移動によるインダクタンスの変化を調節することが可能となるため、簡易な構成によって、インダクタンス部材のインダクタンスの変化を調節することができる。また、板状部材23、23A、23Bのうち、解凍処理を行う頻度の高い解凍対象物Fの種類に応じたものが取り付けられることで、対向電極20に供給される高周波電力をより綿密に調節することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、板状部材23、23A、23Bのうちから最適なものが選択的に取り付け可能になっているが、本発明では、これに限定されず、横幅寸法が長尺方向で連続的に変化する形状を有する一種類の金属製の配線部材が支持体に一体的に取り付けられていてもよい。
【0061】
なお、板状部材23、23A、23Bの形状はこれに限定されず、横幅寸法が長尺方向で連続的に変化する形状を有していれば、一部に不連続な形状部分があってもよい。
【0062】
以下、本発明の第3の最良の実施の形態を図6〜図11を用いて説明する。図6は、第3の実施の形態にかかる解凍装置1aを概略的に示す正面構成図である。解凍装置1aは、昇降機構30における対向電極20の間隔を検知可能な所定位置に電極間隔検知センサ70が配置されていること、及びガイドレール51の凹部511の下部に重量センサ512が内蔵されていることが、解凍装置1の概略構成と異なっている。電極間隔検知センサ70は、例えばロータリーエンコーダ等で実現され、例えば、昇降機構30に内蔵されるモータ(図略)の駆動力の出力軸に取り付けられたギヤに噛み合う、ギヤの回転軸に取り付けられることで、モータの正逆の回転量を検知して、対向電極20の電極間隔を検知するようになっている。重量センサ512は、圧電素子等を用いたロードセル等からなり、凹部511内に解凍対象物Fを搭載した台車40の車輪41が嵌挿した場合に、車輪41に押圧されるように構成されていることで、解凍対象物Fを搭載した台車40の重量を検出して、検出信号を制御部60に出力するようになっている。
【0063】
図7は、図4に示す解凍装置1aのブロック図である。解凍装置1aは、電極間隔検出部150、重量検出部160及び記憶部170を備える点で、図4に示すブロック図で示す解凍装置1とは構成が異なっている。
【0064】
電極間隔検出部150は、図6で示す電極間隔検知センサ70等で実現され、電極間隔調節機構部120で調節された対向電極20の電極間隔を検出するものである。電極間隔検出部150は、検出した電極間隔を制御部60に出力する。重量検出部160は、図6で示す重量センサ512等から実現され、解凍対象物Fの重量を検出して制御部60に対して出力するものである。記憶部170は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性メモリによって実現され、対向電極20の電極間隔に応じた、高周波電源回路101からの高周波電力の出力設定を示す駆動情報Dを格納するものである。本実施の形態では、駆動情報Dは、対向電極20の電極間隔に応じた、解凍対象物Fの単位重量についての高周波電力の出力レベルを示す出力レベル情報と、高周波電力の出力時間を示す出力時間情報とを含むものである。
【0065】
図8は、駆動情報Dの内容の一例を示す図である。駆動情報Dは、解凍対象物の種類毎に駆動情報D1〜Dnまで用意されており、本実施の形態では、駆動情報D1は牛肉、駆動情報D2は豚肉、駆動情報D3は鶏肉に対応するものとなっている。また、本実施の形態では、操作部140で解凍対象物の種類の選択が操作者から受け付けられ、駆動情報D1〜Dnのうち、操作部で受け付けた解凍対象物の種類の選択に対応する情報に基づいて、高周波電力の出力が制御されるようになっている。駆動情報Dは、対向電極20の電極間隔に応じた、単位重量あたりの出力レベル(W/kg)と、出力時間(分)とを示すものである。駆動情報Dでは、対向電極20の間隔が大きい程、出力レベルが小さくなるように設定される(W1>W2>W3>W4)とともに、出力時間が長くなるように設定されている(t1<t2<t3<t4)。
【0066】
解凍対象物Fの高さ寸法が大きい場合には、解凍対象物Fの形状がいびつ(高さ寸法にばらつきがあったり、突出した部位がある状態)であることが経験則上多いが、このような形状のいびつな解凍対象物Fに対して所定以上大きい出力レベルで高周波電力が出力されると、解凍対象物Fの高さの高い部位や突出した部位の解凍が高さの低い部位の解凍よりも著しく進んでしまう。このため、解凍対象物Fの解凍状態が不均一になり、好適な状態に解凍できなくなる。このような解凍対象物Fの解凍状態の不均一を防止するため、駆動情報Dでは、対向電極20の間隔が大きい程、すなわち、解凍対象物Fの形状がいびつである可能性が高い程、出力レベルが小さく設定されるとともに、出力時間が長く設定される。
【0067】
図7に戻って、制御部60は、操作部140で受け付けた操作や、電極間隔検出部150で検出された対向電極20の電極間隔、重量検出部160で検出された解凍対象物Fの重量が入力され、これらの入力信号に基づいて、記憶部170に記憶されている駆動情報Dを参照して、高周波電源回路101の高周波電力の出力を制御する。例えば、制御部60は、操作部140で受け付けた解凍対象物Fの種類に基づいて、駆動情報D1〜Dnのうちいずれかを参照して(例えば、牛肉の選択を受け付けた場合には駆動情報D1を参照して)、電極間隔検出部150で検出された対向電極20の電極間隔に対応した出力レベル(W/kg)と、出力時間(分)とを取得する(対向電極20の間隔が123cmならば、出力レベルW3,出力時間t3を取得する)。
【0068】
制御部60は、重量検出部160で検出された解凍対象物Fの重量(kg)と、駆動情報Dより取得した出力レベル(W/kg)とを乗じて(重量検出部160の検出結果及び出力レベル情報に基づいて)、高周波電力の出力レベル(W)を算出し、算出した出力レベル及び駆動情報Dより得た出力時間で(算出結果に従って)高周波電力を出力させる。これによって、高周波電力の対向電極20の供給条件を、対向電極20の間隔に応じた、すなわち解凍対象物Fの形状に応じた好適なものに設定することができるようになっている。
【0069】
図9は、図6で示す解凍装置1aが解凍対象物Fを解凍する解凍処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、操作部140で解凍処理の開始の指示を受け付けた場合に実行される。まず、電極間隔調節機構部120で、対向電極20の電極間隔の調節が行われる(S1)。調節された電極間隔は、電極間隔検出部150で検出され、制御部60に出力される(S2)。重量検出部160で解凍対象物Fの重量が検出され、制御部60に出力される(S3)。その後、対向電極20の電極間隔及び解凍対象物Fの重量が表示された設定画面が表示部130に表示される(S4)。
【0070】
図10は、図9に示すステップS4で表示される設定画面を説明する図である。ディスプレイ4は、操作者の指等で押圧されることが可能なタッチパネルになっており、設定画面には、解凍対象物Fの種類を選択するための選択アイコン群400と、解凍対象物Fの情報が表示される解凍対象物情報表示領域410と、高周波電力の出力条件を表示するための出力条件表示領域420と、解凍時間を調節するための時間調節ボタン430とが表示されるようになっている。
【0071】
本実施形態では、選択アイコン群400は、解凍対象物Fの種類として牛肉を選択するための「Beef」アイコン401、豚肉を選択するための「Pork」アイコン402、鶏肉を選択するための「Chicken」アイコン403からなる。操作者によって選択アイコン群400のうちいずれか1が押圧されて選択されると、選択されたものが光るようになっており、図10では「Beef」アイコン403が選択された状態を示しているが、ステップS4では操作者に選択されていないため選択アイコン群400のいずれもが光っていない状態で表示される。
【0072】
解凍対象物情報表示領域410には、解凍対象物Fの重量と、高さ寸法(最も高い位置においての高さ寸法)が表示され、図10では、重量が12.3kgで、高さ寸法が105mmであると表示されている。出力条件表示領域420には、高周波電力の出力レベル(kW)と、出力時間(分)とが表示可能にされ、図10でもこれらが表示されているが、ステップS4では高周波電力の出力レベル及び出力時間は算出されていないため、表示されないようになっている。時間調節ボタン430は、図10で示すように上矢印ボタンと下矢印ボタンとが表示され、操作者にいずれか1が押圧されることで、上部に表示される解凍対象物Fの解凍時間、すなわち高周波電力の出力時間の調節が行われるが、ステップS4では高周波電力の出力時間が取得されていないため、解凍時間の表示はなされず、出力時間の調節はできないようになっている。
【0073】
図9に戻って、操作者から解凍対象物Fの種類の選択を受け付けたかどうか制御部60で判断され(S5)、解凍対象物Fの種類の選択を受け付けたと判断されない場合には(S5でNO)、ステップS5が繰り返し実行される。例えば、図10を参照して、選択アイコン群400のうちいずれか1が押圧されることで解凍対象物Fの種類の選択が受け付けられ、選択信号が制御部60に入力されるが、制御部60では、この選択信号の入力があるか判断される。
【0074】
図9に戻って、解凍対象物Fの種類の選択を受け付けたと判断される場合には(S5でYES)、制御部60によって、記憶部170に格納される駆動情報Dのうち選択された種類に応じた1のものが参照される(S6)。例えば、牛肉が選択された場合には、駆動情報D1が参照されて、ステップS2で検出された対向電極20の電極間隔に応じた、単位重量(1kg)あたりの高周波電力の出力レベル(W)と、出力時間(分)とを取得する。次に、ステップS6で取得した単位重量(1kg)あたりの高周波電力の出力レベル(W)に、ステップS3で検出された解凍対象物Fの重量(kg)を乗じて、高周波電力の出力レベル(W)を算出する。
【0075】
ステップS8で、ステップS7で算出した高周波電力の出力レベル及びステップ6で得た出力時間とが表示部130によって表示される。図10を参照して、例えば、出力条件表示領域420に出力レベル及び出力時間とが表示される。図10中では、解凍対象物の重量12.3kgに単位重量あたりの電力レベル0.15(W/kg)を乗じた1.85kWが、出力レベルとして表示されるとともに、出力時間として12分が表示されている。
【0076】
図9に戻って、高周波電力の対向電極20への供給に関する設定調節が操作部140に受け付けられたか制御部60によって判断され(S9)、設定調節が受け付けられたと判断されない場合には(S9でNO)、後述するステップS11が実行され、設定調節が受け付けられたと判断される場合には(S9でYES)、制御部60によって受け付けた調節に応じて高周波電力の供給の設定が変更される(S10)。例えば、図10を参照して、時間調節ボタン430の上矢印ボタンと下矢印ボタンとのうちいずれか1が押圧されることで、高周波電力の出力時間の調節が行われ、この調節に応じて高周波電力の出力時間の設定が変更される。また、ステップS10で、高周波電力の出力レベルの設定の変更が受け付けられ、出力レベルの調節が行われてもよい。
【0077】
図9に戻って、高周波電力の出力開始の指示が操作部140に受け付けられたか、制御部60によって判断され(S11)、高周波電力の出力開始の指示が受け付けられたと判断されない場合には(S11でNO)、再度ステップS9に戻り、高周波電力の出力開始の指示が受け付けられたと判断される場合には(S11でYES)、出力時間及び出力レベル等の設定に応じて高周波電源回路101から高周波電力が出力され、対向電極20に対して高周波電力の供給が行われる(S12)。その後、処理は終了する。
【0078】
図11は、図6に示す駆動情報Dを作成するための駆動情報作成画面の一例を示す図である。駆動情報作成画面には、高周波電力の出力レベル入力画面と、出力時間入力画面とがあり、図11では出力レベル入力画面が示されている。出力レベル入力画面には、解凍対象物Fの種類及び対向電極20の電極間隔に応じた、単位重量(kg)あたりの出力レベル(W)の値を入力するためのカーソル群440が表示されている。
【0079】
カーソル群440の下方にはキー群450が表示され、キー群450のうちテンキーが押圧されることで、カーソル群440に操作者の任意の値が入力される。また、「↑」キーが押圧されることで、カーソル群440内で出力レベルの入力可能なカーソル(以下、「選択カーソル」とする)が上方向に変更され、「↓」キーが押圧されることで、選択カーソルが下方向に変更される。そして、「取消」キーが押圧されることで、選択カーソルに入力された値が取り消され、「確定」キーが押圧されることで、選択カーソルに入力された値が確定されるとともに、選択カーソルが変更される。「変更終了」キーが押圧されると、カーソル群440内の入力内容に設定が確定され、出力時間入力画面が表示される。出力時間入力画面でも、出力レベル入力画面と同様に、操作者から出力時間の入力が受け付けられ、駆動情報Dにおける出力時間を設定することが可能になっている。
【0080】
駆動情報作成画面には、「戻る」キー460が表示され、「戻る」キー460が押圧されることで、所定の初期画面に戻るようになっている。本実施の形態では、駆動情報Dは、解凍装置1aの出荷前に上記のように作成され、出荷後においても操作者によって設定変更可能になっており、これによって、操作者の解凍装置1aの使用によって得た経験に基づいて、駆動情報Dを変更することができるため、より好適に解凍対象物Fを解凍することができるようになっている。
【0081】
上記のように構成することで、本実施の形態かかる解凍装置1aでは、対向電極20の電極間隔に対応した出力レベルで高周波電源回路101から高周波電力を出力することが可能となるため、対向電極20の間隔を解凍対象物Fの高さ寸法に応じて変更することができながら、従来に比較して好適な状態に解凍対象物Fを解凍することができる。
【0082】
また、対向電極20の間隔に対応した出力時間及び出力レベルで高周波電力が出力されるため、対向電極20の間隔が大きい程、すなわち解凍対象物Fの形状がいびつである可能性が高い程、出力レベルを小さくするとともに、出力時間が長くなるようにして、解凍対象物Fの解凍状態が不均一になることを防止することができ、従来に比較して好適な状態に解凍対象物Fを解凍することができる。さらに、解凍対象物Fの重量と出力レベル情報とに基づいて、高周波電力の出力レベルが調節されるため、解凍対象物Fの重量を高周波電力の出力に反映させることができ、より好適な状態に解凍対象物Fを解凍することができる。
【0083】
また、駆動情報Dが、解凍対象物Fの種類に応じて複数用意されており、操作部140で受け付けられた種類の選択に応じた駆動情報Dに基づいて、高周波電力の出力レベル及び出力時間が設定されるため、解凍対象物Fの種類に応じて綿密に高周波電力の出力の調節を行うことができ、解凍対象物Fをより好適な状態に解凍することができる。
【0084】
本発明に従えば、解凍対象物の種類に応じて、対向電極の間隔に応じた高周波電力の出力の調整が行われ、より綿密に高周波電力の出力の調節が行われるため、解凍対象物をより好適な状態に解凍することができる。
【0085】
なお、本実施の形態では、駆動情報Dに出力レベル情報と出力時間情報とが含まれる構
成としたが、どちらか一方のみが含まれる構成としてもよい。また、本実施の形態では、
解凍対象物Fの種類選択が操作者から操作部140に受け付けられ、この種類選択に対応
する駆動情報Dに基づいて、高周波電力の出力が制御される構成であるが、本発明は、こ
れに限定されず、解凍対象物Fの色彩を検知する等によって、解凍対象物Fの種類を自動
で判別することの可能な構成としてもよい。さらに、駆動情報Dが解凍対象物Fの種類に
応じて複数用意されている構成に限定されず、一種類のみの駆動情報Dに基づいて、高周
波電力の出力レベルや出力時間が設定されてもよい。
【0086】
また、本実施の形態では、重量検出部160で解凍対象物Fの重量が検出される構成となっているが、この構成に限定されず、操作者が操作部140に解凍対象物Fの重量をおおよそで入力し、当該入力に基づいて高周波電力の出力レベルが設定される構成としてもよい。さらに、高周波電力の出力レベルが、解凍対象物Fの重量に基づいて設定される構成に限定されず、重量にかかわらず出力レベルが決定されてもよい。
【0087】
なお、本実施の形態では、駆動情報作成画面が表示され、駆動情報Dの設定変更可能に構成されているが、設定変更不能な構成としてもよい。もっとも、設定変更可能な構成とする方が、操作者の経験を踏まえて設定を微調節することが可能になり、解凍対象物Fをより好適な状態に解凍することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる解凍装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示す解凍装置の内部構成を概略的に示す正面構成図である。
【図3】解凍対象物検知機構の詳細を示す構成図である。
【図4】図1に示す解凍装置1のブロック図である。
【図5】(A)は、第2の実施の形態で用いられる板状部材を示し、(B)は板状部材と接触部材との接触位置の変化に応じたインダクタンスの変化を示すグラフである。
【図6】第3の実施の形態にかかる解凍装置を概略的に示す正面構成図である。
【0089】

【図7】図4に示す解凍装置のブロック図である。
【図8】駆動情報の内容の一例を示す図である。
【図9】図6で示す解凍装置が解凍対象物Fを解凍する解凍処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図9に示すステップS4で表示される設定画面を説明する図である。
【図11】図6に示す駆動情報を作成するための駆動情報作成画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1、1a 解凍装置
20 対向電極
23、23A、23B 板状部材(金属製配線部材)
26 中継線部(中継線)
28 接触部材(中継線の先端)
60 制御部(条件変更部)
100 高周波供給回路
101 高周波電源回路(高周波電源部)
102 整合回路
1021 コンデンサ(キャパシタンス部材)
1022 可変コンデンサ(キャパシタンス部材)
1023 インダクタンス部材
120 電極間隔調節機構部(電極間隔調節機構)
150 電極間隔検出部
160 重量検出部
170 記憶部
D 駆動情報(出力レベル情報、出力時間情報)
F 解凍対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解凍対象物を挟む対向電極と、この対向電極の間隔を前記解凍対象物の高さ寸法に合わせて調節する電極間隔調節機構と、前記対向電極に高周波電力を供給する高周波供給回路と、前記対向電極の間隔に応じて、前記高周波電力の前記対向電極への供給条件を変更する条件変更部とを備えることを特徴とする解凍装置。
【請求項2】
前記高周波供給回路は、高周波電力を発生する高周波電源部と、この高周波電源部と前記対向電極との間に直列に接続された、キャパシタンス部材及びインダクタンス部材からなる整合回路とを備え、前記条件変更部は、前記対向電極の間隔の変更に応じて、前記インダクタンス部材のインダクタンスを可変に調節することを特徴とする請求項1に記載の解凍装置。
【請求項3】
前記対向電極のうち移動可能に構成された一方の電極から腕状の中継線が延設され、前記インダクタンス部材は、前記対向電極の対向方向に延びる長尺の金属製配線であり、かつ前記中継線の先端が所定範囲における長尺方向のいずれの位置においても摺接可能に配置され、前記対向電極の間隔の調節動作に連動して、前記中継線の先端との接触位置が長尺方向で移動されることを特徴とする請求項2に記載の解凍装置。
【請求項4】
前記金属製配線は、長尺方向と直交する方向の幅寸法が長尺方向で連続的に変化する形状であることを特徴とする請求項3に記載の解凍装置。
【請求項5】
前記対向電極の間隔を検出する電極間隔検出部と、前記対向電極の電極間隔に応じた、高周波電力の出力レベルを示す出力レベル情報を記憶する記憶部とを更に備え、
前記条件変更部は、前記電極間隔検出部で検出された対向電極の電極間隔に対応した、前記出力レベル情報の示す高周波電力の出力レベルで、前記高周波電力を出力させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の解凍装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記出力レベル情報とともに、前記対向電極の電極間隔に応じた高周波電力の出力時間を示す出力時間情報を記憶し、前記条件変更部は、前記電極間隔検出部で検出された対向電極の電極間隔に対応した、前記出力時間情報の示す出力時間で、前記高周波電力を出力させることを特徴とする請求項5に記載の解凍装置。
【請求項7】
前記解凍対象物の重量を検出する重量検出部を更に備え、
前記記憶部は、前記対向電極の電極間隔に対応した、前記解凍対象物の単位重量あたりの前記高周波電力の出力レベルを前記出力レベル情報として記憶し、
前記条件変更部は、前記重量検出部の検出結果及び前記出力レベル情報に基づいて、前記対向電極に出力するための高周波電力の出力レベルを算出し、この算出結果に従って前記高周波電力を出力させることを特徴とする請求項5又は6に記載の解凍装置。
【請求項8】
前記高周波電力は、前記対向電極の電極間隔が大きい程、出力レベルが小さくなるとともに、出力時間が長くなるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載の解凍装置。
【請求項9】
前記記憶部は、解凍対象物の種類毎に出力レベル情報を記憶し、
前記条件変更部は、前記出力レベル情報のうち、前記解凍対象物の種類に対応する出力レ
ベル情報に基づいて、前記高周波電力の出力を制御することを特徴とする請求項5〜8の
何れかに記載の解凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−12547(P2006−12547A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186653(P2004−186653)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(390024394)山本ビニター株式会社 (16)
【Fターム(参考)】