説明

解析方法及び解析システム

概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析する方法であって、試料のうち少なくとも移行部を含む部分の断面画像において関心領域を規定するステップと、関心領域内の移行部を横切る試料の密度プロファイルを求めるステップと、第2物質の代表密度を求めるステップと、第1物質及び第2物質の鑑別に使用された移行部を使用して試料を解析するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば物体又は構造の画像を用いて、物体又は構造をその周囲環境から識別し(所望であれば自動的な識別を含む)、物体又は構造をその周囲環境から分離又は鑑別し、且つ物体又は構造を解析する解析方法及び解析システムに関し、限定はされないが、骨の解析(in vivo又はその他)及び骨疾患等の疾患の診断を含む生体組織の解析と、物質及び地質試料の解析又は特性化とに特に適用される。特定の実施形態では、本発明は、周囲組織(筋肉及び脂肪等)からの骨の識別及び鑑別、その構造の解析、及び劣化又は異常骨(したがって場合によっては骨折し易い骨)の検出に関する。別の特定の実施形態では、本発明は、生体組織(筋肉等)内に埋め込まれた異物の特定又は識別に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2009年9月11日付けで出願されたオーストラリア特許出願公開第2009904407号に基づき、該出願の出願日の利益を主張する。その出願時の内容の全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
現在、骨密度は骨折リスクの予測及び骨の治療効果の評価に一般的に用いられる手段であるが、これは感度及び特異度が低い。全腰部骨折の半数以上が、二重エネルギーX線吸収法(DXA)でTスコア−2.5以下の骨粗鬆症ではないと判定された女性で生じている。さらに、DEXA法BMDにより骨粗鬆症であるとされた女性の大半が骨折を起こさない(非特許文献1)。薬物療法中、骨折リスク低減のうち、骨密度の増加で説明がつくのはごく一部である(非特許文献2)。この感度及び特異度の低さの原因の1つには、骨折リスクが骨密度によってだけでなく骨構造によって決まることがある(非特許文献3)。
【0004】
したがって、定量的コンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)等の技法を使用して、画像を生成し、それらを続いて解析して骨折リスクを予測し、薬物の効果を定量化し、骨量減少を防止するための種々の戦略(運動又は食餌療法等)の有効性を判定している。しかしながら、これらのイメージングモダリティから得られるパラメータは、骨密度測定よりも著しく優れていることが証明されておらず、骨密度測定の代替手段としては目下使用できない。
【0005】
これらの手法に関する問題は、画像収集だけでなくそれ以上に画像処理にもある。このような画像から骨構造を評価するための既存の技法に関する最も重要な問題の1つは、関心領域(ROI)内の骨の識別及び種々のコンパートメント(通常は皮質骨及び骨梁)への骨のセグメント化(すなわち分離)のために固定の任意の閾値に依存することである。骨構成は人によって異なり、こうした理由から、固定閾値の使用は、個体毎の骨にそれぞれ異なる予測不可能な結果をもたらす。したがって、固定閾値の使用は、差が存在しない場所に見掛け上の差を生み出すか、又は差が存在する場合に差を不明瞭にし得る。
【0006】
さらに、現在の方法は、簡易骨構造モデルを用いる。特に、これらの方法は、骨を2つの別個のコンパートメント(皮質骨及び骨梁)からなる構造として扱う。実際には、いわゆる「緻密」骨及び骨梁(「海綿骨」)は、骨膜から骨髄腔内までの一連の空隙率変化の両極をなす。
【0007】
さらに、現在の方法は、いわゆる「ファントムキャリブレーション」を用いて画像内の各ピクセルに関連する密度を求める。続いてこの密度を使用して、骨を識別しその構造を評価する(したがって、定量的コンピュータ断層撮影法(QCT)という)。既存の較正手順は、各スキャナ製造業者に固有であるので、スキャナに内蔵のソフトウェアにより実施される骨構造解析は、製造業者固有である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Delmas P.D., Seeman E. Changes in bone mineral density explain little of the reduction in vertebral or nonvertebral fracture risk with anti-resorptive therapy, Bone 34(4) (2004) p.599-604
【非特許文献2】(Ott S.M., When bone mass fails to predict bone failure, Calcif. Tissue Int. 53(Suppl1) pp.S7-S13
【非特許文献3】Zebaze R.M. and Seeman S., Measuring Femoral Neck Strength: Lost in Translation?, IBMS BoneKEy 5 (2008) pp.336-339
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広範な第1態様によれば、概して密度が異なり相互間に移行部(急峻又はその他)を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析する方法であって、
試料のうち少なくとも上記移行部を含む部分の断面画像において関心領域を規定するステップと、
関心領域内の移行部を横切る試料の密度プロファイルを求めるステップと、
第2物質の代表密度を(密度プロファイル等から)求めるステップと、
上記第1物質及び上記第2物質の鑑別に使用された上記移行部を使用して上記試料を解析するステップと
を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の特徴は、本方法の自動的な実施(及び後述のシステムの自動化)を可能にする。
【0011】
本方法は、第1物質と第2物質との間の密度プロファイルにおける移行部を(例えば、適当な選択点に対する距離関数を使用して)特定するステップを含み得る。
【0012】
したがって、第1物質及び第2物質は、密度が異なる2つの生体組織(それぞれ骨又は腫瘍及び周囲軟組織等)であり得るが、断面画像の作成を可能にし且つ概して異なる密度を有する任意の2つの物質とすることができる。例えば、本方法及びシステムを使用して、筋肉又は他の生体組織に埋め込まれた弾丸(又は他の金属物体)を含む試料を識別し、その解析又は特性化を行うことができる。
【0013】
なお、これは、周囲軟組織からの又は種々のコンパートメントへの骨の鑑別等のために、画像解析における閾値の使用を必要とせず達成される。
【0014】
「物質」は広義に使用されることにも留意されたい。物質は、物体(又はその一部)、物体内の構造、一定体積のガス、又はほぼ真空排気された体積であり得る。
【0015】
一実施形態では、本方法は、第1物質の構成(骨構成等)を求めるステップをさらに含む。
【0016】
別の実施形態では、本方法は、第1物質の劣化又は異常(骨の構造における劣化又は異常等)を検出するステップを含む。例えば、本方法は、骨折し易い骨を識別するステップを含み得る。
【0017】
密度プロファイルにおける移行部を特定するステップは、密度プロファイルにおいて、第1物質の代表密度と同じ位置及び第2物質の代表密度と同様の又はそれよりも低い密度を有する基準点に最も近い点を特定するステップを含む。
【0018】
この実施形態では、移行部を特定するステップは、(x,y)=(0,0)を中心とした密度プロファイル内の参照系で式
【数1】

における最小値を求めるステップを含み得る。
【0019】
この実施形態では、移行部を特定するステップは、(x,y)=(0,0)を中心とした密度プロファイル内の参照系で式
【数2】

における最大値を求めるステップを含み得る。
【0020】
別の実施形態では、移行部を特定するステップは、上記関心領域のうち上記最大密度差点で境界され上記第2物質を含む部分の密度プロファイルにおける最大変化率点を特定するステップを含む。
【0021】
さらに別の実施形態では、移行部を特定するステップは、上記関心領域のうち上記最大密度差点で境界され上記第2物質を含む部分の密度プロファイルにおける最小変化率点を特定するステップを含む。
【0022】
特定の実施形態では、移行部を特定するステップは、密度プロファイルの変曲点を特定するステップを含む。
【0023】
さらに別の実施形態では、移行部を特定するステップは、(例えば、試料内の各コンパートメントに対応する)密度プロファイル曲線の1つ又は複数の線分における1次導関数(derivative)の変曲点の特定等のために、密度プロファイルの(すなわち、例えば後述するような最高の「山(hills)」における密度プロファイルの1つ又は複数の部分の)2次導関数を形成するステップを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、関心領域は、上記第1物質と上記試料のうち上記第2物質、第3物質、又は空洞を含むさらに別の部分との間にある少なくとも1つのさらに別の移行部を含み、本方法は、
上記さらに別の部分の代表密度を求めるステップと、
上記関心領域のうち上記最大密度点で境界され上記さらに別の部分を含む部分の上記密度プロファイルにおけるさらに別の移行部を特定するステップと
をさらに含む。
【0025】
この実施形態では、本方法は、上記試料のうち上記密度プロファイルにおける移行部と上記密度プロファイルにおけるさらに別の移行部との間の部分のみを使用することにより、第1物質をさらに解析するステップを含み得る。
【0026】
密度プロファイルにおけるさらに別の移行部を特定するステップは、密度プロファイルにおいて、最大密度差点と同じ位置及びさらに別の部分の代表密度と同じ密度を有するさらに別の基準点に最も近い点を特定するステップを含み得る。
【0027】
本方法は、密度プロファイル解析器が密度プロファイルを求めるのに使用するために選択される関心領域の位置を、関心領域の位置を調整することにより最適化するステップをさらに含み得る。
【0028】
本方法は、複数の関心領域をマージするステップをさらに含み得る。
【0029】
本方法は、特に第1物質内の密度プロファイルの1つ又は複数の変曲点を識別するステップをさらに含み得る。
【0030】
本方法は、(第1物質内等の)密度プロファイルの1つ又は複数の変曲点を識別して試料内の複数のコンパートメントを規定するステップをさらに含み得る。
【0031】
例えば、骨は、この実施形態によれば複数のコンパートメントとして、したがって閾値を使用せずに特徴付けることができる。
【0032】
一実施形態では、第1物質は骨であり、コンパートメントは、
骨膜境界及び皮質骨の始端(beginning)により境界されるコンパートメントと、
皮質骨の始端及び緻密皮質骨の始端により境界されるコンパートメントと、
緻密(又は硬質)皮質骨コンパートメントと、
骨梁状(trabecularized:海綿質化)皮質骨コンパートメントと、
皮質骨−骨梁移行部コンパートメントと、
骨梁コンパートメントと
のいずれか1つ又は複数を含む。
【0033】
骨膜境界、皮質骨の始端、及び硬質皮質骨の始端の鑑別が重要となるのは、以下の理由からである。(i)骨膜境界は、骨の始端を示す縁部である(しかしながら、いくつかのボクセル(voxel)は異なる割合の組織及び骨を含み得るので、部分体積効果(PVE)等のアーチファクトにより悪影響を受け得る(tainted))。(ii)皮質骨の始端は、ボクセル内の減弱の大半が骨組織に起因する点、したがって骨の始点とみなされる点を示す。(iii)緻密皮質骨の始端は、PVEによるアーチファクトがほぼ無い骨組織のみにほぼ起因する減弱を有する第1ストリップに対応する。
【0034】
したがって、骨膜境界と硬質皮質骨の始端との間に位置するボクセル又はピクセルは、部分体積効果(PVE)により悪影響を受け、すなわちそれらの減弱は、周囲軟組織又は他のアーチファクトに一部起因する。
【0035】
この実施形態では、これらのコンパートメントが異なる用語ではあるが本質的に同じ趣旨で定義され得ることに留意されたい。したがって、この実施形態では、第1物質は骨であり、コンパートメントは、
骨膜境界及び緻密皮質骨の始端により境界されるコンパートメントと、
緻密皮質骨の始端及び外側遷移区域の始端により境界されるコンパートメントと、
外側遷移区域と、
内側遷移区域と、
骨梁コンパートメントと
のいずれか1つ又は複数を含む。
【0036】
骨膜境界(つまり、純粋に軟組織)と緻密皮質骨(純粋に骨)との間のこの遷移部を識別する能力は、この態様の方法に固有のものであり、多くの重要且つ有利な用途を有し得る。この態様によれば、PVE等のアーチファクトが構造の評価に及ぼす影響を見込むことができ、骨の寸法を求めることができ、PVEからのアーチファクトを最小限にして骨の構造を評価することができる。
【0037】
したがって、一実施形態では、本方法は骨構造の解析時にPVEを最小化するステップを含むが、別の実施形態では、本方法は、PVEを最小化しつつ画像内の構造(腫瘍、膿瘍、又は出血等)の寸法を求めるステップを含む。
【0038】
一実施形態では、本方法は、骨梁様の外観を呈する皮質骨の割合を求めるステップを含む。
【0039】
一実施形態では、本方法は、緻密皮質骨の皮質骨厚の平均を求めるステップを含む。
【0040】
一実施形態では、本方法は、皮質骨実質部(mass)の皮質骨厚の平均を求めるステップを含む。
【0041】
一実施形態では、本方法は、骨梁状皮質骨の皮質骨厚の平均を求めるステップを含む。
【0042】
一実施形態では、上記部分は、上記骨試料の骨梁部分及び上記骨試料の皮質骨部分を含む。
【0043】
本方法は、骨試料の内部領域を撮像するステップを含み得る。
【0044】
撮像するステップは、コンピュータ断層撮影撮像を含み得る。
【0045】
特定の実施形態では、撮像はin vivoで行われる。
【0046】
一実施形態では、試料の上記部分は橈骨ストリップを含む。
【0047】
一実施形態では、本方法は、試料の複数の部分を撮像するステップと、該部分のそれぞれの密度プロファイル(橈骨密度プロファイル等)を求めるステップとを含む。
【0048】
本方法は、試料内の骨を自動的に識別するステップを含み得る。
【0049】
本方法は、
皮質骨、骨梁状皮質骨、又は遷移区域の厚さと、
皮質骨又は骨梁状皮質骨の面積と、
皮質骨、骨梁状皮質骨、又は遷移区域の空隙率と、
皮質骨又は骨梁状皮質骨がその絶対厚又は絶対面積に関係なく正常であるか否かと、
皮質骨又は骨梁状皮質骨が吸収されているか(したがって骨量が減少しているか)否かと、
プロファイルの解析からの骨梁構成及び空隙率と
からなる群からのいずれか1つ又は複数の指数を求めるステップを含み得る。
【0050】
本方法は、皮質骨コンパートメントと骨梁コンパートメントとの間の差異(differentiation)の欠如を判定するステップを含み得る。
【0051】
本方法は、骨膜に囲まれた領域内の非骨組織(すなわち、空隙及び脂肪組織)を識別するステップを含み得る。
【0052】
本方法は、第1物質の半径、周囲長、又は断面積(骨試料の周囲における点毎の骨試料の1つ又は複数の半径等)を求めるステップを含み得る。
【0053】
本方法は、第1物質(骨試料の周囲における点毎の骨等)の断面2次モーメント(又は慣性モーメント)を求めるステップを含み得る。
【0054】
本方法は、骨の周囲における点毎の骨の断面の質量調整(mass-adjusted)断面2次モーメントを求めるステップを含み得る。
【0055】
本方法は、骨の断面の断面係数(及び質量調整断面係数)を求めるステップを含み得る。
【0056】
本方法は、骨の断面の座屈比(又は質量調整座屈比)を求めるステップを含み得る。
【0057】
本方法は、骨の断面積を求めるステップを含み得る。
【0058】
本方法は、骨の断面の周囲長を求めるステップを含み得る。
【0059】
本方法は、後述する特定の関数を使用して骨の断面の断面係数(及び質量調整断面係数)を求めて骨を軟組織から分離するステップを含み得る。
【0060】
本方法は、後述する特定の関数を使用して骨の断面の極慣性モーメント係数(及び質量調整極慣性モーメント)を求めるステップを含み得る。
【0061】
本方法は、後述する特定の関数の使用等により骨の周囲における点毎の骨の断面の半径を求めるステップを含み得る。
【0062】
本方法は、試料内の骨梁を識別するステップと、骨梁サイズ又は骨梁間隔等の1つ又は複数の骨梁指数を求めるステップとを含み得る。
【0063】
本方法は、周囲筋組織を参照対象(referent)として使用して骨の石灰化度を求めるステップを含み得る。
【0064】
本方法は、第2物質(筋組織等)の減弱を参照対象として使用して関心領域ROI内の成分(又は要素)の絶対密度(g/cc又はmgHA/cc当量等での)を求めるステップを含み得る。
【0065】
本方法は、第2物質(筋組織等)の減弱を参照対象として使用して関心領域内の物体(又は構造)の相対密度(パーセント等での)を求めるステップを含み得る。
【0066】
この実施形態では、本方法は、骨試料内の異常を指数のいずれか1つ又は複数から識別するステップを含み得る。
【0067】
一実施形態では、本方法は、異常皮質骨、異常骨梁コンパートメント、又は異常皮質骨及び異常骨梁コンパートメントの両方を有することに基づき、骨試料が異常か否かを判定するステップを含む。
【0068】
本システム及び方法は、パーソナルコンピュータ、CT装置、又はMRI装置にインストールすることができるコンピュータ可読媒体で具現することができ、これは、疾患の自動放射線診断用の画像の柔軟且つロバストな解析を可能にし、特に、in vivo及びin vitroでのCT、QCT、及びMRIソースファイル(DICOM、JPEG、TIFF又は他の撮像ファイル)を使用した、骨粗鬆症の診断、骨折リスクの評価、及び骨の疾患及び治療の作用の評価のための骨構造の自動解析を可能にする。本発明は、骨粗鬆症、特定の代謝性骨疾患(例えば、骨軟化症又はパジェット病)、及び骨転移等の浸潤性骨疾患の診断に有用であることが期待される。
【0069】
本発明が、例えばパーソナルコンピュータ(例えば医師又は化学者が操作する)を使用した試料(骨等の)構造の評価及び骨粗鬆症等の骨疾患の診断を可能にすることにも留意されたい。
【0070】
一実施形態では、本方法は、壊死組織塊(necrotic mass:壊死性腫瘤)と周囲健常軟組織との間の減弱の差により、周囲健常組織から壊死組織塊を識別し解析するステップを含む。これは、例えば内部(又は深部)膿瘍の診断及び監視に適用される。
【0071】
一実施形態では、本方法は、周囲軟組織から異所性石灰化を識別し解析するステップを含む。これは、心臓血管疾患の診断及び監視に適用される可能性がある。
【0072】
一実施形態では、本方法は、腎臓結石を識別し解析するステップを含む。腎臓結石は、カルシウム含有量が大部分(80%)であるから、異所的な位置での骨組織として扱われ得る。これは、大部分(おそらく80%)の腎臓結石の自動診断の手段となる。
【0073】
したがって、腎臓結石の生涯有病率は、米国では10%又は年間約200万人であるから、この症状の自動診断は、医療従事者、特に放射線専門医にとって大いに役立つ。
【0074】
一実施形態では、本方法は、石灰化した他の腫瘍を識別し解析するステップを含む。
【0075】
一実施形態では、本方法は、非医療分野における画像内の物体を識別及び解析するステップを含む。
【0076】
特に有利な実施形態では、試料を解析するステップは、回転アーム幅を使用して画像を解析するステップを含む。
【0077】
この広範な態様によれば、本発明は、概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析する方法であって、
試料のうち少なくとも上記移行部を含む部分の断面画像において関心領域を規定するステップと、
上記試料の上記部分が局所的に線形となるアーム幅を求めるステップと、
上記アーム幅の回転、上記アーム幅の並進、又は上記アーム幅の回転及び並進の両方により、上記画像を解析するステップと
を含む方法も提供する。
【0078】
第2の広範な態様では、本発明は、概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析するシステムであって、
試料のうち少なくとも上記移行部を含む部分の断面画像において関心領域を選択する関心領域選択器と、
関心領域内の移行部を横切る試料の密度プロファイルを求め、上記第2物質の代表密度を求め、且つ上記第1物質及び第2物質を鑑別するための上記移行部を使用して上記試料の解析を行う密度プロファイル解析器と、
上記解析の結果を出力する出力部と
を備えるシステムを提供する。
【0079】
本システムは、密度プロファイル解析器が密度プロファイルを求めるのに使用するために選択される関心領域の位置を最適化するよう構成された関心領域位置調整器を含み得る。
【0080】
本システムは、複数の関心領域をマージするよう構成された関心領域マージャを含み得る。
【0081】
したがって、試料の解析は、関心領域選択器を複数回使用して複数の関心領域を生成することを含み得る。関心領域マージャは、複数の関心領域の重複部分を正確に扱うことを含め、複数の関心領域を(概して、それぞれが適性試験に合格した後に)マージして、試料の断面画像等の画像を作成するよう構成される。
【0082】
密度プロファイル解析器は、第1物質と第2物質との間の密度プロファイルにおける移行部を(例えば、距離関数を使用して)特定するよう構成することもできる。
【0083】
本システム(及び特に密度プロファイル解析器)は、第1態様の方法の各任意ステップを実施するよう構成された1つ又は複数のモジュールを有し得る。
【0084】
本システムは、排気可能な試料チャンバを含み得るか、又は代替的に、試料は、第1物質の解析用の参照対象としての役割を果たすよう第1物質の周りに配置された既知の特性を有する第2物質(水等)を含み得る(in vivoの骨の場合に、試料が本質的に水として扱うことができる筋肉により包囲された骨を含むように)。
【0085】
これにより、第1物質及び第2物質の一方が(物質の他方に隣接するか又は物質の他方を包囲するような)真空排気体積である試料を作ることができる。
【0086】
さらに別の広範な態様によれば、本発明は、コンピュータ又はコンピュータのプロセッサにより実行されると、コンピュータ又はコンピュータのプロセッサに上述の試料を解析する方法を実施させる実行可能な命令又はソフトウェア(例えば実行可能な命令又はソフトウェアが埋め込まれるか又は永久的に記憶されたコンピュータ可読媒体で具現されるようなもの)を提供する。
【0087】
解析ステップの結果は、概して、レビュー又はさらなる解析のために出力されるが、その後のレビュー又はさらなる解析のためにメモリ又は記憶媒体に出力されてもよい。
【0088】
別の広範な態様によれば、本発明は、実行可能な命令又はソフトウェアが設けられたコンピューティングデバイスであって、実行可能な命令又はソフトウェアは、コンピューティングデバイス又はコンピューティングデバイスのプロセッサにより実行されると、コンピューティングデバイス又はコンピューティングデバイスのプロセッサに上述の試料を解析する方法を実施させる、コンピューティングデバイスを提供する。
【0089】
本発明の上記態様それぞれの種々の特徴のいずれも所望に応じて適当に組み合わせることができることに留意されたい。骨の解析に言及する実施形態を、必要な場合は適宜変更して他の試料に適用することもできることも留意されたい。
【0090】
本発明をより明確に把握できるように、次に、例として添付図面を参照して実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態による骨折し易い骨を検出するシステムの概略図である。
【図2】図1のシステムの画像プロセッサの概略図である。
【図3】図1のシステムの画像プロセッサの処理コントローラのメモリの概略図である。
【図4】図1のシステムの画像プロセッサの別のより詳細な概略図である。
【図5】図1のシステムの(ユーザ及び顧客との対話を含む)システムフローチャートである。
【図6】図1のシステムの画像プロセッサによる出力としての骨の例示的な画像である。
【図7A】図1のシステムの画像プロセッサによる骨試料の質量中心の決定の概略描写である。
【図7B】右回り及び左回りの両方の、図1のシステムの画像プロセッサによる骨試料の画像の回転の概略描写である。
【図8】Aは、図1のシステムの画像プロセッサにより関心領域(ROI)のDICOMファイルから得られた例示的な画像である。Bは、さらなる明確化のためにネガで示す図8Aの画像である。
【図9】図1のシステムの画像プロセッサにより求められた、図8Aの画像の行番号に対する骨ストリップ密度(mgHA/cc)のプロットである。
【図10】図1のシステムの画像プロセッサにより求められた、図9の密度プロファイル曲線の1次導関数のプロットである。
【図11】図1のシステムの画像プロセッサによる骨膜境界の判定を示す、図9のプロットと同様のプロットである。
【図12】図1のシステムの画像プロセッサによる緻密皮質骨の始端の判定を示す、図9のプロットと同様のプロットである。
【図13】図1のシステムの画像プロセッサによる皮質骨実質部の終端の判定を示す、図9のプロットと同様のプロットである。
【図14】皮質骨実質部の始端及び終端を判定するために図1のシステムの画像プロセッサにより2値化された図10の1次導関数データのプロットである。
【図15】図1のシステムの画像プロセッサによる緻密皮質骨の終端の判定を示す、図9のプロットと同様のプロットである。
【図16】図1のシステムの画像プロセッサにより実施された識別ステップの結果を要約した、図9と同様のプロットである。
【図17】図1のシステムの画像プロセッサにより識別されたコンパートメント境界をラベリングした、図1のシステムの画像プロセッサにより関心領域のDICOMから得られた別の例示的な画像(上図)及びさらなる明確化のためにネガで示したこの画像のコピー(下図)である。
【図18】図1のシステムの画像プロセッサにより求められた、図17の画像の行番号に対する骨ストリップ密度(mgHA/cc)のプロットである。
【図19】図1のシステムで識別された「浮遊皮質」骨の例示的な画像である。
【図20A】画像内の関心領域を回転させるために図1のシステムの画像プロセッサにより実施される準備ステップを示す。
【図20B】画像内の関心領域を回転させるために図1のシステムの画像プロセッサにより実施される準備ステップを示す。
【図20C】図1のシステムの画像プロセッサにより実施される画像認識回転及び画像解析回転のフローチャートである。
【図21】図1のシステムの画像プロセッサが解析回転中に骨の解析及び特性化に使用するBVEスケールである。
【図22A】図1のシステムの画像プロセッサにより実施される画像2値化のプロセスを示し、骨試料の例示的な画像である。
【図22B】図1のシステムの画像プロセッサにより実施される画像2値化のプロセスを示し、1つの列における皮質骨実質部内の空隙の識別を示す図である。
【図22C】図1のシステムの画像プロセッサにより実施される画像2値化のプロセスを示し、解析された行に沿った骨ピクセル対非骨ピクセルの2値化プロットである。
【図23】画像内の既知の寸法の物体を識別し、その寸法を隔離し求めるための図1のシステムの使用を示すフローチャートである。
【図24】代表密度のピクセルが試料のほぼ中心にない場合の、図1のシステムの画像プロセッサによる骨試料の幾何学的中心の決定の概略図である。
【図25】画像内の既知の寸法の物体を識別し、その物体を隔離し、その寸法を求めるための図1のシステムの使用を示すフローチャートである。
【図26】図1のシステムの画像プロセッサの制御画面の図である。
【図27A】図25の例示的な使用から得られるROIの関数としての厚さのプロットである。
【図27B】図25の例示的な使用から得られるROIの関数としての半径のプロットである。
【図27C】図25の例示的な使用から得られるROIの関数としての断面のプロットである。
【図27D】図25の例示的な使用から得られるROIの関数としての外周長のプロットである。
【図27E】図25の例示的な使用から得られるROIの関数としての内周長のプロットである。
【図27F】図25の例示的な使用から得られるROIの関数としての内部表面積のプロットである。
【図28】穿孔されたプラスチック管を備える、図1のシステムと共に使用される例示的なファントム試料の断面グレースケール画像である。
【図29】既知の空隙率に対する、図1のシステムを使用して得られた図28に示すものと同様の複数のプラスチック管の空隙率のプロットである。
【図30】既知の空隙率に対する、図1のシステムを使用して得られたヒドロキシアパタイト濃度が異なるが既知である4つのファントム試料の空隙率のプロットである。
【図31A】図1のシステムで解析された骨試料の顕微鏡写真である。
【図31B】図1のシステムで解析された骨試料の顕微鏡写真である。
【図32A】図1のシステムで解析されたさらに別の骨試料の顕微鏡写真である。
【図32B】図1のシステムで解析されたさらに別の骨試料の顕微鏡写真である。
【図33】図1のシステムで解析された別の骨試料の顕微鏡写真である。
【図34A】SEM画像から直接測定された空隙率のレベルと解析された24個の標本におけるBMD診断閾値との相関が乏しいことを示す、24個の標本に関する空隙率に対するBMD Tスコアのプロットである。
【図34B】SEM画像から直接測定された空隙率パーセンテージに対する図1のシステムにより求められた空隙率パーセンテージのプロットである。
【図35】骨試料に関する、対応のSEM画像の直接観察と比べた場合の図1のシステムにより求められた密度プロファイル曲線内の点m、n、及びoの位置を示す。
【図36】別の骨試料に関する、対応のSEM画像の直接観察と比べた場合の図1のシステムにより求められた密度プロファイル曲線内の点m、n、及びoの位置を示す。
【図37A】年齢の関数として組織形態計測により直接測定された年間活性化率(Ac.F)の加齢に伴う増加のプロットである。
【図37B】図37Aのデータと比べた場合の、図1のシステムを使用して測定された空隙率の加齢に伴う増加のプロットである。
【図38A】高分解能末梢骨定量的コンピュータ断層撮影(HRpQCT)データから再構成された橈骨遠位端のグレースケール画像である。
【図38B】骨膜表面の抽出後に図1のシステムにより再構成された、図38Aに示す試料の画像である。
【図38C】図1のシステムによる同じ画像の4つの骨コンパートメントへのセグメント化を示す、図38Aの試料の別の図である。
【図38D】外側遷移区域のみを図38Cから抽出したプロットである。
【図38E】内側遷移区域のみを図38Cから抽出したプロットである。
【図38F】図38Bのグレースケール版である。
【図38G】図38Cのグレースケール版である。
【図39A】筋肉に埋め込まれた安全ピンの頭部を含む試料の図1のシステムにより生成された画像である。
【図39B】図39Aの画像の初期関心領域の拡大図である。
【図40】いずれも図1のシステムにより生成された、図39Aの画像のRIOに関連する密度プロファイル曲線のプロット(上図)と、密度プロファイル曲線に関連する関数λのプロット(下図)とを含む。
【図41A】背景技術のシステムにより生成された橈骨遠位端の断面図である。
【図41B】図1のシステムにより生成された同じ橈骨遠位端の断面図である。
【図42A】骨及び背景を背景技術のシステムにより描出した脛骨の断面図である。
【図42B】骨及び背景を図1のシステムにより描出した同じ脛骨の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明の実施形態によれば、図1に10で概略的に示す骨折し易い骨を検出するシステムが提供される。
【0093】
システム10は、CTスキャナ12、CT制御システム14、及び画像プロセッサ16の形態の画像解析器を備える。画像プロセッサ16は、入力デバイス及び出力デバイスを備えるユーザインタフェース18を含む。入力デバイスは、画像プロセッサ16の制御用のキーボード20の形態であり、出力プロセッサは、画像プロセッサ16による処理前及び処理後のCTスキャナ12からの画像を表示するディスプレイ22の形態である。CTスキャナ12は、CTスキャナ12の中央スキャンボリューム24内に位置付けられた試料のCTスキャンを実施し、デジタル化したスキャンデータをCT制御システム14に出力するよう構成される。CT制御システム14は、CTスキャナ14から受け取ったデーから画像データを生成し、これらの画像データを画像プロセッサ16に出力するよう構成される。
【0094】
この実施形態では、画像データは、試料を通した一連の個別画像スライス又はストリップを含むが、他の実施形態では、他の断面を使用することができる(冠状断面、横断面、又は斜断面等)。
【0095】
システム10がオンラインモード及びオフラインモードで動作し得ることを理解されたい。オンラインモードでは、画像プロセッサ16が(試料のスキャン中又はスキャン直後に)CT制御システム14から直接データを受け取る。このような構成は、臨床状況で、特に、骨折し易い骨の検出に緊急性がある場合に使用され得る。このオンラインモードでは、データは、(CT制御システム14及び画像プロセッサ16の各USBに接続された)データリンク又は(CT制御システム14及び画像プロセッサ16の両方が接続される、インターネット等の形態の)通信ネットワークを介して、画像プロセッサ16に送信される。このリンク又はネットワークを図1に26で概略的に示す。
【0096】
オフラインモードでは、画像プロセッサ16がCTスキャナ12及びCT制御システム14により事前に収集されたデータを受け取る。データは、通信リンク又はネットワーク26を介して、又は任意の他の適当な手段(CD−ROM、フラッシュカード等のポータブルコンピュータ可読媒体を含む)により、画像プロセッサ16に送信され得る。
【0097】
画像プロセッサ16は処理コントローラ28を含み、処理コントローラ28は、入力20及び出力22とデータ通信し、処理手順(後述)に従って画像処理命令を処理して処理結果(画像及び/又は検出結果を含み得る)をディスプレイ22に出力するよう構成される。
【0098】
図2を参照すると、処理コントローラ28はデジタルプロセッサ30を備え、デジタルプロセッサ30は、処理手順に従って処理命令を処理し、上述のように処理結果をディスプレイ22に出力する。キーボード20及びディスプレイ22が共にユーザインタフェース32を構成する。通常、処理命令は、プログラムコードとして処理コントローラ28のメモリ34に記憶されるが、ハードワイヤードされることもできる。本明細書中、「プロセッサ」という用語は、処理手順に従って処理命令を処理することができる任意のデバイスを全般的に指すために使用され、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス又は他の計算デバイス、汎用コンピュータ(例えばPC)、又はサーバを含み得る。
【0099】
図3は、メモリ34の主要コンポーネントのブロック図を示す。メモリ34は、RAM36、EPROM38、及びマスストレージデバイス40を含む。RAM36は、通常、プロセッサ30による実行用のプログラムファイル及び関連データを一時的に保持する。EPROM38は、ブートROMデバイスであってもよく、且つ/又は特定の何らかのシステム又は処理関連コードを含んでもよい。マスストレージデバイス40は、通常はプログラムの処理に使用される。
【0100】
図4は、図1のシステム10のユーザインタフェース32及び処理コントローラ28の別の概略図であり、処理コントローラ28内をより詳細に図示している。具体的には、処理コントローラ28のプロセッサ30は、ディスプレイ22を制御するディスプレイコントローラ42、ステージングエリア(通常はCT制御システム14)からのDICOM(「医用デジタル画像及び通信」)ファイルをポーリングするDICOMファイルポーラ44、DICOMファイルを表示用画像に変換するDICOMファイルコンバータ46、画像プロセッサ16により処理すべきファイルを選択するよう制御可能なファイル選択器48、選択したファイルをデジタル化するファイルデジタイザ50、関心領域を選択するROI選択器52、関心領域内の骨を識別する骨識別器54、標本位置調整器56、骨の試料の密度プロファイルを解析する密度プロファイル解析器58、ROIリジェクタ60、初期結果積分器62、最終結果積分器64、指数決定器66、及び結果出力部68を含む。指数決定器66は、骨試料を特性化する種々の指数を決定するよう構成されることで、画像プロセッサ16が、骨試料の外観を示す画像データを試料の種々の物理的特性を示す指数に変換できるようにする。
【0101】
処理コントローラ28のメモリ34は、ROI結果記憶機構70及びファイル結果記憶機構72を含む。
【0102】
処理手順を具現する処理命令は、上述のように、メモリ34に記憶されたプログラムコードの形態であり、図5に概略的に示すように処理手順を実施するよう処理コントローラ28を制御するよう構成される。図5を参照すると、画像プロセッサ16は、(おそらくin vivoの、骨の試料から収集した)DICOMファイルをCT制御システム14のポーリングにより(オンラインモード又はオフラインモードで)受け取り、ファイルをメモリ34に記憶する。受け取られるファイルは、この実施形態ではDICOMファイルであるが、他の実施形態では、JPEG又はTIFF等の異なる画像フォーマットであり得る。画像プロセッサ16がファイルを画像に変換し、画像をディスプレイ22に出力することにより、ユーザが処理対象画像を閲覧することができる。図6は、軟組織84に包囲された骨82の試料のそのような画像80の例である。これにより、ユーザは、適当なファイル(例えば、正確な骨部位)がアップロードされたこと及び画像が処理を進めるのに十分な品質であることを確認することにより、試料の妥当性を評価することができる。これらの条件が満たされていれば、ユーザは、DICOMファイル内から個別ファイル(すなわち、解析を望む関心領域(ROI)の特定の画像スライスに対応するファイル)を処理のために選択するよう画像プロセッサ16を制御する。ユーザが処理対象の個別ファイルを指定しない場合、画像プロセッサ16は、スライス数のデフォルト選択を続ける。ユーザは、続いて処理手順を開始するよう画像プロセッサ16を制御する。
【0103】
ユーザは、付加的な確認が不要であるほど画像の品質が十分に高いことを十分に確信している場合、画像を閲覧するステップを飛ばすようシステム10を制御することもできる。こうした状況では、システム10は、それ以上のユーザの介入無しに試料を自動的にアップロードして解析し、画像プロセッサ16は、ユーザからの命令無しに解析を開始する。
【0104】
最初に、画像プロセッサ16は、従来の技法を使用してファイルをデジタル化する。任意の他の所望の従来の前処理をこの時点で実施することもできる。
【0105】
画像プロセッサ16により実施されるこの第1ステップは、関心物質(この例では骨)の識別である。関心物質のこの初期識別は、物質の密度を代表する密度を有する点を特定することにより行われる。骨組織を含むCTスキャン画像試料の場合、代表密度を有する点(B)が、最大減弱(又は密度)を有するピクセルである。(他の実施形態では、解析対象物質の密度を代表する密度を有する点は、例えば膿瘍の初期識別用であり得る最小減弱値を有する点であり、これは膿瘍が最小減弱値を有することを理由とする。)
【0106】
点B(図7Aを参照)から、画像プロセッサ16は、この実施形態では次式に従い、0°、90°、180°、及び270°それぞれの半径r、r、r、及びrを使用して座標(x,y)の幾何学的中心(C)を求める。
【0107】
【数3】

【0108】
画像プロセッサ16は、次式のように初期中心(I)から重心(すなわち質量中心)G(x,y)も求める。
【0109】
【数4】

【0110】
は、ピクセルiの減弱(又は密度)であり、x及びyは、参照中心(referential of centre)Cの座標である。このプロセスを、図6の例として図7Aに示す。
【0111】
計算する指数に応じて、画像プロセッサ16はC又はGを使用する。
【0112】
画像プロセッサ16は、次に解析に適したアーム幅(AW)を求める。画像プロセッサ16は、断面全体(又はファイル内容)を同時に解析しない。各ファイルは、特定の長さ(LROI)及び幅の関心領域(ROI)に細分される。ROIを「アーム」と称し得るので、ROIの幅は「アーム幅」又はAWと呼ばれる。画像プロセッサ16が使用するAWは、求める指数に応じて、また後述するように解析対象物質のサイズに応じて変わる。画像プロセッサ16は、以下の形態の適当なAWを用いる。
AW≦r×tan(arccos(Δ)) (2)
式中、Δは選択された中心(C又はG)からの推定曲率であり、rは上記で算出された4つの半径(つまりr、r、r及びr)の最小値である。
【0113】
大半の指数に関して、画像プロセッサ16は中心Cから開始し、Δは0.98の値に設定され、このAWをAWと称する。Δが0.98の場合、解析に対する骨の曲率からの影響はごく僅かである(0.02)。すなわち、骨は事実上は本質的に局所的に「平坦」に見え、これが0.98というアークコサイン値を選択する理由である。例えば、橈骨遠位端における最小半径は約8mmであり、画像プロセッサ16には橈骨遠位端において約1.62mmのAWが与えられる。脛骨における最小半径は12mmであり、これに関して画像プロセッサ16は約2.42mmのAWを用いる。AWは、密度プロファイル曲線(上記を参照)において空隙及び吸収窩の検出を可能にするほど十分な幅となるよう選択される。空隙及び吸収窩は、ヒトでは直径が最大600ミクロンであり得るので、画像プロセッサ16が使用するAWは、人骨の空隙率の評価中に1mm以上であるべきである。特に、2つの骨の直径が正確に同じではないので、2つの骨の画像は画像プロセッサ16により同様に処理されず、この実施形態による骨構造の処理は各骨に固有である。
【0114】
強度パラメータ又は外寸等の他の指数では、画像プロセッサ16はGから開始して別のアーム幅(AWで表す)を使用する。AWは、次式に従いはるかに小さな曲率Δ(0.999)を用いて画像プロセッサ16により求められる。
AW=r×tan(arccos(0.999)) (3)
【0115】
AWがAWよりも小さい理由は、ここで望まれるのが小さな弧を表すのに十分なほど小さな骨膜表面及び骨内膜表面を有することだからであり、これは、当面の目的が(空隙率の検出ではなく)断面の内部及び外部幾何学的形状の正確な算出の実施であることによる。橈骨遠位端及び脛骨それぞれにおいて、AWは約360ミクロン〜590ミクロンである。
【0116】
画像プロセッサ16は、より大きなデフォルト曲率を用いることができるが、0.999のΔ値がこの実施形態では用いられる。0.999のΔ値をこの例で使用して、画像プロセッサ16が提供する解析の精度及び確度が決定される。Δが画像プロセッサ16におけるユーザ制御可能な設定であることにも留意されたい。この設定及び他のこのような設定は、ユーザが骨膜辺縁(periosteal rim)の凹凸(すなわち、円の一部からのずれ)の解析に対する影響を最小化することを可能にする。したがって、これは、ROIのうち円の一部からずれた骨膜辺縁により生じる潜在的誤差を最小化するためにユーザにより制御可能である。Δ=0.999のデフォルト値が画像プロセッサ16により使用される理由は、この値で、またin vivoの人骨直径の範囲(通常は5cm未満)を考慮すると、AWが1mm以下となるからである。すなわち、骨の骨膜境界は、局所レベル(例えば長さ1mm以内)で規則的である。
【0117】
画像プロセッサ16が較正を用いる際、画像プロセッサ16は筋組織を容易に特定することができ、筋肉密度を参照対象として使用する。筋肉対非筋肉組織の比が、続いて較正の一形態として使用される。こうした理由から、多くの計算で、筋肉の特定及びその密度の取得が画像プロセッサ16により行われる処理で用いられる(このような理由で、画像プロセッサ16は後述するように異なるアーム幅AWを用いる)。このことから得られる利点を2つ挙げると、(i)画像プロセッサ16を使用してスキャンを解析する際に、参照対象密度を測定する目的での面倒で資源を浪費する日常的較正が必要なく、(ii)画像プロセッサ16が、定量的コンピュータ断層撮影だけでなく本質的にいかなるCTからの画像ファイルも操作し解析することができる。これにより、QCTの必要を無くすことができる。さらに、この手法では、画像プロセッサ16により既存のCT(又はMRI)に骨構造解析機能を設けることができる。(既存のCT装置は、広く利用可能であるが、骨解析機能を備えていないので骨粗鬆症の診断に使用できない。)
【0118】
強度又は空隙率の骨梁パラメータ又は指数等の多くの指数は、筋肉密度の先験的検出を必要とするので、画像プロセッサ16は、これらの例ではより大きなアーム幅AWを用いる。
AW=r×tan(arccos(0.965)) (4)
式中、rは、骨外の特定の角度として選択される半径であり、これらの角度は局所解剖学的構造に基づき事前設定される。これら特定の角度における骨外の軟組織は、大部分が筋肉である。画像プロセッサ16は、例えば、橈骨では90°、脛骨では約65°を用いる。AWは、較正参照対象としての使用等のために密度を適切に求めることができるように、十分な筋組織を含むほど十分な幅となるよう選択される。
【0119】
中心及び適当なアーム幅の決定後、画像プロセッサ16は適当な回転角θを決定する。画像プロセッサ16は、デフォルト回転角θを予測半径範囲から大半の骨に適している5°とする。しかしながら、この角度は状況によっては適当でない場合があるので、回転角の妥当性が他のROIの解析を進める前に試験される(後述)。5°のθでは、解析されるスライス毎に72個のRIOが得られる。
【0120】
回転アーム幅としてAWを使用する指数の場合、画像プロセッサ16は既定回転角θを1.5°とする。これは、骨縁部(つまり骨膜表面)が局所的に線状に見える(又は少なくとも円弧により近似されることができる)のに十分な小ささである。これにより、合計240個のROIが得られる。画像プロセッサ16は、ユーザが所望する場合は1°(又はそれ以下)の既定回転角θを用いるよう動作可能である。
【0121】
回転角θの妥当性を試験するために、画像プロセッサ16は、以下の条件が満たされるか否かを確認する。
sinθ×r<AW (5)
式中、rは上記で規定した4つの半径の最小値である。
【0122】
この条件が満たされない場合、AWを使用した解析に関して、回転角θは不適切であるとみなされ、画像プロセッサ16は、方程式5に従って5°未満の次に小さな角度(4°等だがいずれにせよ回転角としての使用に適しているもの)を選択する。この条件により、未解析のまま残る断面の断片が無いことが確実となる。画像プロセッサ16は、5°未満の角度を使用した場合はユーザに通知する。
【0123】
AW及びθ(1.5°)が使用され、画像プロセッサ16により上記のように方程式5を使用して1.5°未満の角度が上記で選択される場合も、同じ手順が実施される。
【0124】
回転角(θ)及びAW(Δにより決まる)は、画像プロセッサ16による解析を制御するためにユーザが設定又は選択するパラメータであることに留意されたい。これらは既定値であるが固定値ではない。既定値は、ヒトの骨構造の最適な解析のために選択される。したがって、ユーザは、骨、特に非人骨の最適な解析のための画像プロセッサ16の設定制御(settings control)を制御することにより、θ及びΔを調整することができる。
【0125】
例えば、骨直径は、ウマ等の一部の動物では最大10cmに達し得る。骨膜辺縁の長さがミリメートル長以内に収まることを確実にするために(潜在的な曲率不規則性の影響を最小化するために)、Δは0.9999に設定され、θは0.5°に再調整される。このような骨の大きな断面が、それぞれ長さ約700ミクロンの480個のROIに細分されることで、周囲及び表面の正確な測定が可能となる。
【0126】
画像プロセッサ16は、続いてこの実施形態では垂直である初期関心領域(ROI)を選択する。この初期ROIは、C(又はG)で開始する画像プロセッサ16の幅AW(又はAW)と中心からの長さ及び長さLとを有する横断面であり、長さLは、中心(C又はG)からの選択領域全体の最大対角線の半分、すなわち、
【数5】

(式中、a及びbは以下で規定する)である。この実施形態では、物質(又は厳密に言えば物質の画像)は、辺の長さがa及びbである平行四辺形内にあるものとみなすことができることに留意されたい。
【0127】
ROIが選択されると、画像プロセッサ16は、進行前に骨をROI内に適切に位置決めする。位置決めプロセスは、第1列又は最終列からそれぞれ左回り又は右回りに骨試料を回転させ、皮質骨の始端が第1列及び最終列において同じ行で開始するようにすることを含む。これにより、骨試料が確実に水平方向に位置決めされる。(試料がすでに水平である場合、画像プロセッサ16による回転は実施されない。)骨試料の適当な位置決めは、密度プロファイルに影響を及ぼすような試料の角度位置を回避するために実施される。
【0128】
回転を実際に実施する前に、画像プロセッサ16は、骨試料の見掛け上の皮質骨実質部を識別する。これは、試料の角度(すなわち非水平)位置に関して未補正の皮質骨実質部である。その見掛け上の皮質骨実質部内で、画像プロセッサ16は、第1列及び最終列における骨の始端を判定する。これにより、アルゴリズムで試料が完璧に水平であるか否かを認識することが可能となる。上述のように、試料が完璧に水平である場合、回転は実施されず、その他の場合は適宜回転が実施される。
【0129】
図7B(上図)を参照すると、左回転を実施する場合、第1列における骨の始端(すなわちx=0)は、最終列における骨の始端(X)よりも後に始まる(starts)。画像プロセッサ16は、第1列における皮質骨の始端(0,Y)及び最終列における皮質骨の始端(X,Y)を検出し、Y>Yであると判定する。画像プロセッサ16は、続いて試料と水平線との間の角度δを次式のように求める。
δ=atan((Y−Y)/X
=AWであることに留意されたい。
【0130】
次に、画像プロセッサ16は、δを使用して、0〜Xの各列xを標本が水平となるよう回転させる必要があるピクセル数(n)を次式のように算出する。
n=xcos(δ)
全列を、続いて左回りにnピクセル分移動させる。
【0131】
画像プロセッサ16が小さな、つまり3mm未満のAW値(すなわち、骨の半径に対して)を扱うことから、角度δは非常に小さいので、atan(δ)〜δ及び各列xを右回り及び左回りに回転させる必要があるピクセル数(n)は、次式で近似される。
n=x×(Y−Y)/AW
式中、xはi番目の列である。
【0132】
図7B(下図)を参照すると、右回転を実施する場合、第1列における皮質骨の始端(すなわちx=0)は、最終列における皮質骨の始端(X)よりも後に始まる。画像プロセッサ16は、第1列における皮質骨の始端(0,Y)及び最終列における皮質骨の始端(X,Y)を検出し、Y<Yであると判定する。次に、画像プロセッサ16は、試料と水平線との間の角度δを次式のように求める。
δ=atan((Y−Y)/X
【0133】
δを用いて、画像プロセッサ16は、続いて0〜Xの各列xを標本が水平となるよう回転させる必要があるピクセル数(n)を次式のように算出する。
n=xcos(δ)
全列を、続いて左回りにnピクセル分移動させる。
【0134】
画像プロセッサ16は、続いて密度プロファイルをストリップ毎に解析する。ストリップは、ROIの長さ(すなわち、AW又はAW等のAW)及び1ボクセル(又はピクセル)の幅を有する矩形セクションである。(画像プロセッサ16は、ストリップの特性を変更するよう制御可能でもある。)図8Aは、ROIのCTスキャナ12からのDICOMファイルから得られた例示的な画像であり、個々の行が1(実際には骨試料の外側)〜70(骨内)でラベリングした画像を構成する。図8Bは、明確化のためにネガにした同じ画像である。
【0135】
適切な回転を実施してROIの位置を調整した後、画像プロセッサ16は、続いてROI内の密度プロファイルを計算する。計算される密度プロファイルのタイプは、解析の目的に応じて変わる。解析に応じて、ストリップ毎の最大値、最小値、又は中央値のプロファイルを計算することができる。しかしながら、ほとんどの場合、画像プロセッサ16はストリップ毎の平均値のプロファイルを計算する。(例えば、画像内の2つ以上の骨の分離が望まれる場合、最大値のプロファイルが画像プロセッサ16により計算され得る。さらに、代替的な実施形態では、例えば、プロファイルを規定するにあたり全値の平均二乗を算出するよう画像プロセッサ16を制御することが望まれ得る。)密度プロファイルの決定及び解析の一例を、平均値の場合について以下で説明する。(例えば最大値の密度プロファイルが計算された場合も、同じ解析が実施される。)
【0136】
画像プロセッサ16は、骨の各ストリップiの平均密度DSを次式のように求める。
【0137】
【数6】

【0138】
式中、Aは、ストリップi内のm個のボクセルの各ボクセルの減弱値である。密度プロファイルの曲線は、ストリップ毎の平均密度プロファイルを使用して作成される。画像プロセッサ16は、曲線全体内で最大密度(DSmax)を有するストリップも識別する。(ボクセル又はピクセルレベルで、密度及び減弱という語は交換可能に使用され得る。)図9は、図8Aの画像に関するストリップ又は行番号に対する骨ストリップ密度(ヒドロキシアパタイトのミリグラム毎立方センチメートル又はmgHA/cc)のプロットであり、最大ストリップ密度DSmaxの場所が示されている。
【0139】
続いて、密度プロファイル曲線の1次(又は準(quasi-))導関数が、次式のように連続ストリップ間の密度差を計算することにより算出される。
ΔDSi,i+1=(DS−DSi+1)/DS (7)
(なお、この導関数の定義は従来の定義の逆である。)この1次導関数から、画像プロセッサ16は、試料を一連の「山」及び「谷」を含むものとして特性化することにより、骨試料を解析する。山は、密度プロファイル曲線の減少部分(すなわち、方程式7で定義されるような1次導関数が正である場合)に相当し、谷は、密度プロファイル曲線の増加部分(この1次導関数が負である場合)に相当する。導関数は、山及び谷の遷移部で値0を有する。
【0140】
画像プロセッサ16により求められた図9の密度プロファイル曲線の導関数を、図10にプロットする。画像プロセッサ16は、山の「高さ」を山の頂部の密度と山の底部の密度との間の差として求める。画像プロセッサ16は、山に関する算出とは逆に、谷の「高さ」を谷の終点の密度と谷の始点の密度との間の差として求める。すなわち、山は1−0(一連の0値の前の1に対応する密度−一連の0値の中で最後の0に対応する密度)として計算されるが、谷は0−1(一連の1値の前の0に対応する密度−一連の1値の中で最後の1に対応する密度)である。これらの山及び谷を使用して、画像プロセッサ16は、皮質骨実質部内の密度プロファイル曲線における最大ピーク及びトラフ等の減弱プロファイルにおける要点を以下の方法を使用して識別する。
【0141】
画像プロセッサ16は、続いて骨膜境界j(すなわち、骨が始まる場所)を識別する。密度プロファイル曲線は、行列から取り出され、新たな参照中心P(図11を参照)を与えられる。Pは、DSmaxの水平座標に等しい水平座標(図10に示す密度の導関数から求められる)と、DSmax外の最小密度に等しい垂直座標とを有する。この参照系では、Pから密度プロファイル曲線までの距離関数である関数λ−1(N)が、次式のように求められる。
【0142】
【数7】

【0143】
式中、Nは、密度プロファイルにおける第1ストリップとDSmax(すなわち、最大減弱を有するストリップ)との間のストリップを指す。点jは、λの最小値に対応する。
【0144】
図11は、図9のプロットと同様であるがこのステップを示すプロットである。
【0145】
画像プロセッサ16は、続いて、jとDSmaxとの間の密度の第1導関数における谷(図10を参照)を調査することにより皮質骨の始端を識別する。皮質骨の始端kは、jとDSmaxとの間の最大の(又は最深の)谷における第1導関数の最小値である。
【0146】
次に、画像プロセッサ16は、関数λの最小値として求められる緻密皮質骨の始端(l)を識別する。
【0147】
【数8】

【0148】
このステップを図12に示す。このようにlを識別することで、骨膜の最終的な局所非線形性又は部分体積効果等のアーチファクトの排除が可能となる。lの識別において、Nをk(皮質骨の始端)とDSmaxとの間のストリップに限定して、密度プロファイル曲線が新たな参照中心Pから再解析される。
【0149】
なお、λはλと同一の形態である。これらは(後述のλ及びλと同様に)、作用の基準点と、密度プロファイル曲線において適用される部分とが異なる。
【0150】
図13に示すように、画像プロセッサ16は、関数λの最小値として定義される皮質骨実質部の終端(o)(したがって骨梁の始端)を識別する。
【0151】
【数9】

【0152】
oを識別するために、NをDSmaxとz(ROIの終端に相当する曲線の終端)との間のストリップに限定して、密度プロファイル曲線が新たな参照中心Pから再解析される。これらの点を求める順番は、密度プロファイル曲線におけるそれらの順番に従うのではなく、後続ステップで必要とされる従番に従うことが、当業者には理解されるであろう。こうした理由から、例えばoが点m及びn(下記を参照)の前に求められる。
【0153】
次に、画像プロセッサ16は、DSmaxとoとの間の最大の山における1次導関数の最大値を識別することにより、骨梁状皮質骨の終端nを識別する。この点を図10に点nで示す。
【0154】
k及びnの識別を容易にするために、画像プロセッサ16は、(例えば図10に示すような)密度の1次導関数を「2値化する」ことができる。この2値化の結果を図14に示す。これにより、150及び152でそれぞれ示す皮質骨実質部内の(例えば、点j及びo間の)山及び谷の最大値を求めることが容易になる。(山及び谷それぞれの密度の値は、mgHA/cc単位で示す。)
【0155】
画像プロセッサ16は、(図15に示すように)関数λの最小値として求められる緻密皮質骨の終端(m)を識別する。
【0156】
【数10】

【0157】
mを識別する際、NをDSmaxとn(骨梁状皮質骨の終端)との間のストリップに限定して、密度プロファイル曲線が新たな参照中心Pから再解析される。
【0158】
図16は、画像プロセッサ16により実施されるこれらの識別ステップの結果を要約したものである。図16を参照すると、画像プロセッサ16は、この時点までに密度プロファイルにおいて(図の左から右へ読んで)以下のものを識別している。
j:骨の始端(すなわち骨膜境界);
k:皮質骨の始端;
l:緻密皮質骨の始端;
m:緻密皮質骨の終端;
n:骨梁状皮質骨の終端;及び
o:皮質骨実質部の終端(したがって骨梁の始端)。
これらの点が定まると、画像プロセッサ16は、骨を4つのコンパートメント:
(i)lとmとの間の緻密質(又は「硬質」)皮質骨;
(ii)mとnとの間の骨梁状皮質骨;
(iii)nとoとの間の皮質骨−骨梁移行部;及び
(iv)oと試料の終端(z)との間の骨梁
に分解する。
【0159】
図17及び図18は、画像プロセッサ16により求められる画像及び密度曲線の別の例を表す。図17は、画像(上図)及び明確化のために画像のネガ(下図)を含む。図18は、求められた密度曲線のプロットであり、皮質骨と骨梁との間の現在の分離閾値を180で示す。画像プロセッサ16により求められたコンパートメント境界を、これらの図において画像及び密度曲線の両方で示す。
【0160】
骨の解析セグメント化(すなわち分離)には、閾値の使用に依存しないという利点がある。例えば、既存のシステムでは、550mgHA/cc〜560mgHA/ccの閾値を使用して皮質骨実質部を骨梁実質部から分離する(Sharmilla)。この閾値のおおよその位置を図16に160で示す。したがって、密度の立ち上がり後、既存の技法では、密度が続いてこの閾値よりも低下する点以下の骨全部が骨梁を構成するとみなされる。したがってこの例では、ボックス162に含まれる骨実質部は、画像プロセッサ16では皮質骨実質部として識別されるが、(この例では、筋肉密度よりも高い密度を有するデータ点が骨梁コンパートメントに無いことから明らかなように、実質的に骨梁が見られないにもかかわらず)既存の方法では骨梁実質部として誤って識別される。550mgHAを超える密度を有する皮質骨の部分(164で示す)は、既存の手法では、閾値を使用して骨を皮質骨及び骨梁にセグメント化した後に骨髄腔内の浮遊骨(図19における骨画像190の「浮遊皮質」骨192を参照)として見える。これは、閾値に基づいた皮質骨コンパートメント及び骨梁コンパートメントへの骨のセグメント化により生じる既存の手法のアーチファクトである。さらに、既存の手法は、この例の皮質骨の中心に見える大きな空隙を識別することもできないので、試料の皮質骨空隙率に関して不正確に低い値を生成する。さらに、既存の手法は、骨梁が実際に失われている場合に皮質骨を骨梁として不正確に識別するように、骨梁コンパートメントで生じた劣化を低く見積もることで、骨梁消失の不正確な(また実際には低すぎる)推定値をもたらす。画像プロセッサ16はこれらの落とし穴を回避する。
【0161】
図18におけるボックス182は、皮質骨の大半及びその空隙率が見逃されて骨梁として誤ってラベリングされる別の場合を示す。
【0162】
画像プロセッサ16は、続いて画像を左回りに回転させ、断面(又はスライス)内の全ROIで同じ解析を実施する。ROIの数nは、
n=360/θ (8)
としての回転角(θ°)の関数である。ROIからROIへ回転させる方法は、画像プロセッサ16によりスライス毎に以下のように(また、図20A及び図20Bに概略的に示すように)実施される。
【0163】
この時点で、画像プロセッサ16は、中心(G又はC)に対する各ピクセルの(x,y)座標を有するが減弱値を有さない仮想鏡行列(図20B、下図を参照)を作成する。この仮想行列は回転行列である。初期関心領域(ROI)が、続いてこの回転行列から選択される。ROIは、その長さが最長対角線の長さの半分となるよう選択されるので、初期行列における減弱値を有する点は回転プロセス中に失われないことに留意されたい。画像プロセッサ16は、続いて初期行列からROIに対応する仮想行列における各点(又はピクセル)の減弱値を取り出す。
【0164】
画像プロセッサ16は、続いて次式に従ってこの仮想行列のROI内の各点A(x,y)をA’(x’,y’)へ回転させる。
【0165】
【数11】

及び
【0166】
【数12】

【0167】
回転させたら、ピクセルA’の減弱値が初期行列から取り出される。画像プロセッサ16は、初期ROI(ROI)全体を同時に回転させる。画像プロセッサ16は、初期ROI内の全部の点を回転させ、360°完全に実施されるまでROIと幅及び長さが同様の行列を再配置する(repopulates)。例えば、角度θが5°の場合、各断面が72個の行列又は72個のROIとして解析される。角度θが1.5°の場合、断面全体が240個の行列(又はROI)として解析され、角度θが0.1°の場合、断面全体が3600個の行列(又はROI)として解析される。
【0168】
画像プロセッサ16は、続いて特に長いROIにより初期行列において対応する減弱値の無い点を有するストリップを無視する。
【0169】
適当なAW及び角度(θ)の選択後、画像プロセッサ16は、断面全体で可変数の回転を実施することにより画像を解析する。大半の指数(空隙率、石灰化、及び骨梁パラメータ等)に関して、最低2回転が画像の解析に用いられる。
【0170】
図20Cは、画像プロセッサ16の画像認識ステーション及び画像解析ステーションの動作の概略的なフローチャート200である。ステップ202において、画像が画像プロセッサ16により画像認識ステーションに入力される。
【0171】
ステップ204において、キャリブラント(calibrant)が必要か否かが判定される。物質の寸法等のキャリブラントが不要なパラメータ(例えば、皮質骨厚、外寸、及び内寸)の測定の場合、認識回転は実施されない。したがって、キャリブラントが不要な場合、画像プロセッサ16による処理はステップ208に進み(下記を参照)、そうでない場合はステップ206において処理が続く。
【0172】
ステップ206において、1つ又は複数の「認識」回転が必要な数だけ実施され、詳細な定量解析のための後続の回転で使用されることになる画像内の特性又は特徴が識別される。これらの特徴は、周囲軟組織の1つ又は複数の代表密度と、試料の関心物質(この例では骨)の1つ又は複数の代表密度とを含む。
【0173】
したがって、画像内の骨の場合、ステップ206における認識回転(単数又は複数)の目標は、(i)筋組織を含む周囲背景を識別し、例えば後続の解析回転でキャリブラントとして使用されることになる筋組織の代表密度を取得すること、及び(ii)同じく試料の定量解析でその後使用されることになる解析対象物質の代表密度を識別することである。処理は続いてステップ208に進む。
【0174】
ステップ208において、画像プロセッサ16は、画像を画像解析ステーションに入力し、関心物質を解析及び特性化する。ステップ210において、画像プロセッサ16は、画像解析ステーションを用いて1つ又は複数の解析回転(必要な数だけ)を実施し、試料を解析する。ステップ210における解析回転(単数又は複数)中、画像プロセッサ16は、画像認識回転(ステップ206を参照)中に取得した特性、この例では骨を使用して上述のようなパラメータを定量する。
【0175】
ステップ212において、画像プロセッサ16は画像解析ステーションを出て結果合成を開始する。
【0176】
画像プロセッサ16により実施される解析は、コンパートメント内の1つのストリップから次のストリップまでの密度の差を活用するので、1つのストリップに限定されるコンパートメント(つまり、緻密皮質骨、骨梁状皮質骨、皮質骨−骨梁移行部、及び骨梁)はこの解析に不適当である。この例では、空隙率、劣化等を画像プロセッサ16により求めることができないからである。さらに、1つのストリップに限定されるコンパートメントは、このストリップに対する部分体積効果(PVE)の交絡作用を評価できないので解析不可能である。したがって、画像プロセッサ16は、1つのストリップに限定されるコンパートメントを解析しない。
【0177】
画像プロセッサ16は、ストリップ4つ分の(又は実際にはそれよりも少ない)皮質骨実質部を解析に不適当であるとみなす。3つの皮質骨内コンパートメントは、1つのストリップしか有さず(したがってそれぞれが解析不可能であり)、最終又は第4ストリップはPVEにより悪影響を受け得る。
【0178】
しかしながら、皮質骨実質部内のストリップの数に関係なく、画像プロセッサ16は、次式のように皮質骨の厚さ(CThcm)を近似する。
【0179】
【数13】

【0180】
式中、nは皮質骨実質部内のストリップの数であり、reは分解能であり、DS及びDSmaxは最終ストリップnの密度及び隣接する適当なROIi−1又はROIi+1内の最大密度を有するストリップの密度である。(ROIi−1及びROIi+1の両方が適当である場合、DSmaxは、最大DSmaxを有するROIから取得される。)この場合、最終ストリップ(n)がPVEにより悪影響を受けると想定される。
【0181】
さらに、骨の始端を識別することができ、皮質骨の厚さを近似することができるので、内半径及び外半径並びに周囲長を計算することができる。
【0182】
この手法を使用して、画像プロセッサ16は、ROIと同じ幅のn個のROIを選択して解析する。スライス内の全部のROIが解析されると、画像プロセッサ16は、続いてn個のROIをマージし、認識又は診断に必要な特性を有する解析済みスライスを再構成する。
【0183】
回転ステップ中、関心のROIが重複する、すなわちピクセル(i)が2つ以上のROIに現れ得ることに留意されたい。例えば、脛骨遠位端において、角度θが0.1°の場合、断面が3600個のROIで再構成され、90個ものROIに同じ点が現れ得る。その場合、画像プロセッサ16は、(ROI内の点を元の行列における同じ点に遡ること等により)各特定のパラメータに対する重複点の寄与を考慮に入れる。各ピクセルの寄与を1回だけ計数することが重要だからである。画像プロセッサ16は、1つの点が異なるROI内の特定の区域(つまり、緻密皮質骨、骨梁状皮質骨、又は骨梁)に現れる回数を計数して記憶する。マージプロセス中、画像プロセッサ16は、最初に異なる区域における点の出現の頻度分布を求めてから、最も頻繁に現れる区域にその点を帰属させる(但し、他の基準を使用して正確な又は最も適した区域を求めてもよい)。
【0184】
第1スライスの再構成後、画像プロセッサ16は、全部のスライス又は全部の事前選択されたスライスが解析されるまで次のスライスへと進む。全部のスライスが解析されると、画像プロセッサ16は、種々のパラメータを求めて個々の試料毎に関連するパラメータを出力する。
【0185】
画像プロセッサ16は、骨及びその周囲組織(通常は筋肉及び脂肪を含む)の非常に広範な調査を可能にする。画像プロセッサ16の用途は、骨粗鬆症の検出に関する指数に限定されない。多くの他の代謝性疾患及び骨転移等の浸潤性骨疾患に関して指数が生成される。画像プロセッサ16は、ユーザが望む指数を選択するよう、また選択された解析を即座に実施するようユーザにより制御可能である。
【0186】
皮質骨の面積及び厚さは、画像プロセッサ16により、幾何学的中心Cからアーム幅AW及び回転角θで求められる。これらの指数は、出力の際はミリメートル又はセンチメートル(厚さに関して)及びmm又はcm(表面に関して)の単位で表示される。
【0187】
緻密皮質骨の皮質骨厚(CThcc)の平均は、既存のQCT技法により提供される平均CThと類似しているが、異なる形で求められる。この実施形態によれば、画像プロセッサ16は、次式に従い真の平均を求める。
【0188】
【数14】

【0189】
式中、nはその個体で解析したROIの数、すなわち全CTh値の平均である(皮質骨面積/断面周囲長として計算される平均の推定値を求める現在のQCT技法を参照)。
【0190】
画像プロセッサ16により求められた値は、n個のスライスで解析される72個(又はそれ以上)の領域の平均である。画像プロセッサ16は、ユーザが平均値の標準偏差(SD)及び標準誤差(SEM)とこの値の範囲とを出力することを可能にする。したがって、出力は平均CTh、SD、SEMである。
【0191】
緻密皮質骨の皮質骨厚の中央値は既存の手法では求められないが、本発明者らは、中央CThが、有限要素解析で推定した場合に平均CThよりも良好な骨強度の予測をもたらすことを突き止めたので、画像プロセッサ16は中央CThを求めて出力する。画像プロセッサ16は、中央CThを全72個(又はそれ以上)のROI×n個のスライスのCThの測定値として求める。画像プロセッサ16は、このような中央値の範囲(つまり、最小値及び最大値)も求めることができる。
【0192】
緻密皮質骨の皮質骨厚の最小値は、既存のQCT技法では提供されないが、本発明者らは、これが臨床状況及び研究状況で有用である可能性が高いと結論付けた。断面内のCThの最小値が加齢に伴って最大の減少を示し、したがって平均CThよりもよく骨折リスクを示す可能性が高いという証拠がある(これは、鎖がその最も弱い環で切れるように、生体力学的観点から理解可能である)。画像プロセッサ16は、緻密皮質骨の皮質骨厚の最小値の平均、SD、SEM、及び値範囲を求め、緻密皮質骨の解剖学的場所(例えば、前部、後部等)を識別することもできる(以下で要約する結果を参照)。
【0193】
緻密皮質骨の面積(又は「皮質骨面積」)が小さいほど、骨折のリスクが大きい。皮質骨面積(又はCoA)は、画像プロセッサ16により、緻密皮質骨内のピクセル数にピクセルの面積を乗じたものとして求められ、したがって、
CoA=n×(re) (10)
であり、式中、nは緻密皮質骨内のピクセル数であり、reはCTスキャナ12(又はMRIスキャナ等の骨の撮像に使用される他のスキャナ)の分解能である。これは、次式から求めることもできる。
【0194】
【数15】

【0195】
式中、iはROIであり、nは検査されたROIの数であり、CThはROI及び回転角θでの皮質骨厚であり、rはROIにおける骨の半径である(後述するように求められる)。画像プロセッサ16は、断面を曲率半径rの小さな弧に効果的に分割することで、不規則断面の面積(骨等)を正確に求めることを可能にする。CoAの平均、SD、SEM、及び範囲を、検査された断面全部に関して続いて求めることができる。
【0196】
画像プロセッサ16は、CThtc、すなわち骨梁状皮質骨の皮質骨厚(CTh)の平均を求めるようにも構成される。(CThtcは、既存の技法では求められない)。CThtcは、緻密皮質骨の平均厚とは無関係に骨量減少及び骨折リスクを示す。骨梁状皮質骨が厚いほど、(残存緻密皮質骨が見掛け上は他の緻密皮質骨(peers)の厚さと同じ厚さのままであったとしても)劣化が多く脆弱であることを示す。この値は、画像プロセッサ16により方程式10又は11を使用して、但し緻密皮質骨内に適用して求められる。
【0197】
画像プロセッサ16は、平均値に加えて皮質骨の状況に関する付加的な情報を提供する骨梁状皮質骨の皮質骨厚(CTh)の中央値を求めるよう構成され、皮質が最も弱い場所を示す遷移(又は骨梁状)皮質骨の皮質骨厚(CTh)の最大値を求めるよう構成される。
【0198】
画像プロセッサ16は、新規のパラメータである骨梁状皮質骨の面積を求めるようにも構成され、これは骨梁状皮質骨内のピクセルが占める面積である。骨梁状皮質骨の面積は、緻密皮質骨の面積とは異なる解釈をすべきであり(ある意味では、骨梁状皮質骨の面積はそれを補完するものである)、骨梁状皮質骨の面積が大きいほど、生じた皮質骨劣化の大きさが大きく、したがって脆弱性が高い。この値は、やはり画像プロセッサ16により方程式10又は11を使用して、但し骨梁状皮質骨内に適用して求められる。
【0199】
画像プロセッサ16は、CThcm、すなわち皮質骨実質部の皮質骨厚(CTh)の平均を求めるようにも構成される。既存の手法は、緻密皮質骨のみで皮質骨実質部を識別する。皮質骨実質部は厚いほどよい。これは、方程式9を使用して、但し緻密実質部に適用して求められる。
【0200】
画像プロセッサ16は、2つの他の新規指数、すなわち皮質骨実質部の皮質骨厚の中央値及び皮質骨実質部の皮質骨厚の最小値と、それらそれぞれの解剖学的場所とを求めるよう構成される(以下で要約する結果を参照)。既存の手法は、皮質骨実質部を識別せず、緻密皮質骨に限定される。皮質骨実質部の中央値が大きいほど骨が強く、皮質骨実質部の最小値が小さいほど骨が弱い。
【0201】
画像プロセッサ16は、皮質骨実質部の面積を求めるようにも構成されるが、これは、皮質骨面積が小さいほど骨折のリスクが大きいからである。皮質骨面積は、画像プロセッサ16により方程式10又は11を使用して、但し皮質骨実質部内に適用して求められる。
【0202】
画像プロセッサ16は、皮質骨−骨梁移行部の皮質骨厚(CTh)の平均(CThctjとして表す)、皮質骨−骨梁移行部の皮質骨厚の中央値、及び皮質骨−骨梁移行部の皮質骨厚の最小値を求めるようにも構成される。これらの指数は価値があり、その理由は、健康な骨では皮質骨コンパートメントと骨梁コンパートメントとの間に明確な差異があるので皮質骨−骨梁移行部が非常に小さいが、加齢及び劣化に伴い皮質骨−骨梁移行部が増大することで不明瞭になるからである。
【0203】
画像プロセッサ16は、皮質骨−骨梁移行部の面積を、方程式10又は11を使用して、但し皮質骨−骨梁移行部内に適用して求めるよう同様に構成される。
【0204】
画像プロセッサ16は、皮質骨の始端と(C)との間の長さとして定義される72個以上のROI毎の半径rを、次式のように求めることができ、
=(z−1)×re (12)
式中、rはROIの半径であり、reはCTスキャナ12の分解能である。
【0205】
画像プロセッサ16は、空隙率及び他の関連指数、例えば緻密皮質骨パーセンテージ(PCC)も求めることができ、これは、緻密又は中実な外観を呈する皮質骨の割合であり、算出された皮質骨実質部の厚さに対する緻密皮質骨の厚さの比から次式のように求められる。
PCC=100×CThcc/CThcm (13)
【0206】
小さなPCC値は、例えば加齢により皮質が減少したことを示す。(副甲状腺機能亢進症等の特定の疾患の進行も示し得る。)
【0207】
同様に、画像プロセッサ16は、骨梁状皮質骨パーセンテージ(PTC)、すなわち骨梁状の外観を呈する皮質骨の割合を求めるよう構成され、これは次式のように計算される。
PTC=100×CThtc/CThcm (14)
【0208】
大きなPTCは、皮質が加齢又は疾患中に減少して骨梁に似た皮質骨の割合が大きくなることを意味する。
【0209】
画像プロセッサ16は、皮質骨−骨梁移行部パーセンテージ(PCTJ)、すなわち皮質骨のうち遷移区域の割合を次式のように求めるよう構成される。
PCTJ=100×CThctj/CThcm (15)
【0210】
概して、空隙率が高いほど骨が弱いので、画像プロセッサ16は複数の空隙率指数を求めるよう構成される。
【0211】
例えば、画像プロセッサ16は、緻密皮質骨の見掛け上の空隙率(aPoCC)を求めるよう構成される(単に「空隙率」と称する場合があるが、当業者が理解するように絶対空隙率とは区別すべきである)。空隙率の増加が無い場合、全部のストリップが同様の密度を有することになる。したがって、見掛け上の空隙率は、(i)皮質骨のDSmax及び厚さにより画定される矩形の面積と、(ii)皮質骨の特定のコンパートメント内の密度曲線下の面積(各コンパートメントの境界l、m、n、及びoについては図16を参照)との比として算出される。したがって、緻密皮質骨の見掛け上の空隙率は、次式に従って求められる。
【0212】
【数16】

【0213】
式中、nはROIにおける皮質骨内のストリップの数である。これは、より一般的な公式化:
【0214】
【数17】

【0215】
の近似であり、これは、解析が2つの面積の比に基づき、必ずしも点毎の解析でないことを反映する。より一般的な公式化は、他の実施形態により適している場合がある。
【0216】
画像プロセッサ16は、(方程式16に従って、但し骨梁状皮質骨に限定して)骨梁状皮質骨の空隙率(aPoTC)、(方程式16に従って、但し皮質全体に関して)皮質骨実質部の空隙率(aPoCM)、及び(方程式16に従って、但し骨梁コンパートメントに関して)骨梁コンパートメントの空隙率(aPoTB)を求めるようにも構成される(この場合も、実際には見掛け上の空隙率)。
【0217】
空隙率(すなわち、見掛け上の空隙率ではなく「絶対」)も、画像プロセッサ16により求められる。空隙率を定量するために、画像プロセッサ16は、周囲筋組織の代表密度(Maxmd)及び関心物質(すなわち、この例では骨)の物質の代表密度A(x)を識別する。
【0218】
Maxmdを識別するために、最小限の回転が必要である。AWを使用した最初の回転から、画像プロセッサ16は、周囲筋組織を識別して筋組織の最大密度(Maxmd)を取得する。これを行うために、画像プロセッサ16は、周囲筋組織に対応する全ボクセルの減弱値の頻度分布を求める。Maxmdは、頻度分布曲線の95パーセンタイルに相当する減弱に対応する。最大値は、例えばコンプトン散乱からのノイズにより悪影響を受け得る。95パーセンタイルの値は、Maxmdを表すが本質的にノイズにより悪影響を受けないほど十分に大きい。
【0219】
同じプロセスが画像プロセッサ16により使用されて、純粋な骨を表す値の(B)が識別される。各ROIの最大密度がこれらの基準を満たすことを示唆する実験的証拠がある。骨単位距離(inter-haversian distance)は200μmを超えるので、4つのハバース管は、空隙が存在しない40,000μmを超える正方形面積を画定する。したがって、82μmの空間分解能では、部分体積効果により悪影響を受けていない最大6ピクセルが皮質骨内のハバース管同士の間に配置される。したがって、所与のROI内の最大密度を有するピクセルは、実際にはこれらのピクセルの中にあり、純粋に石灰化した骨の密度を有すると考えられ得る。したがって、200μm以下の分解能の全イメージングモダリティに関して、(B)の減弱は、PVEにより悪影響を受けずに純粋に石灰化した骨からなるものと考えられる。画像プロセッサ16は、続いて(B)の減弱をMaxmdと共に使用して、画像内の全ボクセル又はピクセルの減弱値を−1〜+1の範囲のスケールに変換する。この変換は、各ボクセルの減弱を各ボクセル内の骨の推定量に変換することを可能にする新たな概念である。各ボクセルの変換単位を、骨体積当量(bone volume equivalent)(BVE)と称する。図21は、解析回転中に骨を解析及び特性化するために画像プロセッサ16により使用されるBVEスケールである。脂肪のBVEは−1であり、水(骨において、細胞、血管、及び間質組織に相当し、したがって周囲筋組織又は水と同様である)のBVEは0であり、純粋な骨のBVEは0.9以上である。0.9未満のBVEを有するボクセルは、部分的に(0.9>BVE>0の場合)又は完全に(BVE≦0の場合)間隙からなる。
【0220】
画像プロセッサ16は、ROI内の座標(i,j)のボクセル(X)のBVEを次式のように計算する。
【0221】
【数18】

【0222】
式中、A(X)、A(B)、及びA(Maxmd)は、それぞれボクセルX、B、及びMaxmdの減弱値である。
【0223】
BVEの概念は、画像プロセッサ16が骨の特に詳細な特性化を行うことを可能にし、こうした特性化には、イメージングモダリティの公称面内分解能未満のサイズの空隙に起因する画像内の空隙率の推定が含まれる。
【0224】
画像が200μm以下の面内分解能でのイメージングモダリティにより取り込まれる場合、0.9以上のBVEを有するボクセルは、(組織石灰化の差に起因する密度又は減弱の差が10%を超えないので)純粋に石灰化した骨を含むボクセルである。したがって、0〜0.9のBVEを有するボクセルは、ある程度の間隙を含む。ボクセルが皮質骨実質部内に位置する場合、このボクセルは、モダリティの分解能よりも小さなサイズの空隙を含む(図21を参照)。
【0225】
BVEが0であるボクセルは、イメージングモダリティの分解能と同様の又はそれよりも大きいサイズの間隙である。
【0226】
画像プロセッサ16は、各ボクセルの空隙体積当量(pore volume equivalent)(PoVE)を次式のように算出する。
BVE(X)≦0の場合、PoVE(X)=1、及び
BVE(X)>0の場合、PoVE(X)=1−BVE(X)
【0227】
画像内の各ボクセルの間隙含有量が、続いてPoVEから推定される。
【0228】
(iii)画像プロセッサ16は、続いてROI内の総PoVE(TPoVE)を次式のように算出する。
【0229】
【数19】

【0230】
(iv)最後に、画像プロセッサ16は、ROI内の空隙率(Po)を次式のように算出する。
【0231】
【数20】

【0232】
式中、nはROI内のボクセル数である。
【0233】
この手順により、空隙率に対する各ボクセルの寄与は、画像プロセッサ16により、ボクセルの密度を使用したボクセル内の純粋に石灰化した骨の推定割合に比例して考慮される(accounted for)。
【0234】
評価すべき空隙の範囲は、ユーザが画像プロセッサ16のユーザインタフェース18で選択することができる。例えば、PoVE=0の空隙(すなわち、システム10の分解能以内までは空に見えるボクセル)又はPoVE=0.5の空隙(すなわち、システム10の分解能のサイズの半分の空隙)である。
【0235】
ユーザは、骨の3つのコンパートメント(すなわち、緻密皮質骨、骨梁状皮質骨、及び骨梁)のいずれかにおける任意のサイズの空隙による空隙率の定量を選択することができる。
【0236】
機械の分解能のサイズの空隙を定量化する方法は、以下の通りである。画像プロセッサ16は、各コンパートメントの各ピクセル(又はボクセル)を、骨を「1」、骨以外を「0」の2進値に変換し、骨をピクセルiと定義して、
>Maxmd (18)
とし、骨以外をピクセルjと定義して、
<Maxmd (19)
とする。
【0237】
このプロセスの結果を図22A、図22B、及び図22Cに概略的に示す。図22Aは、皮質骨内の空隙が見えているROIの例である。コンパートメントの識別後、空隙は、Maxmdよりも低い密度を有するボクセルとして定義される。1つの列における皮質骨内の空隙の識別の例を図22Bに示す。図22Cは、解析行に沿った骨ピクセル対非骨ピクセルの2値化プロットである。空隙の2値化及び識別は、ROI全体の解析で皮質骨実質部が識別された後に行われる。
【0238】
空隙率を求めるための既存の技法は、二分手法を使用して固定の任意閾値に基づき空隙を骨組織から鑑別する。こうして求められた空隙率は、分解能依存性が高く、部分体積効果(PVE)の影響を受けるので、画像プロセッサ16は、これを単に「見掛け上の空隙率」とみなす。図22Bに示す(PVEにより悪影響を受けた)点i等の、空隙−骨の縁部における骨及び軟組織の割合が様々な(すなわち、PVEで悪影響を受けた)ボクセルは、空隙率の算出から誤って排除される。現在のアルゴリズムが閾値を使用して骨を軟組織から分離した後に空隙率を計算する場合に、同様の誤差がある。こうした理由から、画像プロセッサ16は、全ボクセルの密度を考慮する場合に上述のように(方程式16及び17を参照)空隙率を計算することが有利である。
【0239】
画像プロセッサ16により具現される一般原理は、周囲環境及び純粋な形態での関心物質の代表密度を参照対象として用いることにより、空隙率を求めるというものであることに留意されたい。これにより、画像プロセッサ16は、骨だけでなく任意の物質の空隙率の非破壊測定を容易に行うことができる。物質(例えば、岩石、金属、及びプラスチック)の空隙率は、空洞(vacancy)又は「空所(emptiness)」を参照対象として使用して求めることができる。これを例として図23に示す。図23は、図1のシステム10と共に使用される、本発明の実施形態による物質の空隙率の非破壊in vitro測定用の空隙率測定装置220の概略図である。
【0240】
装置220は、内部ステーション224(解析対象の物質又は試料226の支持用)を有するシール可能な管222を含む。管222は弁228を有し、装置220は弁228に取り付けられた真空ポンプ229を含む。真空ポンプ229は、物質又は試料226をステーション224に載せて管222をシールしたら管222を真空排気するために設けられる。
【0241】
したがって、ステーション224上に物質又は試料226を載せて管222をシールした後、真空ポンプ229のスイッチを入れ、物質又は試料226の周りの浮遊物質を真空ポンプ229により管222から排出させる。したがって、少なくとも部分真空が物質又は試料226の周りに形成され、これが本実施形態に従って活用される(低密度又はゼロ密度の)空洞又は「空所」としての役割を果たす。管222を、続いて真空ポンプ229から取り外し、CTスキャナ12の中央スキャンボリューム24内に配置してスキャンすることができ、得られたデータが上述のような処理のために画像プロセッサ16に転送される。
【0242】
物質又は試料226の周りにこの「空所」(本質的には低密度の領域)を設けることで、画像プロセッサ16が周囲環境(この場合はいわゆる「空所」)を使用して物質又は試料226内の空隙率を求めることが可能となる。物質又は試料226の周りに浮遊しているか又は他の形で存在する物質は、そうでなければ画像プロセッサ16により識別されて参照対象として使用され、不正確な結果を招くことになる。(「空所」を引用符に入れて使用するのは、真にゼロの圧力を達成することができず、またいずれにせよその必要はなく、この「浮遊デブリ」の除去で十分であるということを認めるためである。)
【0243】
不純物(例えばこの浮遊物質)を除去した後、関心物質を上述のように撮像(CT)する。画像は、画像プロセッサ16により自動的に検索及び解析され、上述のように周囲組織(この場合は「空所」)を参照対象として使用して絶対空隙率が求められる。参照対象(空隙率の場合は空所)の使用により、絶対CT値への依存が回避される。
【0244】
一実施形態では、本発明は、システム10、シール可能な管222、及び真空ポンプ229を備える統合空隙率測定システムを提供する。
【0245】
生きている人物での空隙率定量の場合、空隙は骨膜に囲まれた領域内の非骨空間であり、正しくはこれはいわゆる「空所」であることに留意されたい。これらの非骨空間は、筋肉の密度以下の密度の組織により占められる。こうした理由から、生きた個体における(in vivo状況における)骨の空隙率の評価は、筋肉を参照対象として使用する。
【0246】
空隙率の非破壊測定には、物質特性化、物質内の内部欠陥及び内部亀裂の検出を含む、多くの潜在用途がある。
【0247】
画像プロセッサ16が、比較等の目的でこの空隙率を出力することができることに留意されたい。この場合、各コンパートメントにおける空隙面積(PoA)は、次式の通りである。
【0248】
【数21】

【0249】
画像プロセッサ16は、続いて各コンパートメントにおける空隙率を求める。例えば、緻密皮質骨の空隙率(PoCC)は、
PoCC=100×PoACC/AreaCC (21)
であり、式中、PoCCは緻密皮質骨の空隙率であり、PoACCは緻密皮質骨の空隙面積であり、AreaCCは緻密皮質骨の面積である。
【0250】
画像プロセッサ16は、緻密皮質骨の劣化(CD1)を求めるよう構成される。この指数は、加齢の過程で観察されるような内皮質骨から外皮質骨にかけての空隙率の漸増を反映する。空隙は、若年健常個体の皮質骨内では均一に分布するので、これらの個体に関しては、皮質骨内のベストフィットラインが実質的に水平である。加齢に伴い、空隙率は皮質骨の外側よりも内側を侵食するので、ベストフィットラインが水平線と形成する角度が次第に大きくなる。正常なCD1は3.5%未満である。
【0251】
画像プロセッサ16は、従来の最小二乗平均式を使用して緻密皮質骨内のベストフィットラインを求めてから、ベストフィットラインとDSmaxを通る水平線との間の角度(ラジアンでω)を求め、続いて次式のようにCD1を求めることにより、CD1を求める。
CD1(%)=100(ω/1.5707) (22)
【0252】
画像プロセッサ16は、CD1と類似した骨梁状皮質骨の劣化(CD2)を求める。CD2は、緻密皮質骨の終端(m)及び骨梁の始端内のベストフィットラインを従来の最小二乗平均式を使用して求めてから、ベストフィットラインとmを通る垂直線との間の角度(ラジアンでω)を求めることにより算出される。CD2は、このとき次式のように求められる。
CD2(%)=100(ω/1.5707)
【0253】
画像プロセッサ16は、皮質骨脆弱性(CF)も求めることができ、これは、皮質骨脆弱性の高リモデリングによる空隙率の寄与を示し、したがってその評価を可能にする。CFは、次式のように求められる。
CF(%)=(AbsPocc×CD1+AbsPotc×CD2)/10000 (23)
【0254】
画像プロセッサ16は、相対密度、すなわち周囲筋肉の減弱に対する各コンパートメント(緻密皮質骨、骨梁状皮質骨等)の減弱も求めることができる。したがって、相対密度は、石灰化及び空隙率の両方を反映し、パーセンテージで表される。相対密度は、DSmaxとは無関係である。
【0255】
筋肉ストリップの平均密度(又は減弱)DSは、次式の通りである。
【0256】
【数22】

【0257】
各コンパートメントの相対密度が、続いて同様にして求められる。例えば、緻密皮質骨の相対密度は、
RDcc=100×DScc/DS (25)
であり、式中、DSccは緻密皮質骨の密度である。したがって、相対密度は、周囲組織と比べた骨の緻密度の平均を示す。骨の石灰化が少ないほど、骨が多孔質でありその相対密度が低い。
【0258】
同様に、骨梁状皮質骨の相対密度(RDtc)、すなわちDSに対する骨梁状皮質骨のストリップの密度(DStb)の比は、次式の通りである。
RDtc=100×DStc/DS
【0259】
皮質骨実質部の相対密度(RDcm)、すなわちDSに対する皮質骨実質部のストリップの密度(DScm)の比は、次式の通りである。
RDcm=100×DScm/DS
【0260】
骨梁実質部の相対密度(RDtb)、すなわちDSに対する皮質骨実質部のストリップの密度(DStb)の比は、次式の通りである。
RDtb=100×DStb/DS
【0261】
皮質骨−骨梁差異指数(CDTI)は、骨梁コンパートメントの密度プロファイル曲線下の面積と皮質骨実質部コンパートメントの密度プロファイル曲線下の面積との比であり、画像プロセッサ16により次式から求められる。
【0262】
【数23】

【0263】
式中、k、o、及びzはそれぞれ、緻密皮質骨の始端、皮質骨実質部の終端、及び試料全体の終端に対応する。若年成人における大部分が皮質骨の部位(大腿骨の中央骨幹又は転子下領域等)では、皮質骨が骨梁とは明確に異なることに留意されたい。これらの部位では、骨量減少により皮質骨が内側の骨梁状構造に変わり、したがって皮質骨と骨梁との間の差異が減少することでCTDIを減少させる。
【0264】
画像プロセッサ16は、種々の脂肪指数を求めるようにも構成される。これらの指数は、骨髄の脂肪変換(fat transformation)の程度を反映する。骨が脂肪に置き換わる程度が大きいほど、骨の消失が多く骨の脆弱性が高くなった。(代表密度Maxmdを有する)周囲筋肉よりも低い骨内のコンパートメントにおける減弱は、そのコンパートメント内の骨の消失及び脂肪による置換を反映する。したがって、脂肪ボクセルは、筋肉密度Maxmdよりも低い密度を有する骨梁内のストリップを構成する。
【0265】
画像プロセッサ16は、脂肪の割合(FatP)(脂肪ボクセルの数を検査ボクセルの総数で除したもの)と、脂肪負荷(fat burden:脂肪含量)(FatB)(筋肉の代表密度Maxmdと比べた脂肪ボクセル(FS)の平均密度)とを求めるよう構成される。脂肪ストリップの平均密度(DS)は、
【0266】
【数24】

【0267】
であり、式中、Dはボクセルiの密度であり、D≦Maxmdである。したがって、脂肪負荷(FatB)は次式となる。
FB(%)=100(DS/Maxmd) (28)
【0268】
画像プロセッサ16は、種々の石灰化指数を求めるようにも構成される。これらの指数は、石灰化度及び石灰化の分布の不均質性を反映する。最大密度を有する骨ピクセルと筋肉(Maxmd)との間のコントラストであるこれら2つの組織間の減弱差は、骨の石灰化レベルを反映すると考えられる。この指数は、ストリップではなくバンドを使用して算出される。画像プロセッサ16は、純粋に石灰化した骨から完全になることがほぼ確実な、したがって部分体積効果及び空隙率による悪影響が最小であるピクセル又はボクセルを識別する。これらは、上述のように0.9以上のBVEを有するボクセルである。石灰化(ML)レベルは、ROIでなく画像内の全断面の検査後に求められる。
【0269】
画像プロセッサ16は、次式のようにMLを求める。
【0270】
【数25】

【0271】
式中、A(i)は、BVE(i)>0.9となるようなピクセル又はボクセル(i)の減弱である。
【0272】
所望であれば、画像プロセッサ16は、ユーザの必要に応じて、石灰化した骨のmgHA/cc(HA=ヒドロキシアパタイト)又はmg/ccでの緻密皮質骨、骨梁状皮質骨、皮質骨−骨梁移行部、及び骨梁の絶対密度を求めて出力することができる。
【0273】
画像プロセッサ16は、次式を用いて骨の所与のコンパートメント内の各ボクセルの減弱をmgHA/ccに変換する。
D(mgHA/cc)=695.808×(A/Maxmd)))−455.27 (30)
式中、Aはボクセルiの減弱である。この方程式は、ファントムのスキャンにより実験的に確定したものである。
【0274】
画像プロセッサ16は、最初に筋肉に関連するボクセルを識別し、続いて参照対象として筋肉密度を使用して骨の密度を求めることにより、所与のコンパートメント内の各ボクセルの減弱Aを石灰化した骨のg/cc当量に変換する。被験者自身の筋肉を参照対象として使用するので、日常的較正の必要が回避される。g/ccでの他のボクセルの密度(D)が、続いて画像プロセッサ16により次式から求められる。
D(g/cc)=0.495×(A/Maxmd) (31)
【0275】
純粋に石灰化した骨は、2.14g/ccの密度を有する。
【0276】
画像プロセッサ16は、皮質骨及び骨梁の絶対密度(g/cc及びmgHA/cc)を出力する。絶対密度はより一般的に必要とされるので、これは比較のために過ぎない。
【0277】
画像プロセッサ16は、重心G、回転アーム幅AW、及び回転角θを使用することにより強度指数を求める。骨膜下に包含される領域内の非骨組織は、上述のようにMaxmd+1を使用して除去される。画像プロセッサ16は、続いて以下のように強度指数を求める。
【0278】
画像プロセッサ16は、ROI毎に次式のように座屈比(BR)を求める。
BR=CThcc/r (32)
式中、CThcc及びrは、それぞれROIにおける緻密皮質骨の厚さ及び半径である。
【0279】
画像プロセッサ16は、スライス内の全角度θに関して断面2次モーメント(又は慣性モーメントI)を次式のように求める。
【0280】
【数26】

【0281】
式中、Iは軸xを中心とした断面2次モーメントであり、reはピクセルの分解能であり、yは軸xから要素ピクセルまでの垂直距離である。
【0282】
画像プロセッサ16は、断面の周りの全方向の断面2次モーメントを算出する。しかしながら、慣性モーメントの算出前に、画像プロセッサ16は非骨ピクセルを画像から排除する。この場合も、非骨ピクセルの識別に閾値が使用されない。非骨ピクセルは、骨の始端(すなわち、筋肉以下)の減弱よりも減弱が少ないピクセルである。この非骨ピクセル(すなわち空隙)の排除により、画像プロセッサ16は可能な限り空隙率の影響無くIを算出することができる。
【0283】
質量調整断面2次モーメントは、慣性モーメントと同様の方法で、但し各ピクセルの密度又は減弱を考慮に入れて算出される。したがって、質量調整断面2次モーメントは、ROI毎に次式のように求められる。
【0284】
【数27】

【0285】
式中、Ixmaは軸xを中心とした質量調整断面2次モーメントであり、Aは各骨ピクセルの密度(又は減弱)であり、Amaxはスライス内の全ピクセル(すなわち、純粋に石灰化した骨からなることがほぼ確実なピクセル)の最大減弱である。
【0286】
画像プロセッサ16は、やはり非骨ピクセルを排除して、次式のように全方向のIを求めるのと同様にして断面係数を求める。
【0287】
【数28】

【0288】
画像プロセッサ16は、やはり非骨ピクセルを排除して、次式のように全方向のIを求めるのと同様にして質量調整断面係数を求める。
【0289】
【数29】

【0290】
画像プロセッサ16は、非骨組織を排除して角度を考慮に入れずに(この場合は関係無い)、次式のように断面相乗モーメント(product moment of area)を求める。
【0291】
【数30】

【0292】
式中、x及びyは、骨ピクセルにより規定される中心Gを有する参照系における座標である。断面相乗モーメントは、非対称断面における曲げ応力の決定因子(determinant)である。これは、非対称的なほとんどの骨の場合に当てはまる。断面2次モーメントとは異なり、断面相乗モーメントは負の値及び正の値の両方を与え得る。この値から、画像プロセッサ16は、最大及び最小の質量調整断面2次モーメントと断面内のそれらの向きとを求める。
【0293】
画像プロセッサ16は、骨ピクセルを非骨ピクセルから分離した後に、またこの場合もやはり不要であるため角度を考慮に入れずに、質量調整断面相乗モーメントを求める。画像プロセッサ16は、質量調整断面相乗モーメントを次式のように求める。
【0294】
【数31】

【0295】
式中、Amax及びAは、それぞれ最大減弱及びピクセルiの減弱である。x及びyは、中心Gを有する参照系における各ピクセルiの座標である。画像プロセッサ16は、続いて最大及び最小の質量調整断面2次モーメントと断面内のそれらの向きとを求める。
【0296】
画像プロセッサ16は、歪みに抵抗する断面の能力を予測する極慣性モーメントJを次式のように求めるよう構成される。
【0297】
【数32】

【0298】
画像プロセッサ16は、全角度に関する極慣性モーメントを求め、その最大値及び最小値も求める。
【0299】
画像プロセッサ16は、質量調整極慣性モーメントJmaxを次式のように求めるよう構成される。
【0300】
【数33】

【0301】
画像プロセッサ16は、総断面積(TCSA)及び周囲長を求めるようにも構成される。これらの指数に関して、画像プロセッサ16は、中心G、回転アーム幅AW、及び回転角θを使用する。骨膜下に包含される領域内の非骨組織は、上述のように参照対象としてMaxmdを使用して除去される。
【0302】
ROI毎に、画像プロセッサ16は、次式に従いLRoIi(ROIの長さ)を計算する。
【0303】
【数34】

【0304】
360°回転後、画像プロセッサ16は、断面の総周囲長Pを次式から求める。
【0305】
【数35】

【0306】
画像プロセッサ16は、続いて総断面積(又は骨膜面積)TCSAを次式のように求める。
【0307】
【数36】

【0308】
画像プロセッサ16は、続いて骨内膜周囲長ECPを次式のように求める。
【0309】
【数37】

【0310】
式中、CThccはROIの緻密皮質骨の厚さである。
【0311】
画像プロセッサ16は、続いて骨内膜面積ECAを次式のように求める。
【0312】
【数38】

【0313】
画像プロセッサ16は、続いて脆弱性のインジケータである比ECA/TCSAを計算する。
【0314】
画像プロセッサ16は、各ROIを半径rの円の無限小部分として扱うことで、骨断面等の複雑な形状を有する構造の面積及び周囲長を求めることを可能にする。こうした理由から、AW2は非常に小さい。
【0315】
全非骨組織が、Maxmdを参照対象として使用して骨梁コンパートメントから除去されることにより、ストリップo〜zまでいずれのROIでも骨梁のみが含まれる。上述のように、画像プロセッサ16は、回転アーム幅AW及び回転角θを用いる。(実際には、ここでのAWの選択は重要ではなく、いかなる回転AWでも十分である。上述のように、画像プロセッサ16は3つのAWを有し、AW及びAWは、ROIからROIへ移動できるという意味で回転式であるが、AWは特定の場所の筋肉密度を評価する役割を果たすにすぎない。)
【0316】
上述のような非骨組織の除去後、全非骨組織ピクセルに値0、骨組織ピクセルに値1が与えられる。各列iのn個の非骨間隙の幅(w)を次式のように求める。
=n×re (44)
式中、reはスキャナの分解能である。列iの骨梁サイズ(Tr.S)は、次式のように算出される。
Tr.S={((z−o)×re)−w}/m= (45)
式中、mは骨梁の数である。骨梁は、1として符号化された一連の連続ピクセルとみなされる。「0」の存在は骨梁の終端を示す。
【0317】
画像プロセッサ16は、各行jでこのプロセスを繰り返し、各行jの骨梁サイズは、
Tr.S=(AW−w)/m (46)
であり、式中、mはj行における骨梁の数である。列は密度プロファイル方向の一連のピクセルであり、行は列に対して垂直であることに留意されたい。
【0318】
最後に、画像プロセッサ16は、そのROIに関するTr.Sを次式から求める。
【0319】
【数39】

【0320】
画像プロセッサ16は、この骨梁サイズが骨梁の短縮及び非薄化の両方を反映するので、これを求めて出力する。既存の手法は、短縮による骨梁劣化を考慮しない骨梁厚の規定を用いる。
【0321】
画像プロセッサ16は、各行(i)及び各列(j)における骨梁間隔を次式から求める。
Tr.Sep=(w/n)+(w/n) (48)
式中、n及びnは、それぞれi列及びj行における間隙の数である。間隙は一連の連続した0である。1の存在が間隙の終端を知らせる。
【0322】
画像プロセッサ16は、
−断面の周りの皮質骨厚分布、及び
−骨に沿った任意所与の角度(例えば前方)での皮質骨厚
を含む、種々の結果をディスプレイ20にグラフィックで出力することができる。
【0323】
結果の概要
画像プロセッサ16は、種々のモードで動作可能である。
【0324】
(i)デフォルトモード:結果は、部分周囲及び部分表面以外の指数に関して、スライス毎に要約されてから、全スライスについて平均値、最小値、中央値、標準偏差として要約される。部分周囲及び部分表面は、スライス毎の周囲又は表面を得るために合計され、試料の平均周囲又は平均表面を得るために平均される。このデフォルトモードでは、全パラメータが利用可能である。
【0325】
(ii)柔軟解析モード:この解析モードでは、ユーザが、特定の解剖学的場所(前部、前外側、内側等)におけるいくつかのパラメータを求めるよう画像プロセッサ16を制御することができる。画像プロセッサ16が解析にこの柔軟性を与えるのは、所与のパラメータが骨強度及び骨折リスクに及ぼす影響が解剖学的領域に応じて異なり得るからである。例えば、大腿骨頚部では、上面(anterior aspect:内側)における空隙率の上昇の方が下面(inferior aspect:外側)における空隙率の同様の上昇よりも骨折に関係し得る。
【0326】
画像プロセッサ16は、スライス内の関心領域に番号又は索引を付けるので、各ROIが特定の解剖学的場所に対応する。例えば、橈骨遠位端では、画像プロセッサ16が左回りに例えば5°の角度回転すると、ROIは橈骨の外側面に対応し、ROI36は前面に対応し、ROI54は内側面に対応する。
【0327】
特定の解剖学的場所のROIを続いて組み合わせて、スライス又は(断面)内のその場所における特定の指数を提供することができる。各解剖学的領域で組み合わせられるROIの数(N)は、
N=(360/(m×θ))
と推定され、式中、θは回転角であり、mはスライスが分割される解剖学的領域の数である。例えば、ユーザは、ROIから始めてmの値を2と選択する、又はi=360/(4×θ)等のRIOから始めてm=2と選択することにより、スライスを(例えば内側及び外側に)二等分するよう画像プロセッサ16を制御することができる。mの最小値は2であり(mの値が1であることは断面全体が解析されることを意味し、これは画像プロセッサ16をデフォルトモードに切り替えることになるからである)、mの最大値は360/θであることに留意されたい。
【0328】
デフォルトモードでは、局所的又は領域的な値が意味をなすパラメータのみが出力されることに留意されたい。厚さ、空隙率、石灰化、骨梁の指数を含むこれらのパラメータは、強度、慣性モーメントの指数である。外周及び面積等、断面全体にとって意味のあるパラメータは、柔軟モードでは出力されない。
【0329】
デフォルトモードでは、指定の解剖学的場所におけるパラメータの平均値がファイル内の全スライスに関して求められる。
【0330】
結果の解釈
システム10は、骨に対する種々の介入(運動、栄養変化、又は治療等)中の骨の構造及びその変化を評価することができる。これには多くの用途がある。例えば、ストロンチウムラネレート等の薬物による治療、副甲状腺ホルモン(PTH)治療、又はオダナカチブ(odanacatib)(第3相臨床試験中)は、骨の直径を、したがってその曲げ強度を増加させることが示唆されている。これは、システム10を使用して行われるように閾値を使用せずに骨寸法を正確に定量することにより検査することができる。既存の方法により実施される骨構造の閾値ベース評価は、この目的に最適でない場合がある。その理由は、例えば閾値を使用した骨の識別が、骨膜表面上の新たな低石灰化の誤った除去をもたらすことで、骨が形成されていない、ひいては骨膜付加が実際には生じている場合でも生じていないという誤った結論に達し得るからである。これは、骨に対するPTH治療の効果の評価中に生じる可能性が高い。PTHはアナボリックであり、新たな低石灰化骨の形成を模倣する。これは、特に成長期の運動が新たな低石灰化骨の形成を模倣するので、骨に対する運動の効果を評価する場合にも起こり得る。
【0331】
さらに、ストロンチウムラネレートは、骨組織により吸収され、カルシウムよりも大きな原子番号を有する。したがって、ストロンチウム治療は、骨ボクセルの密度又は減弱を増加させる。骨の縁部(骨膜又は骨髄腔)に隣接したボクセルの密度の増加は、縁部検出に影響を及ぼし、この薬物が骨の寸法を変えたという誤った印象を与え得る。これは、この薬剤での治療前後の骨構造を検査するために(既存の手法に従って)使用される密度ベースの固定閾値が、骨構造に対するその効果に関して曖昧な結果を示す場合に生じる。骨の値の絶対減弱とは無関係の−1〜1の範囲の単一のBVEスケールに、全減弱を変換すること、及び閾値が画像プロセッサ16により使用されないことで、ボクセルの減弱又は密度に対する薬物の種々の効果が骨構造(すなわち、皮質骨厚等の寸法)及び空隙率に対する異なる効果と混同されるリスクが最小化される。(既存の処理法では、単に1つの治療が別の治療よりも大きく物質減弱を変えたという理由で、骨構造及び空隙率に対する2つの治療の効果の相違に関する結論が下され得る。(Rizzoli R, Laroche M, Krieg MA, Frieling I, Thomas T, Delmas P, Felsenberg D., Strontium ranelate and alendronate have differing effects on distal tibia bone microstructure in women with osteoporosis, Rheumatol. Int. 30(10) (2010) pp.1341-8)。)さらに、これにより、空隙率等の骨構成パラメータの誤った評価を招くボクセルの減弱値の密度の変化が回避される。例えば、空隙は、所与の値未満の減弱を示すボクセルとして定義され、ストロンチウムレネレートのような薬物は、骨組織の減弱値を大幅に増加させるので、骨組織減弱の変化が空隙率の低下と混同され得る。このような誤った評価が、画像プロセッサ16により実施される画像処理で最小化又は排除される。
【0332】
システム10は、以下の考慮事項に基づき高信頼度で骨の劣化レベルを求め骨折し易い骨を検出することも可能である。
【0333】
(i)正常皮質骨
皮質骨実質部全体内のサブコンパートメントのいずれかにおけるCTh及び皮質骨面積の絶対値は、皮質骨が正常か否かを判定するのに不十分である。すなわち、(関連被験者群に関しての)平均よりも大きな値は、劣化が生じたことを意味しない。同様に、空隙率及び皮質骨面積の絶対値は、皮質骨が正常か否かを判定するのに不十分であり、これは骨量減少ではなく低成長に起因して皮質骨が小さい場合があるからである。同様に、高空隙率は、皮質骨内リモデリングの増加の結果であるとは必ずしも限らず、成長関連でもあり得る。したがって、絶対値は指標的なものに過ぎない。これは、他の皮質骨と比べて小さな皮質骨又は面積を異常とみなす現在の手法からの根本的な変化である。
【0334】
その代わりに、画像プロセッサ16は、皮質骨の構成を求め、その結果を使用して皮質骨が正常か否かを判定する。正常皮質骨は、
−骨梁状化をほとんど又は全く示唆しない低PTC(現在の所見に基づき<20%)、及び
−高PCC(現在の所見に基づき>60%)
を有する。
【0335】
皮質骨の正常性は、画像プロセッサ16が出力した指数の1つ又は複数、すなわち
−劣化があるとしてもほとんどない(CD1正常)
−正常RDcc
−正常RDcm
−正常皮質骨厚又は皮質骨面積
−低PoCC及び低PoCM
−低脆弱性指数
によりさらに裏付けられる。
【0336】
(ii)劣化皮質骨
他の皮質骨の厚さと同様の又はそれよりも厚い皮質骨は、(他の皮質骨の厚さと同様の又はそれよりも厚い皮質骨を正常とみなす既存の手法で使用される分類にもかかわらず)やはり劣化の可能性がある。個体によっては、皮質骨が生まれつき平均皮質骨よりも厚いので、骨を失った後でも依然として正常な厚さの皮質骨を有する場合がある。したがって、このような個体は、既存の手法では正常骨を有するものであると誤診される。しかしながら、画像プロセッサ16は、厚い皮質骨を正常として特性化するとは必ずしも限らない。正しくは、画像プロセッサ16は、皮質骨をその構成に従って(正常又は異常として)特性化する。異常皮質骨は高PTCを有する。さらに、この皮質骨は低PCCを有する薄いものであり、空隙率が高く相対密度が低い、したがってCD1及び/又はCD2の値が大きく脆弱性が高い。
【0337】
(iii)正常骨梁は、正常相対密度、低空隙率、低い脂肪割合及び脂肪負荷を有する。
【0338】
(iv)異常骨梁は、低相対密度、高空隙率、及び高い脂肪割合及び脂肪負荷を有し、これらは全て、骨梁が消失して脂肪に置き換わったことを示唆する。
【0339】
(v)異常骨は、異常皮質骨、異常骨梁コンパートメント、又は異常皮質骨及び異常骨梁コンパートメントの両方を有する。
【0340】
画像プロセッサ16は、各サブコンパートメントの空隙率指数も用いてこのような判定を行う。
【0341】
(i)画像プロセッサ16は、in vivoでのこのような判定を可能にし、各サブコンパートメント内の各ピクセルの寄与を確実に考慮に入れて、密度プロファイル曲線下の面積から空隙率を求める。これは、画像の分解能により(大半の空隙がこのような画像では見えないことを踏まえて)、また閾値手法により(同じく、骨として分類され空隙率の評価で拒絶された大半のピクセルがPVEにより悪影響を受けている場合がある、すなわち一部が骨上で一部が空隙上にあり得ることを踏まえて)制限される特定の骨面積内の空隙の数から空隙率が求められる、既存の手法と比較され得る。曲線下の面積とDSmaxにより画定された面積との差は、直接組織形態計測により測定された空隙率と強い相関がある。加齢に伴う空隙率の増加は、標本内で均一に生じないので、この実施形態によれば、最低空隙率を有するストリップが、空隙率の増加の評価に使用されるマーカとして画像プロセッサ16により使用されることが分かっている。
【0342】
(ii)画像プロセッサ16は、骨梁状皮質骨及び皮質骨−骨梁移行部における空隙率を求めることができる。既存の手法は、緻密皮質骨のみで空隙率を測定するが、骨梁状皮質骨及び移行区域における空隙率を正確に評価できない。
【0343】
画像プロセッサ16は、緻密皮質骨及び緻密+骨梁状皮質骨内の年齢関連の骨(皮質骨劣化)に起因する皮質骨空隙率の程度の指数を求めることができる。骨梁状皮質骨が皮質骨残骸(ruins)からなる場合、劣化が存在する。若い健常骨は、空隙率の程度は様々であるが劣化を示さない皮質骨を有する。骨量減少の兆候を示さない高齢骨も空隙率の程度は様々であるが、大量の劣化を示す。
【0344】
皮質骨の脆弱性は、皮質骨空隙率と皮質骨劣化との積である。空隙率及び劣化が大きいほど脆弱性が高くなることが予測される。
【0345】
緻密質である皮質骨の割合(PCC)、すなわち緻密質の厚さ/(皮質骨実質部)の厚さの比を、パーセンテージで表す。
【0346】
各サブコンパートメントの厚さ及び面積。
【0347】
皮質骨−骨梁差異指数(CTDI)は、皮質と骨梁(trabecularization)との差異化を可能にする。加齢及び骨梁減少に伴い、骨梁コンパートメントと皮質骨複合部(cortical complex)(すなわち、皮質+遷移区域)との間の差異が生じる。これは劣化及び脆弱性の指標である。
【0348】
画像プロセッサ16が、ユーザにより容易に解釈されるパーセンテージの形態で大半の指数を出力することにも留意されたい。例えば、高パーセンテージ空隙率又は低パーセンテージ密度が有害であることが即座に明らかとなるべきである。(既存の方法は、概して専門家ユーザによってしか解釈可能でなく、例えば、密度がmgHA/ccで表されるので、ユーザは、そのような結果を解釈するために、低範囲、許容可能範囲、及び高範囲を構成する密度を知っていなければならない。)
【0349】
上記では、点Bが概して解析中の物質の中心にあると想定した。そうでない場合、画像プロセッサ16は、物質内の中心点F(図24を参照)を識別して次式を得るよう制御することができる。
【0350】
【数40】

【0351】
式中、I、I、I、及びIは、(上述のように決定された)骨の縁部又は始端における、Bに対して左上象限、右上象限、左下象限、及び右下象限でBからさらに離れた点である。画像プロセッサ16は、続いてC、すなわち試料の質量中心を、上述の点BからCを求めるのと同じ方法でFから求める。
【実施例】
【0352】
図25は、高精度及び高確度で画像内の既知の寸法の物体を識別し、その寸法を隔離し求めるためのシステム10の使用を示す。この実験を使用して、画像内の構造の寸法を識別し求める際の画像プロセッサ16の確度及び精度を試験した。
【0353】
図26は、画像プロセッサ16の制御画面の図である。解析対象領域(例えば骨)を選択できるように(第2行を参照)、種々の設定を選択できる。
【0354】
図25を参照すると、既知の均一な寸法のプラスチック管230をシステム10のスキャナ12でスキャンした(232)。DICOMファイルをスキャナ12から取り出し、得られた画像ファイル234(管の画像236を示す)を生成し、解析のために画像プロセッサ16に送信した。
【0355】
画像236を画像プロセッサ16によりθを使用して解析し、240個のROI及びAWを生成した。画像プロセッサ16は、Gを識別し、厚さ、半径、外周長、断面(すなわち総面積)、内周長、及び内表面積を、ROI(ROI〜ROI240)の関数として生成した。これらをそれぞれ図27A、図27B、図27C、図27D、図27E、及び図27Fに示す。
【0356】
この試験はいくつかの目的を果たす。第1に、画像プロセッサ16による解析の精度を試験することができる。物体230が均一な構造を有することが既知であったので、ROI毎の構造パラメータの差は、画像処理におけるノイズに起因するところが大きい。物体の寸法(厚さ、半径等)がROI毎に一定(したがって、プロットされたようにほぼ完璧に平坦な線)であったことが分かり得る。これにより、ROI毎に構造の要素を回転させて取得するために画像プロセッサ16により使用される解析手順は、ノイズがほぼ無く安定していることが確認される。(構造の要素がROI毎に異なっていれば、これは、画像プロセッサ16によるROI毎の構造の解析がノイジーで再現性が低いことを示す。)画像プロセッサ16による解析の精度を、続いて変動係数(CV)、すなわち240個の値の標準偏差で除した240個のROIの平均として表されるように算出した。厚さ、半径、外周長、内周長、外表面、及び内表面の測定値のCVは、それぞれ3%、1.7%、1.7%、2.1%、3.4%、及び4.2%であり、解析の高い再現性が確認された。
【0357】
第2に、プラスチック管の寸法が既知であったので、構造の寸法を求める際の画像プロセッサ16の確度を評価することができた。プラスチック管のサイズを直接測定し、対応するパラメータをシステム10で求めた。結果を以下に作表し比較する。
【0358】
【表1】

【0359】
全体的に、これは、画像プロセッサ16が精度及び確度よく自動的に画像内の物体を検出してその寸法を求めることができることを示す。
【0360】
さらに、画像プロセッサ16は、自動的にプラスチック管を識別し、(既存の技法で用いるような)閾値を使用せずにその寸法を確実に求めることが可能である。画像プロセッサ16とは異なり、既存の技法は、このような解析の実施に外部入力を必要とする。すなわち、オペレータが、物体を画像内で識別できるように検出のために密度閾値をリセットしなければならない。これには、物体の密度を先験的に知ること及び/又は物体の画像が周囲環境から分離されて見えるまで画像を手動で調整することが必要である。画像プロセッサ16は、画像内の構造を識別してその密度に本質的に関係なくそれを分離するよう構成される。
【0361】
別の実施形態では、様々な数の孔を一連のプラスチック管に穿孔し(図28のグレースケール画像280に断面で示すように)、異なる空隙率レベルを得た。これらの管を、続いてシステム10を使用して撮像し、画像を収集し、画像プロセッサ16を使用して空隙率を定量した。図29は、真の空隙率(すなわち、各管の既知の特性及び孔の数から実験的に求めたもの)に対するシステム10により求められた空隙率のプロットである。r値が0.98という高い相関が見られた。
【0362】
さらに別の例では、ヒドロキシアパタイト濃度が異なるが既知である4つの円柱ファントムを、CTスキャナを使用して撮像した。画像をシステム10で収集し、画像プロセッサ16を使用して解析し、石灰化レベルを求めた。図30は、既知のヒドロキシアパタイト濃度(mg.cm−1)に対する画像プロセッサ16からの石灰化レベル(%)のプロットであり、両者間の高い相関がやはり明らかである。
【0363】
死体からの24個の骨標本を、走査型電子顕微鏡(SEM)及びQCTを使用して調査し、それらの骨密度をin vivo様の条件で(生理食塩水に浸水して15°の適切な内旋後)測定した。空隙率及び他の指数を、画像プロセッサ16を使用してCTスキャナ12からDICOMファイルを得た後に顕微鏡写真及び推定値から直接求めた。空隙率をSEM画像から直接求めた後に、(密度プロファイルに類似の)密度プロファイル曲線を生成した。画像プロセッサ16により密度プロファイル曲線から識別された点を、画像スキャン及びSEM顕微鏡写真と比べた。
【0364】
これらの結果の例を、図31A、図31B、図32A、図32B、図33、図34A、図34B、図35、及び図36に示す。
【0365】
転子下領域からの顕微鏡写真で、これらの標本における骨塩量(BMD)を転子領域において測定し、オーストラリア・ニュージーランド骨代謝学会が推奨する基準であるGeelong基準範囲を使用してTスコアに変換した。
【0366】
図31Aは、顕微鏡写真で見ることができるように、皮質骨内空隙率がやや上昇した72歳女性から得た骨の、画像プロセッサ16からの顕微鏡写真である。空隙率の僅かな増加が画像プロセッサ16により認識され、空隙率は4.4%と定量された。図31Bは、皮質骨内空隙率が著しく上昇した90歳女性から得た骨の、画像プロセッサ16からの顕微鏡写真である。皮質骨内空隙率のこの著しい増加も画像プロセッサ16により取り込まれ、空隙率は35.1%と定量された。2つの試料間の劣化の差は明確に視認でき、図31Aは図31Bよりも劣化の進行を示している。これを、画像プロセッサ16で求めた空隙率結果により確認した(一方、従来の骨密度試験によれば、骨密度試験がこれら2つの骨間の脆弱性の差を識別しないため、これら2つの骨の劣化は同様である)。
【0367】
図32Aは、空隙率が最小である29歳女性から得た骨の、画像プロセッサ16からの顕微鏡写真である。画像プロセッサ16は、この試料の空隙率を0.9%と定量した。図32Bは、正常な皮質骨を有し空隙率が低い72歳女性の骨から得た、画像プロセッサ16からの顕微鏡写真である。この低い空隙率は、画像プロセッサ16により十分に取り込まれ、図32Bの試料の空隙率は0.1%と定量された。しかしながら、BMD試験(現在使用されている診断法)によれば、29歳女性は正常(Tスコア1.92)であるが、72歳女性は骨減少性(Tスコア−1.14)であり、高齢女性において骨脆弱性が無い場合に骨脆弱性を示唆する。したがって、画像プロセッサ16は、劣化が存在する場合にそれを適切に検出することにより、このような誤診ケースを回避できる可能性がある。
【0368】
図33は、(顕微鏡写真で見ることができるように)皮質骨が著しく劣化した67歳女性の骨から得た、画像プロセッサ16からの顕微鏡写真である。画像プロセッサ16は、この劣化を取り込み、空隙率を14.7%と定量した。しかしながら、この女性は、BMD試験によれば正常(Tスコア−0.2)として分類された。骨密度試験値が正常だった人の多くが、ある時点で骨折を起こす。この女性はその中の一人となる可能性が高い。画像プロセッサ16の解析は、BMD試験値が正常であるにもかかわらず骨折するような人を識別することが期待される。
【0369】
図34Aは、空隙率(骨面積のパーセンテージで表す)に対するBMD Tスコアのプロットであり、SEM画像から直接測定された空隙率レベルと解析した24個の標本におけるBMD診断閾値との相関が乏しいことを示す。これは、BMD試験による皮質骨劣化の取り込みが不十分であることを示す。骨量減少に一致する高空隙率(骨面積の>20%)を有する標本の約50%(7/13)が、正常BMD(Tスコア>−1)であった。低BMD(Tスコア<−2.5)を有する標本の50%(2/4)のみが高空隙率(>20%)であり、残りは空隙率が正常であるにもかかわらず低BMDであった。Tスコアが−1未満(すなわち、骨減少性又は骨粗鬆症)の10個の標本のうち、5/10(50%)のみが低空隙率を有し、残りの50%は高空隙率を有していた。
【0370】
図34Bは、SEM画像から直接測定された空隙率パーセンテージに対するシステム10により測定された空隙率パーセンテージのプロットである。このプロットから明らかなように、画像プロセッサ16により定量された空隙率は、直接測定された空隙率とよく相関した。
【0371】
図35及び図36は、2つの試料それぞれのSEM画像の直接観察と比べた場合の、密度プロファイル曲線内の点m、n、及びoの位置を示す。DICOMファイルからin vivoで生成され画像プロセッサ16により解析された画像と比べた、密度プロファイル曲線内の点を識別する画像プロセッサ16の能力は、上記(発明の詳細な説明)に提示した。
【0372】
これら2つのin vitro試料において、試料内の点、したがって寸法(特に厚さ)が明らかに識別されることが分かり得る。緻密皮質骨(CD1)及び骨梁状皮質骨(CD2)の劣化も示される。図35を参照すると、試料1は、組織学的に正常な皮質骨を有する29歳女性からのものである。これを画像プロセッサ16により確認し、CD1が1.4%、CD2が4.2%と判明した。これは、均質な皮質骨及びそれに続く皮質骨から骨髄腔への明確な遷移に相当する。皮質骨はほぼ完全に緻密であり(PPCC=87.5%)、解析の不適当性に関する部分で述べたように、PTC及びPCTJはそれぞれ1ストリップに限られるため存在しない。試料の正常性は、皮質骨脆弱性指数が1.26%であることによりさらに確認される。
【0373】
図36を参照すると、試料2は65歳女性からのものである。皮質骨の劣化は、顕微鏡写真(上図)で視認可能であり、画像プロセッサ16により確認され、CD1及びCD2はそれぞれ12%及び20%と定量された。試料の劣化が進んだ状態は、緻密皮質骨のパーセンテージ(画像プロセッサ16により57.1%と判定)、骨梁状皮質骨(PTC)のパーセンテージ(画像プロセッサ16により37.1%と判定)、及び皮質骨脆弱性の指数(画像プロセッサ16により6.8%と判定)によりさらに確認される。
【0374】
さらに、生きた個体から得たスキャンデータを有するDICOMファイル(骨折の場合から5個、非骨折個体から3個)を得て、生きた個体に関するQCTデータファイルを有するシステム10を試験した。密度プロファイルにおける関連点を識別し、関連指数を画像プロセッサ16で求めた。以下のことが判明した。
【0375】
1)画像プロセッサ16は、上述のように、関連点(すなわち、j、k、l、m、n、o)を識別すること及び画像と直接SEM測定値とを比較することができた。
【0376】
直接測定された空隙率と画像プロセッサ16により推定された空隙率との相関は良好だった。
【0377】
2)骨折リスクのある個体を識別するために現在用いられている方法では、空隙率(画像プロセッサ16により評価された)と骨密度との相関が乏しい。これは、2つの技法が重複するが同じ物を取り込まないことを示唆する。
【0378】
付録(本文の最後)に調査した標本の例を提示する。画像プロセッサ16により求められた顕微鏡写真及び空隙率スコアと、これらの個体におけるBMD Tスコア値とを示す。−1未満のBMD Tスコアは骨減少性であるとみなし、−2.5以下のTスコアは骨粗鬆症である。
【0379】
橈骨遠位端を骨折した個体及び骨折していない個体における空隙率の比較値も付録に示す。画像プロセッサ16により求められた指数及びパラメータは、骨折し易い骨を有する個体と有しない個体との区別を可能にする。
【0380】
さらに別の例では、画像プロセッサ16を使用して測定された空隙率の加齢に伴う増加が、組織形態計測を直接使用して測定された活性化率の加齢に伴う増加と同様であることが分かった。図37Aは、年齢の関数として組織形態計測により直接測定された年間活性化率(Ac.F)の加齢に伴う増加のプロットである(コンプストン、空隙率は皮質骨内空隙(ハバース管及びフォルクマン管)内のAC.Fの上昇から増加する。私信)。図37Bは、73人の女性において画像プロセッサ16を使用して測定された空隙率の加齢に伴う増加のプロットである。これら2つの図におけるデータは、同様の傾向を実証する。
【0381】
図38A、図38B、及び図38Cは、橈骨の断面図である。図38Aは、高分解能末梢骨定量的コンピュータ断層撮影(HRpQCT)データから再構成された橈骨遠位端のグレースケール画像である。図38Bは、骨膜表面の抽出後に画像プロセッサ16により再構成された、同じ試料の画像であり、画像を背景からセグメント化する画像プロセッサ16の能力を実証する。画像をBVE値から再構成した。黒(概して内側領域)から赤(概して外側領域)が、BVE値の増加を表す。画像プロセッサ16は、閾値を使用しないので、物質内の全ボクセルの本来の減弱を保持しつつ物質の外部輪郭(この場合は骨の骨膜表面)を抽出することに留意されたい。これにより、画像プロセッサ16は、背景からセグメント化された後の物質を、空隙率及び組織石灰化レベルを含め完全に特性化することができる。
【0382】
図38Cは、同じ画像の上述の4つの骨コンパートメントへのセグメント化を示す、試料の別の図である。赤が緻密皮質骨382、薄緑が外側遷移区域384、シアンが内側遷移区域386、青が骨梁388により占められる骨髄腔である。(内側遷移区域386は、可視である場合、外側遷移区域384と骨梁388との間にある。図38D及び図38Eはそれぞれ、外側遷移区域384及び内側遷移区域386のみをグレースケールでプロットしたものである。)白は背景又は周囲筋組織390である。図38F及び図38Gは、それぞれ図38B及び図38Cのグレースケール版である。
【0383】
さらに、骨内の異物の自動識別及び解析を図39A、図39B、及び図40に示す。上述のように、画像プロセッサ16は、画像内の構造を自動的に識別及び解析することができる。システム10の主要な用途は骨の識別及び解析であるが、画像プロセッサ16の使用はこの用途に決して限定されない。
【0384】
図39Aは、画像プロセッサ16のディスプレイ22により表示される画像である。明るい物体が画像内に見てとれ、明るい物体は骨の断面に似ているが、実際には金属安全ピンの頭部である。この実験は、被験者内の金属異物又は弾丸若しくは硬貨等の他の物体(おそらく誤飲したもの)の存在をシミュレートするよう設計した。
【0385】
安全ピンの頭部を筋組織内に(insight)埋め込み、システム10で撮像した。したがって、図38Aの画像における明るい物体は安全ピンの頭部の断面である。画像プロセッサ16は、この構造を容易に識別し、それを周囲筋組織から分離し、その構造を解析して、筋組織内の金属体の診断を可能にする。
【0386】
図39Aに記されているROIを図39Aに拡大して示す。図40(上図)は、ROIに関連する密度プロファイル曲線である。図40(下図)は、図40の上図に示す密度プロファイル曲線に関連する関数λである。上述のように、λは、骨を周囲軟組織から鑑別することを可能にする関数である。この場合、λは、解析された物体(つまり安全ピンの頭部)と周囲筋組織との分離を可能にする。関数λは、物体と周囲筋肉とが点99で明確に分離されると判定する(図40の下図を参照)。点99は、密度プロファイル曲線(図40の上図を参照)及びROIの画像(図39Bを参照)に示されている。jは、この場合は点99であるが、構造に隣接する陰影(haziness)(物体に隣接する白いボケ領域であり、白抜きの四角で示す)のほとんどが周囲軟組織に含まれないように、λにより選択されることに留意されたい。この陰影領域は、部分体積効果によるものであり、画像プロセッサ16は、λを使用して、筋組織における部分体積効果に起因したアーチファクトを最小にしつつ物体を周囲筋組織から分離することができる。さらに、部分体積効果は、アーチファクトの無い物体の始端(点m、この場合は点110)を識別する画像プロセッサ16の能力に影響を及ぼさない。画像プロセッサ16は、点n(点115)を即座に識別して、物体のうちアーチファクト(PVE)の無い、また劣化(骨の場合は骨梁状化とも称する)の無い(free decay)部分を隔離することを可能にする。
【0387】
したがって、画像プロセッサ16は、アーチファクトからの干渉を最小化しつつ物体及び周囲筋肉を識別して隔離する。こうして、その相対密度の計算によるかその絶対密度(mgHA/cc又はg/cc)の計算によるかを問わず、物体の密度を周囲筋肉の密度と比較することにより、物体の性質を識別することができる。
【0388】
画像プロセッサ16は、図39Aで見られる物体の相対密度を93.5%であると判定した。したがって、物体(実際には安全ピンの頭部)は筋肉よりもはるかに緻密であり、したがって骨ではない(骨の相対密度は通常は約66%で75%未満であり、筋肉の約3倍である)。絶対的には、画像プロセッサは、物体の密度を6039mgHA/cc又は4.6g/cc当量であると判定し、物体が金属に相当する密度を有することを確認した。(絶対的には、純粋に石灰化した骨の密度は約1200mgHA/cc当量又は約2g/ccを超えない。)筋組織内に骨よりもはるかに高い密度の物体があることは、異物の存在を示す。
【0389】
提示した例は、画像プロセッサ16の使用可能性の完全な一覧ではない。多くの場合は人間が介入せずに、不特定画像の(すなわち、成分が未知である場合の)物体(又は要素)を自動的に識別、分離、及び解析するその潜在能力は、他の医療分野(血管石灰化、急性心筋梗塞、骨折、及び脳卒中の診断等)に応用されるが、医療分野以外にも応用されることが想定される。例えば、こうした用途の1つは、人工視覚の作製のための画像プロセッサ16の自動画像解析である。これらの状況では、画像プロセッサ16は、カメラに組み込まれて画像の同時解析を実施する。画像の解析後、画像プロセッサ16は、意思決定のために「司令センター」に結果を即座に転送する。このような「司令センター」は、人物又は具体的な命令を含むソフトウェアであり得る。人工視覚には、医療の内外で多くの用途がある。医療以外では、画像プロセッサ16は、例えばロボットを制御するために用いられ得る。
【0390】
提示した例は、画像プロセッサ16が、画像内の物体の構造の自動的な識別、分離、及び解析用の、特に骨の自動セグメント化及び解析用の、有用な手段であることを示唆する。画像プロセッサ16により求められた指数は、皮質骨厚、皮質骨面積、及び皮質骨密度の単なる測定ではない皮質骨構造の評価を可能にする。
【0391】
画像プロセッサ16は、PVEの交絡作用を最小化しつつ周囲背景から画像を取り出すことができる。例えば、図41Aの上図は、橈骨遠位端の断面図である。図41Bの上図は、骨(この場合は橈骨)を周囲背景から分離した後に画像プロセッサ16により再構成された同じ断面を示す。図41Aの下図は、部分体積効果に起因してぼけた、背景と骨との間の境界面(すなわち、一部が骨で一部が背景であるボクセル)の拡大図である。しかしながら、図41Bの下図は、画像プロセッサ16による画像の処理後の同じ移行部である。描画ははるかに鮮明であり、ぼけたボクセル(すなわち、部分体積効果により悪影響を受けたボクセル)が分離されて背景に残ったので、骨の辺縁がより明確に現れる。
【0392】
部分体積効果に起因したぼけを最小化しつつ画像内の物質を背景から分離するこのプロセスには、医療分野の内外で多くの用途がある。
【0393】
画像プロセッサ16は、閾値手法に基づく既存のソフトウェアよりも良好に骨を背景から分離することができる。図42Aの上図は、脛骨の断面図である。外部境界は、従来の閾値ベースソフトウェアで描かれている。有意な量の骨がこの境界から外されて誤って背景に含まれていることが分かり得る。図42Aの下図は、境界の外側の、したがって背景に誤って含まれた骨の特定部分を示す拡大図である。
【0394】
図42Bの上図は、画像プロセッサ16により背景から分離された同じ骨の同じ断面である。画像プロセッサ16が骨を周囲軟組織から明確に分離したことが分かり得る。従来の閾値ベースソフトウェアにより誤ってセグメント化された領域を、この図の下図に示すが、画像プロセッサ16がこの領域を背景から正確に分離したことが明らかである。
【0395】
当業者であれば、本発明の範囲内の変更を容易に行うことができる。したがって、本発明が上記で例として説明した特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0396】
添付の特許請求の範囲及び本発明の上記説明において、明示的文言又は必然的含意により文脈上別段に解する必要がある場合を除き、「備える」という語又はその活用形(variations such as "comprises" or "comprising")は、包括的意味で、すなわち、記述した特徴の存在を明記するために使用されるのであり、本発明の種々の実施形態におけるさらに他の特徴の存在又は付加を除外するためではない。
【0397】
さらに、本明細書での従来技術の言及には、こうした従来技術がオーストラリア又は外国において共通一般知識の一部を形成しているか又は形成していたことを意味する意図はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析する方法であって、
前記試料のうち少なくとも前記移行部を含む部分の断面画像において関心領域を規定するステップと、
前記関心領域内の前記移行部を横切る前記試料の密度プロファイルを求めるステップと、
前記第2物質の代表密度を求めるステップと、
前記第1物質及び前記第2物質の鑑別に使用された前記移行部を使用して前記試料を解析するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記密度プロファイルから前記第2物質の前記代表密度を求めるステップを含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記第1物質と前記第2物質との間の前記密度プロファイルにおける前記移行部を特定するステップを含む方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、適当な選択点に対する距離関数を使用して前記第1物質と前記第2物質との間の前記密度プロファイルにおける前記移行部を特定するステップをさらに含む方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記密度プロファイルにおける前記移行部を特定するステップは、前記密度プロファイルにおいて、前記第1物質の代表密度と同じ位置及び前記第2物質の前記代表密度と同様の又はそれよりも低い密度を有する基準点に最も近い点を特定するステップを含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記移行部を特定するステップは、(x,y)=(0,0)を中心とした前記密度プロファイル内の参照系で式
【数1】

における最小値を求めるステップ、又は(x,y)=(0,0)を中心とした前記密度プロファイル内の参照系で式
【数2】

における最大値を求めるステップを含む方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法において、前記移行部を特定するステップは、前記関心領域のうち前記最大密度差点で境界され前記第2物質を含む部分の前記密度プロファイルにおける最大変化率点を特定するステップ、又は前記関心領域のうち前記最大密度差点で境界され前記第2物質を含む部分の前記密度プロファイルにおける最小変化率点を特定するステップを含む方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法において、前記移行部を特定するステップは、前記密度プロファイルの変曲点を特定するステップ、又は前記密度プロファイルの1つ又は複数の部分の2次導関数を形成するステップを含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記第1物質の構成を求めるステップをさらに含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記試料は骨を含む方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記第1物質の劣化又は異常を検出するステップを含む方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、骨折し易い骨を識別するステップを含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記関心領域は、前記第1物質と前記試料のうち前記第2物質、第3物質、又は空洞を含むさらに別の部分との間にある少なくとも1つのさらに別の移行部を含み、前記方法は、
前記さらに別の部分の代表密度を求めるステップと、
前記関心領域のうち前記最大密度点で境界され前記さらに別の部分を含む部分の前記密度プロファイルにおけるさらに別の移行部を特定するステップと
をさらに含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記試料のうち前記密度プロファイルにおける移行部と前記密度プロファイルにおけるさらに別の移行部との間の部分のみを使用することにより、前記第1物質をさらに解析するステップを含む方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記密度プロファイルにおける前記さらに別の移行部を特定するステップは、前記密度プロファイルにおいて、最大密度差点と同じ位置及び前記さらに別の部分の前記代表密度と同じ密度を有するさらに別の基準点に最も近い点を特定するステップを含む方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、密度プロファイル解析器が前記密度プロファイルを求めるのに使用するために選択される前記関心領域の位置を、該関心領域の位置を調整することにより最適化するステップをさらに含む方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、複数の関心領域をマージするステップを含む方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記密度プロファイルの1つ又は複数の変曲点を識別するステップ、又は前記密度プロファイルの1つ又は複数の変曲点を識別することにより前記試料内の複数のコンパートメントを規定するステップを含む方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記第1物質は骨であり、前記方法は、前記試料内の複数のコンパートメントを規定し、該コンパートメントは、
骨膜境界及び皮質骨の始端により境界されるコンパートメントと、
皮質骨の始端及び緻密皮質骨の始端により境界されるコンパートメントと、
緻密(又は硬質)皮質骨コンパートメントと、
骨梁状皮質骨コンパートメントと、
皮質骨−骨梁移行部コンパートメントと、
骨梁コンパートメントと
のいずれか1つ又は複数を含む方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、前記第1物質は骨であり、前記方法は、前記試料内の複数のコンパートメントを規定し、該コンパートメントは、
骨膜境界及び緻密皮質骨の始端により境界されるコンパートメントと、
緻密皮質骨の始端及び外側遷移区域の始端により境界されるコンパートメントと、
外側遷移区域と、
内側遷移区域と、
骨梁コンパートメントと
のいずれか1つ又は複数を含む方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、骨構造の解析時に部分体積効果を最小化するステップ、又は部分体積効果を最小化しつつ画像内の構造の寸法を求めるステップを含む方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、骨梁様の外観を呈する皮質骨の割合を求めるステップを含む方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、緻密皮質骨、皮質骨実質部、又は骨梁状皮質骨の皮質骨厚の平均を求めるステップを含む方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、前記試料は骨試料を含み、前記部分は、前記試料の骨梁部分及び前記試料の皮質骨部分を含む方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において、前記試料の内部領域を撮像するステップを含む方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法において、前記撮像するステップはコンピュータ断層撮影撮像を含む方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法において、前記試料の前記部分は橈骨ストリップを含む方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法において、前記試料の複数の部分を撮像するステップと、該部分のそれぞれの密度プロファイルを求めるステップとを含む方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法において、前記試料内の骨を自動的に識別するステップを含む方法。
【請求項30】
請求項1に記載の方法において、
皮質骨、骨梁状皮質骨、又は遷移区域の厚さと、
皮質骨又は骨梁状皮質骨の面積と、
皮質骨、骨梁状皮質骨、又は遷移区域の空隙率と、
皮質骨又は骨梁状皮質骨がその絶対厚又は絶対面積に関係なく正常であるか否かと、
皮質骨又は骨梁状皮質骨が吸収されているか否かと、
前記プロファイルの解析からの骨梁構成及び空隙率と
からなる群からのいずれか1つ又は複数の指数を求めるステップを含む方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法において、前記皮質骨コンパートメントと前記骨梁コンパートメントとの間の差異の欠如を判定するステップを含む方法。
【請求項32】
請求項1に記載の方法において、前記試料の骨膜に囲まれた領域内の非骨組織を識別するステップを含む方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法において、前記第1物質の半径、周囲長、若しくは断面積を求めるステップ、又は前記第1物質の断面2次モーメント若しくは慣性モーメントを求めるステップを含む方法。
【請求項34】
請求項1に記載の方法において、骨の周囲における点毎の骨の断面の質量調整断面2次モーメントを求めるステップ、又は骨の断面の断面係数若しくは質量調整断面係数を求めるステップを含む方法。
【請求項35】
請求項1に記載の方法において、骨の断面の座屈比又は質量調整座屈比を求めるステップを含む方法。
【請求項36】
請求項1に記載の方法において、骨の断面の面積又は周囲長を求めるステップを含む方法。
【請求項37】
請求項1に記載の方法において、骨の断面の極慣性モーメント係数若しくは質量調整極慣性モーメントを求めるステップ、又は骨の周囲における点毎の骨の断面の半径を求めるステップを含む方法。
【請求項38】
請求項1に記載の方法において、前記試料内の骨梁を識別するステップと、1つ又は複数の骨梁指数を求めるステップとを含む方法。
【請求項39】
請求項1に記載の方法において、周囲筋組織を参照対象として使用して骨の石灰化度を求めるステップを含む方法。
【請求項40】
請求項1に記載の方法において、前記第2物質の減弱を参照対象として使用して前記関心領域内の成分又は要素の絶対密度又は相対密度を求めるステップを含む方法。
【請求項41】
請求項1に記載の方法において、前記第2物質の減弱を参照対象として使用して前記関心領域内の物体又は構造の絶対密度又は相対密度を求めるステップを含む方法。
【請求項42】
請求項1に記載の方法において、前記試料は骨試料であり、前記方法は、前記試料の少なくとも一部を示す1つ又は複数の指数を求めるステップと、該1つ又は複数の指数から前記試料内の異常を識別するステップとを含む方法。
【請求項43】
請求項1に記載の方法において、前記試料は骨試料であり、前記方法は、異常皮質骨、異常骨梁コンパートメント、又は異常皮質骨及び異常骨梁コンパートメントの両方を有することに基づき、前記試料が異常か否かを判定するステップを含む方法。
【請求項44】
請求項1に記載の方法において、壊死組織塊と周囲健常軟組織との間の減弱の差により、該周囲健常組織から前記壊死組織塊を識別し解析するステップと、腎臓結石を識別し解析するステップと、石灰化した若しくは他の腫瘍を識別し解析するステップと、非医療分野における画像内の物体を識別及び解析するステップとを含む方法。
【請求項45】
請求項1に記載の方法において、前記試料を解析するステップは、回転アーム幅を使用して、又は前記画像の並進を使用して、又は前記画像の回転及び並進を使用して前記画像を解析するステップを含む方法。
【請求項46】
概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析する方法であって、
前記試料のうち少なくとも前記移行部を含む部分の断面画像において関心領域を規定するステップと、
前記試料の前記部分が局所的に線形となるアーム幅を求めるステップと、
前記アーム幅の回転、該アーム幅の並進、又は該アーム幅の回転及び並進の両方により、前記画像を解析するステップと
を含む方法。
【請求項47】
概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析するシステムであって、
前記試料のうち少なくとも前記移行部を含む部分の断面画像において関心領域を選択する関心領域選択器と、
前記関心領域内の前記移行部を横切る前記試料の密度プロファイルを求め、前記第2物質の代表密度を求め、且つ前記第1物質及び前記第2物質を鑑別するための前記移行部を使用して前記試料の解析を行う密度プロファイル解析器と、
前記解析の結果を出力する出力部と
を備えるシステム。
【請求項48】
請求項47に記載のシステムにおいて、前記密度プロファイル解析器が前記密度プロファイルを求めるのに使用するために選択される前記関心領域の位置を最適化するよう構成された関心領域位置調整器を備えるシステム。
【請求項49】
請求項47に記載のシステムにおいて、複数の関心領域をマージするよう構成された関心領域マージャを含むシステム。
【請求項50】
請求項47に記載のシステムにおいて、前記密度プロファイル解析器は、前記第1物質と前記第2物質との間の前記密度プロファイルにおける移行部を特定するよう構成されるシステム。
【請求項51】
請求項47に記載のシステムにおいて、排気可能な試料チャンバを備えるシステム。
【請求項52】
請求項47に記載のシステムにおいて、前記試料は、前記第1物質の解析用の参照対象としての役割を果たすよう前記第1物質の周りに位置付けられた又は位置付け可能な既知の特性を有する第2物質を含むシステム。
【請求項53】
請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法を実施するよう構成した、概して密度が異なり相互間に移行部を有する第1物質及び第2物質を備える試料を解析するシステム。
【請求項54】
コンピュータ又はコンピュータのプロセッサにより実行されると、前記コンピュータ又は該コンピュータのプロセッサに請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法を実施させる実行可能な命令又はソフトウェア。
【請求項55】
実行可能な命令又はソフトウェアが設けられたコンピューティングデバイスであって、前記実行可能な命令又はソフトウェアは、前記コンピューティングデバイス又は該コンピューティングデバイスのプロセッサにより実行されると、前記コンピューティングデバイス又は該コンピューティングデバイスのプロセッサに請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法を実施させるコンピューティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D】
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【図27E】
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【図27F】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36】
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【図37A】
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【図37B】
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【図38A】
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【図38B】
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【図38C】
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【図38D】
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【図38E】
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【図38F】
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【図38G】
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【図39A】
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【図39B】
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【図40】
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【図41A】
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【図41B】
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【図42A】
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【図42B】
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【公表番号】特表2013−504341(P2013−504341A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528197(P2012−528197)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001181
【国際公開番号】WO2011/029153
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512062121)ストラックスコープ ピーティワイ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】STRAXCORP PTY LTD
【Fターム(参考)】