説明

触媒式燃焼装置

【課題】 熱交換器、加熱部および触媒を一体化することによりコンパクト化が可能で、かつ、それによってエネルギー効率を高め、アルマイト触媒の適用で触媒反応のスタートアップを早めた触媒式燃焼装置を提供する。
【解決手段】 触媒反応ゾーンと熱交換ゾーンからなる両端を閉じた中空筒体において、アルミニウムよりなり、その長さ方向の一部をアルマイト処理し触媒を担持したパイプ複数本を平行に多数本を配位し、かつ触媒反応ゾーンには各パイプの表面の少なくとも一部に連続状の通電可能な触媒担持帯状体の一部が接触して配設され、かつ邪魔板、処理対象ガス吸入口と処理済みガスの排出口が設けられた触媒式燃焼装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常触媒体であるパイプ状の反応器側(二次側/B,(2))にアルマイト触媒体部分と耐熱性に優れた通電加熱可能な帯状のアルマイト触媒体(8)を用い、熱交換、加熱、触媒反応を一つの器体内で一体化し、装置を小型化、低コスト化し高効率の触媒式燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造業の現場、生ごみ、トイレなどの生活の場、料理店、豚舎・牛舎、病院などの臭気性ガス、塗料をはじめ揮発性化学物質、自動車の排気ガス等は環境問題、健康生活の面、さらには燃料電池用の燃料改質装置の開発など解決すべき極めて重要な問題とされ多くの技術が提案されてきた。
【0003】
従来、一般的には図1にそのプロセスを示すように、例えば、脱臭装置においては脱臭対象ガスを熱交換後、加熱しその後触媒で処理するという3つの工程がそれぞれ独立して設けられた装置であった(たとえば、特開2001−340434)(特許文献1)。この装置の欠点はスタ−トアップに時間がかかること、装置が大がかりなものになることなどの問題があった。これらの欠点を解決するため加熱工程にも触媒作用を持たせようという提案がなされた。(図2) またランニングコストを下げる必要もあり熱交換機能を高めるとする提案もなされている。例えば、特開2002−233750(特許文献2)には予熱室、触媒反応室及び排気室が3層をなす熱交換機能を有する気体用触媒反応器で、最内層から中間層に向かって熱交換による熱伝導が生じるように構成されている熱交換機能を組み合わせた気体用触媒反応器が開示され、該反応機を用い反応ガスを導入する吸気口、反応ガスの加熱部、流量計、排気口等を設けた装置が提案されている。この装置は熱交換という点ではメリットがあるが、加熱手段はガスバ−ナによるものであり、外部よりガスを導入する必要がある。また触媒反応室はフィン型のものであり作製の煩雑さにより装置製作にコスト高を生じるという欠点を有している。
【0004】
また、特開2004−97650(特許文献3)では器体内部に脱臭ガスの加熱部とこれに近接するハニカム形状の触媒層よりなる脱臭処理室を設けこの室の略全体周囲に室に沿って多数の熱交換管が配設され処理ガスが熱交換内を上下、横方向にジグザグに流れるようにした脱臭器が提案されている。本器は熱交換効率に優れ省電力化が図られるものと示されている。しかしハニカム状の触媒体を用いることにより依然としてコスト高の問題が残っている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−340434号公報
【特許文献2】特開2002−233750号公報
【特許文献3】特開2004− 97650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は容易に入手可能なアルミニウムパイプ(2)の熱交換ゾーン(一次側/Aゾーン)および通電加熱式アルマイト触媒帯状体(5)および触媒担持部分のパイプ(4)による触媒反応ゾーン(二次側/Bゾーン)を用い、熱交換、加熱、触媒反応を一つの器体内で一体化して行わしめ、脱臭等の処理の立ち上げ速度のアップ、消費電力削減、装置にかかわるコスト低減、装置のコンパクト化、メンテナンスの簡素化を図り、本来の目的である触媒の反応効果を高めようとするものである。
【0007】
かかる触媒反応器を脱臭装置、VOC分解装置、排ガス浄化装置、燃料電池用燃料改質装置などに適用し、それら装置による機能効果はもちろん、スペース面、メンテナンス面、コスト面でも有用性を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
熱交換機能を高めるために、さらに装置にかかわるコスト低減のために熱伝導率が228W/m・kときわめて高い(水は0.6、磁器は15)アルミニウムパイプ(2)を器体内に整列配設し、パイプの一次側(A)において熱交換せしめ、また、パイプの二次側(B)においてはアルマイトの電気絶縁性を利用しパイプに通電可能な触媒担持帯状体(5)を接触させ、巻回し張り巡らし通電により当該部を昇温せしめ触媒反応を急速に立ち上げ容易ならしめる。ここでの触媒は白金系触媒が用いられる。パイプは邪魔板(3)に貫通して保持する。邪魔板(3)はパイプ(2)を保持するため、また、ガス流を乱流化し脱臭等の処理対象ガス等が触媒体部分のパイプ(B、(4))および帯状触媒体(5)に有効に接触するため必須である。円筒状器体は蝶番、フランジ等で固定し、器体端部も円筒状器体とフランジ等で固定することで器体、邪魔板、器体端部のそれぞれを脱着可能とし内部のメンテナンスを容易とする。
【0009】
前項の課題を解決するために、本発明ではアルミニウムよりなるパイプ(4)の表面をアルマイト処理し、その触媒反応器側(B)の表層には触媒を担持させた通常触媒体となす。このパイプの断面形状は円形状、または楕円状が望ましい。
【0010】
このパイプ(4)を複数本整列、配設する。このパイプ(4)の触媒反応器側の長さの略一部分に当たる触媒担持部分(B)に通電可能な帯状触媒体(5)をパイプ触媒反応器(B)の1本ずつ交互に円弧状に接するようにパイプ(B、(4))の長手方向に一定間隔で巻回し張り巡らすことが望ましい。
【0011】
この装置において、まず、帯状触媒体(5)が通電によって加熱され、脱臭等処理対象ガスの処理に必要な温度条件を得ることができる。さらにパイプの触媒反応器側の触媒体部分(B)も帯状触媒体(5)の熱によって加熱され、パイプの内部を通過する処理ガスも加熱し昇温する。このパイプの熱交換側(A)も脱臭等処理対象ガスの吸入口近傍に当たり、低温の脱臭対象ガスなどの予備加熱ゾーンの機能をもつ。従って、予備加熱のために特別の加熱装置を付加する必要がない。 装置が簡素化し、メンテナンス性が高まることに資する。 予備加熱された脱臭等処理対象ガスは回帰板(6)に衝突し、パイプ触媒反応器側(B)の触媒体に移動し、そこでは通電加熱された帯状触媒体(5)がパイプ触媒反応側(B)に巻回されたゾーンでは触媒担持されたパイプ(4)と帯状触媒体(5)とはほぼ同等の温度になり、脱臭対象ガスの触媒による脱臭反応が生じる。特に、脱臭等処理対象ガスはより予備加熱されており、消費電力が減少できる。
【0012】
このように触媒反応機能、熱交換機能および加熱機能とが一体化されること、また、非通電の通常触媒体である部分のパイプ(B,(4))と通電帯状触媒体(5)とが併設されているために触媒機能の向上はもちろん、装置のコンパクト化、延いては低コスト化が可能になる。
【0013】
このパイプ状触媒体(B、(4))に通電帯状触媒体(5)を巻回した触媒反応器はたとえば、ハニカム状触媒体、フィン型触媒体等に比し、その構造が非常にシンプルであり、触媒式燃焼装置としてメンテナンス面、コスト面で有利である。
この触媒反応器ではパイプ状触媒体(B、(4))に通電帯状触媒体(5)を接して巻回し張り巡らす構造であるが、それぞれの表層がアルマイトであり、電気絶縁性が確保できる利点がある。
【0014】
従来の通電加熱触媒体のように金属部分との接点に設けられる電気絶縁材料が不要である。この点においても装置の簡素化、コンパクト化にこの触媒式燃焼装置は有利である。
【0015】
脱臭等処理対象ガスを触媒によって処理する場合、該ガスの触媒への接触時間を充分にとること、および処理ガスの流れを撹拌することが処理効果を高めることになる。そのためにガスの流れを遮断し、乱流するための邪魔板(3)が配設される。Bゾーンにある 邪魔板(3)の表面も陽極酸化によりアルマイト化処理されたものが使用される。 すなわち、邪魔板(3)と該通電加熱の帯状触媒体(5)との接触があると漏電し、電気ショックが起こるので電気絶縁性が求められる。さらに、邪魔板(3)も触媒体の通電加熱によって非常に高温で酸化雰囲気になる。従って、邪魔板(3)の表面材質をセラミックス態のアルマイト化処理される。
【0016】
パイプ触媒反応器側のパイプ状触媒体(B,(4))と通電触媒体の帯状触媒体(5)は、いずれもアルミニウムからなり、その表層は陽極酸化によりアルマイト層が形成され、さらに、酸処理、水和処理等によってアルマイト層の細孔の拡大、表面積の増大がなされたアルマイト触媒体である。したがって、触媒をより稠密で、より均等に担持できる特質を有している。
【0017】
さらにまた、通電帯状触媒体(5)は通電によって非常に高温、たとえば、1000℃に近い高温にもなることがあるが、触媒体としての機能を維持するために、鉄、ニッケル、クロムをベースにした合金の両面に特定の接合方法でアルミニウムを配したクラッド構造であり、通電帯状触媒体(5)は1000℃を超えて使用可能な耐熱性を有している。
【0018】
パイプ状触媒体(B,(4))および通電帯状触媒体(5)の寸法仕様の詳細は脱臭等の処理対象ガス、VOCガス、自動車排気ガス、燃料電池の燃料などの性質、処理量によって異なる。
【発明の効果】
【0019】
発明の実施の形態で示した触媒式燃焼装置は略、縦50mm、横500mm、高さ
50mmで、脱臭装置に適用した。
【0020】
この実施例では、[脱臭対象ガス処理量/触媒反応器設置面積]は8L/min.cmとなり,熱交換、脱臭対象ガスの加熱、触媒反応部が一体化され、従来技術に比べて設置スペースは30%小さく、コンパクトなもので、かつ充分な脱臭率であった。また、触媒反応を有効ならしめる温度に到達するに要する時間は脱臭対象ガス吸入後に通電後1分(従来30分)と極めて短時間であった。さらに、従来脱臭装置の消費電力は約1.2kW/(m3/min),本発明の装置では消費電力は約0.9〜1kW/(m3/min),20〜30%省エネルギーであった。
【0021】
さらに、本発明では安価なアルミニウムパイプを用い、通電可能な触媒担持帯状体を巻きつけるという極めて簡易な技術で触媒反応主要部を構成でき、かつ熱交換、脱臭対象ガスの加熱も同一器体内で行えることによって、反応器の製造コストは従来のものに比べ安価に得られた。また、円筒状器体、端部はそれぞれ脱着可能で内部の触媒の劣化状態の観察、触媒担持帯状体の交換あるいは邪魔板の位置調整に好都合であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
アルミニウムパイプの長さの反応器側に相当する略1/3を陽極酸化によってその表層にアルマイト層を形成せしめ、その後酸処理によりアルマイト層の細孔径を拡大し、次いで水和処理して後焼成しBET比表面積が高められたアルマイト触媒担体を作製する。この技術は公知で例えば特開平08−246190(特許文献4)、特開2002−119856(特許文献5)などを利用することができる。
【0023】
一方、鉄、ニッケル、クロムよりなる合金の帯状薄板にアルミニウムの帯状薄板を圧延接合しクラッド材となし、前記アルミニウム面を陽極酸化すると共に酸および白金触媒を有する溶液中に浸漬処理を施し、合金上に触媒層を形成し通電可能な触媒担持帯状体(9)を作製する。この技術も公知で例えば特開2002−066337(特許文献6)、特開2003−144920(特許文献7)等を利用することができる。こうして得たパイプと通電可能な触媒担持帯状体を用い、図3および図4に示す触媒式燃焼装置を作製した。ここで邪魔板(3)はアルミニウムパイプを円筒状器体と嵌合により固定するための保持板として機能するばかりでなく脱臭対象ガスがパイプ触媒体(B、(4))および触媒担持帯状体(5)と有効に接触し加熱され触媒反応を円滑に行なわせしめるために必須であり、その配設位置、形態、数は脱臭ガスの処理量に応じ実験によって定めることが必要である。また邪魔板(3)の材質は特に定めるものではないが300℃以上の高温、酸化反応に耐えられるようなセラミックスが望ましい。
【0024】
円筒状器体は蝶番で固定開閉できるようにしパイプの触媒反応側(B、(4))に回帰板を設置し該器体を閉じ邪魔板(3)を器体に嵌合させるようにしてパイプ群の配列を保持しつつフランジで器体全体を固定した。器体両端部も円筒状器体にフランジにて固定した。さらに、円筒状器体の周囲を外筒と断熱材で覆い保護し反応器の熱を外部へ放散しないよう施した。
【0025】
【特許文献4】特開平08−246190号公報
【特許文献5】特開2002−119856号公報
【特許文献6】特開2002−066337号公報
【特許文献7】特開2003−144920号公報
【実施例】
【0026】
ここでパイプ(8)は径5mm、長さ50cmのものを36本、8mm間隔に配設し、通電可能アルマイト触媒担持帯状体(9)を幅10mm、長さ200cmに図5に示すように巻回し張り巡らせた。
【0027】
このようにして作製した触媒反応器に通電し3分後、脱臭対象ガスとして200pppのプロピオン酸を0.2m3/min.の流量で導入し反応処理せめした。処理後の濃度は2pppであった。このときの通電は100ボルト、6アンペアで発熱部分の平衡温度は350℃であった。
【0028】
なお、図5に示した巻回し張り巡らす方法の他に、図6に示すようなパイプに触媒担持帯状体の配設方法がある。
【0029】
この発明の実施の形態は一つの実施例であり、すべてがこの限りではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】「従来技術によるガス等の処理プロセス」を示した図
【図2】「本発明による処理ガス等の処理プロセス」を示した図
【図3】本発明の触媒式燃焼装置の全体図
【図4】本発明の触媒式燃焼装置の縦断面図
【図5】本発明の触媒式燃焼装置におけるパイプ部と帯状体との接触組み合わせ配設の横断面図
【図6】触媒式燃焼装置におけるパイプ部と帯状体との接触組み合わせ配設の応用事例
【符号の説明】
【0031】
(1)中空筒体
(2)アルミニウムパイプ
(3)邪魔板
(4)陽極酸化したアルミニウムパイプの部
(5)通電加熱触媒(連続状の通電可能な触媒担持帯状体)
(6)回帰板
(7)電極(電力供給部分
(8)断熱材
(9)処理済ガスの出口
(10)燃焼ガスの入口
(11)外筒
(12)触媒式燃焼装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒反応ゾーンと熱交換ゾーンからなる両端を閉じた中空筒体において、その内部にその側壁方向に沿って、アルミニウムよりなり、その長さ方向の一部をアルマイト処理し触媒を担持したパイプ複数本を平行に多数本を配位し、かつ触媒反応ゾーンには連続状の通電可能な触媒担持帯状体の一部が各パイプの表面の少なくとも一部に接触して配設され、該パイプは処理対象ガス流に乱流を生じせしめるために該中空筒体の直角方向に配設された複数枚の邪魔板を貫通し,嵌合固定される。かつ、該中空筒体には処理対象ガス吸入口と処理済みガスの排出口が設けられ、さらに、該帯状体に電流を供給する電極が設けられた触媒式燃焼装置。
【請求項2】
請求項1において、該パイプは内径が2mm〜20mm、肉厚が0.2mm〜5.0mmのアルミニウムよりなり、その長さの反応器側(二次側部分)が陽極酸化よって形成されたアルマイト皮膜に触媒が担持されたことを特徴とする触媒式燃焼装置。
【請求項3】
請求項1、請求項2において、該パイプの即売反応器ゾーン(二次側部分)のアルマイト皮膜に担持される触媒はパラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫のいずれかまたはこれらの合金もしくは混合物が担持されていることを特徴とする触媒式燃焼装置。
【請求項4】
請求項1において、上記の各パイプに接する通電可能な触媒担持帯状体は幅が1mm〜100mm、厚さが0.05mm〜1.5mmのアルミニウムよりなり、陽極酸化によって形成されたアルマイト皮膜に触媒が担持されたことを特徴とする触媒式燃焼装置。
【請求項5】
請求項1、請求項4において、通電可能な触媒担持帯状体は鉄、ニッケル、クロムよりなる合金を母材とし母材両面はアルミニウムからなり、その表層はアルマイトで被覆され、さらにアルマイト面には触媒としてパラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫のいずれか、またはこれらの合金もしくは混合物が担持されたことを特徴とする触媒式燃焼装置。
【請求項6】
請求項1において、邪魔板は少なくとも一枚はアルミニウムよりなり、その表面が陽極酸化によりアルマイト処理された邪魔板を使用することを特徴とする触媒式燃焼装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に規定された触媒式燃焼置を用いた脱臭装置、VOC分解装
置、排気ガス浄化装置、燃料電池用燃料改質装置から選択された一つの装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−57110(P2007−57110A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239469(P2005−239469)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(305045449)有限会社アルマイト触媒研究所 (4)
【Fターム(参考)】