説明

触媒気相反応の為のクエンチチューブ、装置及び方法

クエンチチューブ及び上記クエンチチューブを有する装置
本発明は長さL、直径D及び1チューブあたり少なくとも1個の冷却剤インレットを有するクエンチチューブに関し、前記インレットは前述のチューブの側面からチューブの中に冷却剤を通す。Dは0.04〜0.10mであり、L/Dは少なくとも5である。本発明はまた前記クエンチチューブを有する装置及び前記チューブ及び/又は前記装置の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はクエンチチューブ、前記クエンチチューブを備える装置、及び特に自己熱分解(auto-thermal cracking)によるオレフィンの製造に適した装置に関する。
自己熱分解はオレフィンへの経路であり、炭化水素供給物を酸素と混合し、自己熱分解触媒の上を通過させる。自己熱分解触媒は、燃焼性の燃料富限界(fuel rich limit)を超えた燃焼を維持することができる。燃焼は触媒の表面で開始し、反応体をプロセス温度にまで上げ、吸熱分解プロセスを行うのに必要である熱はその部位で発生する。より少ない供給物を次に吸熱分解に必要な熱を発生させるために燃焼させる必要があるので、一般に、あらかじめ加熱された混合反応体流を利用することが望ましい。典型的には、触媒は第VIII族金属、好ましくは1個のプラチナ族金属、例えばプラチナを含む。自己熱分解プロセス法は、EP 332289B; EP-529793B;EP-A-0709446及びWO 00/14035に記載されている。
【0002】
生成物流は、典型的にはガス状生成物流として800℃以上の、例えば900℃以上の温度で反応ゾーンを出て、及び特に圧力がかかる場合は、生成物流を急速に冷却することが望ましい。このことは生成物冷却工程がガス状生成物流における反応速度を減速し、望まない生成物を生成するさらなる反応を最小限に留めるので、高いオレフィン収量を確実にする。
【0003】
一般的に生成物流が触媒を離れる際に生成物流の存在下800度まで又は触媒を離れてから40ms未満、有利には20msの間に冷却されることが望ましいが、より低い圧力下ではより長い冷却時間も許容可能である。
【0004】
急冷は、好ましくは複数のポイントで、濃縮物の蒸発がガス状生成物流を冷却するように、ガス状生成物流に濃縮物を注入することによって達成されても良い。現在、自己熱分解のプロセスを工業規模に拡大する際に、規定された寸法を有するクエンチチューブの使用で有利に効率的で急速な生成物流の冷却が達成されることが明らかとなった。
【0005】
従って、第一の態様において、本発明は長さL、直径D及び1チューブあたり少なくとも1つの冷却剤のインレットを有するクエンチチューブに関し、前記インレットは前述のチューブの側面からチューブの中に冷却剤を通す。ここで、
Dは0.04〜0.10m及びL/Dは少なくとも5であり、
Dは好ましくは0.04及び0.08mであり、
L/Dは好ましくは少なくとも10であり、好ましくはL/Dは15未満である。
「前述のチューブの側面からチューブの中に冷却剤を通し」とは、冷却剤はクエンチチューブの縦軸に対し好ましくは少なくとも30°、特に少なくとも45°及び好ましくは約90°の角度で導入されることを意味する。これは、クエンチチューブの軸に沿って、すなわち、チューブを通じた流れの一般的な方向に平行に冷却剤インレットより冷却剤を注入するよりも、より良い混合、より早い冷却を提供する。(念のために述べると、クエンチチューブの縦軸に対して90°でない場合、特定の導入角はクエンチチューブのインレットからアウトレットへの縦軸方向(及び、チューブを通して冷却される材料の流れの全体の方向に対する使用において)に対し90°未満及び90°を越える位置も含み、及びすべての前記位置が本発明に含まれることを意図することは明らかである。)
【0006】
好ましくは、クエンチチューブの周りにほぼ等距離に適切に距離をとって設置されたクエンチチューブあたり2〜4個の冷却剤インレットが提供される。各冷却剤インレットは1個のノズル又は多数のノズル、例えば2〜7個のノズルを含んでも良い。典型的には、インレットノズル配列のサイズを最小化するために近接して設置される。
【0007】
好ましくは、冷却剤はチューブの側面からノズル/インレットより、クエンチチューブの縦軸に対して多くの異なった角度で、それぞれ個々に少なくとも30°、特に少なくとも45°で導入される。
【0008】
使用において、各クエンチチューブは冷却されるべき流れが導入される末端であるインレット末端及びもう一方のアウトレット末端で定義されても良い。冷却剤インレット(少なくとも1個以上のノズルがインレット単位で提供される第一のノズル)は一般的にインレット末端に最も近い各クエンチチューブの部分に、冷却されるべき流れがクエンチチューブに入った後可能な限りすばやくその流れに冷却剤が接触することができるように提供される。
【0009】
チューブの直径Dは本発明において重要な意味を持つ。本発明のチューブの直径において、少なくとも5のL/Dは前記チューブ長内での冷却剤とガス状生成物流の良好な混合を確かなものとし、迅速な冷却を確実にする。対照的に、より大きい直径においてはかなり長いクエンチチューブであっても、必要な冷却を提供せず、確実に同じタイムスケールでは提供しない。
【0010】
これらの請求されたチューブよりもより狭いチューブを提供することによりさらなる冷却剤/ガスの接触を増加させ、それゆえ冷却効率も増加させることができ、さらに冷却時間を短縮することができるが、そのようなチューブは、下記の点を含む多くの不利益を与える。
i)Dが小さすぎると、クエンチチューブの側面に入る冷却剤の有効量は、注入した側面から離れたチューブの壁に到達し冷却することができ、混合/冷却効率を減少させ、チューブにストレスを引き起こす可能性がある。
ii)Dが小さすぎると、開始時に水が離れた壁に到達すると上方に偏向し触媒の下の領域に例えば低温トリップのような影響を及ぼしうる。
iii)Dの減少と共に、クエンチチューブの容積に対するSAは増加し、コークスが生成する表面積の増加に通じる。
【0011】
本発明のクエンチチューブにはクエンチチューブを通じたガス又はガス/冷却剤混合物の流れを妨害することができる障害又は制限がないことが好ましい。このことはクエンチチューブ内におけるの冷却されるガスの滞留時間を最小化する(同様にクエンチチューブにおける比較的小規模でより単純な処理を提供する)。
【0012】
本発明の第一の態様のクエンチチューブは、工業規模において、高温で、ガス状の自己熱分解生成物流を冷却するために大多数のチューブとして使用した場合に最適なクエンチングを提供することが明らかとなった。特に、本発明の方法におけるクエンチチューブはチューブ内でのそれ自体の滞留時間が20ms未満、特に10ms未満の場合に、良好な混合及び効果的なクエンチングを提供することが明らかとなった。
【0013】
従って、第2の態様において本発明は第1ガス状反応体流と第2ガス蒸留を反応させてガス状生成物流を生成するための装置を提供し、
前記装置は少なくとも一つの第1ガス状反応滞留の為の第1供給手段、少なくとも一つの第2ガス状反応滞留の為の第2供給手段、触媒ゾーン、生成物冷却ゾーンを備え、
前記触媒ゾーンは少なくとも0.01m2の断面積CAを有し、
前記生成物冷却ゾーンは触媒ゾーンの下流に位置し、複数(N個)のクエンチチューブを含み、各チューブは長さL、直径D、及び断面積QAを有し、各クエンチチューブは少なくともチューブあたり1個の冷却剤インレットを有し、前記インレットは冷却剤をチューブの側面からチューブの中に通し、及び、
Dは0.04〜0.10mであり、
L/Dは少なくとも3であり、及び
(N×QA)/CAは0.07〜0.31である。
【0014】
装置は自己熱分解工程又は第一のガス状反応体流と第2のガス状反応体流が触媒上で反応することにより生成したガス状生成物流の急冷が必要な他の工程に適している。
触媒-ゾーンの断面は通常少なくとも0.05m2、好ましくは少なくとも0.1m2である。
触媒-ゾーンの断面は通常1.2m2未満であり、好ましくは0.5m2未満である。
最も好ましくは、触媒-ゾーンの断面は0.2〜0.3m2の範囲である。
使用において、触媒ゾーンは触媒を含む。好ましくは、触媒の深さは0.02〜0.1mである。
触媒-ゾーンの断面の形は通常反応基の内側の断面と同じである。
【0015】
反応基の内側の断面は円形であってよい。代わりに、反応基の内側の断面は多角形のように非-円形であってもよく、好ましくは正多角形で、少なくとも4つの辺を有し、好ましくは少なくとも5辺及び好ましくは8辺未満を有し、例えば6角形である。装置は複数のチューブNを有する。従って、Nは少なくとも2である。最適なチューブの数は触媒ゾーンの総断面積に依存し、一般的には触媒ゾーンの断面積の増加に伴って増加する。従って、比(N×QA)/CAはN個のクエンチチューブの総面積の触媒ゾーンに対する比を示す。(各チューブの断面積(QA)はその直径Dに比例し、式QA=(0.5×D)2×πに従う)。
【0016】
好ましくは(N×QA)/CAは0.25未満であり、例えば0.08〜0.25の範囲である。より好ましくは、(N×QA)/CAは少なくとも0.1であり、最も好ましくは0.1〜0.2の範囲である。
通常Nは少なくとも3であり、好ましくはNは20未満であり、より好ましくは10未満である。
好ましくはDは少なくとも0.06mであり、及び/又は0.085m以下である。
【0017】
第2の態様においてL/Dは少なくとも3である。好ましくはL/Dは少なくとも4であり、より好ましくは少なくとも5であり例えば少なくとも10である。特に、上に示したように少なくとも5のL/Dは前記チューブ長内での冷却剤及びガス状生成物流の良好な混合を確かなものにし、速やかな冷却を確かなものにする。しかしながら3〜5の範囲のより小さいL/Dもなお、下流の要件に依存して十分な混合及び冷却を提供する。好ましくはL/Dは15未満、例えば10〜15である。
【0018】
第1及び第2ガス状反応体流は好ましくは触媒ゾーンで触媒と接触する直前に混合及び余熱される。従って、装置は好ましくは触媒ゾーンの蒸留に混合及び余熱セクションを含む。任意の適切な混合及び余熱手段が使用される。最も好ましくは、WO 2004/074222に記載されるように、装置は各反応体が複数のアウトレットを含む第1及び第2供給手段を利用する混合及び余熱セクションを含む。
【0019】
従って、装置は好ましくは少なくとも1つの第1ガス状反応流のための第1供給手段、少なくとも1つの第2ガス状反応体流のための第2供給手段、抵抗ゾーン及び触媒ゾーンを備え、
第1供給手段は第1ガス状反応体流を輸送するための複数の第1アウトレットを含み、第二供給手段は第2ガス状反応体流を輸送するための複数の第2アウトレットを含み、
反応ゾーンは多孔性で第1及び第2ガス状反応体流の流れに関し、第1及び第2供給手段の下流に位置し、第1及び第2供給手段と流体連通状態にあり、
触媒ゾーンは第1及び第2ガス状反応体流の流れの下流に位置し、抵抗ゾーンと流体連通状態にあり、
第1供給手段及び第2供給手段が、第1及び第2ガス状反応体が本質的に平行な方法で接触し、抵抗ゾーンに接触する前に混合するように配列される。
混合装置の複数のアウトレットは好ましくはWO 2004/074222に記載されるように規則正しいパターンで提供される。これは最も効果的な供給を導く。これを達成する好ましい形態は六角形である(一つのアウトレットが規則正しい六角形の構成をした6つの等しい距離の最も近い隣接するアウトレットを有する)。
【0020】
抵抗ゾーンは多孔性であり、それらは抵抗ゾーン抵抗ゾーンの断面積に実質的に均一に分散し、従ってそれに続く触媒ゾーンの断面積に実質的に均一に分散するように、当該ゾーンを通り抜ける際に反応体の分散を確実なものにする。
【0021】
抵抗ゾーンは多孔性の金属構造で形成されてもよいが、好ましくは前記多孔性材料は非金属、例えばセラミック材料である。
適切なセラミック材料にはリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)、アルミナ(Al2O3)、安定化ジルコニア、アルミナチタネート、ナイアスコン、コージエライト、ムライト、シリカ及び及びリン酸ジルコニウムカルシウム(calcium zirconyl phosphate)が挙げられる。好ましい多孔性材料はアルファアルミナ又はコージエライトである。多孔性材料は球形又は他の顆粒状の形態であっても良い。代わりに、多孔性材料は発泡体状の形態であってもよい。
好ましくは、装置は、高圧で、例えばより大きい圧力で、好ましくは少なくとも0.5bargの圧力で、及びより好ましくは少なくとも10bargの圧力で、より好ましくは少なくとも15bargの圧力で作動するように設計される。圧力は好ましくは50barg未満及びより好ましくは35barg未満、例えば20〜30bargの範囲である。
【0022】
触媒ゾーンは通常、反応ゾーンで触媒バスケットのような適切な支持体に保持された状態で触媒床を含む。好ましくは、ガスが触媒と保持体の間を通過するのを防ぐために、触媒及び支持体の間の任意の空間は適切なシーリング材料で充填する。適切なシーリング材料には、保持体内の触媒のエッジを包むことができる人工ロックウール(mineral wools)、例えばセラミックウールが含まれる。さらに、触媒はこのシーリングを補助するために前記エッジのまわりをアルミナのような主な触媒支持材料と同様の材料でコートしても良い。装置は、ガス状供給原料を部分的に酸化させるのに有利に使用される。
【0023】
本発明は、第1ガス状反応体流及び第2ガス状反応体流が触媒と接触してガス状生成物流を生成し、前記生成物流は、触媒を離れる際に冷却され、前記方法は装置内で及び/又は本明細書に記載するようにクエンチチューブを使用して行われる方法も提供する。
【0024】
冷却は生成物流をクエンチチューブ内で冷却剤と接触させることにより達成する。冷却剤は気体であっても液体であっても良い。冷却剤は不活性冷却剤又は反応性冷却剤であっても良く、例えば、炭化水素、特に開裂してオレフィンを生成するアルカン又はアルカンの混合物である。冷却剤がガスの場合は、不活性ガスであることが望ましい。好ましくは冷却剤は液体であり、例えば水である。
【0025】
水のような冷却剤は通常、ガス状生成物流よりも高い圧、例えば100bargで注入され、及び通常100-400℃の温度で、好ましくは200-350℃で、例えば300℃で注入される。冷却剤を高圧及び高温で注入することにより、高い比率の冷却剤が反応器の圧力で瞬間的に蒸発し、それ故ガス状生成物流の非常に早い温度低下を提供する。
【0026】
生成物流は触媒から離れる際に800℃以下まで、触媒を離れてから好ましくは40ms以内、有利には20ms以内に冷却される。生成物流は触媒から離れる際にさらなる反応を最小限にするために、生成物流の温度が700℃〜800℃又はより低い温度、例えば600℃以下まで冷却しても良い(重ねて触媒を離れてから好ましくは40ms以内、有利には20ms以内に)。
【0027】
好ましくは、第1ガス状反応体流は酸素含有ガスを含み、第2ガス状反応体流はガス状パラフィン系炭化水素を含む。
【0028】
最も好ましくは、酸素含有ガス及びガス状パラフィン系炭化水素を、自己熱分解が起こり、1以上のオレフィン類が生成する通常の燃料富限界を超える燃焼を維持することができる触媒と接触させる。
【0029】
従って、本発明の方法の特定の実施態様において、ガス状パラフィン系炭化水素及び分子酸素含有ガスは通常の燃焼性の燃料富限界を超えた燃焼を継続させることができる触媒と接触しオレフィン類を含むガス状生成物流を生産し、前記生成物流は触媒を離れるときに冷却され、前記方法は本明細書で記載されるように装置内及び/又はクエンチチューブを使用して行われる。
【0030】
パラフィン系炭化水素及び分子酸素含有ガスを燃焼性の通常の燃料富限界を超えた燃焼を継続させることができる触媒と接触した際にパラフィン系炭化水素の燃焼が触媒上で開始し、プロセス温度まで上げ、自己熱分解プロセスを行いオレフィンを生成するのに必要な熱がその場で産生される。
【0031】
自己熱分解のための触媒は、金網の形態のように支持されなくても良いが、好ましくは支持される。セラミック又は金属支持体のような任意の適切な支持材料が使用されても良いが、セラミック支持体が一般的には好ましい。セラミック支持体が使用される場合、セラミック支持体の複合体の構成は高温、例えば600℃から1200℃で安定な酸化物又は酸化物の組み合わせである。支持材料は好ましくは低い熱膨張係数を有し、高温における層分離抵抗性である。
【0032】
適切なセラミック支持体にはコージエライト、ムライト、リチウムアルミノケイ酸塩(LAS)、アルミナ(例えば α-Al2O3)、安定化ジルコニア、アルミナチタネート、ナイアスコン(niascon)及びリン酸ジルコニウムカルシウムが挙げられる。セラミック支持体は例えばα-Al2O3で洗浄-コートされても良い。
【0033】
支持体は好ましくは発泡体又はハニカムモノリス(honeycomb monolitu)の形態である。炭化水素及び分子酸素含有ガスは好ましくは触媒と接触する前に混合及び炭化水素及び酸を混合の前又は混合後のいずれかに加熱すること又は両方の組み合わせにより余熱する。
【0034】
自己熱分解に好ましい炭化水素は少なくとも2つの炭素原子を有するパラフィン系炭化水素である。例えば、炭化水素はエタン、プロパン又はブタンのようなガス状の炭化水素又はナフサもしくはFT液のような液体炭化水素である。液体炭化水素を反応させる場合は、本発明で使用する為にはガス状反応体流を形成させる為に気化させるべきである。
【0035】
酸素含有ガスは、分子酸素自体や空気のように任意の適切な分子酸素含有ガスとして提供しても良い。
【0036】
好ましくは、水素が自己熱分解反応に同時供給される。水素の同時供給は、自己熱分解触媒の存在下、水素は炭化水素に優先して燃焼し、そのことによりプロセス全体のオレフィン選択性が増加するので有利である。燃焼した水素の量は熱の産生量及びクラッキングの程度を調整するために使用されても良い。従って、水素の酸素に対するモル比はオレフィン類を含む自己熱分解生成物流を生成することができるように任意に操作可能な範囲で変化させることができる。適切には、水素の酸素に対するモル比は0.2〜4の範囲、好ましくは0.2〜3である。
【0037】
炭化水素及び酸素含有ガスは、オレフィン類を含む自己熱分解生成物流を生成するような任意の適切なモル比で触媒と接触する。好ましい化学量比は5〜16であり、炭化水素を完全に二酸化炭素及び水に完全燃焼するために必要な酸素に対する炭化水素の化学量比の好ましくは5〜3.5倍、好ましくは6〜10倍である。
【0038】
好ましくは反応体は触媒を、20,000h-1barg-1より速い、最も好ましくは100,000h-1barg-1より速いガスの1時間あたりの空間速度に依存する圧力で通過させる。例えば、20bargの圧力では、ガスの時間当たりの空間速度は最も好ましくは2,000,000h-1である。しかしながら、最適なガスの時間当たりの空間速度は供給する組成物の性質に依存することを理解すべきである。
【0039】
自己熱分解ステップは600℃〜1200℃の範囲の触媒出口温度で適切に行われる。適切には、触媒出口温度は少なくとも750℃のように少なくとも720℃である。好ましくは自己熱分解ステップは850℃〜1050℃の範囲の触媒出口温度で行われ、最も好ましくは850℃〜1000℃の範囲で行われる。
【0040】
自己熱分解ステップは通常0.5bargより高い圧力で、好ましくは少なくとも10 bargの圧力で、より好ましくは15bargの圧力で行われる。圧力は好ましくは50barg未満であり、より好ましくは35barg未満であり、例えば20〜30bargの範囲である。
【0041】
自己熱分解のための触媒は、燃焼性の燃焼富限界を超えた燃焼を継続することができる。触媒は通常第VIII族金属を触媒成分として含む。適切な第VIII族金属にはプラチナ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミニウム及びイリジウムが挙げられる。ロジウム及びより特にはプラチナ及びパラジウムが好ましい。典型的な第VIII族金属の添加量の範囲は、触媒の乾燥全量に対し0.01〜100wt%、好ましくは0.01〜20wt%、より好ましくは0.01〜10wt%である。
【0042】
第VIII族触媒を使用する場合、触媒促進剤と組み合わせて使用することが好ましい。促進剤は第IIIA、IVA及び/又はVA金属であっても良い。代わりに、促進剤は遷移金属;遷移金属促進剤は第VIII族遷移金属触媒成分として使用される金属と異なる金属であっても良い。好ましい促進剤はGa、In、Sn、Ge、Ag、Au又はCuからなる群から選択される。第VIII族金属の触媒促進剤に対する原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0である。
【0043】
促進剤を含む触媒の好ましい実施例にはPt/Ga、Pt/In、Pt/Sn、Pt/Ge、Pt/Cu、Pd/Sn、Pd/Ge、Pd/Cu、Rh/Sn、Pt/Pd/Cu及びPt/Pd/Sn触媒が挙げられる。
念のために述べると、触媒中の第VIII群金属及び促進剤は任意の形態、例えば、金属又は酸化物のような金属化合物として存在しても良い。
【0044】
触媒は技術分野において公知の任意の方法で調製されて良い。例えば、ゲル法および湿式含浸法を使用する。典型的には、支持体は金属を含む1以上の溶液を含浸させ、乾燥し、その後空気中でか焼する。支持体は1以上のステップで含浸しても良い。好ましくは、複数の含浸ステップを使用する。支持体は好ましくは各含浸の間に乾燥及びか焼し、その後最終的に好ましくは空気中でか焼する。か焼した支持体は、例えば水素雰囲気下で加熱処理をすることにより還元する。
【0045】
上記の触媒は、単一の触媒として記載してきたが、触媒は変わりに例えばWO 02/04389に記載されるように連続的触媒床として存在しても良い。
【0046】
ガス状生成物流は、オレフィン類に加えて、一般的に、所望するオレフィン類と分離する必要のある未反応のパラフィン系炭化水素、水素、一酸化窒素及びメタンを含み、水を含み、少量の芳香族及び二酸化炭素を含む。生成物流を表すために使用される「ガス状」とは触媒を離れるときの気流の状態及び水のような低い温度では液体である、前記気流の成分を表すことに留意すべきである。前記気流について必要な、分離は冷却後、二酸化炭素及び任意の水を除く為のアミンによる洗浄、水素、一酸化炭素及びメタンを除く為の脱メタン剤、エタン及びエチレンからC3+炭化水素を分離する為の脱エタン剤、エチレンをエタンから分離する為のC2スプリッターのような任意の適切な方法で行う。
【0047】
本発明は特に工業的規模における装置及び方法に有用である。「工業的規模」は方法自体に依存し、反応体/触媒床は典型的に少なくとも50ktpa(1以上の反応器が存在する場合は反応器あたり)の炭化水素、好ましくは少なくとも100ktpaの炭化水素(反応器あたり)を処理する大きさで作られる。
【0048】
例えば、自己分解プロセスにおけるオレフィンの製造の為には、工業的規模は典型的には、少なくとも25ktpa(反応器あたり)の炭化水素、好ましくは少なくとも75ktpa炭化水素(反応器あたり)を製造する大きさで作られる。
【0049】
本発明は図1及び2のように図示され、
図1は本発明の1つの実施態様におけるクエンチチューブの模式図を示しており、
図2は本発明の装置の生成物冷却ゾーンの上部の断面の模式図を示す。
図1に関しては、(A)において、断面積Dを有するクエンチチューブ(1)の断面を示し、3個の冷却剤インレット(2a-c)がクエンチチューブ(1)の周囲に等間隔に設置されていることが示される。各冷却剤インレットからの冷却剤の噴霧は点線で模式的に示される。また図1は、(B)はクエンチチューブ(1)の側面図であり、長さLであり、本図においては直径Dの6倍であることも示す。図1(B)は単一の冷却剤インレット(2)(図1(A)のインレット2a〜2cの任意の1個を表す)の側面を示し、インレット(2)は4個のノズル(チューブ(1)の長軸方向に間隔をあけて設置される)を含むことを示す。典型的には、クエンチチューブは適切なインレット(3)(点線の図形で示される)に接続し、生成物ガスの流れ(4)がそこを通り、上の断面の上流の触媒ゾーンからクエンチチューブへ流れる。
【0050】
図2は、生成物の冷却ゾーンの上部の断面であり、3個のチューブを示し(1)、それぞれ直径Dを有し、触媒ゾーンの断面に対応する反応器(5)を横切って間隔をあけて設置されている。断面(5)は直径CZDを有する。この実施例において(N×QA)/CA=0.17(D/CZD=0.24及びQA/CA=0.058)である。
【0051】
実施例
本発明では600mmの直径及び0.28m2の断面積CAを有する触媒ゾーンを数値流体力学(CFD)を用いて設計した。
【0052】
比較実施例は直径200mm及び長さ1500mm(L/D=7.5)のクエンチチューブを用いて設計した。クエンチチューブは各インレットが1個のノズルを備えた8個の冷却剤インレットを有し、当該インレットはクエンチチューブの先端の周りに等間隔に設置した。
【0053】
触媒を離れる際15m/s(チューブ内での平均速度は135m/s)の直線速度を有する、920℃の温度で30bargである生成物流に、310℃、100bargでトータル4kg/sの速度で前記インレットから、水を注入する。クエンチチューブの底部において(11.1msのクエンチチューブ内の生成物ガスの平均滞留時間と等しい。)、チューブの断面にわたって生成ガスの温度の有意な変化(200℃近く)が観察され、これは、混合の不良、生成流の大部分がまだ900℃近くであること、クエンチチューブの中央では生成物流は非常に限られた冷却しかされないことが示された。
【0054】
本発明の実施例もまた設計された。この実施例において、100mmのD、500mm(L/D=5)の長さを有する7つのクエンチチューブが提供される。[(N×QA)/CA=0.19.]各クエンチチューブは4個の冷却剤インレット及び各インレットに1個のノズルを有し、前記インレットはクエンチチューブの上部の周りにほぼ等間隔に設置された。
【0055】
重ねて、触媒を離れる際15m/s(各チューブの平均直線速度は77m/s))の直線速度を有する920℃の温度で30bargである生成物流に、310℃、100bargでクエンチチューブごとのトータル速度が0.57kg/s(トータルの水流は従って7チューブで4kg/sであり、比較実施例の1つのチューブと等しい。)で、前記インレットから水を注入した。この場合、チューブの底部は、比較的均一な温度の分布を得、平均およそ800℃で、良好な混合と効率的な冷却を示す。実際、クエンチチューブの断面にわたる全ての点の生成ガスの温度はガスがチューブの中間点を過ぎる前に900℃未満に下がった。
【0056】
これはクエンチチューブ内の生成ガスの平均滞留時間が40%以上、6.5msまで短縮されたという事実にもかかわらない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1つの実施態様におけるクエンチチューブの模式図
【図2】本発明の装置の生成物冷却ゾーンの上部の断面の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さL、直径D及び1チューブあたり少なくとも1個の冷却剤インレットを有するクエンチチューブであって、前記インレットは前記チューブの側面からチューブの中に冷却剤を通し、
Dは0.04〜0.10mであり、及びL/Dは少なくとも5である、前記チューブ。
【請求項2】
2〜4個の冷却剤インレットを有する請求項1記載のクエンチチューブ。
【請求項3】
第1ガス状反応体流を第2ガス状反応体流と反応させてガス状生成物流を生成するための装置であって、
前記装置は少なくとも1個の第1ガス状反応体流のための第1供給手段、少なくとも1個の第2ガス状反応体流のための第2供給手段、触媒ゾーン及び生成物冷却ゾーンを備え、
前記触媒ゾーンは少なくとも0.01m2の断面積CAを有し、
生成物冷却ゾーンは触媒ゾーンの下流に位置し、複数(N個)のクエンチチューブを含み、各チューブは長さL、直径D、及び断面積QAを有し、各クエンチチューブはチューブあたり少なくとも一つの冷却剤インレットを有し、前記インレットは冷却剤をチューブの側面からチューブの中に通し、及び、
Dは0.04〜0.10mであり、
L/Dは少なくとも3であり、及び
(N×QA)/CAは0.07〜0.31である。
【請求項4】
(N×QA)/CAが0.25未満である請求項3記載の装置。
【請求項5】
Nが少なくとも3で、かつ20未満である、請求項3又は請求項4記載の装置。
【請求項6】
第1ガス状反応体流及び第2ガス状反応体流が触媒と接触してガス状生成物流を生成し、前記生成物流が触媒を離れる際に冷却され、前記冷却が請求項1又は請求項2記載のクエンチチューブを使用して行われる方法。
【請求項7】
第1ガス状反応体流及び第2ガス状反応体流が触媒と接触してガス状生成物流を生成し、前記生成物流が触媒を離れる際に冷却されることを含む、請求項3〜5いずれか1項記載の装置を使用して行われる方法。
【請求項8】
ガス状パラフィン系炭化水素及び分子酸素含有ガスが、オレフィン類を含むガス性生成流を生成する燃焼性の通常の燃料富限界を超える燃焼を維持することができる触媒と接触し、前記生成物が触媒を離れる際に冷却されることを含む、請求項3〜5いずれか1項記載の装置を使用して行われる自己熱分解によるオレフィンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−523604(P2009−523604A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550828(P2008−550828)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004800
【国際公開番号】WO2007/083076
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507391775)イネオス ユーロープ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】