説明

触媒活性を有する活性炭

【課題】本願発明の目的は、触媒活性を有する活性炭の製造方法、及び含浸又は滴下した金属を担持した活性炭の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本願発明は、炭素質有機ポリマーの炭化及び活性化による触媒活性を有し又は金属質を有する活性炭の製造方法において、それらの形成過程で、少なくとも一つの金属と好ましくは金属原子及び/若しくは金属イオンの形で共重合される炭素質有機ポリマーが、炭化及び活性化され、金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンが充填された活性炭を形成することにある。言い換えると、本願発明は、金属原子及び/若しくは金属イオンの形の金属が付与された活性炭の製造方法において、最初に、重合が、少なくとも一つの金属、好ましくは金属原子及び/若しくは金属イオンの形で共重合される炭素質有機ポリマーを形成するために使用され、次の段階で、上記方法で形成された金属が充填された炭素質有機ポリマーに、炭化及び活性化が実行されることにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特に小球形状(「球状カーボン」)の形の触媒活性を有する活性炭を製造するために方法、又その方法で製造された活性炭、及び広い範囲の応用への使用、特にフィルタ又は防護用品、例えば防護服及び/若しくは他保首里の防護衣料品(例えば、防護履物、防護衣服、防護手袋、防護靴下、防護下着、防護帽子等)への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、実際に不特定の吸着特性を有するので、広い範囲で使用される吸着剤である。法律上の制限と同様に環境についての責任感の向上は、活性炭の需要を向上させる結果となっている。
【0003】
活性炭は、一般的に、適当な炭素質の開始化合物を炭化(熱分解又はいぶすことという同義語によっても示される)及び/若しくはそれに続く活性化することによって製造され、またこのような開始化合物は、経済的に合理的な生産高に導く。これは、炭化の過程での揮発性成分の分離及び活性化の過程での所定の焼失による重量損失がはっきりと認識できる理由である。
【0004】
活性炭の製造に関するさらなる詳細については、非特許文献1を参照することができる。
【0005】
(最終的な又は粗い多孔性の、堅固な又は脆い粒状又は球状の)製造された活性炭の構成は、開始材料に依存する。通常の開始材料は、椰子殻、木屑、ピート、瀝青炭、ピッチであるだけでなく、例えば織物活性炭繊維の一部を形成する特定のプラスティックである。さらに、有機ポリマーも開始材料として使用される。
【0006】
活性炭は、例えば微粉末カーボン、裂炭カーボン、粒状カーボン、成型カーボン等いろいろな形態で使用され、1970年代の終わり以来、小球状活性炭(「小球状カーボン」)の形状で用いられている。小球状活性炭は、活性炭の他の形状と比べていくつかの利点を有し、所定の応用について有効であり、また必要不可欠なものである。それは、浮動性があり、大きな摩擦抵抗を有し、埃が立たず且つたいへん硬いことである。
【0007】
小球状カーボンは種々の方法によって製造される。
【0008】
小球状カーボンを製造する一つの方法は、石油化学工業からの瀝青質のコールタールピッチ及び/若しくは適当なアスファルト残存物の小球体を製造し、それらを酸化して溶解しないようにし、そしてそれらをいぶして活性化することからなる。またその代わりに、小球状カーボンは、瀝青から複数段階の工程において製造される。これらの複数段階の工程は、たいへんにコスト集約性が強いので、小球状カーボンの高いコストは、多くの応用を妨げている。このため、小球状カーボンは、その特性の長所によってだけ用いられるべきものである。
【0009】
高い品質の小球状カーボンを製造するために、いくつかの方法が試されている。硫酸基を含むスチレン−ジビニルベンゼン樹脂に基づく新しい又は使用済みのイオン交換体の炭化及び活性化によって、又は硫酸が存在するイオン交換体先駆物質の炭化及び活性化によって、活性炭小球の形状の活性炭を製造すること、硫酸基及び硫酸がそれぞれ架橋機能を有することは、すでに従来技術から公知である。このような方法は、特許文献1及び2に記載されており、また、ドイツと億虚の付加的な応用である特許文献4を含む特許文献3に示されている。特許文献5は、さらにこの点について、例証している。
【0010】
特許文献6は、活性炭小球を製造する方法を開示する。この方法において、ジイソシアネート製品からの蒸留残留物と、一つ又は複数の添加物を有し又はなしの炭素質の加工補助物とからなる混合物が、最初に易流動性小球に加工され、その後にいぶされて活性化される。
【0011】
上述した方法で製造された小球状活性炭は、例えば防護服、特にいわゆる軍事用又は民間用防護のためのNBC防護服に使用される。このように、活性炭は、特に通気性、空気透過性吸着防護服に使用される。そのような防護服は、兵器薬剤のような化学的毒物(例えばマスタードガス又はHd)に対する良好な防護効果を有するが、生物学的有害物に関しては不十分な防護効果を有する。
【0012】
この理由について、活性炭に基づく通気性の吸着フィルタシステムは、金属又は金属化合物に基づく活性炭に殺菌性又は制生性触媒を付与、特に含浸させることによって、触媒活性要素を備えるものである。
【0013】
そのような防護材料は、例えば特許文献7に記載されているように、特に炭化された繊維の形状の活性炭に基づく吸着層を具備し、活性炭材料に基づいて0.05重量%〜12重量%の量で、銅、カドミウム、プラチナ、パラジウム、水銀及び亜鉛から選択される触媒を含浸した複数層の織布ガス透過性フィルタ材料を有する。しかしながら、既に製造された活性炭は、一般的に、含浸金属又は含浸金属化合物の容積又は分散液である適当な含浸試薬に接触させ、その後一度以上乾燥させるようにしなければならないので、活性炭のその後の含浸は、コストのかかる且つ面倒な作業である。これによって、含浸作業は、使用される活性炭の能力での逆効果を有する。さらに、前記含浸作業は、比較的大きな量の含浸金属を要求する。さらにまた、その後の含浸作業の不利益点は、含浸作業が、活性炭全体にわたって同じに実行されず、さらに全ての細孔(いわゆるマクロ細孔、間孔及びミクロ細孔)にわたって均質でないことである。最後に、含浸作業は、活性炭の細孔が、含浸試薬で部分的に詰まり又はブロックされ、吸着作業にもはや適していないことから、吸着能力を減じてしまう。
【非特許文献1】H.v.キエンル及び/若しくはE.ベーダー、「活性炭及びその工業的応用」、エルケ出版、シュタットガルト、1980年
【特許文献1】DE 43 28 219 A1
【特許文献2】DE 43 04 026 A1
【特許文献3】DE 196 00 237 A1
【特許文献4】DE 196 25 069
【特許文献5】WO 01/83368 A1
【特許文献6】WO 98/07655 A1
【特許文献7】DE 195 19 869 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえに、本願発明の目的は、触媒活性を有する活性炭の製造方法を提供し、従来技術における上述した不利益点が、少なくとも本質的に回避され又は改善されることにある。
【0015】
特に、本願発明の目的は、含浸又は滴下した金属を担持した活性炭の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題は、請求項1による方法によって、本願発明の範囲内で解決される。さらに。本願発明の方法の有益な例は、それぞれの従属クレームに記載された方法の主題である。
【0017】
本願発明は、さらに、上述した方法で得られた請求項6及び7に記載された活性炭を提供する。
【0018】
さらにまた、本願発明は、本願発明によって製造された活性炭の請求項8及び9に記載された使用を提供する。
【0019】
また、本願発明は、本願発明によって得られる活性炭を使用して製造される請求項10による特に吸着材料である製品を提供することにある。
【0020】
したがって、本願発明は、第1の様相において、炭素質有機ポリマーの炭化及び活性化による触媒活性を有し又は金属質を有する活性炭の製造方法において、それらの形成過程で、少なくとも一つの金属と好ましくは金属原子及び/若しくは金属イオンの形で共重合される炭素質有機ポリマーが、炭化及び活性化され、金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンが充填された活性炭を形成する活性炭の製造方法を提供する。
【0021】
言い換えると、本願発明は、金属原子及び/若しくは金属イオンの形の金属が付与された活性炭の製造方法において、最初に、重合が、少なくとも一つの金属、好ましくは金属原子及び/若しくは金属イオンの形で共重合される炭素質有機ポリマーを形成するために使用され、次の段階で、上記方法で形成された金属が充填された炭素質有機ポリマーに、炭化及び活性化が実行される製造方法を提供する。
【0022】
開始材料、いわゆる炭素有機ポリマーが、それらの形成過程において、所望の金属を付与されるので、活性炭が製造された後に、コストのかかる面倒な含浸段階を行う必要がなくなる。さらに、ポリマーの開始材料に金属を付与することによって、さらなる均一充填が達成され、且つ活性炭の全ての種類の細孔(マクロ細孔、間孔及び/若しくはミクロ細孔)の均質化が達成されるので、触媒活性が向上する。
【0023】
また、本出願人は、本願発明によって製造された活性炭が、同一の効果に関してより少ない量の金属を要求することから、従来の含浸された活性炭に比べて、生物学的化学的毒物に関する効果が上昇することを見出した。
【0024】
さらに、有機開始ポリマーにおける金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンが、炭化及び活性化に対して悪影響を与えないことを見出した。それどころか、本出願人は、開始化合物における金属の存在が、それに続く作業、特に活性化を促進することを見出した。活性化が、金属充填なしの場合に比べて、より少ない時間で完遂した。これは、予知されない効果であった。
【0025】
その形成の間の炭素質有機開始ポリマーへの金属の共重合化は、上述したように、プロセス工学条件下だけでなく製品に反映される複数の利点(例えば、より均質化、より均一な充填及び/若しくは向上した触媒活性)と関連する。
【0026】
本願発明の目的に関する有効な炭素質有機開始ポリマーは、ポリスチレンポリマー、特にポリスチレン−アクリラート共重合体及びポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、好ましくはジビニルベンゼン架橋ポリスチレン;フェノール−フォルムアルデヒド樹脂共重合体、特にフォルムアルデヒド架橋フェノール樹脂;セルロース、特にビードセルロース;及びそれらの混合物の群から選択されることが好ましい。
【0027】
特に好ましい炭素質有機開始ポリマーは、ポリスチレンポリマー、特にポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、好ましくはジビニルベンゼン架橋ポリスチレンである。本願発明によって使用されるポリマーは、使用されるポリマーを基礎として、1重量%〜20重量%、好ましくは4重量%〜8重量%のジビニルベンゼン含有量を有することが好ましい。ゲル状のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンが開始ポリマーとして使用される場合には、2重量%〜6重量%、特に3重量%〜5重量%の相対的に低いジビニルベンゼン含有量が好ましく、開始ポリマーとしてマクロ細孔のジビニルベンゼン架橋ポリスチレンが使用される場合には、15重量%〜20重量%、特に17重量%〜19重量%の比較的高いジビニルベンゼン含有量が好ましい。
【0028】
本願発明によれば、使用されるポリマーは、粒状、特に小球状であることが好ましい。これは、粒状、特に小球状活性炭の製造を可能にする。使用される開始ポリマーは、0.01〜2.0mmの範囲内、特に0.05〜1.5mmの範囲内、好ましくは0.1〜1.0mmの範囲内の平均直径を有し、これにより対応する寸法の活性炭粒子を生じることが好ましい。
【0029】
開始ポリマーは、それ自体当業者に公知である方法において、形成又は重合化される。この目的について、開始モノマーは、金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオン、好ましくは金属イオンの存在に於いて重合化される。この目的について、金属原子及び/若しくは金属イオンが、重合体混合物に、好ましくは重合体混合物に溶解又は少なくとも分散された金属化合物の形で、付加される。重合化されるべき開始混合物は、金属の存在によって、重合化される。これは、分散又はマルジョン重合化、特にフリーラジカル重合化によって達成される。例えば、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを形成するために、ポリスチレン及びジビニルベンゼンの開始混合物(混合物に基づく1〜10重量%のジビニルベンゼン含有量)及び/若しくは金属化合物(例えば銅及び/若しくは銀のベヘン酸塩又は(メタ)アクリル酸塩)は、所望の金属添加有機開始ポリマーを製造するために、増孔剤で又はなしにフリーラジカル開始剤の存在によって、従来の方法においてフリーラジカル重合化がなされる。本願発明によれば、有機酸の金属塩(例えば、ベヘン酸塩、アクリル塩、メタアクリル酸塩等)が特に均一的に共重合化するので、その存在によって重合化が実行される金属化合物が、問題の金属の有機化合物であることが、本願発明によれば好ましいものである。有機開始ポリマーの形成に関する詳細については、US−A−4040990及びUS−A−4382124を参照することができる。
【0030】
金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンは、いろいろな量において使用される。特に、本願発明は、結果として生じるポリマーが、ポリマーに基づいて0.001重量%〜10重量%、特には0.005重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜3重量%の量の金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンを含むような量において使用される。
【0031】
上述したように、この方法において製造され、炭化及び活性化が施される炭素質の有機ポリマーは、好ましくは金属原子及び/若しくは金属イオンの形で、少なくとも一つの金属を有する。この「少なくとも一つの金属」という文言は、炭素質有機ポリマーが、少なくとも一つの種類の金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンを有することを意味すると理解するべきである。複数の別の金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオン(例えば、銅イオンと銀イオンの混合物)を共重合化することも、同様に可能である。
【0032】
前記金属は、特に、銅、銀、カドミウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、亜鉛、水銀、チタン、ジルコニウム及び/若しくはアルミニウム及び/若しくはそれらの化合物及び/若しくはそれらのイオン及び/若しくは塩の群から選択される。
【0033】
この方法において製造された金属原子を装填された炭素質有機ポリマーは、その後、炭化及び活性化が施される。炭化及び活性化は、通常の保法において達成される。この方法に関する引例は、DE4328219A1、DE4304026A1、DE19600237A1、DE19625069A1及びWO01/83368A1であり、この点について全体的開示内容は、ここで具体化される。
【0034】
活性炭加工における高い生産高を得るために、特に炭化条件下において化学的に分解される時に、フリーラジカルを生じ、架橋を生じる化学基、特に硫酸及び/若しくはイソシアネート基、好ましくは硫酸基のような開始ポリマーを使用することに利点がある。このような化学基、特に硫酸基は、もし硫酸塩開始モノマーが重合化に使用されるか、形成された開始ポリマーが、それらの重合化の後に硫酸塩化されるならば、開始ポリマーにすでに存在している。しかし、本願発明によれば、これらの化学基、特に硫酸基が、炭化の前まで及び/若しくは炭化の間には導入されないことが好ましい。これは、スルホン化剤、好ましくはSOの開始ポリマーへの付加(例えば、含浸、浸漬又は浸潤)によって達成される。前記SOは、特に濃硫酸及び/若しくは発煙硫酸の形で、より好ましくは濃硫酸及び発煙硫酸の形で使用される。これは、当業者にとって公知である。これに関連して、例えば上述したWO01/83368A1、DE19625069A1及びDE19600237A1を参照することができ、これに関して開示された内容は、ここで具体化することができる。
【0035】
上述したように、炭化及び活性化は、通常の方法において実行される。炭化は、炭素質ポリマー開始材料を実質的にカーボンに変換する。いわゆる言い換えると、ポリマー開始材料は、炭化される。特にスチレン及びジビニルベンゼンに基づき、熱分解されたときにフリーラジカル及びこれによる架橋を生じる機能的化学基、特に硫酸基を含む上述した有機ポリマー小球が、熱分解残留物がない状態で、揮発性成分の分離を介して機能化学基、特に硫酸基を破壊し、明白な架橋を達成するフリーラジカルを形成する。一般的に、炭化は、少なくとも優れた不活性雰囲気(例えば窒素)下で、又はほんの少しの酸素含有雰囲気で実行される。一般的に、炭化は、200℃〜900℃の温度、好ましくは250℃〜850℃の温度で実行される。上述したように、炭化は、優れた不活性雰囲気下で、又はほんの少しの酸素含有雰囲気で実行される。炭化の優れた不活性雰囲気は、もしそれが比較的高い温度(例えば、500℃〜600℃の範囲内)で実行されるならば、空気の形のほんの少しの酸素(例えば、1%〜5%)と混合され、炭化されたポリマーの骨格の酸化が達成されることに利点がある。それに続く活性化は、この方法において容易に行われる。
【0036】
炭化の後には、活性化が行われる。この活性化は、それ自体公知の条件下で達成される。活性化の基本的な原理は、炭化の過程で生じるカーボンの一部が、適当な条件下で選択的に減損されることである。これは、多くの細孔、裂け目及びクラックを生じさせ、所定の表面積が、著しく上昇する。このように、活性化は、炭化において前もって製造されたカーボンの所定の消失を生じる。カーボンが炭化の過程で減損されるので、この作業は、いくつかの例において明らかであり、最適な状態下で、多孔性の上昇及び内部表面積及び細孔量の上昇と等しい物質の損失を伴う。そのため、活性化は、選択され又は制御された酸化条件下で達成される。通常の活性化ガスは、一般的に空気、水蒸気及び/若しくは二酸化炭素及び/若しくはそれらの混合物の形での酸素である。選択的ではなく全表面にわたって反応する酸素は危険を伴う(その結果として炭素がより大きい又はより少なく燃焼消失する)ので、水蒸気及び二酸化炭素が、好ましい。水蒸気は、不活性ガス(例えば窒素)との混合物において適しているならば、たいへん特別な例である。工業的に十分な反応速度を達成するために、活性化は、一般的に、約800℃〜1,200℃の範囲内、特には850℃〜950℃の範囲内の温度で実行される。
【0037】
炭化及び活性化の反応管理は、当業者にとって公知であるので、皿になる詳細は省略する。
【0038】
炭化及び/若しくは活性化は、回転チューブで又はそれに代わる流動床で、特に流動床で実行される。これは、当業者には公知である。
【0039】
さらに、本願発明は、本願発明の方法によって得られた粒状形状、好ましくは小球状形状の活性炭を提供する。本願発明によって製造された活性炭は、所望の含浸又は滴下する金属での均質で均一な充填について著しく、且つ全ての種類の細孔(マクロ細孔、間孔及びミクロ細孔)にわたって均質である。特に、触媒活性、化学的及び生物学的有害物に関する作用は、ふつうに含浸された活性炭と比較して向上されている。
【0040】
本願発明の方法によって得られた活性炭が、特に少なくとも500g/m2、好ましくは750g/m2、より好ましくは1,000g/m2及び最も好ましくは1,200g/m2の大きな内部表面積(BET)を有することが好ましい。本願発明によって製造された活性炭の所定の表面積(BET表面積)は、500〜2,500m2/gの範囲内、特に750〜2,250m2/gの範囲内、好ましくは900〜2,000m2/gの範囲内、より好ましくは、1,000〜1,750m2/gの範囲内である。
【0041】
粒状、特に小球状の有機開始ポリマーの使用は、高い破裂圧力を有する活性炭を提供する。これは、活性炭粒子、活性炭粒又は活性炭小球当たり少なくとも2N、特には5Nであり、有益には2N〜20Nの範囲内、好ましくは5〜20Nの範囲内である。
【0042】
本願発明によって製造された活性炭は、多くの応用について、例えば吸着(シート状)フィルタ、フィルタマット、消臭フィルタ、特に軍事用及び/若しくは民間用の防護衣料又は防護服のためのシートフィルタ、室内空気浄化用フィルタ、ガスマスク及び/若しくは吸着可能支持構造体などの吸着材料の製造に有効である。
【0043】
特に、本願発明によって製造される活性炭は、特に、兵器薬剤のような生物学的及び/若しくは化学的毒物に対する防護服又は他の防護衣料品(例えば手袋、頭部カバー、履物、靴下、下着等)のある種の防護製品の製造、又はフィルタ用、特に有毒物、有害物及び/若しくは悪臭材料を空気又はガス流から排除するためのフィルタを製造するのに使用される。
【0044】
最後に、本願発明は、本願発明によって製造された活性炭を有する吸着(シート状)フィルタ、臭気フィルタ、特に、生物学的及び/若しくは化学的有害物に対する防護服又は他の防護衣料品のような軍事用又は民間用の防護服のためのシートフィルタ、室内空気浄化用フィルタ、ガスマスクフィルタ、空気又はガス流から有毒物、有害物及び/若しくは臭気物質を排除するためにフィルタ、フィルタマット及び吸着可能支持体構造のようなある種のフィルタである吸着材料を提供する。
【0045】
本願発明のさらなる改善、改良及び変更は、本願発明の範囲を超えることなしに、本明細書を読むことにおいて、当業者には容易に認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本願発明は、以下の実施例を参照することで示されるが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
開始ポリマーの形成
a) 炭化及び活性化のための本願発明によって使用されるポリマー開始材料は、ベンゾイルペルオキシド、増孔剤及び水性分散液のベヘル酸銀の存在におけるスチレン及びジビニルベンゼンの重合化によって、米国特許4,382,142によって実行され、ポリマーに基づいて約1%の銀イオン含有量を有する(留分にわたって)0.1〜1.5mmの直径を有する小球状粒子の形のジビニルベンゼン架橋スチレンに基づく銀イオンを添加した多孔性開始ポリマーを得るものである。比較について、ベヘン酸銀なしの混合物は、同じ方法において重合化され、銀イオンの共重合化なしに対応するポリマーを得ることができるものである。
【0048】
b) この方法において形成されるジビニルベンゼン架橋スチレンポリマーは、その後炭化及び活性化が施される。この結果、1Kgの最初に形成された銀充填ポリマー小球(本発明)又は1Kgの最初に形成された銀イオンが充填されていない小球状ポリマー小球(比較)は、1Kgの発煙硫酸(25%)と1/2Kgno濃硫酸(96%)との混合物と混合され、下記する温度制御によって、プレック(ケルン)製の耐酸性回転チューブオーブンにおいて、窒素雰囲気において熱処理が施される:
20分の滞在時間で、毎分2℃で200℃まで加熱する。
10分の滞在時間で、毎分3℃で300℃まで加熱する。
10分の滞在時間で、毎分5℃で400℃まで加熱する。
20分の滞在時間で、毎分3℃で800℃まで加熱する。
10分の滞在時間で、毎分3℃で900℃まで加熱する。
それぞれの場合の結果は、乾燥物質に基づいたそれぞれの場合の重量損失が、約10%(本発明だけでなく、比較の場合も)である炭化材料が生じる。
【0049】
これによって炭化された材料は、それぞれの場合、同じ回転チューブオーブンにおいて、800℃〜900℃の温度で、75%の窒素及び25%の水蒸気の混合物によって活性化され、活性化につづいてオーブン内で冷却される。合計活性化時間は、銀イオンを担持された本願発明において使用される炭化された開始材料の場合、1.5時間であり、銀イオンを含まない炭化された比較開始材料の場合には、3.5時間である。これは、活性炭製造実験、特に活性化段階に関してポリマー開始材料の銀イオン充填の利点をさらに有益に立証する。
【0050】
特許性のある開始材料は、活性炭(平均直径:約0.6mm、BET:約1450m2/g、破裂圧力:1小球当たり5N以下)に基づき、銀として換算した約1.0%(重量%)の銀イオンを担持した約510gの銀イオン担持活性炭を与える。
【0051】
比較材料は、その後硝酸銀溶液に浸漬され乾燥される約440gの活性炭を得るので、比較活性炭の場合において、活性炭(平均直径:約0.6mm、BET:約1300m2/g、破裂圧力:1小球当たり5N以下)に基づき、銀として換算した約2%(重量%)の銀イオンが担持された活性炭を生じる。これは、いわゆる銀イオン含有量が、本願発明によって製造された活性炭の約2倍である。
【実施例2】
【0052】
使用例:
本願発明によって製造された活性炭は、吸着フィルタ材料を製造するのに使用される。この目的のために(0.3mmの厚さで)25g/m2の単位面積重量、127パスカルの流抵抗での4,250リットル・m-2・s-2の空気透過率を有する支持層が、接着剤塗布された本願発明によって製造された活性炭小球が180g/m2の付加量でそれに適用され、且つ前記吸着層が、第2の支持層と共に前記支持層から離れた側に設けられる。その結果、355g/m2の全体にわたる単位面積重量及び0.9mmの全体にわたる厚さ(断面)を有し、127パスカルの流抵抗での680リットル・m-2・s-2の空気透過率を有する吸着フィルタ材料を生じる。
【0053】
比較材料は、吸着層が本願発明によって製造された活性炭の2倍の銀イオン願流量を有する後工程で浸漬した比較活性炭によって形成されるという相違点を有する同じように構成された吸着フィルタ材料である。
【0054】
本願発明の活性炭で製造された吸着フィルタ材料及び後工程で浸漬された活性炭で製造された比較吸着フィルタ材料は、CRDEC−SP−84010方法2.2の慣用の流テストが施され、マスタードガス及びソマンに関するそれぞれのバリヤ効果が測定される。この目的のために、マスタードガス又はソマンを含む空気流は、約0.45cm/sの流速及び吸着フィルタ材料に対する定流抵抗で流されると共に、16時間後の面積特定漏出量を測定する(80%相対湿度、32℃、10・1マイクロリットルHD/12.56cm2又は12・1マイクロリットルGD/12.56cm2)。
【0055】
本願発明によって製造された活性炭を具備する吸着フィルタ材料は、マスタードガスに関して1.55μg/cm2又は1.98μg/cm2、ソマンに関して1.85μg/cm2又は1.66μg/cm2の漏出量を有し、これに対して、後工程での浸漬された活性炭を具備する吸着フィルタ材料は、マスタードガス及びソマンの両方に関して、受け入れることのできない5μg/cm2以上の明らかに高い値を有することが測定された。
【0056】
微生物に対する防護効果の関する本願発明によって製造された活性炭を具備する吸着フィルタ材料のテストは、同様又はすばらしい結果を与えた。肺炎桿菌又は病原ブドウ球菌でのASTM E2149−01(各々の場合、1.5〜3.0・10CFU/ミリリットル)に対する生物学的特性をチェックするためのテストにおいて、24時間後のこれらの病原体に関するパーセンテージ減少は、本願発明によって製造された活性炭を具備する吸着フィルタ材料に関して両方の場合で99%以上であると共に、後工程で浸漬される活性炭を具備する比較材料の場合には、それぞれの場合で、70%及び75%の値であった。これは、本願発明によって製造される活性炭の存在による生物学的防護が、改善されたことを示している。
【0057】
上記テストは、後工程で浸漬される活性炭と比較して、触媒活性要素を混合する本願発明によって製造された活性炭の性能が改善されたことを証明するものである。比較の結果は、本願発明によって製造された活性炭によって得られるものであり、銀化合物に代えて、銅化合物(メタクリル酸銅)又は銅及び銀化合物の混合物(ベヘン酸銀及びメタクリル酸銅)を充填する者であっても良いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始材料としての炭素質有機ポリマーを炭化して活性化することによって、触媒活性を有する活性炭の製造方法において、
前記方法は、形成過程において、少なくとも一つの金属が、特に金属原子及び/若しくは金属イオンの形で、ポリマーに充填されて共重合された炭素質有機ポリマーが、炭化されて活性化され、金属、特に金属原子及び/若しくは金属イオンを担持した活性炭を形成することを特徴とする活性炭の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、ポリスチレンポリマー、特にポリスチレンーアクリレート共重合体及びポリスチレンージビニルベンゼン共重合体、好ましくはジビニルベンゼン架橋ポリスチレンと、ホルムアルデヒド樹脂共重合体、特にホルムアルデヒド架橋フェノール樹脂と、セルロース、特にビードセルロースと、それらの混合物とからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記金属は、ポリマーの形成過程において、重合化混合物に金属を付加することによって又は金属の存在において重合化を実行することによって共重合化されると共に、前記金属が、重合化混合物に溶解する又は少なくとも分散する金属化合物の形で使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリマーに基づいて、0.001重量%〜10重量%、特に0.005重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜3重量%の量の金属を含むと共に、前記金属は、銅、銀、カドミウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、亜鉛、水銀、チタン、ジルコニウム及び/若しくはアルミニウム及びそれらのイオン、塩及びそれぞれの混合物からなる群から選択され、好ましくは銅及び銀及びそれらのイオン、塩及びその混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の活性炭の製造方法。
【請求項5】
前記炭化は、200℃〜900℃、好ましくは250℃〜850℃の温度で、特に優れた不活性雰囲気下において実行されること、及び前記活性化は、800℃〜1,200℃、好ましくは850℃〜950℃の温度で、不活性又は少量の酸素含有雰囲気下で、特に水蒸気の存在下で実行されること、特に、前記炭化及び/若しくは活性化が、回転チューブにおいて又は流動床において、特に流動床において実行されることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の活性炭の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の活性炭の製造方法によって製造された粒状、特に小球状の活性炭。
【請求項7】
少なくとも500m2/g、特に少なくとも750m2/g、好ましくは少なくとも1,000m2/g、より好ましくは少なくとも1,200m2/g、特に500〜2,500m2/gの範囲内、特に好ましくは750〜2,250m2/gの範囲内、より好ましくは900〜2,000m2/gの範囲内、最も好ましくは1,000〜1,750m2/gの内部表面積(BET表面積)を有すること、及び/若しくは、活性炭粒子当たり、特に活性炭粒又は活性炭小球当たり少なくとも2N、特には少なくとも5N、好ましくは2Nから20Nの範囲内、より好ましくは5Nから20Nの範囲内の破裂圧力を有することを特徴とする請求項6記載の活性炭。
【請求項8】
吸着シート状フィルタ、フィルタマット、消臭フィルタ、特に民間用及び/若しくは軍事用の防護服用シートフィルタ、室内空気浄化用フィルタ、ガスマスクフィルタ及び吸着可能支持構造体のような吸着材料用、又は、防護材料、兵器剤のような折物学的及び/若しくは化学的毒物に対する防護服若しくは他の防護衣料品用、又は、フィルタ、特に有毒物、有害物及び/若しくは悪臭物質を空気又はガス流から排除するためにフィルタ用の吸着材料を製造するために、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法によって得られた活性炭の使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法によって得られた活性炭を有するフィルタであって、吸着シート状フィルタ、消臭フィルタ、生物学的及び/若しくは化学的毒物に対する防護服又は他の防護衣料品のような民間用若しくは軍事用の防護服用シートフィルタ、室内空気浄化用フィルタ、ガスマスクフィルタ、空気又はガス流から有毒物、有害物又は悪臭物質を除去するためにフィルタ、及び吸着可能支持構造体などのフィルタである吸着材料。

【公開番号】特開2007−169152(P2007−169152A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339878(P2006−339878)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(505065467)ブリュッヒャー ゲーエムベーハー (27)
【Fターム(参考)】