説明

触媒系水処理方法及び装置

本発明は、水を処理するための方法、装置、及びシステムに関する。上記方法、装置及びシステムは、支持材料と結合した、種々の水処理剤用いて、可溶化された水硬度を減少させる。本発明はまた、処理された水を、例えば、清浄又は食品加工用途において用いる方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性システム、すなわち、水源又は水流を処理するための方法及びデバイスに関する。特に、本発明は、支持材料と結合した、種々の水処理剤を用いて、可溶化される水硬度を下げるための方法及びデバイスを提供する。また、湯垢の形成を抑制又は下げるための方法が提供される。本発明はまた、例えば、清浄工程において、処理された水を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水における、硬度の水準は、複数のシステムにおいて、有害に作用する場合がある。例えば、単体で、又は清浄組成物とともに、硬水がある表面と接触すると、接触された表面に硬水垢の沈殿を生じさせる場合がある。一般に、硬水は、炭酸カルシウムのppm単位において表現される、約100ppm超のカルシウム及びマグネシウムイオンの総濃度を有する水を指す。多くは、硬水中のカルシウム:マグネシウムのモル比は、約2:1又は約3:2である。大部分の場所は、硬水を有するが、水硬度は、ある場所から別の場所で変化する傾向がある。
【0003】
水硬度は、複数の方式において扱われている。水を軟化させるために現在用いられている方法の1つは、例えば、水軟化ユニット内の樹脂床に結合したナトリウムで、水中のカルシウム及びマグネシウムイオンを交換することによる、イオン交換を経由する。カルシウム及びマグネシウムは、軟化剤内の樹脂に付着する。上記樹脂が飽和すると、水に溶解させた大量の塩化ナトリウムを用いて、それを再生させる必要がある。ナトリウムが、カルシウム及びマグネシウムを置換し、添加された塩化ナトリウムのクロリドとともに、塩水溶液内にフラッシュされる。硬水軟化剤が再生すると、それらは、大量の、塩化物と、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウム塩を含む塩とを含む廃棄物流を生成し、システム、例えば、それらが処理される下水システム(複数の下流の水再使用用途、例えば、飲用水使用及び農業を含む)に負荷をかける。さらに、従来の硬水軟化剤は、廃棄された地上水において、塩含有量を増大させ、一定の場所において、環境上の課題となっている。従って、大量の塩化ナトリウムを用いない、水硬度を取り扱う方法が必要である。
【0004】
硬水はまた、例えば、表面に膜を形成し、そして洗浄剤の成分と反応することにより、洗浄剤の効力を減少させ、洗浄剤を、洗浄工程において機能的でなくすことが知られている。これを無効にするための方法の1つには、硬度を取り扱うために十分な量の硬水と混合すべきことを目的としたキレート剤又は金属イオン封鎖剤を、洗浄性組成物に添加することが含まれる。いくつかの例では、キレート化剤及び金属イオン封鎖剤(例えば、ホスフェート及びNTA)は、環境又は健康上の問題を生じさせうることが見いだされた。しかし、多くの例では、水硬度は、上記組成物のキレート化容量を上回る。結果として、遊離のカルシウムイオンが生じ、上記組成物の活性成分を浸食し、腐食又は沈殿を生じ、又は他の有害な効果、例えば、乏しい洗浄作用又は水垢(lime scale)形成を生じさせる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの態様では、本発明は、水を処理するための装置を提供する。上記装置には、水源を処理リザーバに供給するための注入口が含まれる。1種又は2種以上の触媒が、上記処理リザーバ内部に配置される。上記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含む。上記水処理剤は、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン及びそれらの混合物の供給源から成る群から選択される。上記装置はまた、処理された水を上記リザーバから供給するための放出口を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、上記装置は、洗浄システム内に配置される。例えば、いくつかの実施形態では、上記装置は、自動製品洗浄機又は食器洗い機、自動乗物洗浄システム、機器(instrument)洗浄機、定位置清浄システム、食品加工清浄システム、ボトル洗浄機、自動洗濯洗浄機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される自動洗浄システムに配置される。上記装置は、いくつかの実施形態では、洗浄機器に供給する水線の上流に配置されうる。
【0007】
他の態様では、本発明は、水源を処理する方法に関する。上記方法には、水源を触媒と接触させることが含まれる。上記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含み、上記水処理剤は、水が処理されるような、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン及びそれらの混合物の供給源から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、上記処理された水は、実質的に低い、可溶化された水硬度を有する。いくつかの実施形態では、接触させるステップは、水源を、上記触媒に通すことを含むことができる。
【0008】
他の態様では、本発明は、製品を清浄するために、処理された水源を用いる方法に関する。上記方法は、水源を、触媒で処理することを含む。上記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含み、上記水処理剤は、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン及びそれらの混合物の供給源から成る群から選択される。処理された水及び洗浄剤を用いて、使用溶液が形成される;そして、製品が清浄されるように、上記製品を、上記使用溶液に接触させる。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、食品加工流を処理するための方法に関する。上記方法は、食品加工流を、触媒と接触させることを含む。上記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含み、上記水処理剤は、上記食品加工流が処理されるように、マグネシウムイオンの供給源を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従う、水を処理する際に用いるための装置の概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従う、可溶化された水硬度を下げるように処理された水の中で洗浄された試験ガラスの写真である。
【図3A】図3Aは、ビルダー及びすすぎ助剤を用いない洗浄剤において、非処理の水で洗浄した試験ガラスの写真である。
【図3B】図3Bは、ビルダー及びすすぎ助剤を用いた、用いない洗浄剤において、本発明の実施形態に従う、可溶化された水硬度を下げるように処理された水で洗浄した試験ガラスの写真である。
【図3C】図3Cは、ビルダー及びすすぎ助剤を用いた洗浄剤において、そして非処理の水を用いて洗浄した試験ガラスの写真である。
【図3D】図3Dは、ビルダー及びすすぎ助剤を用いた洗浄剤において、本発明の実施形態に従う、可溶化された水硬度を下げるように処理された水を用いて洗浄された試験ガラスの写真である。
【図4A】図4Aは、非処理の水、カルシウム結合樹脂で処理された水、マグネシウム結合樹脂で処理された水、及び水素結合樹脂で処理された水を用いて洗浄された試験ガラスの写真である。
【図4B】図4Bは、非処理の水、カルシウム結合樹脂で処理された水、マグネシウム結合樹脂で処理された水、及び水素結合樹脂で処理された水を用いて洗浄された試験ガラスの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、可溶化された水硬度が抑制され、そして/又は減少するように、水を処理するための装置及び方法に関する。いくつかの実施形態では、可溶化されたカルシウム部分の水硬度が、減少する。いくつかの態様では、水処理剤が樹脂に結合し、そして水を処理するために用いられる。いくつかの実施形態では、上記水処理剤はマグネシウムであり、そして上記樹脂は、弱酸カチオン樹脂である。
【0012】
本発明の方法に従って処理された水は、それらに限定されるものではないが、硬水が汚染を生じさせた汚染及び水垢の面積の減少、水垢形成からの装置(例えば、産業用装置)の保護、一般的な洗浄性組成物とともに使用した場合の、高い清浄効力、及び特定の化学物質の必要性の減少、例えば、下流の清浄工程における、しきい値剤(threshold agent)、キレート剤、若しくは金属イオン封鎖剤、又はリンを含むものを含む、複数の有益な効果を有する。
【0013】
いくつかの態様では、本発明は、水を処理するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、可溶化されたカルシウム部分の水硬度が、減少する。いくつかの実施形態では、水を、水処理剤を含む触媒と接触させる。他の態様では、本発明は、水性システム内で水垢の形成を抑制又は減少させるための方法を提供し、水性システムを、支持体材料に結合した1種又は2種以上の水処理剤を含む触媒、及び/又は結合していない転換薬剤と接触させることを含む。
本発明が、より簡易に理解されることができるように、最初に、一定の用語を規定する。
【0014】
本明細書において、用語「ビルダー」「キレート剤」及び「金属イオン封鎖剤」は、特定のモル比において、硬水イオン(洗浄水から、汚染及び基材が洗浄される)と錯体(可溶性又は非可溶性)を形成する化合物を指す。キレート剤は、トリポリリン酸ナトリウム、EDTA、DTPA、NTA、クエン酸塩等を含む水溶性錯体を形成することができる。金属イオン封鎖剤は、リン酸ナトリウム、ゼオライトA等を含む不溶性錯体を形成することができる。本明細書において、用語「ビルダー」、「キレート剤」及び「金属イオン封鎖剤」は、同義である。
【0015】
本明細書において、用語「キレート剤を含まない」又は「キレート剤を実質的に含まない」は、キレート剤、ビルダー、又は金属イオン封鎖剤を含まないか、あるいは限られた量のキレート剤、ビルダー、又は金属イオン封鎖剤が添加された、組成物、混合物又は材料を指す。キレート剤、ビルダー、又は金属イオン封鎖剤が存在すべきであり、キレート剤、ビルダー、又は金属イオン封鎖剤の量は、約7質量%未満であるべきである。いくつかの実施形態では、キレート剤、ビルダー、又は金属イオン封鎖剤の量は、約2質量%未満、約0.5質量%未満、又は約0.1質量%未満である。
【0016】
本明細書において、用語「効果的な量のキレート剤を欠く」は、水の硬度に明確に影響を与えるために、少なすぎるキレート剤、ビルダー、又は金属イオン封鎖剤を含む組成物、混合物又は材料を指す。
本明細書において、用語「可溶化された水硬度」は、水性システム又は水源に、イオン状態、すなわち、Ca++及びMg++で溶解している鉱物硬度を指す。可溶化された水硬度は、それらが、沈殿した状態である場合、すなわち、水中のカルシウム及びマグネシウムの種々の化合物の溶解限度が限界を超え、そしてそれらの化合物が、種々の塩、例えば、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムとして沈殿した場合には、硬度イオンを指さない。
【0017】
本明細書において、用語「水溶性」は、1質量%超の濃度で、水に溶解することができる化合物を指す。
本明細書において、用語「わずかに可溶性」又は「わずかに水溶性」は、0.1〜1.0質量%の濃度で溶解することができる化合物を指す。
【0018】
本明細書において、用語「実質的に水不溶性」又は「水不溶性」は、0.1質量%未満の濃度でのみ、水に溶解することができる化合物を指す。例えば、酸化マグネシウムは、冷水に約0.00062の水溶性(質量%)、そして温水に約0.00860の水溶性(質量%)を有すると、不溶性とみなされる。本発明の方法に用いるための他の不溶性化合物は、例えば:冷水に0.00090の水溶性を有し、そして温水に0.00400の水溶性を有する水酸化マグネシウム;冷水に0.00153の水溶性を有し、そして温水に0.00190の水溶性を有するアラゴナイト;及び冷水に0.00140の水溶性を有し、そして温水に0.00180の水溶性を有するカルサイトを含む。
【0019】
本明細書において、用語「しきい値剤」は、溶液から、硬水イオンの晶出を抑制するが、硬水イオンと特定の錯体を形成する必要のない化合物を指す。これにより、しきい値剤が、キレート剤又は金属イオン封鎖剤から区別される。しきい値剤には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、オレフィン/マレイン酸のコポリマー等が含まれる。
【0020】
本明細書において、用語「しきい値剤を含まない」又は「しきい値剤を実質的に含まない」は、しきい値剤を含まない、又は限られた量のしきい値剤が添加されている組成物、混合物、又は材料を指す。しきい値剤は存在すべきであり、しきい値剤の量は、約7質量%未満であるべきである。いくつかの実施形態では、しきい値剤の量は、約2質量%未満である。他の実施形態では、しきい値剤の量は、約0.5質量%未満である。さらに他の実施形態では、しきい値剤の量は、約0.1質量%未満である。
【0021】
本明細書において、用語「再付着防止剤」は、汚染組成物を清浄すべき物体に再堆積させず、汚染組成物を水中に浮遊させることを手助けする化合物を指す。
【0022】
本明細書において、用語「ホスフェートを含まない」又は「ホスフェートを実質的に含まない」は、ホスフェート又はホスフェート含有化合物を含まないか、あるいはホスフェート又はホスフェート含有化合物が添加されていない、組成物、混合物又は材料を指す。ホスフェート又はホスフェート含有化合物は、ホスフェートを含まない組成物、混合物又は材料の汚染を介して存在し、ホスフェートの量は、約1.0質量%未満であるべきである。いくつかの実施形態では、ホスフェートの量は、約0.5質量%未満である。他の実施形態では、ホスフェートの量は、約0.1質量%未満である。さらに他の実施形態では、ホスフェートの量は、約0.01質量%未満である。
【0023】
本明細書において、用語「リンを含まない」又は「リンを実質的に含まない」は、リン又はリン含有化合物を含まない、あるいはリン又はリン含有化合物が添加されていない組成物、混合物又は材料を指す。リン又はリン含有化合物は、リンを含まない組成物、混合物、又は材料の汚染を介して存在し、リンの量は、約1.0質量%未満であるべきである。いくつかの実施形態では、リンの量は、約0.5質量%未満である。他の実施形態では、リンの量は、約0.1質量%未満である。さらに他の実施形態では、リンの量は、約0.01質量%未満である。
【0024】
「清浄」は、汚染除去、漂白、微生物個体群減少、又はそれらの組み合わせを実施するか、又はそれらの助力をすることを意味する。
本明細書において、用語「製品」は、商品、例えば、食器及び調理具及び皿、並びに他の硬質表面、例えば、シャワー、シンク、便器、バスタブ、カウンター、窓、ミラー、輸送用車両、及び床を指す。本明細書において、用語「製品洗浄」は、製品を洗浄すること、清浄すること、又はすすぐことを指す。
【0025】
本明細書において、用語「硬質表面」は、シャワー、シンク、便器、バスタブ、カウンター、窓、ミラー、輸送用車両、床等を含む。
【0026】
本明細書において、フレーズ「ヘルスケア表面」は、ヘルスケア活動の一部として用いられている機器、デバイス、カート、ケージ、家具、構造物、建築物等の表面を指す。ヘルスケア表面の例には、医療機器又は歯科医療機器の表面、医療用機器又は歯科医用機器の表面、オートクレーブ及び滅菌器の表面、患者の健康をモニタリングするために用いられる電子装置の表面、及び床、壁、又はヘルスケアが行われる構造物の固定物の表面が含まれる。ヘルスケア表面は、病院、手術室、医務室(infirmity room)、分娩室、霊安室、及び臨床診断室に見いだされる。これらの表面は、「硬質表面」(例えば、壁、床、おまる等)、又は布帛表面、例えば、編物、織物、及び不織布表面(例えば、手術用衣服、ドラペリー(draperies)、シーツ及び枕カバー、包帯等)、又は患者管理機器(例えば、人工呼吸器、診断機器、シャント、ボディースコープ、車いす、ベッド等)、又は手術用及び診断機器として典型化されるものであることができる。ヘルスケア表面には、動物のヘルスケアに用いられる製品及び表面が含まれる。
【0027】
本明細書において、用語「機器」は、本発明の方法に従って処理された水を用いて、清浄の利益を受けることができる、種々の医療機器若しくは歯科医療機器又は医療デバイス若しくは歯科医療デバイスを指す。
【0028】
本明細書において、フレーズ「医療機器(instrument)」、「歯科医療機器(instrument)」、「医療デバイス」、「歯科医療デバイス」、「医療機器(equipment)」又は「歯科医療機器(equipment)」は、薬又は歯科学に用いられる機器(instrument)、デバイス、ツール、アプライアンス、装置、及び機器(equipment)を指す。上記機器(instrument)、デバイス、及び機器(equipment)は、冷却殺菌され、浸漬され、又は洗浄され、次いで、加熱殺菌され、あるいは清浄の利益を受ける(本発明に従って処理された水を用いる)。これらの種々の機器(instrument)、デバイス及び機器(equipment)には、診断機器(instrument)、トレイ、パン、ホルダー、ラック、鉗子、はさみ、大ばさみ、のこぎり(例えば、骨用のこぎり及びそれらのブレード)、止血鉗子、ナイフ、のみ、骨鉗子、やすり(file)、ニッパー、ドリル、ドリル用ビット、削り具、バリ(burr)、スプレッダー、ブレーカー(breaker)、エレベーター(elevator)、クランプ、ニードルホルダー、キャリア、クリップ、フック、グージ(gouge)、キューレット、レトラクター、ストライナー(straightener)、パンチ、抽出器、しゃくし、角膜切開刀(keratome)、スパチュラ、エクスプレッサー(expressor)、套管針、拡張器、ケージ、ガラス器具、チューブ、カテーテル、カニューレ、プラグ、ステント、スコープ(例えば、内視鏡、聴診器、及び関節鏡(arthoscope))及び関連機器等、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、用語「洗濯物」は、織物及び不織布、及びテキスタイルに言及する。例えば、洗濯物は、衣類、寝具、タオル等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、用語「水源」は、本発明の方法、システム及び装置とともに用いることができる水の供給源を指す。本発明において用いるために好適な、例示的な水源には、地方自治体の水源、又は私設の水システムからの水、例えば、公共水道又は井戸が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記水は、水道水、井戸水、地方自治体の水システムにより供給された水、私設の水システムから供給された水、及び/又は上記システム又は井戸からの直接の水であることができる。上記水はまた、用いられている水リザーバからの水、例えば、再利用される水の貯蔵のために用いられる再利用リザーバ、貯蔵槽、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、上記水源は、産業用プロセス水でない、例えば、ビチューメン回収操作から生成した水である。他の実施形態では、上記水源は、排水流ではない。
【0031】
本発明の方法、システム、装置及び組成物は、本発明の成分及び材料、並びに本明細書に記載される他の材料を含む、から本質的になる、又はから成ることができる。本明細書において、「から本質的に成る」は、上記方法、システム、装置及び組成物が、追加のステップ、成分又は材料が、特許請求の範囲に規定される方法、システム、装置及び組成物の基本且つ新規な特徴を実質的に変化させない場合にのみ、追加のステップ、成分、又は材料を含むことができることを意味する。
【0032】
本明細書において、「質量%」、「質量%(wt−%)」、「質量%(percent by weight)」、「質量%(% by weight)」、及びそれらの変形は、物質の質量を、組成物の総質量で除し、そして100を乗じたものとしての、物質の濃度を指す。本明細書において、「パーセント」、「%」等は、「質量%」、「質量%(wt−%)」等と同義であることを意図する。
【0033】
本明細書において、用語「約(about)」又は「約(approximately)」は、例えば、現実の世界における使用溶液又は濃縮物を製造するために用いられる液体取扱い手順及び典型的な評価を介して;これらの手順における不注意による誤りを介して;上記方法を実施するか、又は上記組成物を製造するために用いられる材料の製造、供給源又は純度における相違を介して生じうる数量の変動を指す。用語「約」はまた、特定の初期混合物から生じる、組成物に関する異なる平衡条件のために異なる量を包含する。用語「約」により改変されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、均等の量を含む。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容物がそれ以外を明示的に示さない限り、複数形の指示物を含むことに留意すべきである。従って、例えば、「化合物」を含む組成物への参照は、2種又は3種以上の化合物の混合物を含む。また、用語「又は」は、内容物がそれ以外を明示的に示さない限り、「及び/又は」を含むその意味において用いられるのが一般的である。
【0035】
[水硬度/水源]
いくつかの態様では、本発明の装置及び方法は、上記水源において可溶化された水硬度が制御及び/又は減少するように、水源を処理するために用いられる。処理される水源は、本発明の方法に従う処理により利益を受けるであろう硬度を有する、任意の水の供給源であることができる。本発明の方法を用いて処理するために好適な、例示的な水源には、通常の水道水、例えば、地方自治体の水源又は私設の水システムからの水、例えば、公共水道又は井戸が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記水は、水道水、井戸水、地方自治体の水システムにより供給された水、私設の水システムから供給された水、及び/又は上記システム又は井戸からの直接の水であることができる。いくつかの実施形態では、上記水源は、産業用プロセス水でない、例えば、ビチューメン回収操作から生成した水である。他の実施形態では、上記水源は、排水流ではない。
【0036】
本発明の装置、システム及び方法は、可溶化された水の硬度が制御されるように、水源を処理することを含む。いくつかの態様では、可溶化された水の硬度を減少させる。いくつかの態様では、本発明は、水性システムにおける、水垢の形成を減少又は抑制させるための方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、水性システム、すなわち、水源を、樹脂に結合させた、1種又は2種以上の水処理剤、及び/又は結合していない転換薬剤と接触させる。特定の理論に結びつけられることを望まないが、上記水処理剤が、カルシウム硬水イオンを水に可溶化させ、溶液からの界面反応を経由して、熱力学的に有利な結晶形、カルサイトではなく、熱力学的に不利である結晶形、アラゴナイトにおける炭酸カルシウムとして、実質的に沈殿させると考えられる。アラゴナイトは、表面に良好に結合しない脆い結晶であり、そして硬水垢を形成しないが、カルサイトは、表面と堅く結合するより丈夫な結晶であり、アラゴナイトでは見られない硬水垢を形成する。従って、本発明の水処理剤と接触させることにより、処理された水の可溶化された水硬度が減少し、そして処理された水と接触する表面の水垢の形成が減少する。アラゴナイト結晶はまた、上記水処理剤と接触した後、可溶化するカルシウムをさらに減少させるためのシード結晶として作用することができる。
【0038】
本発明の方法は、水垢の形成物を除去するか、又は水垢の形成を予防するために特に有効であり、上記水垢は、カルシウム塩、例えば、リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム又はケイ酸カルシウムを含む。本発明により予防又は除去されることを意図する水垢は、上述のイオンを組み合わせることにより形成されうる。例えば、上記水垢は、炭酸カルシウム及び重炭酸カルシウムの組み合わせを含む場合がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、上記水源は、本発明の方法、装置、又はシステムを用いた処理の前に、約6〜約11のpHを有する。いくつかの実施形態では、処理の前の上記水源のpHは、約8超である。いくつかの実施形態では、上記水源のpHは、処理の前に、9超まで上昇し、そしていくつかの実施形態では、上記pHは、処理の前に、10超である。いくつかの実施形態では、例えば、アルカリ性化学物質を、原材料に注入することにより、又は自己緩衝アルカリ源(例えば、MgO又はカルサイト)を、上記水源に適用することにより、上記触媒と接触させる前に、上記水源のpHを上げる。いくつかの実施形態では、上記水源は、上記触媒を用いた処理の前に、約9超のpHを有し、そして沈殿は、濾過する必要がない。というのは、大きな綿状の沈殿(precipitant)の形成が避けられるからである。例えば、200ppm超の炭酸ナトリウム(例えば、最大約5,000ppm)を、処理された水源に添加し、pHを約10超に上げることができ、そして処理された水は、濾過する必要がないであろう。
【0040】
[触媒]
本発明の実施形態は、支持媒体を含む触媒、及び支持媒体に結合された水処理剤を含む。上記水処理剤は、上記支持媒体にイオン結合するか、又は物理的に結合することができる。上記触媒は、処理リザーバ内に含まれうる。いくつかの実施形態では、上記触媒は、支持媒体に結合していない、追加の機能性材料を含む。さらなる実施形態では、上記触媒は、支持媒体に結合した、1種又は2種以上の水処理剤と、支持媒体に結合していない、1種又は2種以上の追加の機能性材料とを含む。
【0041】
本明細書において、用語「水処理剤」は、可溶化したカルシウムを水中に生じさせ、熱力学的に有利な結晶形、カルサイトではなく、熱力学的に不利である結晶形、アラゴナイトであると考えられる形態における炭酸カルシウムとして、溶液から、実質的に沈殿させる種を指す。アラゴナイトは、表面に良好に結合しない脆い結晶であり、そして硬水垢を形成しないが、カルサイトは、表面と堅く結合するより丈夫な結晶であり、アラゴナイトでは見られない硬水垢を形成する。
【0042】
本発明の方法及び装置とともに用いるために好適な水処理剤には、マグネシウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、チタンイオン、及び亜鉛イオン及びカルシウム多形体の供給源が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の方法及び装置とともに用いるために好適な水処理剤は、アルミニウム、亜鉛及び/又はチタンイオンを含まない。1種又は2種以上の水処理剤を用いることができる。いくつかの実施形態では、上記水処理剤は、マグネシウム、アルミニウム、及びチタンイオン及びカルシウムの多形体の供給源から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、上記水処理剤は、マグネシウムイオンの供給源のみを含む。
【0043】
理論に結びつけられることを意図しないが、上記水処理剤は、核形成種として作用することにより触媒として作用し、水から、アラゴナイトの形態の炭酸カルシウムを析出させると考えられる。上記水処理剤は、現行の水処理システムにおけるような、上記樹脂を、新しい水処理剤で再充填することを要求するイオン交換を受けない。むしろ、上記水処理剤は、上記触媒と隣接し続け、そして長期間置換する必要なく、炭酸カルシウムの堆積を促進し続ける。アラゴナイトは、上記樹脂システムの表面に析出するので、それにより、アラゴナイトのさらなる沈殿が促進される。上記樹脂カラムが攪拌されるので、アラゴナイト結晶の一部が上記樹脂システムの表面で破壊され、そして析出した種結晶として、水に再度混合される。このプロセスは、定常状態に達するので、結晶化の速度は、表面からの除去の速度に等しくなる。
【0044】
継続する実験により、上記触媒は、失敗なく、樹脂1ポンド当たり、25,000ガロンの水を処理した後に機能し続けることが示された。実際には、上記触媒の寿命は、上記水の中の汚染物質の存在及び水の状態によって決まるであろう。平均的な水の状態では、上記触媒は、1年又は2年持続するであろう。一方、非常に良好な水条件又は水使用の割合が少ない場合には、上記触媒は、5年又は10年持続するであろう。いくつかの実施形態では、水処理剤と接触させた水は、上記水処理剤と異なるカチオンを含む沈殿を形成する。例えば、いくつかの実施形態では、上記水処理剤は、マグネシウムイオンの供給源を含み、そして形成された沈殿は、カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、水処理剤と接触した水が、カルシウム沈殿物を形成する。本発明の方法を用いて形成したカルシウム沈殿物は、沈殿(例えば、アラゴナイト結晶)が、上記水源を通って、害なく流れるようになる。すなわち、いくつかの実施形態では、一般的な水処理システムと異なり、処理された水から沈殿を濾過又は除去する必要がない。
【0045】
上記触媒は、追加の機能性材料をさらに含むことができる。本発明の方法とともに用いるために好適な追加の機能性材料は、上記触媒、処理すべき水源、又はそれらの任意の組み合わせに有益な特性を与える任意の材料を含む。例えば、水源と接触すると、触媒の「接合」、すなわち、粒子の凝集を予防することを助力する機能性材料を添加することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の触媒は、1種又は2種以上の追加の機能性材料、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸カルシウムの多形体(非カルサイト形態)、並びにそれらの組み合わせ及び混合物をさらに含むが、それらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、上記追加の材料は、例えば、1種又は2種以上の金属酸化物、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及び酸化チタンを含む。炭酸カルシウムの多形体、例えば、アラゴナイトもまた、本発明の実施態様において用いることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、用いられる追加の機能性材料には、金属酸化物及び金属水酸化物の組み合わせ、例えば、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムが含まれる。上記追加の材料は、本発明の方法とともに用いるために好適な任意の形態、例えば、固体、粒子、液体、粉末、ナノ粒子、スラリーであることができる。いくつかの実施形態では、追加の機能性材料の固体源が用いられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、上記触媒は、支持媒体に結合した水処理剤と、結合していない追加の機能性材料との組み合わせを含む。例えば、実施形態の1つでは、上記触媒は、支持媒体に結合したマグネシウム、及び結合していない追加の材料、例えば、酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、結合した水処理剤及び結合していない追加の材料が、共に物理的に存在する、例えば、同一の処理リザーバに混合され、又は同一の処理リザーバ内の別個の層として存在する。他の実施形態では、結合した水処理剤及び結合していない追加の材料が、分離されている、例えば、直列で操作される、異なる処理リザーバ内に分離されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記追加の機能性材料は、カルシウム及びマグネシウムイオンの混合されたカチオン化合物を含む。いくつかの実施形態では、上記追加の機能性材料には、カルシウムマグネシウムカーボネート、苦灰石の名称により知られているいくつかの天然鉱物が含まれる。いくつかの実施形態では、1種又は2種以上の追加の機能性材料が、支持材料と結合している。
【0050】
[支持材料]
いくつかの態様では、本発明とともに用いるための触媒は、支持材料を含む。上記支持材料は、水処理剤が結合しうる任意の材料であることができる。いくつかの実施形態では、上記触媒は、1種超の支持材料を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、上記支持材料は、上記支持材料の流動化及び/又は攪拌を最大化するために、水の密度よりもわずかに高い密度を有する。いくつかの実施形態では、上記支持材料は、イオン又は静電気力によりカチオンを結合する。いくつかの実施形態では、結合されたカチオンは、マグネシウムである。いくつかの実施形態では、上記支持材料は、不活性である。
【0052】
いくつかの実施形態では、上記水処理剤は、樹脂を含む。いくつかの実施形態では、上記支持材料は、カルシウムイオンと結合するよりも優先的にマグネシウムイオンと結合することができる樹脂である。支持材料として用いるための樹脂には、イオン交換樹脂が含まれうる。例えば、いくつかの実施形態では、上記樹脂は、酸カチオン交換樹脂、例えば、弱酸カチオン交換樹脂、又は強酸カチオン交換樹脂を含む。他の実施形態では、上記支持材料は、キレート樹脂である。
【0053】
いくつかの実施形態では、上記樹脂は、アクリル酸ポリマー又はメタクリル酸ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、上記支持材料は、無機物ではない。いくつかの実施形態では、上記支持材料は、スルホン酸置換基を有するポリマーを含む。例えば、いくつかの実施形態では、上記支持材料は、セラミック材料、及び/又はゼオライトを含まない。
上記支持材料は、ビーズ、シート、ロッド、ディスク、又は1つ超の形状の組み合わせを含む、任意の形状及びサイズで供給されうる。
【0054】
種々の手段により、上記水処理剤を支持体と結合することができる。例えば、上記樹脂は、イオン交換機構により、マグネシウム樹脂を充填することができる。2ステッププロセスでは、酸樹脂上の水素を、最初に、ナトリウムと交換し、次いで、最後に、上記水処理剤の塩を用いて、最終カチオンと交換する。例えば、いくつかの実施形態では、マグネシウムが結合した樹脂触媒を、活性位置、例えば、カルボン酸基と結合したH+イオンを有する弱酸カチオン交換樹脂から形成することができる。弱酸カチオン交換樹脂を、最初に、例えば、上記樹脂を、過剰量の水酸化ナトリウムに4〜12時間浸漬し、次いで水ですすぐことにより、ナトリウム形態に転換させ、次いで、ナトリウム形態を、例えば、可溶性マグネシウム塩、例えば、MgCl2及びMgSO4を用いて、マグネシウム形態に転換することができる。
【0055】
あるいは、上記水処理剤を、1ステッププロセスを用いて、上記支持材料と結合することができる。いくつかの実施形態では、マグネシウムを、酸樹脂の表面の水素と直接交換することができる。例えば、上記樹脂を、過剰量のマグネシウム塩、例えば、MgCl2又はMgSO4に、十分な時間、例えば、4〜12時間浸漬し、次いで、水ですすぐことができる。用いることができる可溶性のマグネシウム塩には、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムが含まれる。他の実施形態では、弱酸カチオン交換樹脂を、低溶解性マグネシウム源、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムを用いて、マグネシウム形態に転換することができる。例えば、MgOを、樹脂を含む装置に添加し、そして上記樹脂と混合するか、又は装置の別個の前調製段階として用いることができる。いくつかの実施形態では、MgO又はMgOHを用いた1ステッププロセスを用いて、マグネシウムを、上記支持材料と結合させ、そして残余のMgO又はMgOHが表面に残り、そこでは、それらが、上記触媒の水処理活性を強化することができる。
【0056】
他の実施形態では、上記樹脂は、活性位置に結合したH+イオンを有する弱酸カチオン交換樹脂を含む。次いで、上記樹脂は、それを水源に通すことにより中和されうる。特定の理論に結びつけられることを望まないが、上記水が、樹脂上を通ると、上記水中のカルシウム及びマグネシウムイオンが上記樹脂と結合し、それにより、中和される。
【0057】
同様の2ステップ又は1ステッププロセスを用いて、他の水処理剤、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛及びカルシウムの多形体を、上記支持材料と結合することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、マグネシウム源の層が、処理リザーバ内の中和されていない樹脂の真下に供給されることができ、水が上記リザーバを介して流れると、触媒がマグネシウム形態に転換する。例えば、上記リザーバを、最初に、マグネシウム源(可溶性又は不溶性)で満たす。未中和の樹脂を、上記マグネシウム源の頂部に添加する。上記水が、底部から上向きに、上記リザーバを通って流れると、上記水が一部のマグネシウムを拾い上げ、そしてこの材料が、上記樹脂と反応し、支持された触媒樹脂システムを形成する。
【0059】
上記水処理剤は、支持媒体にイオン結合又は物理的に結合することができる。例えば、いくつかの実施形態では、Ca2+又はMg2+が、弱酸樹脂基材との緩いイオン結合を有し、イオンがそこにイオン形態においてゆるく保持されるので、大量の活性表面領域を提供し、そしてアラゴナイトの堆積を触媒する。
【0060】
[処理リザーバ]
本発明の実施形態は、上記触媒を含む、1又は2以上の処理リザーバを含む。本発明の実施形態は、単一の処理リザーバ、平行の、1若しくは2以上の処理リザーバ、及び/又は直列の1又は2以上の処理リザーバを含む。1つ超の処理リザーバを含む実施態様において、各処理リザーバは、同一の、1若しくは2以上の触媒を含むことができ、又は異なる1若しくは2以上の触媒を含むことができる。例えば、上記水源は、同一又は異なる触媒作用、すなわち、支持材料と結合した水処理剤を含む、同一の又は別個の容器における、複数のリザーバを通すことができる。
【0061】
上記処理リザーバは、処理すべき水の体積、及び上記水を用いるために適切な形状又はサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、上記装置は、処理リザーバを含む容器を含む。上記処理リザーバは、例えば、槽、カートリッジ、種々の物理的な形状又はサイズのフィルター床、あるいはカラムであることができる。いくつかの実施形態では、上記処理リザーバは、加圧される。他の実施形態では、上記処理リザーバは、加圧されない。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態は、注水口と、放水口とを含む処理リザーバを含む。いくつかの実施形態では、上記水は、同一の開口部又はチャネルを介して、上記処理リザーバから注入され且つ放出される。いくつかの実施形態では、上記処理リザーバが、容器内に含まれる。処理すべき水が、容器の頂部又はその付近に配置された注入口を介して、上記容器に進入し、容器壁又は壁に沿って下向きに流れ、そして容器の底のところで上記処理リザーバに進入する。
【0063】
本発明の実施形態に従う、水を処理するためのシステムの例が、図1に示され、本発明の装置の概略図が、符号10で示されている。上記装置は、下記を含む:水源を処理リザーバ14に供給するための注入口12;水処理剤16を含む処理リザーバ14;上記処理リザーバから処理された水を供給するための放出口18;及び処理された水搬送ライン20。いくつかの実施形態では、処理された水搬送ライン20が、水を、選択された清浄デバイスに供給する。いくつかの実施形態では、放出口及び処理された水搬送ラインの間にフィルターがない。流れが、デバイス22を制御する、例えば、バルブ24が、処理された水搬送ライン20の中に提供され、処理された水が、選択された最終デバイス、例えば、製品洗浄機、洗濯洗浄機に流れることを制御することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、処理リザーバ全体を取り出し、そして交換することができる。他の実施形態では、上記処理リザーバは、上記処理リザーバ内に含まれる触媒を取り出し、そして交換できるように構成されうる。いくつかの実施形態では、上記処理リザーバは、支持材料(例えば、弱酸樹脂)に結合された水処理剤(例えば、マグネシウム)を含む、取り出し可能で、移動式の、交換可能なカートリッジを含む。
【0065】
いくつかの態様では、本発明は、可溶化された水硬度を減少若しくは制御し、そして/又は水垢の形成を減少させるための方法を提供し、水処理剤を含む触媒を、水源と接触させることを含む。接触のステップは、水源を、上記水処理剤を含む固体源(例えば、カラム、カートリッジ、又は槽)に通すことを含むことができるが、これらに限定されるものではない。接触時間は、種々の要因、例えば、水源のpH、水源の硬度、及び水源の温度によって決まる。
【0066】
いくつかの実施形態では、上記触媒は、攪拌された床又はカラムの状態にある。上記床又はカラムは、公知の方法、例えば、カラムを介した水の流れ、流動化、機械的攪拌又は混合、高環流洗浄、再循環、空気拡散、排出流(eductor flow)、及びそれらの組み合わせにより攪拌されうる。いくつかの実施形態では、上記触媒は、流動層、例えば、上記処理リザーバ内のカラム又はカートリッジを含む。流動化は、流体(例えば、水)が床を通過する速度を、媒体の最小流動化速度を超えるように高めることにより実施される。
【0067】
上記触媒が、炭酸カルシウムの沈殿を促進するので、炭酸カルシウムが、上記触媒と結合することができる。従って、上記触媒、例えば、床又はカラムを混合し、水源と接触した際に、「接合」、すなわち、触媒の凝集を避けることができる。上記撹拌は、沈殿剤が、上記触媒と結合することを予防することができ、そして/又は沈殿したカルシウムを、触媒から取り除くことができる。例えば、アラゴナイトが触媒上に堆積するため、触媒を攪拌すると、支持媒体のビーズ又は顆粒が、例えば、お互いに跳ね返り、及び/又は結合していない固体の転換薬剤と結合する。
【0068】
物理的な衝撃により、沈殿、例えば、アラゴナイト結晶が払い落とされる。次いで、緩い炭酸カルシウムの結晶を、処理された水と共に、上記処理リザーバを通過させ、そして放出する。この方式では、触媒の攪拌が、それを自浄させ、触媒を暴露させ、そしてそれを連続する核とさせ、そして水源から炭酸カルシウムを析出させることができる。本発明の実施形態に従う触媒は、例えば、皿洗い機(dishmachine)内部において、900回の連続皿洗い機サイクルにおいて水を処理するために用いられた後でさえ、超硬水(例えば、17グレーンの水)に対して良好に実施し続けることができる一方で、非処理のものは、顕著な水垢の堆積が生じた。
【0069】
上記結晶は、サイズが非常に小さく、不活性であり、そして非反応性であり、そして表面に固着しない。例えば、本発明の実施形態に従って形成されたアラゴナイト結晶は、約10nm〜1000nmのサイズであることができる。上記結晶が不活性であり且つサイズが小さいので、沈降した炭酸カルシウムは、処理された水から濾過又は除去される必要がない。むしろ、炭酸カルシウムの沈殿した結晶を含む、処理された水を、下流の用途に用いることができる。
【0070】
上記処理リザーバは、少量の飲料精製プロセスにおいて用いられるような、小さいもの、例えば、キャニスターフィルター型容器であることができる容器内に含まれうる。あるいは、上記容器は、大きいもの、例えば、家庭の水全体の軟化において用いられるような、大型の水処理槽であることができる。
【0071】
水が、処理リザーバを通過するので、上記水処理剤が結合した樹脂が、上記水から炭酸カルシウムを核化させそして析出させることにより、上記水を処理する。いくつかの実施形態では、水の流れは、上方である。例えば、いくつかの実施形態では、上記水が、上記リザーバの底部の注入口から上記処理リザーバに進入し、上記触媒を通って上方に流れ、そして上記処理リザーバの頂部の放出口を介して、水が上記処理リザーバから排出される。
【0072】
上記処理リザーバは、水が触媒と接触するので、上記触媒の攪拌及び流動化が増すような大きさにされ且つ形状にされうる。攪拌は、沈降した炭酸カルシウムから触媒を清浄し続けるようにはたらく。いくつかの実施形態では、上記容器の体積は、用途のために十分な水のみを含むように最小化されるか、又は滞留時間が過度に短くならないような使用が意図される。この設計により、リザーバ内で水がよどむことが予防され、そしてリザーバ内で、炭酸カルシウムのバルク沈殿及び蓄積のリスクが減少する。いくつかの実施形態では、容器内の水の容積が、水の使用ごとに完全に空にされてもよい。いくつかの実施形態では、上記容器は、樹脂が上昇しそして水の通過により攪拌されるように、樹脂の上部に十分なヘッドスペース(又は余裕高(free−board))が存在するような大きさとされる。いくつかの実施形態では、余裕高スペースは、上記触媒の体積の約100%に等しい。
【0073】
いくつかの実施形態では、上記触媒が、流動化力を用いて攪拌され、水が流れると、一定の攪拌で、流動する床が形成される。他の実施形態では、例えば、接線の(tangential)水の流動、機械的攪拌、又は超音波攪拌により生成した遠心力を用いて、上記触媒が攪拌される。最後に、撹拌により、水が、閉塞が少なく、媒体上を又は媒体を通して流れ続けることができるように、上記触媒の清浄、上記触媒からのカルシウム結晶の除去が行われる。
【0074】
[使用の方法]
本発明の方法、装置及びシステムは、種々の用途に用いることができる。例えば、本発明の水処理方法に用いるための装置を、家庭又はビジネスの主要な水に接続することができる。上記装置は、温水ヒータの前、又は温水ヒータの後のラインに用いることができる。従って、本発明の装置を用いて、暖かい、冷たい、そして室温の水源において、可溶化された水硬度を減少させることができる。いくつかの実施形態では、本発明に従って処理すべき水は、約10℃〜約90℃の温度である。いくつかの実施形態では、処理すべき水の温度は、室温超、例えば、約20℃超である。
【0075】
いくつかの態様では、本発明は、清浄方法に用いるためのシステムを提供する。上記システムは、水源を、水源を処理するための装置に供給することを含む。いくつかの実施形態では、水源を処理するための装置は、下記を含む:(i)水源を、処理リザーバに供給するための注入口;(ii)支持媒体に結合している水処理剤を含む触媒及び/又は結合していない追加の機能性材料を含む処理リザーバ;(iii)処理された水を、処理リザーバから供給するための放出口;及び(iv)処理された水を、自動洗浄機、例えば、製品洗浄機に供給するための、処理された水搬送ライン。いくつかの実施形態では、流体が処理リザーバの上を、又は処理リザーバを介して通過するので、上記処理リザーバ内に含まれる水処理剤を保持するために、デバイス、例えば、スクリーンが、処理リザーバ内に存在する。いくつかの実施形態では、上記装置は、フィルターレスであり、放出口と、処理された水搬送ラインとの間にフィルターがない。
【0076】
一度、水が処理されると、処理された水が、装置の処理された水搬送ラインから、自動洗浄機、例えば、自動製品洗浄機又は食器洗い機、乗物洗浄システム、機器(instrument)洗浄機、定位置清浄システム、食品加工清浄システム、ボトル洗浄機、及び自動洗濯洗浄機に供給される。あるいは、処理された水を、手動の洗浄システムにおいて用いることができる。本発明の方法に従って処理された水の使用の利益を受けるであろう自動又は手動洗浄機を用いることができる。次いで、処理された水を、洗浄機内の洗浄性組成物と混合し、使用組成物を供給する。任意の洗浄性組成物、例えば、清浄組成物、すすぎ剤組成物又は乾燥剤組成物を、本発明のシステムにおいて用いることができる。次いで、清浄すべき製品を、それらが清浄されるように、自動洗浄機内の使用溶液と接触させる。
【0077】
本発明の水処理方法及びシステムは、種々の産業及び家庭用途に用いることができる。上記水処理方法及びシステムを、居住環境又は商業上の環境、例えば、レストラン、ホテル、病院に用いることができる。例えば、本発明の水処理方法、システム又は装置は、下記に用いることができる:製品洗浄用途、例えば、洗浄食器及び調理具及び他の硬質表面、例えば、シャワー、シンク、便器、バスタブ、カウンター、窓、ミラー、及び床;洗濯用途、例えば、前処理、洗浄、酸処理、軟化、及び/又はすすぎ段階における、自動繊維洗浄機内で用いられる水の処理;乗物ケア用途、例えば、乗物を、前すすぎ、例えば、アルカリ性予浸、洗浄、研磨、及びすすぎのために用いられる水の処理;産業用途、例えば、タワー、ボイラー、熱交換機を含む産業用機器;食品サービス用途、例えば、コーヒーメーカー及び紅茶製造器、エスプレッソマシーン、製氷機、パスタ調理器、温水器、スチーマー及び/又はプルーファー(proofer);ヘルスケア機器(instrument)ケア用途、例えば、外科機器(instrument)の浸漬、清浄、及び/又はすすぎ、オートクレーブ滅菌器に対する給水の処理及び種々の用途、例えば、加湿器、温水浴槽、及びスイミングプール。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の水処理方法及びシステムを、使用のポイントに適用することができる。すなわち、本発明の水処理方法、システム又は装置を、適用の上流の水源、例えば、洗浄システムに適用することができる。いくつかの実施形態では、上記水処理を、水源の所望の最終用途の前に、即適用する。例えば、本発明の装置は、家族用又はレストラン用アプライアンス、例えば、コーヒーメーカー、エスプレッソマシーン、製氷機に接続されているウォーターラインに用いることができる。本発明の方法を用いる装置を、洗浄システム内に配置することができる。水源を用いるアプライアンスの一部として、例えば、自動又は手動洗浄システム、コーヒーメーカー、製氷機、又は処理された水の使用の利益を受けることができる他のシステムに組み込まれた水処理システムがまた含まれうる。
【0079】
本発明の実施形態に従う処理リザーバは、種々の方式において、洗浄機とともに用いられうる。いくつかの実施形態では、上記処理リザーバが、洗浄剤分注デバイスに接続されることができる。上記処理リザーバを用いて、洗浄機の洗浄システム及び/又はすすぎシステムに、処理された水を供給することができる。いくつかの実施形態では、上記処理リザーバを用いて、処理された水及び洗浄剤の混合物を、洗浄システムに供給することができる。
【0080】
さらに、本発明の水処理方法を用いる装置は、家庭又はビジネスの主要な水に接続されうる。上記装置は、温水ヒータの前、又は温水ヒータの後のラインに用いることができる。従って、本発明の装置を用いて、暖かい、冷たい、そして室温の水源において、可溶化された水硬度を減少させることができる。
【0081】
本発明の実施形態は、水から、可溶化された硬度を取り除くために非常に有用であるので、処理された水を、減少された量のビルダー又は少ないビルダーを有する洗浄剤と共に用いることができる。いくつかの実施形態では、処理された水を、ビルダーを実質的に含まない洗浄剤と共に用いることができる。いくつかの実施形態では、処理された水を、キレート剤、ビルダー、しきい値剤、金属イオン封鎖剤又はそれらの組み合わせを実質的に含まない洗浄剤とともに用いることができる。経済的に遊離であることに加えて、低いビルダー洗浄剤又はビルダーを含まない洗浄剤により、本発明の実施形態はまた、環境にさらに有益である。というのは、塩化ナトリウムを用いる場合等の、システムを再生する必要性がないからである。
【0082】
本発明の方法、装置及びシステムはまた、食品及び飲料産業、例えば、食品及び飲料処理用途に用いることができる。いくつかの実施形態では、上記水処理装置を、浸透膜(RO膜)、ナノろ過システム(NFシステム)、又は限外ろ過システム(UFシステム)(集合的に「RO/NF/UFシステム」)、あるいは食品又は飲料処理用途、例えば、乳清透過水を処理するための用途におけるエバポレータから上流に用いることができる。
【0083】
例えば、上記方法及び装置を用いて、乳清透過水の工程、又は他の無機物含有原材料流に用いられる、エバポレータ及びRO/NF/UFシステムに対するカルシウム水垢の形成を予防することができる。乳清透過水は、水、ラクトース、及び無機物、例えば、リン酸カルシウムを含む。上記透過水は、約6%のラクトースであり、そしてROろ過を用いて、固形分約18%に達するまで濃縮される。上記透過水は、エバポレータを用いて、固形分約65%に達するまで、さらに濃縮される。RO/NF/UFシステムは、無機物により詰まり、透過のための高い圧力及び/又は低い流速が生ずることが知られている。
【0084】
蒸発の際、上記エバポレータは、主にリン酸カルシウム水垢を含む無機堆積物により詰まる。この水垢により、電熱効率が下がり、水蒸気の増加が必要となるか、そして/又は最終固形分を維持するための原材料流速が減少する。現在の水垢減少処理は、ポリホスフェートを、原材料流に添加することを含み、水垢を最小化させ、そして大量の酸を用いて、RO/NF/UFユニット及びエバポレータから、水垢を溶解させ、そして取り除く。RO/NF/UFシステム又はエバポレータの上流で、本発明の装置、システム又は方法を用いると、水垢を最小化させ、そしてポリホスフェート処理を用いること、あるいはエバポレータ又はRO/NF/UFユニットを、対象の酸で処理し、水垢を溶解させることなく、生産効率を高めることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、上記方法及び装置をまた用いて、アラゴナイトを生成し、そして分離することができる。アラゴナイトの沈殿を、例えば、産業又は医薬用途において用いられているろ過により、上記水から除去することができる。
【実施例】
【0086】
[例1]
3種の樹脂試料を、それらを、H+、Ca+、及びMg+で充填することにより調製した。マグネシウムを充填した試料を、次の手順で調製した。Lanxess Companyから購入した弱酸カチオン樹脂、Lewatit S8528を、500グラムのNaOHビーズ及び2500mLの軟水に、24時間浸漬した。pHは、約12〜13であった。浸漬後、次いで、上記樹脂を、すすぎ水のpHが11未満となるまで、軟水で3回、完全に洗浄した。上記樹脂を、4日間、700グラムのMgCl2−6H2O組成物を有する、2500mLの軟水に浸漬した。
【0087】
上記樹脂を、軟水で3回、完全にすすいだ。すすぎ水の最終pHは、約7.5〜8.5であった。Ca++で上記樹脂を充填するため、上記樹脂を、CaCl2組成物に浸漬した以外は、Mg++樹脂と同一の手順を用いた。上記樹脂のH+形態は、上記樹脂そのものであり、そこに充填されたカチオンを有しない。
この方法により生成した、マグネシウムで処理された樹脂を、下記例3〜5で用いた。
【0088】
[例2]
弱酸カチオン交換樹脂のマグネシウム形態を生成させるために、次の別の方法を用いた:Lewatit S8528樹脂を、4日間、60%水酸化マグネシウムスラリーに浸漬した。すすぎ水の最終pHは、11.0であった。
【0089】
[例3]
例1の方法に従って生成された、マグネシウムで処理された樹脂2ポンドを用いて、17gpg(g/ガロン)の硬水を処理した。2ポンドの樹脂を、流水(flow−through)リザーバに置き、そして施設の食器洗い機の注入口に接続した。次いで、処理された水を用いて、洗浄剤及びすすぎ助剤なしで、AM−14自動製品洗浄機内で試験ガラスを洗浄した。同一の水処理リザーバ及び樹脂を用いた1100回のサイクルの後、製品洗浄機の内部に、水垢が認識できなかった。
【0090】
図2は、マグネシウム触媒樹脂を用いて処理された硬水を用いて、食器洗い機内で洗浄された、8個の試験ガラスの画像を示す。左側から最初の6個のガラスは、連続する100回のサイクルの、マグネシウムで処理された樹脂、及びガラスの洗浄サイクルの後、食器洗い機から取り出された。左から6番目のガラスは、600回のサイクルの、マグネシウムで処理された媒体及び洗浄サイクルの後に、水垢が付着しなかった。上記のように、マグネシウムで処理された樹脂を用いると、600回の洗浄/すすぎサイクルの後でさえ、ガラスに水垢の付着はなかった。左から7番目のガラスは、800サイクルの後、同一のマグネシウムで処理された樹脂により、100回洗浄され、そして左から8番目のガラスは、900回のサイクルの後、同一のマグネシウムで処理された樹脂で100回洗浄された。上記のように、900回のサイクルの後でさえ、水垢の付着はなく、マグネシウム樹脂が、900回のサイクルの後でさえも、水垢を減少させ続けていることを示している。
【0091】
[例4]
例1の方法に従って生成された、マグネシウムで処理された樹脂を用いて、17グレーンの水を処理した。上記水を、硬水コックに接続されている流水リザーバを用いて処理した。上記水を、上記リザーバに通し、排出し、そして連続的に15,000ガロン超を処理した。15,803ガロンの水を処理した後、上記リザーバを、洗浄剤又はすすぎ助剤なしで、800回のサイクルの間、自動製品洗浄機(Type AM−14)に接続した。800回のサイクルに続いて、製品洗浄機の内部に、認識可能な水垢はないことが実証された。比較として、非処理の17グレーンの水を、洗浄剤又はすすぎ助剤なしで、800回のサイクルの間、製品洗浄機(Type AM−14)に通した。製品洗浄機の内部は、顕著な水垢を示した。これは、樹脂に結合したマグネシウムが、15,803ガロンの水を処理した後でさえも、水中の可溶性硬度を有意に減少させ続けていることを示している。
【0092】
[例5]
例1の方法に従って生成された、マグネシウムで処理された樹脂を用いて、17グレーンの水を処理した。処理された水を、洗浄剤と共に、移動製品洗浄機内で用い、試験ガラスを洗浄した。上記洗浄剤は、表1に従って、ビルダーなしで、そしてビルダー有りで配合された。
【0093】
【表1】

【0094】
この例の結果を、図3A〜図3Dに示す。図3Aでは、ガラスを、洗浄剤と共に、ビルダーなしで、そして水処理なしで洗浄し、顕著な水垢を示した。対照として、図3Bにおいて、同一の洗浄剤を用いて、ビルダーなしで、そして例1の方法に従って生成された、マグネシウムが結合した樹脂を用いて処理された水を用いて、ガラスを洗浄した。これらのガラスは、水垢が少なく、そして非処理の水で洗浄されたガラスよりも良好に見えた。これは、マグネシウムが結合した樹脂触媒を用いると、17グレーンの水においてさえ、洗浄剤にビルダーの必要性が減少する。
【0095】
図3Cにおけるガラスは、ビルダーを含む洗浄剤を用いて、非処理の17グレーンの水で洗浄され、一方、図3Dにおけるガラスは、同一の洗浄剤を用いたが、図3Bに関して上述した、処理された水を用いて洗浄された。図3Cにおけるガラスは、わずかな量の水垢を示し、一方、図3Dにおけるガラスは、水垢がなかった。
【0096】
[例6]
例1に示される樹脂充填手順に従って、3種の樹脂試料を、それらに、H+、Ca++及びMg++を充填することにより調製した。次いで、上記樹脂試料を用いて水を処理し、そして製品洗浄機内の水垢の傾向に関して比較した。従って、3つの、分離しているが、等価である試験において、食器洗い機への吸水を、H+弱酸カチオン樹脂、Ca2+弱酸カチオン樹脂、又はMg2+弱酸カチオン樹脂を用いて処理した。上記樹脂試料のそれぞれを、最初に、流水リザーバに、硬水(17gpg)を通し、排出することにより調整した。
【0097】
約1000ガロンの水を流した後、上記樹脂/リザーバシステムを、食器洗い機に接続し、そしてガラス器具の水垢の傾向に関して評価した。この結果を図4Aに示す。この食器洗い機/ガラス器具水垢試験の後、上記樹脂試料を、追加の4,000ガロンに関して、流水リザーバに硬水を通し、排出することによりさらに調整し、従って、各樹脂は、計約5,000ガロンの水を処理した。次いで、洗浄剤を用いず、第2の一式の食器洗い機/ガラス器具水垢試験を実施し、そして結果を、図4Bに示す。
【0098】
対照のガラス(図示せず)は、顕著な水垢を有した。図4A及び図4Bのそれぞれにおける、左から最初の2つのガラスは、H+が結合した樹脂を用いて処理された。各図において、左から3番目及び4番目のガラスは、Ca2+が結合した樹脂を用いて処理され、そして各図において、左から5番目及び6番目のガラスは、Mg2+が結合した樹脂で処理された。図4Aに見られるように、H+樹脂及びMg2+樹脂は、1,000ガロンの水であらかじめ処理された樹脂を用いた試験において、水垢が認識できなかった。2つのCa2+樹脂は、水垢が明らかに認識できた。図4Bを参照すると、上記樹脂システムのそれぞれは、5,000ガロンの水であらかじめ処理され、H+樹脂は、ガラス器具にわずかな水垢を生じた。Ca2+樹脂は、わずかに多い水垢を示し、Mg2+樹脂は、ほとんど又は全く認識可能な水垢を示さなかった。
【0099】
[例7]
乳清透過水の蒸発の後、ステンレス鋼表面に残存する金属内容物に対して、種々の水処理装置の効果を評価するために、実験を行った。乳製品工場から収集した乳清透過水を、この実験に関して用いた。試験された水処理装置は、容器内に含まれる種々の水処理剤を有する樹脂を含んでいた。次の装置を試験した。
【0100】
【表2】

【0101】
各樹脂に関して、約500mLの透過水を、上記樹脂容器内に置き、そして約30秒間振とうした。次いで、上記溶液を、樹脂サポートフィルターを介して、ビーカー内に排出した。次いで、それぞれ、100mLの処理された透過水を、別個のステンレス鋼ビーカー内に置いた。次いで、ビーカーを、190°F〜195°Fの水浴に置き、エバポレーションを開始した。約4.5時間後、上記溶液は、約60〜70%ブリックス(溶液中の60〜70%の糖又は他の溶解した固体)と想定される厚いシロップ様溶液内に変化した。
【0102】
上記水浴からビーカーを取り出し、そしてラクトースの砂糖様ゲルが取り除かれるまで、脱イオン水ですすぎ、無機堆積物のみを残した。次いで、ビーカーを、2%酸溶液ですすぎ、上記無機堆積物を溶解させた。用いられた酸は、リン酸を含むので、すすいだビーカーのリン酸値は、この実験において、有意であるとみなさなかった。次いで、酸溶液及び対照を、金属内容物に関して、誘導結合高周波プラズマ(ICP)試験を行った。下記表は、この検討の結果を示す。
【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
上記結果に見られるように、マグネシウムが充填された弱酸カチオン樹脂を含む装置2を用いて処理された乳清は、処理後、ブリックス(%)において、一部減少を示した。これは、処理された試料の、ラクトース、無機物及び/又は有機内容物が減少したことを示している。
【0106】
さらに、マグネシウムを含む樹脂を用いて処理された試料(装置2及び4)は、ビーカー内に残存するカルシウムの濃度が減少したことが観察された。このカルシウムの減少は、透過水からのカルシウムの量が減少したためであろう。
総合すると、本発明の実施形態に従う水処理装置を用いると、この透過水蒸発試験において、カルシウム不溶性塩の量が減少する結果が得られることが見出された。
【0107】
[他の実施形態]
本発明を、その詳細な説明に関連して説明してきたが、明細書は、本発明の具体的に説明することを目的とし、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を制限するものではない。他の態様、優位性、及び改良が、次の特許請求の範囲内にある。
【0108】
さらに、上述の、全ての特許公報の内容は、参照により、それら全体を、本明細書に援用する。
値及び範囲が、本明細書に規定され、これらの値及び範囲に包含される全ての値及び範囲が、本発明の範囲内に包含されることを意味することが理解される。さらに、これらの範囲内にある全ての値、並びに値の範囲の上限及び下限は、本出願により企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源を処理するための装置であって、
前記水源を、処理リザーバに供給するための注入口、
前記処理リザーバの内部に位置する、1種又は2種以上の触媒、前記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含み、前記水処理剤は、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン、及びそれらの混合物の供給源から成る群から選択される、及び
前記リザーバから、処理された水を供給するための放出口、
を含む、前記装置。
【請求項2】
前記支持材料が、イオン性樹脂を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記樹脂が、弱酸カチオン樹脂を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記水処理剤が、マグネシウムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記支持材料が、樹脂のビーズを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記触媒が、攪拌されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記処理リザーバが、取り外し可能なカートリッジを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記支持材料が、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記支持材料が、カルボン酸ポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記水処理剤が、前記支持材料とイオン結合している、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記支持材料が、カルシウムイオンよりも、マグネシウムイオンと選択的に結合する樹脂である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記処理リザーバが、1種又は2種以上の金属酸化物又は金属水酸化物をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、又はそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
洗浄システム内に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記洗浄システムが、自動化洗浄システムである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記自動化洗浄システムが、自動製品洗浄機、自動乗物洗浄システム、機器洗浄機、定位置清浄システム、食品加工清浄システム、ボトル洗浄機、自動洗濯洗浄機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
洗浄機に送り込む水線の上流に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記洗浄機が、自動製品洗浄機、自動乗物洗浄システム、機器洗浄機、定位置清浄システム、食品加工清浄システム、ボトル洗浄機、自動洗濯洗浄機、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される自動洗浄機である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記放出口からの処理された水が、使用前にろ過される必要がない、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
水源を処理する方法であって、次の各ステップ、
水源を触媒と接触させるステップ、前記触媒は、支持材料と結合した水処理剤であり、前記水処理剤が、水が処理されるような、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン、及びそれらの混合物の供給源から成る群から選択される、
を含む方法。
【請求項21】
処理された水が、実質的に、低い、可溶化された水硬度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記接触させるステップが、前記水源を、前記触媒に通すことを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒を攪拌することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記支持材料が、イオン性樹脂である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記支持材料が、弱酸カチオン樹脂である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水処理剤が、マグネシウムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記支持材料が、樹脂のビーズを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記支持材料が、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記触媒が、処理リザーバ内に含まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記処理リザーバが、取り外し可能なカートリッジを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
処理すべき水が、約10℃〜約90℃の温度にある、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
処理すべき水が、約6〜約8のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
処理すべき水が、8超のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
処理された水が、処理後、ろ過される必要がない、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
処理された水が、処理後に、実質的に減少した水硬度水準を有しない、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
処理された水のpHが、処理前の、前記水源のpHと実質的に同様である、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記触媒が、前記支持材料と結合していない、1種又は2種以上の、マグネシウム、アルミニウム又はチタンの酸化物又は水酸化物をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記触媒と接触させた水が、前記水処理剤と異なるカチオンを含む沈殿を形成する、請求項20に記載の方法。
【請求項39】
製品を清浄するために、処理された水源を用いる方法であって、次の各ステップ、
水源を触媒で処理するステップ、前記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含み、前記水処理剤は、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン、及びそれらの混合物の供給源から成る群から選択される、
処理された水及び洗浄剤を用いて、使用溶液を生成するステップ、そして
前記製品が清浄されるように、前記製品を、前記使用溶液と接触させるステップ、
を含む方法。
【請求項40】
前記触媒が、1種又は2種以上の、マグネシウム、アルミニウム又はチタンの酸化物又は水酸化物をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記洗浄剤が、キレート剤、ビルダー、しきい値剤、金属イオン封鎖剤又はそれらの組み合わせを実質的に含まない、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記製品を、前記使用溶液と接触させるステップが、自動製品洗浄機、自動食器洗い機、自動乗物洗浄システム、機器洗浄機、定位置清浄システム、食品加工清浄システム、ボトル洗浄機、及び自動洗濯洗浄機から成る群から選択される自動洗浄機内で実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
食品加工流を処理するための方法であって、
食品加工流を触媒と接触させるステップ、前記触媒は、支持材料と結合した水処理剤を含み、前記水処理剤は、前記食品加工流が処理されるような、マグネシウムイオンの供給源を含む、
を含む、前記方法。
【請求項44】
前記支持材料が、樹脂を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記樹脂が、弱酸カチオン樹脂を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記接触させるステップが、前記食品加工流を、前記触媒に通すことを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記食品加工流が、乳清透過水を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
処理された食品加工流を濃縮するステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記食品加工流を濃縮するステップが、処理された食品加工流を、逆浸透システムに通すこと、処理された食品加工流を、ナノろ過システムに通すこと、処理された食品加工流を、限外ろ過システムに通すこと、処理された食品加工流を、エバポレータに通すこと、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項48に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2012−524653(P2012−524653A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506626(P2012−506626)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051755
【国際公開番号】WO2010/122508
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(510250467)イーコラブ ユーエスエー インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】