説明

触覚センサおよびそれを備えたロボット

【課題】検知部の破損および弾性部材の剥離を防止可能な触覚センサを提供する。
【解決手段】触覚センサ10は、基板1と、酸化膜2と、検知部3(31,32)と、弾性部材4と、金属プレート5とを備える。酸化膜2は、基板1上に形成される。検知部3(31,32)は、酸化膜2上に配置される。弾性部材4は、金属プレート5から突出した突出部41,42を有する。弾性部材4は、突出部41,42がそれぞれ検知部31,32を覆うように基板1および酸化膜2上に配置される。金属プレート5は、弾性部材4の突出部41,42と所望の間隔を隔てて突出部41,42の周囲および弾性部材4上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、触覚センサおよびそれを備えたロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カンチレバーを有する触覚センサが知られている(特許文献1)。この触覚センサは、基板と、4個のカンチレバーと、エラストマーとを備える。4個のカンチレバーは、基板上に設けられる。エラストマーは、4個のカンチレバーを覆うように基板上に設けられる。そして、エラストマーは、基板の面内方向において4個のカンチレバーが配置された領域をカバーする範囲にだけ配置されている。また、エラストマーは、印加された剪断力の大きさに応じて変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−294140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の触覚センサにおいては、エラストマーが大きく変形すると、カンチレバーが破損するという問題がある。また、エラストマーが繰返し変形することによって、エラストマーと基板との間に隙間が発生し、その発生した隙間から水分および空気等が浸透して密着しなくなると、エラストマーが基板から剥がれるという問題もある。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、検知部の破損および弾性部材の剥離を防止可能な触覚センサを提供することである。
【0006】
また、この発明の目的は、検知部の破損および弾性部材の剥離を防止可能な触覚センサを備えたロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、触覚センサは、基板と、n(nは正の整数)個の検知部と、弾性部材と、周辺部材とを備える。n個の検知部は、基板上に設けられ、力を検知する。弾性部材は、n個の検知部上に位置するn個の突出部を有し、基板およびn個の検知部を覆うように配置される。周辺部材は、弾性部材に接して弾性部材上に設けられるとともに、基板の面内方向においてn個の突出部の各々と所望の間隔を隔ててn個の突出部の周囲に設けられ、弾性部材の硬度よりも大きい硬度を有する。そして、n個の検知部の各々は、1個以上のカンチレバーを含む。また、所望の間隔は、検知部を破損させる破損力よりも小さい剪断力が検知部に印加されるように決定されている。
【0008】
好ましくは、弾性部材は、シリコーンからなる。
【0009】
好ましくは、n個の突出部の各々は、基板の法線方向において基板から離れる方向へテーパ形状からなる断面形状を有する。n個の突出部の各々の基板と反対側の先端部は、法線方向において基板から離れる方向へ略放物線状に突出した断面形状を有し、周辺部材の表面から突出している。
【0010】
また、この発明によれば、ロボットは、把持部と、触覚センサとを備える。把持部は、対象物を把持する。触覚センサは、把持部の対象物に接する面に配置される。そして、触覚センサは、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触覚センサからなる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の実施の形態による触覚センサにおいては、周辺部材は、弾性部材のn個の突出部と所望の間隔を隔ててn個の突出部の周囲および弾性部材上に設けられている。そして、弾性部材のn個の突出部は、周辺部材から突出している。その結果、基板の面内方向における任意の方向から剪断力が検出対象物によって突出部に印加されると、突出部の基板の面内方向への変形は、検知部を破損させる破損力よりも小さい剪断力が検知部に印加されるように周辺部材によって制限される。また、周辺部材は、周辺部材と基板との間に配置された弾性部材を基板の方向へ押す。その結果、弾性部材と基板との間に隙間が形成されることはなく、水分および空気等が弾性部材と基板との間に浸透することが抑制される。
【0012】
従って、検知部の破損および弾性部材の剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態による触覚センサの斜視図である。
【図2】図1に示す線II−II間における触覚センサの断面図である。
【図3】図2に示す検知部の斜視図である。
【図4】図3に示すセンサ素子の断面図である。
【図5】図3に示すセンサ素子の平面図である。
【図6】エラストマおよび金属プレートの一部の拡大図である。
【図7】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第1の工程図である。
【図8】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第2の工程図である。
【図9】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第3の工程図である。
【図10】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第4の工程図である。
【図11】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第5の工程図である。
【図12】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第6の工程図である。
【図13】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第7の工程図である。
【図14】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第8の工程図である。
【図15】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第9の工程図である。
【図16】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第10の工程図である。
【図17】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第11の工程図である。
【図18】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第12の工程図である。
【図19】図1および図2に示す触覚センサの製造方法を示す第13の工程図である。
【図20】変形率と、剪断力または圧力との関係を示す図である。
【図21】カンチレバーに接続される出力回路の一例を示す回路図である。
【図22】図1に示す触覚センサの動作を説明する概念図である。
【図23】検知部の他の構成を示す構成図である。
【図24】この発明の実施の形態によるロボットが備えるアームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態による触覚センサの斜視図である。また、図2は、図1に示す線II−II間における触覚センサの断面図である。
【0016】
図1および図2を参照して、この発明の実施の形態による触覚センサ10は、基板1と、酸化膜2と、検知部3と、弾性部材4と、金属プレート5とを備える。
【0017】
触覚センサ10は、方向DR1において、例えば、1cmの長さL1を有し、方向DR2において、例えば、2cmの長さL2を有し、例えば、1.5mmの厚みD1を有する。
【0018】
基板1は、例えば、単結晶シリコンからなる。酸化膜2は、例えば、二酸化シリコン(SiO)からなり、例えば、1μmの膜厚を有する。そして、酸化膜2は、基板1の一主面上に形成される。
【0019】
検知部3は、検知部31,32を含む。検知部31,32の各々は、酸化膜2上に配置されるとともに、弾性部材4によって覆われる。
【0020】
弾性部材4は、検知部31,32上にそれぞれ位置する突出部41,42を有し、基板1、酸化膜2および検知部31,32を覆うように配置される。そして、弾性部材4は、例えば、エラストマーであるPDMS(ポリジメチルシロキサン:polydimethylsiloxane)樹脂(=シリコーン)からなる。
【0021】
なお、図1および図2においては、2個の検知部31,32のみが図示されているが、触覚センサ10は、実際には、6個の検知部を備える。そして、弾性部材4は、6個の検知部上にそれぞれ位置する6個の突出部41〜46を有する。
【0022】
突出部41〜46の各々は、基板1の法線方向において基板1から遠ざかる方向へ突出した形状を有する。より具体的には、突出部41〜46の各々は、基板1の法線方向において基板1から遠ざかる方向へテーパ形状からなる断面形状を有する。また、突出部41〜46の各々は、基板1と反対側の先端部が基板1の法線方向において基板1から離れる方向へ略放物線状に突出した断面形状を有し、金属プレート5の表面から突出している。そして、弾性部材4の6個の突出部41〜46は、例えば、3行×2列に配置される。
【0023】
金属プレート5は、例えば、アルミニウムからなり、弾性部材4の突出部41〜46間において基板1の法線方向から弾性部材4に接して配置される。この場合、金属プレート5は、基板1の面内方向において突出部41〜46の各々と所望の間隔を隔てて突出部41〜46の周囲に配置される。そして、金属プレート5は、酸化膜2と金属プレート5との間に配置された弾性部材4の部分を基板1の方向へ押し付ける。
【0024】
図3は、図2に示す検知部31の斜視図である。図3を参照して、検知部31は、4個のセンサ素子311〜314を含む。センサ素子311は、カンチレバーCL1と、電極E11,E12とを含む。センサ素子312は、カンチレバーCL2と、電極E21,E22とを含む。センサ素子313は、カンチレバーCL3と、電極E31,E32とを含む。センサ素子314は、カンチレバーCL4と、電極E41,E42とを含む。
【0025】
電極E11,E12は、カンチレバーCL1の両端部に接続される。電極E21,E22は、カンチレバーCL2の両端部に接続される。電極E31,E32は、カンチレバーCL3の両端部に接続される。電極E41,E42は、カンチレバーCL4の両端部に接続される。
【0026】
そして、センサ素子311〜314は、共通の基板1上に配置され、上述したように共通の弾性部材4(41)によって覆われる。
【0027】
以下、基板1の表面に平行で互いに直交する2つの方向にX軸およびY軸を定義し、基板1の表面に垂直な方向にZ軸を定義する。そして、基板1の表面に向かう方向をZ軸の正の方向とする。
【0028】
基板1には、カンチレバーCL1〜CL4のピエゾ抵抗の変化量をアナログ電圧の変化量に変換するブリッジ回路と、ブリッジ回路の出力電圧を増幅する増幅器と、増幅器の出力電圧をディジタル信号の出力値に変換するAD変換器(アナログディジタル変換器)とを含む出力回路(図示せず)が形成されている。
【0029】
そして、ブリッジ回路は、カンチレバーCL1,CL2,CL3,CL4にそれぞれ接続された電極E11,E12;E21,E22;E31,E32;E41,E42を介してカンチレバーCL1〜CL4のピエゾ抵抗の変化量をアナログ電圧の変化量に変換する。
【0030】
センサ素子311のカンチレバーCL1とセンサ素子313のカンチレバーCL3とが互いに対向し、センサ素子312のカンチレバーCL2とセンサ素子314のカンチレバーCL4とが互いに対向する。また、センサ素子311,313とセンサ素子312,314とが互いに直交する向きに配置される。
【0031】
なお、図2に示す検知部32、および弾性部材4の4個の突出部43〜46によって覆われた4個の検知部の各々も、図3に示す検知部31と同じ構成からなる。
【0032】
図4は、図3に示すセンサ素子311の断面図である。図4を参照して、センサ素子311のカンチレバーCL1は、湾曲した断面形状からなり、例えば、20〜30μmの高さH1および300μmの長さL2を有する。そして、カンチレバーCL1は、ノンドープ層3111と、ドープ層3112と、応力制御層3113と、絶縁層3114とからなる。ノンドープ層3111は、i型の結晶シリコンからなり、例えば、2.5μmの膜厚を有する。ドープ層3112は、ボロン(B)ドープの結晶シリコンからなる。そして、ドープ層3112は、1020cm−3のB原子を含む。応力制御層3113は、例えば、クロム(Cr)からなり、例えば、100nmの膜厚を有する。絶縁層3114は、例えば、シリコン窒化膜(Si)からなり、例えば、300nmの膜厚を有する。電極E11,E12の各々は、例えば、金(Au)とCrとの積層膜(Au/Cr)からなり、例えば、全体で240nmの膜厚を有する。
【0033】
ノンドープ層3111は、一方端が酸化膜2に接して酸化膜2上に配置される。ドープ層3112は、ノンドープ層3111の一部に接してノンドープ層3111中に配置される。そして、ドープ層3112の抵抗がピエゾ抵抗となる。応力制御層3113は、ノンドープ層3111の一部、ドープ層3112の一部および絶縁層3114の一部に接してノンドープ層3111、ドープ層3112および絶縁層3114上に配置される。絶縁層3114は、開口部を有し、ノンドープ層3111およびドープ層3112に接してノンドープ層3111およびドープ層3112上に配置される。電極E11,E12は、ドープ層3112および絶縁層3114に接してドープ層3112および絶縁層3114上に配置される。この場合、電極E11,E12のCrがドープ層3112および絶縁層3114に接する。
【0034】
なお、図3に示すセンサ素子312〜314の各々も、図4に示すセンサ素子311と同じ断面構造からなる。そして、電極E21,E22;E31,E32;E41,E42の各々も、例えば、Au/Crからなる。
【0035】
図5は、図3に示すセンサ素子311の平面図である。図5を参照して、センサ素子311のカンチレバーCL1は、略四角形からなる平面構造を有する。そして、ドープ層3112は、カンチレバーCL1のうち、電極E11,E12の近傍に配置される。また、ノンドープ層3111および応力制御層3113には、6個の穴3115が開けられている。更に、電極E11,E12は、所定の間隔を隔ててカンチレバーCL1の両端部に接続される。
【0036】
なお、図3に示すセンサ素子312〜314の各々も、図5に示すセンサ素子311と同じ平面構造からなる。
【0037】
図6は、弾性部材4および金属プレート5の一部の拡大図である。図6を参照して、弾性部材4の突出部41は、例えば、1mmφの直径を有する。また、突出部41のうち、放物線状に突出した部分以外の部分は、例えば、1mmの高さH2(=酸化膜2からの高さ)を有する。この1mmの高さH2は、突出部41が基板1の法線方向から基板1に近づく方向へ変形したときに検知部31,32を破損させる破損力よりも小さい剪断力が検知部31,32に印加されるように決定された高さである。
【0038】
また、金属プレート5と突出部41との間隔dは、例えば、100〜200μmに設定される。この100〜200μmの間隔dは、突出部41が基板1の面内方向へ変形したときに検知部31,32を破損させる破損力よりも小さい剪断力が検知部31,32に印加されるように決定された間隔である。
【0039】
更に、突出部41のうち、基板1と反対側へ放物線状に湾曲した部分は、基板1の法線方向において、例えば、100〜200μmの長さL3を有する。即ち、突出部41のうち、金属プレート5の表面から突出した部分は、基板1の法線方向において、長さL3を有する。
【0040】
更に、弾性部材4のうち、酸化膜2と金属プレート5との間に配置された部分は、例えば、100μmの厚みtを有する。
【0041】
なお、図1に示す弾性部材4の突出部42〜46の各々も、図6に示す突出部41と同じ寸法を有し、金属プレート5と突出部41との間隔dと同じ間隔を金属プレート5との間で有する。
【0042】
図7から図19は、それぞれ、図1および図2に示す触覚センサ10の製造方法を示す第1〜第13の工程図である。なお、図7から図15は、触覚センサ10における検知部31に含まれる1つのセンサ素子311の部分のみが示されるが、他のセンサ素子312〜314および他の検知部(検知部32および突出部43〜46に覆われる検知部)も同時に同様の方法によって形成される。また、図7から図15において、(a)は、断面図を示し、(b)は、平面図を示す。
【0043】
図7を参照して、触覚センサ10の製造が開始されると、SOI(Silicon On Insulator)基板100を準備する。
【0044】
SOI基板100は、結晶シリコンからなる基板1と、埋め込み酸化膜101と、結晶シリコン膜102とを含む。結晶シリコン膜102は、例えば、2.5μmの厚みを有する。また、埋め込み酸化膜101は、例えば、SiOからなる。
【0045】
その後、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)法およびフォトリソグラフィを用いて、開口部を有するSiO膜103が結晶シリコン膜102上に形成される(図8参照)。
【0046】
そして、SiO膜103をマスクとして熱拡散またはイオン注入によってB原子を結晶シリコン膜102の一部に添加する。これによって、ドープ層3112が形成され、ドープ層3112は、例えば、1020cm−3のB原子を含む(図9参照)。
【0047】
引き続いて、Si膜104を結晶シリコン膜102およびドープ層3112を覆うように形成する(図10参照)。
【0048】
そして、Si膜104をフォトリソグラフィを用いてパターンニングし、絶縁層3114を形成する(図11)。
【0049】
その後、蒸着およびフォトリソグラフィを用いて応力制御層3113(Cr)を結晶シリコン膜102および絶縁層3114上に形成する(図12参照)。
【0050】
そして、蒸着およびフォトリソグラフィを用いて電極E11,E12を形成する(図13参照)。その後、基板1上に配置された取出電極(図示せず)に電極E11,E12を接続するための配線(Au/Crからなる)を蒸着およびフォトリソグラフィを用いて形成する。
【0051】
引き続いて、フォトリソグラフィを用いてドープ層3112、応力制御層3113、絶縁相3114および電極E11,E12以外の結晶シリコン膜120をエッチングするとともに、応力制御層3113の一部および応力制御層3113の下側に配置された結晶シリコン膜102の一部をエッチングする。これによって、穴3115が形成される(図14参照)。
【0052】
なお、エッチングとしては、例えば、ウェットエッチング法が用いられる。エッチング液としては、例えば、2,6−ヒドロキシナフトエ酸(HNA)が用いられる。
【0053】
そして、エッチングによって、埋め込み酸化膜101の所定の領域を除去する。エッチング液としては、例えば、フッ化水素(HF)が用いられる。これによって、カンチレバーCL1が形成される(図15参照)。
【0054】
ドープ層3112は、結晶シリコン膜102にBを添加することによって形成されている。また、ドープ層3112におけるBの濃度は、0.2原子%(=1020cm−3)に設定されている。これによって、ドープ層3112の格子定数は、シリコン(Si)の格子定数(=約5.4295Å)に比べて約0.0028Åだけ小さくなっている。
【0055】
その結果、ノンドープ層3111とドープ層3112との境界面において、格子定数の差に起因して歪みが発生する。従って、ドープ層3112の抵抗がピエゾ抵抗となる。
【0056】
また、Crからなる応力制御層3113がノンドープ層3111上に形成されているため、埋め込み酸化膜101の所定の領域を除去すると、ノンドープ層3111と応力制御層3113との境界面の歪みが緩和するように、ノンドープ層3111の一方端側が上方に向かって湾曲する。これによって、XY平面において略U字状であり、かつ、XZ平面において湾曲するカンチレバーCL1が形成される(図15参照)。
【0057】
なお、カンチレバーCL1のXZ平面における曲率半径は、例えば、約400μmである。
【0058】
その後、図15の状態で、水洗浄、IPA(イソプロピルアルコール)置換、およびt−ブチルアルコール置換を行なう。そして、フリーズドライ(真空凍結乾燥)を行なう。これによって、複数の検知部31,32が基板1上に形成される。
【0059】
引き続いて、金型110を基板1上に設置し、基板1、酸化膜2および検知部31,32と金型110との間の隙間120に弾性部材(PDMS)を流し込み、その流し込んだ弾性部材(PDMS)をオーブンによって加熱し、弾性部材(PDMS)を硬化させる(図16参照)。
【0060】
これによって、弾性部材4が基板1上に形成され、酸化膜2、および検知部31,32が弾性部材4によって覆われる(図17参照)。
【0061】
そして、金型130を弾性部材4の突出部41,42に設置し、アルミニウム等をスパッタリングによって弾性部材4上に形成する(図18参照)。
【0062】
これによって、金属プレート5が形成され、触覚センサ10が完成する(図19参照)。
【0063】
図20は、変形率と、剪断力または圧力との関係を示す図である。なお、図20は、1mmの厚みを有するエラストマーの底部に、100μmの長さを有するカンチレバーを45度の角度で設置したときのカンチレバーの変形率と、剪断力または圧力との関係を示す。
【0064】
図20の(a),(b)において、縦軸は、変形率を表し、横軸は、剪断力を表す。また、図20の(c),(d)において、縦軸は、変形率を表し、横軸は、圧力を表す。更に、図20の(a)は、左右方向(即ち、基板1の面内方向)に剪断力を印加したときのカンチレバーの左右方向の変形率と剪断力との関係を示し、図20の(b)は、左右方向(即ち、基板1の面内方向)に剪断力を印加したときのカンチレバーの上下方向(即ち、基板1の法線方向)の変形率と剪断力との関係を示す。
【0065】
更に、図20の(c)は、上下方向(即ち、基板1の法線方向)に圧力を印加したときのカンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率と圧力との関係を示し、図20の(d)は、上下方向(即ち、基板1の法線方向)に圧力を印加したときのカンチレバーの上下方向(即ち、基板1の法線方向)の変形率と圧力との関係を示す。
【0066】
更に、直線k1,k5は、ヤング率が0.04[MPa]であるときの変形率と、剪断力との関係を示し、直線k2,k6は、ヤング率が0.6[MPa]であるときの変形率と、剪断力との関係を示し、直線k3,k7は、ヤング率が10[MPa]であるときの変形率と、剪断力との関係を示し、直線k4,k8は、ヤング率が100[MPa]であるときの変形率と、剪断力との関係を示す。
【0067】
更に、直線k9,k13は、ヤング率が0.04[MPa]であるときの変形率と、圧力との関係を示し、直線k10,k14は、ヤング率が0.6[MPa]であるときの変形率と、圧力との関係を示し、直線k11,k15は、ヤング率が10[MPa]であるときの変形率と、圧力との関係を示し、直線k12,k16は、ヤング率が100[MPa]であるときの変形率と、圧力との関係を示す。
【0068】
図20の(a)を参照して、剪断力が左右方向(即ち、基板1の面内方向)からエラストマーに印加された場合、カンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、剪断力の増加に対して直線的に大きくなる(直線k1〜k4参照)。より具体的には、カンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、ヤング率が0.04[MPa]であるとき、約7(%)から約800(%)まで直線的に大きくなり(直線k1参照)、ヤング率が0.6[MPa]であるとき、約0.5(%)から約50(%)まで直線的に大きくなる(直線k2参照)。また、カンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、ヤング率が10[MPa]であるとき、約0.03(%)から約3(%)まで直線的に大きくなり(直線k3参照)、ヤング率が100[MPa]であるとき、約0.003(%)から約0.3(%)まで直線的に大きくなる(直線k4参照)。
【0069】
図20の(b)を参照して、剪断力が左右方向(即ち、基板1の面内方向)からエラストマーに印加された場合、カンチレバーの上下方向(基板1の法線方向)の変形率は、剪断力の増加に対して直線的に大きくなる(直線k5〜k8参照)。より具体的には、カンチレバーの上下方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、ヤング率が0.04[MPa]であるとき、約5×10−13(%)から約6×10−11(%)まで直線的に大きくなり(直線k5参照)、ヤング率が0.6[MPa]であるとき、約4×10−14(%)から約4×10−12(%)まで直線的に大きくなる(直線k6参照)。また、カンチレバーの上下方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、ヤング率が10[MPa]であるとき、約2×10−15(%)から約2×10−13(%)まで直線的に大きくなり(直線k7参照)、ヤング率が100[MPa]であるとき、約1.3×10−16(%)から約1.3×10−14(%)まで直線的に大きくなる(直線k8参照)。
【0070】
従って、剪断力が左右方向(即ち、基板1の面内方向)からエラストマーに印加された場合、カンチレバーは、左右方向(即ち、基板1の面内方向)に大きく変形し、上下方向(即ち、基板1の法線方向)には、殆ど変形しない。
【0071】
図20の(c)を参照して、圧力が上下方向(即ち、基板1の法線方向)からエラストマーに印加された場合、カンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、圧力の増加に対して直線的に大きくなる(直線k9〜k12参照)。より具体的には、より具体的には、カンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、ヤング率が0.04[MPa]であるとき、約2.5×10−13(%)から約3×10−11(%)まで直線的に大きくなり(直線k9参照)、ヤング率が0.6[MPa]であるとき、約2×10−14(%)から約2×10−12(%)まで直線的に大きくなる(直線k10参照)。また、カンチレバーの左右方向(即ち、基板1の面内方向)の変形率は、ヤング率が10[MPa]であるとき、約8×10−16(%)から約8×10−14(%)まで直線的に大きくなり(直線k11参照)、ヤング率が100[MPa]であるとき、約1×10−16(%)から約1×10−14(%)まで直線的に大きくなる(直線k12参照)。
【0072】
図20の(d)を参照して、圧力が上下方向(即ち、基板1の法線方向)からエラストマーに印加された場合、カンチレバーの上下方向(即ち、基板1の法線方向)の変形率は、圧力の増加に対して直線的に大きくなる(直線k13〜k16参照)。より具体的には、より具体的には、カンチレバーの上下方向(即ち、基板1の法線方向)の変形率は、ヤング率が0.04[MPa]であるとき、約2(%)から約200(%)まで直線的に大きくなり(直線k13参照)、ヤング率が0.6[MPa]であるとき、約0.11(%)から約11(%)まで直線的に大きくなる(直線k14参照)。また、カンチレバーの上下方向(即ち、基板1の法線方向)の変形率は、ヤング率が10[MPa]であるとき、約0.006(%)から約0.9(%)まで直線的に大きくなり(直線k15参照)、ヤング率が100[MPa]であるとき、約0.0008(%)から約0.08(%)まで直線的に大きくなる(直線k16参照)。
【0073】
従って、圧力が上下方向(即ち、基板1の法線方向)からエラストマーに印加された場合、カンチレバーは、上下方向(即ち、基板1の法線方向)に大きく変形し、左右方向(即ち、基板1の面内方向)には、殆ど変形しない。
【0074】
そして、弾性部材4を構成するPDMSは、約1.5[MPa]のヤング率を有する。従って、剪断力が左右方向からPDMSに印加された場合、カンチレバーの左右方向の変形率は、直線k2と直線k3との間の直線に従って、剪断力の増加に対して大きくなり、カンチレバーの上下方向の変形率は、直線k6と直線k7との間の直線に従って、剪断力の増加に対して大きくなる。また、圧力が上下方向からPDMSに印加された場合、カンチレバーの左右方向の変形率は、直線k10と直線k11との間の直線に従って、圧力の増加に対して大きくなり、カンチレバーの上下方向の変形率は、直線k14と直線k15との間の直線に従って、圧力の増加に対して大きくなる。
【0075】
その結果、100[kPa]の剪断力が左右方向からPDMSに印加された場合、カンチレバーは、左右方向へ約10%変形し、上下方向へ殆ど変形しない。また、100[kPa]の剪断力が上下方向からPDMSに印加された場合、カンチレバーは、上下方向へ約5%変形し、左右方向へ殆ど変形しない。
【0076】
このように、剪断力および圧力がそれぞれ面内方向および法線方向から弾性部材4に印加された場合、カンチレバーCL1〜CL4の変形率は、左右方向へ約10%であり、上下方向へ約5%である。
【0077】
従って、触覚センサ10の検知部31,32は、弾性部材4の突出部41〜46に印加された力(剪断力)を検知できる。
【0078】
図21は、カンチレバーCL1に接続される出力回路の一例を示す回路図である。図21を参照して、出力回路200は、外部抵抗R1〜R3と、直流電源210と、増幅器220と、AD変換器230とを含む。
【0079】
外部抵抗R1〜R3は、カンチレバーCL1の電極E11,E12に接続される。そして、カンチレバーCL1、外部抵抗R1〜R3および直流電源210は、ブリッジ回路BRGを構成する。
【0080】
ブリッジ回路BRGの出力電圧は、増幅器220に与えられる。増幅器220は、ブリッジ回路BRGの出力電圧を増幅し、その増幅した出力電圧をAD変換器230へ出力する。
【0081】
AD変換器230は、増幅器220から受けた出力電圧をアナログ信号からディジタル信号に変換し、その変換したディジタル信号を出力する。
【0082】
カンチレバーCL1の変形によって、カンチレバーCL1のピエゾ抵抗が変化する。ブリッジ回路BRGおよび増幅器220は、このピエゾ抵抗の変化量を電圧の変化として検出する。そして、AD変換器230は、増幅器220からの出力電圧をディジタル信号の出力値に変換する。
【0083】
なお、図3に示すカンチレバーCL2〜CL4の各々にも、図21に示す出力回路200が接続されている。そして、出力回路200は、上述した方法によって、カンチレバーCL2〜CL4の変形をディジタル信号の出力値として検出する。
【0084】
図22は、図1に示す触覚センサ10の動作を説明する概念図である。なお、図22においては、検知部31を例にして触覚センサ10の動作を説明する。
【0085】
図22を参照して、剪断力がZ軸の正の方向から弾性部材4の突出部41に印加された場合、突出部41は、Z軸の正の方向に縮む(図22の(a)参照)。その結果、検知部31のカンチレバーCL1〜CL4は、曲率半径が大きくなるように変形する。そして、出力回路200は、上述した方法によって、カンチレバーCL1〜CL4のピエゾ抵抗の変化量を検出して出力する。この場合、4個のカンチレバーCL1〜CL4におけるピエゾ抵抗の変化量は、ほぼ同じになる。従って、4個のカンチレバーCL1〜CL4に対応する4個の出力回路200は、ほぼ同じ4個の出力値を出力する。その結果、剪断力がZ軸の正の方向に印加されたことが検知される。また、4個の出力値の大きさから、印加された剪断力の大きさが検知される。
【0086】
また、剪断力がX軸の負の方向から弾性部材4の突出部41に印加された場合、突出部41は、金属プレート5(51)に接するまでX軸の負の方向へ変形する(図22の(b)参照)。その結果、カンチレバーCL1は、曲率半径が小さくなるように変形し、カンチレバーCL3は、曲率半径が大きくなるように変形し、カンチレバーCL2,CL4は、殆ど変形しない。そして、出力回路200は、カンチレバーCL1〜CL4のピエゾ抵抗の変化量を検出して出力する。この場合、カンチレバーCL1におけるピエゾ抵抗の変化量は、例えば、+ΔR1になり、カンチレバーCL3におけるピエゾ抵抗の変化量は、例えば、−ΔR2になり、カンチレバーCL2,CL4におけるピエゾ抵抗の変化量は、ほぼ零である。
【0087】
従って、カンチレバーCL1に対応する出力回路200は、+ΔR1の変化量を示すディジタル信号の出力値を出力し、カンチレバーCL3に対応する出力回路200は、−ΔR2の変化量を示すディジタル信号の出力値を出力し、カンチレバーCL2,CL4に対応する出力回路200は、ほぼ零を示すディジタル信号の出力値を出力する。その結果、剪断力がX軸の負の方向に印加されたことが検知される。また、+ΔR1の大きさおよび−ΔR2の大きさに基づいて、印加された剪断力の大きさが検知される。
【0088】
更に、剪断力がX軸の正の方向から弾性部材4の突出部41に印加された場合、突出部41は、金属プレート5(52)に接するまでX軸の正の方向へ変形する(図22の(c)参照)。その結果、カンチレバーCL1は、曲率半径が大きくなるように変形し、カンチレバーCL3は、曲率半径が小さくなるように変形し、カンチレバーCL2,CL4は、殆ど変形しない。そして、出力回路200は、カンチレバーCL1〜CL4のピエゾ抵抗の変化量を検出して出力する。この場合、カンチレバーCL1におけるピエゾ抵抗の変化量は、例えば、−ΔR3になり、カンチレバーCL3におけるピエゾ抵抗の変化量は、例えば、+ΔR4になり、カンチレバーCL2,CL4におけるピエゾ抵抗の変化量は、ほぼ零である。
【0089】
従って、カンチレバーCL1に対応する出力回路200は、−ΔR3の変化量を示すディジタル信号の出力値を出力し、カンチレバーCL3に対応する出力回路200は、+ΔR4の変化量を示すディジタル信号の出力値を出力し、カンチレバーCL2,CL4に対応する出力回路200は、ほぼ零を示すディジタル信号の出力値を出力する。その結果、剪断力がX軸の正の方向に印加されたことが検知される。また、−ΔR3の大きさおよび+ΔR4の大きさに基づいて、印加された剪断力の大きさが検知される。
【0090】
なお、剪断力がX軸またはZ軸に沿って弾性部材4に印加された場合について触覚センサ10の動作を説明したが、剪断力がY軸に沿って弾性部材4に印加された場合、および剪断力がXY平面において任意の方向から弾性部材4にに印加された場合も、剪断力の印加方向および大きさが上述した動作によって検知される。
【0091】
また、他の検知部32(および突出部43〜46によって覆われた検知部)における剪断力の検知も、上述した動作によって行なわれる。
【0092】
剪断力がZ軸の正の方向から突出部41に印加された場合、弾性部材4の変形量は、基板1の法線方向における各位置において異なる。即ち、弾性部材4のうち、突出部41が最も大きく変形し、検知部31を覆う部分は、突出部41よりも小さく変形し、基板1に最も近い部分は、殆ど変形しない。
【0093】
そして、突出部41〜46の高さH2は、上述したように、突出部41〜46が基板1の法線方向から基板1に近づく方向へ変形したときに検知部31,32を破損させる破損力よりも小さい剪断力が検知部31,32に印加されるように決定された高さである。
【0094】
従って、剪断力がZ軸の正の方向から突出部41〜46に印加された場合、カンチレバーCL1〜CL4が破損することはない。
【0095】
また、剪断力がX軸に沿って突出部41〜46に印加された場合、突出部41〜46は、金属プレート5(51)または5(52)に接するまでX軸の方向へ変形する。そして、上述したように、突出部41〜46と金属プレート5(51)または5(52)との間隔dは、検知部31,32を破損させる破損力よりも小さい剪断力が検知部31,32に印加されるように決定された間隔である。その結果、金属プレート5(51)または5(52)は、突出部41〜46のX軸方向への変形を制限し、検知部31,32を破損させる破損力が検知部31,32に印加されることはない。
【0096】
従って、剪断力がX軸に沿って突出部41〜46に印加された場合、カンチレバーCL1〜CL4が破損することはない。
【0097】
更に、金属プレート5は、突出部41〜46と間隔dを隔てて突出部41〜46の周囲に設けられているので、剪断力がXY平面の任意の方向から弾性部材4に印加されても、上述した理由によって、カンチレバーCL1〜CL4が破損することはない。
【0098】
更に、弾性部材4のうち、突出部41〜46以外の部分の上には、金属プレート5が配置されているので、突出部41〜46の近傍および弾性部材4の周縁において、弾性部材4と基板1との間に隙間が形成されることはなく、水分および空気等が弾性部材4と基板1との間に浸透することが抑制される。
【0099】
従って、弾性部材4の剥離を防止できる。
【0100】
図23は、検知部31の他の構成を示す構成図である。上記においては、検知部31,32の各々は、4個のセンサ素子311〜324を含むと説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、検知部31は、3個のセンサ素子311〜313を含んでいてもよい。
【0101】
この場合、3個のセンサ素子311〜313の3個のカンチレバーCL1〜CL3は、相互に120度の角度を成すように配置される。つまり、3個のカンチレバーCL1〜CL3は、相互に異なる向きを向くように配置される。
【0102】
なお、検知部31が3個のセンサ素子311〜313からなる場合、検知部32および突出部43〜46によって覆われる4個の検知部の各々も、図23に示すように、相互に120度の角度を成すように配置された3個のカンチレバーCL1〜CL3を含む3個のセンサ素子311〜313からなる。
【0103】
そして、一般的には、検知部31,32および突出部43〜46によって覆われる4個の検知部の各々は、1個以上のカンチレバーを含んでいればよい。
【0104】
各検知部が1個以上のカンチレバーを含んでいれば、突出部41〜46に印加された剪断力の向き、または大きさを検知できるからである。
【0105】
なお、各検知部が2個以上のカンチレバーを含む場合、2個のカンチレバーは、好ましくは、互いに異なる向きに配置される。
【0106】
触覚センサ10においては、突出部41〜46の各々は、金属プレート5から突出している。その結果、突出部41〜46は、検出対象物に接触し易くなる。
【0107】
従って、検出対象物を高感度に検知できる。
【0108】
図24は、この発明の実施の形態によるロボットが備えるアームの斜視図である。図24を参照して、この発明の実施の形態によるロボットは、アーム300を備える。アーム300は、触覚センサ10と、把持部310,320とを含む。
【0109】
触覚センサ10は、把持部310の把持部320側の表面に配置される。そして、触覚センサ10は、把持部310,320が物体を把持すると、物体と接触し、突出部41〜46に印加された剪断力を上述した方法によって検出する。
【0110】
そうすると、ロボットの制御部(図示せず)は、触覚センサ10が検知した剪断力の大きさおよび方向に基づいて、物体を正確に把持しているかを判定する。そして、ロボットの制御部(図示せず)は、把持部310,320が物体を正確に把持していないと判定したとき、物体を正確に把持するように把持部310,320を制御する。
【0111】
このように、触覚センサ10は、ロボットのアーム300の把持部310,320に設置され、把持部310,320による物体の把持に用いられる。
【0112】
また、触覚センサ10は、自動車のタイヤの路面との接触面に配置されてもよい。そして、触覚センサ10は、自動車の幅方向等、自動車の進行方向と異なる方向から印加される剪断力を上述した方法によって検知する。
【0113】
そうすると、自動車の制御部(図示せず)は、触覚センサ10によって検知された剪断力の大きさおよび方向に基づいて、タイヤの滑りを検知する。そして、自動車の制御部(図示せず)は、タイヤの滑りを視覚情報として運転者に与える。
【0114】
このように、触覚センサ10は、タイヤの滑りを検知するために設置されてもよい。
【0115】
なお、触覚センサ10がタイヤに設置される場合、触覚センサ10は、地面との接触によって突出部41〜46が破損する可能性があるが、このような破損を防止するために、触覚センサ10は、突出部41〜46および金属プレート5を覆うカバー部材を更に備えていてもよい。
【0116】
上記においては、触覚センサ10は、弾性部材4の突出部41〜46の周囲に金属プレート5を備えると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、触覚センサ10は、弾性部材4よりも硬度が大きい部材を金属プレート5に代えて備えていればよい。
【0117】
弾性部材4よりも大きい硬度を有する部材が突出部41〜46の周囲に配置されていれば、弾性部材4よりも大きい硬度を有する部材は、XY平面内における任意の方向への突出部41〜46の移動を制限できるからである。
【0118】
そして、弾性部材4よりも大きい硬度を有する部材は、上述したアルミニウム以外に、例えば、エポキシ樹脂(NTT AT AT6001、硬度:10MPa)、エンジニアリングプラスチック(三輝工業 MCナイロン901)、ステンレス等の金属板、およびセラミック等からなり、一般的には、弾性部材4の硬度の10倍以上の硬度を有する材料からなっていればよい。
【0119】
弾性部材4よりも大きい硬度を有する部材がエポキシ樹脂、エンジニアリングプラスチックおよびセラミックのいずれかからなる場合、図18においては、図16に示すような隙間120を有する金型を用いて、エポキシ樹脂、エンジニアリングプラスチックおよびセラミックの材料が隙間に流し込まれ、その流し込まれた材料を硬化させることによって、弾性部材4よりも大きい硬度を有する部材が金属プレート5に代えて形成される。
【0120】
また、上記においては、触覚センサ10は、6個の検知部を備えると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、触覚センサ10は、n(nは正の整数)個の検知部を備えていればよい。この場合、弾性部材4は、n個の検知部をそれぞれ覆うn個の突出部を有する。
【0121】
そして、n個の検知部およびn個の突出部は、碁盤目状に配置されてもよく、市松模様状に配置されてもよく、一般的には、任意の模様状に配置されてもよい。
【0122】
更に、この発明の実施の形態においては、金属プレート5は、「周辺部材」を構成する。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
この発明は、触覚センサに適用される。
【符号の説明】
【0125】
1 基板、2 酸化膜、3,31,32 検知部、4 弾性部材、5,51,52 金属プレート、10 触覚センサ、41〜46 突出部、100 SOI基板、101 埋め込み酸化膜、102 結晶シリコン膜、3111 ノンドープ層、3112 ドープ層、110,130 金型、120 隙間、300 アーム、310,320 把持部、311〜314 センサ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、力を検知するn(nは正の整数)個の検知部と、
前記n個の検知部上に位置するn個の突出部を有し、前記基板および前記n個の検知部を覆うように配置された弾性部材と、
前記弾性部材に接して前記弾性部材上に設けられるとともに、前記基板の面内方向において前記n個の突出部の各々と所望の間隔を隔てて前記n個の突出部の周囲に設けられ、前記弾性部材の硬度よりも大きい硬度を有する周辺部材とを備え、
前記n個の検知部の各々は、1個以上のカンチレバーを含み、
前記所望の間隔は、前記検知部を破損させる破損力よりも小さい剪断力が前記検知部に印加されるように決定されている、触覚センサ。
【請求項2】
前記弾性部材は、シリコーンからなる、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項3】
前記n個の突出部の各々は、前記基板の法線方向において前記基板から離れる方向へテーパ形状からなる断面形状を有し、
前記n個の突出部の各々の前記基板と反対側の先端部は、前記法線方向において前記基板から離れる方向へ略放物線状に突出した断面形状を有し、前記周辺部材の表面から突出している、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項4】
対象物を把持する把持部と、
前記把持部の前記対象物に接する面に配置された触覚センサとを備え、
前記触覚センサは、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触覚センサからなる、ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−169749(P2011−169749A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33924(P2010−33924)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)支出負担行為担当官、近畿経済産業局、総務企画部長 若井 英二 平成21年度 地域イノベーション創出研究開発事業(器用な次世代産業用ロボット用の集積多軸触覚センサの研究開発)に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】