説明

触覚感覚を与えるための装置、システム、及び方法

【課題】種々の検知用の身体部分に触覚フィードバックを提供する。
【解決手段】装置は、1以上の振動触覚ユニット1801−1805を用い、各ユニットは、マス及びマス運動アクチュエータを有する。マス運動アクチュエータによりマスが加速されると、全体の振動触覚ユニット1801−1805が振動する。こうして、固定された振動触覚ユニット1801−1805は振動の剌激を検出する身体部分に伝達する。振動触覚ユニット1801−1805は空間的配置を検出する装置と組み合わせて使用してもよく、該装置は測定される身体部分の空間的配置を測定する。コンピュータ装置は測定される身体部分の空間的配置を用いて、振動触覚ユニット1801−1805によって与えられる望ましい振動刺激を決定する。

【発明の詳細な説明】
【関連文献】
【0001】
米国特許文献
第4,414,948号 11/1983 ツァルディアンスキー(Zarudiansky)
第5,184,319号 02/1990 クラマー(Kramer)
他の刊行物
C. J. Hasser,「力を反映する擬人化ハンドマスター("Force-reflecting Anthropomorphic Hand masters")」,Interim Report, Air ForceMaterial Command, Wright-Patterson Air Force Base, July 1995.
K. Kaczmarek and P/Bach-y-rita,「触覚装置("Tacti1e Displays")」, in Advanced Interface Design and Virtual Environment; W. Barfieldand T. Furness III Editors, Oxford University Press,1993.
D. A. Kontarinis and R. D. Howe,「遠隔オペレータへの高周波触覚情報の表示("Display ofHigh-frequency Tati1e Information to Teleoperators")」, Proceedings of the SPIE- The International Society for Optical Engineering, 1993, Vol.2057, pp.40-50.
N. J. M. Patric, T. B. Sheridan, M. J. Massimino and B. A. Marcus,「遠隔環境との相互作用のための非反応性指先触覚ディスプレイの設計および試験("Design and Testing of a Non-reactive Fingertip Tacti1eDisplay for Interaction with Remote Environments")」, Proceedings of the SPIE- The International Society for Optical Engineering, 1991,Vol. 1387,pp.215-222.
【技術分野】
【0002】
本発明は人間−機械インターフェースに関し、特に、使用者に対して触感を提供するインターフェースに関する。
【背景技術】
【0003】
仮想現実(バーチャルリアリティー;VR)は、コンピュータによって創造された、使用者がリアルタイムで多感覚的に相互作用する没入環境である。典型的には、これらの相互作用には視覚的フィードバック、音、力および触覚のフィードバック(即ち反射)、臭い、更には味覚を介する人間の感覚の幾つかまたは全てが含まれる。没入的現実の鍵は、彼または彼女の手が仮想物体を相互作用的に操作する能力である。残念ながら、現存の商業的バーチャルリアリティー装置の殆どは手で感知する装置を用いているが、これは触覚的なフィードバックを与えない。にもかかわらず、力および触覚の情報を使用者の手に与えるための手段を提供する幾つかの努力が行われてきた。力の情報とは、手の選択された部分(例えば指に対して)、一組の力を適用することを意味する。触覚情報とは、手の選択された部分(例えば指先パッド)に対して、剌激(例えば振動)を与えることを意味する。この剌激は、例えば接触時における表面の手触りまたは動的状態をシミュレートできるであろう。力を反映する現存の数少ない装置の例は、EXOS SAFiRETM(登録商標)、ルッツガー(Rutgers)大学におけるマスターIIハンドマスター装置、PERCRO力反映ハンドマスター、およびサルコス(Sarcos)T0PS力反映ハンドマスターである。既に開発された幾つかの触覚フィードバック装置には、PERCRO位置検知および触覚フィードバックハンドマスター、およびEXOSTouchMasterTM(登録商標)が含まれる。
【0004】
バーチャルリアリティーは、使用者/操作者の人間に対して力および触覚情報をフィードバックすることが望まれている唯一の分野ではない。もう一つの通常の領域は、遠隔ロボット工学(telerobotics)である。上記で述べた装置の幾つかは、遠隔ロボット工学のインターフェースとして用いられることも多い。文献中に記載された、遠隔ロボット工学用に特別に設計されたフィードバック装置の幾つかの例には、コンタリニス等(Kontariniset al)が開発した触覚形状の検知および表示システム、パトリック等(Patricket al)が使用した音声コイルに基づく触覚フィードバック装置、およびカクズマレク(Kaczmarek)およびバッハ-y-リタ(Nach-y-rita)によって開発されたピンをベースとする触覚表示アレイが含まれる。本発明の振動触覚ユニットにおける他の応用には、ジェスチャー認識、音楽発生、娯楽および医療の応用が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0005】
理想的な場合は、完全な力および触覚のフィードバックを使用者に与えて、バーチャルリアリティーまたは遠隔ロボット光学を可能な限り現実的にするのが望ましい。残念ながら、力をフィードバックする殆どの装置は、複雑で重く、高価で、しかも設置および除去が困難である。多くの触覚フィードバックの解決策もまた、面倒かつ複雑で、もろいものである。加えて、皮膚に直接接触して装着された小さい音声コイルのような、文献に記載されている幾つかの触覚フィードバック装置は、わずか数秒の動作で皮膚を麻痺させ、フィードバック装置としての効果が無くなる傾向がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、相互作用コンピュータアプリケーション、遠隔ロボット工学、ジェスチャー認識、音楽発生、娯楽、医療的応用などのような領域に用いることができる、人間/機械インターフェースである。本発明の他の目的は、使用者が感じることができる振動を発生する「マス運動アクチュエータ(mass-moving actuator」によって動かされるマスである。本発明の更に別の目的は、駆動信号を発生させて、使用者の仮想状態または物理的状態の結果として、または環境条件の結果として振動を発生させることである。本発明の更にもう一つの目的は、皮膚の物理的刺激受容体と同様に、検知する身体部分の骨格構造を振動させてフィードバックを与えることである。本発明の更に別の目的は、振動装置を複雑に駆動させることである。
【0007】
使用者が感じる触覚感覚は、固定手段によって使用者の検知する身体部分の上に装着され、または機能的にこれと関連して装着された振動触覚ユニットによって発生される。一実施例において、振動触覚装置は、マス運動アクチュエータのシャフトに偏心して接続されたマス(即ち、マスの中心は回転軸から外れている)を具備している。マスアクチュエータに電圧を与えるとシャフトが回転し、これによって偏心マスが回転する。この回転するマスは、これに対応した回転する力ベクトルを生じる。遅く回転する力ベクトルは、一連の個々の刺激のように感じられる。少数の迅速な回転については、回転する力ベクトルは単一の衝撃のように感じられる。我々は、力ベクトルの変化(即ち、方向または大きさ)を言うために、「振動」の用語を用いる。振動の例には、単一の衝撃、サイン曲線の力の大きさ、および他の関数の力ベクターが含まれるが、これらに限定されない。使用者の検知する身体部分が振動触覚ユニットによって誘起される振動を受けるときに、使用者が受け取る感じを言うために、我々は「触覚感覚」の用語を用いる。
【0008】
信号処理装置は状態信号を解釈して、マス運動アクチュエータを駆動するための駆動信号を発生する。状態信号の可変成分は、物理的なもの(例えば測定されたもの)でもよく、または仮想のもの(例えばシミュレートされたまたは内部で作成された)でもよく、これらは時間と共に変化するものでもよく(例えば状態変数はプロセスを表してもよい)、それらは整数値でもよく(例えば、二元性のまたは不連続な)、または実数(例えば連続的)であってもよい。信号処理装置は、状態信号を解釈し更に加工するコンピュータを具備してもよく、または具備しなくてもよい。この信号処理装置は信号ドライバを具備し、該ドライバは振動触覚ユニットにエネルギーを供給する駆動信号、または該ユニットが消費するエネルギーを制御する駆動信号を生じる。エネルギー源は電気的、空気圧式、水圧式、および燃焼式のものでよいが、これらに限定されない。ドライバは、閉ループ制御のための電流アンプおよびセンサを有する電気モータコントローラ、加圧液体またはガスの量を制御する流量弁、燃焼エンジンへの燃料の量を制御する流量弁などであり得るが、これらに限定されない。このような信号処理装置およびマス運動アクチュエータの詳細は、当業者の常識である。
【0009】
状態信号は、種々の条件に応答して発生され得る。一つの実施例では、使用者の物理的条件および/または使用者の環境を測定する1以上のセンサ類が、物理的状態信号の1以上の成分を発生し得る。他の実施例では、コンピュータシミュレーションが、シミュレートされた(例えば仮想の)状態または条件から、仮想状態信号の1以上の成分を決定し得る。仮想状態は、物理的状態によって任意に影響され得る。仮想状態にはコンピュータシステムまたはタイミングシステムが作成できる如何なるものも含まれ、これには以前の事象からの固定された時間、シミュレーションにおける1以上の仮想物体の位置、速度、加速(または他のダイナミック量)、シミュレーションにおける二つの仮想物体の衝突、コンピュータのジョブまたは処理の開始または終了、他の処理またはシミュレーションによるフラッグの設定、状態の組合せなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。仮想状態信号は、仮想状態変数の機械読み取り可能な測定である。
【0010】
物理状態信号は、物理状態変数から測定される。これらの変数は、使用者の身体部分の物理的状態または使用者の物理的環境に関連している。物理状態変数には、環境における何れかの測定可能なパラメータ、または使用者の身体部分に関連した何れかの測定可能なパラメータが含まれる。環境における測定可能な物理的パラメータの幾つかの例には、身体部分の状態、環境における物体の位置、環境における物体に付与されるエネルギーの量、環境における物体の存在、物体の化学的状態、および環境における温度等が含まれるが、これらに限定されるものではない。身体部分の状態には、他の身体部分または環境中の点に対する当該身体部分の物理的位置、速度または加速が含まれる。また、身体部分の状態は如何なる身体機能をも含み得るが、ここでの測定された状態信号には脳波計(EEC)、心電図(ECG)、筋電計(EMG)、エレクトロオプティグラフまたは凝視センサ(eye-gaze sensor)、並びに関節角度、心拍速度、皮膚または皮下の温度、血圧、血中酸素(または何れかの測定可能な血液化学成分)の濃度、消化作用、ストレスレベル、音声活動または音声認識などを測定するセンサ類からの出力が含まれる。使用者の音声は、測定された物理的状態変数を構成することができ、ここでは使用者が話した言葉が検知および/または認識されて、対応する駆動信号を発生する。物理的状態信号は、物理的状態変数の機械読み取り可能な測定値である。
【0011】
状態信号が信号処理装置に与えられ、該処理装置は状態を解釈して、振動触覚ユニットを如何にして駆動するか、また何時駆動するかを決定する。信号処理装置は、状態信号から解釈される事象に応答し得る駆動信号を発生する。事象の例には、接触、ジェスチャー、話された言葉、パニックまたは気絶の発作などが含まれる。状態信号の解釈は二値的なもの、即ち、二つの値の間での状態の単純な変化あってもよく、そうでなくてもよい。二値的事象の一例は、二つの仮想物体または現実の物体の間の接触vs.非接触である。解釈のプロセスは、状態変数成分の何等かの一般的関数を含み得る。解釈関数は、整数または実数値の出力制御値を生じ得る。非二元値の解釈出力は、典型的には、非二元的駆動信号を生じるような信号処理装置に関連している。
【0012】
駆動信号の関数形態を変化させることにより、振動触覚装置が発生するフィードバックの種類もまた変化し得る。この装置は、単一または複数の振動触覚ユニットからの非二値性信号として定義される、複雑な触覚を発生させることができる。複雑な触覚感覚の例には、(1)振動の振幅を変化させて経時的に均一でないプロファイルをもたせること、(2)振動の周波数を変化させること、(3)衝撃の持続時問を変化させること、(4)振幅および周波数の組合せを変化させること、(5)2以上の振動触覚ユニットを、均一または不均一な振幅プロファイルで振動させること、(6)複数の振動触覚ユニットを異なった振幅または周波数プロファイルでシーケンスすること等が含まれる。
【0013】
振動または衝撃の周波数および振幅は、マス運動アクチュエータに供給される駆動信号を変更することによって変化させることができる。周波数および振幅はまた、マスを増大し、または旋回半径を変化させること(例えばその偏心性を変化させる)によって制御することができる。使用者が感じる周波数の感覚は、可変周波数で振動触覚ユニットに与えられる出力(パワー)を変調することによって、振幅とは独立に変化させることができる。この技術は振幅変調と呼ばれており、当業者の常識である。この周波数および振幅における変化は、複雑な複合形態または他の形態の情報を使用者に伝達するために使用することができる。
【0014】
センサは、使用者に感得される振動の周波数および振幅を決定するために、振動触覚ユニットまたは検知する身体部分に装着することができる。この情報を用いるフィードバック制御ループを加えることにより、周波数および振幅をより緊密に制御し、または全体の振動装置/身体システムの共鳴周波数において効率的にピークに到達することができる。
【0015】
その上に振動触覚ユニットが装着され、または振動触覚ユニットと機能的に関連付けられた検知する身体部分の例には、四肢の先端部分、ファランクスまたは中手骨の背面、手掌、前腕、上腕、下腕、肩、背中、胸部、乳首、腹部、頭部、鼻、顎、鼠踵、性器、大腿、太股、脹ら脛、脛、足、足指などが含まれるが、これらに限定されるものではない。複数の振動触覚ユニットを、異なった検知する身体部分またはその近傍に配置してもよく、また一致させて、または独立に駆動させてもよい。
【0016】
夫々の振動触覚ユニットは、固定手段によって身体に固定すればよい。固定手段は、振動触覚ユニットを検知する身体部分に取り付け、振動触覚ユニットによって発生された振動を伝達する(また、おそらくは変更する)手段として定義される。この手段は、布または軟質ポリマーでできたストリップのような可撓性のもの、或いは金属または硬質ポリマーのような剛性のもので、肉、皮膚または毛髪を掴み、または挟むものであってもよい。この固定手段にはまた、皮膚もしくは毛髪に接着またはテーピングし、または糸もしくはロープで四肢に結び付け、或いはべルクロ(登録商標)または同様に機能する手段で衣服に取り付けるものも含まれる。振動触覚ユニットはまた、他の構造体に取り付け、次いで上記で述べたのと同じ手段でこれを身体部分に取り付けてもよい。アクチュエータによって発生した振動は、この構造体(剛性または非剛性)によって、またはリンクトランスミッションまたは液体トランスミッションを介して、検知する身体部分に伝達することができる。
【0017】
偏心マスは、モータシャフトに直接装着する必要はない。機械的トランスミッションは、モータシャフトとは異なるシャフト上で当該マスを回転させてもよい。マス運動アクチュエータは、このシャフトを回転させる。空気または液体のような流体もまた、運動をパワー源から回転する偏心マスへと伝えることができる。磁界を変化させることもまた、鉄のマスの振動を誘起するために用いることができる。
【0018】
先に述べたように、状態信号は物理的状態または仮想状態に関連し得る。状態が物理的条件を表すときは、本発明は状態信号を生じる状態測定センサを含む。この状態測定センサは、検知する身体部分の幾つかの性質を測定することができる。振動触覚の刺激を受けることに関連した身体部分は「検知する身体部分」と称され、また駆動信号の発生に関連した身体部分は「測定される身体部分」と称されることを想起されたい。信号処理装置は、触覚センサ、位置センサ、曲げセンサ、速度センサ、加速センサまたは温度センサのようなセンサ類からの信号を受け取り、駆動信号を発生する。このようにして、使用者は彼の動作または物理状態に基づくフィードバックを受け取ることができる。例えば、振動触覚装置は、ある種の物理的運動をさせるように使用者を訓練するために用いてもよい。この場合、その動作を行う身体部分(これは検知する身体部分でもある)の位置または運動は、状態測定センサによって測定される。訓練される身体部分に対する直接の刺激は、仕事の訓練を高める。異なったレベルの周波数または振幅の関数の形での複雑な駆動によって、彼の動作が正しいか正しくないかを知らせることができ、その正確さのレベルを周波数または振幅のレベルに対応させることができる。
【0019】
加えて、検知する身体部分(これはまた測定される身体部分でもある)は使用者に示される図形表現を有することができる。使用者はまた、彼の動作に対して、本発明により与えられる振動触覚的な合図と組み合わせて、視覚的、聴覚的、味覚的、嗅覚的、力および/または温度の合図を与えられてもよい。使用者は、仮想環境に没頭してもよい。使用者は、仮想物体と相互作用する彼/彼女の身体部分の図形的表示を見ることができ、また同時にその相互作用をシミュレートする触覚に対応した感じを得ることができる。例えば、使用者は検知する身体部分および測定される身体部分である彼/彼女の指を有することができる。次いで、使用者は、仮想環境において仮想物体に接触する彼/彼女の仮想の手を見ることができる。次に、使用者は、彼が仮想の指先を用いて仮想物体上への仮想圧力を増大させるときに、増大する振動刺激を彼/彼女の物理的な指先に感じるであろう。
【0020】
先に述べたように、本発明の振動触覚装置を用いることにより、使用者は、彼の身体部分の状態に基づく触感を受け取ることができる。先のケースにおいて、当該状態には身体部分の位置、および他のダイナミックな量が含まれていた。ある種の応用において、測定される身体部分は検知する身体部分と同一である(先に列記した可能な検知する身体部分のリストは、測定される身体部分にも適用される)。他の応用において、それらは異なった身体部分である。測定される身体部分が検知する身体部分と異なるとき、本発明は、検知する身体部分と測定される身体部分とを関連付けるカップリング装置として作用する。
【0021】
もう一つの応用において、使用者は、必ずしも使用者の動作または状態とは関連しないコンピュータシミュレートされた環境条件の結果として、触覚フィードバックを受け取ることができる。可変駆動レベルをもった振動触覚ユニットは、種々の接触状態、例えば液体および固体との接触および瞬間的もしくは連続的な接触をシミュレートするために使用することができる。例えば、コンピュータシミュレートされた仮想環境に没頭している使用者は、彼の身体を横切るシミュレートされた流体(空気または水のような)を感じることができる。このようなシミュレーションにおいて、振動触覚ユニットのアレイを、身体の対応部分を刺激する圧力波に対応した配列で振動させることができ、その振動の振幅は、シミュレートされた圧力の異なったレベルに対応するように変化させることができる。使用者はまた、彼の仮想の身体の一部と接触する仮想物体を感じることができる。使用者は、振動触覚ユニットのアレイをシーケンシングすることによって、彼の仮想の腕を這い上がる仮想の虫を感じることができる。使用者が受け取る彼の動作に関連付けられていない触感を伴うために、使用者は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、力、温度および他の形態のフィードバックを与えて、シミュレートされた環境の現実性を高めることができる。
【0022】
振動触覚装置の更に別の応用において、一群の使用者が触感を受け取ってもよい。一つの例では、使用者は個々の振動触覚ユニットを着用し、または次のようにして振動触覚ユニットを共有することができる。触感は、他の使用者の検知する身体部分と物理的に接触している一人以上の使用者によって共有され得る。例えば、一人の使用者は、振動触覚ユニットを彼の指の後ろに着用すればよい。振動触覚ユニットを着用していない第二の使用者は、第一の使用者が彼の指の掌側を第二の使用者の検知する身体部分の上に置いたときに、第一の使用者を介して伝達される振動触覚フィードバックを得ることができる。各振動触覚ユニットのための駆動信号は、使用者の動作を介して、またはコンピュータシミュレートされた事象を通してコンピュータ制御され得る。第二の例において、一群の使用者は、個々人が装着した振動触覚ユニットを通して、夫々が同一の触覚フィードバックを得ることができる。この共通の駆動信号は、一人の任意に分離された使用者からの、測定される身体部分に対応していてもよい。また、異なった使用者が、1以上の振動触覚ユニットのための共通の駆動信号を生じる原因であってもよい。例えば、一人の使用者の腕の移動は、夫々の使用者の腕の振動触覚ユニットを制御し、第二の使用者の音声が、夫々の使用者の背中の振動触覚ユニットを制御し、また他の三人の使用者の凝視は、彼等が一致して凝視する振動触覚ユニットを制御してもよい。一人の使用者が使用者の多くの振動触覚感覚を制御する適用の一例は、実施者が音響のための振動感覚を創出する新しい形態の娯楽である。
【0023】
好ましい実施例において、振動触覚ユニットは、アメリカ合衆国カリホルニア州パロアルト所在のバーチャルテクノロジーズ社によって製造されたサイバーグラブTM(CyberG1oveTM)(登録商標)のような機器を備えた手袋に固定される。このサイバーグラブは、手の関節の角度を測定するセンサを有している。サイバーグラブの指先は、使用者がこの手袋を着用しながら現実に物理的物体を取り扱えるように、開かれている。開いた指先は、発生された振動触覚の感覚と共に、使用者が現実の物体の感覚を感じることを可能にする。指先は開いている必要はなく、サイバーグラブの22センサモデルのように完全に閉じていてもよい。夫々の振動触覚ユニットのマス運動アクチュエータは、円筒状ハウジング内に収容され、夫々の指、親指および手掌上の手袋に装着される。各マス運動アクチュエータは、小さなDCモータで構成されており、そのモータのシャフトには偏心マスが固着されている。ケーシングは管状のプラスチックでできており、マスの運動を使用者から保護し、また回転するマスから使用者を保護する。ケーシングは、如何なる剛性材料でできていてもよく、この材料には鋼、アルミニウム、青銅、銅、プラスチック、ゴム、木、複合材、ガラス繊維、ガラス、カードボード等が含まれるが、これらに限定されるものではない。ケーシングは、マス運動アクチュエータから固定手段へと振動を伝達することができる固体バリア、ワイヤメッシュ、格子、または柱状支持体を形成してもよい。器具を装着した手袋は、コンピュータに使用者の手および指の位置を知らせる。次いで、信号処理装置の一部であるコンピュータは、手の状態信号(およびアプリケーションがそれを必要とするときは何等かの仮想状態信号)を解釈する。次に、コンピュータは制御信号を発生し、これはドライバによって処理されたときに、アクチュエータを駆動して触覚感覚を創り出す。
【0024】
偏心マスを用いた上記で説明した本発明の実施例の一つの特徴は、システムに付与されるエネルギーを、電磁気コイル(例えばパトリック等およびEXOSタッチマスター社によって使用されたスピーカー音声コイル)を用いたときに必要とされるエネルギーよりも小さくできることである。エネルギーは回転慣性として偏心マスに蓄えられるのに対して、音声コイルに基づくシステムは、コイルが方向を変える毎に全ての慣性エネルギーを喪失する。
【0025】
本発明のもう一つの特徴は、皮膚の物理的剌激受容体と共に、身体部分の骨構造を振動させることである。これは、神経が容易には過剰刺激されず、また麻痺しない点で、皮膚の機械的剌激受容体(マイスナー、メルケル、ルフィーニおよびパシニアン小体)だけを剌激するよりも優れた利点を有している。加えて、使用者への情報の形態は物理的感覚に近いものであり、筋肉および関節は、完全な力フィードバックによるのと同じように剌激される。その結果、振動触覚ユニットは、敏感な皮膚の物理的剌激受容体を有する身体部分に取り付ける必要はない。例えば、振動触覚ユニットは指の爪または肘に取り付けることができる。
【0026】
使用者がコンピュータシミュレートされた環境に没頭している実施例において、振動触覚ユニットの駆動は、完全なカフィードバック装置が行うのと同様に、接触している物理的物体の感覚を近似することができる。振動触覚ユニットによって発生される筋肉および関節における深い衝撃的な感覚は、使用者が仮想物体に触れるときに、固有受容状態における変化をシミュレートする。本発明は、持続性の力フィードバック装置を凌駕する多くの利点を提供する。例えば、その単純性によって、本発明の振動触覚装置はより小さく、より軽く、面倒でなく、より丈夫で且つ安価に製造することができる。
【0027】
本発明は、米国特許#5,184,319号でクラマーが、米国特許出願#8/373,531号(許可)でクラマーが、米国特許#4,302,138号においてザルジアンスキー(Zarudiansky)が、米国特許#5,354,162号でブルデア(Rrudea)が、また米国特許#5,389,865号でヤコブス(Jacobus)が夫々提供している持続的力フィードバック装置と組み合わせて使用してもよい。これらの特許および特許出願は、ここでの引用により本明細書の一部として本願に組み込まれる。このような組合せは、上記の持続的力フィードバック装置により生じることができる周波数応答よりも高い周波数応答性を与えることができ、および/または、全システムのコストおよび/または寸法を低減することができる。本発明はまた、加熱もしくは冷却装置、袋装置(bladder device)または音声コイルのような他の触覚フィードバック装置と組み合わせて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】そのシャフトに取り付けられた偏心マスを有する電気的マス運動アクチュエータの斜視図である。
【図1B】そのシャフトに取り付けられたマスを有する線形マス運動アクチュエータの斜視図である。
【図2A】振動触覚ユニットの一例を示す側断面図である。
【図2B】振動触覚ユニットの一例を示す斜視図である。
【図3】図2Bに示した振動触覚ユニットの斜視図であり、ここでは該振動触覚ユニットが指先の平坦な面に取り付けられている。
【図4】指先の背面に取り付けられた振動触覚ユニットの斜視図であり、ここでは該ユニットが爪に接触している。
【図5】基端部側のファランクスの背面に取り付けられた振動触覚ユニットの他の斜視図である。
【図6】手掌に取り付けられた振動触覚ユニットの斜視図である。
【図7】手掌部の背面(手の裏側)に取り付けられた振動触覚ユニットの斜視図である。
【図8】足の頂部に取り付けられた振動触覚ユニットの斜視図である。
【図9】頭の種々の位置に取り付けられた多数の振動触覚ユニットの側面図である。
【図10A】身体の種々の位置に取り付けられ多数の振動触覚ユニットの正面図である。
【図10B】身体の種々の位置に取り付けられ多数の振動触覚ユニットの背面図である。
【図11A】振動触覚ユニットが操作の邪魔にならずに、指先の手掌側が大きな剌激を受ける固定手段の斜視図である。
【図11B】振動触覚ユニットが操作の邪魔にならずに、指先の手掌側が大きな剌激を受ける固定手段の正面図である。
【図12A】振動触覚ユニットが操作の邪魔にならずに、指先の手掌側が大きな剌激を受ける固定手段の斜視図である。
【図12B】振動触覚ユニットが操作の邪魔にならずに、指先の手掌側が大きな剌激を受ける固定手段の正面図である。
【図13】マス運動体が指から離れて装着されて妨害の可能性が減少しているので、振動触覚ユニットにケースが必要とされない固定手段の斜視図である。
【図14】マス運動体が指から離れて装着されて妨害の可能性が減少しているので、振動触覚ユニットにケースが必要とされない別の固定手段の斜視図である。
【図15】感知された振動の振幅および周期を変化させるのに用いるバネを介して、振動触覚ユニット身体に取り付ける固定手段の斜視図である。
【図16A】偏心マスの旋回半径はシャフトの角速度の増大に伴って大きくなる場合の振動触覚ユニットの模式的正面図であり、w2>w1>0である場合の原理を示している。
【図16B】偏心マスの旋回半径はシャフトの角速度の増大に伴って大きくなる場合の振動触覚ユニットの模式的正面図であり、w2>w1>0である場合の原理を示している。
【図16C】偏心マスの旋回半径はシャフトの角速度の増大に伴って大きくなる場合の振動触覚ユニットの模式的正面図であり、w2>w1>0である場合の原理を示している。
【図16D】偏心マスの旋回半径はシャフトの角速度の増大に伴って大きくなる場合の振動触覚ユニットの模式的斜視図である。
【図17】電気−機械的な信号伝達の模式図である。
【図18A】位置センサおよび振動触覚ユニットの両方を備えた手袋、この場合はバーチャルテクノロジー社のサイバーグラブ(商標)(Virtual Technology Cyber-GloveTM)を示している。
【図18B】位置センサおよび振動触覚ユニットの両方を備えた手袋、この場合はバーチャルテクノロジー社のサイバーグラブ(商標)(Virtual Technology Cyber-GloveTM)を示している。
【図19A】指および手の裏に振動触覚ユニットを取り付けた検知手袋を用いた応用を模式的に示しており、バーチャルリアリティへの適用を示している。
【図19B】指および手の裏に振動触覚ユニットを取り付けた検知手袋を用いた応用を模式的に示しており、遠隔ロボット工学への適用を示している。
【図20】離間した検知手段と測定物パーツに関する仮想環境の例を模式的に示している。
【図21A】ジェスチャー認識に関する本発明の適用を示す斜視図であり、ここでは、ジェスチャーが静的である。
【図21B】ジェスチャー認識に関する本発明の適用を示す斜視図であり、ここでは、ジェスチャーは動的である(人差し指は所定の仕方で動いている)。
【図22】音楽的な応用を示す模式図である。
【図23】娯楽またはくつろぎへの応用を示す模式図である。
【図24A】医療的応用を示す模式図である。
【図24B】医療的応用を示す模式図である。
【図25A】振幅デカップリング法を示す模式図である。
【図25B】振幅デカップリング法を示す模式図である。
【図25C】振幅デカップリング法を示す模式図である。
【図26A】偏心を制御可能な振動触覚ユニットの斜視図である。
【図26B】偏心を制御可能な振動触覚ユニットの側面図である。
【図26C】偏心マスの偏心性を制御するために使用できる別の伝達法である。
【図27】振動触覚装置、バーチャルシミュレーションおよび物理的シミュレーションを含む応用を例示する概略図である。
【0029】
図1Aは、マス運動アクチュエータとして働く小さなd.c.電気モータ(100)のシャフト(102)に、偏心マス(101)を取り付けることにより得られる振動触覚ユニットの一実施例を示している。ここで、該マスはパイの形状を有しているが、重心を回転軸から外して偏心性を与える他の如何なる形状を用いてもよい。この偏心性は、回転の間に向きが変わる力ベクトルを生じさせて、ユニットに振動を誘起する。このマスは、例えば、鋼、アルミニウム、プラスチックまたは容器に収容された液体のような如何なる材料でできていてもよい。
【0030】
図1Bは、線形マス運動アクチュエータ(105)のシャフト(105)にマス(103)を取り付けることにより得られる、振動触覚ユニットの他の実施例を示している。該マスはここではディスク状であるが、他の如何なる形状を用いてもよい。この線形アクチュエータは、該マスを前後に移動させ、これを急激に加速または減速することによって、当該ユニットに振動を誘起させる。当該マスは、例えば、鋼、アルミニウム、プラスチックまたは容器に収容した流体のような如何なる材料でできていてもよい。
【0031】
図2Aおよび図2Bは、それぞれ、ケースの中にマス運動アクチュエータ(202)およびマス(201)を収容した一例を示す断面図および斜視図である。ここでも、偏心マス(201)は電気モータのシャフト(204)に取り付けられている。ケースは、運動するマスが使用者によって破壊されるのを防止し、また使用者が該マスに打撃されるのを防止する。このケーシングは剛性の如何なる材料で作製してもよく、アルミニウム、鋼、プラスチック、ガラス、ガラス繊維複合体等のような種々の材料で作製することができる。典型的には、当該装置ができるだけ限り邪魔にならないように、小さく且つ軽量のマス運動アクチュエータ、マス、収容手段および固定手段を有するのが望ましい。本発明のこの実施例は、以下、後続の多くの図面で用いられる振動触覚ユニットのサンプルとしての役割を有することになる。
【0032】
図3は、指先に振動触覚ユニットを取り付けるための一つの固定手段を示している。この例では、振動触覚ユニット(300)が、固定手段(301)を用いて指先の手掌側に直接取り付けられている。この固定手段は、例えば布、ファブリック、テープ、べルクロ(登録商標)または軟質ポリマーのような可撓性材料で作製してもよく、或いは金属、硬質ポリマーまたは木のような剛性材料で作製してもよい。固定手段は指全体を取り囲む必要はなく、クランピングまたはピンチングによって指に把持させればよく、或いはそれを粘着剤またはテープで貼り付けてもよい。また、使用者が手袋を着用するときには、振動触覚ユニットをこの手袋に縫い付け、または結合してもよく、手に直接固定する必要はない。これは、人間の身体に振動触覚ユニットを配置する種々の方法を示した以下の図においても同様である。
【0033】
図4は、振動触覚ユニット(400)を、固定手段(401)を用いて指に装着する別の方法を示している。この場合、当該ユニットは、特有の触感または振動刺激を与えるために、指先の背面側の指爪(検知する身体部分)の上に直接配置される。このユニットは爪、その下の肉および骨を十分な振幅で振動させるので、その感覚は、皮膚で局部的に感じられるのではなく、指全体で感じることができる。
【0034】
図5は、振動触覚ユニット(500)を、固定手段(501)を用いて指に装着する別の方法を示している。この場合、当該ユニットは基節骨の背面に配置される。該ユニットは指全体に感覚を与えるから、それが背面に装着されていても、手掌で仮想物体に接触したときには当該部分に感覚が与えられるであろう。掌側での物理的物体の操作と組み合わせて用いると、掌側での振動感覚は高められる。これらの特徴は、基節骨に限定されない。何れの指骨または部分の背面に装着した場合にも同じ効果を生じるであろう。
【0035】
図6は、振動触覚ユニット(600)を、固定手段(601)を用いて指に装着する別の方法を示している。この場合、当該ユニットは使用者の手掌に配置される。手袋(器具を備え、または備えていない)を着用するときは、当該ユニットを手袋の内側または外側のポケット状キャビティー内に装着してもよく、明確に手に固定する必要はない。
【0036】
図7は、固定手段(701)を用いて、振動触覚ユニット(700)を使用者に装着する別の方法を示している。この場合、当該ユニットは中手骨の背面または手の裏に配置される。ここでも、手袋(器具を備え、または備えていない)を着用するときは、当該ユニットを手袋の内側または外側のポケット状キャビティー内に装着してもよく、明確に手に固定する必要はない。
【0037】
図8は、固定手段(801)を用いて、振動触覚ユニット(800)を使用者に装着する別の方法を示している。この場合、当該ユニットは使用者の足の頂部に配置される。ソックス状の下着(器具を備え、または備えていない)を着用するときは、当該ユニットをこの下着の内側または外側のポケット状キャビティー内に装着してもよく、明確に足に固定する必要はない。
【0038】
図9は、振動触覚ユニット(900)を使用者に装着する別の方法を示している。この例では、当該ユニットが使用者の頭部に配置される。帽子状の下着(器具を備え、または備えていない)を着用するときは、当該ユニットをこの下着の内側または外側のポケット状キャビティー内に装着してもよく、明確に頭部に固定する必要はない。配置する位置には、側頭部(900)、前頭部(901)、頭頂部(902)、後頭部(903)が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
図10Aは、振動触覚ユニット(1000〜1012)を使用者に固定する別の方法を示している。これらの例において、当該ユニットは使用者の身体の正面または背面の全体に亘って配置される。ボディースーツ(器具を備え、または備えていない)を着用するときは、当該ユニットをこのスーツの内側または外側のポケット状キャビティー内に装着してもよく、明確に身体に固定する必要はない。アクチュエータの組み合わせを駆動することにより、局部的な触感を制御することができる。例えば、前腕部(1007)および上腕部(1005)のアクチュエータが等しい強度で駆動すれば、使用者は、この二つの間に生じた一つの感覚源が存在するとの感覚をもつであろう。これは、身体の何れの位置にある振動ユニットの如何なる組合せについても適用され得る。この影響はまた、多くの振動触覚ユニットが連続的に活性化されたときにも明らかである。一つの振動が、駆動している振動触覚ユニットの間を「移動する」という感覚が存在する。図示の振動触覚ユニットは、当該ユニットを取り付ける種々の位置の例を示している。これらの位置の幾つかには、前頭部(1000)、肩(1001)、腕の側部(1003)、上腕部(1005)、胸部(1002)、乳頭部(1004)、腹部(1006)、前腕部(1007)、鼠蹊部(1008)、ヒップ(1009)、大腿部(1010)、膝部(1011)、および頸部(1012)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
図10Bは、振動触覚ユニット(1020〜1028)を使用者に固定する別の方法を示している。これらの例において、振動触覚ユニットは、使用者の身体の背面全体に亘って配置される。ボディースーツ(器具を備え、または備えていない)を着用するときは、当該ユニットをこのスーツの内側または外側のポケット状キャビティー内に装着してもよく、明確に身体に固定する必要はない。図示の振動触覚ユニットは、当該ユニットを取り付ける種々の候補位置の例を示している。これらの位置の幾つかには、後頭部(1020)、首の背面(1021)、肩胛骨の間(1022)、上腕部の裏面(1023)、前腕部の裏面(1025)、背中の下部(1024)、臀部(1026)、大腿部の裏面(1027)、および脹ら脛(101028)が含まれるが、これらに限定されない。図10Bにおける振動触覚ユニットは、図10Aにおけるユニットと組み合わせてもよい。この複数の振動触覚ユニットは、多くの振動触覚ユニットで複雑な触感を発生させ得る一つの方法を示している。
【0041】
図11Aおよび図11Bは、指の操作を邪魔することなく、指先が刺激され得るように装着された振動触覚ユニットを示している。図11Aは、本発明の斜視図であり、図11Bはその正面図である。その端部が開いていても閉じていてもよい構造体(1002)が、指先を取り囲んでいる。固定手段は三つのパーツ、即ち、指先を当該構造体に固定するパーツ1、振動触覚ユニットを当該構造体に固定するパーツ2、および当該構造体(1102)であるパーツ3を具備している。固定手段(1103)であるパーツ1(これは可撓性部材でも剛性部材でもよい)は、指先の掌側で指を構造体に保持する。このパーツは調節可能であっても、固定であっても、可撓性であっても、または伸長可能であってもよい。パーツ2において、振動触覚ユニット(1100)は、可撓性部材でも剛性部材でもよい手段(1101)を用いて、指の手掌側から離れた構造体の頂部に装着される。この方法において、振動触覚ユニットからの振動は、構造体を介して指の手掌側に直接伝達されて、該手掌側の局部的な神経により大きな刺激を与える。もう一つの実施例では、構造体(1102)および振動触覚ユニットケーシング(1100)を一つのパーツで作製して、固定手段(1101)であるパーツ2を不要にすることができる。
【0042】
図12Aおよび図12Bは、指の操作が当該ユニットに邪魔されることなく、指が剌激され得るように装着された振動触覚ユニットを示している。図12Aは、本発明の斜視図を示しており、図12Bはその側面図を示している。構造体(1202)は、指先の手掌側に取り付けられる。固定手段は三つのパーツ、即ち、指を当該構造体に固定するパーツ1、振動触覚ユニットを当該構造体に固定するパーツ2、および当該構造体(1202)であるパーツ3を具備している。パーツ1(1203)は可撓性部材でも剛性部材でもよい。このパーツは調節可能であっても、固定であっても、可撓性であっても、または伸長可能であってもよい。パーツ2において、振動触覚ユニット(1200)は、可撓性部材でも剛性部材でもよい手段(1201)を用いて、指の手掌側から離れた構造体の頂部に装着される。他の実施例では、構造体(1202)および振動触覚ユニットケーシング(1200)を一つのパーツで作製して、固定手段(1201)であるパーツ2を不要にすることができる。
【0043】
図13は、マス運動アクチュエータ/マスアセンブリーのためのケーシングを必要としない振動触覚ユニットおよび固定手段を示している。小さな剛性または半剛性の構造体(1302)は、偏心マス(1301)がマス運動モータ(1300)のシャフト(1304)の主軸回りで回転するのを指が妨害できないように、振動触覚ユニットを指先の上方に持ち上げている。構造体(1302)は、剛性でも可撓性でもよく且つ当該構造体と一体でも別体でもよいストラップ(1303)を用いて指先に取り付けられる。
【0044】
図14は、マス運動アクチュエータ/マスアセンブリーのためのケーシングを必要としない振動触覚ユニットおよび固定手段を示している。小さな剛性または半剛性の構造体(1404)は、偏心マス(1402)がマス運動モータ(1401)のシャフト(1403)の主軸回りで回転するのを指が妨害できないように、振動触覚ユニットを中央ファランクスの上方に持ち上げている。構造体(1404)は、剛性でも可撓性でもよく且つ当該構造体と一体でも別体でもよいストラップ(1405)を用いて中央ファランクスに取り付けられる。
【0045】
図15は、振動触覚ユニットが、感得される振動の振幅および周波数を変化させるためにバネ(1501)を介して指先に接続されるような、更に別の振動触覚ユニット(1500)および固定手段を示している。可撓性部材でも剛性部材でもよいストラップ(1502)は、バネを指先に保持する。このバネは、振動触覚ユニットの本来の周波数を変化させる。或いは、この振動触覚ユニット/バネ装置は、指の上ではなく指の下に取り付けることもできる。また、このバネを或る種のアクチュエータで置き換えて、振幅および周波数を制御し、および/または振幅および周波数の範囲を広げてもよい。加えて、バネまたはアクチュエータと組み合わせてダンパーを導入して、感知される振動の振幅および周波数を更に制御および/または拡大してもよい。このダンパーの中に電気的/流体学的な液体を使用して、当該機械的システムにおける制動時間を制御してもよい。
【0046】
図16A,16B,16Cおよび図16Dは、偏心マスをシャフトに装着する方法の変形例を示している。偏心マスの旋回半径Kは、シャフトの角速度が増大するに伴って増大する。上方の三つの図(図16A,16Bおよび16C)はその原理を示しており(w2>w1>0)、一番下の斜視図(図16D)は実施器具を提供する。図16Dにおいて、構造体(1601)はマス運動アクチュエータ(1600)のシャフト(1602)に取り付けられている。該構造体は、バネ(1604)およびマス(1603)のアセンブリーを具備している。該バネの一端は当該構造体の内側に取り付けられ、また他端はマスに取り付けられている。当該マスは、構造体中のガイドの内側を、シャフトに向って前後に自由に移動する。旋回半径Kは、当該マス(1603)の旋回中心とマス運動アクチュエータシャフト(1602)の主軸との間の距離である。シャフトの角速度が増大するに伴って、当該マスにより感じられる遠心力は増大し、バネを更に伸ばして旋回半径を増大させる。この装置は、高角速度においてより大きな振動を得ることができるように、始動時における装置の初期角度を最小限にして、当該マスの偏心を徐々に増大させる。これによって、シャフトに保持されているベアリングに対するストレスが緩和され、且つ回転を開始させるのに必要な大きな初期トルク(回転を維持するのに必要なトルクに比較して)が低減される。或いは、この受動的なバネを、当該マスの旋回半径を制御または設定する能動的な装置で置き換えてもよい。この能動装置は、形状記憶合金アクチュエータ、または当該マスの位置を制御できる他の何れかの機構を具備することができる。
【0047】
図17は、本発明の好ましい実施例において、電気的および機械的信号が触覚フィードバック制御システムを介して伝達される仕方を示している。図示の実施例では、振動触覚ユニットのマス運動アクチュエータとして、d.c.サーボモータ(1701)を用いている。コンピュータ(1707)または他の信号処理手段が、所望の駆動レベルの制御信号に対応したデジタル値を、デジタル/アナログ変換器D/A(1703)に送信する。次いで、該D/Aのアナログ出力は可変利得増幅器(1704)によって増幅されて、アナログ電圧駆動信号を生じる。この電圧はサーボモータに印加されて、所望の角速度でモータを駆動させる。該電圧信号は、所望のトルクで該モータを駆動させるために、交互に電流駆動信号に変換される。サーボ制御ループの速度減速は、タコメータフィードバック(図示せず)によって行えばよい。コンピュータ(1707)、デジタル/アナログ変換器(1703)、アナログ/デジタル変換器、A/D、(1702)、バス(1702)および可変利得増幅器(1704)は、信号処理装置の素子であってもよい。アナログ関節角度センサ(1705)に由来するA/D(1702)からのデジタル化された値は、物理状態信号として指の位置情報(測定された身体部分)をコンピュータに与える。仮想環境の応用において、物理状態信号は仮想の手に対応した動作を生じることができる。仮想の手の一つの指が仮想物体と交差することが分かったら、コンピュータは、仮想物体の形状および従順性の知識を用いて、仮想指に適用すべき仮想の力を計算する。次いで、コンピュータは使用者の指(検知する身体部分)に装着された振動触覚ユニットに駆動信号を送り、仮想の力に関する触覚情報を伝達する。歪みゲージ、光ファイバー、電位計または他の角度センサを、アナログ関節角度センサ(1705)として使用することができる。歪みゲージ角度センサは、クラマー等(Krameret al.)の米国特許第5、047、952号および第5,280,265号に開示されており、これらの特許は本願明細書の一部をなす参照文献として本願に組み込まれる。
【0048】
図18Aおよび図18Bは、本発明の好ましい実施例を示している。アメリカ合衆国カリホルニア州パロアルト所在のバーチャルテクノロジー社によって製造されたサイバーグラブTM(登録商標)のような機器を備えた手袋(1820)は、その上に、手(測定される身体部分)の関節角度を測定するセンサ類(1807〜1819)を有している。同図において、使用者が手袋を使用していても物理的物体を手で扱えるように、手袋の指先は開放されている。これによって、使用者は現実の物体の触感を感じることが可能になる。振動触覚ユニット(1801〜1806)は円筒状のハウジング内に収容されて、夫々の指(1801〜1804)、親指(1805)および手掌(1806)に固定されている。ケーシングは円筒状プラスチックでできており、マスの運動を使用者から保護し、且つ使用者を回転するマスから保護する。
【0049】
図19Aは、手の形態、並びに手の空間的配置を測定できる検知手袋(1900)を着用した使用者を示している。この検知手袋は、手の指および甲に固定された振動触覚ユニット(1901)を有している。使用者は、コンピュータモニター(1904)上の彼の手の画像表示を通して、視覚的フィードバックを受け取る。コンピュータ(1904)は、手袋に装着されたセンサから、手袋センサインターフェース(1902)を介して状態信号(使用者の手の空間的配置に関する情報)を受け取る。視覚画像の手(1906)がモニター上の仮想物体(1905)に接触(1908)すると、コンピュータは制御信号を振動触覚ユニットドライバ(1903)に送信し、次いで該ドライバは駆動信号を振動触覚ユニット(1901)に送信する。
【0050】
同様の設定において、図19Bは同じ手袋(1900)と、画像ディスプレイの代わりに、ロボット腕(1911)を遠隔制御するコンピュータインターフェースと、を示している。ロボットはその把持器上に、ロボットが物理的物体(1913)に触れた時点を検出する接触センサを有している。使用者は、指(測定される身体部分)の位置読み取りを生じる手袋上のセンサを介してロボット腕を制御するが、その際、この位置の読みは手袋インターフェース装置(1902)に送信され、次いでコンピュータ(1904)に出力され、更にコンピュータは適切な命令をロボットに送信する。ロボットの位置情報および接触情報(1910)は、次いで状態信号としてコンピュータにフィードバックされる。コンピュータはこの信号および装置を解釈し、如何なる種類の振動フィードバックを、振動触覚ユニットドライバ(1903)を介して使用者の振動触覚ユニット(1901)(他の振動触覚ユニットは図示せず)に送信すべきかを決定する。力または圧力センサを、接触センサの代わりに把持器に装着してもよい。次いで、使用者は、物体に対する力または圧力に応じた変化するレベルの振動フィードバックを受け取る。これによって、特に一定の把持力で破壊されるような繊細な物体の取扱いにおいて、より正確且つ安全に仕事を行うための遠隔操作が可能になる。使用者は、接触フィードバックを使用するために、必ずしもロボットまたは接触対象を制御する必要はない。振動触覚装置は、単純に動作して、使用者の動作の結果としての物体との接触の有無を使用者に知らせることができる。
【0051】
図20は、測定される身体部分(2003)は足であるが、振動触覚ユニット(2001)は検知する身体部分(2004)として動作する指に装着されるような、バーチャルリアリティーにおける実施例を示している。この足は、コンピュータシミュレーションにおける画像(2004)と関連づけられている。この場合、画像は足のように見える。足の動きは、身体センサインターフェース(2006)を介してコンピュータ(2008)に送信され、またコンピュータモニターに映し出される。画像の足(2004)が仮想物体(2010)と接触したことをコンピュータ(2008)が決定したとき、コンピュータはこの状態信号を解釈して、制御信号を振動触覚ユニットドライバー(2007)に送信し、指の上の振動触覚ユニット(2001)を駆動させる。これは、画像の足が仮想物体に接触(2005)するように使用者が彼の足を動かすこと、または仮想物体が使用者の動作とは関係なく画像の足の中へ移動することに起因して起こり得る。使用者は次に、仮想物体の接触と指先の感覚とを関連付ける必要がある。これは足が接触するときに足を振動させるように自然なようには思えないが、これは測定される身体部分から分離された検知する身体部分を例示している。これは、測定される身体部分を検知する身体部分と一致させることができないとき、例えば、測定される身体部分が眼球であったり、または測定される身体部分が別の使用者のものであるときに必要とされる。
【0052】
図21Aおよび図21Bは、位置センサおよび振動触覚ユニット(2100)の両方を含んだ手袋(2101)を示している。バーチャルテクノロジー社のサイバーグラブTM(登録商標)は、適切な位置センサを備えた手袋の一例である。これらのセンサ類は、手および指の空間的配置を測定する。コンピュータはジエスチャー認識ソフトウエアを用いて、所定の手の形態または運動がジェスチャーで表されたかどうかを決定する。図21Aにおいて、振動触覚ユニットは、特定の静的姿勢が検出されたことを使用者に信号で知らせる。認識された運動する手または腕のダイナミックな運動を含むジェスチャーに応答して、異なった振動触覚感覚を発生させることができる(図21B)。これは、認識すべきジェスチャーのために、ジェスチャー認識ソフトウエアをトレーニングする上でも有用であろう。人間は正確にジェスチャーを繰り返すことができないから、ソフトウエアのトレーニングに際し、使用者は、同じジェスチャーを反復して行って、ある種の平均位置を得なければならない。振動触覚フィードバックを用いれば、使用者のジェスチャーを認識するように認識ソフトウエアをトレーニングすると同時に、使用者は、彼のジェスチャーを更に良好に反復するように訓練され得る。ジェスチャーをより良好に反復することによって、所定の手のジェスチャーについてのセンサ読み取り値の統計的分布は減少し、これにより認識システムの特性を改善することができる。
【0053】
図22は、音楽的応用における振動触覚ユニットを示している。これらのユニットは、使用者のボディースーツまたは着衣上に直接装着される。振動触覚ユニットのグループ分け(2211)を含む身体上の異なった領域(2200〜2210)は、オーケストラにおける異なった楽器に対応することができ、また音楽的経験を高めるように働くことができる。例えば、チェロによって生み出される音楽は、身体領域に位置する振動触覚ユニットを通して、使用者の大腿(2204)の上に比例した振動を与える。同様に、ドラムは胸部領域(2201)等を刺激するユニットに振動を誘起する。一つのタイプの楽器に対応した複数の振動触覚ユニットを含む身体の部分は、個々の楽器に対応した個々の振動触覚ユニットを有していてもよい。例えば、身体のチェロ部分は、上部大腿の第一席チェロと、下部大腿の第二席チェロとを有するように示されている。使用者は、楽器を「感じる」受動的聴取者であってもよく、或いは、振動感覚をフィードバックとして受け取ることにより、音楽の創作における能動的関与者であることもできる。
【0054】
図23は、くつろぎへの応用を示している。この場合、振動触覚ユニットのアレイは水の流れまたは風邪をシミュレートする。この例において、使用者はコーチ(2301)に横になり、頭部に装着したディスプレイ(2302)を通して仮想ビーチシーンの中に没入し、ビーチに座る。使用者は頭部に装着したイヤホーン(2301)を通して海の音を聞き、ヒートランプ(2303)を通して日光の暖かさを感じる。次いで、振動触覚ユニットが連続的にパルス駆動されて感覚の「波」を創造するときに、使用者は、該ユニットによって刺激された風を感じる。例えば、頭部(2304)から出発して爪先(2305)で終わるように、振動触覚ユニットを交互にパルス駆動することによって、風は頭部から爪先へと流れることができる。同様に、使用者が仮想の水を通して泳ぐときに、パルス駆動の波(おそらく大きな振幅ではあるが)として水を感じる。このようにして、使用者はくつろぎまたは娯楽を得ることができる。
【0055】
図24Aおよび図24Bは、例えば使用者が膝を負傷している場合の医療的応用を示している。振動触覚ユニット(2401)は、図24Aに示す理学療法の際に、膝に装着された曲げセンサ(2400)と組み合わせて用いられる。振動触覚ユニットユニットは、膝が適切に運動するときに使用者に通知し、膝が医者に処方された安全限界よりも更に曲がったときに使用者に警告して、図24Bに示すように修復を改善する。更に、他のセンサと組み合わせた振動触覚ユニットは、何等かの生体フィードバック適用において使用することができる。
【0056】
図25A、25Bおよび図25Cは、偏心マスに基づく振動触覚ユニットにより発生した振動の、振幅および周波数成分をデカップリングするためのアプローチを示している。この実施例において、振動触覚ユニットは、ロータリー電気モータ(2501)と、偏心的に装着されたマス(2500)と、シャフト(2502)に装着されて該シャフトの角度位置を決定するセンサ(2503)と、閉ループ制御システムとを具備している。シャフトの単一回転を達成する何れかの他の制御法則も使用できる。一つの例が図25Aに示されている。グラフの縦軸は正規化された電流を表し、横軸は軸の回転をラジアンで表している。これは、以下の非線形制御法則に対応している。
I=1,(δ≧θ>π)
I=−1,(π≧θ≧2π−δ)
I=0,(−δ>θ>δ)
【0057】
初期条件を、速度がゼロで、マスの回転位置θ(ラジアン)が小さい値δになるように設定すれば(図25B)、このようにしてモータに送られる電流Iは、マスが全回転の1/2だけ加速してθ+δ(図25C)まで行き、他の半回転については減速して、理想的な場合には−δと+δの間で停止するに至る(図25C)。−δおよび+δの実際の位置は、当該システムの制御ループのバンド幅および摩擦および減速に応じて変化させなければならないかもしれない。振動または衝撃の大きさは電流の振幅によって設定され、周波数は上記制御を繰り返すことにより所望の周波数に設定される。単純なフィードバック制御ループ(例えばPID)は、夫々のパルスの前に、初期条件が正しいことを保障する。これの詳細は当業者の常識である。
【0058】
図26Aは、偏心を制御可能な振動触覚ユニットの斜視図であり、図26Bはその側面図である。スリップディスク(2602)のような構造体がシャフト(2601)に装着されていて、シャフトに沿って前後に自由に摺動する。このスリップディスクは、それを偏心マス(2604)に結合するリンク(2605)に取り付けられている。位置決め装置(2603)はシャフト上のスリップディスクの位置を制御し、これはマスの位置、従ってその偏心度に影響する。図26Cは、マスの偏心を制御するために使用できる別の伝達法である。図26Cにおいて、この伝達系は素子(2606)を具備しており、該素子は可撓性部材、またはその一端で偏心マス(2604)に結合され他端で摺動スリップディスク(2602)に結合された中空シャフト(2601)の内側の液体であり得る。ここでも、シャフトに沿ったディスクの位置を位置決め装置(2603)を用いて制御することは、マスの偏心に影響する。素子(2606)は液体でもよく、2604は中空容器でもよい。液体はスリップディスク(2602)、または他の圧力発生手段によって管(2601)に通されるから、容器(2604)は液体で満たされ、液体マスの中心の有効旋回半径を増大させる。どの手段によってであれ、旋回半径を増大させることにより、振動触覚ユニットの振動の振幅および周波数を独立に制御することが可能である。
【0059】
図27は、一つの適用において使用されるときの、振動触覚装置を含む部品およびこれら部品間の機能的関係を示すブロック図を与えている。幾つかの部品は、一方向の矢印で相互に関連付けて示されているが、この矢印は情報の双方向性フローを与えるように双方向性であってもよい。ブロックの間に追加の矢印を加えて、部品間の通信を与えてもよい。適用は、使用者の身体部分に振動感覚を提供することを含むことができる。その場合、この振動感覚は仮想環境シミュレーション(バーチャルシミュレーション)および/または身体の物理的状態のシミュレーション(物理的シミュレーション)と関連しており、その身体は使用者の身体であっても他の人の身体でもよい。1以上のバーチャルシミュレーションは、1以上の物理的シミュレーションと共存してもよく、また更なるタイプのシミュレーションと組み合わせて振動感覚を発生させてもよい。
【0060】
図27の例示的なバーチャルシミュレーション(2722)は、コンピュータモニター(2709)を備えたコンピュータ(2706)を具備している。バーチャルシミュレーションを行うために、コンピュータは典型的に、コンピュータシミュレーション(2705)(典型的にはコンピュータソフトウエアプログラムの形態である)を発生し、処理し、実行またはランさせる。この例示的バーチャルシミュレーションにおいて、コンピュータは、仮想の測定された身体部分の図形をモニター上に表示する。ここで、身体部分は仮想の手(2708)の指先(2707)として示されている。バーチャルシミュレーションは、その内部で仮想状態信号(2703)を含む種々の状態変数を用いて内部状態を発生し、これを信号処理装置(2700)に与える。仮想状態変数の例には、仮想の測定される身体部分の内部および表面における種々の部分の位置、速度、加速、マス、従順性、寸法、力またはトルクの適用、組成、温度、湿度、臭い、味覚および他のダイナミックな構造的、物理的、電気的、代謝的、気分的、認識的、生物学的および化学的特性が含まれる。状態変数は、仮想の手における種々の部分の接触のような状態変数の関数を表してもよい。
【0061】
図27はまた、状態センサ(2718)および測定された物理的な身体部分(2718)を含む物理的シミュレーション(2723)の例を提供している。この例において、物理的に測定された身体部分は、物理的な手(2716)の指先(2717)として描かれている。状態センサは、物理的に測定された身体部分の物理状態(2719)を測定し、物理的状態信号(2720)を形成して、この信号を処理装置(2700)に与える。物理的状態信号(2720)は任意に、コンピュータ(2706)および/または仮想シミュレーション(2722)のコンピュータシミュレーション(2705)に与えられる。物理的状態変数の例には、物理的に測定された身体部分の内部および表面における種々の部分の位置、速度、加速、マス、従順性、寸法、力またはトルクの適用、組成、温度、湿度、臭い、味覚および他のダイナミックな構造的、物理的、電気的、代謝的、気分的、認識的、生物学的および化学的特性が含まれる。状態変数は、物理的な手の種々の部分の接触のような状態変数の関数を表してもよい。
【0062】
図27に示すように、バーチャルシミュレーションおよび物理的シミュレーションの両者について、信号処理装置(2700)は状態信号を受け取って駆動信号(2704)を発生する。バーチャルシミュレーションの場合、状態信号は仮想状態信号(2703)であり、物理的シミュレーションの場合、状態信号は物理的状態信号(2720)である。適用がバーチャルシミュレーションおよび物理的シミュレーションの両方を含むとき、仮想状態信号および物理的状態信号の両方が信号処理装置に与えられる。
【0063】
信号処理装置は、デジタルまたはアナログコンピュータ(2701)を用いて、1以上の入力された状態信号(例えば仮想または物理的状態信号)を解釈し、ドライバ(2702)への入力信号となる制御信号(2721)を発生させる。この制御信号を用いて、ドライバは駆動信号(2704)を発生する。コンピュータに信号処理装置が存在しないとき、ドライバは状態信号から駆動信号を決定する。コンピュータが信号処理装置に存在するか否かにかかわらず、駆動信号はマス運動アクチュエータ(2710)に使用される形で与えられる。例えば、ドライバは運動制御モジュール、操作増幅器、トランジスタ、液体バルブ、ポンプ、ガバナー、気化器等を含むことができる。マス運動アクチュエータが電気モータである場合、駆動信号は、モータを回転させるのに十分な電力をもった電圧または電流ドライブであればよい。
【0064】
図27において、マス運動アクチュエータ(2710)は、シャフト(2712)および偏心マス(2711)を回転する電気モータとして示されている。当該マスが回転すると、全体のアセンブリー(2710)、(2711)および(2712)が回転して、振動(2713)を発生する。図において、検知する身体部分は手(2714)の指先(2715)として例示されている。
【0065】
バーチャルシミュレーションおよび物理的シミュレーションを含む適用の例は、次のように要約される。
【0066】
物理的な手の指先は、検知する身体部分(2715)および物理的に測定された身体部分(2717)の両者に対応する。任意に関節角度センサおよび空間位置センサを含む機器を備えた手袋は、物理的な指先の位置に対応した物理的状態信号(2720)を発生する。指先の位置は、ワイヤ(例えば電気的または光学的)、コンピュータバス、または他の電気的もしくは光学的接続手段を介して、ソフトウエアにおいてコンピュータシミュレーション(2705)を実行するコンピュータ(2706)へと与えられる。指先の位置は、屡々、典型的には関節角度および/または6つの可能な空間自由度に対応するデジタル値の形で与えられる。また、指先の位置はアナログ電圧の形であってもよい。
【0067】
コンピュータシミュレーションは、物理的な指先の位置(2719)に対応する物理的状態信号(2720)を使用して、仮想の手(2708)および指先(2707)の位置および運動をシミュレートする。コンピュータシミュレーションは、仮想の手をコンピュータのモニター(2709)に表示すると共に、第二の仮想物体を表示するが、その挙動はブロック、ボール、カーインテリア、エンジニアリングパーツまたは他の物体のような第二の物理的測定物体に対応する。コンピュータのモニターは、デスクトップモニター、頭部装着型モニター、プロジェクションモニター、ホログラフィーモニター、または他の如何なるコンピュータディスプレイ手段であってもよい。また、第二の物理的測定物体も、使用者または第二の使用者の身体部分であることができる。
【0068】
使用者が彼の手を動かすと、仮想の手の動きが創り出され、コンピュータシミュレーションは仮想の指先(2707)と第二の仮想物体との間の仮想接触レベルを検出する。次いで、コンピュータシミュレーションは仮想状態信号(2703)を発生するが、ここで一つの状態変数は、仮想指先の仮想接触レベル(例えば力の量)を示す。この仮想状態信号は、ワイヤ(例えば電気的または光学的)、コンピュータバス、または他の電気的もしくは光学的接続手段を介して、ソフトウエアにおいて信号処理装置(2721)へと送られる。信号処理装置はコンピュータ(2706)の中に存在していてもよく、その場合、仮想状態信号は典型的にはコンピュータバスを介して送られる。信号処理装置がコンピュータとは別の区域(enclosure)に存在するときは、仮想状態信号は、典型的にはワイヤを介して送られる。
【0069】
信号処理装置は、デジタル/アナログ変換器に続いてオペアンプを用いることにより、仮想接触の状態変数レベルを、仮想接触のレベルに比例した駆動信号電圧に変化する。この電圧は、典型的にはワイヤ(例えば電気的または光学的)または他の電気的もしくは光学的接続手段によって、マス運動アクチュエータ(2710)に与えられる。マス運動アクチュエータは、そのシャフト(2712)上の偏心マス(2711)を回転させる変速電気モータであることができる。偏心マスを備えたこの電気モータは、指先周囲の機器を備えた手袋の背面部分に固定されるプラスチックのハウジングまたはケーシングの中に収容され、その指先は物理的な測定される身体部分および検知する身体部分に対応する。固定は、典型的にはストラップ、縫い付け、接着等を用いて行われる。偏心マスが回転すると、電気モータ、マス、キャスティングおよび検知する身体部分は全て、典型的には共通の周波数で振動する。理想的には、偏心マスが回転するときに電気モータ、マス、ケーシングおよび検知する身体部分が全て同じ振幅で振動するように、マスと検知する身体部分との間には僅かの振動減衰しか存在しない。
【0070】
説明した通りの適用において、使用者は、彼の指先の運動と彼が感じる振動レベルとの間の因果関係をつかむことができる。従って、仮想物体の位置、従順性、マス、形状およびその他の挙動は、種々の振動触覚応答を誘導する使用者の指先の運動によって、或いは仮想物体の運動によって検出することができる。本発明の振動触覚装置は、あたかも現実の環境における物理的物体と相互作用するかのように使用者が仮想物体と相互作用できる、仮想環境での没頭感覚を促進する。
【0071】
本明細書に記載した刊行物または特許は何れも、それがあたかも本明細書に完全に記載されたのと同様に、参照として本願に含められる。
【0072】
特定の実施例を参照して本発明を説明してきたが、この説明は本発明の例示であり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。即ち、当業者は、後述の請求範囲によって定義される本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく、種々に変形および拡大できるであろう。
【符号の説明】
【0073】
100…電気モータ、101…偏心マス、102…シャフト、201…偏心マス、202…マス運動アクチュエータ、204…電気モータのシャフト、1801〜1806…振動触覚ユニット、1807〜1819…センサ類、1820…手袋、1900…検知手袋、1901…振動触覚ユニット、1902…手袋センサインターフェース、1903…振動触覚ユニットドライバ、1904…コンピュータモニター、1905…仮想物体、1906…視覚画像の手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定される身体部分に対応する仮想表示がコンピュータによって提供される仮想環境の仮想物体と相互作用するときに前記コンピュータから可変状態信号を受信するのに応答して、身体の検知部分に触覚感覚を与えるための装置であって、
少なくとも一つの振動触覚ユニットを備え、
夫々のユニットは、
シャフトおよび該シャフトに装着された偏心マスを有し、前記シャフトを回転させるマス運動アクチュエータであって、該シャフト上における位置を制御可能な構造体が該シャフトに装着されており、該構造体は前記偏心マスに該構造体を結合するリンクに取り付けられており、位置決め装置が前記シャフト上の前記構造体の前記位置を制御する、該運動アクチュエータと、
前記身体の検知部分に前記マス運動アクチュエータから振動を伝えるために、前記マス運動アクチュエータを前記身体の検知部分に関連させて保持するための固定手段と、
を具備し、
前記装置は、前記マス運動アクチュエータを駆動させるために、前記コンピュータからの前記可変状態信号を解釈して駆動信号を発生させ、該駆動信号を前記マス運動アクチュエータに送る信号処理装置を更に備え、
前記マス運動アクチュエータが、前記振動の周波数及び振幅を変化させる結果として前記可変状態信号に関連した前記振動を出力する、
装置。
【請求項2】
複数の振動触覚ユニットを備え、前記信号処理装置は、該複数の振動触覚ユニットの各振動触覚ユニットを個別的に駆動するために複数の駆動信号を発生する、請求項1に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−210272(P2011−210272A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−114707(P2011−114707)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【分割の表示】特願2009−187992(P2009−187992)の分割
【原出願日】平成8年12月2日(1996.12.2)
【出願人】(399047149)イマージョン コーポレイション (57)
【Fターム(参考)】