説明

計器用変成器の試験方法

【課題】 計器用変流器や計器用変圧器の極性試験には1次端子に試験電圧をかけるためにクリップなどで電線を接続し、電源の入り切りをする人と、2次側に接続されたテスターにより入切毎にテスターの針の揺れの方向を確認する人が、2名必要で各相ごとの確認でさらに多くの回線がある場合には多くの時間を費やした。
【解決手段】 計器用変成器1の1次側に試験電流を流しておき、それを電流センサ71および電流セン72に導き、センサからの出力を基準電流とし、2次側の電流も同じようにセンサ71とセンサ72に導くようにしておく。2次側のスイッチ5を入れると2次側の電流がセンサ71とセンサ72にを通り、その時点でのセンサからの出力が前記の基準値を上回ったか下回ったかにより極性が正常か異常かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤の計器用変成器(計器用変流器、計器用変圧器が含まれる。)の極性を試験する配電盤試験装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来の計器用変流器の極性試験回路図(直流キック法)である。計器用変流器(CT)1の1次側21に直流電源2を、2次側の試験用ターミナル3にテスター4を接続し、1次側直流電源の印加・開放(キック)をスイッチ5により行った時の、前記テスター4のメーターの振れ方向から極性を確認している。
【0003】
計器用変流器(CT)1の極性試験方法(直流キック法)は次のように行われる。a.試験電源2には乾電池、バッテリーなど3〜12V程度の直流電源が用いられ計器用変流器(CT)1次端子のK側16に+、L側15に−を接続する。b.計器用変流器(CT)2次回路の試験用ターミナル3は開放し計器用変流器(CT)側にテスター4を接続する。その際のテスターの極性は計器用変流器(CT)2次端子のk側41を+、l側42を−とする。c.直流電源開閉用スイッチ5を「入」「切」した瞬時のテスター4の振れ方向を確認する。d.前記スイッチ5を「入」にしたとき、正極性であれば計器用変流器(CT)2次電流はテスター4の+から−に流れ、指針の振れは+方向となり、逆極性であれば電流はテスター4の−から+に流れるので指針の振れは−方向となる。
【0004】
図12は従来の計器用変圧器の極性試験回路図(直流キック法)である。計器用変圧器(VT)の極性試験(直流キック法)は次のように行われる。
計器用変圧器(VT)6の1次側に直流電源2を、2次側の試験用ターミナル3にテスター4を接続し、1次側直流電源の印加・開放(キック)を行った時の、メーターの振れ方向から極性を確認している。
【0005】
a.試験電源2には乾電池、バッテリーなど3〜12V程度の直流電源が用いられVT61次端子のU側に−、V側に+を接続する。b.VT62次回路の試験用ターミナル3は開放し 前記試験用ターミナル3のVT側にテスター4を接続する。その際のテスターの極性はVT2次端子のu側を−、v側を+とする。c.直流電源開閉用スイッチ5を「入」「切」した瞬時のテスターの振れ方向を確認する。d.スイッチ5を「入」にしたとき、正極性であればVT2次電流はテスター4の+から−に流れ、指針の振れは+方向となり、逆極性であれば電流はテスター4の−から+に流れるので指針の振れは−方向となる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−177978号公報
【特許文献2】特開2007−248104号公報
【非特許文献1】雑誌 電気技術者 95 No.3 計器用変成器の機能と接続方法*直流キック試験法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13に示す様に、通常直流キック法では配電盤内部に取り付けた計器用変流器(CT)や計器用変圧器(VT)などの計器用変成器の極性を試験する場合、計器用変成器の1次端子に直流電圧を加えるためクリップなどで電線を接続する作業者と、テスターの振れ方向を確認する作業者の2名で行っている。
【0008】
この方法では極性を試験するR,S,T各相の計器用変流器(CT)(又はVT)についてその都度電源、テスターを接続替えしなければならず、回線数の多い配電盤などでは相当の時間を費やしている。また相互に確認しながらの作業となるため、聞き違いなどの誤認を起こすことがあった。このため、配電盤内部に変流器を取り付けた状態でも1名で容易に確認試験が行える試験装置、方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1において計器用変流器(CT)1の1次側電流i1を電流センサ71,72を通じて流し、計器用変流器(CT)1の2次側に流れる電流を1次側電流に加算するように電流センサ71,72に通じて閉回路とする。このとき、電流センサ71は計器用変流器(CT)1の1次電流で動作するように設定し、電流センサ72は2次側電流を加算した電流値で動作するように設定をしておく。
【0010】
(a)極性正常検出時の場合(図1(a))、1次側電流i1を通電すると電流センサが動作する。1次側に電流が流れた条件でスイッチ5を解放すると計器用変流器(CT)の2次側の電流が電流センサ71,72に流れ、1次側電流に対して2次側電流が加算となり、電流センサ2が動作し、計器用変流器の1次側に対して、2次側の極性が正しいと判断できる。
【0011】
(b)極性異常検出時の場合(図1(b))、1次側電流i1を通電すると電流センサ71が動作し、1次側に電流が流れた条件でスイッチ5を解放すると計器用変流器(CT)の2次側の電流が電流センサ71,72に流れ、1次側電流に対して2次側電流が減算となり、電流センサ71が設定電流以下となり、電流センサ71が復帰し、2次側の極性が逆接続の検出が出来る。
【0012】
なお、電流の方向による値を検出して極性判断を行うには電流センサが1台あれば可能であるが、万一故障などで不動作となった場合、極性が逆なのかセンサ自体が故障なのか判別がつかず、誤認する可能性がある。このため電流センサを2台使用しセンサ71は1次の電流を上回れば動作し、センサ72は計器用変流器(CT)の1次と2次の電流の加算値を上回れば動作するように設定する。このようにすることにより、センサ自体に異常があった場合でも不動作と逆極性を区別することができる。
【0013】
図2において計器用変圧器(VT)6一次電流i1を電流センサ71、72を通して流し、2次側に流れる電流i2を1次側電流に加算するように電流センサ71,72を通して流し閉回路とする。このとき電流センサ71は計器用変圧器(VT)6の1次電流で動作するように設定する。電流センサ72は1次側電流と2次側電流を加算した電流で動作するように設定する。図2(a)に示すように極性正常検出時の場合、1次側電流i1を通電すると電流センサ71が動作する。1次側に電流が流れた状態でSW5を投入すると計器用変圧器(VT)6に2次側の電流i2が電流センサ71,72に流れ、1次電流i1に対して2次電流i2が加算となり、電流センサ2が動作する。
【0014】
そこで計器用変圧器(VT)6の1次側に対して、2次側の極性が正しいと判断できる。図2(b)の極性異常検出時の場合、1次電流i1を通電すると電流センサ71が動作する。1次側に電流が流れた条件でSW5を投入すると計器用変圧器(VT)6の2次側の電流が電流センサ71,72に流れ、1次電流に対して2次側電流の分だけ減算となり、電流センサ71の設定以下となり、電流センサ71は復帰し、2次側の極性が逆接続であると判断できる。
【0015】
図3は本発明の試験装置による計器用変流器(CT)の極性試験の概念図である。試験電源8には単相交流電源を用い、補助リレー9が接続された電源の一方を計器用変流器(CT)1次端子のK側16に接続する。電源の他方には2個の電流センサおよび導電性の金属棒10を有した検出部11が接続されており、検出部11の金属棒10を計器用変流器(CT)1次端子のL側15に接触させることにより閉回路ができ、計器用変流器(CT)1次に電流を流すことができる。
【0016】
計器用変流器(CT)2次試験用ターミナル12は開放し、補助リレー13の接点14を介して電流センサに接続されたケーブルを試験用ターミナル12の計器用変流器(CT)側の端子に接続する。計器用変流器(CT)1次に通電したとき補助リレー9が動作するのでその信号を演算処理装置17に取り込む。また電流センサ71・72の出力信号を演算処理装置17に取り込む。計器用変流器(CT)1次に通電し補助リレー9が動作したことを確認した後、演算処理装置から補助リレー13の動作指令を出力、接点14を閉路させ計器用変流器(CT)1次電流と二次電流を電流センサに重畳して流す。
【0017】
補助リレー13が動作したとき電流センサ71・72に流れる電流は、計器用変流器(CT)1次を基準として計器用変流器(CT)2次が同じ方向のとき重畳される電流の値は両者の和となりこれを正極性とする。逆方向のとき重畳される電流の値は両者の差となりこれを逆極性とする。従って電流センサが計器用変流器(CT)1次と2次電流の加算値を検出したとき動作するよう設定すれば正極性の確認を行うことができる。
【0018】
この場合電流センサは1個でも良いのであるが、万一故障などで不動作となった場合、極性が逆なのかセンサ自体が故障なのかの判別がつかず、誤認する可能性がある。このため電流センサを1組2個を使用しセンサ71は計器用変流器(CT)1次の電流を上回れば動作、センサ72は計器用変流器(CT)1次と2次の電流の加算値を上回れば動作するように設定する。
【0019】
検出部11を計器用変流器(CT)1次端子15接触させ、閉路しセンサ71で計器用変流器(CT)1次側通電確認を行った後、演算処理装置17よりリレー接点の閉路信号を出力、計器用変流器(CT)2次側を閉路し電流を重畳させセンサ72で極性判別を行う。このようにすることにより、センサ自体に異常が有った場合でも不動作と逆極性との区別を行うことができ、誤認の恐れはない。
【0020】
図4は本発明による計器用変流器(CT)極性試験の概略フローチャートである。ステップ1(S1)で、極性試験装置の検出部を計器用変流器の1次側に接触する。ステップ2(S2)において試験電源8の電気が計器用変流器1次側に流れ込む。ステップ3(S3)において、試験用電源8に接続されている補助リレー9より動作起動信号が出力され、前記計器用変流器1次側の電流がセンサ71とセンサ72を通り、前記センサ1の出力が動作起動信号により演算装置に読み込まれる。
【0021】
ステップ4(S4)において、センサ71の出力がその設定値以上の場合、と以下の場合に分けられる。この場合設定値を計器用変流器の1次電流の値とする。設定値が以下の場合は設定値以上になるまで待機する。ステップ5(S5)において、センサ71の出力が設定値以上の場合は補助リレー13が演算処理装置を動作させる。ステップ6(S6)において、前記計器用変流器の2次電流がセンサ71と72に通される。
【0022】
このとき、前記計器用変流器の一次の電流と2次の電流が両方ともセンサ71とセンサ72を通る。ステップ7(S7)において、センサ72の出力が設定値以上を計測したとき、ステップ8(S8)において、演算処理装置17が、正極性と判断し、ステップ9(S9)においてその結果を表示する。ステップ7(S7)におけるセンサ72の設定値は計器用変流器の1次電流と2次電流の和である。
【0023】
また、ステップ7(S7)において、センサ72の出力が設定値以下の場合、ステップ9(S9)においてさらにセンサ71の設定値以下か以上かを判断する。センサ72の出力がセンサ71の設定値より以下の場合は、前記演算処理装置17が逆極性と判断し、その結果をステップ9(S9)において表示する。センサ72の出力がセンサ71の設定値より大きい場合は計器用変圧器の極性は検出不能でありそのように表示する。
極性判定時の結果確認方法は、検出部に表示器(LED等)および警報器(ブザー等)を内蔵しており、正極性時・逆極性時・検出不能の表示・音を変えることにより判別を行ってもよい。
【0024】
図6は本発明の試験装置による計器用変圧器(VT)の極性試験法の概念図である。試験電源8には単相交流電源を用い、補助リレー9が接続された電源の一方を計器用変圧器(VT)61次端子U−Vに接続する。電源の他方には2組の電流センサ71,72および導電性の金属棒10を有した検出部11が接続されており、検出部の金属棒を計器用変圧器(VT)1次端子のU側に接触させることにより閉回路ができ、計器用変圧器(VT)1次に電流を流すことができる。計器用変圧器(VT)2次試験用ターミナル3は開放し、補助リレー13の接点を介して電流センサに接続されたケーブルを接続する。以降の極性判定の方法は、計器用変流器(CT)の極性試験時の場合と同様である。
【0025】
計器用変圧器(VT)2次試験用ターミナル3は開放し、補助リレー13の接点14を介して電流センサに接続されたケーブルを試験用ターミナル3の計器用変圧器(VT)側の端子に接続する。計器用変圧器(VT)1次に通電したとき補助リレー9が動作するのでその信号を演算処理装置17に取り込む。また電流センサ71・72の出力信号を演算処理装置17に取り込む。計器用変圧器(VT)1次に通電し補助リレー9が動作したことを確認した後、演算処理装置から補助リレー13の動作指令を出力、接点14を閉路させ計器用変圧器(VT)1次電流と2次電流を電流センサに重畳して流す。
【0026】
補助リレー13が動作したとき電流センサ71・72に流れる電流は、計器用変圧器(VT)1次を基準として計器用変圧器(VT)2次が同じ方向のとき重畳される電流の値は両者の和となりこれを正極性とする。逆方向のとき重畳される電流の値は両者の差となりこれを逆極性とする。従って電流センサが計器用変圧器(VT)1次と2次電流の加算値を検出したとき動作するよう設定すれば正極性の確認を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
試験電源ケーブルを配電盤内部の主母線にあらかじめ接続しておけば、被試験相の計器用変成器の1次端子に検出部を接触させるだけで極性判定が可能であり、その都度接続替えする必要がなく試験時間が短縮出来る。
従来技術では試験電源の接続と、テスターの振れを確認する2名での作業が必要で、相互に確認を取りながら試験を行うため、聞き違いなどによる誤認の可能性があった。図5に示すように本発明による試験装置では検出部に表示器・警報器が内蔵されており、1名で目視および音による確認が出来るのでより確実に判断を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本明細書において、計器用変流器及び計器用変圧器の総称を計器用変成器と称しており、したがって、計器用変成器には計器用変流器及び計器用変圧器の少なくとも一方が含まれる。
図5は本発明による試験装置を用いた計器用変流器(CT)極性試験の実施形態図である。
【0029】
試験装置本体には2組の電流検出センサ71,72、演算処理装置17、補助リレー9などが内蔵され、3相分の接続用器具が取り付けられた電源接続用ケーブル18と、4相分の接続用器具が取り付けられた変流器2次回路接続用ケーブル19、および表示部と警報器が内蔵され導電製の金属棒10を有し、被試験回路の変流器の1次端子もしくは導体に接触させたとき閉回路が構成される構造を持つ検出部11を1相分備えており、試験時にあらかじめ電源ケーブル18と変流器2次回路接続用ケーブルを接続しておけば1名でも容易に変流器の極性の確認を行うことができる。
【0030】
変流器の極性試験を行う場合は電源接続ケーブルを配電盤内部の主母線に、変流器2次回路接続ケーブルを配電盤の計器用変流器または計器用変圧器2次試験用ターミナルの電源側に接続する。このとき、試験用ターミナルの短絡片は開放しておくものとする。試験電源には単相交流電源を用い、計器用変流器(CT)の極性試験時は1次端子L側に、また計器用変圧器(VT)の極性試験時は1次端子接続導体の各相毎に検出部を接触させ、検出部に内蔵された表示器・警報器により目視・音での極性合否判別を行う。
【0031】
本実施例では本試験装置には電流センサが2台71,72内蔵され、検出部を被試験回路に接触させることにより変流器1次側に電流を流す回路が構成される電線と、各相毎に開閉可能なリレーの接点を介し変流器2次(または3次)側に電流を流す回路が構成される電線が接続されている。
【0032】
図7は3CT方式(Y接続)の計器用変流器の極性試験をする場合の実施例の回路図で、R相の極性を試験する場合を示す。計器用変流器(CT)1の極性試験を行う場合、被試験相の変流器負荷側の1次端子接続導体に検出部を接触させ、当該相に接続されている補助リレー(図7のRX)を動作させる。その接点信号を演算処理装置17に取り込み試験相を確認した後、当該相およびN相の計器用変流器(CT)2次回路リレー接点(図7のY1とZ4)を閉路させる。
【0033】
これにより電流検出センサには計器用変流器(CT)1次側と2次側の電流が重畳されて流れる。このとき計器用変流器(CT)1次側に流れる電流の方向を基準として、2次側に流れる電流の方向が同じであれば両者の和となりこれを正極性とする。逆であれば両者の差となりこれを逆極性とする。
なお、2CT方式(V接続)の場合はN相がないので、S相の接点Z2を閉路させるものとする。また、3CT方式(△接続)の場合はR相の確認時はS相の接点Z2、S相確認時はT相の接点Z3、T相確認時はR相の接点Z1を閉路させるものとする。
【0034】
図7においてセンサ71の設定を計器用変流器(CT)1次に流れる電流で動作する値としこれを基準とする。センサ72は基準電流と計器用変流器(CT)2次電流の和で動作する値に設定する。検出部11を被試験相に接触させたとき計器用変流器(CT)の極性が正しければセンサ71が動作し、変流器2次側リレーの接点(図7のY1とZ4)を閉路させることによりセンサ72が動作する。
【0035】
このとき図示しない表示部に正常の表示を行い警報音(正常)を鳴動させる。極性が逆であればセンサ71が復帰し、センサ72は不動作となるので前記図示しない表示部に異常の表示を行い警報音(異常)を鳴動させる。誤接続によりセンサ71不動作、センサ72動作の場合は、表示部に検出不能の表示を行い警報音(異常)を鳴動させる。以上により目視・音の両方による合否判定が可能である。
【0036】
計器用変流器はその変成比により2次側の電流が変化するが、2次側電流に応じた値に変換した電流を電流センサ2に流すため2次側に接続したセンサのケーブルの巻数を切替出来るようにしておけば、重畳される電流の値を変えることができる。これにより変流比の大小にかかわらず電流センサ72の設定値を変えることなく試験を行うことができる。
【0037】
また2重比の計器用変流器(CT)では変流比が必ず1(CT比の小さい側):2(CT比の大きい側)となっており、CT比の大きい側の検出巻数が小さい方の巻数の2倍となっている。このことを利用し、電流検出時の巻数を記憶し比較することにより、2重比CTのコイルの接続確認を行うことも可能である。
【0038】
図8は3VT方式(Y接続)の計器用変圧器2次巻線の極性試験回路図で、R相極性確認時を示す。計器用変圧器(VT)の極性試験を行う場合、試験相の計器用変圧器(VT)の1次端子接続導体に検出部11を接触させ、当該相に接続されている補助リレー(図8ではRX)を動作させる。その接点信号を演算処理装置17に取り込み試験相を確認した後、計器用変圧器(VT)2次回路のリレー接点を閉路させる。
【0039】
このときR相の極性を確認する場合はR−S相(図8ではY2とZ1)、S相を確認する場合はS−T相(図6ではY3とZ2)、T相を確認する場合はT−R相(図6ではY1とZ3)を閉路させる。これにより電流検出センサには計器用変圧器(VT)1次側と2次側の電流が重畳されて流れる。このとき計器用変圧器(VT)1次側に流れる電流の方向を基準として、2次側に流れる電流の方向が同じであればこれを正極性とする。逆であれば両者の差となりこれを逆極性とする。
【0040】
図8において、センサ71の設定を計器用変圧器(VT)1次に流れる電流で動作する値としこれを基準とする。センサ72は基準電流と計器用変圧器(VT)2次電流の和で動作する値に設定する。検出部を試験相に接触させたとき計器用変圧器(VT)の極性が正しければセンサ71が動作し、計器用変圧器(VT)2次側リレーの接点(図8のY2とZ1)を閉路させることによりセンサ72が動作する。
【0041】
このとき図示しない表示部に正常の表示を行い警報音(正常)を鳴動させる。極性が逆であればセンサ71が復帰、センサ72は不動作となるので表示部に異常の表示を行い警報音(異常)を鳴動させる。誤接続によりセンサ71動作、センサ72不動作の場合は、表示部に検出不能の表示を行い警報音(異常)を鳴動させる。以上により目視・音による合否判別が可能である。2VT方式(V接続)の場合も同様にして極性試験を行うことが出来る。
【0042】
本発明による試験装置では3VT方式(Y接続)の三次巻線の極性試験も可能である。図9は3VT方式(Y接続)の計器用変圧器3次巻線の極性試験回路図で、R相の極性確認時を示す。
3次巻線の極性試験においてR相の極性を確認する場合は、VT3次回路側で閉路するリレー接点をR−S相とN相(図9ではY2とZ1、Z4)、S相を確認する場合はS−T相とN相(図9ではY3とZ2、Z4)、T相を確認する場合はT−R相とN相(図9ではY1とZ3、Z4)とする。これにより電流検出センサには計器用変圧器(VT)1次側と3次側の電流が重畳されて流れ、計器用変圧器(VT)2次巻線と同様に極性試験を行うことが可能である。
【0043】
図10で演算処理装置の内部動作を説明する。ステップ1(S1)で電流センサ71に入力があるかを確認する。ステップ2(S2)で計器用変流器(CT)の極性判定か計器用変圧器(VT)の極性試験かを選択する。計器用変流器(CT)の極性の試験の場合はどの相を調べるかをステップ3(S3)でR相、ステップ4(S4)でS相、ステップ5(S5)でT相を選択する。R相を選択した場合にはステップ6(S6)で試験電流がR相の1次に流れるように切替え、ステップ9(S9)で変流器2次に流れるR相の電流をセンサ72にいくようにY1とZ4のリレー接点を閉路する。
【0044】
S相、T相の場合も同じなので説明を省略する。ステップ16(S16)で相検出のための切替えを確認した後、ステップ17(S17)で、センサ71復帰しているかを確認し、復帰した時には、電流が重層した結果センサに流れる電流の和が既定値あるいは一次電流より少なくなっているとして、逆接続としてステップ21(S21)で逆接続表示あるいは異常音を発生する。電流センサ71が復帰しない場合は、ステップ18(S18)で、センサ72を動作させ、センサが動作しない場合にはステップ20(S20)で、検出不能と表示し、異常音を発生する。電流センサ2が既定値以上の電流を計測した場合には動作してステップ19(S19)で極性正常と表示し正常音を発生する。
【0045】
計器用変圧器の極性試験の場合にも同様にステップ10(S10)からステップ12(S12)で、極性を調べるR,S,N相を選択し、ステップ13(S13)からステップ15(S15)で、計器用変圧器の1次側の選択した相に試験電流を供給し、ステップ9(S9)で、計器用変圧器の2次側の選択した相の電流がセンサーを通るように接点の切り替え処理を行い、ステップ16で切替えが行われた後、計器用変流器の場合と同じ処理で極性の試験を行う。
【産業上の利用可能性】
【0046】
計器用変流器および計器用変圧器の極性試験を複数の人の手を煩わす事なく行う試験装置及び試験方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】今回考案した動作原理を計器用変流器(CT)の場合で示す。
【図2】今回考案した動作原理を計器用変圧器(VT)の場合で示す。
【図3】本発明の試験装置による計器用変流器(CT)の極性試験の概念図である
【図4】本発明による計器用変流器(CT)の極性試験概略フロー
【図5】本発明による計器用変流器(CT)の極性試験方法(配電盤内部に計器用変流器を取り付けた場合)
【図6】本発明の試験装置による計器用変圧器(VT)の極性試験の概念図である
【図7】本発明による計器用変流器(3CT(Y接続)方式)の極性試験回路
【図8】本発明による計器用変圧器(3VT方式)2次巻線の極性試験回路
【図9】本発明による計器用変圧器(3VT方式)3次巻線の極性試験回路
【図10】演算処理装置内部動作フロー
【図11】従来の計器用変流器(CT)の極性試験回路図(直流キック法)
【図12】従来の計器用変圧器(VT)の極性試験回路図(直流キック法)
【図13】従来の計器用変流器の極性試験方法
【符号の説明】
【0048】
1・・・計器用変流器(CT)
2・・・試験電源
3・・・試験用ターミナル
4・・・テスター
5・・・スイッチ
6・・・計器用変圧器(VT)
7・・・補助リレー
8・・・単相交流電源
9・・・補助リレー
10・・・金属棒
11・・・検出部
12・・・・試験用ターミナル
13・・・補助リレー
14・・・接点
15・・・計器用変流器(CT)1次端子のL側
16・・・計器用変流器(CT)1次端子のK側
17・・・演算装置
18・・・電源接続ケーブル
19・・・変成器2次回路接続ケーブル
71・・・センサ1
72・・・センサ2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器用変成器の1次側に試験電源を接続し1次側に閉回路を作り、前記計器用変成器の一次側に流れる試験電源の電流を電流センサに通し、センサの出力を演算装置に送り、1次側に前記試験電流が流れた段階で、前記計器用変成器の2次側若しくは3次側に接続されている試験用ターミナルから前記試験電源が前記計器用変成器により変成された2次側または3次側の電流を前記センサに通し、前記センサは前記1次電流と前記2次電流、または3次電流の重畳された計測結果を演算装置に送り、前記計器用変成器の1次側の電流と2次側の電流が重畳した前記センサからの信号、または前記計器用変成器の1次側の電流と3次側の電流が重畳した前記センサからの信号と、前記1次電流だけの結果を前記演算処理装置で演算して極性を判定する計器用変成器極性判定方法。
【請求項2】
試験用電源を計器用変成器に接続するための導電性の金属棒を接触子とし、前記金属棒は、演算処理装置で判定した極性の正逆結果を音及び、表示で示す検出部に装着され、前記計器用変成器の1次端子に前記金属棒を接触させることにより前記試験電源と前記計器用変成器の1次側が閉回路となり、計器用変成器1次に電流を流すことができることを特徴とする請求項1の計器用変成器極性判定方法。
【請求項3】
センサを二重とし、一つ目のセンサは計器用変成器の1次電流で動作するように設定し、2つ目のセンサは計器用変成器の1次電流と2次電流又は3次電流を加えた値で動作することにより、初めのセンサと2番目のセンサが動作したときを正極性と判定し、1番目が動作し2番目が動作せず1番目のセンサが復帰した場合を逆極性と判定し、その他を判定不能とする請求項1の極性判定方法。
【請求項4】
試験用電源を計器用変成器1次に通電したときその1次側の送電路に装着された補助リレーが動作し、その信号を演算処理装置に取り込み、演算装置が前記計器用変成器1次に装着された補助リレーが動作したことを確認した後、演算処理装置から第2の補助リレーの動作指令を出力し、前記計器用変成器に接続する接点を閉路させ2次電流を電流センサに前記1次電流に重畳して流すことを特徴とする請求項1の計器用変成器極性判定方法。
【請求項5】
センサのケーブルの巻数を切替えて、重畳される電流の値を変え変成比の大小にかかわらず電流センサ設定値を変えることなく試験を行うことができ、また巻数と2次電流の対比を記憶し比較することにより、正しい変成比となっているかを確認できることを特徴とする請求項1の計器用変成器極性判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−236662(P2009−236662A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82604(P2008−82604)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】