説明

計時装置および計時装置の衛星信号受信方法

【課題】衛星信号を短時間で受信でき、消費電力も低減できるとともに、受信環境の影響を軽減できて受信に成功する確率を向上できる計時装置を提供すること。
【解決手段】GPS付き腕時計は、位置情報衛星を捕捉して衛星信号を受信する受信部と、受信した衛星信号に基づいて時刻情報を生成する時刻情報生成部と、時刻情報を表示する時刻表示部と、前記受信部を制御する受信制御部50とを備える。受信制御部50は、受信処理を行う前に受信環境を判定する判定部51と、1つの位置情報衛星を捕捉し、その位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する一衛星サーチモードと、複数の位置情報衛星を捕捉し、それらのうちの1つの位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する複数衛星サーチモードとを、判定部51の判定結果に基づいて選択するサーチモード選択部52を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGPS衛星等の測位用衛星から送信される電波を受信して現在の日付や時刻等を求める計時装置および計時装置の衛星信号受信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己位置を測位するためのシステムであるGPS(Global Positioning System)システムでは、地球を周回する軌道を有するGPS衛星が用いられており、このGPS衛星には、原子時計が備えられている。このため、GPS衛星は、極めて正確な時刻情報(GPS時刻、衛星時刻情報)を有している。
【0003】
このGPS衛星の時刻情報(GPS時刻)を利用して時刻修正を行う電子時計が提案されている(特許文献1)。
GPS衛星からの信号(航法メッセージ)は、GPS時刻の週初めのC/Aコード(Coarse and Acquisition Code)のリセットに同期して、フレームやサブフレームを送信している。従って、C/Aコードを用いて航法メッセージを解読できれば、一衛星からの信号だけで、GPS時刻の週の初めからの経過時間がわかり、0.1秒程度の精度で時刻補正することができる。
すなわち、GPS衛星の軌道は約20000〜27000kmであるから、電波の伝播時間は66.6〜90ミリ秒程度であり、これを補正することでミリ秒オーダー程度の誤差でUTC(協定世界時)と同期でき、実用上問題ない精度の計時が可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−10251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の電子時計は、置き時計や掛け時計のように固定して設置される時計であり、GPS衛星の信号も固定点での受信を前提としている。そして、GPS衛星は約12時間で地球を1周するため、前回受信の衛星履歴や軌道情報を参照すれば、現時点で受信可能なGPS衛星を判断して選択捕捉することができるため、迅速にかつ確実に衛星信号を受信することができる。
【0006】
しかしながら、腕時計等の携帯される時計の場合は、利用者に装着された状態つまり移動しながらの受信や、室内での受信になることがある。また、携帯される時計の場合、固定して用いられる時計に比べて、利用者が手動操作で受信を行う確率も高い。従って、腕時計等では、受信処理時に受信位置や受信時間が前回とは異なる可能性があり、前回の受信履歴を有効に利用することができない。
【0007】
このため、GPS衛星からの信号を受信可能な腕時計では、衛星の軌道情報を保持していないコールドスタート状態から衛星サーチを行わなければならないことが多い。
従って時刻情報を受信する際は、無作為にGPS衛星をサーチする必要がある。このサーチ処理を行った際に、最初に捕捉したGPS衛星によってナビゲーションデータ(NAVデータ)をデコードできれば、受信時間の短縮が図れ、かつ、消費電力も低減できる。
しかしながら、捕捉したGPS衛星からの信号が弱信号であったり、移動中の受信において受信ユーザのコースが変更されたり高層建物の陰になったりすることで捕捉衛星を脱捕してしまう可能性が高く、そのたびにGPS衛星を再サーチする必要があり、トータルの受信時間が長くなり、消費電力も増大してしまう。
【0008】
本発明は、衛星信号を短時間で受信でき、消費電力も低減できるとともに、受信環境の影響を軽減できて受信に成功する確率を向上できる計時装置および計時装置の衛星信号受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の計時装置は、位置情報衛星を捕捉し、この捕捉した前記位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した衛星信号に基づいて時刻情報を生成する時刻情報生成部と、時刻情報を表示する時刻表示部と、前記受信部を制御する受信制御部と、を備える計時装置であって、前記受信制御部は、受信処理を行う前に計時装置における受信環境を判定する判定部と、前記受信部による受信処理を行う際に、1つの位置情報衛星を捕捉し、その位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する一衛星サーチモードと、複数の位置情報衛星を捕捉し、捕捉した複数の位置情報衛星のうちの1つの位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する複数衛星サーチモードとを、前記判定部の判定結果に基づいて選択するサーチモード選択部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、受信処理を行う前に、判定部によって受信環境を判定し、その判定結果に基づいて、一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードを選択している。すなわち、受信を行いながら、その受信結果に基づいて動的にサーチモードを選択するのではなく、受信前に予め(静的に)サーチモードを選択している。
このため、実際に受信処理を行い、その受信状況に基づいて動的にサーチモードを選択する場合には、受信処理を開始してから、受信状況を判断してサーチモードを選択するまでの時間が必要となるが、本発明では、サーチモードを選択してから受信を開始することができるので、受信開始後に衛星信号を短時間で受信でき、消費電力も低減できる。
【0011】
さらに、判定部の判定結果に基づいてサーチモードを選択しているので、受信環境の影響を軽減できて受信に成功する確率を向上でき、受信時間を短縮でき、消費電力も低減できる。
すなわち、信号強度(受信レベル)が所定値以上と高い場合のように受信環境が良好であれば、一衛星サーチモードにより1つの位置情報衛星しか捕捉しなくても、時刻情報をデコードして取得することができる。すなわち、一衛星サーチモードであれば、1つの衛星のみを捕捉して衛星信号を受信すればよいため、受信環境が良好で信号強度が高い場合には、短時間で時刻/週情報を取得でき、消費電力も低減できる。しかし、一衛星サーチモードは、1つの衛星を捕捉して受信信号をデコードし、正しい信号を受信できない場合には他の衛星を捕捉して受信信号をデコードする処理を繰り返すことになる。このため、一衛星サーチモードを選択し、かつ、受信環境が悪化して信号強度が低下した場合に、時刻/週情報の取得確率も低下し、衛星サーチ処理やNAVデータのデコード処理を繰り返すことになるため、受信時間も長くなって消費電力も増大する。
一方、複数衛星サーチモードのみで受信処理を行うと、受信環境が良好な場合には、一衛星サーチモードに比べて消費電力が増加してしまうが、受信環境が悪化して信号強度が低い場合でも、同時に複数の衛星をサーチして受信信号をデコードするため、時刻/週情報の取得確率を高くでき、一衛星サーチモードに比べて受信時間も短くできて消費電力を抑えることができる。
従って、本発明のように、判定部による受信環境の判定結果に基づいて、一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードを選択すれば、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信環境の影響を軽減できて受信に成功する確率を向上できる。
【0012】
本発明において、計時装置に照射される光量を測定する光量測定部を備え、前記判定部は、前記光量測定部によって所定値以上の光量を測定したか否かを判定し、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、所定値以上の光量を測定したと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定値未満の光量を測定したと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0013】
光量測定部を備えていれば、計時装置が屋外に配置されているか否かを容易に判断できる。すなわち、太陽光が計時装置に照射されている場合には、屋内照明が計時装置に照射されている場合に比べて、照射される光量が大きい。従って、計時装置に光量センサなどを設け、計時装置に照射される光量を測定し、判定用の所定値(閾値)を、測定した光量が太陽光つまり計時装置が屋外に配置されているか否かを判断できる値に設定すれば、計時装置が、屋外に配置されているか否かを容易に判断できる。そして、位置情報衛星からの信号を受信するための受信環境は、屋内に比べて屋外のほうが良好である可能性が高いため、本発明によれば、光量を測定することで受信環境が良好であるか否かを、受信処理前に容易に判定できる。
ここで、光量測定部としては、光量を直接測定する光量センサを用いてよいが、光の照射によって発電を行う太陽電池を用いてもよい。太陽電池の発電量は、太陽電池に照射される光量によって変化するため、太陽電池の発電量を検出すれば、間接的に光量を測定することができる。そして、太陽電池を光量測定部としても兼用すれば、光量センサを別途設ける場合に比べて部品点数を少なくでき、コストも低減できる。
なお、光量を判定する前記閾値は、例えば、5000lx(ルクス)に設定すればよい。すなわち、日中の屋外であれば、雨天や曇天であっても測定照度は5000lx以上になるのに対し、屋内の場合は蛍光灯などの照明を用いるため、測定照度は1000lx以下になる。従って、前記閾値を5000lx程度に設定すれば、前記判定部は、測定照度が前記閾値以上の場合は、計時装置が屋外に配置されていることを判定できる。
【0014】
本発明では、計時装置の移動速度を測定する移動速度測定部を備え、前記判定部は、前記移動速度測定部によって所定値以下の移動速度を測定したか否かを判定し、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、所定値以下の移動速度を測定したと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定値より大きな移動速度を測定したと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0015】
このような本発明によれば、移動速度測定部を備えているので、計時装置が静止されているか、あるいは移動されているかを判断できる。そして、計時装置が移動されている場合には、位置情報衛星との位置関係が変化し、例えば、計時装置の移動に伴い、捕捉していた位置情報衛星と計時装置との間にビルが位置するようになって衛星信号を受信できなくなる可能性もある。従って、計時装置が静止している場合のほうが、移動している場合に比べて、受信環境が良好である可能性が高いため、計時装置の移動速度を測定すれば、受信環境が良好であるか否かを、受信処理前に容易に判定できる。
なお、移動速度測定部としては、例えば加速度センサなどが利用できる。
また、前記判定部で判定する移動速度の所定値(閾値)は、例えば、前記計時装置がほぼ静止状態にあるか否かを判定できる値に設定すればよい。例えば、加速度を測定して判定する場合には、筐体を鉛直方向に2軸で振幅させる場合の単位時間当たりの最大加速度が閾値0.98m/s2(0.1G)以上であれば歩行しており、前記閾値未満であれば静止していると判断できる。すなわち、前記計時装置を腕に装着してウォーキングやジョギングを行った場合の筐体の最大加速度は、4.9〜9.8m/s2(0.5〜1.0G)程度である。従って、判定部は、測定した最大加速度が前記閾値以上であるか否かによって、計時装置が移動状態であるか静止状態であるかを判定できる。
【0016】
本発明において、前記位置情報衛星の軌道情報を記憶する記憶部を備え、前記判定部は、前記記憶部に記憶された軌道情報に基づいて、受信処理を行う時点で捕捉可能な位置情報衛星のうち、所定角度以上の高仰角に位置する位置情報衛星が所定数以上あるか否かを判定し、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、前記高仰角に位置する位置情報衛星が、所定数以上あると判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定数未満であると判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0017】
各位置情報衛星の軌道情報が記憶部に記憶されていれば、受信時に高仰角に位置する位置情報衛星があるか否かも事前に把握できる。
そして、位置情報衛星からの衛星信号を計時装置で受信する場合、低仰角に位置する位置情報衛星であると、ビルなどの建物に遮られる可能性が高くなる。従って、計時装置に対して天頂に位置する高仰角の位置情報衛星を捕捉したほうが、低仰角に位置する位置情報衛星を捕捉する場合に比べて受信環境が良好となる。
従って、高仰角に位置する位置情報衛星が所定数以上あるか否かを軌道情報に基づいて検出すれば、受信環境が良好であるか否かを受信処理前に容易に判定できる。
なお、前記高仰角であるか否かは、例えば、仰角が60度以上であれば高仰角であると設定すればよい。
【0018】
本発明において、位置情報衛星から受信した衛星信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、前記受信レベル検出部で検出した受信レベルを記憶する記憶部とを備え、前記判定部は、前記記憶部に記憶された前回受信時の受信レベルが所定値以上であるか否かを判定し、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、前回受信時の受信レベルが、前記所定値以上であると判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定値未満であると判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0019】
本発明では、前回の受信レベルが、所定値(例えば−133dBm)以上の場合には一衛星サーチモードで処理を行い、所定値未満であれば複数衛星サーチモードで処理を行えばよい。
自動受信の場合であっても、手動受信の場合であっても、一般的に、各受信時の環境は同じ場合が多い。例えば、毎日決まった定時に受信を行う場合、受信環境も同じことが多い。また、手動受信の場合も、例えば、利用者は毎回屋外で操作するなど、受信環境が同じことが多い。
従って、前回の受信レベルが高い場合には、次の受信処理時も受信レベルが高く受信環境が良好である可能性が高く、前回の受信レベルが低い場合には、次の受信処理時も受信レベルが低く受信環境も良くない可能性が高い。従って、前回の受信レベルによって、受信環境が良好であるか否かを受信処理前に容易に判定できる。
なお、dBmは1mWを0dBとしたものであり、例えば、−130dBm=1×10−13mWとなる。
【0020】
本発明において、位置情報衛星から衛星信号を受信して時刻情報を取得するまでの受信時間を測定する受信時間測定部と、前記受信時間測定部で測定した受信時間を記憶する記憶部とを備え、前記判定部は、前記記憶部に記憶された前回受信時の受信時間が所定時間以下であるか否かを判定し、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、前回受信時の受信時間が、前記所定時間以下であると判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定時間より長いと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0021】
本発明では、前回の受信処理時間が、所定値(例えば3分)以下の場合には一衛星サーチモードで処理を行い、所定値よりも長い場合には複数衛星サーチモードで処理を行えばよい。
自動受信の場合であっても、手動受信の場合であっても、一般的に、各受信時の環境は同じ場合が多い。そして、受信環境が良好であれば受信時間も短くなり、受信環境が悪化すれば受信時間も長くなる。従って、前回の受信時間が長く、受信環境があまり良くないと判断できる場合には、次の受信処理時も受信環境が良くない可能性が高く、前回の受信時間が短くて受信環境が良かったと判断できる場合には、次の受信処理時も受信環境が良好である可能性が高い。従って、前回の受信時間によって、受信環境が良好であるか否かを受信処理前に容易に判定できる。
【0022】
本発明において、利用者が操作可能な外部操作部材を備え、前記判定部は、前記外部操作部材で一衛星サーチモードまたは複数衛星サーチモードのいずれかの選択操作が行われたか否かを判定し、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、一衛星サーチモードの選択操作が行われたと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、複数衛星サーチモードの選択操作が行われたと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0023】
利用者は、通常、受信操作を行う際に、現在の場所では、例えば、天空が開けており、位置情報衛星からの信号を受信しやすい環境であるか、あるいは、建物や屋根などがあって位置情報衛星からの信号を受信し難い環境であるかを判断できる。
従って、利用者の判断によって、手動操作でサーチモードを選択すれば、受信環境に応じたモードを選択できる可能性が高く、時刻/週情報の取得確率を高くでき、受信時間も短くできて消費電力を抑えることができる。
【0024】
この際、前記サーチモード選択部は、前記判定部において、一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードのいずれの選択操作も行われなかったと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、利用者が受信操作を行った際に、サーチモードの選択操作を忘れていても、初期設定された一衛星サーチモードで受信処理を実行でき、例えばサーチモードの選択操作が無い場合に受信処理を実施しない場合に比べて操作性を低減することがない。
【0026】
本発明において、前記サーチモード選択部は、計時装置の電源が投入された後、最初に時刻受信処理を行う場合には、前記判定部の判定結果に関わらず、複数衛星サーチモードを選択することが好ましい。
【0027】
電源投入直後は、時計の時間もずれている可能性が高いため、確実に時刻情報を受信する必要がある。このため、電源投入直後の初回時刻受信時に、複数衛星サーチモードを選択すれば、時刻情報を確実に取得できる可能性が向上し、計時装置の時刻を正しく修正することができる。
【0028】
本発明の計時装置の衛星信号受信方法は、位置情報衛星を捕捉し、この捕捉した前記位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した衛星信号に基づいて時刻情報を生成する時刻情報生成部と、時刻情報を表示する時刻表示部と、前記受信部を制御する受信制御部と、を備える計時装置の衛星信号受信方法であって、受信処理を行う前に計時装置における受信環境を判定する判定工程と、前記受信部による受信処理を行う際に、1つの位置情報衛星を捕捉し、その位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する一衛星サーチモードと、複数の位置情報衛星を捕捉し、捕捉した複数の位置情報衛星のうちの1つの位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する複数衛星サーチモードとを、前記判定部の判定結果に基づいて選択するサーチモード選択工程と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、前記計時装置と同様に、サーチモードを選択してから受信を開始することができるので、受信開始後に衛星信号を短時間で受信でき、消費電力も低減できる。さらに、受信環境を判定してサーチモードを選択しているので、衛星信号を短時間で受信でき、消費電力も低減できるとともに、受信環境の影響を軽減できて受信に成功する確率を向上できる。
従って、前記計時装置と同様に、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信環境の影響を軽減できて受任に成功する確率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0031】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る計時装置であるGPS衛星信号受信装置付き腕時計1(以下「GPS付き腕時計1」という)を示す概略図である。また、図2は、GPS付き腕時計1の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
図1に示すように、GPS付き腕時計1は、文字板2および指針3からなる時刻表示部を備える。文字板2の一部には開口が形成され、LCD表示パネル等からなるディスプレイ4が組み込まれている。
【0032】
指針3は、秒針、分針、時針等を備えて構成され、ステップモータで歯車を介して駆動される。
ディスプレイ4はLCD表示パネル等で構成され、緯度、経度や都市名等の位置情報を表示する他、メッセージ情報を表示する。
そして、GPS付き腕時計1は、地球の上空を所定の軌道で周回している複数のGPS衛星5からの衛星信号を受信して衛星時刻情報を取得し、内部時刻情報を修正したり、測位情報つまり現在位置をディスプレイ4に表示できるように構成されている。
なお、GPS衛星5は、本発明における位置情報衛星の一例であり、地球の上空に複数存在している。現在は約30個のGPS衛星5が周回している。
【0033】
また、GPS付き腕時計1には、外部操作部材であるリュウズ6、ボタン7,8が設けられている。
【0034】
[GPS付き腕時計の回路構成]
次に、GPS付き腕時計1の回路構成に関して説明する。図2に示すように、GPS付き腕時計1は、時刻表示装置45、GPS装置40、時刻修正装置44を備え、コンピュータとしての機能も発揮する構成となっている。なお、図2に示すように、時刻表示装置45、GPS装置40、時刻修正装置44は一部の構成が重複している。
【0035】
以下、図2に示す各構成について説明する。
[GPS装置の構成]
図2に示すように、GPS付き腕時計1は、GPS衛星5から送信される衛星信号を受信、処理するGPS装置40を備えている。
GPS装置40は、GPSアンテナ11、フィルタ(SAW)31、受信回路18を備える。フィルタ(SAW)31は、バンドパスフィルタであり、1.5GHzの衛星信号を抜き出すものとなっている。このGPS装置40により、本発明の受信部が構成されている。
【0036】
受信回路18は、フィルタ31で抜き出された衛星信号を処理するものであり、RF部(Radio Frequency:無線周波数)27とベースバンド部30を備える。
RF部27は、PLL回路34、IFフィルタ35、VCO(Voltage Controlled Oscillator)41、ADC(A/D変換器)42、ミキサ46、LNA(Low Noise Amplifier)47、IFアンプ48等を備えている。
【0037】
そして、フィルタ31で抜き出された衛星信号は、LNA47で増幅された後、ミキサ46でVCO41の信号とミキシングされ、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)にダウンコンバートされる。
ミキサ46でミキシングされたIFは、IFアンプ48、IFフィルタ35を通り、ADC(A/D変換器)42でデジタル信号に変換される。
【0038】
ベースバンド部30は、DSP(Digital Signal Processor)39、CPU(Central Processing Unit)36、SRAM(Static Random Access Memory)37、RTC(リアルタイムクロック)38を備える。また、ベースバンド部30には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)32やフラッシュメモリ33等も接続されている。
そして、ベースバンド部30は、RF部27のADC42からデジタル信号が入力され、制御信号に基づき、衛星信号の演算(デコード処理)を行い、衛星時刻情報や測位情報を取得できるようになっている。
【0039】
なお、PLL回路34用のクロック信号は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)32から生成されるようになっている。
また、RTC38は、衛星信号を処理するために、受信機側の時刻情報を生成するものである。このRTC38は、TCXO32から出力される基準クロックでカウントアップされるようになっている。
【0040】
[時刻修正装置の構成]
時刻修正装置44は、前記受信回路18と、制御部20と、駆動回路43とを備えている。
制御部20は、記憶部20Aを備えるとともに、GPS装置40や、指針3、ディスプレイ4の駆動を制御するものである。すなわち、制御部20は、制御信号を受信回路18に送り、GPS装置(受信部)40の受信動作を制御する受信制御部を構成している。
また、記憶部20Aは、前記受信回路18のベースバンド部30で得られた時刻データ(衛星時刻情報)や、測位データが記憶される。
【0041】
[時刻表示装置の構成]
時刻表示装置45は、制御部20、RTC38、TCXO32、記憶部20A、駆動回路43、指針3、ディスプレイ4などを備えて構成されている。従って、時刻表示装置45により本発明の時刻表示部が構成されている。
駆動回路43は、図示しないステップモータを駆動して指針3を駆動する指針駆動回路と、ディスプレイ4を駆動するディスプレイ駆動回路とを備えている。
そして、RTC38で生成された内部時刻情報は、前記記憶部20Aに現時刻の情報として記憶され、制御部20は、記憶部20Aに記憶された時刻データに基づいて、指針3やディスプレイ4の表示時刻を制御する。
【0042】
また、制御部20は、前記ベースバンド部30で得られた衛星時刻情報にUTCオフセット(現在は+14秒)を加えることで協定世界時(UTC)とし、さらに、記憶部20Aに記憶されているUTCに対する時差情報を加算して、GPS付き腕時計1を使用している現地時刻を算出し、記憶部20Aに記憶する。従って、制御部20は、受信した衛星信号に基づいて時刻情報を生成する時刻情報生成部としても機能する。
そして、制御部20は、受信した衛星信号に基づいて生成された時刻情報が記憶部20Aに記憶されて内部時刻情報が更新されると、駆動回路43を通して、ディスプレイ4に修正された時刻情報を表示するようになっている。
さらに、制御部20は、指針3で指示していた現時刻情報と修正された内部時刻情報との差を算出し、その時間差分だけ指針3が移動するように、駆動回路43を介してステップモータを駆動し、指針3が修正後の時刻を指示するように制御する。
【0043】
このような構成のGPS付き腕時計1は、充電可能な二次電池24から供給される電力で駆動する。
すなわち、充電用コイル22は、充電制御回路28を通じて二次電池24に電力を充電する。二次電池24は、レギュレータ29を介して、時刻修正装置44等に駆動電力を供給するようになっている。
以上に説明したように、本実施形態における時計機構は、いわゆる電子時計となっている。
【0044】
[航法メッセージの説明]
ここで、GPS衛星5から送信される信号(衛星信号)である航法メッセージについて、説明する。
図3、4は、GPS衛星信号を示す概略説明図である。
各GPS衛星5からは、図3に示すように、1フレームデータ(30秒)単位で信号が送信されてくる。この1フレームデータは、5個のサブフレームデータ(1サブフレームデータは6秒)を有している。各サブフレームデータは、10個のワード(1ワードは0.6秒)を有している。
【0045】
また、各サブフレームデータの先頭のワードは、TLM(Telemetry word)データが格納されたTLMワードとなり、図4に示すように、前記TLMワード内の先頭には、プリアンブルデータが格納されている。
また、TLMに続くワードは、HOW(hand over word)データが格納されたHOWワードとなり、その先頭には、TOW(Time of Week、「Zカウント」ともいう)というGPS衛星のGPS時刻情報(衛星時刻情報)が格納されている。
GPS時刻情報は毎週日曜日の0時からの経過時間が秒で表示され、翌週の日曜日の0時に0に戻るようになっている。つまり、GPS時刻情報は、週の初めから一週間毎に示される秒単位の情報であって、経過時間が1.5秒単位で表した数となっており、ZカウントあるいはZカウントデータともいわれており、GPS付き腕時計1が現在時刻を知る手がかりともなっている。
【0046】
また、図3に示すサブフレーム1のワードデータは、週番号データ(WN)、衛星健康状態情報(SVhealth)データなどの衛星補正データが格納されたワード等を含んでいる。
週番号データは、現在のGPS時刻情報が含まれる週を表す情報である。すなわち、GPS時刻情報の起点は、UTC(世界協定時)における1980年1月6日00:00:00であり、この日に始まる週は週番号0となっている。そして、週番号と経過時間(秒)のデータを取得することで、受信側はGPS時刻情報を取得できる構成となっている。
また、週番号データは、1週間単位で更新されるデータとなっている。
従って、受信側で、一旦、週番号データを取得しており、その週番号データを取得した時期からの経過時間がカウントされている場合は、再度、週番号データを取得しなくても、取得している週番号データと経過時間から、GPS衛星の現在の週番号データが分かる。従って、Zカウントデータを取得すれば、現在のGPS時刻が概算で分かるようになっている。このため、GPS装置40は、時刻情報を取得する場合には、通常、Zカウントデータのみを取得する。
【0047】
GPS衛星からの信号に含まれる航法メッセージはフレームデータ(メインフレーム構成)が50bps、全ビット数1500ビットを主フレームとするデータとなっている。
そして、この主フレームデータは、それぞれ300ビット(300bit)ずつの5つのサブフレームデータに分割されている。
そして、1フレームデータは30秒に相当する。従って、サブフレームデータの1つは、6秒に相当するデータとなっている。上述したように、この各サブフレームデータの先頭の2語には、TLMワード、HOWワードのZカウント(TOW)データが含まれている。そして、Zカウントデータは、サブフレーム1から始まり、サブフレームデータ毎に6秒おきのデータとなっている。つまり、サブフレーム1からサブフレーム5はTLMワード、HOWワードのZカウント(TOW)データを有している。この、Zカウント(TOW)データは、次のサブフレームデータの時刻情報となっている。例えば、サブフレーム1のZカウントデータは、サブフレーム2の時刻データとなっている。
【0048】
また、GPS衛星5からの衛星信号である航法メッセージは、図3,4で示すように、プリアンブルデータ及びHOWワードのTOW、各サブフレームデータ、例えば、週番号データや衛星健康状態データを含む衛星補正データ等や、エフェメリス(GPS衛星5毎の詳細な軌道情報)や、アルマナック(全GPS衛星5の概略軌道情報)や、UTCデータ(世界協定時情報等)となっている。さらに詳細には、航法メッセージのサブフレームデータは、サブフレーム1からサブフレーム5まであり、この5つのサブフレームデータを1つの単位として、フレームデータが構成されている。そして、サブフレームデータは、上述したように、1から10までのワードデータで構成されている。
従って、HOWデータつまりZカウントは、6秒間隔で送信されるのに対し、週番号データ、エフェメリスパラメータ、アルマナックパラメータは、30秒間隔で送信される。
【0049】
GPS衛星5からの信号は以上のように送信されてくるため、本実施形態の衛星信号の受信とは、各GPS衛星5から送信される衛星信号のC/Aコードと位相同期させることである。
つまり、このようなGPS衛星5のフレームデータ等を取得するには、ベースバンド部30でGPS衛星5の信号と同期する必要がある。
この場合、特に1ms単位の同期のためにC/Aコード(1023chip(1ms))が用いられる。このC/Aコード(1023chip(1ms))は、地球を周回している複数のGPS衛星5毎に異なっており、固有のものとなっている。
従って、特定のGPS衛星5の衛星信号を受信する場合は、GPS装置40において、GPS衛星5に固有のC/Aコードを発生させて位相同期することで、受信することができるようになっている。
そして、C/Aコード(1023chip(1ms))と同期させると、サブフレームデータのTLMワードのプリアンブルデータ、HOWワードを受信でき、HOWワードのZカウントデータ(時刻情報)が取得できる。
さらに、測位情報は、衛星信号のエフェメリスパラメータを3〜4衛星分取得すればよい。ここで、エフェメリスパラメータは、30秒ごとに送信されるサブフレーム2のプリアンブルから600ビット、つまり約12秒の受信を行うことで取得できる。
GPS衛星5の衛星信号である航法メッセージは以上のように構成されている。
【0050】
[受信制御部のシステム構成]
次に、図5に基づいて、本発明の受信制御部50のシステム構成について説明する。図5は、主に制御部20において実行されるプログラムで実現される機能ブロックである。
すなわち、受信制御部50は、判定部51と、サーチモード選択部52とを備える。
【0051】
判定部51は、GPS付き腕時計1の受信環境を判定するものであり、本実施形態では、リュウズ6やボタン7,8等の外部操作部材によって、複数衛星サーチモードおよび一衛星モードのいずれが選択されたか、あるいは、選択操作が行われなかったかを判定するように構成されている。
【0052】
サーチモード選択部52は、受信部であるGPS装置40による受信処理を行う際に、1つのGPS衛星5を捕捉し、そのGPS衛星5から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する一衛星サーチモードと、複数のGPS衛星5を捕捉し、捕捉した複数のGPS衛星5のうちの1つのGPS衛星5から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する複数衛星サーチモードとを、前記判定部51の判定結果に基づいて選択するように構成されている。
【0053】
[時刻情報受信処理]
次に、GPS付き腕時計1の受信動作について、図6のフローチャートも参照して説明する。
【0054】
図6に示す時刻情報受信処理は、利用者の受信操作が行われた場合(手動受信処理時)と、予め設定された受信時刻になった場合(自動受信処理時)に実行される。設定時刻とは、例えば、午前2時や午前3時、あるいは午前7時や午前8時等である。午前2時や3時に設定するのは、GPS付き腕時計1が利用者から取り外されて非装着状態で窓際の机などに静止して置かれている可能性が高く、かつ、電気製品などの使用が少なくてノイズの影響も軽減できるため、電波受信環境が良好な可能性が高いためである。また、午前7時や8時に設定するのは、通勤時間帯であり、GPS付き腕時計1を装着した利用者が屋外にいて衛星信号を受信しやすいためである。但し、これらの時刻に限定されるものではなく、利用者が自動受信時刻を設定してもよい。
【0055】
この時刻情報受信処理が開始されると、受信制御部50の判定部51は、利用者によってサーチモードの選択操作が行われているかを確認する(S11)。そして、選択操作が行われていた場合、その選択操作は複数衛星サーチモードを選択するものであるかを判定する(S12)。
【0056】
S12で複数衛星サーチモードの選択操作が行われていたと判定部51が判定すると、サーチモード選択部52は複数衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S13)。
一方、判定部51が、利用者がサーチモードの選択操作を行っていないためにS11で「No」と判定した場合と、利用者が一衛星サーチモードの選択操作を行っていたためS12で「No」と判定した場合は、サーチモード選択部52は一衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S14)。
【0057】
受信制御部50は、サーチモード選択部52によって、GPS装置40の受信モードが一衛星サーチモードに設定されている場合には、受信チャンネルを1チャンネルとし、GPS衛星5から送信される衛星信号の受信を開始する(S14)。
【0058】
また、受信制御部50は、サーチモード選択部52によって、GPS装置40の受信モードが複数衛星サーチモードに設定されている場合には、受信チャンネルを複数、例えば8チャンネルとし、GPS衛星5から送信される衛星信号の受信を開始する(S13)。
【0059】
S13,14の各受信処理は、具体的には次のように行われる。
すなわち、受信制御部50は、GPS装置40を制御し、GPSアンテナ11から衛星信号であるGPS信号を受信するために、GPS衛星5のC/Aコードのパターンを発生させて受信を開始する。そして、ベースバンド部30は、各C/Aコードと受信した衛星信号の相関値を求め、同期できるGPS衛星5を捕捉する。
【0060】
そして、受信制御部50は、GPS衛星5を捕捉できたか否かを判定する(S15)。S15において、衛星を捕捉できていない場合、受信制御部50は衛星捕捉時間(サーチ時間)が予め設定された時間(サーチ時間のタイムアウト判定時間)以上になって、タイムアウトになったか否かを確認する(S16)。
なお、受信制御部50は、タイムアウトであるか否かを次のように判定する。すなわち、一衛星の捕捉処理時間は数百ミリ秒程度である。そして、GPS付き腕時計1が全衛星の軌道情報(アルマナックパラメータ)を取得していない状態から衛星捕捉処理を行うコールドスタート時は、GPS衛星5を無作為にサーチすることになる。この場合、例えば、No.1のGPS衛星5から順にサーチし、No.30のGPS衛星5を捕捉できた場合、つまり一衛星の捕捉に最も時間がかかる場合でも、約2秒程度で衛星を捕捉できる。従って、受信制御部50は、受信開始後、予め設定したサーチタイムアウト判定時間(例えば3秒)を経過しても衛星を捕捉できなければS16でタイムアウトと判定する。
【0061】
S16でタイムアウトであると判定されると、受信制御部50は、GPS装置40におけるGPS受信処理を停止する(S17)。また、受信制御部50は、受信に失敗したことをディスプレイ4等に表示し、制御部20は現状の内部時刻に基づいて指針3を運針し、内部時刻を表示する(S18)。
【0062】
一方、S15で衛星を捕捉したと判定された場合、受信制御部50は、捕捉したGPS衛星5から受信した衛星信号をデコードし、時刻/週情報を取得できたか否かを判定する(S19)。
なお、受信制御部50は、S19において、通常は、Zカウントデータおよび週番号データを取得できたか否か、つまり時刻/週情報を取得できたか否かを判定している。但し、前回、週番号データ(WN)を取得後、1週間以内の場合であり、週番号データ(WN)を再取得する必要がない場合には、S19において、Zカウントデータが取得できたか否かのみを判定してもよい。
【0063】
S19において、時刻/週情報を取得できていないと判定された場合、受信制御部50は、NAVデータのデコード時間がタイムアウトになったか否かを判定する(S20)。すなわち、受信制御部50は、NAVデータのデコードを開始してから予め設定された時間(デコードタイムアウト判定時間)を経過しても時刻/週情報を取得できない場合には、受信状態が良くないと判断する。
なお、デコードタイムアウト判定時間は、例えば、6秒間隔で送信されるZカウントのみを取得する場合には、12秒〜24秒程度に設定すればよい。一方、30秒間隔で送信される週番号まで取得する場合には、60秒〜120秒程度に設定すればよい。
【0064】
S20において、タイムアウトではないと判定された場合は、受信制御部50は、時刻/週情報を取得できたか否かの判定を継続する(S19)。
S20において、タイムアウトであると判定された場合は、受信制御部50は、GPS受信処理を停止し(S17)、受信に失敗したことをディスプレイ4等に表示し、制御部20は現状の内部時刻に基づいて指針3を運針し、内部時刻を表示する(S18)。
【0065】
S19において、時刻/週情報を取得できたと判定された場合は、受信制御部50は、GPS受信処理を停止し(S21)、受信に成功したことをディスプレイ4等に表示し、制御部20は取得した時刻情報に基づいて指針3を運針し、指針3の表示を修正する(S22)。
【0066】
以上の本実施形態においては、利用者が複数衛星サーチモードを手動選択した場合のみ、複数衛星サーチ処理S13を行い、それ以外の場合には、一衛星サーチ処理S14を行うことになる。
【0067】
[実験データ]
ここで、一衛星サーチモード(一衛星モード)および複数衛星サーチモード(マルチチャンネル)の時刻情報(Zカウントデータや週番号データ)を取得するまでの時間と、取得率に関する実験データを図7のグラフに示す。
図7に示すように、Zカウントデータの取得時間は、受信レベルが高いほど短くなり、例えば、受信レベルが−137dBm以上であれば、いずれのモード時においても10〜20秒未満に抑えることができる。
一方、受信レベルが低くなるとZカウントデータの取得時間も長くなり、例えば、受信レベルが−139dBm以下であれば、いずれのモード時においても40〜70秒もの時間がかかり、S23でタイムアウトと判定されることになる。
【0068】
また、Zカウントデータの取得時間は、受信レベルが高いほど短くなる点は各モードにおいて共通する。但し、一衛星サーチモードでは、取得率が80%以上となるのが、受信レベルが−135dBm以上の場合であり、受信レベルが−135dBm以下になるとその低下に比例して取得率も低下するのに対し、複数衛星サーチモードでは、取得率が80%以上となるのが、受信レベルが−140dBm以上の場合であり、より低い受信レベルでも高い取得率を維持できる。
【0069】
一方、受信処理の消費電流は、一衛星サーチモードを1とした場合の相対値で、複数衛星サーチモードは1.5〜3.0となる。なお、複数衛星サーチモードでは、比較的天頂が空いている環境である場合に1.5倍程度となり、室内等の受信環境が厳しい場合に3.0倍程度になる。
【0070】
[実施形態の効果]
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)GPS付き腕時計1は、利用者の選択操作によって、一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードを選択して受信処理を行っている。このため、利用者は、屋外など受信環境が良好で受信レベルも高いと判断した場合には、一衛星サーチモードを選択すれば、短時間で時刻/週情報を取得でき、消費電力も低減できる。
一方、利用者は、室内で受信する場合や歩行中に受信する場合など、受信環境が悪いと判断した場合には、複数衛星サーチモードを選択すれば、複数の衛星において最も受信レベルが高い衛星の信号を受信してデコードすることができる。従って、受信環境が悪い場合に、一衛星サーチモードで受信する場合と比べれば、時刻/週情報の取得確率を高くでき、一衛星モードに比べて受信時間も短くできて消費電力を抑えることができる。
従って、本実施形態では、受信環境を利用者が判断し、受信を開始する前に予め受信環境に応じて一衛星サーチモード又は複数衛星サーチモードを選択しているので、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信場所の制約が小さく、利便性を向上できる。
すなわち、一衛星モードのみで受信処理を行うと、受信環境が良好で受信レベルが高い場合には、短時間で時刻/週情報を取得でき、消費電力も低減できる。しかし、受信環境が悪化して受信レベルが低くなると、時刻/週情報の取得確率も低下し、衛星サーチ処理やNAVデータのデコード処理を繰り返すことになるため、受信時間も長くなって消費電力も増大する。
一方、多チャンネルモードのみで受信処理を行うと、受信環境が悪化して受信レベルが低い場合でも、時刻/週情報の取得確率を高くでき、一衛星モードに比べて受信時間も短くできて消費電力を抑えることができる。しかし、受信環境が良好な場合には、一衛星モードに比べて消費電力が増加してしまう。
これに対し、本実施形態では、判定部51およびサーチモード選択部52を設け、受信レベルの値で一衛星モードおよび多チャンネルモードを選択しているので、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信場所の制約が小さく、利便性を向上できる。
【0071】
(2)本実施形態では、受信処理を行う前に、判定部51によって受信環境を判定し、その判定結果に基づいて、サーチモード選択部52によって一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードを選択している。
このため、実際に受信処理を行い、受信状況に基づいて動的にサーチモードを選択する場合に比べ、本実施形態は、受信前に予め(静的に)サーチモードを選択しているので、受信開始後に衛星信号を短時間で受信でき、消費電力も低減できる。
【0072】
(3)S16において衛星捕捉処理時のタイムアウトを判定しているため、受信環境が非常に悪く、GPS衛星5を全く捕捉できない場合に、無駄な受信処理を継続することを防止でき、電力消費の増大によって電池電圧が低下し、システムダウンになることも防止できる。
また、S20においてデコード時間のタイムアウトを判定しているため、受信レベルが低く、正しい時刻情報を取得できない場合に、無駄に受信&デコード処理を継続することを防止できる。従って、この点でも、電力消費の増大によって電池電圧が低下し、システムダウンになることも防止できる。
【0073】
(4)GPS付き腕時計1は、利用者に装着されて利用されるため、ビルなどの建物が周囲にあってGPS衛星5からの信号が遮られやすい場合や、歩行しているためにGPS衛星5の信号が受信し難くなる場合など、建物に固定されるクロック等の時計に比べて受信環境が変化しやすい。本実施形態のGPS付き腕時計1は、このような受信環境が変化しても、利用者が一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードを選択しているので、時刻/週情報を短時間で取得でき、消費電力も低減できる。このため、本実施形態のGPS付き腕時計1は、特に、腕時計や懐中時計のような携帯型の時計において適したものにできる。
【0074】
(5)また、本実施形態では、利用者がサーチモードの選択操作を行わない場合には、初期設定とされた一衛星サーチモードを選択するようにしている。従って、利用者が受信操作を行った際に、サーチモードの選択操作を忘れていても、初期設定された一衛星サーチモードで受信処理を実行でき、例えばサーチモードの選択操作が無い場合に受信処理を実施しない場合に比べて操作性を低減することがない。
【0075】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態において、前述した他の実施形態と同一または同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
第2実施形態は、図8のフローチャートに示すように、GPS付き腕時計1に照射される光量を測定する光量検出処理を行い、その検出値に応じて、一衛星サーチモードと複数衛星サーチモードとを選択するようにしたものである。
【0076】
このため、第2実施形態のGPS付き腕時計1は、GPS付き腕時計1に照射する光量を測定する光量測定部(図示略)を備えている。
ここで、光量測定部としては、光量を直接測定する光量センサを設けてもよいが、本実施形態では、光の照射によって発電を行う太陽電池を設け、太陽電池の発電量によって間接的に光量を測定している。すなわち、GPS付き腕時計1は、電池24を充電する太陽電池と、この太陽電池の発電量を検出する発電検出部とを備え、これらの太陽電池および発電検出部で光量測定部が構成されている。
【0077】
以下に、第2実施形態の処理フローを、図8を参照して第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第2実施形態において、GPS受信が開始されると、光量測定部は太陽電池の発電量を測定する(S21)。
そして、判定部51は、前記発電量が予め設定された所定値以上であるかを判定する(S22)。
すなわち、太陽電池は、GPS付き腕時計1が昼間の屋外に配置され、太陽光が照射されている場合には発電量も高くなり、屋内の照明が照射されている場合は太陽光が照射されている場合に比べて発電量も低くなる。また、夜間の屋外に配置されている場合には、屋内の照明が照射されている場合に比べても発電量も低くなる。
従って、太陽光が照射された場合の発電量と、屋内の照明が照射された場合の発電量とを判別できるような閾値(所定値)を設定することで、前記発電量が所定値以上であれば、判定部51はGPS付き腕時計1が屋外に配置されていることを判別できる。前記閾値の具体例としては、例えば、照度(光量)が5000lx(ルクス)に相当する発電量を設定すればよい。すなわち、日中の屋外であれば、雨天や曇天であっても照度は5000lx以上となる。一方、屋内の場合は、蛍光灯などの照明を用いるため、照度は1000lx以下程度である。従って、光量(照度)によって屋内外を判定する場合の閾値は、5000lx程度に設定すればよく、発電量で光量を間接的に評価する場合も、前記光量の閾値に相当する発電量閾値を設定して屋内外を判定すればよい。
【0078】
判定部51がS22でNoと判定した場合には、サーチモード選択部52は複数衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S13)。
一方、判定部51が、S22で「Yes」と判定した場合は、サーチモード選択部52は一衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S14)。
その後の処理S15〜S22は前記第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0079】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
(6)さらに、光量測定部を設けているので、測定した光量が所定値以上であれば、GPS付き腕時計1は屋外に配置されていると判断できる。従って、受信環境が良好であることを自動的に判断でき、一衛星サーチモードを選択して受信処理を行うことができる。
また、測定した光量が所定値未満であれば、屋内などの受信環境が悪い状態にある可能性が高いことを自動的に判断でき、複数衛星サーチモードを選択して受信処理を行うことができる。
従って、本実施形態によれば、光量測定によって受信環境を自動的にかつ容易に判断できる。そして、判定した受信環境に応じて一衛星サーチモード又は複数衛星サーチモードを選択できるので、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信場所の制約が小さく、利便性を向上できる。
【0080】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。
第3実施形態のGPS付き腕時計1は、記憶部20Aに衛星軌道情報(アルマナック)が記憶されている。衛星軌道情報(アルマナック)は、例えば、1週間に1度など定期的に衛星信号から受信される。
そして、図9のフローチャートに示すように、判定部51は、現在の時刻情報や位置情報と、前記衛星軌道情報とから、現在、衛星信号を受信可能なGPS衛星5の軌道情報を把握する処理を行い、各GPS衛星5の仰角を検出する(S31)。
【0081】
なお、現在の時刻情報は、GPS付き腕時計1の内部時計の時刻情報を参照すればよい。
また、位置情報は、複数のGPS衛星5からの衛星信号を受信して現在地を求める位置情報取得処理によって求めた情報を記憶しておき、その位置情報を参照すればよい。この位置情報取得処理は、通常、海外への移動のようにタイムゾーンを変更する場合に、利用者の手動操作で行われる。
【0082】
そして、判定部51は、仰角が所定角度以上の高仰角にあるGPS衛星5が所定数以上あるか否かを判定する(S32)。S32では、例えば、仰角が60度以上にあるGPS衛星5が3個以上あるか否かを判定する。
判定部51がS32でNoと判定した場合には、サーチモード選択部52は複数衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S13)。
一方、判定部51が、S32で「Yes」と判定した場合は、サーチモード選択部52は一衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S14)。
その後の処理S15〜S22は前記第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0083】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
(7)さらに、記憶部20Aに各GPS衛星5の軌道情報(アルマナック)を保存しているので、現在受信可能なGPS衛星5において、仰角が所定値以上のGPS衛星5が所定数以上あるか否かを受信処理前に容易に判断でき、その結果、受信環境が良好であるか否かを容易に判断できる。
従って、衛星軌道情報によって受信環境を自動的に判断でき、その受信環境に応じて一衛星サーチモード又は複数衛星サーチモードを選択しているので、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信場所の制約が小さく、利便性を向上できる。
【0084】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について、図10を参照して説明する。
第4実施形態のGPS付き腕時計1は、衛星信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部を備え、記憶部20Aにはこの受信レベル検出部で検出された前回の受信レベルが記憶されている。
そして、図10のフローチャートに示すように、判定部51は、受信処理の際に、記憶部20Aを参照して前回の受信レベルを確認する(S41)。
【0085】
そして、判定部51は、確認した受信レベルが前回の受信レベルが所定値以上であるか否かを判定する(S42)。例えば、前回の受信レベルが所定値(例えば−133dBm)以上であるか否かを判定する。
判定部51がS42でNoと判定した場合には、サーチモード選択部52は複数衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S13)。
一方、判定部51が、S42で「Yes」と判定した場合は、サーチモード選択部52は一衛星サーチモードを選択して、時刻情報の受信処理を実行する(S14)。
その後の処理S15〜S22は前記第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。なお、受信制御部50は、S19において時刻・週情報を取得できた場合、その受信レベルを記憶部20Aに記憶する(S43)。
【0086】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
(8)さらに、記憶部20Aに前回の受信レベルを記憶し、この前回の受信レベルが所定値以上である否かで受信環境を判別しているので、受信環境が良好であるか否かを受信前に容易に判断できる。
従って、前回の受信レベルによって受信環境を自動的に判断でき、その受信環境に応じて一衛星サーチモード又は複数衛星サーチモードを選択しているので、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信場所の制約が小さく、利便性を向上できる。
【0087】
[変形例]
なお、本発明は、前記各実施形態に限らない。
本発明において、受信環境を判定する方法は、前記各実施形態に記載したものに限定されない。
【0088】
例えば、GPS付き腕時計1は、GPS付き腕時計1の移動速度を検出する移動速度検出部を備えるものでもよい。移動速度検出部としては、例えば加速度センサなどの速度センサを用いればよい。例えば、加速度を測定して判定する場合、筐体を鉛直方向に2軸で振幅させる場合の単位時間当たりの最大加速度が閾値0.98m/s2(0.1G)以上であれば歩行しており、前記閾値未満であれば静止していると判断できる。すなわち、前記計時装置を腕に装着してウォーキングやジョギングを行った場合の筐体の最大加速度は4.9〜9.8m/s2(0.5〜1.0G)である。従って、測定した最大加速度が前記閾値以上であるか否かによって、計時装置が移動状態であるか静止状態であるかを判別できる。
このような移動速度検出部を設け、検出した速度が所定値(閾値)以下と遅い場合には、検出速度が所定値よりも大きい場合に比べて受信環境が良好である可能性が高い。すなわち、GPS衛星5からの衛星信号を受信する場合、GPS衛星5とGPS付き腕時計1との位置関係が変わると衛星信号を受信しにくくなる。従って、GPS付き腕時計1の移動速度が速くなれば受信環境が悪化するため、移動速度が所定値よりも大きい場合には、より受信感度が高くなる複数衛星サーチモードを選択し、移動速度が所定値以下の場合には、一衛星サーチモードを選択していれば、平均的な受信時間を短くでき、消費電力も低減できるとともに、受信環境が悪化している場合でも時刻/週情報の取得できる確率を高くでき、受信場所の制約が小さく、利便性を向上できる。
【0089】
また、GPS付き腕時計1は、記憶部20Aに受信処理時の受信時間を記憶し、判定部51は、受信処理の際に、記憶部20Aを参照して前回の受信時間を確認し、その受信時間が所定時間(閾値)以下であれば、一衛星サーチモードを選択し、所定時間よりも長い場合には複数衛星サーチモードを選択するものでもよい。
前回の受信時間が短い場合には受信環境が良好であったと判断でき、今回の受信環境も良好である可能性が高い。すなわち、自動受信処理を行っている場合、次の自動受信も、通常、同じ時間で受信を行うため、受信環境も同じ状態であることが多い。また、手動受信処理を行っている場合は、利用者が同じような受信環境で受信操作を行っていることが多い。
従って、自動受信および手動受信のいずれの場合も、前回の受信環境と今回の受信環境は同じ場合が多い。従って、前回の受信時間が短い場合、次の受信時にも受信環境が良好である可能性が高いため、一衛星サーチモードを選択すればよい。一方、前回の受信時間が長い場合、次の受信時にも受信環境が悪い可能性が高いため、複数衛星サーチモードを選択すればよい。
なお、受信時間を判定する閾値は、例えば、Zカウントデータのみを受信する場合には1分、週番号などのカレンダー情報まで受信する場合には3分などに設定すればよい。前述したように、Zカウントデータは6秒間隔で受信できるため、受信時間が1分以上と長い場合には受信環境が悪いと判断できる。また、週番号は30秒間隔で受信できるため、受信開始タイミングによっては受信環境が良好であっても受信に1分以上掛かる場合がある。このため、前記閾値もZカウントデータの場合に比べて長く設定することが好ましく、例えば、3分程度に設定すればよい。
【0090】
さらに、受信環境の判定方法としては、前記各実施形態や変形例に記載された各判定方法を複数組み合わせても良い。例えば、光量検出による判定と、移動速度による判定を組み合わせ、検出光量が所定値つまりGPS付き腕時計1が屋外にあったと判定できた場合でも、移動速度が所定値以上つまりGPS付き腕時計1が移動中の場合には、受信環境があまり良好ではないと判定し、複数衛星サーチモードを選択するように設定してもよい。
【0091】
さらに、前記各実施形態において、電源投入直後の初回の時刻受信は判定部51の判定結果に関係なく、常に複数衛星サーチモードを選択するように構成してもよい。
電源投入直後は、時計の時間もずれている可能性が高いため、確実に時刻情報を受信する必要がある。このため、電源投入直後の初回時刻受信時に、複数衛星サーチモードを選択すれば、時刻情報を確実に取得できる可能性が向上し、GPS付き腕時計1の時刻を正しく修正することができる。
【0092】
また、前記各実施形態におけるタイムアウト判定時間(サーチタイムアウト判定時間、複数サーチタイムアウト判定時間、デコードタイムアウト判定時間)の具体的な時間は、前記実施形態に限らず、実施にあたって適宜設定すればよい。
さらに、前記各実施形態や変形例における閾値は、例示した具体例の値に限らず、実施にあたって各状態を判別できる値に設定すればよい。
【0093】
さらに、計時装置は、GPS付き腕時計1に組み込まれるものに限らない。例えば、携帯電話機などに組み込まれるものでもよい。
また、上述の各実施形態は、GPS衛星について説明したが、本発明は、GPS衛星だけではなく、ガリレオ、GLONASSなどの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)やSBASなどの静止衛星や準天頂衛星などの時刻情報を含む衛星信号を発信する位置情報衛星でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るGPS付き腕時計を示す概略図である。
【図2】図1のGPS付き腕時計の回路構成を示すブロック図である。
【図3】GPS衛星信号の構成を説明するための概略概念図である。
【図4】GPS衛星信号を示す概略説明図である。
【図5】第1実施形態の受信制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態の受信処理を示すフローチャートである。
【図7】衛星信号の信号強度と取得率および取得時間の関係を示すグラフである。
【図8】第2実施形態の受信処理を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態の受信処理を示すフローチャートである。
【図10】第4実施形態の受信処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1…GPS付き腕時計、3…指針、4…ディスプレイ、5…GPS衛星、11…GPSアンテナ、18…受信回路、20…制御部、20A…記憶部、27…RF部、30…ベースバンド部、40…GPS装置、43…駆動回路、44…時刻修正装置、45…時刻表示装置、50…受信制御部、51…判定部、52…サーチモード選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報衛星を捕捉し、この捕捉した前記位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した衛星信号に基づいて時刻情報を生成する時刻情報生成部と、
時刻情報を表示する時刻表示部と、
前記受信部を制御する受信制御部と、を備える計時装置であって、
前記受信制御部は、
受信処理を行う前に計時装置における受信環境を判定する判定部と、
前記受信部による受信処理を行う際に、1つの位置情報衛星を捕捉し、その位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する一衛星サーチモードと、複数の位置情報衛星を捕捉し、捕捉した複数の位置情報衛星のうちの1つの位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する複数衛星サーチモードとを、前記判定部の判定結果に基づいて選択するサーチモード選択部を備えることを特徴とする計時装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計時装置において、
計時装置に照射される光量を測定する光量測定部を備え、
前記判定部は、前記光量測定部によって所定値以上の光量を測定したか否かを判定し、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、所定値以上の光量を測定したと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定値未満の光量を測定したと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項3】
請求項1に記載の計時装置において、
計時装置の移動速度を測定する移動速度測定部を備え、
前記判定部は、前記移動速度測定部によって所定値以下の移動速度を測定したか否かを判定し、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、所定値以下の移動速度を測定したと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定値より大きな移動速度を測定したと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項4】
請求項1に記載の計時装置において、
前記位置情報衛星の軌道情報を記憶する記憶部を備え、
前記判定部は、前記記憶部に記憶された軌道情報に基づいて、受信処理を行う時点で捕捉可能な位置情報衛星のうち、所定角度以上の高仰角に位置する位置情報衛星が所定数以上あるか否かを判定し、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、前記高仰角に位置する位置情報衛星が、所定数以上あると判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定数未満であると判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項5】
請求項1に記載の計時装置において、
位置情報衛星から受信した衛星信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
前記受信レベル検出部で検出した受信レベルを記憶する記憶部とを備え、
前記判定部は、前記記憶部に記憶された前回受信時の受信レベルが所定値以上であるか否かを判定し、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、前回受信時の受信レベルが、前記所定値以上であると判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定値未満であると判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項6】
請求項1に記載の計時装置において、
位置情報衛星から衛星信号を受信して時刻情報を取得するまでの受信時間を測定する受信時間測定部と、
前記受信時間測定部で測定した受信時間を記憶する記憶部とを備え、
前記判定部は、前記記憶部に記憶された前回受信時の受信時間が所定時間以下であるか否かを判定し、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、前回受信時の受信時間が、前記所定時間以下であると判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、所定時間より長いと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項7】
請求項1に記載の計時装置において、
利用者が操作可能な外部操作部材を備え、
前記判定部は、前記外部操作部材で一衛星サーチモードまたは複数衛星サーチモードのいずれかの選択操作が行われたか否かを判定し、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、一衛星サーチモードの選択操作が行われたと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択し、複数衛星サーチモードの選択操作が行われたと判定した場合には前記複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項8】
請求項7に記載の計時装置において、
前記サーチモード選択部は、前記判定部において、一衛星サーチモードおよび複数衛星サーチモードのいずれの選択操作も行われなかったと判定した場合には前記一衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の計時装置において、
前記サーチモード選択部は、計時装置の電源が投入された後、最初に時刻受信処理を行う場合には、前記判定部の判定結果に関わらず、複数衛星サーチモードを選択することを特徴とする計時装置。
【請求項10】
位置情報衛星を捕捉し、この捕捉した前記位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した衛星信号に基づいて時刻情報を生成する時刻情報生成部と、
時刻情報を表示する時刻表示部と、
前記受信部を制御する受信制御部と、を備える計時装置の衛星信号受信方法であって、
受信処理を行う前に計時装置における受信環境を判定する判定工程と、
前記受信部による受信処理を行う際に、1つの位置情報衛星を捕捉し、その位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する一衛星サーチモードと、複数の位置情報衛星を捕捉し、捕捉した複数の位置情報衛星のうちの1つの位置情報衛星から送信される衛星信号に基づいて時刻情報を取得する複数衛星サーチモードとを、前記判定部の判定結果に基づいて選択するサーチモード選択工程と、
を備えることを特徴とする計時装置の衛星信号受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−175030(P2009−175030A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14848(P2008−14848)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】