説明

記憶装置

【課題】記憶された情報の正否について信頼性に優れる判定機能を備えた記憶装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複合機は、ASIC10、SDRAM20、電源回路40、バックアップ電源80、バックアップ電源監視用IC60などから構成される。電源回路40は図示しない電源コードを介して供給された主電源からの交流電圧を整流した後、所定の低い直流電圧に降圧して各装置に供給するためのものである。バックアップ電源80は、主電源を通じての電力供給が断たれたときに、SDRAM20に電源電圧を供給する。本実施形態では、バックアップ電源監視用ICを用いて、バックアップ電源80の電源電圧の変動を監視し、これに基づいて、バックアップ中の記憶情報の正否を判断することとした。電源電圧の変動は、SDRAM20ついて不具合(記憶不良)を生じさせる根本原因となるものであるので、これに基づいて記憶されたデータの正否を判定してやれば、必然的に信頼性の高い判定結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主電源の停止等に起因してRAMなどの記憶手段上のデータ(情報)が消去されてしまうことを、バックアップ電源を用いて防止する技術が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−22321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、バックアップ電源等の蓄電方式の電源は、電力の供給が有限であるので、長時間使用状態が続くと電源電圧のレベルが低下し、場合によっては、記憶手段の動作電圧を下回ることがある。電源電圧のレベルが記憶手段の動作電圧を下回ってしまうと、情報の記憶を保証できないので、情報の読み出しを行なうに際し、情報の正・否を判定することが望ましく、係る手法として、RAMに記憶された情報の一部を読み出し、それを照合することが考えられる。
しかし、この種の判断方法は、読み出した一部を代表させて情報の正否を判断しているに過ぎず、読み出されていない情報については、正否を確認することは出来ない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、記憶された情報の正否について信頼性に優れる判定機能を備えた記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に電力を供給する蓄電手段と、前記蓄電手段の電源電圧の変動を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記記憶手段に記憶されている情報の正否を判定する判定手段と、を備えたところに特徴を有する。
尚、ここでいう、「記憶手段に記憶されている情報の正否を判定する」というのは「記憶手段に記憶された情報が、正しく記憶され続けていたのか(情報の一部に破損の恐れはないか)、どうかを判定する」という意味である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記蓄電手段を通じて前記記憶手段に電力を供給する電力供給系統とは別に、主電源を通じての電力供給系統が設けられるとともに、前記主電源が駆動しているときには、前記主電源側から前記蓄電手段に充電電流が供給されて前記蓄電手段が充電されるよう回路構成され、前記主電源を通じての電力の供給が停止したときに、前記蓄電手段を通じて前記記憶手段に電力の供給がなされるものであって、前記電圧検出手段は、前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を下回ることを条件として、前記検出信号として第一レベルの信号を出力し、前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を上回ることを条件として、前記検出信号として第二レベルの信号を出力し、かつ前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を下回っている状態から上回る状態に変化した場合には、電源電圧のレベルが所定基準値を上回った以降も、前記第一レベルの信号を所定時間T1の間持続して出力し、当該所定時間T1が経過した後に第二レベルの信号を出力する遅延機能を有するところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記主電源側の電力供給系統を通じて判定手段に印加される電圧値を監視して、同電圧値のレベルが所定レベルを下回ったときに、前記判定手段にリセット信号を与えて同判定手段をリセット状態に制御するリセット回路を備えるとともに、このリセット回路に、前記電圧値のレベルが所定レベルを下回った状態から上回った状態に変化したときに、所定の遅延時間T2は前記リセット状態を持続させ、その後に前記リセット状態を解除する遅延機能が設けられたものにおいて、前記電圧検出手段による所定時間T1は少なくとも、前記リセット回路の遅延時間T2より長く設定され、前記判定手段のリセット状態が解除された以降も、前記第一レベルの信号の出力が維持されるところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のものにおいて、前記記憶手段の電源電圧の入力段に定電圧回路が設けられて、前記主電源、並びに前記蓄電手段の電源電圧が前記定電圧回路により定電圧化された後に、前記記憶手段に印加されるように回路構成されるとともに、前記電圧検出手段は、前記蓄電手段の電源電圧の変動として定電圧回路の出力電圧の変化を検出するところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載のものにおいて、前記リセット回路並びに前記電圧検出手段は共に、入力された電圧の大きさを基準値と比較し、比較結果に応じた2値信号を出力するリセットICより構成されるところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記リセット回路としてのリセットIC、並びに電圧検出手段としてのリセットICは共に、コンデンサの外付けが可能とされた遅延機能付きのものであり、同コンデンサの静電容量の選択により、前記所定時間T1、並びに前記遅延時間T2が決定されるところに特徴を有する。
【0010】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のものにおいて、時刻を計時する時計手段を備えるとともに、この時計手段は前記記憶手段に電力を供給する電力供給ラインに前記記憶手段と共通接続される回路構成とされ、前記判定手段による前記記憶情報の正否判断により、前記時計手段が正常に動作しているか否かの判定が兼用されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
請求項1の発明では、電源電圧の変動を監視し、これに基づいて記憶手段についての不具合、すなわち記憶情報の正否を判定することとした。電源電圧の変動は、記憶手段について不具合を生じさせる根本原因となるものであるので、これに基づいて情報の正否を判定してやれば、必然的に信頼性の高い判定結果が得られる。
【0012】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、記憶装置は、主電源を通じて蓄電手段が充電されるように回路構成されている。そのため、使用中に蓄電手段の電源電圧が所定基準値を下回っている状態であったとしても、主電源が立ち上がったときには、蓄電手段に対する充電が開始される結果、主電源起動後、蓄電手段の電源電圧は上昇して所定基準値を上回る状態になる。一方、判定手段は主電源の起動後に立ち上がるので、判定は、必然的に主電源の起動後に行われることとなる。そのため、実際に使用されていたときの蓄電手段の電源電圧のレベルについて判定を行なうには、電圧検出手段の検出結果を主電源起動後まで保持(ラッチ)しておく必要がある。
【0013】
これには、検出結果をラッチしておく専用の回路を設けてもよいが、請求項2の発明では、電圧検出手段に遅延機能を持たせて、蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を下回っている状態から上回る状態に変化した場合には、電源電圧のレベルが所定基準値を上回った以降も、前記第一レベルの信号を所定時間T1の間持続して出力させることとした。このような構成であれば、主電源の起動後も、一定時間は、主電源起動前の検出結果(蓄電手段の電圧レベルが所定基準値を下回った状態にあった事)をラッチしておくことが事実上可能となり、この一定時間内に、検出結果を読み取ってやれば、支障なく記憶情報の正否を判定出来る。
【0014】
<請求項3の発明>
このような構成であれば、リセット回路のパワーONリセット機能にも対応することが可能となる。
【0015】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、記憶手段を動作させる電源電圧について、記憶手段に最も近いところの電圧を監視することとしたので、信頼性の高い判定結果が得られる。
【0016】
<請求項5の発明>
電圧検出手段が汎用ICにより構成されているので、低コスト化の推進に好適である。
【0017】
<請求項6の発明>
このような構成であれば、所定時間T1、並びに遅延時間T2の設定(調整)を、コンデンサの選択という簡単な作業で行なうことが出来る。
【0018】
<請求項7の発明>
時計手段が正常に動作しているか、否かの判定を、記憶情報の正否判定に兼用させているので、時計手段に対しても電圧検出・判定手段を専用に設ける場合に比べて、回路構成を簡素化することが出来、低コスト化に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図1ないし図2によって説明する。
本実施形態は、本発明の記憶装置を複合機(ファクシミリ機能付きのプリンタ)に適用したものであり、図1は複合機の電気的構成を示すブロック図である。図1に示す符号10はASIC(Application Specific Integrated Circuit)、符号20はSDRAM(シンクロナスDRAM)、符号30は時計ICである。
【0020】
ASIC10は、複合機を構成する各装置(図示していないが画像読取部、通信部、画像形成部など)を統括制御するものである。また、ASIC10は、本発明の判定手段の機能を担っている。SDRAM20は、画像データなどの情報を一時記憶するものであり、時計IC30は時刻を計時するものである。また、符号40は電源回路である。電源回路40は図示しない電源コードを介して供給された主電源からの交流電圧(商用電圧100ボルト〜120ボルト)を整流した後、所定の低い直流電圧に降圧して各装置に供給するためのものである。本実施形態では、電源回路40は直流5Vの出力と、直流3.3Vの出力が可能とされている。
【0021】
電源回路40の出力端子(3.3V出力用)OUT1の出力ラインL1は、ASIC10の電源端子Vccに連なっており、同電源回路40を通じてASIC10に電源電圧として3.3Vの電圧が印加されるように構成されている。
【0022】
また、同図に示す符号50は主電源監視用リセットIC(本発明のリセット回路の一例であって、以下、単にリセットICと呼ぶ)である。リセットIC50は、電源回路40の出力電圧(3.3V)を監視するものであって、リセットIC50のVDD端子には、出力ラインL1を通じて電源回路40の出力電圧(3.3V)が印加されるよう回路構成されている。
【0023】
リセットIC50は、内部に参照電圧(本発明の所定レベルに相当する)2.8Vを設けており(図示せず)、電源回路40の出力端子OUT1の電圧が参照電圧2.8Vを上回っている間は、出力端子OUT3の電圧レベルを「Hレベル」に設定するが、電源回路40の出力端子OUT1の電圧が参照電圧2.8Vを下回ると、出力端子OUT3の電圧レベルを「Lレベル」に設定する。
【0024】
そして、リセットIC50の出力端子OUT3と、ASIC10のシステムリセット端子Aとの間が信号線によって接続されており、リセットIC50の出力が、ASIC10に信号として入力されるようになっている。
【0025】
システムリセット入力端子AはASIC10をリセット状態(初期状態)に制御するためのものであり、同入力端子Aにシステムリセット信号Saとして「Lレベル」の信号が入力されると、ASIC10はリセット状態となる。すなわち、システムリセット信号Saが入力されている期間中、ASIC10はリセット状態に維持され、システムリセット信号Saの入力が停止されたときに、初めてリセット状態が解除され、ASIC10は起動する。
【0026】
また、このリセットIC50は、いわゆるパワーONディレイ機能を備えている。パワーONディレイ機能については、後述するが、リセットの解除タイミングを遅延させるものであり、遅延時間T2を、CD端子とグランド端子VSSとの間に接続する遅延用コンデンサCにより調整(より具体的に言えば、コンデンサの静電容量の大小により調整)することが出来るようになっている。
【0027】
電源回路40の出力端子(5V出力用)OUT2からは出力ラインL2が引き出されている。出力ラインL2の途中には、レギュレータ(本発明の定電圧回路の一例)70が設けられている。レギュレータ70は、電源回路40の出力電圧を、それよりも低い所定電圧値(ここでは、3.3V)に定電圧化して出力するものである。すなわち、レギュレータ70の入力端子INに印加される入力電圧が3.3V以上であれば、そのときには、レギュレータ70の出力端子OUTの電圧が3.3Vに調整される。尚、この実施形態では、レギュレータ70として、3端子レギュレータが使用されているが、他のレギュレータでもよい。
【0028】
そして、3端子レギュレータ70の出力端子OUTには、SDRAM20並びに時計IC30が共通接続されている。SDRAM20の動作を保証する電源電圧は3.0V以上であり、時計IC30の動作を保証する電源電圧は1.8V以上である。そのため、電源回路40を通じて正常に電源電圧が供給される間は、SDRAM20並びに時計IC30に、動作を保証する電圧レベルよりも高いレベルの電圧3.3Vが印加される結果、SDRAM20並びに時計IC30とも正常に動作する。
【0029】
また、電源回路40と3端子レギュレータ70との間には、ダイオードD1が順方向接続(アノード端子が電源回路40のOUT2に接続され、カソード端子が3端子レギュレータ70の入力端子INにそれぞれ接続されている)されている。尚、電源回路40→ダイオードD1→3端子レギュレータ70の経路でSDRAM20に電力を供給する系統が、本発明の主電源を通じての電力系統に相当する。
【0030】
また、図1における符号80は、バックアップ電源(本発明の蓄電手段の一例)である。バックアップ電源80は、例えば、ニッケル水素電池などの充電可能な二次電池より構成される。バックアップ電源80は充電抵抗Rを介してダイオードD1のカソード端子Kに接続されており、充電抵抗Rを通じて電源回路40より充電電流が供給される回路構成になっている。尚、充電抵抗Rの大きさは、充電電流の大きさが所望の値になるように定められる。
【0031】
充電抵抗Rには、ダイオードD2が並列接続されている。ダイオードD2は、バックアップ電源80のプラス側にアノード端子が接続され、3端子レギュレータ70の入力端子IN側にカソード端子が接続されている。これにより、例えば、主電源が停止して電源回路40を通じての電源電圧の供給が断たれても、バックアップ電源80によりSDRAM20、時計IC30に電源電圧が供給される。具体的には、SDRAM20、時計IC30に対して、バックアップ電源80→ダイオードD2→3端子レギュレータ70の経路(本発明の蓄電手段を通じての電力供給系統に相当)で電力の供給がなされる。
【0032】
仮に、ダイオードD2を設けないとすると、バックアップ電源80によってSDRAM20に電源電圧を供給しようとしても、充電抵抗Rで電圧降下が生じて3端子レギュレータ70の入力電圧が下がってしまう。その結果、SDRAM20に供給される電源電圧のレベルも下がってしまい、バックアップ電源80を使用することが出来ない。また、ダイオードD1はバックアップ電源80から電源回路40への電流の流入を規制するものである。
【0033】
また、図1における符号60は、バックアップ電源監視用ICである。バックアップ電源監視用IC60は、バックアップ電源80の電源電圧VBの変動を3端子レギュレータ70の出力電圧の変化に基づいて監視するものであって、リセットIC50と同種のリセットICを使用している。
【0034】
図1に示すように、バックアップ電源監視用IC60のVDD端子には、3端子レギュレータ70の出力電圧が印加されるよう回路構成されている。バックアップ電源監視用IC60は、内部に参照電圧(本発明の所定基準値に相当)として3.0Vを備え(図示せず)、これを3端子レギュレータ70の出力電圧と比較する。そして、3端子レギュレータ70の出力電圧が3.0Vを下回ると、バックアップ電源監視用IC60の出力端子OUT4の電圧レベルが「Lレベル」に設定され、それ以外の状態、すなわち3端子レギュレータ70出力電圧が3.0V以上である場合には、これとは反対に、バックアップ電源監視用IC60の出力端子OUT4の電圧レベルが「Hレベル」に設定される。
【0035】
尚、バックアップ電源監視用IC60は、本発明の「電圧検出手段」の一例であり、同バックアップ電源監視用IC60の出力端子OUT4の電圧レベルが「Lレベル」に設定された状態が、本発明の「前記検出信号として第一レベルの信号を出力し」に相当し、電圧レベルが「Hレベル」に設定された状態が、本発明の「前記検出信号として第二レベルの信号を出力し」に相当している。
【0036】
また、バックアップ電源用監視用IC60の参照電圧が3.0Vに設定されているのは、SDRAM20並びに時計IC30の双方の動作を保証する電圧値が3.0Vであり、3端子レギュレータ70の出力電圧が3.0Vを下回ると、SDRAM20の記憶状態に不具合(すなわち、記憶されたデータの破損)が起こる恐れがあるためである。
【0037】
そして、バックアップ電源監視用IC60の出力端子OUT4と、ASIC10の信号入力端子Bとの間が信号線によって接続されており、バックアップ電源監視用IC60の出力がASIC10に検出信号として取り込まれるようになっている。
【0038】
ASIC10では、検出信号の電圧レベル(出力端子OUT4の電圧レベル)に基づいて、SDRAM20に記憶されている情報の正否を判定する判定処理が行なわれる。すなわち、信号の電圧レベルが「Hレベル」であれば、「記憶状態は良好であり情報は正」と判定し、信号の電圧レベルが「Lレベル」であれば「記憶情報は否(破損の恐れがある)」と判定する。
【0039】
また、バックアップ電源監視用IC60にも、CD端子が設けられ、同CD端子とグランド端子VSSとの間にコンデンサCを接続することが出来るようになっている。バックアップ電源監視用IC60に外付けされるコンデンサも信号の切り換えタイミング(LレベルからHレベルへの切り替え)を遅延させるものであり、その遅延時間(本発明の所定時間に相当)T1は、ASIC10の起動タイミングとの関係に基づいて定められる。
【0040】
続いて、ASIC10による画像データ(記憶情報)の正否判定処理を以下の2段階に分けて説明する。
(1)バックアップ電源80によるバックアップ動作
(2)ASIC10による判定処理
尚、ここでは、複合機を使用してメモリ送信を行なう場合を例にとり、また、主電源→電源回路40を通じて各装置に電力が供給されて、すでに、複合機全体が起動状態にあるものとして説明を開始する。
【0041】
(1)バックアップ電源80によるバックアップ動作
メモリ送信を行なうときには、まず、画像読取部(図示せず)によって原稿について読み取りが行なわれ、読み取られた原稿の画像データはSDRAM20に記憶される。そして、全頁について、画像データがSDRAM20に記憶されると、今度は、SDRAM20から各頁ごとに画像データの読み出しが行なわれ、これが通信部を通じて相手側の装置に送信される。
【0042】
このように、SDRAM20に画像データを一時記憶しておくことで、FAX送信が何らかの理由で不調に終わったとしても、その後、SDRAM20から画像データを再び読み出して、データの送信を試みることが出来るようになっている。
【0043】
そして、係るメモリ送信中に何らかの理由(例えば、停電など)で主電源がダウンすると、電源回路40を通じての電源電圧の供給が断たれる結果、ASIC10並びに他の装置は停止状態になる。一方、係る場合であっても、SDRAM20並びに時計IC30に対しては、バックアップ電源80→ダイオードD2→3端子レギュレータ70を経て電源電圧が供給されるので、SDRAM20は画像データなどの記憶情報を保持し続け、時計IC30は時刻を計時し続ける。
【0044】
ここで、主電源のダウン直後、バックアップ電源80は満充電状態にあり、電源電圧VBは、例えば、3.6V以上の電圧レベルにあるが、主電源が復旧せず使用状態が続くと、次第に電源電圧VBの値が下がってゆく。
【0045】
一方、3端子レギュレータ70は先にも述べたように、入力された電圧をそれより低い電圧値に定電圧化して出力するものであり、入力端子INに印加される入力電圧(すなわち、バックアップ電源80の電源電圧VB)が3.3V以上であれば、そのときには出力電圧として3.3Vの値を保証できるが、入力端子INに印加される電圧が3.3Vを下回ると、図2のaに示すように、出力電圧もそれ応じて低下する。
【0046】
そして、3端子レギュレータ70の出力電圧が3.0Vを下回ると、それが、バックアップ電源監視用IC60により検出されて、バックアップ電源監視用ICの出力端子OUT4の電圧レベルが「Hレベル」から「Lレベル」に切り換えられる(時刻ta)。
【0047】
一方、主電源がダウンしている間、ASIC10は停止状態にあるので、SDRAM20の記憶情報の正否判定は、主電源の復旧後に、以下に説明する要領でなされることとなる。
【0048】
(2)ASIC10による判定処理
主電源が復旧すると、電源回路40を通じてASIC10などの各装置に電源電圧が再び供給され始める。リセットIC50は、先にも述べたように、電源回路40のOUT1の出力電圧を監視しており、主電源が復旧しても、電源回路40のOUT1の出力電圧が2.8V以下の場合には、出力端子OUT3のレベルを「Lレベル」に設定することで、ASIC10にシステムリセット信号Saを与え続けてASIC10をリセット状態に制御する。
【0049】
一方、主電源の復旧後、電源回路40の出力電圧は、図2のbに示すように、ゆるやかに上昇し規定値の3.3V或いは、5Vに達する。そのため、電源回路40のOUT1の出力電圧が2.8Vを上回る時点tbにおいて、リセットIC50の出力も「Lレベル」から「Hレベル」に切り替わる筈ですが、本実施形態のものは、そこに遅延を持たせて、遅延時間T2後に、出力端子OUT3のレベルが「Lレベル」から「Hレべル」に切り替わるようになっている(パワーONディレー)。
【0050】
このように、主電源の復帰後遅れてASIC10を起動させるのは、ASIC10に動作クロックを与える発振回路(図示せず)などの動作が安定するのを待つことで、ASIC10を正常スタートさせるためである。
【0051】
尚、この遅延時間T2は、以下の式により与えられる。
T2=α×C2
α・・・係数(IC固有の定数)
C2・・・・IC50に外付けされるコンデンサの静電容量
【0052】
かくして、電源回路40のOUT1の出力電圧が2.8V以上になり、その後、T2時間を経過すると、図2に示すように、時刻tdの時点で、リセットIC50の出力端子OUT3のレベルが「Hレベル」となる。これにより、リセット状態が解除され、ASIC10は起動する。
【0053】
一方、主電源が復旧すると、それまでは、3.0Vを下回っていた3端子レギュレータ70の出力電圧についても、ゆるやかに上昇を始める。これは、主電源の復旧により、電源回路40のOUT2より充電電流が供給される結果、バックアップ電源80の電源電圧VBが上昇することで、3端子レギュレータ70への入力電圧が上昇するためである。
【0054】
そして、バックアップ電源監視用IC60は、先にも述べたように、3端子レギュレータ70の出力電圧を監視しており、出力電圧が3.0V以下の場合には、出力端子OUT4のレベルを「Lレベル」に設定し、それ以外のときには「Hレベル」に設定する。
【0055】
そのため、3端子レギュレータ70の出力電圧が3.0Vを上回る時点tcにおいて、出力端子OUT4のレベルも、「Lレベル」から「Hレベル」に切り替わる筈ですが、本実施形態のものは、そこに遅延を持たせて、遅延時間T1後に、出力端子OUT4の電圧レベルが「Lレベル」から「Hレべル」に切り替わるようになっている。
【0056】
尚、上述の構成により、本発明の「前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を下回っている状態から上回る状態に変化した場合には、電源電圧のレベルが所定基準値を上回った以降も、前記第一レベルの信号(ここでは、Lレベルの信号)を所定時間(ここでは、遅延時間)T1の間持続して出力し、当該所定時間T1が経過した後に第二レベルの信号(ここでは、Hレベルの信号)を出力する遅延機能を有する」が実現されている。
【0057】
遅延時間T1は、ASIC10が起動した時刻td以降も、所定期間T3は、バックアップ電源監視用IC60の出力として主電源が復旧する以前(充電が開始される以前)の出力状態が維持されるような時間に設定されている。すなわち、主電源がダウンしている間に3端子レギュレータ70の出力電圧が3.0Vを下回った場合には、ASIC10が起動した時刻td以降も、所定期間T3は、バックアップ電源監視用Ic60の出力として「Lレベル」の出力状態が維持される。
【0058】
尚、本実施形態において遅延時間T1は、遅延時間T2よりも長い時間に設定され、以下の式により与えられる。
T1=α×C1
α・・・係数(IC固有の定数)
C1・・IC60に外付けされるコンデンサの静電容量
【0059】
上述の構成により、本発明の「前記電圧検出手段(ここでは、バックアップ電源監視用IC60)による所定時間(ここでは、遅延時間)T1は少なくとも、前記リセット回路(ここでは、リセットIC50)の遅延時間T2より長く設定され、前記判定手段(ここでは、ASIC10)のリセット状態が解除された以降も、前記第一レベルの信号(ここでは、Lレベルの信号)の出力が維持される」が実現されている。
【0060】
かくして、同期間T3内に信号入力端子Bのポートレベルを読み取ることでバックアップ電源監視用IC60の出力端子OUT4の電圧レベル、すなわちバックアップ中における、電源電圧低下の有無がASIC10により検出される。
【0061】
ASIC10は、出力端子OUT4の電圧レベルが「Lレベル」であった場合には、「記憶情報は否」と判定する。ASIC10により「記憶情報は否」と判定されると、SDRAM20中に画像データが記憶されていたとしても、それについての読み出しは行なわれず、その旨を知らせる処理が行なわれる。その旨を知られる処理とは、例えば、表示部(図示せず)上に「バックアップ不良」などが表示されるなどである。尚、このとき、時計IC30に対しては、時刻情報を初期設定に変更する処理がが行なわれる。
【0062】
一方、これとは、反対に主電源がダウンしている時において、3端子レギュレータ70の出力(すなわち、バックアップ電源80の電源電圧VB)がSDRAM20の記憶に支障を来たすようなレベル(3.0V以下)にまで低下しなかった場合には、図2において点線で示すように、バックアップ電源監視用IC60の出力は、常に、「Hレベル」状態となる。
【0063】
そのため、係る場合には上述のASIC10による判定により、「記憶情報は正」と判定される。そして、「記憶情報は正」と判定されると、SDRAM20中の画像データがASIC10の指示で読み出され、その後、中断していたメモリ送信が再び開始され、読み出された画像データを相手先の装置に送信する処理が行なわれることとなる。
【0064】
このように、本実施形態のものは、バックアップ中における電源電圧の変動を監視し、これに基づいて、バックアップ中におけるSDRAM20の記憶情報の正否を判定することとした。電源電圧の変動は、SDRAM20による情報の記憶について不具合を生じさせる根本原因となるものであるので、これに基づいて記憶情報の正否を判定してやれば、必然的に信頼性の高い判定結果が得られる。
【0065】
また、本実施形態のものは、SDRAM20の記憶情報の正否判定を、バックアップ(SDRAM20などにバックアップ電源80より電源供給がされているとき)中の電源電圧のレベルに基づいて行なっているが、ASIC10は主電源の起動後に立ち上がるので、係る判定処理は、必然的に主電源の起動後に行われることとなる。
【0066】
これに対して、本実施形態のものは、電源回路40を通じてバックアップ電源80が充電されるように構成されている。そのため、バックアップ中に、バックアップ電源80の電源電圧VB、ひいては3端子レギュレータ70の出力電圧が基準を下回っていたとしても、主電源が立ち上がったときには、バックアップ電源80に対する充電が開始される結果、バックアップ電源80の電源電圧VBは上昇して基準を上回る状態になる。
【0067】
従って、バックアップ電源80が充電される回路構成である場合には、バックアップ中に検出されたバックアップ電源監視用IC60の検出結果を、ASIC10によって実際に判定処理がなされるまで保持(ラッチ)しておく必要がある。
【0068】
これには、検出結果をラッチしておく専用の回路を設けてもよいが、本実施形態では、バックアップ電源監視用IC60に遅延機能(遅延時間T1)を持たせて、ASIC10が起動した時刻td以降も、所定期間T3はバックアップ電源監視用IC60の出力として「Lレベル」の出力状態が維持されるようにした。このような構成であれば、主電源の復旧後も、所定期間T3は、バックアップ電源監視用IC60で検出したバックアップ中の検出結果をラッチしておくことが事実上可能となるので、上述した専用の回路を設ける必要がない。
【0069】
また、本実施形態では、時計IC30が正常に動作しているか、否かの判定を、SDRAM20の記憶情報の正否判定に兼用させているので、時計IC30専用に電圧検出・判定手段を設ける場合に比べて、回路構成を簡素化することが出来、低コスト化に寄与する。加えて、バックアップ電源監視用IC60を汎用のリセットICを使用しているので、この点も、低コスト化に寄与する。また、本実施形態は、記憶情報の正否を、電源電圧の変化に基づいて判定することとしているが、電源電圧としてSDRAM20に最も近いところの電圧、すなわち3端子レギュレータ70の出力電圧を監視することとしたので信頼性の高い判定結果が得られる。
【0070】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0071】
(1)上記実施形態では、バックアップ電源として、充電式の二次電池を例にとって説明したが、蓄電が可能なものであれば適用可能であり、例えば、一次電池や、静電容量の大きなコンデンサ(いわゆるスーパーキャパシタ)などであってもよい。
【0072】
(2)上記実施形態では、SDRAM20並びに時計IC30に安定して電源電圧を供給するべく、3端子レギュレータ70を用いたが、これに変えて、スイッチチングレギュレータや、DC・DCコンバータなどを用いてもよい。
【0073】
(3)上記実施形態では、3端子レギュレータ70の出力電圧を監視し、これに基づいてSDRAM20の記憶情報を正否判定することとしたが、電圧の監視場所は、3端子レギュレータ70の出力電圧に限らず、例えば、バックアップ電源80の電源電圧VBそのものを監視してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の電気的構成を示すブロック図
【図2】ASICによる判定タイミングを示すタイミングチャート図
【符号の説明】
【0075】
10…ASIC(本発明の判定手段の一例)
20…SDRAM(本発明の記憶手段の一例)
30…時計IC(本発明の時計手段の一例)
50…リセットIC(本発明のリセット回路の一例)
60…バックアップ電源監視用IC(本発明の電圧検出手段の一例)
70…レギュレータ(本発明の定電圧回路の一例)
80…バックアップ電源(本発明の蓄電手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に電力を供給する蓄電手段と、
前記蓄電手段の電源電圧の変動を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記記憶手段に記憶されている情報の正否を判定する判定手段と、を備えた記憶装置。
【請求項2】
前記蓄電手段を通じて前記記憶手段に電力を供給する電力供給系統とは別に、主電源を通じての電力供給系統が設けられるとともに、前記主電源が駆動しているときには、前記主電源側から前記蓄電手段に充電電流が供給されて前記蓄電手段が充電されるよう回路構成され、
前記主電源を通じての電力の供給が停止したときに、前記蓄電手段を通じて前記記憶手段に電力の供給がなされるものであって、
前記電圧検出手段は、前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を下回ることを条件として、前記検出信号として第一レベルの信号を出力し、
前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を上回ることを条件として、前記検出信号として第二レベルの信号を出力し、
かつ前記蓄電手段の電源電圧のレベルが所定基準値を下回っている状態から上回る状態に変化した場合には、電源電圧のレベルが所定基準値を上回った以降も、前記第一レベルの信号を所定時間T1の間持続して出力し、当該所定時間T1が経過した後に第二レベルの信号を出力する遅延機能を有することを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記主電源側の電力供給系統を通じて判定手段に印加される電圧値を監視して、同電圧値のレベルが所定レベルを下回ったときに、前記判定手段にリセット信号を与えて同判定手段をリセット状態に制御するリセット回路を備えるとともに、
このリセット回路に、前記電圧値のレベルが所定レベルを下回った状態から上回った状態に変化したときに、所定の遅延時間T2は前記リセット状態を持続させ、その後に前記リセット状態を解除する遅延機能が設けられたものにおいて、
前記電圧検出手段による所定時間T1は少なくとも、前記リセット回路の遅延時間T2より長く設定され、前記判定手段のリセット状態が解除された以降も、前記第一レベルの信号の出力が維持されることを特徴とする請求項2に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記記憶手段の電源電圧の入力段に定電圧回路が設けられて、前記主電源、並びに前記蓄電手段の電源電圧が前記定電圧回路により定電圧化された後に、前記記憶手段に印加されるように回路構成されるとともに、
前記電圧検出手段は、前記蓄電手段の電源電圧の変動として定電圧回路の出力電圧の変化を検出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記リセット回路並びに前記電圧検出手段は共に、入力された電圧の大きさを基準値と比較し、比較結果に応じた2値信号を出力するリセットICより構成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の記憶装置。
【請求項6】
前記リセット回路としてのリセットIC、並びに電圧検出手段としてのリセットICは共に、コンデンサの外付けが可能とされた遅延機能付きのものであり、同コンデンサの静電容量の選択により、前記所定時間T1、並びに前記遅延時間T2が決定されることを特徴とする請求項5に記載の記憶装置。
【請求項7】
時刻を計時する時計手段を備えるとともに、この時計手段は前記記憶手段に電力を供給する電力供給ラインに前記記憶手段と共通接続される回路構成とされ、
前記判定手段による前記記憶情報の正否判断により、前記時計手段が正常に動作しているか否かの判定が兼用されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−299156(P2007−299156A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125827(P2006−125827)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】