説明

記録再生装置

【課題】
著作権保護されたデータを装置内で確実に移動可能な記録再生装置を提供する。
【解決手段】
著作権保護されたデータの移動時、移動元の記録部または該記録部に装着された記録媒体に記録されていた識別データを、装置内で移動させて保持する。記録媒体の交換後は、該保持された識別データを該交換された新しい記録媒体に記録する。また、識別データは、装置外部からユーザがアクセスできない特定の領域内に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は著作権保護されたコンテンツデータを扱う記録再生装置におけるデータ移動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
著作権保護されたデータの移動に関する従来技術としては、例えば、特開2003−101529号公報(特許文献1)や特開2005-322297号公報(特許文献2)に記載されたものがある。特開2003−101529号公報には、コンテンツ移動の際、コンテンツをブロックに分割し、生成される時変鍵を使用してコンテンツの暗号化・復号化のためのタイトル鍵の更新を行い、移動が完了したコンテンツを削除するとした技術が記載され、特開2005-322297号公報には、著作権保護されたHDコンテンツをSDコンテンツにダウンコンバートして移動する際、元のHDコンテンツをスクランブル処理してから、コンテンツ移動を実行するとした技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−101529号公報
【特許文献2】特開2005-322297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は著作権保護されたデータを他の装置に移動する際に、確実に移動を行うことが目的であるが、確実にコンテンツの移動を行うための記録装置特有の識別子の利用に関しては考慮されていなかった。
今回論点としている番組コンテンツの移動動作は一般ユーザが、デジタル放送等の番組コンテンツを録画し、それを光ディスク等のメディアに移動する場合、番組コンテンツが著作権保護されている場合は、光ディスクへの移動が許可されている場合でも元の録画データは移動の際に消去する必要がある。
今後、HD記録可能な青色レーザ系光ディスクでは、著作権保護の規格としてAACS(Advanced Access Content System)が採用される見通しであるが、移動の処理を行う場合は、同様に元のコンテンツを削除することが規定されている。
さらにAACSでは、光ディスクドライブ装置ではアクセス可能で、かつユーザからはアクセス不可能となるディスクの特定領域に乱数によるメディアの識別データ(Binding Nonce)を書き込み、コンテンツの移動時にその乱数を基に暗号鍵を生成し、その暗号鍵を使用して、コンテンツを暗号化しているタイトル鍵を復号する。さらに移動先のメディア上で使用するために別途生成する乱数により新しい識別データを作成し、復号化したタイトル鍵を新しい識別データを基にした暗号鍵で暗号化して移動先のメディア上に移動する。
AACSの仕様では、この移動処理の際に、新しい識別データで古い識別データを上書きするか、古い識別データを変更することが規定されている。これにより、移動時に確実に元のメディア上でのコンテンツの再生が不能となり、移動処理が確実に実施される。
【0005】
しかしながら、従来のハードディスクレコーダにおいては、光ディスクドライブとハードディスクドライブがそれぞれ1台しか搭載されておらず、AACS規格に記載されているような光ディスク同士の移動を確実にかつ、画質のダウングレードまで含めて対応することは考慮されていなかった。また、AACS規格においても、このような光ディスクドライブ1台の場合のダウングレードまで含む移動処理に関しては明確に規定されておらず、移動途中での装置特有の識別子、コンテンツ及び暗号化鍵の処理、保持方法に関しては考慮されていない。
【0006】
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、記録再生装置において、著作権保護されたデータを一方の記録部から他方の記録部に移動するとき、例えば光ディスクドライブが1台であってかつダウンコンバートを伴うような場合でも、確実に移動を行えるようにすることである。
本発明の目的は、かかる課題点を解決して、使い勝手性の良い記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題点を解決するために、本発明では、記録再生装置において、著作権保護されたデータの移動時に、移動元の記録部または該記録部に装着された記録媒体に記録されていた識別データを、装置内で移動させて保持する構成とする。また、記録媒体の交換後は、該保持された識別データが該交換された新しい記録媒体に記録される構成とする。これによって、光ディスクドライブが1台でかつダウンコンバートを伴うような場合でも、確実にコンテンツの移動が可能となる。また、該識別データは、装置外部からユーザがアクセスできない特定の領域内に記録されるため、著作権は保護される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録再生装置において、例えば光ディスクドライブが1台でかつダウンコンバートを伴うような場合であっても、著作権保護されたコンテンツデータの装置内での確実な移動が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1A、図1B及び図1Cは、本発明の実施例としての記録再生装置の構成例図である。
図1Aにおいて、101は、本発明の実施例としての記録再生装置、102は、記録再生装置101内における第1の記録部としての光ディスク装置、103は、光ディスク装置102に装着される光ディスク、104は、光ディスク103上の、ユーザからはアクセス不可能で記録再生装置101からはアクセス可能な保護領域、105は、識別データ(識別子)として記録される乱数a、106は、コンテンツデータが記録される光ディスク103上のコンテンツデータ領域、107は、コンテンツデータ領域106内の暗号化コンテンツa、109は、コンテンツデータ領域106内の暗号化コンテンツb、111は、コンテンツデータ領域106内の暗号化コンテンツc、108は、暗号化コンテンツaを暗号化した暗号化鍵a、110は、暗号化コンテンツbを暗号化した暗号化鍵b、112は、暗号化コンテンツcを暗号化した暗号化鍵c、113は、記録再生装置101内の第2の記録部としてのハードディスク装置、115は、暗号化処理を行う暗号処理部、114は、光ディスク装置102、ハードディスク装置113及び暗号処理部115を制御する制御部である。また、図1Bにおいて、116は、移動時に新規に記録再生装置101が発生した識別データとしての乱数b、図1Cにおいて、117は、移動先の新しい光ディスク、118は、新しい光ディスク117上の保護領域、119は、移動後のコンテンツデータが記録されるコンテンツデータ領域、120は、移動時に再暗号化されたコンテンツ、121は、暗号化コンテンツ120を暗号化した暗号化鍵dである。
【0010】
図1Bに示すように、制御部114が、コンテンツデータ領域106内の暗号化コンテンツa107の移動を指示されると、該制御部114による制御により、保護領域104上の識別データとしての乱数a105が暗号処理部115に保持され、新規の乱数b116が発生される。そして、制御部114による制御により、光ディスク103上の保護領域104が、乱数a105から乱数b116に上書きされ、さらに、移動される暗号化コンテンツa107及び暗号化鍵a108は、ハードディスク装置113に移動される。
暗号化コンテンツa107及び暗号化鍵a108のハードディスク装置113への移動が完了した時点で、制御部114は、光ディスク103上のコンテンツデータ領域106から、上記ハードディスク装置113へ移動した暗号化コンテンツa107及び暗号化鍵a108を削除する。
【0011】
図1Cに示すように、光ディスク装置102に、コンテンツを移動するための新しい光ディスク117が装着されると、制御部114による制御により、その保護領域118に乱数b116を記録する。さらに、制御部114による制御により、ハードディスク装置113内に保持していた暗号化コンテンツa107及び暗号化鍵a108を再暗号化した暗号化コンテンツd120及び暗号化鍵d121をコンテンツデータ領域119に記録して移動動作を完了する。また、この移動の際に、制御部114により、データのダウンコンバートとして、例えば、移動する画像データの解像度をHD(High Definition)(高解像度)からSD(Standard Definition)(標準解像度)に変換することも可能である。これは、例えば、レコーダ内で、移動したコンテンツの履歴を保持する機能を搭載した場合でも、元のコンテンツを、識別データとしての乱数で管理することができるため、ユーザの利便性を高めることができる。また、実際のダウンコンバートは、装着された記録媒体の種別を判断してから実施することにより、間違った記録媒体への記録を防止することも可能となる。
以下、説明中で用いる図1A、図1B及び図1Cの記録再生装置101の構成要素には、該図1A、図1B、図1Cの場合と同じ符号を付して用いる。
【0012】
図2は、上記図1A、図1B及び図1Cの記録再生装置101の動作の説明図、及び、光ディスク上のデータ構成の説明図である。図1A、図1B、図1Cの場合と同じ部分には、図1A、図1B、図1Cの場合と同じ符号を付す。
図2(a)は、図1A、図1B及び図1Cの記録再生装置101における著作権保護されたコンテンツデータの移動処理の流れを示す図である。図2(a)において、201は、移動対象となるコンテンツに固有のメディア鍵、202は、乱数a105をメディア鍵201で暗号化して生成される領域鍵a、203は、暗号化鍵a108を復号化して生成されるタイトル鍵、204は、乱数b116を上記メディア鍵201で暗号化した領域鍵bである。図2(a)に示すように、制御部114による制御により、暗号処理部115が、光ディスク103特有のメディア鍵201により乱数a105を暗号化し、領域鍵a202を生成する(矢印A)。さらに、制御部114は、上記領域鍵a202を使用して暗号化鍵a108を復号化する(矢印B)。さらに、制御部114は、移動後のコンテンツの識別用に新たに乱数b116を生成し、制御部114による制御により、暗号処理部115がメディア鍵201により暗号化を行い、領域鍵b204を生成する(矢印C)。そして、復号化した上記タイトル鍵203を上記領域鍵b204により暗号化し、暗号化鍵d206を生成する。乱数a105は、例えば装置に特有の装置鍵(図示せず)等により暗号化し、乱数a105として処理され保存される(矢印E)。
【0013】
図2(b)は、光ディスク上のデータの構成を示す。図2(b)に示すように、制御部114による制御により、光ディスク103上の保護領域106に記録された乱数a105が乱数b116に更新され(矢印F)、さらに、移動対象の暗号化コンテンツa107及び暗号化鍵a108が、移動先となる新しい光ディスク117上に、再暗号化されたコンテンツd120及び、暗号化鍵d121として移動される(矢印G)。また、保護領域118に乱数b116が記録される。
【0014】
図3は、記録再生装置101に、第1の記録部としてメモリカード装置が存在する場合の例である。図1A、図1B、図1Cの場合と同じ部分には、図1A、図1B、図1Cの場合と同じ符号を付す。
図3において、401は、第1の記録部としてのメモリカード装置、402は、メモリカード装置401に装着されるメモリカード、403は、メモリカード402上の保護領域、404は、メモリカード402上のコンテンツデータ領域である。移動により再暗号化された暗号化コンテンツd120及び暗号化鍵d121は、メモリカード402上のコンテンツデータ領域404に記録され、また、メモリカード402上の保護領域403は,例えば制御部114により記録再生装置101からはアクセス可能であるが、ユーザからはアクセス不可能となっている。該保護領域403には、移動用に新規に発生させた乱数b116が記録される。図3の構成により、携帯端末等で多用されているメモリカードでも、ユーザの選択により希望のコンテンツを、HDのままもしくはSDにダウンコンバートして移動させ、携帯して持ち歩くことが可能となる。また、識別データ(識別子)としての乱数を保持しているため、例えば録画した番組リストでのコンテンツの移動管理やコンテンツの再移動が可能となり、ユーザの利便性(使い勝手性)が向上する。
【0015】
上記図1A〜図3で説明した実施例によれば、記録再生装置101において、識別データが移動されるため、ダウンコンバートを伴う場合も含め、著作権保護されたコンテンツデータの装置内での確実な移動、すなわち著作権保護を行いつつデータ消失を防止した移動が可能となる。また、装置の使い勝手性が向上する。
【0016】
なお、上記実施例では、データを、第1の記録部としての光ディスク装置102内に装着された記録媒体としての光ディスク103から、第2の記録部としてのハードディスク装置113内に移動させる場合や、第1の記録部としてのメモリカード装置401内に装着された記録媒体としてのメモリカード402から、第2の記録部としてのハードディスク装置113内に移動させる場合につき説明したが、この他、データは、第1の記録部のメモリから第2の記録部のメモリに移動させる構成や、第1の記録部のメモリから第2の記録部に装着された記録媒体に移動させる構成や、第1の記録部に装着された記録媒体から第2の記録部のメモリに移動させる構成であってもよい。また、光ディスクとしては、CD、DVD、BD、HD−DVDなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の実施例としての記録再生装置の構成例図である。
【図1B】本発明の実施例としての記録再生装置の構成例図である。
【図1C】本発明の実施例としての記録再生装置の構成例図である。
【図2】本発明の実施例の動作及びデータ構成の説明図である。
【図3】本発明の実施例としての他の記録再生装置の構成例図である。
【符号の説明】
【0018】
101…記録再生装置、
102…光ディスク装置、
103、117…光ディスク、
104、118…保護領域、
105、116…乱数、
106、119…コンテンツデータ領域、
107、109、111…暗号化コンテンツ、
108、110、112、121…暗号化鍵、
113…ハードディスク装置、
115…暗号処理部、
114…制御部、
201…メディア鍵、
202、204…領域鍵、
203…タイトル鍵、
401…メモリカード装置、
402…メモリカード、
403…メモリカードの保護領域、
404…メモリカードのコンテンツデータ領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの記録または再生を行う記録再生装置であって、
データを記録する第1、第2の記録部と、
データの暗号化処理を行う暗号処理部と、
上記第1、第2の記録部及び上記暗号処理部を制御し、該第1の記録部に記録されたデータまたは該第1の記録部に装着された第1の記録媒体に記録されたデータを、該第2の記録部にまたは該第2の記録部に装着された第2の記録媒体に移動させるとき、該第1の記録部または該第1の記録媒体に記録された識別データを、当該記録再生装置内で該第1の記録部または該第1の記録媒体から移動させて保持させる制御部と、
を備えたことを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
上記暗号処理部は、上記第1の記録部に記録されるデータ及びその識別データまたは上記第1の記録媒体に記録されるデータ及びその識別データを暗号化し、上記データの移動時に、該第1の記録部または該第1の記録媒体から移動した識別データを保持する構成である請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
上記第1の記録部または上記第1の記録媒体に記録されるデータは、暗号化コンテンツ及び該コンテンツが暗号化された暗号化鍵として該第1の記録部または該第1の記録媒体に記録される請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記データの移動が完了した時点で、上記第1の記録部または上記第1の記録媒体から上記識別データを消去する構成である請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項5】
上記識別データは、上記第1の記録部または上記第1の記録媒体の特定の領域内に記録され、該特定の領域は、上記制御部からはアクセス可能であり、装置外部からはアクセス不可能である請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項6】
上記第1の記録部は光ディスク装置であり、上記第2の記録部は、ハードディスク装置である請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項7】
上記識別データは、当該記録再生装置により独自に生成される乱数データである請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記第1の記録部から上記第2の記録部に上記データを移動させるとき、該データをダウンコンバートして移動させる構成である請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項9】
上記制御部は、上記第1の記録部に装着された第1の記録媒体が上記データの移動後に交換されたとき、上記識別データを、該交換後の記録媒体に移動させて記録させる請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項10】
上記第1の記録部または上記第2の記録部は、メモリカード装置である請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項11】
上記制御部は、上記第1の記録部に装着された第1の記録媒体が上記データの移動後に交換されたとき、上記データをダウンコンバートして、該交換後の記録媒体に移動させて記録させる請求項1に記載の記録再生装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−250154(P2007−250154A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76291(P2006−76291)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】