記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法
【課題】最尤復号法に最適な記録パラメータを設定することを目的とする。
【解決手段】記録マークのエッジの始終端部分に相当し、尚且つ最尤復号法においてエラーの発生確率が高い部分の、最尤復号結果の信頼性値|Pa−Pb|−Pstdの演算を、所定のマーク長と直前のスペース長の組み合わせと、マーク長と直後のスペース長の組み合わせごとに行い、その演算結果からエッジシフト位置を最適化する記録パラメータを求め、求めた記録パラメータを反映した記録を行う。
【解決手段】記録マークのエッジの始終端部分に相当し、尚且つ最尤復号法においてエラーの発生確率が高い部分の、最尤復号結果の信頼性値|Pa−Pb|−Pstdの演算を、所定のマーク長と直前のスペース長の組み合わせと、マーク長と直後のスペース長の組み合わせごとに行い、その演算結果からエッジシフト位置を最適化する記録パラメータを求め、求めた記録パラメータを反映した記録を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最尤復号法を用いた記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬記録媒体に原デジタル情報を記録し、再生する記録再生装置では、同一形状の記録パルスを用いても、装置や記録媒体の個体差によって、媒体上に形成されるマークの形状がばらつき、再生される信号品質は大きくことなる場合がある。このようなばらつきによる信頼性の低下を防ぐために、記録媒体の脱着時などに校正動作を行っている。校正とはユーザデータの信頼性を確保するために、再生系の特性の設定、記録パルスの形状などの最適化を行う制御である。
【0003】
一般的な情報再生装置においては、再生信号に含まれるクロック情報を抽出し、抽出されたクロック情報をもとに原デジタル情報を弁別するPLL回路をもちいている。
【0004】
図14に従来の光ディスクドライブを示す。光ディスク17からの反射光は光学ヘッド18により再生信号に変換される。再生信号は波形等化器19により波形整形される。波形整形された再生信号はコンパレータ20で2値化される。通常、コンパレータ20のしきい値は、2値化信号出力の積分結果が0となるようにフィードバック制御されている。位相比較器21は2値化信号出力と再生クロックとの位相誤差を求める。位相誤差をLPF22により平均処理し、処理結果がVCO23の制御電圧となる。位相比較器21から出力される位相誤差が常に0になるように、位相比較器21はフィードバック制御される。熱記録される記録媒体においては、媒体上の熱干渉と前後の記録パターンとにもとづいて媒体上に形成されるマークの形状が異なってくる。したがって個々のパターンの記録に最適な記録パラメータ設定をしなければならない。
【0005】
記録パラメータを評価する指標が上記のような誤差検出出力である。誤差検出出力が最小となるように、記録パラメータの設定を行う。具体的には、初期設定された記録パラメータを用いてパターン発生回路26から出力された記録パターンに基いて、記録補償回路27は所定の波形のパルスを生成し、レーザ駆動回路28は光ディスクに情報を記録する。所定のパターンが記録されたトラックから情報を再生しているとき、誤差検出回路24は、コンパレータ20の出力とVCO23の出力との位相誤差の絶対値を積分することで、検出信号を得る。この検出信号は、再生クロックと2値化パルスエッジとの間のジッタと、相関をもつ。記録パラメータを変化させて、記録と再生とを繰り返す。検出値が最小となるときの記録パラメータを最適とする。
【0006】
誤差検出回路24の具体的な動作の様子を図15に示す。例えば6T、4T、6T、8Tの繰り返しパターンを有する記録パルスを用いた場合の、4Tマークと6Tスペースとの組み合わせパターンに対応するマーク終端エッジの最適化を図る場合をあげる。6Tスペースと8Tマークとの組み合わせパターンに対応するマーク始端エッジ、および8Tマークと6Tスペースとの組み合わせパターンに対応する終端エッジは最適な記録パラメータで記録されているものとする。
【0007】
記録補償回路27は、図15(a)に示すような周期のNRZI信号が与えられると、図15(b)のようなレーザ駆動波形パルスを生成する。Tsfpはマーク始端位置を設定するパラメータで、Telpはマーク終端位置を設定するパラメータである。レーザ駆動回路28は、図15(b)のようなパターンに従って発光パワーを変調する。レーザ発光により図15(c)のようにトラック上に物理的にアモルファス領域が形成される。Telpを、Telp1、Telp2、Telp3と変化させた場合、形成されるマークの形状は図15(c)のように変化する。このような記録状態のトラックからの情報再生を考える。
【0008】
4Tマーク終端の記録パラメータを最適値のTelp2としたとき、図15(d)に実線で示す再生信号が得られる。コンパレータ出力の積分値が0となるようしきい値が定められる。コンパレータ出力と再生クロックとの位相差を検出し、位相誤差の積分値が0となるように再生クロック(図15(e))が生成される。
【0009】
次に、4Tマーク終端の記録パラメータを最適値より小さくし、Telp1とした場合を考える。このとき図15(f)に実線で示す再生信号が得られる。4Tマーク終端エッジが時間軸方向に変化するため、コンパレータのしきい値Tvは、図15(d)と比べて、図15(f)の一点鎖線ように大きくなる。コンパレータ出力が変化したため、位相誤差の積分値が0となるよう、図15(e)と比べて再生クロックの位相が進み、図15(g)のような再生クロックが生成される。
【0010】
逆に、4Tマーク終端の記録パラメータを最適値より大きくし、Telp3とした場合を考える。このとき図15(h)に実線で示す再生信号が得られる。4Tマーク終端エッジが時間軸方向に変化するため、コンパレータのしきい値Tvは、図15(d)とくらべて図15(h)の一点鎖線ように小さくなる。コンパレータ出力が変化したため、位相誤差の積分値が0となるよう、図15(e)と比べて再生クロックは位相が遅れ、図15(i)のような再生クロックが生成される。
【0011】
マーク終端エッジ(再生信号の立ち上がり)と再生クロックとの時間差(いわゆるデータ−クロック間ジッタ)を測定すると、図15の(j)〜(l)のような分布が得られる。ただし4Tマーク終端および8Tマーク終端エッジは、おなじ分散値の正規分布となるようなばらつきを持つことを仮定している。
【0012】
図15(d)、図15(e)のような再生信号と再生クロックの場合、立ち上がりエッジ(マーク終端エッジ)でのコンパレータ出力と再生クロックとの時間差の分布を求めると、図15(k)のようになる。4Tマーク終端と8Tマーク終端の分布のそれぞれの平均値が0となる。
【0013】
しかし4Tマーク終端のパラメータがTelp1(最適値Telp2より小さい値)のときは、図15(j)のように4Tマーク終端エッジの分布の平均値と8Tマーク終端エッジの分布との平均値は0とはならず、0から同じ距離離れた分布となる。したがって立ち上がりエッジのトータルの分散は図15(k)の場合に比べて大きくなる。同様に4Tマーク終端のパラメータがTelp3(最適値Telp2より大きい値)のときは、図15(l)のように4Tマーク終端エッジの分布の平均値と8Tマーク終端エッジの分布との平均値は0とはならず、0から同じ距離離れた分布となる。図15(l)と図15(j)とは4Tマーク終端と8Tマーク終端の分布が入れ替わっていることになる。この場合も、立ち上がりエッジのトータルの分散は図15(k)の場合に比べて大きくなる。
【0014】
位相誤差の絶対値を累積した結果を誤差検出出力とする場合、記録パラメータTelpの変化に従って、図15(m)のように誤差検出値が変化する。したがって記録パラメータを変化させ、誤差検出回路24の出力が最小となるパラメータを最適値とする。
【0015】
上記の例では4Tマーク終端のパラメータTelpを最適化する際の手順について説明したが、その他のパラメータについてもそれぞれに対応した特定パターンを用いてテスト記録を行い、誤差検出出力にもとづいて最適パラメータをもとめる。
【0016】
以上の手順に従ってすべての記録パラメータをもとめる際の動作をフローチャートで示すと、図16のようになる。テスト記録を行う媒体の領域にアクセスし(S161)、マーク始端あるいはマーク終端の記録パラメータを所定領域(例えばセクタ)ごとに変化させながら、テスト記録を行う(S163)。テスト記録領域から情報の再生を行い、パラメータを変化させた領域ごとに誤差検出出力を得る(S164)。誤差検出出力が最小となるパラメータを求める(S165)。つぎのパラメータを求めるために以上の動作をすべてのパラメータがもとまるまで繰り返す(S162)(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−200418号公報
【特許文献2】特開2001−109597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、上記のように記録パラメータをジッタが最小となるように設定する方法では、最尤復号法を採用したシステムにおいて、エラーの発生する確率が最小とはならない場合があった。最尤復号法は典型的には、再生信号波形から信号パターンを予め推定しておいて、再生信号波形と推定信号波形とを比較しながら、再生信号を最も確からしい信号パターンを有する信号に復号する方法である。最尤復号法では、再生信号波形と推定信号波形の差異が小さいほど、エラーの発生する確率も小さくなる。
【0019】
本発明は、最尤復号を行うときのエラーの発生する確率が最小となるように、情報の記録時に記録パラメータを最適化する記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の記録制御装置は、情報記録媒体から再生された情報を示すアナログ信号から生成されたデジタル信号を受け取り、上記デジタル信号の波形を整形する整形部と、上記波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、上記最尤復号の結果を示す2値化信号を生成する最尤復号部と、上記波形が整形されたデジタル信号と上記2値化信号とに基づいて上記最尤復号の結果の信頼性を計算する信頼性計算部と、上記計算した信頼性に基づいて、上記情報記録媒体に上記情報を記録するための記録信号の形状を調整する調整部とを備え、そのことにより上記目的が達成される。
【0021】
上記調整部は、上記記録信号の所定部分の形状を調整してもよい。
【0022】
上記調整部は、上記記録信号のエッジの位置を調整してもよい。
【0023】
上記最尤復号部は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号を行ってもよい。
【0024】
上記最尤復号部は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号を行ってもよい。
【0025】
上記最尤復号部は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C2,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号を行ってもよい。
【0026】
上記信頼性計算部は、上記情報記録媒体に形成された記録マークの端部に対応するデジタル信号および2値化信号に基づいて上記信頼性を計算してもよい。
【0027】
上記調整部は、上記信頼性が高くなるように上記記録信号の形状を調整してもよい。
【0028】
上記調整部は、上記計算した信頼性の積算値および上記計算した信頼性の平均値のうちの一方を計算し、上記積算値および上記平均値のうちの一方に基づいて上記記録信号の形状を調整してもよい。
【0029】
上記調整部は、記録マーク長とスペース長との組み合わせ毎に、上記積算値および上記平均値のうちの一方を計算してもよい。
【0030】
本発明の記録再生装置は、情報記録媒体から再生した情報を示すアナログ信号からデジタル信号を生成する再生部と、上記デジタル信号を受け取って上記デジタル信号の波形を整形する整形部と、上記波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、上記最尤復号の結果を示す2値化信号を生成する最尤復号部と、上記波形が整形されたデジタル信号と上記2値化信号とに基づいて上記最尤復号の結果の信頼性を計算する信頼性計算部と、上記計算した信頼性に基づいて、上記情報記録媒体に上記情報を記録するための記録信号の形状を調整する調整部と、上記記録信号の形状の調整結果に基づいて上記情報記録媒体に上記情報を記録する記録部とを備え、そのことにより上記目的が達成される。
【0031】
本発明の記録制御方法は、情報記録媒体から再生された情報を示すアナログ信号から生成されたデジタル信号を受け取り、上記デジタル信号の波形を整形するステップと、上記波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、上記最尤復号の結果を示す2値化信号を生成するステップと、上記波形が整形されたデジタル信号と上記2値化信号とに基づいて上記最尤復号の結果の信頼性を計算するステップと、上記計算した信頼性に基づいて、上記情報記録媒体に上記情報を記録するための記録信号の形状を調整するステップとを包含し、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
上記調整するステップは、上記記録信号の所定部分の形状を調整するステップを包含してもよい。
【0033】
上記調整するステップは、上記記録信号のエッジの位置を調整するステップを包含してもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、波形が整形されたデジタル信号と最尤復号部が生成した2値化信号とに基づいて最尤復号の結果の信頼性を計算し、計算した信頼性に基づいて、情報記録媒体に情報を記録するための記録信号の形状を調整する。このことにより、最尤復号の結果の信頼性が高くなるように記録信号の形状を調整することができるので、最尤復号を行うときのエラーの発生確率を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態における記録再生装置を示す図
【図2】本発明の実施の形態における最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則を示す図
【図3】本発明の実施の形態における図2に示す状態遷移則に対応するトレリス図を示す図
【図4】本発明の実施の形態における最尤復号結果の信頼性を示すPa−Pbの分布を示す図
【図5】本発明の実施の形態における特定8パターンを示す図
【図6】本発明の実施の形態における特定パターンのうちのPattern1(パスAが正解の場合)における、再生波形と記録マークのズレとの相関を示す図
【図7】本発明の実施の形態における特定パターンのうちのPattern1(パスBが正解の場合)における、再生波形と記録マークのズレとの相関を示す図
【図8】最適化が必要とされる記録パラメータの一覧を示す図
【図9】最適化が必要とされる記録パラメータを特定8パターンうちのどれで検出するかを示す図
【図10】本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路を示す図
【図11】本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路の動作を示すタイミングチャート
【図12】本発明の実施の形態における学習用記録パターンを示す図
【図13】本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路を示す図
【図14】従来の光ディスクドライブの構成を示す図
【図15】従来の誤差検出回路の動作を示す図
【図16】従来の記録パラメータを求める動作を示すフローチャート
【図17】本発明の実施の形態における最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a,b,a)とから定まる状態遷移則を示す図
【図18】本発明の実施の形態における最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a、b、c、b、a)とから定まる状態遷移則を示す図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
まず、最尤復号法を用いた場合の再生信号品質の評価方法について述べる。例として、記録符号として最小極性反転間隔が2の記録符号を用い、また、記録時および再生時の信号の周波数特性がPR(1,2,2,1)等化となるように信号の波形が整形される場合の再生信号品質の評価方法について説明する。
【0038】
記録符号をbkとし、1時刻前の記録符号をbk−1とし、2時刻前の記録符号をbk−2とし、3時刻前の記録符号をbk−3とする。PR(1,2,2,1)等化の理想的な出力値Levelvは(式1)で表される。
Levelv=bk−3+2bk−2+2bk−1+bk (式1)
ここでkは時刻を表す整数であり、vは0〜6までの整数である。
【0039】
時刻kでの状態をS(bk−2,bk−1,bk)とすると、(表1)の状態遷移表が得られる。
【0040】
【表1】
【0041】
簡単のために、時刻kでの状態S(0,0,0)kをS0k、状態S(0,0,1)kをS1k、状態S(0,1,1)kをS2k、状態S(1,1,1)kをS3k、状態S(1,1,0)kをS4k、状態S(1,0,0)kをS5kとすると、図2に示す状態遷移図が得られる。図2に示す状態遷移図は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則を表している。この状態遷移図を時間軸に沿って展開すると図3のトレリス図が得られる。時刻kでの状態S0kと時刻k−4の状態S0k−4に注目する。図3では、状態S0kと状態S0k−4との間でとりうる2つの状態遷移列を示している。1つのとりうる状態遷移列をパスAとすると、パスAは状態S2k−4、S4k−3、S5k−2、S0k−1、S0kを遷移する。もう1つの状態遷移列をパスBとすると、パスBは状態S2k−4、S3k−3、S4k−2、S5k−1、S0kを遷移する。時刻k−6から時刻kまでの最尤復号結果を(Ck−6, Ck−5, Ck−4, Ck−3, Ck−2, Ck−1, Ck)とすると、(Ck−6, Ck−5, Ck−4, Ck−3, Ck−2, Ck−1, Ck)=(0,1,1,x,0,0,0)となる復号結果(xは0または1の値)が得られた場合には、パスAまたはパスBの状態遷移列が最も確からしいと推定されたこととなる。パスAおよびパスBの両方とも、時刻k−4における状態が状態S2k−4であることの確からしさは同じであるから、時刻k−3から時刻kまでの、再生信号yk−3から再生信号ykまでの値と、パスAおよびパスBそれぞれの期待値との差を2乗した値の累積値を求めることよって、パスAとパスBのどちらかの状態遷移列が確からしいことが分かる。時刻k−3から時刻kまでの再生信号yk−3からykまでの値とパスAの期待値との差を2乗した値の累積値をPaとするとPaは(式2)で表される。時刻k−3から時刻kまでの再生信号yk−3からykまでの値とパスBの期待値との差を2乗した値の累積値をPbとするとPbは(式3)で表される。
Pa=(yk−3−4)2+(yk−2−3)2+(yk−1−1)2+(yk−0)2
(式2)
Pb=(yk−3−5)2+(yk−2−5)2+(yk−1−3)2+(yk−1)2
(式3)
ここで最尤復号結果の信頼性を示すPaとPbとの差Pa−Pbの意味について述べる。最尤復号部は、Pa<<PbであればパスAを自信を持って選択し、Pa>>PbであればパスBを自信を持って選択したといえる。またPa=PbであればパスA、パスBのいずれを選択してもおかしくなく、復号結果が正しいかどうかは5分5分であるといえる。このようにして所定の時間あるいは所定の回数、復号結果からPa−Pbを求めるとPa−Pbの分布が得られる。Pa−Pbの分布の模式図を図4に示す。
【0042】
図4(a)は再生信号にノイズが重畳された場合のPa−Pbの分布の様子を示している。分布には2つのピークがあり、1つはPa=0となるときに頻度が極大となり、もう1つはPb=0となるときに頻度が極大となる。Pa=0となるときのPa−Pbの値を−Pstd、Pb=0となるときのPa−Pbの値をPstdとあらわすことにする。Pa−Pbの絶対値を計算し、|Pa−Pb|−Pstdを求める。図4(b)は|Pa−Pb|−Pstdの分布の様子を示している。図4(b)に示す分布の標準偏差σと平均値Paveを求める。図4(b)に示す分布が正規分布であるとし、例えばσとPaveとに基づいて復号結果の信頼性|Pa−Pb|の値が−Pstd以下となるときを誤りが発生した状態とすると、誤り確率P(σ,Pave)は(式4)のように表される。
【0043】
【数1】
【0044】
Pa−Pbの分布から計算した平均値Paveと標準偏差σとから最尤復号結果を示す2値化信号の誤り率を予想することができる。つまり平均値Paveと標準偏差σとを再生信号品質の指標とすることができる。なお上記の例では|Pa−Pb|の分布が正規分布となることを仮定したが、分布が正規分布でない場合には、|Pa−Pb|−Pstdの値が所定の基準値以下になる回数をカウントし、そのカウント数を信号品質の指標とすることも可能である。
【0045】
最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則の場合、状態が遷移するときに2つの状態遷移列をとり得るような組み合わせは、時刻k−4から時刻kの範囲では8パターンあり、時刻k−5から時刻kの範囲では8パターンあり、時刻k−6から時刻kの範囲では8パターン存在する。さらに検出する範囲を拡大すると、2つの状態遷移列をとり得るような組み合わせは、信頼性Pa−Pbパターン存在する。ここで重要なのは、信頼性Pa−Pbを再生信号品質の指標とすることにより、すべてのパターンを検出しなくても、誤る可能性(誤り率)が大のパターンのみを検出すれば、その検出結果を誤り率と相関のある指標とすることができる。ここで、誤る可能性が大のパターンとは、信頼性Pa−Pbの値が小となるパターンであり、Pa−Pb=±10となる8パターンである。この8パターンとPa−Pbとについてまとめると(表2)のようになる。
【0046】
【表2】
【0047】
上記8とおりの復号結果の信頼性Pa−Pbをまとめると(式5)が得られる。
【0048】
【数2】
【0049】
ここでAk=(yk−0)2,Bk=(yk−1)2,Ck=(yk−2)2,Dk=(yk−3)2,Ek=(yk−4)2,Fk=(yk−5)2,Gk=(yk−6)2とする。最尤復号結果ckから(数5)を満たすPa−Pbをもとめ、Pa−Pbの分布から標準偏差σ10と平均値Pave10とを求める。Pa−Pbの分布が正規分布であると仮定すると誤りを起こす確率P10は(式6)で表される。
【0050】
【数3】
【0051】
上記8パターンは、1ビットシフトエラーを起こすパターンであり、他のパターンは、2ビット以上のシフトエラーを起こすパターンである。PRML処理後のエラーパターンを分析すると、ほとんどが、1ビットシフトエラーであるため、(式6)を求めることで再生信号の誤り率が推定できる。このように、標準偏差σ10および平均値Pave10を再生信号の品質を示す指標として用いることができる。
【0052】
本発明の実施の形態では、上記8パターンの検出を、後述する記録パターンごと(マーク長と直前のスペース長の組み合わせと、マーク長と直後のスペース長の組み合わせのパターンごと)に行い、記録信号の形状、特にエッジの始終端部分に着目し、記録信号のエッジの位置を最適化する記録パラメータを決定する。全てのパターンの最尤復号結果の信頼性|Pa−Pb|のうち、|Pa−Pb|の値が最小となるパターンのみに着目するということは、記録マークのエッジ部分のみに着目することを意味する。上記でも述べたが、Pa−Pbの値が小となるパターンは、エラーの発生確率が大きいパターンである。すなわち、最尤復号結果の信頼性が高くなるように、記録マークのエッジの位置を部分的に最適化すれば、全体の最適化につながることを意味する。その方法について以下説明する。
【0053】
図5(a)〜(h)に、上記8パターン(Pattern−1〜Pattern−8)のサンプル値を示す。横軸は時間(1目盛りは1チャネルクロック周期(Tclk)を表す)、縦軸は信号レベル(0〜6)を示し、点線、実線はそれぞれパスA、パスBを示す。各サンプル値は、(表1)で説明した最尤復号における入力の期待値Levelvの0〜6に相当する。図15(c)、(d)で示したように記録部分(アモルファス領域)は、反射光が減るため信号レベルとしてはコンパレータ閾値より下側の波形として再生される。一方、未記録部分(非アモルファス領域)は、コンパレータ閾値より上側の波形として再生される。また、図5で示した8パターンは、すべて記録部(マーク)と未記録部(スペース)の境界部分(マークの始端エッジおよび終端エッジ)である再生波形に相当する。よって、図5における8パターンのうち、Pattern−1、Pattern−2、Pattern−3、Pattern−4は、マークの始端エッジ部分に相当し、Pattern−5、Pattern−6、Pattern−7、Pattern−8は、マークの終端エッジ部分に相当する。
【0054】
Patern−1に着目して、マークの始端エッジのシフトズレ検出方法を説明する。図6は、Pattern−1における再生波形と記録マークのズレとの相関を示す。図6において、実線△印は入力信号であり、点線で示すパスAが正解の状態遷移パスとする。入力信号は記録マークB1に基づいて生成されている。記録マークA1は理想的な始端エッジを有しているとする。図6(a)は、記録マークの始端エッジ位置が理想的な始端エッジ位置と比較して後ろにずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3、yk−2、yk−1、yk)を(4.2 、3.2 、1.2 、0.2)とし、(式2)および(式3)からパスAと入力信号との距離Paと、パスBと入力信号との距離Pbとは、(式7)および(式8)の様に求まる。
Pa=(4.2−4)2+(3.2−3)2+(1.2−1)2+(0.2−0)2
=0.16 (式7)
Pb=(4.2−5)2+(3.2−5)2+(1.2−3)2+(0.2−1)2
=7.76 (式8)
始端エッジのズレ量とズレ方向は、上述した|Pa−Pb|−Pstdを算出することで求めることができる。
E1=|Pa−Pb|−Pstd=|0.16−7.76|−10=−2.4 (式9)
(式9)から求まるE1の絶対値が、ズレ量であり、その符号がズレ方向である。すなわち、図6(a)の場合、E1=−2.4と検出できるため、2.4だけ始端エッジ位置が基準より後ろにずれていると判断できる。
【0055】
同様に、図6(b)は、記録マークB1の始端エッジ位置が理想的な始端エッジ位置と比較して、前にずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3 、yk−2 、yk−1 、yk)を(3.8 、2.8 、0.8 、−0.2)とし、E2(=|Pa−Pb|−Pstd)を算出すると、E2=2.4と算出することができる。よって、図6(b)の場合、2.4だけ始端エッジ位置が基準より前にずれていると判断できる。
【0056】
図7に、Pattern−1における再生波形と記録マークのズレとの相関を示す。図7では、パスBが正解の状態遷移パスとする。図7(a)は、記録マークの始端エッジが理想的な始端エッジと比較して後ろにずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3 、yk−2 、yk−1 、yk)を(5.2 、5.2 、3.2 、1.2)とし、E3(=|Pa−Pb|−Pstd)を算出すると、E3=2.4と算出することができる。よって、図7(a)の場合、2.4だけ始端エッジ位置が基準より後ろにずれていると判断できる。図7(b)は、記録マークの始端エッジ位置が理想的な始端エッジ位置と比較して、前にずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3 、yk−2 、yk−1 、yk)を(4.8 、4.8 、2.8 、0.8)とし、E4(=|Pa−Pb|−Pstd)を算出すると、E4=−2.4と算出することができる。よって、図7(b)の場合、2.4だけ始端エッジ位置が基準より前にずれていると判断できる。図6のパスAが正解の場合と、図7のパスBが正解の場合では、記録マークの始端エッジのズレ方向を示す符号の表現が反対である。これは、正解パスおよびもう一つの候補パスそれぞれの期待値系列と、入力信号の系列との関係に依存する。図6(b)、図7(a)のように、入力信号の系列が、正解ではないパスの期待値系列との誤差を大きく持つ場合は、(数9)で算出される値は正の符号を持つ値となる。言い換えれば、入力信号の系列と、正解ではないパスの期待値系列との差が大となるほど、最尤復号では、エラーが発生しにくい状況であることを示す。この場合、(数9)では正符号の値として算出される。この特徴を考慮して、記録マークの始端エッジ位置のズレ方向を検出すればよい。Pattern−1において、パスAが正解の場合は、Pattern−1は、2Tスペースと4Tマーク以上の長さのマークとの組み合わせの始端エッジの検出時に用いられるパターンであり、パスBが正解の場合は、Pattern−1は、3Tスペースと3Tマーク以上の長さのマークとの組み合わせの始端エッジの検出時に用いられるパターンである。以上のような方法を用いて、各記録マークの始終端パターンごとの積算値または平均値を求め、エッジ位置のずれ量が0に近づくように記録パラメータを設定すれば、最尤復号方法に最適な記録制御が可能となる。
【0057】
ここで、記録パラメータの最適化について説明する。記録符号の最小極性反転間隔をm(本実施の形態では、m=2)とする。情報記録媒体上に形成されるマークの始端位置は、そのマーク直前のスペースの幅とそのマーク自身の幅に依存する。例えば、直前のスペース幅がmTから(m+b)Tである場合は、マークの始端位置は直前のスペース幅に依存する。直前のスペース幅が(m+b)Tより大きい場合は、マークの始端位置は直前のスペース幅に依存しない。自身のマーク幅がmTから(m+a)Tである場合は、マークの始端位置は自身のマーク幅に依存する。自身のマーク幅が(m+a)Tより大きい場合は、マークの始端位置は自身のマーク幅に依存しない。
【0058】
また情報記録媒体上に形成されるマークの終端位置は、マーク自身の幅と直後のスペースの幅に依存する。例えば、自身のマーク幅がmTから(m+a)Tである場合は、マークの終端位置は自身のマーク幅に依存する。自身のマーク幅が(m+a)Tより大きい場合は、マークの終端位置は自身のマーク幅に依存しない。また、後続のスペース幅がmTから(m+b)Tである場合は、マークの終端位置は後続のスペース幅に依存する。後続のスペース幅が(m+b)Tより大きい場合は、マークの終端位置は後続のスペース幅に依存しない。ただしa、bは0以上の整数であり、記録符号の最大極性反転はm+a、m+bよりも大きいとする。
【0059】
上記のようなマークの始端位置および終端位置の依存性を考えると、始端パラメータTsfpの最適化は、幅が(m+b)T以下のスペースが隣接しているマークについて行う必要がある。また、終端パラメータTelpの最適化は、幅が(m+a)T以下のマークについて行う必要がある。簡単のためにm=3、a=b=3とすると、単純には図8に示す32とおりの記録パターンに対応するパラメータの最適化が必要となる。図8において、例えば2Ts2Tmは、2Tマークの直前に2Tスペースが存在するパターンであることを意味する。
【0060】
図9は、図8に示す各記録パターン(すなわちエッジパターン)を、上記8パターン(Pattern−1〜Pattern−8)のうちどのパターンで検出を行うかを示したものである。例えば、図8の2Ts3Tmは、P3Aのパターンで、記録マークの始終端パターンに対応する信号のずれ量の検出を行うことを意味する。P3Aは、Pattern−3で、パスAが正解の状態遷移パスであるパターンを意味する。また、図8の3Ts3Tmは、P1Bまたは、P4Aのパターンでずれ量の検出を行うことを意味する。P1Bは、Pattern−1で、パスBが正解の状態遷移パスであるパターンを意味し、P4Aは、Pattern−4で、パスAが正解の状態遷移パスであるパターンを意味する。以上のことから、最尤復号に最適な記録パラメータを制御する方法とは、図9における記録マークの始終端パターンそれぞれに対応する信号のずれ量が、すべて0に近づくように、記録パラメータを変化させることである。
【0061】
図9において、2Ts2Tm(2Tマーク立ち上がりで、直前に2Tスペースがあるパターン)と、2Tm2Ts(2Tマーク立ち下がりで、直後に2Tスペースがあるパターン)は、上記8パターン(Pattern−1〜Pattern−8)では、検出不可であるため、他の方法でエッジシフト量を最適化する必要がある。しかし、2Ts2Tmと2Tm2Tsを含むパターンは、信頼性Pa−Pbの値が比較的大きいパターンであるため、上記8パターンには含まれていない。言い換えれば、2Ts2Tmと2Tm2Tsのエッジ部分は厳密に最適化しなくても、最尤復号においては、エラーが発生する可能性が低いと言える。そのため、ディスクごとに最適化するのではなく、適切な初期値を用いてもよい。2Ts2Tmと2Tm2Tsを最適化する場合は、再生信号の位相誤差の積算値が最小となるように最適化してもよい。
【0062】
図1に、本発明の実施の形態における記録再生装置100を示す。記録再生装置100は、上述した記録パラメータ最適化方法を実行する。
【0063】
記録再生装置100は、再生部101と、記録制御装置102と、記録部103とを備える。記録再生装置100には、情報記録媒体1が搭載される。情報記録媒体1は、光学的に情報の記録再生を行うための情報記録媒体であり、例えば光ディスクである。
【0064】
再生部101は、光ヘッド部2と、プリアンプ3と、AGC4と、波形等化器5と、A/D変換器6と、PLL回路7とを備える。再生部101は、情報記録媒体1から再生された情報を示すアナログ信号からデジタル信号を生成する。
【0065】
記録制御装置102は、整形部8と、最尤復号部9と、信頼性計算部10と、調整部104とを備える。調整部104は、パターン検出回路11と、エッジシフト検出回路12と、情報記録媒体コントローラ13とを備える。記録制御装置102は例えば半導体チップとして製造される。
【0066】
整形部8は例えばデジタルフィルタであり、再生部101が生成したデジタル信号を受け取ってデジタル信号が所定の等化特性を有するようにデジタル信号の波形を整形する。
【0067】
最尤復号部9は例えばビタビ復号回路であり、整形部8から出力された波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、最尤復号の結果を示す2値化信号を生成する。
【0068】
信頼性計算部10は例えば差分メトリック検出回路であり、整形部8から出力された波形が整形されたデジタル信号と最尤復号部9から出力された2値化信号とに基づいて最尤復号の結果の信頼性を計算する。本発明の一つの実施形態では、信頼性計算部10は、情報記録媒体1に形成された記録マークの始終端部に対応するデジタル信号および2値化信号に基づいて、最尤復号結果の信頼性を計算する。
【0069】
調整部104は、信頼性計算部10が計算した信頼性に基づいて、情報記録媒体1に情報を記録するための記録信号の所定部分の形状を調整する(例えば記録信号のエッジの位置を調整する)。調整部104は、最尤復号の結果の信頼性が高くなるように記録信号の形状を調整する。情報記録媒体コントローラ13は例えば光ディスクコントローラである。
【0070】
記録部103は、パターン発生回路14と、記録補償回路15と、レーザ駆動回路16と、光ヘッド部2とを備える。記録部103は、記録信号の形状の調整結果に基づいて情報記録媒体1に情報を記録する。本実施の形態では、光ヘッド部2は、再生部101および記録部103に共有され、記録ヘッドおよび再生ヘッドの両方の機能を有する。なお記録ヘッドと再生ヘッドとが別々に設けられてもよい。記録再生装置100の動作を以下により詳細に説明する。
【0071】
光学ヘッド部2は情報記録媒体1から読み出した情報を示すアナログ再生信号を生成する。アナログ再生信号は、プリアンプ3によって増幅されてACカップリングされたのち、AGC4に入力される。AGC4では後段の波形等化器5の出力が一定振幅となるようゲインが調整される。AGC4から出力されたアナログ再生信号は波形等化器5によって波形整形される。波形整形されたアナログ再生信号はA/D変換器6に出力される。A/D変換器6はPLL回路7から出力された再生クロックに同期してアナログ再生信号をサンプリングする。PLL回路7はA/D変換器6でサンプリングされたデジタル再生信号から再生クロックを抽出する。
【0072】
A/D変換器6のサンプリングにより生成されたデジタル再生信号は整形部8に入力される。整形部8は、記録時および再生時のデジタル再生信号の周波数特性が最尤復号部9の想定する特性(本実施の形態ではPR(1,2,2,1)等化特性)となるようにデジタル再生信号の周波数を調整する(すなわちデジタル再生信号の波形を整形する)。
【0073】
最尤復号部9は、整形部8から出力された波形整形されたデジタル再生信号を最尤復号し、2値化信号を生成する。信頼性計算部10は、整形部8から出力された波形整形されたデジタル再生信号と、2値化信号とを受け取る。信頼性計算部10は、2値化信号から状態遷移を判別し、判別結果とブランチメトリックから復号結果の信頼性を示す|Pa−Pb|−Pstd((数9)参照、以後、Pabsと表記する)を求める。パターン検出回路11は、2値化信号に基いて、上記8パターン(Patttern−1〜Pattern−8)を図9で示した記録マークの始終端エッジのパターンごとに割り当てるためのパルス信号を生成してエッジシフト検出回路12に出力する。エッジシフト検出回路12は上記信頼性Pabsをパターンごとに累積加算し、記録補償パラメータの最適値からのずれ(後述ではエッジシフトと言う)を求める。情報記録媒体コントローラ13はパターンごとのエッジシフト量から変更が必要と判断された記録パラメータ(記録信号の波形)を変更する。パターン発生回路14は、記録補償学習用パターンを出力する。
【0074】
記録補償回路15は情報記録媒体コントローラ13からの記録パラメータをもとに、記録補償学習パターンに従ってレーザ発光波形パターンを生成する。生成されたレーザ発光波形パターンにしたがって、レーザ駆動回路16は光学ヘッド部2のレーザ発光動作を制御する。
【0075】
次に、本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路12の動作を詳細に説明する。図10にパターン検出回路11とエッジシフト検出回路12とを示す。エッジシフト検出回路12には、パターン検出回路11でのパターン検出結果と、信頼性計算部10で算出された信頼性Pabsとが入力される。パターン検出回路11での遅延を考慮して、入力される信頼性Pabsデータをフィリップフロップ(FF)によって遅延させる。パターン検出出力および検出出力点に対応する信頼性Pabsデータが加算器に入力され、同時にパターン検出結果がセレクタに入力される。セレクタは検出パターンにしたがってこれまでの累積加算結果を選択して加算器に入力する。加算器は累積加算結果と新しく入力された信頼性Pabsデータを加算し出力する。検出パターンに対応した特定のレジスタは、イネーブル信号を受け取ると、加算結果を格納する。
【0076】
例えばアドレス単位で情報が管理されている情報記録媒体に情報を記録する場合、図11(b)、(c)のような加算区間ゲート信号とレジスタイネーブル信号の使用が想定される。図11(a)はアドレスユニットを示している。アドレス単位ごとに、ユーザ領域にテスト記録を行い、エッジシフト量を求める場合、加算区間を定める制御が必要となる。図11(b)のような加算区間ゲート信号がエッジシフト検出回路12に入力されると、加算区間ゲート信号は、図10のように2段のフリップフロップを通過し、フリップフロップFF29〜FF0に入力される。図11(b)に示す加算区間ゲート信号のLow区間でフリップフロップをリセットし、High区間で加算結果を格納する。また、図11(c)のようなレジスタイネーブル信号は、加算区間ゲート信号から生成され、レジスタイネーブル信号は、加算区間ゲート信号の終端で加算結果をレジスタREG29〜REG0に格納するためのイネーブル信号である。アドレス単位ごとにエッジシフト量を示すデータがレジスタREG29〜REG0に格納される。エッジシフト検出回路12は、このような回路構成を備えることで、1つの加算器をもちいて記録パラメータの最適化に必要なすべてのエッジシフト量をもとめることができる。
【0077】
図10の回路例では、テスト記録に用いられる記録パターン(例えばランダムパターン)のうちの、パラメータの最適化に必要な所定長のマークとスペースとの組み合わせによって発生頻度が異なってしまう。検出された30のエッジシフト量(R23T、R33T、・・・、R45L、R55L)は各パターンの発生頻度に依存する。
【0078】
また、図1におけるPLL回路7では、DC成分(再生信号に含まれる低周波数成分)を用いてスライサーのしきい値を自動的に検出し、再生信号とクロック信号とを同期させている。従って、フィードバック制御がPLL回路7でのクロック生成に影響しないように、テスト記録パターンにはDC成分が少ないことが望まれる。また、最適化に要する時間と精度とを考えると、できるだけ少ない記録領域で高い精度の検出結果が望まれる。したがって記録パターン中にパラメータの最適化に必要なマークとスペースとの組み合わせが同一頻度で発生し、なおかつ符号に含まれるDC成分(DSV)が0となり、かつ最適化に必要な組み合わせの単位長あたりの発生頻度が高くなるような記録パターンが必要となる。このような記録パターンの一例を図12に示す。
【0079】
図12において、2Mは2Tマークを意味し、2Sは2Tスペースを意味する。図12の例では、2T〜5Tマークと2T〜5Tスペースとの組み合わせである30とおりのパターンが、108ビットの記録パターンに1回づつ発生する。また108ビットの記録パターンを含むシンボル‘0’とシンボル‘1’の数は同数の54であり、記録パターンのDSVは0となっている。この記録パターンを図10のエッジシフト検出回路12に適用すると、各パターンを同一回数検出することができ、より正確なシフト量検出結果が得られる。なお、本実施の形態では、5T以上の幅のマークあるいはスペースについては、同一の記録パラメータで記録できることを想定している。
【0080】
図13は、エッジシフト検出回路12の改変例を示す。図13に示すエッジシフト検出回路12aでは、テスト記録に用いられる記録パターンとして、ランダムパターン(最適化に必要な組み合わせパターンによって発生頻度が異なるパターン)を用いる。
【0081】
図13のエッジシフト検出回路12aでは、パターン検出回路11によって、図9で示した特定パターン(30パターン)のエッジを検出し、パターンそれぞれに対応するエッジシフト量とパターン検出回数とを個々に積算する。エッジシフト量の加算結果をパターン検出回数で割ることにより、特定パターン毎に平均エッジシフト量を算出する。これにより、特定パターン毎の発生確率が異なるテスト記録パターンを用いても、どのパターンに対応する記録マークの始終端位置を変更すべきか判断することができる。
【0082】
上述のように、調整部104が備えるエッジシフト検出回路12は、記録マーク長とスペース長との組み合わせ毎に、最尤復号結果の信頼性の積算値または平均値のうちの一方を計算し、それら計算した積算値または平均値に基づいて記録信号の形状を調整する。
【0083】
上記実施の形態では、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号部が最尤復号を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、最小極性反転間隔が3である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いた場合や、最小極性反転間隔が2または3である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いた場合や、最小極性反転間隔が2または3である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C2,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いた場合においても適用できる。C0、C1、C2は任意の正の数である。
【0084】
最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a,b,a)とから定まる状態遷移則を表す状態遷移表を表3に示し、状態遷移図を図17に示す。ここで、a、bは任意の正の数である。
【0085】
【表3】
【0086】
また、最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a、b、c、b、a)とから定まる状態遷移則を表す状態遷移表を表4に示し、状態遷移図を図18に示す。ここで、a、b、cは任意の正の数である。
【0087】
【表4】
【0088】
本発明の実施の形態では、最尤復号部9は、表3、4および図17、18に示すような状態遷移則を用いた最尤復号を行ってもよい。
【0089】
なお、本実施の形態における記録パラメータは、記録マークのエッジの始終端の位置を制御するパラメータとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15で説明したマルチパルスを用いたレーザ発光を行う場合、先頭パルスの幅や、終端パルスの幅や、クーリングパルス幅を制御するパラメータを最尤復号結果の信頼性に基いて調整してもよい。
【0090】
また、本発明の記録再生装置100の各構成要素は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよい。例えば、整形部8、最尤復号部9、信頼性計算部10、調整部11のうちの少なくとも一つが実行する動作が、コンピュータにより実行可能なプログラムにより実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、波形が整形されたデジタル信号と最尤復号部が生成した2値化信号とに基づいて最尤復号の結果の信頼性を計算し、計算した信頼性に基づいて、情報記録媒体に情報を記録するための記録信号の形状を調整する。このことにより、最尤復号の結果の信頼性が高くなるように記録信号の形状を調整することができるので、最尤復号を行うときのエラーの発生確率を小さくすることができる。
【0092】
本発明では、最尤復号法を用いた信号の復号時にエラーの発生する確率が最小となるように、最尤復号法に最適な記録パラメータを設定する。記録マークのエッジの始終端部分に相当し、且つ最尤復号法においてエラーの発生確率が高い信号部分について、最尤復号の結果の信頼性の演算を行う。この演算は、所定のマーク長とスペース長との組み合わせ毎に行う。その演算結果からエッジシフト位置を最適化する記録パラメータを求め、求めた記録パラメータを反映した記録を行う。このように、最尤復号時にエラーの発生確率が高くなる信号部分の記録パラメータを最適化することで、リーダビリティを向上させることができる。
【0093】
このように本発明は、最尤復号法を用いた記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法において特に有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 情報記録媒体
2 光学ヘッド部
3 プリアンプ
4 AGC
5 波形等化器
6 A/D変換器
7 PLL回路
8 整形部
9 最尤復号部
10 信頼性計算部
11 パターン検出回路
12 エッジシフト検出回路
13 情報記録媒体コントローラ
14 パターン発生回路
15 記録補償回路
16 レーザ駆動回路
20 コンパレータ
21 位相比較器
22 LPF
23 VCO
【技術分野】
【0001】
本発明は、最尤復号法を用いた記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬記録媒体に原デジタル情報を記録し、再生する記録再生装置では、同一形状の記録パルスを用いても、装置や記録媒体の個体差によって、媒体上に形成されるマークの形状がばらつき、再生される信号品質は大きくことなる場合がある。このようなばらつきによる信頼性の低下を防ぐために、記録媒体の脱着時などに校正動作を行っている。校正とはユーザデータの信頼性を確保するために、再生系の特性の設定、記録パルスの形状などの最適化を行う制御である。
【0003】
一般的な情報再生装置においては、再生信号に含まれるクロック情報を抽出し、抽出されたクロック情報をもとに原デジタル情報を弁別するPLL回路をもちいている。
【0004】
図14に従来の光ディスクドライブを示す。光ディスク17からの反射光は光学ヘッド18により再生信号に変換される。再生信号は波形等化器19により波形整形される。波形整形された再生信号はコンパレータ20で2値化される。通常、コンパレータ20のしきい値は、2値化信号出力の積分結果が0となるようにフィードバック制御されている。位相比較器21は2値化信号出力と再生クロックとの位相誤差を求める。位相誤差をLPF22により平均処理し、処理結果がVCO23の制御電圧となる。位相比較器21から出力される位相誤差が常に0になるように、位相比較器21はフィードバック制御される。熱記録される記録媒体においては、媒体上の熱干渉と前後の記録パターンとにもとづいて媒体上に形成されるマークの形状が異なってくる。したがって個々のパターンの記録に最適な記録パラメータ設定をしなければならない。
【0005】
記録パラメータを評価する指標が上記のような誤差検出出力である。誤差検出出力が最小となるように、記録パラメータの設定を行う。具体的には、初期設定された記録パラメータを用いてパターン発生回路26から出力された記録パターンに基いて、記録補償回路27は所定の波形のパルスを生成し、レーザ駆動回路28は光ディスクに情報を記録する。所定のパターンが記録されたトラックから情報を再生しているとき、誤差検出回路24は、コンパレータ20の出力とVCO23の出力との位相誤差の絶対値を積分することで、検出信号を得る。この検出信号は、再生クロックと2値化パルスエッジとの間のジッタと、相関をもつ。記録パラメータを変化させて、記録と再生とを繰り返す。検出値が最小となるときの記録パラメータを最適とする。
【0006】
誤差検出回路24の具体的な動作の様子を図15に示す。例えば6T、4T、6T、8Tの繰り返しパターンを有する記録パルスを用いた場合の、4Tマークと6Tスペースとの組み合わせパターンに対応するマーク終端エッジの最適化を図る場合をあげる。6Tスペースと8Tマークとの組み合わせパターンに対応するマーク始端エッジ、および8Tマークと6Tスペースとの組み合わせパターンに対応する終端エッジは最適な記録パラメータで記録されているものとする。
【0007】
記録補償回路27は、図15(a)に示すような周期のNRZI信号が与えられると、図15(b)のようなレーザ駆動波形パルスを生成する。Tsfpはマーク始端位置を設定するパラメータで、Telpはマーク終端位置を設定するパラメータである。レーザ駆動回路28は、図15(b)のようなパターンに従って発光パワーを変調する。レーザ発光により図15(c)のようにトラック上に物理的にアモルファス領域が形成される。Telpを、Telp1、Telp2、Telp3と変化させた場合、形成されるマークの形状は図15(c)のように変化する。このような記録状態のトラックからの情報再生を考える。
【0008】
4Tマーク終端の記録パラメータを最適値のTelp2としたとき、図15(d)に実線で示す再生信号が得られる。コンパレータ出力の積分値が0となるようしきい値が定められる。コンパレータ出力と再生クロックとの位相差を検出し、位相誤差の積分値が0となるように再生クロック(図15(e))が生成される。
【0009】
次に、4Tマーク終端の記録パラメータを最適値より小さくし、Telp1とした場合を考える。このとき図15(f)に実線で示す再生信号が得られる。4Tマーク終端エッジが時間軸方向に変化するため、コンパレータのしきい値Tvは、図15(d)と比べて、図15(f)の一点鎖線ように大きくなる。コンパレータ出力が変化したため、位相誤差の積分値が0となるよう、図15(e)と比べて再生クロックの位相が進み、図15(g)のような再生クロックが生成される。
【0010】
逆に、4Tマーク終端の記録パラメータを最適値より大きくし、Telp3とした場合を考える。このとき図15(h)に実線で示す再生信号が得られる。4Tマーク終端エッジが時間軸方向に変化するため、コンパレータのしきい値Tvは、図15(d)とくらべて図15(h)の一点鎖線ように小さくなる。コンパレータ出力が変化したため、位相誤差の積分値が0となるよう、図15(e)と比べて再生クロックは位相が遅れ、図15(i)のような再生クロックが生成される。
【0011】
マーク終端エッジ(再生信号の立ち上がり)と再生クロックとの時間差(いわゆるデータ−クロック間ジッタ)を測定すると、図15の(j)〜(l)のような分布が得られる。ただし4Tマーク終端および8Tマーク終端エッジは、おなじ分散値の正規分布となるようなばらつきを持つことを仮定している。
【0012】
図15(d)、図15(e)のような再生信号と再生クロックの場合、立ち上がりエッジ(マーク終端エッジ)でのコンパレータ出力と再生クロックとの時間差の分布を求めると、図15(k)のようになる。4Tマーク終端と8Tマーク終端の分布のそれぞれの平均値が0となる。
【0013】
しかし4Tマーク終端のパラメータがTelp1(最適値Telp2より小さい値)のときは、図15(j)のように4Tマーク終端エッジの分布の平均値と8Tマーク終端エッジの分布との平均値は0とはならず、0から同じ距離離れた分布となる。したがって立ち上がりエッジのトータルの分散は図15(k)の場合に比べて大きくなる。同様に4Tマーク終端のパラメータがTelp3(最適値Telp2より大きい値)のときは、図15(l)のように4Tマーク終端エッジの分布の平均値と8Tマーク終端エッジの分布との平均値は0とはならず、0から同じ距離離れた分布となる。図15(l)と図15(j)とは4Tマーク終端と8Tマーク終端の分布が入れ替わっていることになる。この場合も、立ち上がりエッジのトータルの分散は図15(k)の場合に比べて大きくなる。
【0014】
位相誤差の絶対値を累積した結果を誤差検出出力とする場合、記録パラメータTelpの変化に従って、図15(m)のように誤差検出値が変化する。したがって記録パラメータを変化させ、誤差検出回路24の出力が最小となるパラメータを最適値とする。
【0015】
上記の例では4Tマーク終端のパラメータTelpを最適化する際の手順について説明したが、その他のパラメータについてもそれぞれに対応した特定パターンを用いてテスト記録を行い、誤差検出出力にもとづいて最適パラメータをもとめる。
【0016】
以上の手順に従ってすべての記録パラメータをもとめる際の動作をフローチャートで示すと、図16のようになる。テスト記録を行う媒体の領域にアクセスし(S161)、マーク始端あるいはマーク終端の記録パラメータを所定領域(例えばセクタ)ごとに変化させながら、テスト記録を行う(S163)。テスト記録領域から情報の再生を行い、パラメータを変化させた領域ごとに誤差検出出力を得る(S164)。誤差検出出力が最小となるパラメータを求める(S165)。つぎのパラメータを求めるために以上の動作をすべてのパラメータがもとまるまで繰り返す(S162)(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−200418号公報
【特許文献2】特開2001−109597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、上記のように記録パラメータをジッタが最小となるように設定する方法では、最尤復号法を採用したシステムにおいて、エラーの発生する確率が最小とはならない場合があった。最尤復号法は典型的には、再生信号波形から信号パターンを予め推定しておいて、再生信号波形と推定信号波形とを比較しながら、再生信号を最も確からしい信号パターンを有する信号に復号する方法である。最尤復号法では、再生信号波形と推定信号波形の差異が小さいほど、エラーの発生する確率も小さくなる。
【0019】
本発明は、最尤復号を行うときのエラーの発生する確率が最小となるように、情報の記録時に記録パラメータを最適化する記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の記録制御装置は、情報記録媒体から再生された情報を示すアナログ信号から生成されたデジタル信号を受け取り、上記デジタル信号の波形を整形する整形部と、上記波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、上記最尤復号の結果を示す2値化信号を生成する最尤復号部と、上記波形が整形されたデジタル信号と上記2値化信号とに基づいて上記最尤復号の結果の信頼性を計算する信頼性計算部と、上記計算した信頼性に基づいて、上記情報記録媒体に上記情報を記録するための記録信号の形状を調整する調整部とを備え、そのことにより上記目的が達成される。
【0021】
上記調整部は、上記記録信号の所定部分の形状を調整してもよい。
【0022】
上記調整部は、上記記録信号のエッジの位置を調整してもよい。
【0023】
上記最尤復号部は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号を行ってもよい。
【0024】
上記最尤復号部は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号を行ってもよい。
【0025】
上記最尤復号部は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C2,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号を行ってもよい。
【0026】
上記信頼性計算部は、上記情報記録媒体に形成された記録マークの端部に対応するデジタル信号および2値化信号に基づいて上記信頼性を計算してもよい。
【0027】
上記調整部は、上記信頼性が高くなるように上記記録信号の形状を調整してもよい。
【0028】
上記調整部は、上記計算した信頼性の積算値および上記計算した信頼性の平均値のうちの一方を計算し、上記積算値および上記平均値のうちの一方に基づいて上記記録信号の形状を調整してもよい。
【0029】
上記調整部は、記録マーク長とスペース長との組み合わせ毎に、上記積算値および上記平均値のうちの一方を計算してもよい。
【0030】
本発明の記録再生装置は、情報記録媒体から再生した情報を示すアナログ信号からデジタル信号を生成する再生部と、上記デジタル信号を受け取って上記デジタル信号の波形を整形する整形部と、上記波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、上記最尤復号の結果を示す2値化信号を生成する最尤復号部と、上記波形が整形されたデジタル信号と上記2値化信号とに基づいて上記最尤復号の結果の信頼性を計算する信頼性計算部と、上記計算した信頼性に基づいて、上記情報記録媒体に上記情報を記録するための記録信号の形状を調整する調整部と、上記記録信号の形状の調整結果に基づいて上記情報記録媒体に上記情報を記録する記録部とを備え、そのことにより上記目的が達成される。
【0031】
本発明の記録制御方法は、情報記録媒体から再生された情報を示すアナログ信号から生成されたデジタル信号を受け取り、上記デジタル信号の波形を整形するステップと、上記波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、上記最尤復号の結果を示す2値化信号を生成するステップと、上記波形が整形されたデジタル信号と上記2値化信号とに基づいて上記最尤復号の結果の信頼性を計算するステップと、上記計算した信頼性に基づいて、上記情報記録媒体に上記情報を記録するための記録信号の形状を調整するステップとを包含し、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
上記調整するステップは、上記記録信号の所定部分の形状を調整するステップを包含してもよい。
【0033】
上記調整するステップは、上記記録信号のエッジの位置を調整するステップを包含してもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、波形が整形されたデジタル信号と最尤復号部が生成した2値化信号とに基づいて最尤復号の結果の信頼性を計算し、計算した信頼性に基づいて、情報記録媒体に情報を記録するための記録信号の形状を調整する。このことにより、最尤復号の結果の信頼性が高くなるように記録信号の形状を調整することができるので、最尤復号を行うときのエラーの発生確率を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態における記録再生装置を示す図
【図2】本発明の実施の形態における最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則を示す図
【図3】本発明の実施の形態における図2に示す状態遷移則に対応するトレリス図を示す図
【図4】本発明の実施の形態における最尤復号結果の信頼性を示すPa−Pbの分布を示す図
【図5】本発明の実施の形態における特定8パターンを示す図
【図6】本発明の実施の形態における特定パターンのうちのPattern1(パスAが正解の場合)における、再生波形と記録マークのズレとの相関を示す図
【図7】本発明の実施の形態における特定パターンのうちのPattern1(パスBが正解の場合)における、再生波形と記録マークのズレとの相関を示す図
【図8】最適化が必要とされる記録パラメータの一覧を示す図
【図9】最適化が必要とされる記録パラメータを特定8パターンうちのどれで検出するかを示す図
【図10】本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路を示す図
【図11】本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路の動作を示すタイミングチャート
【図12】本発明の実施の形態における学習用記録パターンを示す図
【図13】本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路を示す図
【図14】従来の光ディスクドライブの構成を示す図
【図15】従来の誤差検出回路の動作を示す図
【図16】従来の記録パラメータを求める動作を示すフローチャート
【図17】本発明の実施の形態における最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a,b,a)とから定まる状態遷移則を示す図
【図18】本発明の実施の形態における最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a、b、c、b、a)とから定まる状態遷移則を示す図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
まず、最尤復号法を用いた場合の再生信号品質の評価方法について述べる。例として、記録符号として最小極性反転間隔が2の記録符号を用い、また、記録時および再生時の信号の周波数特性がPR(1,2,2,1)等化となるように信号の波形が整形される場合の再生信号品質の評価方法について説明する。
【0038】
記録符号をbkとし、1時刻前の記録符号をbk−1とし、2時刻前の記録符号をbk−2とし、3時刻前の記録符号をbk−3とする。PR(1,2,2,1)等化の理想的な出力値Levelvは(式1)で表される。
Levelv=bk−3+2bk−2+2bk−1+bk (式1)
ここでkは時刻を表す整数であり、vは0〜6までの整数である。
【0039】
時刻kでの状態をS(bk−2,bk−1,bk)とすると、(表1)の状態遷移表が得られる。
【0040】
【表1】
【0041】
簡単のために、時刻kでの状態S(0,0,0)kをS0k、状態S(0,0,1)kをS1k、状態S(0,1,1)kをS2k、状態S(1,1,1)kをS3k、状態S(1,1,0)kをS4k、状態S(1,0,0)kをS5kとすると、図2に示す状態遷移図が得られる。図2に示す状態遷移図は、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則を表している。この状態遷移図を時間軸に沿って展開すると図3のトレリス図が得られる。時刻kでの状態S0kと時刻k−4の状態S0k−4に注目する。図3では、状態S0kと状態S0k−4との間でとりうる2つの状態遷移列を示している。1つのとりうる状態遷移列をパスAとすると、パスAは状態S2k−4、S4k−3、S5k−2、S0k−1、S0kを遷移する。もう1つの状態遷移列をパスBとすると、パスBは状態S2k−4、S3k−3、S4k−2、S5k−1、S0kを遷移する。時刻k−6から時刻kまでの最尤復号結果を(Ck−6, Ck−5, Ck−4, Ck−3, Ck−2, Ck−1, Ck)とすると、(Ck−6, Ck−5, Ck−4, Ck−3, Ck−2, Ck−1, Ck)=(0,1,1,x,0,0,0)となる復号結果(xは0または1の値)が得られた場合には、パスAまたはパスBの状態遷移列が最も確からしいと推定されたこととなる。パスAおよびパスBの両方とも、時刻k−4における状態が状態S2k−4であることの確からしさは同じであるから、時刻k−3から時刻kまでの、再生信号yk−3から再生信号ykまでの値と、パスAおよびパスBそれぞれの期待値との差を2乗した値の累積値を求めることよって、パスAとパスBのどちらかの状態遷移列が確からしいことが分かる。時刻k−3から時刻kまでの再生信号yk−3からykまでの値とパスAの期待値との差を2乗した値の累積値をPaとするとPaは(式2)で表される。時刻k−3から時刻kまでの再生信号yk−3からykまでの値とパスBの期待値との差を2乗した値の累積値をPbとするとPbは(式3)で表される。
Pa=(yk−3−4)2+(yk−2−3)2+(yk−1−1)2+(yk−0)2
(式2)
Pb=(yk−3−5)2+(yk−2−5)2+(yk−1−3)2+(yk−1)2
(式3)
ここで最尤復号結果の信頼性を示すPaとPbとの差Pa−Pbの意味について述べる。最尤復号部は、Pa<<PbであればパスAを自信を持って選択し、Pa>>PbであればパスBを自信を持って選択したといえる。またPa=PbであればパスA、パスBのいずれを選択してもおかしくなく、復号結果が正しいかどうかは5分5分であるといえる。このようにして所定の時間あるいは所定の回数、復号結果からPa−Pbを求めるとPa−Pbの分布が得られる。Pa−Pbの分布の模式図を図4に示す。
【0042】
図4(a)は再生信号にノイズが重畳された場合のPa−Pbの分布の様子を示している。分布には2つのピークがあり、1つはPa=0となるときに頻度が極大となり、もう1つはPb=0となるときに頻度が極大となる。Pa=0となるときのPa−Pbの値を−Pstd、Pb=0となるときのPa−Pbの値をPstdとあらわすことにする。Pa−Pbの絶対値を計算し、|Pa−Pb|−Pstdを求める。図4(b)は|Pa−Pb|−Pstdの分布の様子を示している。図4(b)に示す分布の標準偏差σと平均値Paveを求める。図4(b)に示す分布が正規分布であるとし、例えばσとPaveとに基づいて復号結果の信頼性|Pa−Pb|の値が−Pstd以下となるときを誤りが発生した状態とすると、誤り確率P(σ,Pave)は(式4)のように表される。
【0043】
【数1】
【0044】
Pa−Pbの分布から計算した平均値Paveと標準偏差σとから最尤復号結果を示す2値化信号の誤り率を予想することができる。つまり平均値Paveと標準偏差σとを再生信号品質の指標とすることができる。なお上記の例では|Pa−Pb|の分布が正規分布となることを仮定したが、分布が正規分布でない場合には、|Pa−Pb|−Pstdの値が所定の基準値以下になる回数をカウントし、そのカウント数を信号品質の指標とすることも可能である。
【0045】
最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則の場合、状態が遷移するときに2つの状態遷移列をとり得るような組み合わせは、時刻k−4から時刻kの範囲では8パターンあり、時刻k−5から時刻kの範囲では8パターンあり、時刻k−6から時刻kの範囲では8パターン存在する。さらに検出する範囲を拡大すると、2つの状態遷移列をとり得るような組み合わせは、信頼性Pa−Pbパターン存在する。ここで重要なのは、信頼性Pa−Pbを再生信号品質の指標とすることにより、すべてのパターンを検出しなくても、誤る可能性(誤り率)が大のパターンのみを検出すれば、その検出結果を誤り率と相関のある指標とすることができる。ここで、誤る可能性が大のパターンとは、信頼性Pa−Pbの値が小となるパターンであり、Pa−Pb=±10となる8パターンである。この8パターンとPa−Pbとについてまとめると(表2)のようになる。
【0046】
【表2】
【0047】
上記8とおりの復号結果の信頼性Pa−Pbをまとめると(式5)が得られる。
【0048】
【数2】
【0049】
ここでAk=(yk−0)2,Bk=(yk−1)2,Ck=(yk−2)2,Dk=(yk−3)2,Ek=(yk−4)2,Fk=(yk−5)2,Gk=(yk−6)2とする。最尤復号結果ckから(数5)を満たすPa−Pbをもとめ、Pa−Pbの分布から標準偏差σ10と平均値Pave10とを求める。Pa−Pbの分布が正規分布であると仮定すると誤りを起こす確率P10は(式6)で表される。
【0050】
【数3】
【0051】
上記8パターンは、1ビットシフトエラーを起こすパターンであり、他のパターンは、2ビット以上のシフトエラーを起こすパターンである。PRML処理後のエラーパターンを分析すると、ほとんどが、1ビットシフトエラーであるため、(式6)を求めることで再生信号の誤り率が推定できる。このように、標準偏差σ10および平均値Pave10を再生信号の品質を示す指標として用いることができる。
【0052】
本発明の実施の形態では、上記8パターンの検出を、後述する記録パターンごと(マーク長と直前のスペース長の組み合わせと、マーク長と直後のスペース長の組み合わせのパターンごと)に行い、記録信号の形状、特にエッジの始終端部分に着目し、記録信号のエッジの位置を最適化する記録パラメータを決定する。全てのパターンの最尤復号結果の信頼性|Pa−Pb|のうち、|Pa−Pb|の値が最小となるパターンのみに着目するということは、記録マークのエッジ部分のみに着目することを意味する。上記でも述べたが、Pa−Pbの値が小となるパターンは、エラーの発生確率が大きいパターンである。すなわち、最尤復号結果の信頼性が高くなるように、記録マークのエッジの位置を部分的に最適化すれば、全体の最適化につながることを意味する。その方法について以下説明する。
【0053】
図5(a)〜(h)に、上記8パターン(Pattern−1〜Pattern−8)のサンプル値を示す。横軸は時間(1目盛りは1チャネルクロック周期(Tclk)を表す)、縦軸は信号レベル(0〜6)を示し、点線、実線はそれぞれパスA、パスBを示す。各サンプル値は、(表1)で説明した最尤復号における入力の期待値Levelvの0〜6に相当する。図15(c)、(d)で示したように記録部分(アモルファス領域)は、反射光が減るため信号レベルとしてはコンパレータ閾値より下側の波形として再生される。一方、未記録部分(非アモルファス領域)は、コンパレータ閾値より上側の波形として再生される。また、図5で示した8パターンは、すべて記録部(マーク)と未記録部(スペース)の境界部分(マークの始端エッジおよび終端エッジ)である再生波形に相当する。よって、図5における8パターンのうち、Pattern−1、Pattern−2、Pattern−3、Pattern−4は、マークの始端エッジ部分に相当し、Pattern−5、Pattern−6、Pattern−7、Pattern−8は、マークの終端エッジ部分に相当する。
【0054】
Patern−1に着目して、マークの始端エッジのシフトズレ検出方法を説明する。図6は、Pattern−1における再生波形と記録マークのズレとの相関を示す。図6において、実線△印は入力信号であり、点線で示すパスAが正解の状態遷移パスとする。入力信号は記録マークB1に基づいて生成されている。記録マークA1は理想的な始端エッジを有しているとする。図6(a)は、記録マークの始端エッジ位置が理想的な始端エッジ位置と比較して後ろにずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3、yk−2、yk−1、yk)を(4.2 、3.2 、1.2 、0.2)とし、(式2)および(式3)からパスAと入力信号との距離Paと、パスBと入力信号との距離Pbとは、(式7)および(式8)の様に求まる。
Pa=(4.2−4)2+(3.2−3)2+(1.2−1)2+(0.2−0)2
=0.16 (式7)
Pb=(4.2−5)2+(3.2−5)2+(1.2−3)2+(0.2−1)2
=7.76 (式8)
始端エッジのズレ量とズレ方向は、上述した|Pa−Pb|−Pstdを算出することで求めることができる。
E1=|Pa−Pb|−Pstd=|0.16−7.76|−10=−2.4 (式9)
(式9)から求まるE1の絶対値が、ズレ量であり、その符号がズレ方向である。すなわち、図6(a)の場合、E1=−2.4と検出できるため、2.4だけ始端エッジ位置が基準より後ろにずれていると判断できる。
【0055】
同様に、図6(b)は、記録マークB1の始端エッジ位置が理想的な始端エッジ位置と比較して、前にずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3 、yk−2 、yk−1 、yk)を(3.8 、2.8 、0.8 、−0.2)とし、E2(=|Pa−Pb|−Pstd)を算出すると、E2=2.4と算出することができる。よって、図6(b)の場合、2.4だけ始端エッジ位置が基準より前にずれていると判断できる。
【0056】
図7に、Pattern−1における再生波形と記録マークのズレとの相関を示す。図7では、パスBが正解の状態遷移パスとする。図7(a)は、記録マークの始端エッジが理想的な始端エッジと比較して後ろにずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3 、yk−2 、yk−1 、yk)を(5.2 、5.2 、3.2 、1.2)とし、E3(=|Pa−Pb|−Pstd)を算出すると、E3=2.4と算出することができる。よって、図7(a)の場合、2.4だけ始端エッジ位置が基準より後ろにずれていると判断できる。図7(b)は、記録マークの始端エッジ位置が理想的な始端エッジ位置と比較して、前にずれている場合である。入力信号のサンプル値(yk−3 、yk−2 、yk−1 、yk)を(4.8 、4.8 、2.8 、0.8)とし、E4(=|Pa−Pb|−Pstd)を算出すると、E4=−2.4と算出することができる。よって、図7(b)の場合、2.4だけ始端エッジ位置が基準より前にずれていると判断できる。図6のパスAが正解の場合と、図7のパスBが正解の場合では、記録マークの始端エッジのズレ方向を示す符号の表現が反対である。これは、正解パスおよびもう一つの候補パスそれぞれの期待値系列と、入力信号の系列との関係に依存する。図6(b)、図7(a)のように、入力信号の系列が、正解ではないパスの期待値系列との誤差を大きく持つ場合は、(数9)で算出される値は正の符号を持つ値となる。言い換えれば、入力信号の系列と、正解ではないパスの期待値系列との差が大となるほど、最尤復号では、エラーが発生しにくい状況であることを示す。この場合、(数9)では正符号の値として算出される。この特徴を考慮して、記録マークの始端エッジ位置のズレ方向を検出すればよい。Pattern−1において、パスAが正解の場合は、Pattern−1は、2Tスペースと4Tマーク以上の長さのマークとの組み合わせの始端エッジの検出時に用いられるパターンであり、パスBが正解の場合は、Pattern−1は、3Tスペースと3Tマーク以上の長さのマークとの組み合わせの始端エッジの検出時に用いられるパターンである。以上のような方法を用いて、各記録マークの始終端パターンごとの積算値または平均値を求め、エッジ位置のずれ量が0に近づくように記録パラメータを設定すれば、最尤復号方法に最適な記録制御が可能となる。
【0057】
ここで、記録パラメータの最適化について説明する。記録符号の最小極性反転間隔をm(本実施の形態では、m=2)とする。情報記録媒体上に形成されるマークの始端位置は、そのマーク直前のスペースの幅とそのマーク自身の幅に依存する。例えば、直前のスペース幅がmTから(m+b)Tである場合は、マークの始端位置は直前のスペース幅に依存する。直前のスペース幅が(m+b)Tより大きい場合は、マークの始端位置は直前のスペース幅に依存しない。自身のマーク幅がmTから(m+a)Tである場合は、マークの始端位置は自身のマーク幅に依存する。自身のマーク幅が(m+a)Tより大きい場合は、マークの始端位置は自身のマーク幅に依存しない。
【0058】
また情報記録媒体上に形成されるマークの終端位置は、マーク自身の幅と直後のスペースの幅に依存する。例えば、自身のマーク幅がmTから(m+a)Tである場合は、マークの終端位置は自身のマーク幅に依存する。自身のマーク幅が(m+a)Tより大きい場合は、マークの終端位置は自身のマーク幅に依存しない。また、後続のスペース幅がmTから(m+b)Tである場合は、マークの終端位置は後続のスペース幅に依存する。後続のスペース幅が(m+b)Tより大きい場合は、マークの終端位置は後続のスペース幅に依存しない。ただしa、bは0以上の整数であり、記録符号の最大極性反転はm+a、m+bよりも大きいとする。
【0059】
上記のようなマークの始端位置および終端位置の依存性を考えると、始端パラメータTsfpの最適化は、幅が(m+b)T以下のスペースが隣接しているマークについて行う必要がある。また、終端パラメータTelpの最適化は、幅が(m+a)T以下のマークについて行う必要がある。簡単のためにm=3、a=b=3とすると、単純には図8に示す32とおりの記録パターンに対応するパラメータの最適化が必要となる。図8において、例えば2Ts2Tmは、2Tマークの直前に2Tスペースが存在するパターンであることを意味する。
【0060】
図9は、図8に示す各記録パターン(すなわちエッジパターン)を、上記8パターン(Pattern−1〜Pattern−8)のうちどのパターンで検出を行うかを示したものである。例えば、図8の2Ts3Tmは、P3Aのパターンで、記録マークの始終端パターンに対応する信号のずれ量の検出を行うことを意味する。P3Aは、Pattern−3で、パスAが正解の状態遷移パスであるパターンを意味する。また、図8の3Ts3Tmは、P1Bまたは、P4Aのパターンでずれ量の検出を行うことを意味する。P1Bは、Pattern−1で、パスBが正解の状態遷移パスであるパターンを意味し、P4Aは、Pattern−4で、パスAが正解の状態遷移パスであるパターンを意味する。以上のことから、最尤復号に最適な記録パラメータを制御する方法とは、図9における記録マークの始終端パターンそれぞれに対応する信号のずれ量が、すべて0に近づくように、記録パラメータを変化させることである。
【0061】
図9において、2Ts2Tm(2Tマーク立ち上がりで、直前に2Tスペースがあるパターン)と、2Tm2Ts(2Tマーク立ち下がりで、直後に2Tスペースがあるパターン)は、上記8パターン(Pattern−1〜Pattern−8)では、検出不可であるため、他の方法でエッジシフト量を最適化する必要がある。しかし、2Ts2Tmと2Tm2Tsを含むパターンは、信頼性Pa−Pbの値が比較的大きいパターンであるため、上記8パターンには含まれていない。言い換えれば、2Ts2Tmと2Tm2Tsのエッジ部分は厳密に最適化しなくても、最尤復号においては、エラーが発生する可能性が低いと言える。そのため、ディスクごとに最適化するのではなく、適切な初期値を用いてもよい。2Ts2Tmと2Tm2Tsを最適化する場合は、再生信号の位相誤差の積算値が最小となるように最適化してもよい。
【0062】
図1に、本発明の実施の形態における記録再生装置100を示す。記録再生装置100は、上述した記録パラメータ最適化方法を実行する。
【0063】
記録再生装置100は、再生部101と、記録制御装置102と、記録部103とを備える。記録再生装置100には、情報記録媒体1が搭載される。情報記録媒体1は、光学的に情報の記録再生を行うための情報記録媒体であり、例えば光ディスクである。
【0064】
再生部101は、光ヘッド部2と、プリアンプ3と、AGC4と、波形等化器5と、A/D変換器6と、PLL回路7とを備える。再生部101は、情報記録媒体1から再生された情報を示すアナログ信号からデジタル信号を生成する。
【0065】
記録制御装置102は、整形部8と、最尤復号部9と、信頼性計算部10と、調整部104とを備える。調整部104は、パターン検出回路11と、エッジシフト検出回路12と、情報記録媒体コントローラ13とを備える。記録制御装置102は例えば半導体チップとして製造される。
【0066】
整形部8は例えばデジタルフィルタであり、再生部101が生成したデジタル信号を受け取ってデジタル信号が所定の等化特性を有するようにデジタル信号の波形を整形する。
【0067】
最尤復号部9は例えばビタビ復号回路であり、整形部8から出力された波形が整形されたデジタル信号を最尤復号し、最尤復号の結果を示す2値化信号を生成する。
【0068】
信頼性計算部10は例えば差分メトリック検出回路であり、整形部8から出力された波形が整形されたデジタル信号と最尤復号部9から出力された2値化信号とに基づいて最尤復号の結果の信頼性を計算する。本発明の一つの実施形態では、信頼性計算部10は、情報記録媒体1に形成された記録マークの始終端部に対応するデジタル信号および2値化信号に基づいて、最尤復号結果の信頼性を計算する。
【0069】
調整部104は、信頼性計算部10が計算した信頼性に基づいて、情報記録媒体1に情報を記録するための記録信号の所定部分の形状を調整する(例えば記録信号のエッジの位置を調整する)。調整部104は、最尤復号の結果の信頼性が高くなるように記録信号の形状を調整する。情報記録媒体コントローラ13は例えば光ディスクコントローラである。
【0070】
記録部103は、パターン発生回路14と、記録補償回路15と、レーザ駆動回路16と、光ヘッド部2とを備える。記録部103は、記録信号の形状の調整結果に基づいて情報記録媒体1に情報を記録する。本実施の形態では、光ヘッド部2は、再生部101および記録部103に共有され、記録ヘッドおよび再生ヘッドの両方の機能を有する。なお記録ヘッドと再生ヘッドとが別々に設けられてもよい。記録再生装置100の動作を以下により詳細に説明する。
【0071】
光学ヘッド部2は情報記録媒体1から読み出した情報を示すアナログ再生信号を生成する。アナログ再生信号は、プリアンプ3によって増幅されてACカップリングされたのち、AGC4に入力される。AGC4では後段の波形等化器5の出力が一定振幅となるようゲインが調整される。AGC4から出力されたアナログ再生信号は波形等化器5によって波形整形される。波形整形されたアナログ再生信号はA/D変換器6に出力される。A/D変換器6はPLL回路7から出力された再生クロックに同期してアナログ再生信号をサンプリングする。PLL回路7はA/D変換器6でサンプリングされたデジタル再生信号から再生クロックを抽出する。
【0072】
A/D変換器6のサンプリングにより生成されたデジタル再生信号は整形部8に入力される。整形部8は、記録時および再生時のデジタル再生信号の周波数特性が最尤復号部9の想定する特性(本実施の形態ではPR(1,2,2,1)等化特性)となるようにデジタル再生信号の周波数を調整する(すなわちデジタル再生信号の波形を整形する)。
【0073】
最尤復号部9は、整形部8から出力された波形整形されたデジタル再生信号を最尤復号し、2値化信号を生成する。信頼性計算部10は、整形部8から出力された波形整形されたデジタル再生信号と、2値化信号とを受け取る。信頼性計算部10は、2値化信号から状態遷移を判別し、判別結果とブランチメトリックから復号結果の信頼性を示す|Pa−Pb|−Pstd((数9)参照、以後、Pabsと表記する)を求める。パターン検出回路11は、2値化信号に基いて、上記8パターン(Patttern−1〜Pattern−8)を図9で示した記録マークの始終端エッジのパターンごとに割り当てるためのパルス信号を生成してエッジシフト検出回路12に出力する。エッジシフト検出回路12は上記信頼性Pabsをパターンごとに累積加算し、記録補償パラメータの最適値からのずれ(後述ではエッジシフトと言う)を求める。情報記録媒体コントローラ13はパターンごとのエッジシフト量から変更が必要と判断された記録パラメータ(記録信号の波形)を変更する。パターン発生回路14は、記録補償学習用パターンを出力する。
【0074】
記録補償回路15は情報記録媒体コントローラ13からの記録パラメータをもとに、記録補償学習パターンに従ってレーザ発光波形パターンを生成する。生成されたレーザ発光波形パターンにしたがって、レーザ駆動回路16は光学ヘッド部2のレーザ発光動作を制御する。
【0075】
次に、本発明の実施の形態におけるエッジシフト検出回路12の動作を詳細に説明する。図10にパターン検出回路11とエッジシフト検出回路12とを示す。エッジシフト検出回路12には、パターン検出回路11でのパターン検出結果と、信頼性計算部10で算出された信頼性Pabsとが入力される。パターン検出回路11での遅延を考慮して、入力される信頼性Pabsデータをフィリップフロップ(FF)によって遅延させる。パターン検出出力および検出出力点に対応する信頼性Pabsデータが加算器に入力され、同時にパターン検出結果がセレクタに入力される。セレクタは検出パターンにしたがってこれまでの累積加算結果を選択して加算器に入力する。加算器は累積加算結果と新しく入力された信頼性Pabsデータを加算し出力する。検出パターンに対応した特定のレジスタは、イネーブル信号を受け取ると、加算結果を格納する。
【0076】
例えばアドレス単位で情報が管理されている情報記録媒体に情報を記録する場合、図11(b)、(c)のような加算区間ゲート信号とレジスタイネーブル信号の使用が想定される。図11(a)はアドレスユニットを示している。アドレス単位ごとに、ユーザ領域にテスト記録を行い、エッジシフト量を求める場合、加算区間を定める制御が必要となる。図11(b)のような加算区間ゲート信号がエッジシフト検出回路12に入力されると、加算区間ゲート信号は、図10のように2段のフリップフロップを通過し、フリップフロップFF29〜FF0に入力される。図11(b)に示す加算区間ゲート信号のLow区間でフリップフロップをリセットし、High区間で加算結果を格納する。また、図11(c)のようなレジスタイネーブル信号は、加算区間ゲート信号から生成され、レジスタイネーブル信号は、加算区間ゲート信号の終端で加算結果をレジスタREG29〜REG0に格納するためのイネーブル信号である。アドレス単位ごとにエッジシフト量を示すデータがレジスタREG29〜REG0に格納される。エッジシフト検出回路12は、このような回路構成を備えることで、1つの加算器をもちいて記録パラメータの最適化に必要なすべてのエッジシフト量をもとめることができる。
【0077】
図10の回路例では、テスト記録に用いられる記録パターン(例えばランダムパターン)のうちの、パラメータの最適化に必要な所定長のマークとスペースとの組み合わせによって発生頻度が異なってしまう。検出された30のエッジシフト量(R23T、R33T、・・・、R45L、R55L)は各パターンの発生頻度に依存する。
【0078】
また、図1におけるPLL回路7では、DC成分(再生信号に含まれる低周波数成分)を用いてスライサーのしきい値を自動的に検出し、再生信号とクロック信号とを同期させている。従って、フィードバック制御がPLL回路7でのクロック生成に影響しないように、テスト記録パターンにはDC成分が少ないことが望まれる。また、最適化に要する時間と精度とを考えると、できるだけ少ない記録領域で高い精度の検出結果が望まれる。したがって記録パターン中にパラメータの最適化に必要なマークとスペースとの組み合わせが同一頻度で発生し、なおかつ符号に含まれるDC成分(DSV)が0となり、かつ最適化に必要な組み合わせの単位長あたりの発生頻度が高くなるような記録パターンが必要となる。このような記録パターンの一例を図12に示す。
【0079】
図12において、2Mは2Tマークを意味し、2Sは2Tスペースを意味する。図12の例では、2T〜5Tマークと2T〜5Tスペースとの組み合わせである30とおりのパターンが、108ビットの記録パターンに1回づつ発生する。また108ビットの記録パターンを含むシンボル‘0’とシンボル‘1’の数は同数の54であり、記録パターンのDSVは0となっている。この記録パターンを図10のエッジシフト検出回路12に適用すると、各パターンを同一回数検出することができ、より正確なシフト量検出結果が得られる。なお、本実施の形態では、5T以上の幅のマークあるいはスペースについては、同一の記録パラメータで記録できることを想定している。
【0080】
図13は、エッジシフト検出回路12の改変例を示す。図13に示すエッジシフト検出回路12aでは、テスト記録に用いられる記録パターンとして、ランダムパターン(最適化に必要な組み合わせパターンによって発生頻度が異なるパターン)を用いる。
【0081】
図13のエッジシフト検出回路12aでは、パターン検出回路11によって、図9で示した特定パターン(30パターン)のエッジを検出し、パターンそれぞれに対応するエッジシフト量とパターン検出回数とを個々に積算する。エッジシフト量の加算結果をパターン検出回数で割ることにより、特定パターン毎に平均エッジシフト量を算出する。これにより、特定パターン毎の発生確率が異なるテスト記録パターンを用いても、どのパターンに対応する記録マークの始終端位置を変更すべきか判断することができる。
【0082】
上述のように、調整部104が備えるエッジシフト検出回路12は、記録マーク長とスペース長との組み合わせ毎に、最尤復号結果の信頼性の積算値または平均値のうちの一方を計算し、それら計算した積算値または平均値に基づいて記録信号の形状を調整する。
【0083】
上記実施の形態では、最小極性反転間隔が2である記録符号と等化方式PR(1,2,2,1)とから定まる状態遷移則を用いて最尤復号部が最尤復号を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、最小極性反転間隔が3である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いた場合や、最小極性反転間隔が2または3である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いた場合や、最小極性反転間隔が2または3である記録符号と等化方式PR(C0,C1,C2,C1,C0)とから定まる状態遷移則を用いた場合においても適用できる。C0、C1、C2は任意の正の数である。
【0084】
最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a,b,a)とから定まる状態遷移則を表す状態遷移表を表3に示し、状態遷移図を図17に示す。ここで、a、bは任意の正の数である。
【0085】
【表3】
【0086】
また、最小極性反転間隔が2の記録符号と等化方式PR(a、b、c、b、a)とから定まる状態遷移則を表す状態遷移表を表4に示し、状態遷移図を図18に示す。ここで、a、b、cは任意の正の数である。
【0087】
【表4】
【0088】
本発明の実施の形態では、最尤復号部9は、表3、4および図17、18に示すような状態遷移則を用いた最尤復号を行ってもよい。
【0089】
なお、本実施の形態における記録パラメータは、記録マークのエッジの始終端の位置を制御するパラメータとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15で説明したマルチパルスを用いたレーザ発光を行う場合、先頭パルスの幅や、終端パルスの幅や、クーリングパルス幅を制御するパラメータを最尤復号結果の信頼性に基いて調整してもよい。
【0090】
また、本発明の記録再生装置100の各構成要素は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよい。例えば、整形部8、最尤復号部9、信頼性計算部10、調整部11のうちの少なくとも一つが実行する動作が、コンピュータにより実行可能なプログラムにより実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、波形が整形されたデジタル信号と最尤復号部が生成した2値化信号とに基づいて最尤復号の結果の信頼性を計算し、計算した信頼性に基づいて、情報記録媒体に情報を記録するための記録信号の形状を調整する。このことにより、最尤復号の結果の信頼性が高くなるように記録信号の形状を調整することができるので、最尤復号を行うときのエラーの発生確率を小さくすることができる。
【0092】
本発明では、最尤復号法を用いた信号の復号時にエラーの発生する確率が最小となるように、最尤復号法に最適な記録パラメータを設定する。記録マークのエッジの始終端部分に相当し、且つ最尤復号法においてエラーの発生確率が高い信号部分について、最尤復号の結果の信頼性の演算を行う。この演算は、所定のマーク長とスペース長との組み合わせ毎に行う。その演算結果からエッジシフト位置を最適化する記録パラメータを求め、求めた記録パラメータを反映した記録を行う。このように、最尤復号時にエラーの発生確率が高くなる信号部分の記録パラメータを最適化することで、リーダビリティを向上させることができる。
【0093】
このように本発明は、最尤復号法を用いた記録制御装置、記録再生装置および記録制御方法において特に有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 情報記録媒体
2 光学ヘッド部
3 プリアンプ
4 AGC
5 波形等化器
6 A/D変換器
7 PLL回路
8 整形部
9 最尤復号部
10 信頼性計算部
11 パターン検出回路
12 エッジシフト検出回路
13 情報記録媒体コントローラ
14 パターン発生回路
15 記録補償回路
16 レーザ駆動回路
20 コンパレータ
21 位相比較器
22 LPF
23 VCO
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻k−j(kは3以上の整数、jは2以上の整数)における第1状態Sk−jから時刻kにおける第2状態Skへと遷移するn(nは2以上の整数)通りの状態遷移列のうちから最も確からしい状態遷移列を選択する最尤復号方式によって再生信号の復号を行い、所定の記録媒体に記録されている記録マークの記録ずれを検出し、前記記録ずれにもとづいて記録制御を行う記録制御方法であって、
前記時刻k−jから時刻kまでの所定の期間jにおける前記n通りの状態遷移列を規定する前記第1状態Sk−jと前記第2状態Skとの所定の組み合わせのうち、前記記録マークのエッジ部分に相当する組み合わせをm(mはn以下の整数)通り検出する工程と、
前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、1つのとりうる確からしい第1の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを表す指標をPaとし、もう1つのとりうる確からしい第2の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを示す指標をPbとし、Pa=0となるときのPa−Pbの値を−Pstd、Pb=0となるときのPa−Pbの値をPstdとするとき、|Pa−Pb|―Pstdを算出する工程と、
前記記録マークの最短マーク長および前記記録マーク間の最短スペース長をxT(但し、xは1以上の整数、Tはクロック信号の周期)として表現するとき、
xT〜(x+c)Tのマーク長を有する記録マークと、前記記録マークの始端又は終端に隣接するxT〜(x+d)Tのスペース長を有するスペースとの組み合わせ(但し、cおよびdは0以上の任意の整数)である複数の組に分類し、前記分類された複数の組のそれぞれに対して、前記|Pa−Pb|―Pstdの算出結果に基づいて、前記マークの始端における記録ずれ又は前記マークの終端における記録ずれを算出する工程と、
前記マーク長とスペース長の組み合わせごとに算出された記録ずれ結果に基づいて、記録パラメータを調整する工程とを含み、
前記記録ずれを算出する工程において、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びxTのスペース長を含まず、xTのマーク長又はスペース長を含む場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、ある特定の一つの状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びスペース長を含まない場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、複数の所定の状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
xは2である、記録制御方法。
【請求項2】
時刻k−j(kは3以上の整数、jは2以上の整数)における第1状態Sk−jから時刻kにおける第2状態Skへと遷移するn(nは2以上の整数)通りの状態遷移列のうちから最も確からしい状態遷移列を選択する最尤復号方式によって再生信号の復号を行い、所定の記録媒体に記録されている記録マークの記録ずれを検出し、前記記録ずれを調整して記録を行う記録再生装置であって、
前記時刻k−jから時刻kまでの所定の期間jにおける前記n通りの状態遷移列を規定する前記第1状態Sk−jと前記第2状態Skとの所定の組み合わせのうち、前記記録マークのエッジ部分に相当する組み合わせをm(mはn以下の整数)通り検出する手段と、
前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、1つのとりうる確からしい第1の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを表す指標をPaとし、もう1つのとりうる確からしい第2の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを示す指標をPbとし、Pa=0となるときのPa−Pbの値を−Pstd、Pb=0となるときのPa−Pbの値をPstdとするとき、|Pa−Pb|―Pstdを算出する手段と、
前記記録マークの最短マーク長および前記記録マーク間の最短スペース長をxT(但し、xは1以上の整数、Tはクロック信号の周期)として表現するとき、
xT〜(x+c)Tのマーク長を有する記録マークと、前記記録マークの始端又は終端に隣接するxT〜(x+d)Tのスペース長を有するスペースとの組み合わせ(但し、cおよびdは0以上の任意の整数)である複数の組に分類し、前記分類された複数の組のそれぞれに対して、前記|Pa−Pb|―Pstdの算出結果に基づいて、前記マークの始端における記録ずれ又は前記マークの終端における記録ずれを算出する手段と、
前記マーク長とスペース長の組み合わせごとに算出された記録ずれ結果に基づいて、記録パラメータを調整する手段と、
前記調整された記録パラメータにもとづき、前記記録媒体に記録を行う手段と、を備え、
前記記録ずれを算出する手段において、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びxTのスペース長を含まず、xTのマーク長又はスペース長を含む場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、ある特定の一つの状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びスペース長を含まない場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、複数の所定の状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
xは2である記録再生装置。
【請求項3】
前記記録パラメータの調整は、前記|Pa−Pb|―Pstdが0に近づくように記録パラメータを調整する、請求項1に記載の記録制御方法、又は請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項1】
時刻k−j(kは3以上の整数、jは2以上の整数)における第1状態Sk−jから時刻kにおける第2状態Skへと遷移するn(nは2以上の整数)通りの状態遷移列のうちから最も確からしい状態遷移列を選択する最尤復号方式によって再生信号の復号を行い、所定の記録媒体に記録されている記録マークの記録ずれを検出し、前記記録ずれにもとづいて記録制御を行う記録制御方法であって、
前記時刻k−jから時刻kまでの所定の期間jにおける前記n通りの状態遷移列を規定する前記第1状態Sk−jと前記第2状態Skとの所定の組み合わせのうち、前記記録マークのエッジ部分に相当する組み合わせをm(mはn以下の整数)通り検出する工程と、
前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、1つのとりうる確からしい第1の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを表す指標をPaとし、もう1つのとりうる確からしい第2の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを示す指標をPbとし、Pa=0となるときのPa−Pbの値を−Pstd、Pb=0となるときのPa−Pbの値をPstdとするとき、|Pa−Pb|―Pstdを算出する工程と、
前記記録マークの最短マーク長および前記記録マーク間の最短スペース長をxT(但し、xは1以上の整数、Tはクロック信号の周期)として表現するとき、
xT〜(x+c)Tのマーク長を有する記録マークと、前記記録マークの始端又は終端に隣接するxT〜(x+d)Tのスペース長を有するスペースとの組み合わせ(但し、cおよびdは0以上の任意の整数)である複数の組に分類し、前記分類された複数の組のそれぞれに対して、前記|Pa−Pb|―Pstdの算出結果に基づいて、前記マークの始端における記録ずれ又は前記マークの終端における記録ずれを算出する工程と、
前記マーク長とスペース長の組み合わせごとに算出された記録ずれ結果に基づいて、記録パラメータを調整する工程とを含み、
前記記録ずれを算出する工程において、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びxTのスペース長を含まず、xTのマーク長又はスペース長を含む場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、ある特定の一つの状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びスペース長を含まない場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、複数の所定の状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
xは2である、記録制御方法。
【請求項2】
時刻k−j(kは3以上の整数、jは2以上の整数)における第1状態Sk−jから時刻kにおける第2状態Skへと遷移するn(nは2以上の整数)通りの状態遷移列のうちから最も確からしい状態遷移列を選択する最尤復号方式によって再生信号の復号を行い、所定の記録媒体に記録されている記録マークの記録ずれを検出し、前記記録ずれを調整して記録を行う記録再生装置であって、
前記時刻k−jから時刻kまでの所定の期間jにおける前記n通りの状態遷移列を規定する前記第1状態Sk−jと前記第2状態Skとの所定の組み合わせのうち、前記記録マークのエッジ部分に相当する組み合わせをm(mはn以下の整数)通り検出する手段と、
前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、1つのとりうる確からしい第1の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを表す指標をPaとし、もう1つのとりうる確からしい第2の状態遷移列の前記所定の期間jにおける状態遷移の確からしさを示す指標をPbとし、Pa=0となるときのPa−Pbの値を−Pstd、Pb=0となるときのPa−Pbの値をPstdとするとき、|Pa−Pb|―Pstdを算出する手段と、
前記記録マークの最短マーク長および前記記録マーク間の最短スペース長をxT(但し、xは1以上の整数、Tはクロック信号の周期)として表現するとき、
xT〜(x+c)Tのマーク長を有する記録マークと、前記記録マークの始端又は終端に隣接するxT〜(x+d)Tのスペース長を有するスペースとの組み合わせ(但し、cおよびdは0以上の任意の整数)である複数の組に分類し、前記分類された複数の組のそれぞれに対して、前記|Pa−Pb|―Pstdの算出結果に基づいて、前記マークの始端における記録ずれ又は前記マークの終端における記録ずれを算出する手段と、
前記マーク長とスペース長の組み合わせごとに算出された記録ずれ結果に基づいて、記録パラメータを調整する手段と、
前記調整された記録パラメータにもとづき、前記記録媒体に記録を行う手段と、を備え、
前記記録ずれを算出する手段において、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びxTのスペース長を含まず、xTのマーク長又はスペース長を含む場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、ある特定の一つの状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
前記分類された複数の組のうち、xTのマーク長及びスペース長を含まない場合は、前記検出されたm通りの状態遷移列のうち、複数の所定の状態遷移列における第1又は第2の状態遷移列を最も確からしい状態遷移列とみなして、前記記録ずれ結果を算出し、
xは2である記録再生装置。
【請求項3】
前記記録パラメータの調整は、前記|Pa−Pb|―Pstdが0に近づくように記録パラメータを調整する、請求項1に記載の記録制御方法、又は請求項2に記載の記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−272206(P2010−272206A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178161(P2010−178161)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2008−204692(P2008−204692)の分割
【原出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2008−204692(P2008−204692)の分割
【原出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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