説明

記録媒体の製造方法とそれによって用いる製造装置

【課題】本発明は、記録媒体の製造方法とそれによって用いる製造装置に関するもので、生産性を向上することを目的とするものである。
【解決手段】板状の記録媒体14を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体14の一面側から、この記録媒体14内に、参照光34を入射させるとともに、前記記録媒体14の他面側からこの記録媒体14内に、複数の信号光35,36,37を入射させる第二の工程とを有し、前記第二の工程において、前記複数の信号光35,36,37は、前記記録媒体14内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポット35a,36a,37aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ方向に、複数のホログラム層を多層状態で設けた記録媒体の製造方法とそれに用いる製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録容量を大きくするために、下記(特許文献1)に示すごとく、多層記録された記録媒体が提案されている。
【0003】
すなわち、下記(特許文献1)に示すものでは、図9(c)のごとく、円板状の記録媒体1内の厚さ方向に、ホログラム層2が多層状態で設けられているので、記録容量は極めて大きくなる。
【0004】
この(特許文献1)に示した従来例の特徴点は、マイクロホログラム3が渦巻状、または同心円状に配置されたホログラム層2を、記録媒体1内に、複数層設けているので、この記録媒体1への記録時でも、再生時でも、記録媒体1の片側から、そのマイクロホログラム3に向けて光を照射すれば良いという点である。
【0005】
すなわち、記録時には、記録媒体1の片側から、その記録部分のマイクロホログラム3に光を照射し、光学的な変質を起こさせ、マイクロホログラム3を消失させる部分と、光を照射せず、マイクロホログラム3を残存させる部分とを形成することで、デジタル的な記録を行うことができる。
【0006】
また、再生時にも、記録媒体1の片側から、マイクロホログラム3の消失部分と、マイクロホログラム3の残存部分に光を照射し、そこからの反射光を読み取れば、デジタル的な再生を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7388695号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例においては、下記の手順により記録媒体1を製造している。
【0009】
先ず、図6に示すように、マスターディスク4の一面側から(例えば上面から)、このマスターディスク4に向けて参照光5を入射させるとともに、このマスターディスク4の他面側から(例えば下面から)、このマスターディスク4に向けて信号光6を入射させ、マスターディスク4内にマイクロホログラム7を形成し、これによりマスターディスク4を完成させる。
【0010】
次に、図7に示すように、マスターディスク4に共役マスターディスク8を重合させ、その状態で図8(a)のごとく、共役マスターディスク8側から平行光9を入射させる。
【0011】
すると、図8(b)のごとく、マスターディスク4内のマイクロホログラム7からの反射光10が発生し、この反射光10と前記平行光9が共役マスターディスク8内で干渉することで、この共役マスターディスク8内にホログラム11が形成される。つまり、これにて共役マスターディスク8が完成する。
【0012】
その後、図9(a)に示すように、共役マスターディスク8に、まだブランクディスク状態の記録媒体1を重合させ、記録媒体1側から平行光12を入射させる。
【0013】
すると、図9(b)に示すように、ホログラム11からの反射光13が発生し、この反射光13と前記平行光12がブランクディスク状態の記録媒体1内で干渉することで、この記録媒体1内にマイクロホログラム3が形成される。つまり、記録媒体1が完成する。
【0014】
以上の説明で明らかなように、従来の記録媒体1の製造方法は、マスターディスク4と共役マスターディスク8を事前に形成しなければならないので、非常に手間のかかるもので、生産性が低いものであった。
【0015】
そこで、本発明は、記録媒体の生産性を向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そして、この目的を達成するために本発明は、板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、参照光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、複数の信号光を入射させる第二の工程とを有し、前記第二の工程において、前記複数の信号光は、前記記録媒体内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポットを形成すること記録媒体を製造するものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明は、板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、参照光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、複数の信号光を入射させる第二の工程とを有し、前記第二の工程において、前記複数の信号光は、前記記録媒体内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポットを形成するものであるので、マスターディスクや共役マスターディスクを作らなくても、記録媒体内の厚さ方向に、直接、複数のホログラム層を多層状態で形成することができ、極めて生産性の高いものになるのである。
【0018】
すなわち、本発明においては、前記第二の工程において、前記複数の信号光が、前記記録媒体内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポットを形成するようにしているので、マスターディスクや共役マスターディスクを作らなくても、記録媒体内の厚さ方向に、直接、複数のホログラム層を多層状態で形成することができ、その結果として極めて生産性の高いものになるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる記録媒体の製造装置を示す構成図
【図2】同要部拡大断面図
【図3】同記録媒体の要部拡大平面図
【図4】同記録媒体の製造装置の要部制御ブロック図
【図5】同製造装置により製造した記録媒体の斜視図
【図6】従来の製造方法を示す図
【図7】同製造方法を示す図
【図8】同製造方法を示す図
【図9】同製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1において、14は本発明の実施の形態1にかかる製造方法、および製造装置によって製造した記録媒体を示し、中心部分には、貫通孔15が形成されており、また内部には、断続的な渦巻状、または連続的な渦巻状のホログラム層16が多層状態で形成されている。
【0022】
以下、この記録媒体14の製造方法、および製造装置について、説明を行う。
【0023】
記録媒体14が定位置に図2のごとくセットされた状態では、記録媒体14の一面側には集光レンズ17、また記録媒体14の他面側には集光レンズ18が配置されている。
【0024】
また、集光レンズ18の前記記録媒体14とは反対側で、前記集光レンズの中心軸にはリレーレンズ19が配置され、さらにリレーレンズ19の両側方にはリレーレンズ20、21が配置されている。
【0025】
また、前記リレーレンズ19の集光レンズ18とは反対側に光変調素子22が配置され、前記リレーレンズ20の集光レンズ18とは反対側に光変調素子23が配置され、前記リレーレンズ21の集光レンズ18とは反対側に光変調素子24が配置されている。
【0026】
光変調素子22、23、24はON、OFFにより光強度を調整するためのものであり、その調整は変調信号生成器25により行われる。
【0027】
また、光変調素子23、24のリレーレンズ20、21とは反対側に、屈折プリズム26、27を配置している。
【0028】
さらに、屈折プリズム26、27の光変調素子23,24とは反対側に、回折素子28を配置しており、この回折素子28の前記屈折プリズム26、27とは反対側に分岐ミラー29を配置し、この分岐ミラー29の前記回折素子28とは反対側にコヒーレント光源30を配置している。
【0029】
つまり、本実施形態においては、このコヒーレント光源30からのコヒーレント光を集光レンズ17と、集光レンズ18を介して記録媒体14に供給する構成としているのである。
【0030】
なお、分岐ミラー29と集光レンズ17間には、反射板31、32、33が設けられている。
【0031】
本実施形態における特徴点は、以上の構成とすることにより、図3に示すごとく前記記録媒体14の一面側から、この記録媒体14内に、集光レンズ17を介して参照光34を入射させるとともに、前記記録媒体14の他面側からこの記録媒体14内に、複数の信号光35、36、37を入射させることである。
【0032】
この時、参照光34の光スポット位置34aは、図3からも理解されるように、前記記録媒体14の、他面側外としている。
【0033】
また、前記複数の信号光35、36、37の光スポット位置35a、36a、37aは、図3からも理解されるように、前記記録媒体14内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置となっている。
【0034】
さらに、これらの信号光35、36、37の光スポット位置35a、36a、37aは、前記記録媒体14内の、厚さ方向に直交する水平方向においても異ならせている。
【0035】
そして、この光スポット位置35a、36a、37aにおいて、参照光34と信号光35、36、37が干渉するので、ここに前記渦巻状のホログラム層16が形成されるのであるが、信号光35、36、37の光スポット位置35a、36a、37aが、上述のごとく前記記録媒体14内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置で、しかも厚さ方向に直交する水平方向においても異なるものとなっているので、この図3からも理解されるように、多層状態のホログラム層16を同時に形成することができ、生産性の高いものとなるのである。
【0036】
この製造装置について、さらに説明を加えると、記録媒体14は、図3の矢印38方向に一定速度で回転されている。
【0037】
この状態で、コヒーレント光源30から、波長が405nmのコヒーレント光を発射すると、分岐ミラー29で分岐され、一方は反射板31、32、33、集光レンズ17を介して、前記記録媒体14の一面側から、この記録媒体14内に、参照光34として入射される。
【0038】
また、分岐ミラー29で分岐された他方は、回折素子28で3方に回折され、その中心軸部分は、光変調素子22、リレーレンズ19、集光レンズ18を介し、信号光35として進行し、光スポット位置35aで前記渦巻状のホログラム層16を形成する。
【0039】
また、回折素子28で3方に回折されたもののうち、屈折プリズム26に向かったものは、屈折プリズム26で屈折し、光変調素子23、リレーレンズ20、集光レンズ18を介し、信号光36として進行し、光スポット位置36aで前記渦巻状のホログラム層16を形成する。
【0040】
さらに、回折素子28で3方に回折されたもののうち、屈折プリズム27に向かったものは、屈折プリズム27で屈折し、光変調素子24、リレーレンズ21、集光レンズ18を介し、信号光37として進行し、光スポット位置37aで前記渦巻状のホログラム層16を形成する。
【0041】
この時、記録媒体14は、図3の矢印38方向に一定速度で回転されているので、ホログラム層16は渦巻状になるのであるが、光変調素子22、23、24を変調信号生成器25によりON、OFFさせれば、図4のごとく、ホログラム層16に、マイクロホログラムが連続したデータ領域39と、位相差サンプルサーボマーク40を形成することができる。
【0042】
なお、図4における41は、再生時の光ビームスポットである。
【0043】
つまり、一般的には、隣接するホログラム層16を用いたトラッキング制御などを行うが、本実施形態では、一本のホログラム層16だけで、トラッキング制御などが行えるように、位相差サンプルサーボマーク40を形成したものである。
【0044】
図5はその制御ブロックを示しており、位相差サンプルサーボマーク40からの反射受光信号42が分割センサー43にて検出され、次の素子44では分割センサー43のa+c、素子45では分割センサー43のb+dが行われ、最終的に位相比較器46で位相が比較され、トラッキング制御を行うようになっているのである。
【0045】
さて、以上のようにして形成された記録媒体14内には渦巻状、または同心円状にホログラム層16が形成されているので、この記録媒体14への情報記録、および情報読み出しは次のようにして行われる。
【0046】
つまり、この記録媒体14を、記録再生装置(図示せず)に装着し、情報記録と、その後の再生を行うようになっている。
【0047】
具体的には、記録時は、記録再生用のレンズ(図示せず)で、例えば「デジタル信号の1」に相当する場所のホログラム層16部分に記録再生光(波長405nm)を収束し、その部分のマイクロホログラムを消失させる。逆に「デジタル信号の0」に相当する部分のマイクロホログラム部分には光を照射せず、これによりマイクロホログラムを残す。
【0048】
その後、記録した情報を再生する時には、波長405nmの記録再生光をレンズ(図示せず)を介してホログラム層16に照射し、そこからの反射光からデジタル信号の再生を行う。
【0049】
つまり、マイクロホログラムが消失した部分からは記録再生光の反射光はなく、マイクロホログラムが残った部分からは記録再生光の反射光がある状態となるので、この反射光の有無によりデジタル信号の再生を行うのである。
【0050】
なお、再生時には、記録媒体14が連続的に高速回転しており、しかも記録再生光の照射時間が極めて短時間であり、また照射パワーも記録時に比較して、非常に低く、よってホログラム層16の残っているマイクロホログラムが劣化することはない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように本発明は、板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、参照光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、複数の信号光を入射させる第二の工程とを有し、前記第二の工程において、前記複数の信号光は、前記記録媒体内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポットを形成するものであるので、マスターディスクや共役マスターディスクを作らなくても、記録媒体内の厚さ方向に、直接、複数のホログラム層を多層状態で形成することができ、極めて生産性の高いものになるのである。
【0052】
すなわち、本発明においては、前記第二の工程において、前記複数の信号光が、前記記録媒体内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポットを形成するようにしているので、マスターディスクや共役マスターディスクを作らなくても、記録媒体内の厚さ方向に、直接、複数のホログラム層を多層状態で形成することができ、その結果として極めて生産性の高いものになるのである。
【0053】
このため、記録媒体の製造方法およびそれによって製造される記録媒体として、広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0054】
14 記録媒体
15 貫通孔
16 ホログラム層
17,18 集光レンズ
19,20,21 リレーレンズ
22,23,24 光変調素子
25 変調信号生成器
26,27 屈折プリズム
28 回折素子
29 分岐ミラー
30 コヒーレント光源
31,32,33 反射板
34 参照光
35,36,37 信号光
35a,36a,37a 光スポット位置
38 矢印
39 データ領域
40 位相差サンプルサーボマーク
41 光ビームスポット
42 反射受光信号
43 分割センサー
44,45 素子
46 位相比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、参照光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、複数の信号光を入射させる第二の工程とを有し、前記第二の工程において、前記複数の信号光は、前記記録媒体内の、一面側と他面側間の厚さ方向の異なる位置に、光スポットを形成する記録媒体の製造方法。
【請求項2】
複数の信号光の光スポット位置を、前記記録媒体内の、厚さ方向に直交する水平方向においても異ならせた請求項1に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項3】
参照光の光スポット位置は、前記記録媒体の、他面側外とした請求項1、または2に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の記録媒体の製造方法に用いる製造装置であって、記録媒体の一面側に配置した第一の集光レンズと、前記記録媒体の他面側に配置した第二の集光レンズと、この第二の集光レンズの前記記録媒体とは反対側で、前記第二の集光レンズの中心軸に配置した第一のリレーレンズと、この第一のリレーレンズの側方に配置した第二のリレーレンズと、前記第一のリレーレンズの第二の集光レンズとは反対側に配置した第一の光変調素子と、前記第二のリレーレンズの第二の集光レンズとは反対側に配置した第二の光変調素子とを備えた記録媒体の製造装置。
【請求項5】
第二の光変調素子の第二のリレーレンズとは反対側に、屈折プリズムを配置した請求項4に記載の記録媒体の製造装置。
【請求項6】
屈折プリズムの第二の光変調素子とは反対側に、回折素子を配置し、この回折素子の前記屈折プリズムとは反対側に分岐ミラーを配置し、この分岐ミラーの前記回折素子とは反対側にコヒーレント光源を配置し、このコヒーレント光源からのコヒーレント光を第一の集光レンズと、第二の集光レンズを介して記録媒体に供給する構成とした請求項5に記載の記録媒体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−210325(P2011−210325A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78458(P2010−78458)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】