説明

記録方法、記録装置の制御方法および記録装置

【課題】 記録紙の終端まで無駄なく印刷することができるとともに、記録が終了する前に記録紙の終端に達して途中で印刷が途切れる不都合を無くすことができる記録方法、記録装置の制御方法および記録装置を提供する。
【解決手段】 印刷データによる記録紙100の印刷使用量L2+L3が記録紙100の残量L1を超える場合に、記録紙の送り出し搬送を行うことにより記録紙の印刷可能量L5を測定する。印刷使用量が印刷可能量より大きくないときは記録紙を巻き戻して印刷を実行し、印刷使用量が印刷可能量より大きいときは途中まで印刷するか印刷を中止するかの処理を選択した後で印刷を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に画像を形成する記録方法、記録装置の制御方法および記録装置に関し、特に、ロール状に巻かれた記録紙に記録を行う際に好適に適用可能な記録方法、記録装置の制御方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は、画像情報に基づいて記録ヘッドにより記録紙に画像を形成する装置である。記録紙としては、紙の他、プラスチックシート、写真調印画紙あるいは布など種々の材質のシートが使用される。記録装置は、記録ヘッドの記録方式により、インクジェット式、熱転写式、レーザービーム式などに分類することができる。
【0003】
記録装置においては、ロール状に巻かれた記録紙(いわゆるロール紙)を用いる構成のものが普及している。この種の記録装置は、記録紙の取り扱いが簡便であり、記録紙のサイズに対して装置を小型にできることから、大きな画像を印刷する大判プリンタとして好適である。また、大判プリンタの普及に伴ない、様々な種類のロール紙が記録に使われるようになった。ロール紙に印刷する記録装置では、特に記録紙の終端における印刷不良を回避したり、記録紙の無駄を低減するために、ロール紙の残量を管理することが要請されている。
【0004】
ロール紙の残量管理の方法として、特許文献1および特許文献2には、ロール状記録媒体の重量や直径を検知して残量を算出する方法が開示されている。また、特許文献3には、ロール状記録紙を保持・格納するところのカートリッジにEEPROMを設け、残量を記憶させて残量管理を行う方法が開示されている。ここでは、EEPROMに残量初期値としての固定値(例えば100m)を書き込むとともに使用量をその都度減算していく方法が採られている。さらに、特許文献4には、ロール状記録紙を保持・格納するところのペーパーマガジンにID情報を記憶し、プリンタ側に残量をIDに対応して記憶することで残量管理をする方法が開示されている。ここでは、残量の初期値は、予め分かっているものを用いるか、巻き直して長さを測定する方法で設定している。
【0005】
【特許文献1】特開平06−115789号公報
【特許文献2】特開平08−113402号公報
【特許文献3】特開平10−254200号公報
【特許文献4】特開2000−169012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ロール状記録紙を用いることには記録成果物(印刷物)を効率的に束ねて装置内に収容できるという利点がある。しかし、従来のロール紙の残量管理では、残りのロール紙の終端までの長さに誤差を生じる可能性があった。例えば、ロール紙の長さを30メートルとして管理しても、実際の長さが29.9メートルである場合、0.1メートルの誤差が生じてしまう。逆に、実際には残量があるのに(例えば実際の長さが30.3メートル)、残量が無いと判断することもある。
【0007】
従って、ロール紙の残量を管理するだけでは、次のような印刷不良が発生していた。すなわち、前述したようにロール紙の残りの長さが正確には掴めないため、実際には残量があるのに記録紙が無くなったと判断して印刷が行われないことがある。逆に、残量が足りないのに印刷を実行した結果、印刷途中で記録紙が無くなってしまい、印刷が途切れるなどの不都合が生じる。
【0008】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、記録紙の終端まで無駄なく印刷することができるとともに、記録が終了する前に記録紙の終端に達して途中で印刷が途切れる不都合を無くすことができる記録方法、記録装置の制御方法および記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、記録紙に画像を形成する記録方法において、印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の残量を超える場合に、記録紙の送り出し搬送を行うことにより記録紙の印刷可能量を測定し、前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きくないときは、記録紙を巻き戻して印刷を実行し、前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときは、処理を選択した後で印刷を実行することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、記録紙に画像を形成する記録装置の制御方法において、記録紙の残量を推定する残量推定ステップと、印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の前記残量を超えるか否かを判定する判定ステップと、前記印刷使用量が前記残量より大きいときに記録紙の印刷可能量を測定する測定ステップと、前記印刷可能量と前記印刷使用量とを比較する比較ステップと、前記印刷可能量と前記印刷使用量との比較の結果に基づいて動作を切り換える切換ステップとを備え、前記比較ステップで前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きくないときは、印刷データに基づいて記録を行う動作へ切り換え、前記比較ステップで前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときは、別の処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、記録紙に画像を形成する記録装置において、記録紙の残量を推定する残量推定手段と、印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の前記残量を超えるか否かを判定する判定手段と、記録紙の印刷可能量を測定する測定手段と、前記印刷可能量と前記印刷使用量を比較する比較手段と、前記印刷可能量と前記印刷使用量との比較の結果に基づいて動作を切り換える切換手段と、を備え、前記判定手段で記録紙の前記印刷使用量が記録紙の前記残量より大きい場合に前記測定手段で記録紙の前記印刷可能量を測定し、前記比較手段で前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きくないときは、前記切換手段により前記印刷データに基づいて印刷を行う動作へ切り換え、前記比較手段で前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときは、別の処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録紙の終端まで無駄なく印刷することができるとともに、記録が終了する前に記録紙の終端に達して途中で印刷が途切れる不都合を無くすことができる記録方法、記録装置の制御方法および記録装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は一実施形態に係る記録装置の斜視図である。図2は図1の記録装置においてアッパーカバーを開けて画像形成図を透視した斜視図である。図3は一実施形態に係る記録装置の記録紙の搬送系の縦断面図である。本実施形態では、記録装置がインクジェット記録装置である場合を例に挙げて説明する。記録装置2は、記録装置本体200をスタンド300上に装着して構成され、スタンド300には装置本体200から排出された記録紙を積載するためのスタッカ400が取り付けられている。装置本体200の前面には記録紙を手差しで給紙するための手差し挿入口201が設けられており、その下側には前面で開閉可能ロール紙カセット202が設けられている。手差し挿入口201からの手差し給紙、もしくはロール紙カセット202からの自動給紙により給紙された記録紙は、図3に示す搬送系により、記録ヘッド11を用いて印刷する画像形成部へ給送される。
【0014】
装置本体200の上面には、内部へアクセスするための開閉可能なアッパーカバー203が設けられている。また、装置本体200の右側には、操作パネル12およびインク供給ユニット8(インクタンクを含む)が装備されている。装置本体200の内部には、記録紙を副走査方向へ搬送するための搬送手段を構成する搬送ローラ204と、記録ヘッド11を搭載して搬送方向と交差する主走査方向(矢印Aの方向)へ往復移動するキャリッジ4と、が配設されている。キャリッジ4は、ガイドシャフト51に沿って移動可能に案内支持されるとともに、不図示のキャリッジモータによりタイミングベルト205を介して駆動される。記録ヘッド11と対向する位置には、印刷中の記録紙を支持するためのプラテン104が配されている。これら、キャリッジ4に搭載された記録ヘッド11およびプラテン104により、画像形成部が構成されている。
【0015】
インクジェット式の記録ヘッド11に対しては、インク供給ユニット8から各色のインクが供給され、画像情報(印刷データ)に基づいて記録ヘッド11の吐出口から記録紙へインクを吐出することにより、画像が形成される。ロール紙カセット202から給紙された記録紙は、搬送ローラ204によりUターン搬送され、画像形成部において記録ヘッド11により記録された後、装置本体200の前面から排出される。ロール状の記録紙の場合は、排出された後、装置本体200の下方に配されたスタッカ400上に積載される。また、装置本体200の内部には、記録ヘッド11の吐出口の目詰まりなどに起因するインク吐出不良を解消させるための回復ユニット9が配設されている。回復ユニット9は、吐出口を覆うキャップ、吐出口面を払拭するワイパー、並びにキャップに接続された吸引ポンプなどを備えている。吸引ポンプは、吐出口からインクを吸引することで記録ヘッド内のインクをリフレッシュさせたり、キャップ内に空吐出されたインクを吸引したりするために使用される。
【0016】
次に、図2および図3を用いて、装置本体200内を通して記録紙100を搬送する搬送系7の構成および動作について説明する。ロール紙カセット202の内部は、紙管に巻かれた記録紙(ロール紙)100が固定されたロール紙ホルダ107を、ロール紙カセット202内に回転可能に軸支するように構成されている。ロール紙ホルダ107の一端部は、不図示のクラッチを介して、タイミングベルト102bに連結されている。回転可能に支持されたロール紙100の先端部は、ユーザーの操作により、搬送ガイド108で形成された搬送経路を通過させた後、搬送ローラ(LFローラ)105とピンチローラ103とのニップまで誘導される。この場合、ロール紙ホルダ107のクラッチは解除されており、ユーザーはロール紙の誘導およびセットを容易に行うことができる。
【0017】
また、印刷などに際してロール紙100を送り出すときは、ロール紙ホルダ107のクラッチが解除されているため、ロール紙ホルダ107が自由に回転し、ロール紙は搬送ローラ204によりスムーズに搬送される。一方、ロール紙100を巻き戻すときは、ロール紙ホルダ107のクラッチがクラッチオン(結合)の状態にされる。そこで、搬送ローラ204を逆回転させることにより、ギアホイール106およびタイミングベルト102bを介して、クラッチにより結合されたロール紙ホルダ107を逆回転させ、ロール紙100をロール紙ホルダ107上に巻き取っていく。
【0018】
搬送ローラ204は、タイミングベルト102aおよびモータプーリ110を介して、装置本体200に装着された搬送モータ101に連結されている。搬送ローラ204には、エンコーダホイール112、第1のギアホイール(不図示)および第2のギアホイール(不図示)が設けられている。第1のギアホイールは、タイミングベルト102aからの動力を受ける。第2のギアホイールは、ロール紙ホルダ107を回転させる動力をギアホイール106に伝達する。エンコーダホイール112に印刷等で円周方向に一定間隔ごとに形成されたパターンを、エンコーダセンサ111で読み取ることにより、搬送ローラ204の回転量(従って記録紙100の搬送量)を検出することができる。
【0019】
図4は一実施形態に係る記録装置の制御系のブロック図である。図5は一実施形態に係る記録装置における記録紙の残量および印刷使用量に基づく動作のフローチャートである。エンコーダセンサ111およびエンコーダホイール112により検出された搬送量(搬送ローラ204の回転量)は装置本体の制御ユニット20へ伝達される。搬送ローラ204とピンチローラ103のニップまで誘導された記録紙(ロール紙)100は、搬送モータ101の駆動(搬送ローラ204の回転)により搬送される。装置本体200の制御ユニット20は、エンコーダセンサ111からの信号(回転量)をI/O制御部&ドライバ部26(図4)でカウントしながら、シーケンス制御部21(図4)内のCPU34(図4)により搬送モータ101を制御する。これにより、ロール紙100を所定量だけ正確に搬送することができる。
【0020】
記録装置は、ロール紙100のプラテン104における正確な搬送と、キャリッジ4の移動(主走査)に同期した記録ヘッド11からのインク吐出とを交互に繰り返すことにより、記録紙に印刷していく。このとき、パソコン1(図4)等から送られてきた画像データに基づいて印刷していく。印刷に使用した記録紙(ロール紙)の搬送量は、シーケンス制御部21(図4)で計算され、RAM32およびEEPROM33(図4)に記憶される。また、シーケンス制御部21は、予め記憶されたロール紙の量から、搬送した量や印刷に使用した量などを減算することで、残量を逐次計算して記憶する。搬送系7には、記録紙100の終端を検知するための終端検知センサ109が設けられている。終端検知センサ109の位置から、搬送手段を構成する搬送ローラ204とピンチローラ103のニップ(挟持位置)までの距離は、予め判っている既定値であり、ROM31に記憶されている。
【0021】
次に、図4を用いて、本実施形態に係る記録装置の制御系について説明する。パソコン(PC)1は、印字する画像データやコマンド等を記録装置2に供給する。記録装置2は、パソコン1からの画像データやコマンド、パラメータ、画像処理LUT(ルックアップテーブル)等を受信し、受信した画像データをコマンドやパラメータ、画像処理LUTに応じて記録紙に記録する。パソコン1はキーボードやディスプレイを有する一般的なものである。パソコン1は、アプリケーションソフトや記録装置2のためのプリンタドライバやRIP(Raster Image Processor)等の専用プリンタ制御ソフトにより、ユーザーとのインターフェースを実現している。
【0022】
記録装置2は、記録装置2の全体を制御するための制御ユニット20、記録ヘッド11を搭載したキャリッジ4、および、キャリッジ4を主走査方向に往復移動させるキャリッジ駆動系6を備えている。また、記録装置2は、記録紙を副走査(搬送)方向に移動させる搬送系7、記録ヘッド11へインクを供給するインク供給ユニット8、および、記録ヘッド11のインク吐出性能を維持回復するための回復ユニット9を備えている。さらに、記録装置2は、記録ヘッド11の電源や制御ユニット3の電源や各ユニットの電源を供給する電源ユニット10、および、キースイッチや液晶ディスプレイ等を有する操作パネル部12などを備えている。回復ユニット9には、吐出口をキャッピングするキャップ、記録ヘッド11の吐出面をクリーニングするワイパー、および、吐出口からインクを吸引する吸引ポンプなどが設けられている。
【0023】
キャリッジ4は、記録ヘッド11を着脱できる機構、電気的接点やインク供給チューブ等のジョイント部、および、キャリッジ駆動系6との接続部などを備え、ガイドシャフト等のレール51等により案内支持されている。キャリッジ4は、不図示のタイミングベルト205等でキャリッジモータ(不図)に接続され、モータの正逆回転により往復移動する。また、キャリッジ4にはエンコーダセンサが搭載されており、キャリッジ移動方向に張架されたリニアスケールを読み取ることにより、記録ヘッド11の位置や移動速度を検出したり、制御したりする。また、キャリッジ4には、記録紙の有無やサイズを検知するためのメディア検知センサも搭載されている。
【0024】
搬送系7は、搬送モータ101とロータリーエンコーダ111、112により搬送ローラ204の回転を制御することにより、記録紙の送り出しおよび巻き戻しを行う搬送手段を備えている。つまり、搬送系7は、搬送ローラ204による正逆方向の搬送量を制御することで、記録紙100の送り出し量および巻き戻し量を制御する搬送手段を備えている。インク供給ユニット8は、記録ヘッド11とインクタンクをインクチューブで接続することでインクを供給し、記録ヘッド11やインクタンクを交換するときにインクチューブの途中に設けられた弁機構を閉じることで、インク漏れを防止している。なお、位置センサであるフォトインタラプタを使用して弁の開閉状態を検知したり、その検知結果に基づいてモータ駆動により弁機構を開閉するなどの制御動作も行われる。
【0025】
回復ユニット9には、ワイピング機構、キャッピング機構および吸引ポンプなどを駆動するモータを備え、その駆動伝達機構や各メカニカル機構の状態を検出する位置センサを備えている。そして、記録動作の状態や位置センサの検出結果等に基づいて各機構の制御が行われる。電源ユニット10は、ACスイッチや操作パネル部12のソフトスイッチ等でオンオフされ、制御ユニット20にロジック電源として電圧3.3Vや5Vを供給する。また、制御ユニット20内のI/O制御部&ドライバ部26経由して、各ユニットのアクチュエータ(モータ等)に電圧24Vの電源を供給する。さらに、記録ヘッド11に対し、制御ユニット20内のヘッド電源制御部(不図示)を介して所定電圧値の電源を供給している。
【0026】
制御ユニット20は、機能的に、I/F部22、シーケンス制御部21、画像処理部23、タイミング制御部24、ヘッド駆動部25およびI/O制御部&ドライバ部26などを備えている。シーケンス制御部21は、パソコン1とのインターフェースを行うI/F部22や全体の制御動作を管理する。画像処理部23は、画像情報から印刷データへの変換処理を行う。タイミング制御部24は、印刷データを記録装置2の動作に合わせてタイミング調整する。ヘッド駆動部25は、記録ヘッド11の駆動データや駆動パルスや駆動電圧等を制御する。I/O制御部&ドライバ部26は、記録装置2の内部ユニットのセンサやアクチュエータ(モータ等)とのインターフェースや駆動を行う。
【0027】
制御ユニット20は物理的には電気基板である。シーケンス制御部21はマイクロプロセッサ等のCPU31や、CPU31の制御用プログラムや各種データを記憶しているROM31を備えている。さらに、CPU31のワークエリアとして使用され各種データを記憶するRAM32や、シーケンス制御に必要なデータをパラメータとして記憶するEEPROM33なども備えている。画像処理部23、タイミング制御部24およびヘッド駆動部25は、主にASICとメモリで構成されている。また、I/O制御部&ドライバ部26は汎用LSIやトランジスタ等の電気回路で構成されている。
【0028】
画像処理部23は、パソコンからの画像データを記録装置2のインク色に色変換し、2値のインク色印刷データに変換する機能を有する。タイミング制御部24は、画像処理部23で処理された印刷データを記録ヘッド11の複数の吐出口の一定の順番に変換する機能を有する。また、記録ヘッド11の位置や移動方向等に応じて各インク色の印刷データごとに制御し、各インク色の記録画像がずれないように調整する機能も有する。ヘッド制御部25は、タイミング制御部24からの印刷データに基づいて、記録ヘッド11の駆動データに合わせた信号を生成し、シーケンス制御部21の制御により駆動信号を生成する。そして、これら信号を記録ヘッド11へ送付する。記録ヘッド11は、ヘッド制御部25からの信号によって駆動され、インクを吐出することで画像を形成する。I/O制御部&ドライバ部26は、シーケンス制御部21によってタイミング制御された信号で駆動され、制御ユニット20に接続されている各ユニット6、7、8、9、10、12を駆動制御する。
【0029】
次に、本実施形態に係る記録装置において、前述の搬送系を用いて記録を行うときの制御動作について説明する。図5において、ステップS101で、記録紙としてのロール紙100をロール紙ホルダ107に装着し、これを新規の記録紙としてロール紙カセット202にセットする。この新規の記録紙は、未使用の新品のロール紙および途中まで使用した既使用のロール紙のいずれでも良い。次いで、ステップS102で、セットしたロール紙100の残量(長さ)を操作パネル12から入力する。未使用(新品)の場合は新しい固定値が入力されるが、使用途中のロール紙の場合はRAM32やEEPROM33に記憶されている現時点での残量値(使用量を減算した値)が入力される。入力された長さは、記録紙100の推定残量L1として、装置本体200内のRAM32およびEEPROM33に記憶される。RAM32およびEEPROM33は、記録紙の初期量を設定する初期設定量手段と記録紙の使用量を管理する使用量管理手段とを構成している。EEPROM33を使用するのは、記録装置2の電源が切られてもデータを保持するためである。これにより、記録装置2は印刷可能な状態となり、印刷データ待ちとなる。また、ステップS102は、記録紙100の残量を推定する残量推定ステップを実行する残量推定手段を構成している。
【0030】
次いで、ステップS103で、ホストコンピュータ1から送信されてきた印刷データを受信し、印刷データから印刷ジョブの印刷長L2を確認する。このとき、印刷長L2の他に、余白長さやオートカット幅などの付随使用量L3なども必要に応じて加える。これは、実際の印刷に使用する長さを正確に割り出すためである。これにより印刷使用量L2+L3を求める。次いで、ステップS104で、ロール紙の推定残量L1と印刷使用量L2+L3とを比較する。印刷使用量の長さが推定残量の長さより大きくない(L1>L2+L3)場合はステップS105へ進み、印刷使用量の長さが推定残量の長さより大きい(L1<L2+L3)場合はステップS107へ進む。ステップS104は、印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の残量を超えるか否かを判定する判定ステップを実行する判定手段を構成している。
【0031】
ステップS105では、印刷データに基づいて、記録紙100の搬送と記録ヘッド11の主走査を交互に繰り返して印刷(画像記録)を実行する。記録装置2は、エンコーダセンサ111の信号をカウントし、搬送ローラ204の回転量からロール紙100の使用量L4を算出し、これを使用量管理手段としてのRAM32に記憶させる。印刷が終了したら、ステップS106へ進み、印刷前の残量L1から、実際に使用した記録紙の使用量L4を減算することにより、新たな推定残量L1を算出する。この新たな推定残量L1を、初期設定量手段および使用量管理手段としてのRAM32およびEEPROM33に記憶させる。そして、次の印刷データ待ちとなるため、ステップS103へ戻る。
【0032】
前述のように、ロール紙100の終端は終端検知手段としての終端検知センサ109(図3)により検知される。ここで、センサ109による終端検知位置から搬送ローラ204およびピンチローラ103の接点(ニップ)までの距離は予め解っている既定値であり、ROM31に記憶されている。そして、予め記憶されたロール紙の量(残量)から、搬送した量や印刷に使用した量などを減算することにより新たな残量(現時点の残量)を計算することができ、この残量も逐次ROM31に記憶される。
【0033】
次に、ステップS104で、印刷使用量L2+L3が推定残量L1より大きいと判定された場合の制御動作について説明する。印刷使用量L2+L3>推定残量L1の場合は、ステップS107へ進み、印刷使用量L2+L3の長さ分の記録紙100の送り出しを実行するとともに、実際の送り出し量をカウントする。ステップS107は、記録紙の実際の残量である印刷可能量L5を測定する測定ステップを実行する測定手段を構成している。つまり、ステップS104で記録紙の印刷使用量L2+L3が記録紙の推定残量L1より大きい場合に、ステップS107で記録紙の印刷可能量L5を測定する。そして、ステップS108へ進み、ステップS107の送り出し中に、終端検知センサ109により記録紙(ロール紙)100の終端検出を行う。つまり、本実施形態では、印刷可能量L5の測定は、記録紙を送り出して終端を検知するまでの記録紙の長さを測定することにより行われる。記録紙100の終端が検出されない場合はステップS109へ進み、終端が検出された場合はステップS110へ進む。ステップS108は、印刷可能量L5と印刷使用量L2+L3を比較する比較ステップを実行する比較手段を構成している。
【0034】
終端が検出されない場合は、ステップS109で、記録紙100の送り出しを中止し、ロール紙ホルダ107のクラッチをオンにして搬送モータ101を逆転駆動することにより、搬送ローラ204を逆転させる。すると、ギアホイール106およびタイミングベルト102bを介してロール紙ホルダ107が巻き戻し方向に回転駆動される。これにより、送り出されていた記録紙100は、搬送ローラ204に連動して紙管上に巻回されていく。所定量の巻き戻しを終了したところでクラッチをオフにし、そして、ステップS105へ進んで記録紙100に対する印刷を実行する。ステップS109は、印刷可能量L5と印刷使用量L2+L3との比較の結果に基づいて動作を切り換える切換ステップを実行する切換手段を構成している。つまり、ステップS108で印刷使用量L2+L3が印刷可能量L5より大きくないときは、ステップS109で印刷データに基づいて印刷を行う動作(ステップS105)へ切り換える。一方、ステップS108で印刷使用量L2+L3が印刷可能量L5より大きいときは、後述するステップS111およびステップS112で選択した処理(別の処理)を行うように、動作を切り換える。
【0035】
ここで、ステップS109の巻き戻しにおける記録紙100の位置検知の確認について説明する。巻き戻しを開始する時に、キャリッジ4に搭載されているメディア検知センサにより、記録紙100の左右のどちらかの側端部を検出する。そして、巻き戻しの終了時に同じ側端部の位置を検出する。このとき、側端部の位置に変化が無ければ、正しく搬送されていることになり、印刷しても問題がないので、そのまま次のステップ(本実施形態のステップS105)へ進む。一方、記録紙の側端部の位置が巻き戻し開始時と巻き戻し終了時とで変化している場合は、記録紙の位置を修正した後に次のステップへ進む。
【0036】
ステップS108で記録紙100の終端が検出された場合はステップS110へ進み、送り出しを中止して残量を表示する。印刷可能量L5の測定は、記録紙を送り出して終端を検知するまでの記録紙の長さを測定することにより行われる。そして、終端の位置までの実際の送り出し量に基づいて記録紙の残量(使用可能量)L5を検出(測定)し、この実際の残量に基づく使用可能量L5を操作パネル12に表示する。次いでステップS111へ進み、次に実行する処理を選択するための待機状態に入り、処理処方が入力されたところでステップS112へ進む。ステップS112では、オペレータ(ユーザー)が印刷の要否の選択し、不要の場合は印刷中止を入力する。
【0037】
記録紙の実際残量L5が不足していても印刷を続行する処理ことを選択した場合は、ステップS113でステップS109と同様の巻き戻しを実行した後、ステップS114で記録紙100が無くなるまで印刷する。そして、印刷を一時中止し、ステップS115で記録紙を排出した後、ステップS101へ戻り、新規の(別の)記録紙がセットされたところで印刷を再開するという一連の処理を行う。一方、ステップS112で印刷中止を選択した場合は、ステップS116へ進んで記録紙を送り出して排出し、ステップS101へ戻り、新規の(別の)記録紙がセットされたところで印刷を再開するという一連の処理を行う。つまり、本実施形態では、印刷使用量L2+L3が印刷可能量L5より大きいときに選択して行う別の処理の1つは、記録装置で可能な範囲まで印刷を実行して記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理である。そして、別の処理の他の1つは、記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理である。
【0038】
なお、以上の実施形態では、記録装置が往復移動するキャリッジに搭載した記録ヘッドで記録を行うシリアルタイプである場合を例に挙げたが、本発明は、紙送りのみで1ラインずつ一括して記録を行うラインタイプ記録装置にも同様に適用可能である。また、以上の実施形態では、インクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、熱転写式、感熱式、レーザービーム式、ワイヤドット式など、他の記録方式の記録装置にも同様に適用可能である。さらに、本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の単体の画像形成装置の他、複合機器やシステム構成などにおける記録装置に対しても同様に適用可能である。また、本発明は、記録紙として、紙、プラスチックシート、写真調印画紙、布など、種々の材質を使用する場合にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一実施形態に係る記録装置の斜視図である。
【図2】図1の記録装置においてアッパーカバーを開けて画像形成図を透視した斜視図である。
【図3】一実施形態に係る記録装置の記録紙の搬送系の縦断面図である。
【図4】一実施形態に係る記録装置の制御系のブロック図である。
【図5】一実施形態に係る記録装置における記録紙の残量および印刷使用量に基づく動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
2 記録装置
4 キャリッジ
11 記録ヘッド
12 操作パネル
20 制御ユニット
100 記録紙(ロール紙)
107 ロール紙ホルダ
109 終端検知手段(終端検知センサ)
200 装置本体(記録装置)
202 ロール紙カセット
204 搬送ローラ(搬送手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に画像を形成する記録方法において、
印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の残量を超える場合に、記録紙の送り出し搬送を行うことにより記録紙の印刷可能量を測定し、
前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きくないときは、記録紙を巻き戻して印刷を実行し、
前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときは、処理を選択した後で印刷を実行することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記印刷可能量の測定は、記録紙を送り出して終端を検知するまでの記録紙の長さを測定することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記処理の1つは、記録装置で可能な範囲まで印刷を実行して記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記処理の1つは、記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録方法。
【請求項5】
記録紙に画像を形成する記録装置の制御方法において、
記録紙の残量を推定する残量推定ステップと、
印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の前記残量を超えるか否かを判定する判定ステップと、
前記印刷使用量が前記残量より大きいときに記録紙の印刷可能量を測定する測定ステップと、
前記印刷可能量と前記印刷使用量とを比較する比較ステップと、
前記印刷可能量と前記印刷使用量との比較の結果に基づいて動作を切り換える切換ステップとを備え、
前記比較ステップで前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きくないときは、印刷データに基づいて記録を行う動作へ切り換え、
前記比較ステップで前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときは、別の処理を行うことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項6】
前記印刷可能量の測定は、記録紙を送り出して終端を検知するまでの記録紙の長さを測定することにより行うことを特徴とする請求項5に記載の記録装置の制御方法。
【請求項7】
前記処理の1つは、記録装置で可能な範囲まで印刷を実行して記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理であることを特徴とする請求項5または6に記載の記録装置の制御方法。
【請求項8】
前記処理の1つは、記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理であることを特徴とする請求項5または6に記載の記録装置の制御方法。
【請求項9】
記録紙に画像を形成する記録装置において、
記録紙の残量を推定する残量推定手段と、
印刷データによる記録紙の印刷使用量が記録紙の前記残量を超えるか否かを判定する判定手段と、
記録紙の印刷可能量を測定する測定手段と、
前記印刷可能量と前記印刷使用量を比較する比較手段と、
前記印刷可能量と前記印刷使用量との比較の結果に基づいて動作を切り換える切換手段と、を備え、
前記判定手段で記録紙の前記印刷使用量が記録紙の前記残量より大きい場合に前記測定手段で記録紙の前記印刷可能量を測定し、
前記比較手段で前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きくないときは、前記切換手段により前記印刷データに基づいて印刷を行う動作へ切り換え、
前記比較手段で前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときは、別の処理を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
前記残量推定手段は、記録紙の初期量を設定する初期設定量手段と記録紙の使用量を管理する使用量管理手段とから、前記残量を推定することを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
記録紙の送り出し及び巻き戻しを行う搬送手段と、記録紙の初期量を設定する初期設定量手段と、記録紙の使用量を管理する使用量管理手段と、記録紙の終端を検知する終端検知手段とを備え、記録紙を送り出して前記終端を検知するまでの記録紙の長さを測定することにより前記印刷可能量を測定することを特徴とする請求項9または10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときに行う前記別の処理の1つは、記録装置で可能な範囲まで印刷を実行して記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記印刷使用量が前記印刷可能量より大きいときに行う前記別の処理の1つは、記録紙を排出し、新規の記録紙がセットされたら印刷を再開する処理であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
記録紙を巻き戻すとき、巻き戻し開始時と巻き戻し終了時に記録紙の側端部を検出することを特徴とする請求項11に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−190211(P2009−190211A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31300(P2008−31300)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】