記録装置、および、記録装置の制御方法
【課題】記録ヘッドが記録媒体に乗り上げることに起因する不具合を防止し、高い記録品質を保持できるようにする。
【解決手段】記録ヘッド18と、記録ヘッド18を往復移動させるキャリッジ駆動モーター35を含むヘッド移動手段とを備え、CPU61の制御により、記録ヘッド18の移動範囲内にある記録媒体に対して記録ヘッド18を移動させながら記録を行い、CPU61は、記録開始時に記録ヘッド18が記録媒体から外れた位置にある場合に、記録ヘッド18を記録媒体の端を越えて記録媒体100上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッド18の移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更する。
【解決手段】記録ヘッド18と、記録ヘッド18を往復移動させるキャリッジ駆動モーター35を含むヘッド移動手段とを備え、CPU61の制御により、記録ヘッド18の移動範囲内にある記録媒体に対して記録ヘッド18を移動させながら記録を行い、CPU61は、記録開始時に記録ヘッド18が記録媒体から外れた位置にある場合に、記録ヘッド18を記録媒体の端を越えて記録媒体100上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッド18の移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する記録装置、および、この記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体上に記録ヘッドを走査して記録を行う記録装置において、記録媒体の厚みが変化する段差や、厚みのある記録媒体に記録ヘッドが乗り上げる際に、記録ヘッドが記録媒体から離れてしまい、一部の文字等が記録されない等の問題が生じることが指摘されている。この問題を解決するため、例えば、光センサーにより記録媒体の厚みの変化を検出して、厚みが変化する場合に記録ヘッドの駆動速度を低速にするものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−117277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録媒体から記録ヘッドが離隔してしまう現象は記録媒体が有する段差だけでなく、記録媒体の端に記録ヘッドが乗り上げる際にも起こり得るが、この場合、光センサー等により段差の高さや位置を検出することは難しいという問題があった。従って、記録ヘッドが乗り上げる際の記録品質の低下を防止するための対策は、記録ヘッドを低速で駆動することであったが、スループットの低下を招くという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、記録ヘッドが記録媒体に乗り上げることに起因する不具合を防止し、高い記録品質を保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段と、前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行う記録制御手段と、を備え、前記記録制御手段は、記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を越えて移動する際に、移動開始位置に基づいて記録ヘッドの移動速度の上限を低くするので、記録ヘッドの移動速度が速すぎるために生じる不具合を確実に防止できる。また、記録ヘッドの移動開始位置により、例えば記録媒体の端を越えるときの記録ヘッドの移動速度が高速に達しないと予測される場合には、記録ヘッドの移動速度の上限を変更しない。このため、記録ヘッドの移動速度の上限を変更する頻度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0006】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録制御手段は、記録動作以外に、前記記録ヘッドの移動可能範囲内の所定の位置に前記記録ヘッドを移動させる制御を実行可能であり、この制御の次に前記記録動作を開始する際には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録動作以外の動作により、例えば移動可能範囲の端等の所定位置まで記録ヘッドを移動させてから記録を開始する際のように、記録媒体の端を越えるときの記録ヘッドの移動速度が高速に達する可能性がある場合に、記録ヘッドの移動速度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合が発生しやすい状況に限って、記録ヘッドの移動速度を抑え、不具合の発生を防止できる。
【0007】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記所定の位置は、前記記録ヘッドの移動可能範囲の端部に予め設定された位置であることを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を越える際の移動速度が高速になる可能性が高い場合に移動速度の上限の速度を抑えるので、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録制御手段は、前記記録ヘッドの移動速度の上限が所定速度以上に設定されている場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドの移動速度の上限が高速に設定されている場合に、記録媒体の端を越える際の移動速度を抑えるので、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0009】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録制御手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる際に、その移動開始位置から前記記録媒体の端までの距離が所定以上の場合に、前記記録ヘッドの移動速度の上限を変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドの移動開始位置から記録媒体の端までの距離が長く、記録媒体の端を越えるまでに記録ヘッドが十分に加速され、高速で記録媒体の端を越える可能性がある場合に、記録ヘッドの移動速度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段とを備えた記録装置を制御するための制御方法であって、前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行い、この記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を越えて移動する際に、移動開始位置に基づいて記録ヘッドの移動速度の上限を低くするので、記録ヘッドの移動速度が速すぎるために生じる不具合を確実に防止できる。また、記録ヘッドの移動開始位置により、例えば記録媒体の端を越えるときの記録ヘッドの移動速度が高速に達しないと予測される場合には、記録ヘッドの移動速度の上限を変更しない。このため、記録ヘッドの移動速度の上限を変更する頻度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を超えて移動する際に記録ヘッドの移動速度が速すぎるために生じる不具合を確実に防止でき、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係るプリンターの外観斜視図である。
【図2】プリンター本体を示す斜視図である。
【図3】プリンター本体の側断面図である。
【図4】プリンター本体の上部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】プリンター本体の要部拡大断面図である。
【図6】プリンター本体の要部拡大断面図である。
【図7】プリンターの制御系の機能ブロック図である。
【図8】記録時のプリンターの従来の動作を示す説明図である。
【図9】第1の実施形態に係るプリンターの動作を示す説明図である。
【図10】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係るプリンターの動作を示す説明図である。
【図12】第2の実施形態に係るプリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る記録装置としてのプリンター10の外観を示す斜視図である。本実施形態のプリンター10は、複数の記録ワイヤーを備えた記録ヘッド18(図2および図3参照)を具備したドットインパクトプリンターであり、この記録ヘッド18から、インクリボンを介して記録ワイヤーを記録媒体へ向けて打ち出すことにより、記録媒体の記録面にドットを形成し、文字、画像、記号等を記録する。プリンター10により記録される画像等は1行または複数行からなり、行毎に記録される。
プリンター10には外部の機器としてホストコンピューター68(図7)が接続され、プリンター10は、ホストコンピューター68から入力される各種コマンド及びデータに基づいて、行単位、またはページ単位で記録(印刷)を実行する。
【0014】
プリンター10において使用可能な記録媒体としては、定型サイズまたは定形外の任意サイズのカットシートのほか、ロール紙やファンフォールド紙等の連続シートがある。これらカットシートおよび連続シートは、普通紙、複写紙、厚紙等の紙類、あるいは合成樹脂製のシートにより構成され、これらのシートにコーティングや浸潤等の加工を施したものを用いてもよい。また、カットシートとして、定形サイズのカット紙(PPC用紙や葉書等)に加え、複数のシートを綴じた冊子形態の通帳等に記録することも可能である。
本実施の形態においては、プリンター10により、上記のカットシートまたは通帳である記録媒体100に画像を記録する場合について説明する。
【0015】
図1に示すプリンター10は、上部に開閉可能に配設されたカバー12の下に、上部ケース13と下部ケース14とが上下に連結されて構成される外装に本体を収容した構成を有する。この外装の前面には記録媒体100を手差し供給および排出するための手差口15が設けられている。なお、本実施の形態では、手差口15へ記録媒体100を挿入する向きを向きAとし、手差口15から記録媒体100を排出する方向を向きBとし、図中に矢印A、Bで示す。
【0016】
図2は、プリンター10の外装に収容されたプリンター本体11を示す斜視図であり、図3は、プリンター10の側断面図である。図3中に示す符号Cは、記録媒体100の搬送経路を示す。
図2および図3に示すように、プリンター本体11は、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17を含む本体フレームを有し、この本体フレームに、記録ヘッド18およびキャリッジ19を含んで構成される記録機構部20、記録ヘッド18に対向するプラテン21、第1搬送ローラー22および第2搬送ローラー23を備えた第1搬送機構部24、第3搬送ローラー25および第4搬送ローラー26を備えた第2搬送機構部27、記録媒体100が有する磁気ストライプ101の磁気情報の読取/書込を行う磁気ヘッド34を備えた磁気データ読書部29、および、磁気情報の読取/書込時に記録媒体100の浮き上がりを上から押えるシート押え部30を設けた構成となっている。
【0017】
左サイドフレーム16および右サイドフレーム17は、プリンター本体11の左右両端部において互いに対向するよう立設され、両サイドフレーム16、17間にはキャリッジ軸31が架け渡され、さらに、両サイドフレーム16、17に跨って、平坦面形状の前方シート案内32および後方シート案内33が固定され、記録媒体100が搬送される搬送経路Cの床面を構成する。前方シート案内32と後方シート案内33との間には後述するプラテン21が配置される。
また、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17には、記録媒体100の搬送経路Cの天井面を構成するとともに、後述する第2搬送ローラー23、第4搬送ローラー26を支持するフロントフレーム45及びリアフレーム46が固定される。
【0018】
第1搬送機構部24は、プラテン21よりフロント側に位置し、第2搬送機構部27は、プラテン21のリア側に位置する。第1搬送ローラー22および第3搬送ローラー25は搬送モーター36(図7)および図示しない駆動輪列部によって回転駆動される駆動ローラーであり、第2搬送ローラー23および第4搬送ローラー26は、それぞれ、第1搬送ローラー22および第3搬送ローラー25の回転に伴って回転する従動ローラーである。第1搬送機構部24および第2搬送機構部27は、後述する搬送モーター36とともに搬送手段を構成する。
【0019】
図3に示すように、プラテン21と第1搬送ローラー22との間には整列板54が配置される。整列板54は、記録媒体100の幅方向すなわち桁方向に沿って延在し、搬送経路Cに対して垂直な板状部材である。整列板54は、搬送経路Cの下に埋設され、整列モーター37(図7)の動作により搬送経路Cに進退する。整列モーター37の動作によって整列板54を搬送経路Cに突出させ、第1搬送機構部24によって記録媒体100を整列板54に突き当てるように搬送することで、記録媒体100のスキューが修正される。この整列板54と、整列板54を駆動する整列モーター37とを合わせて整列手段が構成される。
磁気ヘッド34は、サイドフレーム16,17間に平行に架け渡された二本の磁気ヘッドガイドに沿って、磁気モーター38(図7)により往復駆動される。この磁気ヘッド34は、記録媒体100として用いられる通帳が有する磁気ストライプ101(図1)に対し、各種の情報を磁気的に記録し、情報の読取を行う。
【0020】
キャリッジ19は、キャリッジ軸31に摺動自在に挿通され、ヘッド移動手段としてのキャリッジ駆動モーター35(図7)の正転または逆転動作により、キャリッジ軸31に沿って走行(走査)される。このキャリッジ19の走査方向を主走査方向とする。主走査方向は桁方向と一致する。
キャリッジ19には記録ヘッド18が搭載され、キャリッジ19と一体となって、記録媒体100の記録面上を主走査方向に沿って移動する。
記録ヘッド18の直下には主走査方向に沿ってプラテン21が配置され、このプラテン21は下方から付勢バネ40(図3)によって付勢されつつ弾性支持されており、この弾性力により記録ヘッド18から突出する記録ワイヤーの突出力を受け止める。
また、キャリッジ19には、リボンカートリッジ39から引き出されたインクリボンが、記録ヘッド18の前方に位置するよう配置される。記録ヘッド18は、主走査方向に走行される間に記録ワイヤーを突出させて、インクリボンを介して記録媒体100の記録面に打ち当て、インクリボンのインクを、プラテン21と記録ヘッド18との間に搬送される記録媒体100に付着させて、この記録媒体100に文字を含む画像を記録する。
【0021】
キャリッジ19には、記録ヘッド18と並べてギャップローラー41が搭載されている。ギャップローラー41は、記録ヘッド18が記録ワイヤーを突出する面の側方に位置する。ギャップローラー41の下端は、記録ワイヤーが打ち出されない状態において記録ヘッド18の先端面よりも下方に位置し、プラテン21を押し上げる付勢バネ40の付勢力に抗して、プラテン21またはプラテン21上の記録媒体100に当接する。ギャップローラー41はキャリッジ19に回転自在に支持されているため、キャリッジ19の走査時に回転しながらプラテン21または記録媒体100に接したまま移動できる。
従って、記録媒体100に記録ヘッド18が記録する場合、ギャップローラー41により記録ヘッド18の先端面と記録媒体100の記録面との距離(ギャップ)が適正な大きさに保たれる。記録を行っている間に記録媒体100の厚みが変化しても、付勢バネ40により弾性支持されたプラテン21が上下に変位して厚みの差が吸収され、ギャップが適正な大きさに保たれる。
【0022】
また、プリンター10は、記録動作を制御するための各種センサーを備えている。
図3に示すように、整列板54のフロント側には複数の整列センサー52が配設される。整列センサー52は、例えば、搬送経路Cを挟んで対向配置された発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)とにより記録媒体100の有無を検出する透過型光センサーである。これら複数の整列センサー52は主走査方向に所定間隔で並べて配置され、複数の整列センサー52の検出状態に基づき、記録媒体100の先端が整列センサー52に沿って整っているかどうか、すなわち記録媒体100の整列が成功したか否かを判別できる。また、記録媒体100の整列が完了した時点で記録媒体100の先端は整列板54の位置にあるから、整列センサー52により整列完了を検出してからの搬送モーター36の動作ステップ数等に基づいて、記録媒体100の搬送方向における位置を求めることができる。
【0023】
キャリッジ19には、記録ヘッド18のリア側に媒体幅検出センサー55が搭載されている。媒体幅検出センサー55は、例えば搬送経路C側に向けて発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)を並べて配置した反射型光センサーである。媒体幅検出センサー55はキャリッジ19の走査に伴いプラテン21上を移動し、この移動中に媒体幅検出センサー55の検出値とキャリッジ19の走査位置とを対応させることにより、記録媒体100の側端の位置や記録媒体100の幅が求められる。
さらに、プリンター10の第2搬送ローラー23のフロント側には挿入センサー53(図7)が配設されている。挿入センサー53は、例えば搬送経路Cを挟んで対向配置された発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)とにより構成される透過型光センサーであり、手差口15から手差し挿入された記録媒体100を検出する。
【0024】
図4は、プリンター本体11の上部を取り外した状態を示す斜視図である。また、図5は記録ヘッド18近傍を示すプリンター本体11の要部拡大断面図である。また、図6は記録ヘッド18近傍の要部拡大断面図である。
図4に示すように、プラテン21の上には、細長い樹脂フィルム製のシートガイド60が主走査方向に延設されている。
図6に示すように、シートガイド60は、フロント側の辺がガイド支持部70により支持され、反対側の辺はプラテン21の上面に接する。記録媒体100が手差口15から挿入され搬送経路Cを記録ヘッド18に向けて搬送されると、記録媒体100の記録面にシートガイド60が接し、このシートガイド60の上にギャップローラー41が当接する。
また、ギャップローラー41は、記録ヘッド18が記録ワイヤーを突出する面よりもフロント側に位置し、フロント側から伸びるシートガイド60にギャップローラー41の周面の一部が乗っていて、キャリッジ19の走査時にはギャップローラー41がシートガイド60上を往復移動する。
【0025】
シートガイド60を支持するガイド支持部70は、図4及び図5に示すように、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17に架け渡されたガイド支持軸71と、このガイド支持軸71を回動自在に支持するガイド支持軸受け72と、ガイド支持軸71の右サイドフレーム17側の端部に固定され、記録ヘッド18側に突出するバネ受け板73と、バネ受け板73とともにガイド支持軸71に固定され、バネ受け板73とは反対側に突出する度当たり部73Aと、バネ受け板73を下方から付勢する付勢バネ75と、この付勢バネ75の下部を収容して下方から支持するバネ収容部74とを備えて構成される。シートガイド60の基端部は、ガイド支持軸71に、例えば両面テープや接着剤等により接着固定される。
右サイドフレーム17には、ガイド支持部70に隣接する押えレバー76が設けられる。押えレバー76は、右サイドフレーム17に回動自在に支持された回動軸78と、この回動軸78からガイド支持部70側へ突出する押え突起79と、押え突起79とは反対側の略上方に突出するカム当接部77とを備えて構成される。押えレバー76は、押えバネ(図示略)によって、図5および図6中の左回り方向に付勢される。押えレバー76の押え突起79は、ガイド支持部70のバネ受け板73の上に乗った状態で係合している。
【0026】
ガイド支持部70は、バネ収容部74に収容された付勢バネ75の付勢力により、ガイド支持軸71を中心として図5中の左回り方向に付勢される。ここで、押えレバー76を付勢する上記の押えバネ(図示略)は、ガイド支持部70を付勢する付勢バネ75よりも強い付勢力を有する。このため、キャリッジ19の走査中は、図5に示すように、押えレバー76が上記の押えバネ(図示略)の付勢力によって付勢され、押え突起79がバネ受け板73を下方へ押圧する。この押圧力により、ガイド支持部70は付勢バネ75の付勢力に抗して図中右回りに回転し、バネ受け板73が押し下げられた状態を保つ。これにより、シートガイド60はプラテン21に押し付けられ、キャリッジ19のギャップローラー41とプラテン21または記録媒体100との間に挟まれる。
キャリッジ19が右サイドフレーム17側の端に設定されたシートガイド跳ね上げ位置に移動すると、ギャップローラー41はシートガイド60の端から離脱し、シートガイド60への押圧力が解除される。とともに、キャリッジ19がシートガイド跳ね上げ位置に移動することで、キャリッジ19の右サイドフレーム17側の側面に形成されたカム斜面19Aが、カム当接部77に当接する。カム当接部77は、カム斜面19Aの接近に伴って、上記押えバネ(図示略)の付勢力に抗して下方に押し下げられ、押えレバー76が図中右回りに回転する。これに伴い、押えレバー76の押え突起79がバネ受け板73に加えていた押圧力が解け、代わって付勢バネ75の付勢力によってバネ受け板73が押し上げられる。そして、ガイド支持部70が図中左回りに回転し、度当たり部73Aが前方シート案内32に当たって停止する。
このため、キャリッジ19がシートガイド跳ね上げ位置にある間、ガイド支持部70は、バネ受け板73が上に、度当たり部73Aが下に位置した状態を保つ。すなわち、シートガイド60は、プラテン21から離れて上方に跳ね上げられている。
【0027】
また、図示はしないが、プラテン21の右サイドフレーム17側の端部には下方に延びる斜面が形成され、この斜面には他の部分よりも一段低い平面となった末端部が繋がっている。キャリッジ19がシートガイド跳ね上げ位置に移動する際、ギャップローラー41はプラテン21の上面に接しながら移動して、上記の末端部で停止する。この状態でガイド支持部70が回転し、シートガイド60が跳ね上げられる。
【0028】
シートガイド60は、手差口15から手差し挿入された記録媒体100がスムーズに記録ヘッド18の下方まで搬送されるよう案内する。
また、ギャップローラー41は、上記のようにプラテン21または記録媒体100の記録面に接しながら回転するローラーであって、空転を避けるため、その周面には摩擦係数が比較的高くなるようゴム等が配されている。この摩擦により、ギャップローラー41が記録媒体100に接した状態で記録媒体100を搬送することは難しくなっているが、記録媒体100とギャップローラー41との間にシートガイド60が介在することにより、記録媒体100とギャップローラー41との摩擦が減殺され、図中A方向に容易に搬送可能となる。さらに、シートガイド60は、記録媒体100として綴じ目を有する冊子や通帳等、高さ(厚み)が変化する段差のあるものを用いた場合に、主走査方向に移動するギャップローラー41が段差をスムーズに乗り越えられるようにする作用をも有する。
記録媒体100を行送りまたは記録媒体100の排出のために図中B方向に記録媒体100を搬送する際には、キャリッジ19を上記シートガイド跳ね上げ位置に移動させることで、シートガイド60が跳ね上げられる。このため、シートガイド60は記録媒体100から離れ、搬送の障害にならない。
【0029】
プリンター10は、第1、第2搬送機構部24,27の駆動制御、キャリッジ19の走行制御、記録ヘッド18の記録ワイヤーによる記録動作の制御、および磁気データ読書部29の読み書き制御等、プリンター10全体を制御する制御部として、例えばプリンター本体11のリア側の下方に、制御基板部50を備えている。
【0030】
図7は、プリンター10の電気的構成、すなわち制御基板部50が具備する制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、プリンター10は、CPU61、CPU61により実行されるプログラムおよびデータを一時的に記憶するRAM63、CPU61により実行される制御プログラム等を記憶する記憶手段としてのフラッシュメモリー64を備え、これらの各部はバス62を介して相互に接続される。また、バス62にはゲートアレイ(G/A)65が接続され、このゲートアレイ65には、記録ヘッド18、整列センサー52、挿入センサー53、媒体幅検出センサー55、およびモータードライバー66が接続される。ゲートアレイ65は、整列センサー52、挿入センサー53および媒体幅検出センサー55の出力電圧値を取得して、CPU61に出力する。また、ゲートアレイ65は、CPU61の制御のもとに記録ヘッド18を駆動して、記録ヘッド18が備える記録ワイヤー(図示略)の突出動作を行わせる。さらに、ゲートアレイ65は、CPU61の制御のもと、モータードライバー66を制御することにより、キャリッジ駆動モーター35、搬送モーター36、整列モーター37、および磁気モーター38の各モーターを駆動させる。
【0031】
キャリッジ駆動モーター35は、キャリッジ19を主走査方向に沿って移動させるモーターであり、このキャリッジ駆動モーター35の正転および逆転によりキャリッジ19が往復移動する。搬送モーター36は、上述した第1搬送ローラー22および第3搬送ローラー25を回転させるモーターであり、整列モーター37は、記録媒体100の搬送路に整列板54を進出/退出させるモーターである。また、磁気モーター38は、磁気データ読書部29(図2)を走査させるモーターである。これらのモーターは、例えばステッピングモーターで構成され、その動作ステップ数は、モータードライバー66から各モーターに入力されるパルスに従う。各モーターの動作ステップ数は、ロータリーエンコーダー(図示略)やリニアエンコーダー(図示略)を使用すると、より正確に監視できる。また、そのパルス数により求められたキャリッジ位置と、センサーの出力とを関係付けすることで、用紙位置・用紙端位置を求めることができる。
【0032】
CPU61は、フラッシュメモリー64に記憶された制御プログラムに基づいて、ゲートアレイ65およびモータードライバー66を制御するとともに、ゲートアレイ65を介して各センサーの検出状態を取得する。例えば、CPU61は、各センサーの出力電圧値を、ゲートアレイ65を介して所定周期(例えば、100[ms(ミリ秒)])でサンプリングしてA/D変換することにより、これら出力電圧を示すデータを取得し、このデータに基づいて各センサーにおける記録媒体100の検出状態を取得する。
【0033】
さらに、バス62には、プリンター10の外部装置に接続されるインターフェース(I/F)67が接続される。インターフェース67は、シリアルインターフェース、パラレルインターフェース、USBインターフェース、ネットワークカードインターフェース等の各種規格に準じたコネクターを備え、このコネクターを介して外部装置に接続される。
インターフェース67には、プリンター10外部のホストコンピューター68が接続される。ホストコンピューター68は、オペレーターの操作に従って、CPU61との間で各種情報を送受信する。この情報には、記録ヘッド18による記録の開始を指示する記録開始位置指定コマンド、記録コマンド、搬送コマンド、排出コマンド等の各種コマンド、記録媒体100に記録する文字や画像のデータ等が含まれる。ここで、記録開始位置指定コマンドには、記録媒体100のサイズ、記録媒体100の上端、下端、左端、右端の各端部から記録領域までの距離、記録領域における行数、1行あたりの桁数等が含まれる。なお、バス62に、入力操作を受け付ける操作部や動作結果等を表示する表示部を接続してもよい。
【0034】
図8は、記録時のプリンターの従来の動作を示す説明図であり、(A)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す平面図であり、(B)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す断面図である。図8(C)及び(D)はキャリッジ19の移動速度の変化を示す図表である。なお、以下の説明ではキャリッジ19の移動速度について説明するが、キャリッジ19の移動速度は、そのまま記録ヘッド18の移動速度ということができる。
上述のように、プリンター10は手差口15(図1)から挿入された記録媒体100の傾きを整列板54により補正する機能を有する。このため、プリンター10で使用可能な記録媒体100の幅は、手差口15の幅より小さければ特に制限されない。従って、キャリッジ19の走査範囲Waにおける記録媒体100の位置は制限されず、例えば図8(A)、(B)に示すようにキャリッジ19の走査範囲Waのどちらの端からも離れた位置で搬送されることもある。CPU61は、キャリッジ19を走査しながら媒体幅検出センサー55の検出値を取得し、この検出値が変化した位置を求めることで、記録媒体100の両側の端位置Peを検出する。記録媒体100には、通常、両端から所定の端マージンをとった記録領域105が設定される。
また、CPU61は、ホストコンピューター68から送信された記録開始位置指定コマンドに基づき、記録媒体100における記録領域105の両側の端位置Psの位置を取得する。プリンター10はキャリッジ19を往復走査しながら、一方向の走査を指す1パスで1行を記録するラインプリンターである。このため、記録領域105は行ごと(パスごと)に指定可能である。
【0035】
図8(A)〜(D)に示すように、走査範囲Waの左サイドフレーム16側の端には、待機時にキャリッジ19が位置するホームポジションPaが設定され、このホームポジションPaから少し離れた位置に、リボン交換位置Pcが設定される。キャリッジ19がリボン交換位置Pcに位置している状態では、リボンカートリッジ39の交換が可能になる。プリンター10は、いつでも容易にリボンカートリッジ39を交換できるように、記録ヘッド18による記録完了後、所定時間(例えば、3秒)が経過するとキャリッジ19をリボン交換位置Pcに移動させる。プリンター10が停止している間、キャリッジ19はリボン交換位置Pcに位置していることが多い。
一方、走査範囲Waの右サイドフレーム17側の端には、上述したシートガイド跳ね上げ位置Pbがある。上記のように、記録媒体100の搬送時にはシートガイド60を跳ね上げる場合があるが、その都度、キャリッジ19はシートガイド跳ね上げ位置Pbに移動する。また、シートガイド跳ね上げ位置Pbから少し中央寄りには、幅検出開始位置Pdが設定されている。CPU61が媒体幅検出センサー55により記録媒体100の端位置Peを検出する場合、キャリッジ19を幅検出開始位置Pdから移動させる。
【0036】
キャリッジ19は、記録媒体100に記録を行っている間を除き、ホームポジションPa、シートガイド跳ね上げ位置Pb、リボン交換位置Pc及び幅検出開始位置Pdのいずれかに位置している。これらの位置は、本発明の所定の位置に相当する。キャリッジ19は、リボン交換位置Pcに位置していることが最も多く、記録媒体100を搬送する間はシートガイド跳ね上げ位置Pbに移動することが多い。また、記録媒体100がプリンター10内部に存在しない状態では、キャリッジ19はホームポジションPaに位置し、記録媒体100が手差口15から挿入されると、記録実行の前に、幅検出開始位置Pdに移動される。キャリッジ19をホームポジションPa、シートガイド跳ね上げ位置Pb、リボン交換位置Pc及び幅検出開始位置Pdに移動させる動作は、CPU61が制御プログラムに従って専用のコマンドを実行することで行われる。すなわち、キャリッジ19の位置を走査範囲Waにおける座標または桁位置で指定する動作とは異なり、予め指定された位置Pa、Pb、Pc、Pdへ移動するよう指示するコマンドが実行される。
【0037】
図8(A)及び(B)に示す例で、記録媒体100の記録領域105に文字を記録する場合、CPU61は、モータードライバー66を制御してキャリッジ駆動モーター35を駆動し、キャリッジ19を記録領域105の端位置Psまで移動させる。CPU61は、そのままキャリッジ19を移動させながら記録ヘッド18を駆動して文字を記録し、記録領域105の反対側の端位置Psから走査範囲Waの端までの間にキャリッジ19を減速させる。
図8(C)はリボン交換位置Pcを移動開始位置とした場合のキャリッジ19の速度の変化を示、図8(D)はリボン交換位置Pcの中央寄りの位置を移動開始位置とした場合の速度の変化を示す。
図8(C)の例では、CPU61の制御によりキャリッジ駆動モーター35に通電開始されてからキャリッジ19は加速区間Taで徐々に加速され、記録媒体100の端位置Peを越えるまでに上限の速度すなわち最高速度に達する。最高速度とは、キャリッジ19を加速する目標速度と言い換えることができる。
これに対し、図8(D)の例ではキャリッジ19の移動を開始してから加速区間Taが過ぎる前に記録媒体100の端位置Peに達する。このため、キャリッジ19が端位置Peを越えるときの速度は最高速度より低速である。
【0038】
キャリッジ19が端位置Peを越える際には、ギャップローラー41が記録媒体100に当たり、記録媒体100の厚み分だけキャリッジ19は上に移動する。キャリッジ19の移動速度が高速であると、記録ヘッド18が記録領域105に達するまでにキャリッジ19の上下動が収まらず、文字や画像が記録されない、いわゆる文字抜けが生じることがある。キャリッジ19が端位置Peを越えるときの速度は、図8(C)、(D)で説明したように、キャリッジ19の移動開始位置と端位置Peとの間の距離が、加速区間Taの長さより長いかどうかが大きく影響する。例えば図8(C)のように、キャリッジ19が最高速度に達してから端位置Peを越える場合には起きやすく、図8(D)のように低速で端位置Peを越える場合には起こりにくい。また、設定されたキャリッジ19の最高速度も影響する。
【0039】
本実施形態のプリンター10は、キャリッジ19の移動開始位置に基づき、キャリッジ19が高速で端位置Peを越えることが明らかな場合には、キャリッジ19の最高速度を抑える制御を行う。
図9は、プリンター10の動作を示す説明図であり、(A)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す断面図、(B)はキャリッジ19の移動速度の変化を示す図表である。
プリンター10は、CPU61の制御によりキャリッジ19を移動させる際に、移動開始位置がホームポジションPaまたはリボン交換位置Pcである場合には、設定されているキャリッジ19の最高速度Vhを、より低速の速度Vdに変更して、キャリッジ駆動モーター35を駆動する。移動開始位置が走査範囲Waの端部でなければ、記録媒体100の端位置Peまでに最高速度Vhへの加速区間Taが終了する可能性が低いため、文字抜けを回避できる。キャリッジ19を逆方向に移動させるパスにおいても同様であり、シートガイド跳ね上げ位置Pbまたは幅検出開始位置Pdを移動開始位置とした場合、キャリッジ19が端位置Peに達するまでに、キャリッジ19の速度が最高速度Vhに達している可能性は高い。
【0040】
プリンター10において、最高速度Vhは複数段階の速度のいずれかに設定可能である。最高速度Vhが比較的低い速度に設定されている場合は、キャリッジ19の移動をホームポジションPaやシートガイド跳ね上げ位置Pbから開始しても文字抜けを起こす可能性が小さい。従って、最高速度Vhの設定値が、最高速または最高速から2〜3段下の速度に設定されている場合のみ、上記の制御を行う。プリンター10は、キャリッジ19の移動速度の上限として設定可能な複数段階の設定値、これら複数段階の設定値のうち実際に設定された最高速度Vhの設定値、最高速度を低速に変更する際の速度Vdの設定値等をフラッシュメモリー64に記憶している。
【0041】
図10は、プリンター10の動作を示すフローチャートである。
この図10に示す動作は、CPU61によって、フラッシュメモリー64に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、実現される。この図10に示す動作の実行時、CPU61は記録制御手段として機能する。
プリンター10のCPU61は、挿入センサー53によって手差口15から記録媒体100が挿入されたことを検出すると(ステップS11)、整列モーター37によって整列板54を搬送経路Cに進出させて、搬送モーター36により第1搬送機構部24を駆動し、記録媒体100を整列させる(ステップS12)。CPU61は、整列センサー52の検出値に基づいて整列が完了したことを検出すると、ホストコンピューター68から送信された記録位置指定コマンドを受信し(ステップS13)、このコマンドにより指定された記録開始位置まで記録媒体100を搬送する(ステップS14)。
【0042】
CPU61は、ホストコンピューター68から記録コマンドと搬送コマンドを受信し(ステップS15)、記録を開始する。すなわち、CPU61は、1パス分の記録データを取得し(ステップS16)、キャリッジ19の最高速度の設定値をフラッシュメモリー64から取得する(ステップS17)。次いで、CPU61は、取得した最高速度が、設定可能な複数段階の最高速度のうち上位の速度であるか否かを判別する(ステップS18)。この判別は、取得した最高速度をしきい値と比較することで行われる。
【0043】
キャリッジ19の最高速度がしきい値以下である場合(ステップS18;No)、CPU61は、設定された最高速度を用いてキャリッジ19を記録開始位置まで移動させ(ステップS19)、1パス分の記録を実行して、搬送コマンドに従って記録媒体100を搬送する(ステップS20)。その後、CPU61は、現在セットされている記録媒体100に対する記録が完了したか否かを判別し(ステップS21)、記録が完了していない場合は(ステップS21;No)ステップS16に戻る。また、記録が完了した場合は(ステップS21;Yes)、CPU61はホストコンピューター68から送信される排紙コマンドを受信し(ステップS22)、記録媒体100を手差口15に向けて搬送し(ステップS23)、新しい記録媒体100が手差口15に挿入されるのを待つ待ち状態に移行して(ステップS24)、本処理を終了する。
【0044】
一方、CPU61は、最高速度の設定値がしきい値より高速であると判別した場合(ステップS18;Yes)、記録媒体100が厚みのある冊子形態であるか否かを判別する(ステップS25)。記録媒体100が冊子形態でない場合には(ステップS25;No)、CPU61はステップS19に移行する。記録媒体100が厚みのないカットシートである場合は文字抜けの心配がほとんど無いためである。また、記録媒体100が冊子形態である場合(ステップS25;Yes)には、CPU61は、キャリッジ19の移動開始位置を特定し(ステップS26)、この位置が特定の位置Pa、Pb、Pc、Pdのいずれかであるかを判別する(ステップS27)。ステップS26では、記録開始前に、位置Pa、Pb、Pc、Pdへキャリッジ19を移動するコマンドをCPU61が実行したか否かにより正確に判別できる。
キャリッジ19の移動開始位置が特定の位置でなければ(ステップS27;No)、CPU61はステップS19に移行して記録を実行する。また、キャリッジ19の移動開始位置が特定の位置Pa、Pb、Pc、Pdである場合は(ステップS27;Yes)、CPU61は、キャリッジ19の最高速度を予め設定された低速側の速度に変更して、キャリッジ19を移動開始位置まで移動させ(ステップS28)、ステップS20に移行する。ここで、キャリッジ19の移動速度の上限(最高速度)を変更した後は、その1パスにおいては変更された移動速度の上限が維持されるが、次以後のパス、すなわちキャリッジ19の走査方向を逆に切り替えた後では、移動速度の上限は予め設定されている速度に戻される。これにより、キャリッジ19の移動速度の上限を抑えるパスが最小限に止まるので、スループットの低下を防止できる。
【0045】
以上のように、本発明を適用した第1の実施形態に係るプリンター10は、記録ヘッド18と、記録ヘッド18を往復移動させるキャリッジ駆動モーター35及び駆動輪列(図示略)を含むヘッド移動手段とを備え、CPU61の制御により、記録ヘッド18の移動範囲内にある記録媒体100に対し、記録ヘッド18を移動させながら記録を行い、CPU61は、記録開始時に記録ヘッド18が記録媒体100の記録面上から外れた位置にある場合に、記録ヘッド18を記録媒体100の端位置Peを越えて記録媒体100上の記録開始位置(端位置Ps)まで移動させ、この移動中の記録ヘッド18の移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更する。これにより、記録ヘッド18を搭載したキャリッジ19が端位置Peを越えて移動する際に、記録媒体100の厚みによって生じるキャリッジ19の上下動に起因する文字抜け等の不具合を防止できる。
【0046】
具体的には、CPU61は、記録動作以外に、記録ヘッド18の走査範囲Waにおける所定の位置(ホームポジションPa、シートガイド跳ね上げ位置Pb、リボン交換位置Pc、幅検出開始位置Pd)に記録ヘッド18を移動させる制御を実行可能であり、この制御の次に記録動作を開始する際には、キャリッジ19の移動速度の上限を低速に変更する。このように、キャリッジ19が走査範囲Waの端から移動を開始し、記録媒体100の端を越えるときのキャリッジ19の移動速度が高速に達する可能性がある場合に、移動速度を抑える。これに対し、キャリッジ19の移動開始位置が上記の所定の位置でなく、記録媒体100の端位置Peを越えるときのキャリッジ19の移動速度が高速に達しない可能性が高い場合には、キャリッジ19の移動速度の上限を変更しない。これにより、キャリッジ19の移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、キャリッジ19の移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0047】
さらに、CPU61は、キャリッジ19の移動速度の上限を低速に変更する制御を、移動速度の上限が所定速度以上に設定されている場合に行うので、キャリッジ19の移動速度が不具合を生じる可能性があるような高速の場合に限り、移動速度を抑制する。キャリッジ19の移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、キャリッジ19の移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0048】
なお、上記第1の実施形態では、キャリッジ19が記録媒体100の端位置Peを越えるときの移動速度が高速になる場合として、キャリッジ19の移動開始位置が所定の位置(Pa、Pb、Pc、Pd)である場合に移動速度の上限を低速にする制御を行っていた。本発明はこれに限定されるものではなく、キャリッジ19の移動開始位置から端位置Peまでの距離に基づいて、端位置Peを越えるときの移動速度が高速か否かを判別してもよい。この場合について、第2の実施形態として説明する。
【0049】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係るプリンター10の動作を示す説明図であり、(A)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す断面図、(B)はキャリッジ19の移動速度の変化を示す図表である。
また、図12はプリンター10の動作を示すフローチャートである。
本第2の実施形態において、プリンター10の機械的構成および図7に示す制御系の各ブロックは上記第1の実施形態と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0050】
この第2の実施形態において、プリンター10は、CPU61の制御によりキャリッジ19を移動させる際に、移動開始位置と、記録媒体100の端位置Peとの間の距離を求め、この距離が加速区間Taより長い場合には、キャリッジ19の移動速度の上限をより低い速度に変更する。
【0051】
図11(A)及び(B)に示す例では、キャリッジ19の移動開始位置Csから記録媒体100の端位置Peまでの距離Lは、設定されているキャリッジ19の最高速度Vhまで加速するための加速区間Taよりも長い。このため、キャリッジ19は最高速度Vhで端位置Peに衝突するので、端位置Peを乗り越えるときのキャリッジ19の上下動が、キャリッジ19が記録領域105の端位置Psに達するまでに収まらず、文字抜け等の不具合を生じる可能性がある。そこで、CPU61は、キャリッジ19の移動速度の上限を、最高速度Vhから速度Vdに変更する。この場合、キャリッジ19の移動速度は短時間で上限である速度Vdに達するが、この速度Vdは高速でないため、端位置Pe通過時のキャリッジ19の上下動は、キャリッジ19が端位置Psに達するまでに収束する。なお、加速区間Taの長さは最高速度Vhの値によって異なるため、CPU61は、現在設定されている最高速度に対応する加速区間の長さを比較に用いる。また、距離Lが加速区間Ta以下である場合であっても、キャリッジ19の速度が、文字抜け等を招く可能性がある速度を超える場合には、キャリッジ19の移動速度の上限を変更してもよい。この場合、距離Lと、加速区間Taよりも短い所定のしきい値L1が予めフラッシュメモリー64に記憶されており、このしきい値L1よりも距離Lが長いかどうかが判別される。
【0052】
また、上述のように、CPU61は、媒体幅検出センサー55によって記録媒体100の端位置Peを検出する幅検出動作を実行することで、走査範囲Waにおける端位置Peの位置を、座標或いは桁位置によって検出し、フラッシュメモリー64に記憶する。これに対し、キャリッジ19の移動開始位置Csは、様々な方法で特定できる。例えば、プリンター10が、走査範囲Waにおけるキャリッジ19の位置を検出するために、キャリッジ軸31に平行にリニアエンコーダー(図示略)を備えた構成とすることが可能である。この場合、リニアエンコーダーの検出値により、移動開始時におけるキャリッジ19の位置、すなわち移動開始位置Csを特定できる。
【0053】
図12に示す動作のうち、ステップS11〜25及びステップS28の動作は、上記第1の実施形態で説明した動作(図10)と同様である。この図12に示す動作の実行時、CPU61は記録制御手段として機能する。
第2の実施形態においては、1パスの記録を実行する前に、キャリッジ19の移動速度の上限がしきい値より高速か否か(ステップS18)、及び、記録媒体100が厚みのある冊子形態であるか否か(ステップS25)を判別し、記録媒体100が冊子形態である場合には、キャリッジ19の移動開始位置を特定する(ステップS31)。
次いで、CPU61は、キャリッジ19の移動開始位置から、記録媒体100の端位置Peまでの距離が、設定されている最高速度を適用した場合の加速区間より長いか否かを判別する(ステップS32)。そして、上記の距離が加速区間以下の場合は(ステップS32;No)、CPU61はステップS19に移行し、加速区間よりも長い場合には(ステップS32;Yes)、ステップS28に移行して、キャリッジ19の最高速度を予め設定された低速側の速度に変更して、キャリッジ19を移動開始位置まで移動させ、ステップS20に移行する。
【0054】
このように、キャリッジ19(記録ヘッド18)を記録媒体100の端位置Peを越えて移動させる際に、その移動開始位置から記録媒体100の端位置Peまでの距離が所定以上の場合に、キャリッジ19の移動速度の上限を変更するので、キャリッジ19が十分に加速され、高速で端位置Peを越える可能性がある場合に、キャリッジ19の移動速度を抑えることができる。これにより、記録ヘッド18の移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッド18の移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。例えば、上記実施の形態においては、キャリッジ19の移動速度の上限を複数段階に設定可能であるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、速度を示す設定値を用いて任意の速度で設定できる構成としてもよい。また、上記実施形態では、記録ヘッド18をキャリッジ19に搭載し、記録媒体100の搬送方向と直交する方向に往復走査する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録媒体100の搬送方向に対して斜めにキャリッジ19を移動させてもよいし、搬送方向とキャリッジ19の移動方向とが同方向出会ってもよい。
【0056】
また、記録ヘッド18が、記録媒体100の端に乗り上げる際に記録媒体100の厚みにより移動する構成であれば特に限定されず、具体的には、記録ワイヤーを突出するドットインパクトヘッドで構成される記録ヘッド18を備えたドットインパクトプリンターの他、記録ヘッド18からインクを噴射して記録を行うインクジェット式プリンターにも本発明を適用可能である。
さらに、プリンター10は、1つのホストコンピューター68に接続される形態に限らず、複数のホストコンピューター68に接続されてもよいし、通信ネットワークを介してホストコンピューターに接続される構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、本発明をプリンター10に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の機器(複写機等)に組み込まれた記録装置に適用することも可能である。その他、上記実施の形態に係る他の細部構成についても、任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10…プリンター(記録装置)、18…記録ヘッド、19…キャリッジ、21…プラテン、24…第1搬送機構部、27…第2搬送機構部、35…キャリッジ駆動モーター(ヘッド移動手段)、36…搬送モーター、41…ギャップローラー、50…制御基板部、60…シートガイド、61…CPU(記録制御手段)、64…フラッシュメモリー(記憶手段)、100…記録媒体、Wa…走査範囲、Pa…ホームポジション、Pb…シートガイド跳ね上げ位置、Pc…リボン交換位置、Pd…幅検出開始位置、Pe…端位置、Ta…加速区間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する記録装置、および、この記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体上に記録ヘッドを走査して記録を行う記録装置において、記録媒体の厚みが変化する段差や、厚みのある記録媒体に記録ヘッドが乗り上げる際に、記録ヘッドが記録媒体から離れてしまい、一部の文字等が記録されない等の問題が生じることが指摘されている。この問題を解決するため、例えば、光センサーにより記録媒体の厚みの変化を検出して、厚みが変化する場合に記録ヘッドの駆動速度を低速にするものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−117277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録媒体から記録ヘッドが離隔してしまう現象は記録媒体が有する段差だけでなく、記録媒体の端に記録ヘッドが乗り上げる際にも起こり得るが、この場合、光センサー等により段差の高さや位置を検出することは難しいという問題があった。従って、記録ヘッドが乗り上げる際の記録品質の低下を防止するための対策は、記録ヘッドを低速で駆動することであったが、スループットの低下を招くという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、記録ヘッドが記録媒体に乗り上げることに起因する不具合を防止し、高い記録品質を保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段と、前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行う記録制御手段と、を備え、前記記録制御手段は、記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を越えて移動する際に、移動開始位置に基づいて記録ヘッドの移動速度の上限を低くするので、記録ヘッドの移動速度が速すぎるために生じる不具合を確実に防止できる。また、記録ヘッドの移動開始位置により、例えば記録媒体の端を越えるときの記録ヘッドの移動速度が高速に達しないと予測される場合には、記録ヘッドの移動速度の上限を変更しない。このため、記録ヘッドの移動速度の上限を変更する頻度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0006】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録制御手段は、記録動作以外に、前記記録ヘッドの移動可能範囲内の所定の位置に前記記録ヘッドを移動させる制御を実行可能であり、この制御の次に前記記録動作を開始する際には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録動作以外の動作により、例えば移動可能範囲の端等の所定位置まで記録ヘッドを移動させてから記録を開始する際のように、記録媒体の端を越えるときの記録ヘッドの移動速度が高速に達する可能性がある場合に、記録ヘッドの移動速度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合が発生しやすい状況に限って、記録ヘッドの移動速度を抑え、不具合の発生を防止できる。
【0007】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記所定の位置は、前記記録ヘッドの移動可能範囲の端部に予め設定された位置であることを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を越える際の移動速度が高速になる可能性が高い場合に移動速度の上限の速度を抑えるので、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録制御手段は、前記記録ヘッドの移動速度の上限が所定速度以上に設定されている場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドの移動速度の上限が高速に設定されている場合に、記録媒体の端を越える際の移動速度を抑えるので、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0009】
また、本発明は、上記の記録装置において、前記記録制御手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる際に、その移動開始位置から前記記録媒体の端までの距離が所定以上の場合に、前記記録ヘッドの移動速度の上限を変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドの移動開始位置から記録媒体の端までの距離が長く、記録媒体の端を越えるまでに記録ヘッドが十分に加速され、高速で記録媒体の端を越える可能性がある場合に、記録ヘッドの移動速度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段とを備えた記録装置を制御するための制御方法であって、前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行い、この記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更することを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を越えて移動する際に、移動開始位置に基づいて記録ヘッドの移動速度の上限を低くするので、記録ヘッドの移動速度が速すぎるために生じる不具合を確実に防止できる。また、記録ヘッドの移動開始位置により、例えば記録媒体の端を越えるときの記録ヘッドの移動速度が高速に達しないと予測される場合には、記録ヘッドの移動速度の上限を変更しない。このため、記録ヘッドの移動速度の上限を変更する頻度を抑えることができる。これにより、記録ヘッドの移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録ヘッドが記録媒体の端を超えて移動する際に記録ヘッドの移動速度が速すぎるために生じる不具合を確実に防止でき、かつ、記録ヘッドの移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係るプリンターの外観斜視図である。
【図2】プリンター本体を示す斜視図である。
【図3】プリンター本体の側断面図である。
【図4】プリンター本体の上部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】プリンター本体の要部拡大断面図である。
【図6】プリンター本体の要部拡大断面図である。
【図7】プリンターの制御系の機能ブロック図である。
【図8】記録時のプリンターの従来の動作を示す説明図である。
【図9】第1の実施形態に係るプリンターの動作を示す説明図である。
【図10】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係るプリンターの動作を示す説明図である。
【図12】第2の実施形態に係るプリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る記録装置としてのプリンター10の外観を示す斜視図である。本実施形態のプリンター10は、複数の記録ワイヤーを備えた記録ヘッド18(図2および図3参照)を具備したドットインパクトプリンターであり、この記録ヘッド18から、インクリボンを介して記録ワイヤーを記録媒体へ向けて打ち出すことにより、記録媒体の記録面にドットを形成し、文字、画像、記号等を記録する。プリンター10により記録される画像等は1行または複数行からなり、行毎に記録される。
プリンター10には外部の機器としてホストコンピューター68(図7)が接続され、プリンター10は、ホストコンピューター68から入力される各種コマンド及びデータに基づいて、行単位、またはページ単位で記録(印刷)を実行する。
【0014】
プリンター10において使用可能な記録媒体としては、定型サイズまたは定形外の任意サイズのカットシートのほか、ロール紙やファンフォールド紙等の連続シートがある。これらカットシートおよび連続シートは、普通紙、複写紙、厚紙等の紙類、あるいは合成樹脂製のシートにより構成され、これらのシートにコーティングや浸潤等の加工を施したものを用いてもよい。また、カットシートとして、定形サイズのカット紙(PPC用紙や葉書等)に加え、複数のシートを綴じた冊子形態の通帳等に記録することも可能である。
本実施の形態においては、プリンター10により、上記のカットシートまたは通帳である記録媒体100に画像を記録する場合について説明する。
【0015】
図1に示すプリンター10は、上部に開閉可能に配設されたカバー12の下に、上部ケース13と下部ケース14とが上下に連結されて構成される外装に本体を収容した構成を有する。この外装の前面には記録媒体100を手差し供給および排出するための手差口15が設けられている。なお、本実施の形態では、手差口15へ記録媒体100を挿入する向きを向きAとし、手差口15から記録媒体100を排出する方向を向きBとし、図中に矢印A、Bで示す。
【0016】
図2は、プリンター10の外装に収容されたプリンター本体11を示す斜視図であり、図3は、プリンター10の側断面図である。図3中に示す符号Cは、記録媒体100の搬送経路を示す。
図2および図3に示すように、プリンター本体11は、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17を含む本体フレームを有し、この本体フレームに、記録ヘッド18およびキャリッジ19を含んで構成される記録機構部20、記録ヘッド18に対向するプラテン21、第1搬送ローラー22および第2搬送ローラー23を備えた第1搬送機構部24、第3搬送ローラー25および第4搬送ローラー26を備えた第2搬送機構部27、記録媒体100が有する磁気ストライプ101の磁気情報の読取/書込を行う磁気ヘッド34を備えた磁気データ読書部29、および、磁気情報の読取/書込時に記録媒体100の浮き上がりを上から押えるシート押え部30を設けた構成となっている。
【0017】
左サイドフレーム16および右サイドフレーム17は、プリンター本体11の左右両端部において互いに対向するよう立設され、両サイドフレーム16、17間にはキャリッジ軸31が架け渡され、さらに、両サイドフレーム16、17に跨って、平坦面形状の前方シート案内32および後方シート案内33が固定され、記録媒体100が搬送される搬送経路Cの床面を構成する。前方シート案内32と後方シート案内33との間には後述するプラテン21が配置される。
また、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17には、記録媒体100の搬送経路Cの天井面を構成するとともに、後述する第2搬送ローラー23、第4搬送ローラー26を支持するフロントフレーム45及びリアフレーム46が固定される。
【0018】
第1搬送機構部24は、プラテン21よりフロント側に位置し、第2搬送機構部27は、プラテン21のリア側に位置する。第1搬送ローラー22および第3搬送ローラー25は搬送モーター36(図7)および図示しない駆動輪列部によって回転駆動される駆動ローラーであり、第2搬送ローラー23および第4搬送ローラー26は、それぞれ、第1搬送ローラー22および第3搬送ローラー25の回転に伴って回転する従動ローラーである。第1搬送機構部24および第2搬送機構部27は、後述する搬送モーター36とともに搬送手段を構成する。
【0019】
図3に示すように、プラテン21と第1搬送ローラー22との間には整列板54が配置される。整列板54は、記録媒体100の幅方向すなわち桁方向に沿って延在し、搬送経路Cに対して垂直な板状部材である。整列板54は、搬送経路Cの下に埋設され、整列モーター37(図7)の動作により搬送経路Cに進退する。整列モーター37の動作によって整列板54を搬送経路Cに突出させ、第1搬送機構部24によって記録媒体100を整列板54に突き当てるように搬送することで、記録媒体100のスキューが修正される。この整列板54と、整列板54を駆動する整列モーター37とを合わせて整列手段が構成される。
磁気ヘッド34は、サイドフレーム16,17間に平行に架け渡された二本の磁気ヘッドガイドに沿って、磁気モーター38(図7)により往復駆動される。この磁気ヘッド34は、記録媒体100として用いられる通帳が有する磁気ストライプ101(図1)に対し、各種の情報を磁気的に記録し、情報の読取を行う。
【0020】
キャリッジ19は、キャリッジ軸31に摺動自在に挿通され、ヘッド移動手段としてのキャリッジ駆動モーター35(図7)の正転または逆転動作により、キャリッジ軸31に沿って走行(走査)される。このキャリッジ19の走査方向を主走査方向とする。主走査方向は桁方向と一致する。
キャリッジ19には記録ヘッド18が搭載され、キャリッジ19と一体となって、記録媒体100の記録面上を主走査方向に沿って移動する。
記録ヘッド18の直下には主走査方向に沿ってプラテン21が配置され、このプラテン21は下方から付勢バネ40(図3)によって付勢されつつ弾性支持されており、この弾性力により記録ヘッド18から突出する記録ワイヤーの突出力を受け止める。
また、キャリッジ19には、リボンカートリッジ39から引き出されたインクリボンが、記録ヘッド18の前方に位置するよう配置される。記録ヘッド18は、主走査方向に走行される間に記録ワイヤーを突出させて、インクリボンを介して記録媒体100の記録面に打ち当て、インクリボンのインクを、プラテン21と記録ヘッド18との間に搬送される記録媒体100に付着させて、この記録媒体100に文字を含む画像を記録する。
【0021】
キャリッジ19には、記録ヘッド18と並べてギャップローラー41が搭載されている。ギャップローラー41は、記録ヘッド18が記録ワイヤーを突出する面の側方に位置する。ギャップローラー41の下端は、記録ワイヤーが打ち出されない状態において記録ヘッド18の先端面よりも下方に位置し、プラテン21を押し上げる付勢バネ40の付勢力に抗して、プラテン21またはプラテン21上の記録媒体100に当接する。ギャップローラー41はキャリッジ19に回転自在に支持されているため、キャリッジ19の走査時に回転しながらプラテン21または記録媒体100に接したまま移動できる。
従って、記録媒体100に記録ヘッド18が記録する場合、ギャップローラー41により記録ヘッド18の先端面と記録媒体100の記録面との距離(ギャップ)が適正な大きさに保たれる。記録を行っている間に記録媒体100の厚みが変化しても、付勢バネ40により弾性支持されたプラテン21が上下に変位して厚みの差が吸収され、ギャップが適正な大きさに保たれる。
【0022】
また、プリンター10は、記録動作を制御するための各種センサーを備えている。
図3に示すように、整列板54のフロント側には複数の整列センサー52が配設される。整列センサー52は、例えば、搬送経路Cを挟んで対向配置された発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)とにより記録媒体100の有無を検出する透過型光センサーである。これら複数の整列センサー52は主走査方向に所定間隔で並べて配置され、複数の整列センサー52の検出状態に基づき、記録媒体100の先端が整列センサー52に沿って整っているかどうか、すなわち記録媒体100の整列が成功したか否かを判別できる。また、記録媒体100の整列が完了した時点で記録媒体100の先端は整列板54の位置にあるから、整列センサー52により整列完了を検出してからの搬送モーター36の動作ステップ数等に基づいて、記録媒体100の搬送方向における位置を求めることができる。
【0023】
キャリッジ19には、記録ヘッド18のリア側に媒体幅検出センサー55が搭載されている。媒体幅検出センサー55は、例えば搬送経路C側に向けて発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)を並べて配置した反射型光センサーである。媒体幅検出センサー55はキャリッジ19の走査に伴いプラテン21上を移動し、この移動中に媒体幅検出センサー55の検出値とキャリッジ19の走査位置とを対応させることにより、記録媒体100の側端の位置や記録媒体100の幅が求められる。
さらに、プリンター10の第2搬送ローラー23のフロント側には挿入センサー53(図7)が配設されている。挿入センサー53は、例えば搬送経路Cを挟んで対向配置された発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)とにより構成される透過型光センサーであり、手差口15から手差し挿入された記録媒体100を検出する。
【0024】
図4は、プリンター本体11の上部を取り外した状態を示す斜視図である。また、図5は記録ヘッド18近傍を示すプリンター本体11の要部拡大断面図である。また、図6は記録ヘッド18近傍の要部拡大断面図である。
図4に示すように、プラテン21の上には、細長い樹脂フィルム製のシートガイド60が主走査方向に延設されている。
図6に示すように、シートガイド60は、フロント側の辺がガイド支持部70により支持され、反対側の辺はプラテン21の上面に接する。記録媒体100が手差口15から挿入され搬送経路Cを記録ヘッド18に向けて搬送されると、記録媒体100の記録面にシートガイド60が接し、このシートガイド60の上にギャップローラー41が当接する。
また、ギャップローラー41は、記録ヘッド18が記録ワイヤーを突出する面よりもフロント側に位置し、フロント側から伸びるシートガイド60にギャップローラー41の周面の一部が乗っていて、キャリッジ19の走査時にはギャップローラー41がシートガイド60上を往復移動する。
【0025】
シートガイド60を支持するガイド支持部70は、図4及び図5に示すように、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17に架け渡されたガイド支持軸71と、このガイド支持軸71を回動自在に支持するガイド支持軸受け72と、ガイド支持軸71の右サイドフレーム17側の端部に固定され、記録ヘッド18側に突出するバネ受け板73と、バネ受け板73とともにガイド支持軸71に固定され、バネ受け板73とは反対側に突出する度当たり部73Aと、バネ受け板73を下方から付勢する付勢バネ75と、この付勢バネ75の下部を収容して下方から支持するバネ収容部74とを備えて構成される。シートガイド60の基端部は、ガイド支持軸71に、例えば両面テープや接着剤等により接着固定される。
右サイドフレーム17には、ガイド支持部70に隣接する押えレバー76が設けられる。押えレバー76は、右サイドフレーム17に回動自在に支持された回動軸78と、この回動軸78からガイド支持部70側へ突出する押え突起79と、押え突起79とは反対側の略上方に突出するカム当接部77とを備えて構成される。押えレバー76は、押えバネ(図示略)によって、図5および図6中の左回り方向に付勢される。押えレバー76の押え突起79は、ガイド支持部70のバネ受け板73の上に乗った状態で係合している。
【0026】
ガイド支持部70は、バネ収容部74に収容された付勢バネ75の付勢力により、ガイド支持軸71を中心として図5中の左回り方向に付勢される。ここで、押えレバー76を付勢する上記の押えバネ(図示略)は、ガイド支持部70を付勢する付勢バネ75よりも強い付勢力を有する。このため、キャリッジ19の走査中は、図5に示すように、押えレバー76が上記の押えバネ(図示略)の付勢力によって付勢され、押え突起79がバネ受け板73を下方へ押圧する。この押圧力により、ガイド支持部70は付勢バネ75の付勢力に抗して図中右回りに回転し、バネ受け板73が押し下げられた状態を保つ。これにより、シートガイド60はプラテン21に押し付けられ、キャリッジ19のギャップローラー41とプラテン21または記録媒体100との間に挟まれる。
キャリッジ19が右サイドフレーム17側の端に設定されたシートガイド跳ね上げ位置に移動すると、ギャップローラー41はシートガイド60の端から離脱し、シートガイド60への押圧力が解除される。とともに、キャリッジ19がシートガイド跳ね上げ位置に移動することで、キャリッジ19の右サイドフレーム17側の側面に形成されたカム斜面19Aが、カム当接部77に当接する。カム当接部77は、カム斜面19Aの接近に伴って、上記押えバネ(図示略)の付勢力に抗して下方に押し下げられ、押えレバー76が図中右回りに回転する。これに伴い、押えレバー76の押え突起79がバネ受け板73に加えていた押圧力が解け、代わって付勢バネ75の付勢力によってバネ受け板73が押し上げられる。そして、ガイド支持部70が図中左回りに回転し、度当たり部73Aが前方シート案内32に当たって停止する。
このため、キャリッジ19がシートガイド跳ね上げ位置にある間、ガイド支持部70は、バネ受け板73が上に、度当たり部73Aが下に位置した状態を保つ。すなわち、シートガイド60は、プラテン21から離れて上方に跳ね上げられている。
【0027】
また、図示はしないが、プラテン21の右サイドフレーム17側の端部には下方に延びる斜面が形成され、この斜面には他の部分よりも一段低い平面となった末端部が繋がっている。キャリッジ19がシートガイド跳ね上げ位置に移動する際、ギャップローラー41はプラテン21の上面に接しながら移動して、上記の末端部で停止する。この状態でガイド支持部70が回転し、シートガイド60が跳ね上げられる。
【0028】
シートガイド60は、手差口15から手差し挿入された記録媒体100がスムーズに記録ヘッド18の下方まで搬送されるよう案内する。
また、ギャップローラー41は、上記のようにプラテン21または記録媒体100の記録面に接しながら回転するローラーであって、空転を避けるため、その周面には摩擦係数が比較的高くなるようゴム等が配されている。この摩擦により、ギャップローラー41が記録媒体100に接した状態で記録媒体100を搬送することは難しくなっているが、記録媒体100とギャップローラー41との間にシートガイド60が介在することにより、記録媒体100とギャップローラー41との摩擦が減殺され、図中A方向に容易に搬送可能となる。さらに、シートガイド60は、記録媒体100として綴じ目を有する冊子や通帳等、高さ(厚み)が変化する段差のあるものを用いた場合に、主走査方向に移動するギャップローラー41が段差をスムーズに乗り越えられるようにする作用をも有する。
記録媒体100を行送りまたは記録媒体100の排出のために図中B方向に記録媒体100を搬送する際には、キャリッジ19を上記シートガイド跳ね上げ位置に移動させることで、シートガイド60が跳ね上げられる。このため、シートガイド60は記録媒体100から離れ、搬送の障害にならない。
【0029】
プリンター10は、第1、第2搬送機構部24,27の駆動制御、キャリッジ19の走行制御、記録ヘッド18の記録ワイヤーによる記録動作の制御、および磁気データ読書部29の読み書き制御等、プリンター10全体を制御する制御部として、例えばプリンター本体11のリア側の下方に、制御基板部50を備えている。
【0030】
図7は、プリンター10の電気的構成、すなわち制御基板部50が具備する制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、プリンター10は、CPU61、CPU61により実行されるプログラムおよびデータを一時的に記憶するRAM63、CPU61により実行される制御プログラム等を記憶する記憶手段としてのフラッシュメモリー64を備え、これらの各部はバス62を介して相互に接続される。また、バス62にはゲートアレイ(G/A)65が接続され、このゲートアレイ65には、記録ヘッド18、整列センサー52、挿入センサー53、媒体幅検出センサー55、およびモータードライバー66が接続される。ゲートアレイ65は、整列センサー52、挿入センサー53および媒体幅検出センサー55の出力電圧値を取得して、CPU61に出力する。また、ゲートアレイ65は、CPU61の制御のもとに記録ヘッド18を駆動して、記録ヘッド18が備える記録ワイヤー(図示略)の突出動作を行わせる。さらに、ゲートアレイ65は、CPU61の制御のもと、モータードライバー66を制御することにより、キャリッジ駆動モーター35、搬送モーター36、整列モーター37、および磁気モーター38の各モーターを駆動させる。
【0031】
キャリッジ駆動モーター35は、キャリッジ19を主走査方向に沿って移動させるモーターであり、このキャリッジ駆動モーター35の正転および逆転によりキャリッジ19が往復移動する。搬送モーター36は、上述した第1搬送ローラー22および第3搬送ローラー25を回転させるモーターであり、整列モーター37は、記録媒体100の搬送路に整列板54を進出/退出させるモーターである。また、磁気モーター38は、磁気データ読書部29(図2)を走査させるモーターである。これらのモーターは、例えばステッピングモーターで構成され、その動作ステップ数は、モータードライバー66から各モーターに入力されるパルスに従う。各モーターの動作ステップ数は、ロータリーエンコーダー(図示略)やリニアエンコーダー(図示略)を使用すると、より正確に監視できる。また、そのパルス数により求められたキャリッジ位置と、センサーの出力とを関係付けすることで、用紙位置・用紙端位置を求めることができる。
【0032】
CPU61は、フラッシュメモリー64に記憶された制御プログラムに基づいて、ゲートアレイ65およびモータードライバー66を制御するとともに、ゲートアレイ65を介して各センサーの検出状態を取得する。例えば、CPU61は、各センサーの出力電圧値を、ゲートアレイ65を介して所定周期(例えば、100[ms(ミリ秒)])でサンプリングしてA/D変換することにより、これら出力電圧を示すデータを取得し、このデータに基づいて各センサーにおける記録媒体100の検出状態を取得する。
【0033】
さらに、バス62には、プリンター10の外部装置に接続されるインターフェース(I/F)67が接続される。インターフェース67は、シリアルインターフェース、パラレルインターフェース、USBインターフェース、ネットワークカードインターフェース等の各種規格に準じたコネクターを備え、このコネクターを介して外部装置に接続される。
インターフェース67には、プリンター10外部のホストコンピューター68が接続される。ホストコンピューター68は、オペレーターの操作に従って、CPU61との間で各種情報を送受信する。この情報には、記録ヘッド18による記録の開始を指示する記録開始位置指定コマンド、記録コマンド、搬送コマンド、排出コマンド等の各種コマンド、記録媒体100に記録する文字や画像のデータ等が含まれる。ここで、記録開始位置指定コマンドには、記録媒体100のサイズ、記録媒体100の上端、下端、左端、右端の各端部から記録領域までの距離、記録領域における行数、1行あたりの桁数等が含まれる。なお、バス62に、入力操作を受け付ける操作部や動作結果等を表示する表示部を接続してもよい。
【0034】
図8は、記録時のプリンターの従来の動作を示す説明図であり、(A)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す平面図であり、(B)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す断面図である。図8(C)及び(D)はキャリッジ19の移動速度の変化を示す図表である。なお、以下の説明ではキャリッジ19の移動速度について説明するが、キャリッジ19の移動速度は、そのまま記録ヘッド18の移動速度ということができる。
上述のように、プリンター10は手差口15(図1)から挿入された記録媒体100の傾きを整列板54により補正する機能を有する。このため、プリンター10で使用可能な記録媒体100の幅は、手差口15の幅より小さければ特に制限されない。従って、キャリッジ19の走査範囲Waにおける記録媒体100の位置は制限されず、例えば図8(A)、(B)に示すようにキャリッジ19の走査範囲Waのどちらの端からも離れた位置で搬送されることもある。CPU61は、キャリッジ19を走査しながら媒体幅検出センサー55の検出値を取得し、この検出値が変化した位置を求めることで、記録媒体100の両側の端位置Peを検出する。記録媒体100には、通常、両端から所定の端マージンをとった記録領域105が設定される。
また、CPU61は、ホストコンピューター68から送信された記録開始位置指定コマンドに基づき、記録媒体100における記録領域105の両側の端位置Psの位置を取得する。プリンター10はキャリッジ19を往復走査しながら、一方向の走査を指す1パスで1行を記録するラインプリンターである。このため、記録領域105は行ごと(パスごと)に指定可能である。
【0035】
図8(A)〜(D)に示すように、走査範囲Waの左サイドフレーム16側の端には、待機時にキャリッジ19が位置するホームポジションPaが設定され、このホームポジションPaから少し離れた位置に、リボン交換位置Pcが設定される。キャリッジ19がリボン交換位置Pcに位置している状態では、リボンカートリッジ39の交換が可能になる。プリンター10は、いつでも容易にリボンカートリッジ39を交換できるように、記録ヘッド18による記録完了後、所定時間(例えば、3秒)が経過するとキャリッジ19をリボン交換位置Pcに移動させる。プリンター10が停止している間、キャリッジ19はリボン交換位置Pcに位置していることが多い。
一方、走査範囲Waの右サイドフレーム17側の端には、上述したシートガイド跳ね上げ位置Pbがある。上記のように、記録媒体100の搬送時にはシートガイド60を跳ね上げる場合があるが、その都度、キャリッジ19はシートガイド跳ね上げ位置Pbに移動する。また、シートガイド跳ね上げ位置Pbから少し中央寄りには、幅検出開始位置Pdが設定されている。CPU61が媒体幅検出センサー55により記録媒体100の端位置Peを検出する場合、キャリッジ19を幅検出開始位置Pdから移動させる。
【0036】
キャリッジ19は、記録媒体100に記録を行っている間を除き、ホームポジションPa、シートガイド跳ね上げ位置Pb、リボン交換位置Pc及び幅検出開始位置Pdのいずれかに位置している。これらの位置は、本発明の所定の位置に相当する。キャリッジ19は、リボン交換位置Pcに位置していることが最も多く、記録媒体100を搬送する間はシートガイド跳ね上げ位置Pbに移動することが多い。また、記録媒体100がプリンター10内部に存在しない状態では、キャリッジ19はホームポジションPaに位置し、記録媒体100が手差口15から挿入されると、記録実行の前に、幅検出開始位置Pdに移動される。キャリッジ19をホームポジションPa、シートガイド跳ね上げ位置Pb、リボン交換位置Pc及び幅検出開始位置Pdに移動させる動作は、CPU61が制御プログラムに従って専用のコマンドを実行することで行われる。すなわち、キャリッジ19の位置を走査範囲Waにおける座標または桁位置で指定する動作とは異なり、予め指定された位置Pa、Pb、Pc、Pdへ移動するよう指示するコマンドが実行される。
【0037】
図8(A)及び(B)に示す例で、記録媒体100の記録領域105に文字を記録する場合、CPU61は、モータードライバー66を制御してキャリッジ駆動モーター35を駆動し、キャリッジ19を記録領域105の端位置Psまで移動させる。CPU61は、そのままキャリッジ19を移動させながら記録ヘッド18を駆動して文字を記録し、記録領域105の反対側の端位置Psから走査範囲Waの端までの間にキャリッジ19を減速させる。
図8(C)はリボン交換位置Pcを移動開始位置とした場合のキャリッジ19の速度の変化を示、図8(D)はリボン交換位置Pcの中央寄りの位置を移動開始位置とした場合の速度の変化を示す。
図8(C)の例では、CPU61の制御によりキャリッジ駆動モーター35に通電開始されてからキャリッジ19は加速区間Taで徐々に加速され、記録媒体100の端位置Peを越えるまでに上限の速度すなわち最高速度に達する。最高速度とは、キャリッジ19を加速する目標速度と言い換えることができる。
これに対し、図8(D)の例ではキャリッジ19の移動を開始してから加速区間Taが過ぎる前に記録媒体100の端位置Peに達する。このため、キャリッジ19が端位置Peを越えるときの速度は最高速度より低速である。
【0038】
キャリッジ19が端位置Peを越える際には、ギャップローラー41が記録媒体100に当たり、記録媒体100の厚み分だけキャリッジ19は上に移動する。キャリッジ19の移動速度が高速であると、記録ヘッド18が記録領域105に達するまでにキャリッジ19の上下動が収まらず、文字や画像が記録されない、いわゆる文字抜けが生じることがある。キャリッジ19が端位置Peを越えるときの速度は、図8(C)、(D)で説明したように、キャリッジ19の移動開始位置と端位置Peとの間の距離が、加速区間Taの長さより長いかどうかが大きく影響する。例えば図8(C)のように、キャリッジ19が最高速度に達してから端位置Peを越える場合には起きやすく、図8(D)のように低速で端位置Peを越える場合には起こりにくい。また、設定されたキャリッジ19の最高速度も影響する。
【0039】
本実施形態のプリンター10は、キャリッジ19の移動開始位置に基づき、キャリッジ19が高速で端位置Peを越えることが明らかな場合には、キャリッジ19の最高速度を抑える制御を行う。
図9は、プリンター10の動作を示す説明図であり、(A)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す断面図、(B)はキャリッジ19の移動速度の変化を示す図表である。
プリンター10は、CPU61の制御によりキャリッジ19を移動させる際に、移動開始位置がホームポジションPaまたはリボン交換位置Pcである場合には、設定されているキャリッジ19の最高速度Vhを、より低速の速度Vdに変更して、キャリッジ駆動モーター35を駆動する。移動開始位置が走査範囲Waの端部でなければ、記録媒体100の端位置Peまでに最高速度Vhへの加速区間Taが終了する可能性が低いため、文字抜けを回避できる。キャリッジ19を逆方向に移動させるパスにおいても同様であり、シートガイド跳ね上げ位置Pbまたは幅検出開始位置Pdを移動開始位置とした場合、キャリッジ19が端位置Peに達するまでに、キャリッジ19の速度が最高速度Vhに達している可能性は高い。
【0040】
プリンター10において、最高速度Vhは複数段階の速度のいずれかに設定可能である。最高速度Vhが比較的低い速度に設定されている場合は、キャリッジ19の移動をホームポジションPaやシートガイド跳ね上げ位置Pbから開始しても文字抜けを起こす可能性が小さい。従って、最高速度Vhの設定値が、最高速または最高速から2〜3段下の速度に設定されている場合のみ、上記の制御を行う。プリンター10は、キャリッジ19の移動速度の上限として設定可能な複数段階の設定値、これら複数段階の設定値のうち実際に設定された最高速度Vhの設定値、最高速度を低速に変更する際の速度Vdの設定値等をフラッシュメモリー64に記憶している。
【0041】
図10は、プリンター10の動作を示すフローチャートである。
この図10に示す動作は、CPU61によって、フラッシュメモリー64に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、実現される。この図10に示す動作の実行時、CPU61は記録制御手段として機能する。
プリンター10のCPU61は、挿入センサー53によって手差口15から記録媒体100が挿入されたことを検出すると(ステップS11)、整列モーター37によって整列板54を搬送経路Cに進出させて、搬送モーター36により第1搬送機構部24を駆動し、記録媒体100を整列させる(ステップS12)。CPU61は、整列センサー52の検出値に基づいて整列が完了したことを検出すると、ホストコンピューター68から送信された記録位置指定コマンドを受信し(ステップS13)、このコマンドにより指定された記録開始位置まで記録媒体100を搬送する(ステップS14)。
【0042】
CPU61は、ホストコンピューター68から記録コマンドと搬送コマンドを受信し(ステップS15)、記録を開始する。すなわち、CPU61は、1パス分の記録データを取得し(ステップS16)、キャリッジ19の最高速度の設定値をフラッシュメモリー64から取得する(ステップS17)。次いで、CPU61は、取得した最高速度が、設定可能な複数段階の最高速度のうち上位の速度であるか否かを判別する(ステップS18)。この判別は、取得した最高速度をしきい値と比較することで行われる。
【0043】
キャリッジ19の最高速度がしきい値以下である場合(ステップS18;No)、CPU61は、設定された最高速度を用いてキャリッジ19を記録開始位置まで移動させ(ステップS19)、1パス分の記録を実行して、搬送コマンドに従って記録媒体100を搬送する(ステップS20)。その後、CPU61は、現在セットされている記録媒体100に対する記録が完了したか否かを判別し(ステップS21)、記録が完了していない場合は(ステップS21;No)ステップS16に戻る。また、記録が完了した場合は(ステップS21;Yes)、CPU61はホストコンピューター68から送信される排紙コマンドを受信し(ステップS22)、記録媒体100を手差口15に向けて搬送し(ステップS23)、新しい記録媒体100が手差口15に挿入されるのを待つ待ち状態に移行して(ステップS24)、本処理を終了する。
【0044】
一方、CPU61は、最高速度の設定値がしきい値より高速であると判別した場合(ステップS18;Yes)、記録媒体100が厚みのある冊子形態であるか否かを判別する(ステップS25)。記録媒体100が冊子形態でない場合には(ステップS25;No)、CPU61はステップS19に移行する。記録媒体100が厚みのないカットシートである場合は文字抜けの心配がほとんど無いためである。また、記録媒体100が冊子形態である場合(ステップS25;Yes)には、CPU61は、キャリッジ19の移動開始位置を特定し(ステップS26)、この位置が特定の位置Pa、Pb、Pc、Pdのいずれかであるかを判別する(ステップS27)。ステップS26では、記録開始前に、位置Pa、Pb、Pc、Pdへキャリッジ19を移動するコマンドをCPU61が実行したか否かにより正確に判別できる。
キャリッジ19の移動開始位置が特定の位置でなければ(ステップS27;No)、CPU61はステップS19に移行して記録を実行する。また、キャリッジ19の移動開始位置が特定の位置Pa、Pb、Pc、Pdである場合は(ステップS27;Yes)、CPU61は、キャリッジ19の最高速度を予め設定された低速側の速度に変更して、キャリッジ19を移動開始位置まで移動させ(ステップS28)、ステップS20に移行する。ここで、キャリッジ19の移動速度の上限(最高速度)を変更した後は、その1パスにおいては変更された移動速度の上限が維持されるが、次以後のパス、すなわちキャリッジ19の走査方向を逆に切り替えた後では、移動速度の上限は予め設定されている速度に戻される。これにより、キャリッジ19の移動速度の上限を抑えるパスが最小限に止まるので、スループットの低下を防止できる。
【0045】
以上のように、本発明を適用した第1の実施形態に係るプリンター10は、記録ヘッド18と、記録ヘッド18を往復移動させるキャリッジ駆動モーター35及び駆動輪列(図示略)を含むヘッド移動手段とを備え、CPU61の制御により、記録ヘッド18の移動範囲内にある記録媒体100に対し、記録ヘッド18を移動させながら記録を行い、CPU61は、記録開始時に記録ヘッド18が記録媒体100の記録面上から外れた位置にある場合に、記録ヘッド18を記録媒体100の端位置Peを越えて記録媒体100上の記録開始位置(端位置Ps)まで移動させ、この移動中の記録ヘッド18の移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更する。これにより、記録ヘッド18を搭載したキャリッジ19が端位置Peを越えて移動する際に、記録媒体100の厚みによって生じるキャリッジ19の上下動に起因する文字抜け等の不具合を防止できる。
【0046】
具体的には、CPU61は、記録動作以外に、記録ヘッド18の走査範囲Waにおける所定の位置(ホームポジションPa、シートガイド跳ね上げ位置Pb、リボン交換位置Pc、幅検出開始位置Pd)に記録ヘッド18を移動させる制御を実行可能であり、この制御の次に記録動作を開始する際には、キャリッジ19の移動速度の上限を低速に変更する。このように、キャリッジ19が走査範囲Waの端から移動を開始し、記録媒体100の端を越えるときのキャリッジ19の移動速度が高速に達する可能性がある場合に、移動速度を抑える。これに対し、キャリッジ19の移動開始位置が上記の所定の位置でなく、記録媒体100の端位置Peを越えるときのキャリッジ19の移動速度が高速に達しない可能性が高い場合には、キャリッジ19の移動速度の上限を変更しない。これにより、キャリッジ19の移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、キャリッジ19の移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0047】
さらに、CPU61は、キャリッジ19の移動速度の上限を低速に変更する制御を、移動速度の上限が所定速度以上に設定されている場合に行うので、キャリッジ19の移動速度が不具合を生じる可能性があるような高速の場合に限り、移動速度を抑制する。キャリッジ19の移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、キャリッジ19の移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0048】
なお、上記第1の実施形態では、キャリッジ19が記録媒体100の端位置Peを越えるときの移動速度が高速になる場合として、キャリッジ19の移動開始位置が所定の位置(Pa、Pb、Pc、Pd)である場合に移動速度の上限を低速にする制御を行っていた。本発明はこれに限定されるものではなく、キャリッジ19の移動開始位置から端位置Peまでの距離に基づいて、端位置Peを越えるときの移動速度が高速か否かを判別してもよい。この場合について、第2の実施形態として説明する。
【0049】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係るプリンター10の動作を示す説明図であり、(A)はキャリッジ19の走査範囲と記録媒体100の位置関係を示す断面図、(B)はキャリッジ19の移動速度の変化を示す図表である。
また、図12はプリンター10の動作を示すフローチャートである。
本第2の実施形態において、プリンター10の機械的構成および図7に示す制御系の各ブロックは上記第1の実施形態と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0050】
この第2の実施形態において、プリンター10は、CPU61の制御によりキャリッジ19を移動させる際に、移動開始位置と、記録媒体100の端位置Peとの間の距離を求め、この距離が加速区間Taより長い場合には、キャリッジ19の移動速度の上限をより低い速度に変更する。
【0051】
図11(A)及び(B)に示す例では、キャリッジ19の移動開始位置Csから記録媒体100の端位置Peまでの距離Lは、設定されているキャリッジ19の最高速度Vhまで加速するための加速区間Taよりも長い。このため、キャリッジ19は最高速度Vhで端位置Peに衝突するので、端位置Peを乗り越えるときのキャリッジ19の上下動が、キャリッジ19が記録領域105の端位置Psに達するまでに収まらず、文字抜け等の不具合を生じる可能性がある。そこで、CPU61は、キャリッジ19の移動速度の上限を、最高速度Vhから速度Vdに変更する。この場合、キャリッジ19の移動速度は短時間で上限である速度Vdに達するが、この速度Vdは高速でないため、端位置Pe通過時のキャリッジ19の上下動は、キャリッジ19が端位置Psに達するまでに収束する。なお、加速区間Taの長さは最高速度Vhの値によって異なるため、CPU61は、現在設定されている最高速度に対応する加速区間の長さを比較に用いる。また、距離Lが加速区間Ta以下である場合であっても、キャリッジ19の速度が、文字抜け等を招く可能性がある速度を超える場合には、キャリッジ19の移動速度の上限を変更してもよい。この場合、距離Lと、加速区間Taよりも短い所定のしきい値L1が予めフラッシュメモリー64に記憶されており、このしきい値L1よりも距離Lが長いかどうかが判別される。
【0052】
また、上述のように、CPU61は、媒体幅検出センサー55によって記録媒体100の端位置Peを検出する幅検出動作を実行することで、走査範囲Waにおける端位置Peの位置を、座標或いは桁位置によって検出し、フラッシュメモリー64に記憶する。これに対し、キャリッジ19の移動開始位置Csは、様々な方法で特定できる。例えば、プリンター10が、走査範囲Waにおけるキャリッジ19の位置を検出するために、キャリッジ軸31に平行にリニアエンコーダー(図示略)を備えた構成とすることが可能である。この場合、リニアエンコーダーの検出値により、移動開始時におけるキャリッジ19の位置、すなわち移動開始位置Csを特定できる。
【0053】
図12に示す動作のうち、ステップS11〜25及びステップS28の動作は、上記第1の実施形態で説明した動作(図10)と同様である。この図12に示す動作の実行時、CPU61は記録制御手段として機能する。
第2の実施形態においては、1パスの記録を実行する前に、キャリッジ19の移動速度の上限がしきい値より高速か否か(ステップS18)、及び、記録媒体100が厚みのある冊子形態であるか否か(ステップS25)を判別し、記録媒体100が冊子形態である場合には、キャリッジ19の移動開始位置を特定する(ステップS31)。
次いで、CPU61は、キャリッジ19の移動開始位置から、記録媒体100の端位置Peまでの距離が、設定されている最高速度を適用した場合の加速区間より長いか否かを判別する(ステップS32)。そして、上記の距離が加速区間以下の場合は(ステップS32;No)、CPU61はステップS19に移行し、加速区間よりも長い場合には(ステップS32;Yes)、ステップS28に移行して、キャリッジ19の最高速度を予め設定された低速側の速度に変更して、キャリッジ19を移動開始位置まで移動させ、ステップS20に移行する。
【0054】
このように、キャリッジ19(記録ヘッド18)を記録媒体100の端位置Peを越えて移動させる際に、その移動開始位置から記録媒体100の端位置Peまでの距離が所定以上の場合に、キャリッジ19の移動速度の上限を変更するので、キャリッジ19が十分に加速され、高速で端位置Peを越える可能性がある場合に、キャリッジ19の移動速度を抑えることができる。これにより、記録ヘッド18の移動速度に起因する不具合の発生を防止し、かつ、記録ヘッド18の移動速度の上限値を変更する頻度を抑えてスループットの低下を防ぐことができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。例えば、上記実施の形態においては、キャリッジ19の移動速度の上限を複数段階に設定可能であるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、速度を示す設定値を用いて任意の速度で設定できる構成としてもよい。また、上記実施形態では、記録ヘッド18をキャリッジ19に搭載し、記録媒体100の搬送方向と直交する方向に往復走査する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録媒体100の搬送方向に対して斜めにキャリッジ19を移動させてもよいし、搬送方向とキャリッジ19の移動方向とが同方向出会ってもよい。
【0056】
また、記録ヘッド18が、記録媒体100の端に乗り上げる際に記録媒体100の厚みにより移動する構成であれば特に限定されず、具体的には、記録ワイヤーを突出するドットインパクトヘッドで構成される記録ヘッド18を備えたドットインパクトプリンターの他、記録ヘッド18からインクを噴射して記録を行うインクジェット式プリンターにも本発明を適用可能である。
さらに、プリンター10は、1つのホストコンピューター68に接続される形態に限らず、複数のホストコンピューター68に接続されてもよいし、通信ネットワークを介してホストコンピューターに接続される構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、本発明をプリンター10に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の機器(複写機等)に組み込まれた記録装置に適用することも可能である。その他、上記実施の形態に係る他の細部構成についても、任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
10…プリンター(記録装置)、18…記録ヘッド、19…キャリッジ、21…プラテン、24…第1搬送機構部、27…第2搬送機構部、35…キャリッジ駆動モーター(ヘッド移動手段)、36…搬送モーター、41…ギャップローラー、50…制御基板部、60…シートガイド、61…CPU(記録制御手段)、64…フラッシュメモリー(記憶手段)、100…記録媒体、Wa…走査範囲、Pa…ホームポジション、Pb…シートガイド跳ね上げ位置、Pc…リボン交換位置、Pd…幅検出開始位置、Pe…端位置、Ta…加速区間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段と、
前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行う記録制御手段と、を備え、
前記記録制御手段は、記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更すること、
を特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録制御手段は、記録動作以外に、前記記録ヘッドの移動可能範囲内の所定の位置に前記記録ヘッドを移動させる制御を実行可能であり、この制御の次に前記記録動作を開始する際には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記所定の位置は、前記記録ヘッドの移動可能範囲の端部に予め設定された位置であることを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録制御手段は、前記記録ヘッドの移動速度の上限が所定速度以上に設定されている場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録制御手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる際に、その移動開始位置から前記記録媒体の端までの距離が所定以上の場合に、前記記録ヘッドの移動速度の上限を変更することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項6】
記録ヘッドと、前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段とを備えた記録装置を制御するための制御方法であって、
前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行い、この記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更すること、
を特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項1】
記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段と、
前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行う記録制御手段と、を備え、
前記記録制御手段は、記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更すること、
を特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録制御手段は、記録動作以外に、前記記録ヘッドの移動可能範囲内の所定の位置に前記記録ヘッドを移動させる制御を実行可能であり、この制御の次に前記記録動作を開始する際には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記所定の位置は、前記記録ヘッドの移動可能範囲の端部に予め設定された位置であることを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録制御手段は、前記記録ヘッドの移動速度の上限が所定速度以上に設定されている場合に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる移動中の速度の上限を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録制御手段は、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて移動させる際に、その移動開始位置から前記記録媒体の端までの距離が所定以上の場合に、前記記録ヘッドの移動速度の上限を変更することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項6】
記録ヘッドと、前記記録ヘッドを往復移動させるヘッド移動手段とを備えた記録装置を制御するための制御方法であって、
前記記録ヘッドの移動範囲内にある記録媒体に対し、前記記録ヘッドを移動させながら記録を行い、この記録開始時に前記記録ヘッドが前記記録媒体から外れた位置にある場合には、前記記録ヘッドを前記記録媒体の端を越えて前記記録媒体上の記録開始位置まで移動させ、この移動中の記録ヘッドの移動速度の上限を、移動開始位置に基づいて、設定された上限の速度より低い速度に変更すること、
を特徴とする記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162035(P2012−162035A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25267(P2011−25267)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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