説明

記録装置、及び、記録装置の制御方法

【課題】 冊子や単票紙等の複数種類の記録媒体を用いる記録装置において、記録媒体の種類に拘わらず迅速かつ的確な記録動作を行えるようにする。
【解決手段】 記録媒体の厚みに応じて変位可能に配設された第2搬送ローラ23A〜23Fを備え、記録媒体に画像を記録するプリンタ10において、第2搬送ローラ23A〜23Fについて、記録媒体の記録面に垂直な方向における位置または変位量を検出するローラ変位センサ57A〜57Fを設け、ローラ変位センサ57A〜57Fにより検出される第2搬送ローラ23A〜23Fの位置または変位量に基づいて、記録媒体が綴じ部を有する冊子であるか、単票紙であるかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数枚のシートを綴じた冊子または単票紙に、文字を含む画像を記録する記録装置、及び、この記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚のシートを綴じた冊子に、記録ワイヤによって文字を含む画像を記録する記録装置が知られている。冊子に記録を行う場合、例えば、記録ヘッドが冊子の綴じ部を跨ぐ際に記録ワイヤがシート面や綴じ部に引っ掛かる等、単票紙には無い特有の問題に対応する必要がある。そこで、冊子と単票紙の両方に記録を行う記録装置において、記録媒体が冊子か否か等を、操作者がボタン操作によって入力し、その入力内容に基づいて記録動作の制御を行う例があった(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2828624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された記録装置は、記録媒体を記録装置にセットする毎に、操作者が記録媒体の種類に応じてボタン操作を行わなくてはならず、操作が煩雑であった。
上述したように、記録媒体として冊子を用いる場合、綴じ部を境にして厚みが変化することから、綴じ部で記録ワイヤを突出させると記録ワイヤが破損するおそれがある。また、記録ヘッドが綴じ部を跨ぐように改行動作を行ってしまうと、記録ヘッドが記録媒体に接触して、画像の擦れや記録媒体の破れを生じるおそれがある。このため、冊子の綴じ方向に応じて記録ヘッドの動作を制御する必要がある。ところが、記録媒体の種類を操作者が入力する構成とした場合、入力操作のミスがあると、記録媒体の種類に適合しない動作が行われ、記録品質の低下や部品の破損等を招くおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、冊子や単票紙等の複数種類の記録媒体を用いる記録装置において、操作者の手間を軽減しつつ、記録媒体の種類に拘わらず迅速かつ的確な記録動作を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体の厚みに応じて変位可能に配設された搬送ローラを備え、この搬送ローラにより搬送される記録媒体上で記録ヘッドを走査し、この記録ヘッドから前記記録媒体に対して記録ワイヤを突出させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置において、前記搬送ローラについて、前記記録媒体の記録面に垂直な方向における位置または変位量を検出する変位センサと、前記変位センサにより検出される前記搬送ローラの位置または変位量に基づいて、前記記録媒体が綴じ部を有する冊子であるか、単票紙であるかを判別する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明において、前記制御手段が、前記搬送ローラによって前記記録媒体を搬送する間において、前記変位センサにより検出される前記搬送ローラの位置または変位量に、予め定められた横綴じ判別基準値以上の変化があった場合に、前記記録媒体が、前記搬送ローラの搬送方向に直交する方向に延びる綴じ部を有する横綴じの冊子であると判別するようにしてもよい。さらに、前記制御手段が、前記記録媒体が横綴じの冊子であると判別した場合には、前記記録ヘッドが前記記録媒体の綴じ部を跨ぐように前記記録媒体を搬送する際に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の外へ移動させるようにしてもよい。また、本発明において、前記搬送ローラを複数備え、前記制御手段が、複数の前記搬送ローラのうち、前記記録媒体に当接する搬送ローラについて前記変位センサにより検出した位置または変位量を比較し、いずれかの搬送ローラの位置または変位量と他の搬送ローラの位置または変位量との間に、予め定められた縦綴じ判別基準値以上の差がある場合には、前記記録媒体が、前記搬送ローラによる搬送方向に沿って延びる綴じ部を有する縦綴じの冊子であると判別するようにしてもよい。さらに、前記制御手段が、前記記録媒体が縦綴じの冊子であると判別した場合には、前記記録媒体の綴じ部を含む領域における記録を禁止させるようにしてもよい。また、本発明において、前記制御手段が、前記記録媒体に当接する前記搬送ローラについて前記変位センサにより検出される位置または変位量が、予め定められた冊子判別基準値以上であった場合に、当該記録媒体が冊子であると判別するようにしてもよい。
【0007】
本発明は、記録媒体の厚みに応じて変位可能に配設された搬送ローラと、この搬送ローラについて、前記記録媒体の記録面に垂直な方向における位置または変位量を検出する変位センサとを備え、前記搬送ローラにより搬送される記録媒体上で記録ヘッドを走査し、この記録ヘッドから前記記録媒体に対して記録ワイヤを突出させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置の制御方法であって、前記変位センサにより検出される前記搬送ローラの位置または変位量に基づいて、前記記録媒体が綴じ部を有する冊子であるか、単票紙であるかを判別することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る記録装置としてのドットインパクトプリンタの外観を示す正面斜視図である。図2は、プリンタ本体11を示す斜視図である。図3は、プリンタ10の側断面図である。
【0010】
図1〜図3に示す記録装置としてのドットインパクトプリンタ10は、記録ヘッド18(図2〜図3参照)が備える記録ワイヤを、インクリボンを介して記録媒体100に押し付け、記録媒体100上にドットを形成することにより、画像(文字を含む)を記録するものである。
【0011】
プリンタ10において利用可能な記録媒体としては、所定長さに切断されたカットシートと、複数枚が連接された連続シートとがある。カットシートとしては、例えば単票紙や単票複写紙などの普通紙の他、通帳等の冊子、或いは葉書、封筒などがあり、連続シートとしては、連続紙、連続複写紙がある。
本実施形態では、記録媒体100として、単票紙(シート)及び冊子の両方を用いる場合について説明する。すなわち、記録媒体100は、単票紙、単票複写紙、或いは、複数枚の記録用紙(シート)が綴じられた一方向の綴じ部を有する冊子であって、記録面を上に向けた場合に底面となる面において、磁気ストライプ101が設けられている。また、記録媒体100が冊子の場合、綴じ部が搬送方向に延びる縦綴じと、綴じ部が搬送方向に直交する方向に延びる横綴じの2種類がある。
【0012】
プリンタ10は、記録装置本体としてのプリンタ本体11と、このプリンタ本体11を覆う外装体としての上部カバー12、上部ハウジング13及び下部ハウジング14とを備えて構成される。上部ハウジング13及び下部ハウジング14の前面には、手差口15が開口している。
【0013】
プリンタ本体11は、左サイドフレーム16及び右サイドフレーム17を備えた本体フレームと、記録ヘッド18及びキャリッジ19を備えた記録機構部20と、記録ヘッド18に対向するプラテン21と、第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23を備えた第1シート搬送機構部24と、第3搬送ローラ25及び第4搬送ローラ26を備えた第2シート搬送機構部27と、記録媒体100に設けられた磁気ストライプ101の磁気情報の読み取り及び書き込みを行う磁気データ読書部28と、記録媒体100の搬送経路に進退自在な整列板29と、磁気情報読み書き時に記録媒体100の浮き上がりを上から押えるシート押え部30と、を有している。
【0014】
上記本体フレームの両サイドフレーム16、17間には、キャリッジ軸31が架け渡されるとともに、両サイドフレーム16、17間に平坦面形状の前方シート案内32及び後方シート案内33が固定して設けられる。これらの前方シート案内32と後方シート案内33との間に、平面形状のプラテン21が配置される。第1シート搬送機構部24と前方シート案内32により、搬送経路Aが構成される。ここで、プリンタ10における前方とは、記録媒体100の搬送路における手差口15側を指し、後方とは、記録媒体100の搬送路において手差口15とは反対の側を指す。
【0015】
キャリッジ19は、キャリッジ軸31に摺動自在に挿通されるとともに、記録ヘッド18を搭載している。キャリッジ19は、当該キャリッジ19を駆動するキャリッジ駆動モータ61(図6)の正転または逆転により、不図示のタイミングベルトを介しキャリッジ軸31に案内されて、このキャリッジ軸31の軸方向及びプラテン21の長手方向と一致する主走査方向に、一対のサイドフレーム16、17の範囲で走行(走査)される。
【0016】
プラテン21は、キャリッジ19の走行方向に延在して平面形状に形成され、その両端が、付勢部材としての付勢ばね40(図3)により記録ヘッド18に向けて付勢されるとともに、弾性支持されている。この付勢ばね40は、圧縮コイルばねである。この付勢ばね40の付勢力により、記録ヘッド18の記録動作時における記録ワイヤの突出力が支持される。また、プラテン21は、記録媒体100の搬送中にこの記録媒体100の厚さが変化した場合、またはプリンタ本体11に厚さの異なる記録媒体100が搬入された場合に、付勢ばね40の付勢力に抗して、記録ヘッド18の先端に設けたコロ(不図示)により押圧されて記録ヘッド18から離れる方向に移動する。これにより、用紙厚に拘わらず、記録ヘッド18の先端と記録媒体100の記録面との間のプラテンギャップが一定に確保される。
【0017】
記録ヘッド18は、キャリッジ19とともに主走査方向に走行される間に、記録ワイヤを突出させてインクリボンに打ち当て、このインクリボンのインクを、プラテン21と記録ヘッド18との間に搬送される記録媒体100に付着させて、記録媒体100に画像(文字を含む)を記録する。このインクリボンは、キャリッジ19または本体フレームに装着されたリボンカートリッジ39内に折り畳まれて収納される。
【0018】
また、記録ヘッド18には、シート幅検出センサ56(図6)が配設される。シート幅検出センサ56は、記録媒体100の有無を検出する非接触式のセンサであり、具体的には反射型の光センサである。このシート幅検出センサ56によって、キャリッジ19の走査時に記録媒体100の有無を検出することにより、記録媒体100の幅方向の位置及びサイズを検出することができる。
【0019】
整列板29は、図3に示すように、プラテン21と第1搬送ローラ22との間に配置される。更に、この整列板29は、キャリッジ19の主走査方向に対して平行な方向に延在され、整列モータ63(図6)の動作により、搬送経路Aに進退可能に構成される。
【0020】
磁気ヘッド34(図2)は、サイドフレーム16,17間に平行に架け渡された二本の磁気ヘッドガイドに沿って磁気モータ64(図6)により往復駆動される。これによって、磁気ヘッド34は、記録媒体100の磁気ストライプ101を走査し、磁気ストライプ101に対する情報の読み出し及び書き込みを行うことができる。
【0021】
図4は、プリンタ本体11における第1シート搬送機構部24及び第2シート搬送機構部27の構成を示す要部斜視図であり、図5は、第1シート搬送機構部24の構成を示す正面図である。なお、図5中の符号G1〜G3は、ローラ変位センサ57A〜57Fと第2搬送ローラ23A〜23Fとの距離を示す。
【0022】
上記第1シート搬送機構部24は、プラテン21に対してプリンタ本体11の前方側に配置され、第2シート搬送機構部27は、プラテン21に対してプリンタ本体11の後方側に配置される。更に、第1搬送ローラ22と第2搬送ローラ23が、また第3搬送ローラ25と第4搬送ローラ26が、それぞれ上下方向に配置されて対をなす。
【0023】
このうち、第1搬送ローラ22、第3搬送ローラ25は、プラテン21とともに前方シート案内32、後方シート案内33のそれぞれの下方に配置され、第2搬送ローラ23、第4搬送ローラ26が、前方シート案内32、後方シート案内33のそれぞれの上方に配置される。
【0024】
第1搬送ローラ22は、シート搬送モータ62及び図示しない駆動輪列部によって回転駆動される駆動ローラであり、第2搬送ローラ23は、第1搬送ローラ22に所定の押圧力でばね付勢されている従動ローラである。
図5に示すように、第1搬送ローラ22はシート搬送モータ62に連結された第1搬送軸41に固定され、シート搬送モータ62の動作に従って回転する。また、第1搬送軸41にはギア42が配設され、このギア42に噛み合うギア43には、連結軸44が連結される。連結軸44はリンク46を介して第2搬送軸45に連結されており、ギア43の回転に伴って、第2搬送軸45に固定された第2搬送ローラ23が回転する。
これによって、第1搬送ローラ22と第2搬送ローラ23とは、シート搬送モータ62の動作により互いに反対方向に回転駆動される。
【0025】
本構成では、図4及び図5に示すように、記録媒体100の幅方向、すなわちキャリッジ19の主走査方向に沿って、6個の第1搬送ローラ22と、これら6個の第1搬送ローラに各々対向する6個の第2搬送ローラ23A〜23Fが配設され、第1搬送ローラ22と第2搬送ローラ23A〜23Fとの間に記録媒体100が挟まれて搬送される構成となっている。
【0026】
そして、上記6個の第2搬送ローラ23A〜23Fは3本の第2搬送軸45に各々固定される。すなわち、隣り合う2個の第2搬送ローラが一本の第2搬送軸45に固定され、各第2搬送軸45は、それぞれ独立して上下に移動可能に支持されており、隣り合う第2搬送軸45は互いにリンク46を介して連結され、一体となって回転する。
【0027】
さらに、6個の第2搬送ローラ23A〜23Fの上方には、それぞれ、ローラ変位センサ(変位センサ)57A〜57Fが配設される。ローラ変位センサ57A〜57Fは、非接触式の測距センサであって、具体的には反射型の光センサである。ローラ変位センサ57A〜57Fは、下方に位置する第2搬送ローラ23A〜23Fとの間の距離を測定することができる。本構成では、各ローラ変位センサ57A〜57Fは、図示しない固定部材を介して左サイドフレーム16及び右サイドフレーム17間に固定され、その下方に位置する第2搬送ローラ23A〜23Fとの間の距離に基づき、第2搬送ローラ23の高さ位置(記録媒体100の記録面に対して垂直な方向における位置)を検出する。
【0028】
図5に示すように、第1搬送ローラ22と第2搬送ローラ23A〜23Fとの間には、搬送経路Aを搬送される記録媒体100が挟まれる。第1搬送ローラ22の軸である第1搬送軸41は左サイドフレーム16及び右サイドフレーム17に回転可能に固定され、第1搬送ローラ22の位置は記録媒体100の厚みに拘わらず一定である。このため、記録媒体100の厚みに応じて、第2搬送ローラ23A〜23Fが第2搬送軸45とともに上下に変位する。従って、第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置をローラ変位センサ57A〜57Fによって検出することにより、第2搬送ローラ23A〜23Fが当接する位置における記録媒体100の厚みを検出することができる。
【0029】
例えば、図5中左側に位置する第2搬送ローラ23A、23Bと、その右に位置する第2搬送ローラ23C、23Dとは、いずれも記録媒体100に当接している。図5に示す例では、記録媒体100は縦綴じの冊子であって、綴じ部を境にして厚みが異なっており、綴じ部は第2搬送ローラ23Bと第2搬送ローラ23Cとの間に位置している。このため、第2搬送ローラ23A、23Bと、第2搬送ローラ23C、23Dとは、それぞれ記録媒体100の厚みに応じて異なった高さ位置にある。この場合、ローラ変位センサ57A、57Bにより検出される距離G1と、ローラ変位センサ57C、57Dにより検出される距離G2とは、記録媒体100の厚みに応じて異なった値となる。また、第2搬送ローラ23E、23Fは記録媒体100を挟んでいないため、ローラ変位センサ57E、57Fにより検出される距離G3は、記録媒体100の厚みがゼロの場合の距離を示している。
【0030】
従って、例えば、距離G1と距離G2とを比較することで、綴じ部の両側における記録媒体100の厚みの差を求めることができる。また、例えば距離G1と距離G3、または距離G2と距離G3とを比較することで、記録媒体100の厚みの絶対値を求めることが可能である。
【0031】
また、図3及び図4に示すように、第3搬送ローラ25は、シート搬送モータ62及び図示しない駆動輪列部によって回転駆動される駆動ローラである。第4搬送ローラ26は、第3搬送ローラ25側に所定の押圧力でばね付勢されている従動ローラであって、第3搬送ローラ25と第4搬送ローラ26とは互いに反対方向に回転駆動される。
【0032】
図6は、プリンタ10の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、プリンタ10は、制御プログラムに基づいてプリンタ10全体を制御するCPU51を備える。CPU51には、バス54を介して制御プログラムが格納されたEEPROM53と、CPU51によりEEPROM53から読み出された制御プログラムや各種データなどを一時的に格納するRAM52とが接続されている。
【0033】
また、バス54には、ゲートアレイ(G/A)55を介して、シート幅検出センサ56、ローラ変位センサ57A〜57F、記録ヘッド18、及びモータドライバ58が接続されている。モータドライバ58には、キャリッジ駆動モータ61、シート搬送モータ62、整列モータ63及び磁気モータ64等のステッピングモータが接続されている。モータドライバ58は、CPU51の制御の下、キャリッジ駆動モータ61、シート搬送モータ62、整列モータ63及び磁気モータ64を駆動する。
【0034】
CPU51は、EEPROM53に格納された制御プログラムに基づいて、記録ヘッド18やモータドライバ58を制御するとともに、シート幅検出センサ56及びローラ変位センサ57A〜57Fの検出結果を取得する。
具体的には、シート幅検出センサ56及びローラ変位センサ57A〜57Fの出力電圧を、ゲートアレイ55を介して所定周期(例えば、100[ms])でサンプリングし、A/D変換してデータをRAM52に取り込んでいる。
【0035】
次に、プリンタ10の動作の概略を説明する。
【0036】
記録媒体100が図1に示す手差口15から挿入されると、整列板29が搬送経路Aに突出され、記録媒体100が第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23A〜23Fにより挟まれてプラテン21の手前まで搬送される。
【0037】
次に、記録媒体100の搬送方向の傾きを直すべく、整列板29を搬送経路Aに突出させた状態で、第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23A〜23Fにより記録媒体100が搬送される。これによって、記録媒体100が整列板29に沿って整列することとなる。次いで、磁気データ読書部29が記録媒体100の磁気ストライプ101を読み取ることができる読み取り位置まで、記録媒体100が第1シート搬送機構部24により搬送される。
【0038】
次に、記録媒体100の磁気ストライプ101から情報が磁気データ読書部29により読み取られた後、第1及び第2シート搬送機構部24、27によって記録媒体100がプラテン21上の記録位置まで搬送され、文字等の画像が記録ヘッド18により記録される。
【0039】
この記録ヘッド18による記録動作は、記録ヘッド18が主走査方向の左向きまたは右向きに走行される間に、記録ヘッド18の記録ワイヤにより1行分の記録がなされ、この1行分の記録がなされる度に、第1搬送ローラ22、第2搬送ローラ23A〜23F、第3搬送ローラ25及び第4搬送ローラ26が記録媒体100を所定長(通常改行長分)搬送させ、これらの動作が繰り返されることによって記録媒体100への記録が実施される。
【0040】
記録ヘッド18による記録後、記録媒体100は、第1及び第2シート搬送機構部24、27によって上記磁気ストライプ読み取り位置まで搬送され、記録媒体100へ記録した情報に基づいて、磁気データ読書部29により磁気ストライプ101に磁気情報が書き込まれる。次に、第1シート搬送機構部24によって記録媒体100が前側に搬送され、記録媒体100が手差口15から排出される。
【0041】
ところで、記録媒体100が冊子である場合には、綴じ部を避けるための制御が必要となる。例えば、記録媒体100が横綴じの冊子であれば、綴じ部が記録ヘッド18の走査方向に沿って延びる格好となる。この場合、改行動作(1行の記録を終えた後、次の行を記録するため、記録ヘッド18が記録媒体100上に位置した状態で記録媒体100を送る動作)において、記録ヘッド18が綴じ部を跨がないようにしなければならない。このため、プリンタ10は、記録媒体100が横綴じの冊子である場合、記録ヘッド18が綴じ部を跨ぐように記録媒体100を搬送するときに、記録ヘッド18をいったん記録媒体100の外側の位置まで移動させてから、記録媒体100を送り、再び記録ヘッド18を記録媒体100上に移動させる制御を行う。一方、記録媒体100が単票紙である場合は、改行動作時に記録ヘッド18を記録媒体100の外に移動させる等の動作は不要である。
【0042】
従って、プリンタ10は、記録媒体100が横綴じの冊子である場合と、記録媒体100が単票紙である場合とを区別し、記録媒体100の種類に対応する動作を行う。このため、本構成のプリンタ10は、以下に説明するように、記録媒体100が単票紙であるか横綴じの冊子であるかを判別する綴じ検出動作を行う。
【0043】
図7は、プリンタ10における綴じ検出動作を示すフローチャートである。
この図7に示す綴じ検出動作において、CPU51は、制御手段として機能する。
【0044】
図7の綴じ検出動作のステップS1において、CPU51は、まず、シート幅検出センサ56による記録媒体100の位置検出が済んでいるか否かを判別する。
【0045】
ここで、記録媒体100の位置検出が済んでいない場合(ステップS1;No)、CPU51はステップS2に移行して、キャリッジ駆動モータ61を駆動して、記録ヘッド18を走査させながら、ゲートアレイ55を介して、シート幅検出センサ56による検出結果を取得する。そして、取得した検出結果をもとに、記録ヘッド18の主走査方向における記録媒体100の位置、及び、記録媒体100の記録媒体100の幅Wを取得する。このステップS2の動作が終了した後、CPU51はステップS1に戻る。
【0046】
また、ステップS1において、位置検出が済んでいる場合(ステップS1;Yes)、CPU51はステップS3に移行して、主走査方向に並ぶ複数の第2搬送ローラ23A〜23F(図5)のうち、記録媒体100を挟んでいる第2搬送ローラ23を特定する。このステップS3では、位置検出により検出された記録媒体100の位置及び幅Wに基づき、各第2搬送ローラ23A〜23Fについて記録媒体100の上にあるか否かを判別することにより、記録媒体100に当接する第2搬送ローラ23が特定される。
【0047】
次に、CPU51はステップS4に移行して、モータドライバ58によってシート搬送モータ62を所定のステップ数だけ駆動させ、記録媒体100を送る。続いてCPU51は、ステップS5に移行し、シート幅検出センサ56によって記録媒体100の下端を検出したか否かを判別する。ここで、記録媒体100の下端が検出されなければ、ステップS4に戻ってさらに記録媒体100を送り、記録媒体100の下端が検出されればステップS6に移行する。
【0048】
ステップS4〜S5の動作においては、記録媒体100を搬送しながらシート幅検出センサ56によって記録媒体100の有無を検出することにより、記録媒体100の上端及び下端を検出できる。そして、記録媒体100の上端を検出してから下端を検出するまでのシート搬送モータ62が回転したステップ数に基づき、記録媒体100を搬送した長さ、すなわち記録媒体100のシート長Lを得ることができる。
【0049】
ステップS6で、CPU51は、ステップS4〜S5の動作によって記録媒体100を下端まで送る間に、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置のうち、冊子判別基準値以上となったものがあるか否かを判別する。すなわち、第2搬送ローラ23A〜23Fのうちいずれかが、所定値以上の高さ位置まで上昇した場合、記録媒体100はある程度の厚みを有するもの、すなわち冊子であって、単票紙ではない。
【0050】
従って、ステップS6で、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置が、冊子判別基準値以上になった場合(ステップS6;Yes)、CPU51は後述するステップS10に移行し、記録媒体100を横綴じの冊子と判別する。
【0051】
ここで、冊子判別基準値とは、予め設定され、EEPROM53に記憶される値であり、記録媒体100が冊子であると判別する基準となる。冊子判別基準値は、プリンタ10において用いられる最も厚い単票紙の厚さに、さらに誤差を吸収する分の厚みを加えた値とすると、好ましい。
【0052】
一方、ステップS6で、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置のいずれも冊子判別基準値以上にならなかった場合(ステップS6;Yes)、CPU51は、ステップS7に移行する。
【0053】
ステップS7で、CPU51は、ステップS4〜S5の動作によって記録媒体100を下端まで送る間に、記録媒体100を挟んでいる第2搬送ローラ23についてローラ変位センサ57によって検出された高さ位置に、後述する横綴じ判別基準値以上の変化が生じたか否かを判別する。
【0054】
ここで、記録媒体100を搬送する間、ローラ変位センサ57により検出された第2搬送ローラ23の高さ位置に、横綴じ判別基準値以上の差が無かった場合(ステップS7;No)、記録媒体100は、上端から下端まで厚みに変化のないもの、すなわち単票紙である。この場合、CPU51は、ステップS8に移行して、記録媒体100を単票紙と判別する。そして、CPU51はステップS9に移行して、単票紙に対応する制御を行う。記録媒体100が単票紙である場合、横綴じの冊子に対して行うような、改行動作時に記録ヘッド18が綴じ部を跨がないようにする等の動作が必要ない。従って、ステップS9において、CPU51は、記録媒体100の搬送時における記録ヘッド18の動作等を通常動作にするため、各種パラメータの設定等を実行した上、記録媒体100に対して画像を記録する。
【0055】
一方、ステップS7で、記録媒体100を送る過程において、ローラ変位センサ57により検出された高さ位置に、横綴じ判別基準値以上の差が生じた場合(ステップS7;Yes)、記録媒体100は横綴じの冊子であり、綴じ部を境にして記録媒体100の厚みが異なるため、ローラ変位センサ57により検出された高さ位置に差が生じたものである。この場合、CPU51はステップS10に移行して、記録媒体100が横綴じの冊子であると判別し、ステップS11に移行する。
【0056】
ここで、横綴じ判別基準値とは、予め設定され、EEPROM53に記憶される値であり、記録媒体100が単票紙ではなく横綴じの冊子であると判別する基準となる。横綴じ判別基準値は、ローラ変位センサ57による誤差や検出値のゆらぎを吸収するための値である。すなわち、記録媒体100が単票紙である場合、ステップS4〜S5では、ローラ変位センサ57により検出される高さ位置が変化しないはずである。
しかしながら、実際には、ローラ変位センサ57による検出誤差や記録媒体100の曲がり、反り等によって、記録媒体100が単票紙であるにも拘わらずローラ変位センサ57の検出値が変化する場合がある。
そこで、本構成においては、記録媒体100が単票紙であるか横綴じの冊子であるかを確実に判別するため、ローラ変位センサ57により検出された第2搬送ローラ23の高さ位置に、横綴じ判別基準値以上の変化があった場合に、ステップS10で横綴じの冊子であると判別するようにしている。
【0057】
ステップS11で、CPU51は、記録媒体100のシート長Lをもとに、記録媒体100の綴じ幅を求める。横綴じの記録媒体100の綴じ幅はシート長Lの2分の1として求めることができる。
【0058】
その後、CPU51はステップS12に移行して、横綴じの冊子に対応する制御を行う。すなわち、上述したように、記録媒体100が横綴じの冊子である場合、この記録媒体100に記録を行う際には、改行動作において記録ヘッド18が綴じ部を跨がないようにするため、記録ヘッド18が綴じ部を跨ぐように記録媒体100を搬送するときに、記録ヘッド18をいったん記録媒体100の外側の位置まで移動させてから、記録媒体100を送り、再び記録ヘッド18を記録媒体100上に移動させる制御を行う。ステップS12では、上記の動作を実現するための各種パラメータの設定等を実行した上、記録媒体100に対して画像を記録する。
【0059】
以上のように、本実施形態の構成によれば、記録媒体100の厚みに応じて変位可能に配設された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置を、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出し、検出した高さ位置に基づいて、記録媒体100が冊子であるか単票紙であるかを判別することができる。これにより、記録媒体100の種類に応じた制御を可能とし、記録品質の低下や部品の破損、或いは無駄な動作によるスループットの低下等を確実に防止できる。また、記録媒体100の種類を判別するにあたって操作者による入力操作を必要としないので、操作者の負担を軽減することができ、操作ミスによる誤動作のおそれを解消できる。
【0060】
また、記録媒体100を搬送する間に、ローラ変位センサ57によって検出される第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置が、冊子判別基準値以上になった場合には、記録媒体100が冊子であって、単票紙でないと判別するので、記録媒体100を搬送するという単純な動作だけで、記録媒体100が単票紙であるか否かを確実に判別できる。
【0061】
また、記録媒体100を搬送する間に、ローラ変位センサ57によって検出される第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置に、横綴じ判別基準値以上の差が生じた場合に、記録媒体100が横綴じの冊子であると判別するので、記録媒体100を搬送するという単純な動作だけで記録媒体100の種類を確実に判別できる。
さらに、記録媒体100が横綴じの冊子であると判別した場合、プリンタ10は、改行動作において記録ヘッド18が綴じ部を跨がないようにするため、記録ヘッド18が綴じ部を跨ぐように記録媒体100を搬送するときに、記録ヘッド18をいったん記録媒体100の外側の位置まで移動させてから、記録媒体100を送り、再び記録ヘッド18を記録媒体100上に移動させる制御を行う。このため、横綴じの冊子を記録媒体100として用いる場合に、記録媒体100の汚損、破れ、部品の破損等を確実に防止できる。
【0062】
ところで、記録媒体100として冊子を用いる場合には、その冊子が縦綴じ、すなわち、記録媒体100の搬送方向に延びる綴じ部を有する冊子であることもある。縦綴じの冊子に画像を記録する場合、記録ヘッド18は綴じ部を跨いで走査される。ここで、縦綴じの冊子の綴じ部においては、綴じ部を境にして厚みが変化するので、記録ヘッド18が綴じ部の上で記録ワイヤを突出させてしまうと、記録ワイヤが綴じ部に引っ掛かり、記録ワイヤが破損するおそれがある。このため、プリンタ10は、縦綴じの冊子に画像を記録する場合には、綴じ部を含む領域(綴じ部の中央から所定の距離以内の領域)に対して記録動作(記録ワイヤの突出)を禁止する制御を行う。
【0063】
従って、記録媒体100として縦綴じの冊子をも用いる場合には、記録媒体100が縦綴じであるか、横綴じであるか、単票紙であるかを自動的に判別し、その種類に応じた動作を行う。以下、記録媒体100が縦綴じであるか、横綴じであるか、単票紙であるかを自動的に判別する綴じ検出動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
図8の綴じ検出動作のステップS21において、CPU51は、まず、シート幅検出センサ56による記録媒体100の位置検出が済んでいるか否かを判別する。
【0065】
ここで、位置検出が済んでいない場合(ステップS21;No)、CPU51はステップS22に移行して、キャリッジ駆動モータ61を駆動して、記録ヘッド18を走査させながら、ゲートアレイ55を介して、シート幅検出センサ56による検出結果を取得する。そして、取得した検出結果をもとに、記録ヘッド18の主走査方向における記録媒体100の位置、及び、記録媒体100の幅Wを取得する。このステップS12の動作が終了した後、CPU51はステップS21に戻る。
【0066】
また、ステップS21において位置検出が済んでいる場合(ステップS21;Yes)、CPU51はステップS23に移行して、主走査方向に並ぶ複数の第2搬送ローラ23A〜23F(図5)のうち、記録媒体100を挟んでいる第2搬送ローラ23を特定する。このステップS23では、記録媒体100の位置及び幅Wに基づき、各第2搬送ローラ23A〜23Fについて記録媒体100の上にあるか否かを判別することにより、記録媒体100上に当接する第2搬送ローラ23が特定される。
【0067】
続いて、CPU51は、ステップS24に移行して、ステップS23で特定された第2搬送ローラ23、すなわち記録媒体100を挟んでいる第2搬送ローラ23の間で、ローラ変位センサ57により検出された第2搬送ローラ23の高さ位置に、後述する縦綴じ判別基準値以上の差があるか否かを判別する。
【0068】
そして、複数の第2搬送ローラ23についてローラ変位センサ57により検出された高さ位置に、縦綴じ判別基準値以上の差がある場合には(ステップS24;Yes)、記録媒体100を挟んでいる複数の第2搬送ローラ23のうち、高さ位置が異なるものがあり、記録媒体100の厚みに差があることを意味する。従って、CPU51はステップS25に移行して、当該記録媒体100が縦綴じであると判別し、ステップS26に移行する。
【0069】
ここで、縦綴じ判別基準値とは、予め設定され、EEPROM53に記憶される値であり、記録媒体100が縦綴じの冊子であると判別する基準となる。縦綴じ判別基準値は、ローラ変位センサ57による誤差や検出値のゆらぎを吸収するための値である。すなわち、記録媒体100が横綴じの冊子または単票紙である場合、ステップS23で特定された第2搬送ローラ23は、全て同じ高さ位置にあるはずである。しかしながら、実際には、ローラ変位センサ57による検出誤差や記録媒体100の曲がり、反り等によって、記録媒体100が横綴じの冊子または単票紙であるにも拘わらずローラ変位センサ57の検出値に差が生じる可能性がある。
そこで、本構成においては、記録媒体100が縦綴じの冊子であるか否かを確実に判別するため、ローラ変位センサ57により検出された第2搬送ローラ23の高さ位置に、縦綴じ判別基準値以上の差があった場合に、ステップS25で縦綴じの冊子であると判別するようにしている。
【0070】
ステップS26で、CPU51は、ステップS22で取得した記録媒体100の幅Wに基づき、綴じ幅を算出する。記録媒体100は縦綴じであるから、綴じ幅は記録媒体100の幅Wの2分の1として求められる。
【0071】
その後、CPU51はステップS27に移行して、縦綴じの冊子に対応する制御を行う。すなわち、上述したように、記録媒体100が縦綴じの冊子である場合、この記録媒体100に記録を行う際には、記録ヘッド18が綴じ部の上で記録ワイヤを突出させてしまうと、記録ワイヤが綴じ部に引っ掛かり、記録ワイヤが破損するおそれがある。このため、プリンタ10は、縦綴じの冊子に画像を記録する場合、綴じ部を含む領域(綴じ部の中央から所定の距離以内の領域)に対して記録動作(記録ワイヤの突出)を禁止する制御を行う。ステップS27では、上記の動作を実現するための各種パラメータの設定等を実行した上、記録媒体100に対して画像を記録する。
【0072】
一方、ステップS24で、ローラ変位センサ57により検出された高さ位置に、縦綴じ判別基準値以上の差がない場合、記録媒体100を挟んでいる複数の第2搬送ローラ23の高さ位置が全て等しく、記録媒体100の幅方向において厚みに差がない。この場合、CPU51はステップS28に移行して、当該記録媒体100が横綴じの冊子または単票紙であると判別し、ステップS29に移行する。
【0073】
ステップS29で、CPU51は、モータドライバ58によってシート搬送モータ62を所定のステップ数だけ駆動させ、記録媒体100を送る。続いてCPU51は、ステップS30に移行し、シート幅検出センサ56によって記録媒体100の下端を検出したか否かを判別する。ここで、記録媒体100の下端が検出されなければ、ステップS29に戻ってさらに記録媒体100を送り、記録媒体100の下端が検出されればステップS31に移行する。
【0074】
ステップS29〜S30の動作においては、記録ヘッド18が記録媒体100の上に位置する状態で、記録ヘッド18に配設されたシート幅検出センサ56を用いることにより、記録媒体100の上端及び下端を検出する。そして、記録媒体100の上端を検出してから下端を検出するまでのシート搬送モータ62が回転したステップ数に基づき、記録媒体100を搬送した長さ、すなわち記録媒体100のシート長Lを得る。
【0075】
ステップS31で、CPU51は、ステップS29〜S30の動作によって記録媒体100を下端まで送る間に、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置が、上述した冊子判別基準値以上となったものがあるか否かを判別する。ここで、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置が冊子判別基準値以上になった場合(ステップS31;Yes)、CPU51は後述するステップS35に移行して、記録媒体100を横綴じの冊子と判別する。
【0076】
一方、ステップS31で、ローラ変位センサ57A〜57Fによって検出された第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置が、いずれも冊子判別基準値以上にならなかった場合(ステップS31;No)、CPU51は、ステップS32に移行する。
【0077】
ステップS32で、CPU51は、ステップS29〜S30の動作によって記録媒体100を下端まで送る間に、記録媒体100を挟んでいる第2搬送ローラ23についてローラ変位センサ57によって検出された高さ位置に、上述した横綴じ判別基準値以上の差が生じたか否かを判別する。
【0078】
ここで、ローラ変位センサ57により検出された高さ位置に、横綴じ判別基準値以上の差が生じなかった場合(ステップS32;No)、CPU51はステップS33に移行して、記録媒体100を単票紙と判別する。そして、CPU51はステップS34に移行して、単票紙に対応する制御を行う。このステップS34における動作は、上述したステップS9(図7)における動作と同様である。
【0079】
一方、ステップS32で、ローラ変位センサ57により検出された高さ位置に、横綴じ判別基準値以上の差が生じた場合(ステップS32;Yes)、CPU51はステップS35に移行して、記録媒体100が横綴じの冊子であると判別し、ステップS36に移行する。
【0080】
ステップS36で、CPU51は、記録媒体100のシート長Lをもとに、記録媒体100の綴じ幅を求める。横綴じの記録媒体100の綴じ幅はシート長Lの2分の1として求めることができる。
その後、CPU51はステップS37に移行して、横綴じの冊子に対応する制御を行う。このステップS37における動作は、上述したステップS12(図7)における動作と同様である。
【0081】
このように、本構成によれば、第2搬送ローラ23A〜23Fのうち記録媒体100を挟んだ第2搬送ローラ23のうち、いずれかの第2搬送ローラ23についてローラ変位センサ57により検出される高さ位置が、他の第2搬送ローラ23についてローラ変位センサ57により検出された高さ位置に対して、縦綴じ判別基準値以上の差を有していた場合に、記録媒体100が縦綴じの冊子であると判別する。これにより、第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置をローラ変位センサ57A〜57Fによって検出するだけで、記録媒体100の種類を確実に判別することができる。また、プリンタ10は、記録媒体100が縦綴じの冊子であると判別した場合に、綴じ部を含む領域(綴じ部の中央から所定の距離以内の領域)に対して記録動作(記録ワイヤの突出)を禁止する制御を行う。
従って、記録媒体100の汚損、記録品質の低下、部品の破損、及び無駄な動作によるスループットの低下を防止できる。また、記録媒体100の種類を判別するにあたって操作者による入力操作を必要としないので、操作者の負担を軽減することができ、操作ミスによる誤動作のおそれを解消できる。
【0082】
そして、図8を参照して説明した綴じ検出動作を実行することにより、記録媒体100の種類が縦綴じの冊子であるか、横綴じの冊子であるか、単票紙であるかを確実に判別することができ、記録媒体100の種類に応じて最適な動作を行える。
【0083】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0084】
例えば、上記実施形態では、綴じ検出処理において、ローラ変位センサ57A〜57Fにより、第2搬送ローラ23A〜23Fとの間の距離G1〜G3をもとに、第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置を検出し、これら高さ位置に基づいて制御を行う構成とした。これはあくまで一例であって、例えば、ローラ変位センサ57A〜57Fにより、第2搬送ローラ23A〜23Fとの間の距離G1〜G3をもとに、第2搬送ローラ23A〜23Fの変位量を検出するようにしてもよい。この場合、記録媒体100を挟んでいない場合の第2搬送ローラ23とローラ変位センサ57との間の距離Gを基準として、この距離Gとローラ変位センサ57A〜57Fにより測定される距離G1〜G3との差をもとに、各第2搬送ローラ23A〜23Fの変位量を検出することができる。
【0085】
また、冊子判別基準値、横綴じ判別基準値、及び縦綴じ判別基準値の具体的な値について制限はなく、第2搬送ローラ23A〜23Fの動作状態、ローラ変位センサ57A〜57Fの特性、記録媒体100として用いられる冊子及び単票紙の特性等に応じて、予め任意の値に設定しておけばよい。
【0086】
さらに、上記実施形態では、第2搬送ローラ23A〜23Fが記録媒体100を挟んでいるか否かを判別する際に、シート幅検出センサ56により検出された記録媒体100の位置及び幅に基づいて判別を行うものとして説明したが、例えば、ローラ変位センサ57A〜57Fにより検出される第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置に基づいて、記録媒体100を挟んでいるか否かを判別してもよい。この場合、記録媒体100を挟まない状態における第2搬送ローラ23A〜23Fの高さ位置を予めEEPROM53に記憶しておき、この記憶した値とローラ変位センサ57A〜57Fの検出値とを比較すれば、容易に判別を行える。
【0087】
例えば、上記実施形態では、ドットインパクトプリンタの場合について説明したが、ドットインパクトプリンタに限らず、光センサを備え、この光センサを用いて搬送経路における用紙の有無を検出するあらゆる記録装置に適用することが可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、制御プログラムをEEPROMに記憶している場合について説明したが、各種磁気ディスク、光ディスク、メモリカードなどの記録媒体に制御プログラムを予め記録し、これらの記録媒体から読み込み、インストールするように構成することも可能である。また、通信インターフェースを設け、インターネット、LANなどのネットワークを介して制御プログラムをダウンロードし、インストールして実行するように構成することも可能である。
【0089】
また、上記実施形態では、記録ヘッド18に配設したシート幅検出センサ56により、記録媒体100の位置及び幅を検出する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、整列板29の前方において記録媒体100の有無を検出するセンサを備え、このセンサにより、記録媒体100の位置及び幅を検出することも可能である。
【0090】
また、上記実施形態では、第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23を各々6個備える構成について説明したが、これら第1搬送ローラ22及び第2搬送ローラ23の数については、当然のことながら任意に変更可能である。
さらに、上記実施形態では、2個の第2搬送ローラ23が1本の第2搬送軸45により支持される構成としたが、本発明はこれに限定されず、全ての第2搬送ローラ23が各々独立して1本の第2搬送軸45により支持される構成としてもよいし、或いは、3個またはそれ以上の数の第2搬送ローラ23が1本の第2搬送軸45により支持される構成としてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、記録ヘッド18に配設されたシート幅検出センサ56を用いて、記録媒体100の上端及び下端を検出することにより、記録媒体100のシート長Lを得るものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、シート幅検出センサ56に代えて、記録媒体を検出するためにプリンタ10が備える他のセンサを用いることができる。例えば、整列板29の前方において記録媒体100の有無を検出するセンサを備え、このセンサによって記録媒体100の上端及び下端を検出することにより、記録媒体100のシート長Lを得るようにしてもよい。
上記実施形態で説明したその他の細部構成についても、勿論、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置としてのプリンタの外観を示す正面斜視図である。
【図2】プリンタ本体を示す斜視図である。
【図3】プリンタを示す側断面図である。
【図4】プリンタの要部構成を示す斜視図である。
【図5】プリンタの要部構成を示す正面図である。
【図6】プリンタの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【図7】プリンタによる綴じ検出に係る動作を示すフローチャートである。
【図8】プリンタによる綴じ検出に係る動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
10…プリンタ(記録装置)、18…記録ヘッド、22…第1搬送ローラ、23A〜23F…第2搬送ローラ(搬送ローラ)、24…第1シート搬送機構部、51…CPU(制御手段)、55…ゲートアレイ、56…シート幅検出センサ、57A〜57F…ローラ変位センサ(変位センサ)、58…モータドライバ、61…キャリッジ駆動モータ、62…シート搬送モータ、100…記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の厚みに応じて変位可能に配設された搬送ローラを備え、この搬送ローラにより搬送される記録媒体上で記録ヘッドを走査し、この記録ヘッドから前記記録媒体に対して記録ワイヤを突出させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置において、
前記搬送ローラについて、前記記録媒体の記録面に垂直な方向における位置または変位量を検出する変位センサと、
前記変位センサにより検出される前記搬送ローラの位置または変位量に基づいて、前記記録媒体が綴じ部を有する冊子であるか、単票紙であるかを判別する制御手段とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記搬送ローラによって前記記録媒体を搬送する間において、前記変位センサにより検出される前記搬送ローラの位置または変位量に、予め定められた横綴じ判別基準値以上の変化があった場合に、前記記録媒体が、前記搬送ローラの搬送方向に直交する方向に延びる綴じ部を有する横綴じの冊子であると判別することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記記録媒体が横綴じの冊子であると判別した場合には、前記記録ヘッドが前記記録媒体の綴じ部を跨ぐように前記記録媒体を搬送する際に、前記記録ヘッドを前記記録媒体の外へ移動させることを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送ローラを複数備え、前記制御手段は、複数の前記搬送ローラのうち、前記記録媒体に当接する搬送ローラについて前記変位センサにより検出した位置または変位量を比較し、いずれかの搬送ローラの位置または変位量と他の搬送ローラの位置または変位量との間に、予め定められた縦綴じ判別基準値以上の差がある場合には、前記記録媒体が、前記搬送ローラの搬送方向に沿って延びる綴じ部を有する縦綴じの冊子であると判別することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記記録媒体が縦綴じの冊子であると判別した場合には、前記記録媒体の綴じ部を含む領域における記録を禁止させることを特徴とする請求項4記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記記録媒体に当接する前記搬送ローラについて前記変位センサにより検出される位置または変位量が、予め定められた冊子判別基準値以上であった場合に、当該記録媒体が冊子であると判別することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
記録媒体の厚みに応じて変位可能に配設された搬送ローラと、この搬送ローラについて、前記記録媒体の記録面に垂直な方向における位置または変位量を検出する変位センサとを備え、前記搬送ローラにより搬送される記録媒体上で記録ヘッドを走査し、この記録ヘッドから前記記録媒体に対して記録ワイヤを突出させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置の制御方法であって、
前記変位センサにより検出される前記搬送ローラの位置または変位量に基づいて、前記記録媒体が綴じ部を有する冊子であるか、単票紙であるかを判別することを特徴とする記録装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−159687(P2006−159687A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355648(P2004−355648)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】