説明

記録装置及び吐出性能回復方法

【課題】液体の消費を抑えつつ吐出性能を回復させやすい。
【解決手段】吐出口において吐出不良が生じており、その原因が、メニスカスが破壊されて個別インク流路内へと気泡が混入したことである場合(ステップS21、気泡混入)には、メニスカス復元動作(ステップS22)を実行する。メニスカス復元動作では、まず吐出面をキャップで被覆すると共に、キャップ内を吸引して減圧する。その後、吐出不良が生じている吐出口に対応する個別電極へと、パルス幅TがT>Toを満たすような電圧パルス信号を供給する。Toは、吐出口からの液体の吐出速度が最大且つ極大となるようなパルス幅の大きさに相当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する吐出口が設けられた液体吐出ヘッドを有する記録装置及び吐出性能回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルキャップでノズルを被覆した後、ノズルキャップ内の圧力を低下させることにより、ノズルの内部でインクのメニスカスを移動させてインクを流動させ、インクの乾燥を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−336018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体を吐出する吐出口へと液体を供給する液体流路内に空気が滞留することにより、液体の吐出性能が低下する問題が生じることがある。そこで、吐出性能を回復するため、液体を強制的に排出させることで、滞留した空気を吐出口内から外部へ排出することが考えられる。例えば、上述の特許文献1の技術を利用し、キャップ内の圧力を低下させることで、吐出口内の液体を吸引し、滞留した空気を液体と共に吐出口から排出することが考えられる。
【0005】
しかし、吐出性能を回復させるたびに液体を吐出させると、液体の無駄な消費が増えるので好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、液体の消費を抑えつつ吐出性能を回復させやすい記録装置及び吐出性能回復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口へと液体を供給する液体流路と、前記液体流路の途中に設けられた圧力室と、前記圧力室の容積をV1からV1より大きいV2に変更した後、V1へと戻す容積変更動作を実行することにより前記吐出口から液体を吐出させるアクチュエータとを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記吐出口が開口した吐出面に当接して前記吐出口が形成された吐出領域を覆うキャッピング手段と、前記キャッピング手段が前記吐出領域を覆った状態で、前記キャッピング手段と前記吐出面に囲まれる内包空間内の圧力を変更する圧力変更手段と、前記圧力変更手段及びアクチュエータを制御して前記吐出口の吐出性能の回復動作処理を実行する回復動作制御手段とを備えており、前記アクチュエータが、前記圧力室の容積をV1からV2に変更し始めてからV1に戻し始めるまでの時間Tに関して、T=To(To>0)となるように前記容積変更動作が実行されたときに、前記吐出口から吐出される液体の吐出速度が最大且つ極大となる特性を有しており、前記回復動作処理が、液体のメニスカスが形成されている前記吐出口から液体が排出されない範囲で前記内包空間内を減圧する圧力低下動作を前記圧力変更手段に実行させた後に、T>Toであり且つ前記吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を前記アクチュエータに実行させる処理を含んでいる。
【0008】
本発明の別の観点における記録装置は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口へと液体を供給する液体流路と、前記液体流路の途中に設けられた圧力室と、前記圧力室の容積をV1からV1より大きいV2に変更した後、V1へと戻す容積変更動作を実行することにより前記吐出口から液体を吐出させるアクチュエータとを有する液体吐出ヘッドと、液体を貯留する液体貯留手段と、前記液体貯留手段内の液体を前記液体流路へと流入させる液体流入手段と、前記液体流入手段及びアクチュエータを制御して前記吐出口の吐出性能の回復動作処理を実行する回復動作制御手段とを備えており、前記アクチュエータが、前記圧力室の容積をV1からV2に変更し始めてからV1に戻し始めるまでの時間Tに関して、T=To(To>0)となるように前記容積変更動作が実行されたときに、前記吐出口から吐出される液体の吐出速度が最大且つ極大となる特性を有しており、前記回復動作処理が、前記液体流入手段に前記吐出口から液体が吐出されない範囲の圧力で前記液体流路へと液体を流入させた後に、T>Toであり且つ前記吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を前記アクチュエータに実行させる処理を含んでいる。
【0009】
本発明の吐出性能回復方法は、上記の記録装置において前記吐出口の吐出性能を回復する吐出性能回復方法であって、前記記録装置が、前記複数の吐出口のそれぞれから記録媒体へと液体を吐出させて記録媒体上に検査パターンを形成するステップと、前記記録媒体上に形成された前記検査パターンに基づいて、前記複数の吐出口のうち、吐出性能が低下したものを特定するステップと、前記回復動作制御手段が、前記圧力低下動作を前記圧力変更手段に実行させた後に、吐出性能が低下したと特定された前記吐出口に対応する前記アクチュエータのみに、T>Toであり且つ当該吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を実行させるステップとを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の記録装置によると、まず、内包空間内を減圧することにより、液体流路内の液体をある程度吐出口へと引き出せる。これにより、吐出口付近に滞留した空気の一部を吐出口から排出できる。このとき、液体のメニスカスが形成されている吐出口から液体が排出されない範囲で内包空間内が減圧されるため、液体の消費が抑制される。その後、アクチュエータに容積変更動作を実行させると、圧力室の容積がV1からV2になった際、液体流路内の液体をさらに吐出口側へと移動させ、残りの空気をさらに外部に押し出すことができる。ここで、T=Toになるようにアクチュエータを動作させると、吐出口から液体が吐出されてしまうおそれがある。また、T<Toになるようにアクチュエータを動作させると、液体流路内の液体を吐出口側へと十分に移動させる前に圧力室の容積がV1に戻る。このため、吐出口付近に滞留した空気を十分に外部に押し出すことができない。これに対して、本発明のように、T>Toになるようにアクチュエータを動作させることにより、吐出口から液体を吐出させないようにしながら、液体流路内の液体を吐出口側へと十分に移動させることができる。つまり、吐出口付近に滞留した空気を十分に外部に押し出すことができる。
【0011】
また、別の観点の記録装置においては、内包空間を減圧させる代わりに液体を流入させることで、上記と同様の作用効果を奏する。さらに、本発明の吐出性能回復方法によると、検査パターンに基づいて吐出性能が低下したと特定された吐出口に関してのみ、容積変更動作の実行が可能であるので、吐出性能が低下していない吐出口に関してまで容積変更動作が無駄に実行されなくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの内部構成を概略的に示す正面から見た模式図である。
【図2】図2(a)は、図1のプリンタにおいてワイパがヘッドの吐出面を払拭する状態を示す側面図である。図2(b)は、キャップがヘッドを覆う状態を示す、キャップの一断面を含む側面図である。図2(c)は、図2(b)のキャップの平面図である。
【図3】図1のヘッド本体の平面図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【図5】ヘッド吐出面の部分拡大図である。
【図6】図3のヘッド本体の部分断面図である。
【図7】図6のアクチュエータユニットの部分断面図である。
【図8】図8(a)は、図7の個別電極に供給される電圧パルス信号の波形を示す。図8(b)は、図8(a)のパルス幅と液体の吐出速度との関係を示すグラフである。
【図9】プリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】プレコート用のヘッドの吐出不良を検査するための検査パターンである。
【図11】インク用のヘッドの吐出不良を検査するための検査パターンである。
【図12】プリンタによる動作の一連の流れを示すフローチャートである。
【図13】図12の回復動作ステップの流れを示すフローチャートである。
【図14】第1の変形例に係るヘッド周辺の構成を概略的に示す模式図である。
【図15】図15(a)は、第2の変形例に係るプレコート用のヘッドの吐出不良を検査するための検査パターンを示す。図15(b)は、吐出面の拡大図、及び、吐出口と吐出口群の区分との関係を示す模式図である。
【図16】第3〜第6の変形例に係るプレコート用のヘッドの吐出不良を検査するための検査パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。インクジェットプリンタ1は、画質を向上させるための透明なプレコート液を吐出するプレコートヘッド2と、インクを吐出するインクジェットヘッド3とを有している。ヘッド2及び3は、いずれも一方向(図1の紙面に直交する方向)に沿って長尺なラインヘッドであり、その長手方向を主走査方向として、インクジェットプリンタ1に組み込まれている。プリンタ1は、ライン式のカラーインクジェットプリンタである。
【0015】
プレコート液用成分としては、顔料インクに対しては顔料色素を凝集させるものが使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させるものが使用される。プレコート液は、水を主溶媒とし、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドポリマー、ジアリルメチルアンモニウム塩ポリマー等のカチオン系高分子に加え、マグネシウム塩、カルシウム塩等の多価金属塩を適宜に選択して調整される。かかるプレコート液があらかじめ塗布された用紙Pの領域にインクが着弾すると、多価金属塩等がインクの着色剤である染料又は顔料に作用して、不溶性又は難溶性の金属複合体等が形成(凝集又は析出)される。その結果、付着したインクの用紙P内への浸透度が低下し、インクを用紙P上に定着させやすくなる。なお、本実施の形態では、画像形成に顔料インクが用いられる。
【0016】
プリンタ1は、直方体形状の筐体501aを有している。筐体501aの天板上部には、排紙部531が設けられている。筐体501aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bは、排紙部531に連なる用紙搬送経路が形成された空間である。空間Aでは、用紙Pの搬送と用紙Pへの画像形成が行われる。空間Bでは、給紙に係る動作が行われる。空間Cには、画像形成用の液体を貯留するタンクユニット60が筐体501aに対して着脱可能に配置されている。タンクユニット60は、トレイ63、1つのタンク61及び4つのタンク62を有している。トレイ63内には、各タンク61、62が副走査方向に並設されている。タンク61にはプレコート液が貯留され、タンク62にはインクが貯留されている。
【0017】
空間Aには、1つのヘッド2、4つのヘッド3、メンテナンスユニット80、用紙Pを搬送する搬送ユニット521、用紙Pをガイドするガイド部等が配置されている。空間Aの上部には、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司るコントローラ100が配置されている。また、コントローラ100には、プリンタ1の外部から印刷用の画像データを取得する印刷データ取得部110が接続されている。印刷データ取得部110は、USBメモリなどのデジタルデータの記録メディアに記録された画像データを読み取ってもよいし、インタフェースやネットワークを介してプリンタ1と接続されたコンピュータ等から画像データを取得してもよい。
【0018】
ヘッド2、3は、それぞれ略直方体形状を有している。用紙搬送方向に沿って最も上流には、1つのヘッド2、その下流側には4つのヘッド3が順番に所定ピッチで配置されている。ヘッド2及び4つのヘッド3は、ヘッドフレーム503に固定されており、図示しない駆動機構により上下方向に移動可能に、筐体501a内に設置されている。ヘッド2、3には、図示しないインクチューブを通じて、タンク61及びタンク62から、プレコート液、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク及びブラックインクがそれぞれ供給される。
【0019】
プレコート液用のヘッド2の下面は、平坦な吐出面2aであって、液滴を吐出する複数の吐出口8が開口している。ヘッド2の内部には、プレコート液を吐出口へと導く液体流路が形成されている。インク用のヘッド3は、ヘッド2と同様の構造を有しており、吐出面3aにも複数の吐出口8が開口し、内部に液体流路が形成されている。4つのヘッド3は、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインク滴を吐出する。吐出面2a及び3aは互いに平行に配置されている。
【0020】
搬送ユニット521は、2つのベルトローラ506,507、両ローラ506,507間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト508、搬送ベルト508の外側に配置されたニップローラ504及び剥離プレート505、搬送ベルト508の内側に配置されたプラテン519等を有する。ベルトローラ507は、駆動ローラであって、コントローラ100による制御の下、搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ507の回転に伴い、搬送ベルト508が図1中の矢印方向に走行する。ベルトローラ506は、従動ローラであって、搬送ベルト508が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ504は、ベルトローラ506に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト508の外周面508aに押さえつける。外周面508aには、弱粘着性のシリコン層が形成されている。剥離プレート505は、ベルトローラ507に対向配置され、用紙Pを外周面508aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン519は、5つのヘッド2,3に対向配置され、搬送ベルト508の上側ループをベルト内周面側から支持する。これにより、外周面508aと吐出面2a,3aとの間に、画像形成に適した所定の間隙が形成される。
【0021】
ガイド部は、搬送ユニット521を挟んで両側に配置されている。上流側ガイド部は、2つのガイド527a,527b及び一対の送りローラ526を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット501b(後述)と搬送ユニット521とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド529a,529b及び二対の送りローラ528を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット521と排紙部531とを繋ぐ。
【0022】
空間Bには、給紙ユニット501bが配置されている。給紙ユニット501bは、給紙トレイ523及び給紙ローラ525を有し、給紙トレイ523が筐体501aに対して着脱可能である。給紙トレイ523は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ525は、コントローラ100による制御の下、給紙トレイ523の最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0023】
空間A,Bには、上述のように、給紙ユニット501bから搬送ユニット521を介して排紙部531に至る、用紙搬送経路が形成されている。記録指令に基づいて、コントローラ100の画像記録制御部101(図9参照)は、給紙トレイ523から用紙Pを送り出させる。用紙Pは、上流側ガイド部を介して搬送ユニット20に送られる。用紙Pがヘッド2の真下を副走査方向(用紙搬送方向)に沿って通過する際、ヘッド2からプレコート液滴が吐出される。下流側の各ヘッド3からはインク滴が順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。このとき、先に用紙Pに着弾するプレコート液滴の着弾位置は、次に着弾するインク滴の着弾位置と一致するように調整されている。これにより、用紙Pにインク滴が着弾した際、先に着弾したプレコート液滴によって顔料の凝集が生じる。その結果、次に着弾したインク滴が用紙Pに浸透しにくくなり、用紙P上に形成される画像の品質が向上する。その後。用紙Pは、下流側ガイド部により上方に送られ、開口部530から排紙部531に排紙される。なお、副走査方向とは、用紙搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0024】
用紙搬送方向に関して4つのヘッド3より下流には、ライン型の画像センサ71が設置されている。画像センサ71には、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等が用いられる。画像センサ71は、ヘッド2、3によって形成された用紙P上の画像を撮像する。画像センサ71は、主走査方向に並べられた複数の受光素子を有し、用紙P上の画像形成領域の最大幅を撮像可能である。画像センサ71は、撮像された画像を画像データとしてコントローラ100へと送信する。かかる画像データは、後述の通り、吐出性能に係る検査パターンの解析に用いられる。
【0025】
空間Aのメンテナンスユニット80は、ヘッド2の吐出面2a及びヘッド3の吐出面3aを払拭するワイパ81と、吐出面2a及び3aを被覆するキャップ82(キャッピング手段)とを有している。ワイパ81及びキャップ82は、ヘッド2、3のそれぞれに設けられている。以下においては、ヘッド3に対して設けられたワイパ81及びキャップ82について説明するが、ヘッド2についても同様である。ヘッド2、3は、用紙Pに画像を形成する画像形成位置、ワイパ81による払拭が可能な払拭位置、キャップ82による被覆が可能な被覆位置の間で適宜移動する。
【0026】
ワイパ81は、ワイパブレード81aとこれを支持する支持基台とを有する。ワイパブレード81aの先端は、図2(a)に示すように、払拭位置の吐出面3aと当接する位置に配置されている。ワイパ81は、矢印D1に沿って往復移動する。このとき、ワイパブレード81aの先端が、吐出面3aを払拭する。
【0027】
キャップ82は、図2(b)に示すように、被覆位置の吐出面3aを被覆し、吐出口8内のインクの乾燥を防ぐ。キャップ82は、上面が平坦なキャップ台82aと、この上面から上方に突出したリップ82bとを有している。キャップ台82aは、図2(c)に示すように、長方形の平面形状であり、リップ82bが長方形の外縁に沿って配置されている。キャップ台82a内には空洞の流路82cが形成されている。流路82cの一端はキャップ台82aの上面中央部に開口し、他端はキャップ台82aの側面に開口している。側面側の開口にはエアチューブ83が接続されており、エアチューブ83を介してポンプ85(圧力変更手段)が接続されている。リップ82bは、吐出面3aに当接する弾性部材であり、吐出面3aに密着する。キャップ82が吐出面3aを覆った際、吐出面3aとキャップ台82aとの間で空隙が形成され、平面視で全ての吐出口8がリップ82bに包囲される。
【0028】
キャップ82は、図2(b)の矢印D2に沿って往復移動が可能である。ヘッド3がキャップ82より上方に配置されている状態で、キャップ82がヘッド3の下方に移動した後、ヘッド3が被覆位置まで下降することにより、リップ82bの先端が吐出面2aに押し当てられる。これにより、キャップ82と吐出面3aとで囲まれた内包空間(空隙)84が形成される。内包空間84の空気は、流路82c及びエアチューブ83を介して、ポンプ85によって吸引される。
【0029】
ヘッド2、3の構成について図3〜6を参照しつつより詳細に説明する。各ヘッド2、3は、インクが一時的に貯留される上部構造体とインクを吐出するヘッド本体4との積層体である。各ヘッド2、3は、同様の構成を有しており、ヘッド2は下部にヘッド本体4を有する。ヘッド3も、下部にヘッド本体5を有している。以下においては、主にヘッド本体5についてのみ説明する。ヘッド本体5は、流路ユニット9と、その上面に貼り付けられた8つのアクチュエータユニット21とを有している。8つのアクチュエータユニット21は、台形の平面形状を有し、図3に示すように、2列の千鳥状に配置されている。アクチュエータユニット21の上面には、コントローラ100からの駆動信号を供給する図示しないフレキシブルプリント基板が接続されている。流路ユニット9の上面には、アクチュエータユニット21の配置領域を避けてインク供給口5xが形成され、フィルタ72によって覆われている。フィルタ72は、上部構造体から流路ユニット9へと流れ込むインクをろ過する。
【0030】
流路ユニット9は、図6に示すように、ステンレス鋼からなる複数の金属製のプレート22〜30による積層体である。プレート22〜30には、それぞれ複数の貫通孔が形成されている。プレート22〜30は、位置合わせされて積層され、各貫通孔が連通したインク流路を内部に有している。インク流路は、マニホールド流路51、副マニホールド流路51a及び個別インク流路32を含む。図3及び図4に示すように、マニホールド流路51の一端はインク供給口5xに連通し、他端はヘッド長手方向に延びる副マニホールド路51aに連通している。副マニホールド流路51aからは、複数の個別インク流路32が分岐している。図6に示すように、個別インク流路32は、副マニホールド流路51aの出口を一端とし、圧力室10及びアパーチャ12を経て吐出面3aの吐出口8に至る。なお、図4では、説明の都合上から、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室10、アパーチャ12及び吐出口8を実線で描いている。
【0031】
吐出面3aでは、図5に示すように、複数の吐出口8が主走査方向に沿って等間隔で配置されている。これらの吐出口8は、主走査方向に関して、印刷解像度に対応した単位距離pのn倍(n:自然数)の間隔で並んで、吐出口列を構成する。吐出口列は、n本あり、隣接する列同士で主走査方向に間隔pづつシフトしながら副走査方向に等間隔で並んでいる。これにより、全ての吐出口8は、副走査方向に作る射影点が、主走査方向に延びる仮想直線L0上で等間隔pで並ぶことになる。ヘッド2の吐出口8も、これと同様の態様で並ぶ。さらに、ヘッド2の吐出口8とヘッド3の吐出口8とは、主走査方向に同じ位置に配置され、副走査方向に1対1で重なっている。
【0032】
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。インク供給口5xに供給されたインクは、マニホールド流路51から副マニホールド流路51aに分配される。副マニホールド流路51a内のインクは、各個別インク流路32に流れ込み、圧力室10を介して吐出口8に至る。
【0033】
次に、アクチュエータユニット21についてより詳細に説明する。アクチュエータユニット21は、各圧力室10に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室10内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する。図7に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなり、3枚の圧電層41〜43から構成されている。最上層の圧電層41は、その厚み方向に分極されている。また、圧電層41の上面には、複数の個別電極35が形成されている。圧電層41とその下側の圧電層42との間には、シート全面に形成された共通電極34が介在している。
【0034】
個別電極35は、圧力室10と対向している。個別電極35の先端には、個別ランド36が電気的に接続されている。個別電極35を共通電極34と異なる電位にして圧電層41に分極方向の電界が印加されると、圧電層41における電界印加部分が、圧電効果により歪む駆動活性部として働く。圧力室10に近い下側2枚の圧電層42、43は、非活性層であって、電界が印加されても自発的に変形しない。このため、個別電極35と圧力室10とで挟まれた部分が、個別のユニモルフ型アクチュエータとして働く。つまり、アクチュエータユニット21は、圧力室10の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれた圧電素子である。
【0035】
共通電極34は、すべての圧力室10に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極35には、駆動信号が選択的に供給される。
【0036】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、駆動活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。一方、圧電層42,43は自発的変形がない。圧電層41と圧電層42、43との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電層41〜43全体が圧力室10側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。
【0037】
ヘッド2は駆動制御部2bを有し、ヘッド3は駆動制御部3bを有している(図9参照)。駆動制御部3b(2b)からは、図8(a)に示すように、個別電極35に対して駆動信号である電圧パルス信号Sが供給される。電圧パルス信号Sは、幅T、高さEの方形パルスを含む。本実施形態では、あらかじめ各個別電極35が、電位E(>0)の状態に維持されている。したがって、圧電層41〜43は、ユニモルフ変形した状態で待機している。このときの圧力室10の容積をV1とする。そして、インク吐出の要求が発生するたびに、電圧パルス信号Sが個別電極35に供給される。電圧パルス信号Sが1つ供給されると、時刻t1において、個別電極35の電位がグランド電位へと低下し始める。個別電極35がグランド電位になると、圧電層41〜43が変形前の状態に戻り、圧力室10の容積がV2(>V1)となる。この容積増大動作により、圧力室10内のインクに負圧が印加され、副マニホールド流路51aから個別インク流路32へとインクが吸い込まれる。時刻t1から時間Tだけ経過した時刻t2において、個別電極35の電位がEに戻り始める。個別電極35の電位がEに戻ると、圧電層41〜43が再びユニモルフ変形した状態になり、圧力室10の容積もV1に戻る。この容積縮小動作により、圧力室10内のインクに正圧が印加され、吐出口8からインクが吐出される。電圧パルス信号Sの供給により圧力室10の容積をV1からV2を経てV1に戻すアクチュエータユニット21の一連の動作が、本発明における容積変更動作に対応する。
【0038】
吐出口8から吐出されるインクの速度は、パルスの高さEが同じとき、パルス幅Tの大きさによって異なる。時刻t1において圧力室10内に負圧が印加されると、個別インク流路32内のインクに固有振動が励起(圧力波が生成)される。この固有振動によって圧力室10内の正圧がちょうど最大となるタイミングで正圧が印加された場合、この正圧が固有振動に最も効率よく重畳する。このとき、インク滴が最大の吐出速度で吐出される。このようなパルス幅Tを、Toとする。図8のグラフには、パルス幅Tに対するインクの吐出速度の関係が示されている。インクの吐出速度は、T=Toにおいて最大となり、TがToから離れるほど小さくなる。また、T=3*To、T=5*To等のように、時刻t1を起点としてT=(Toの奇数倍)となるその他の時点でも、吐出速度が極大を取り得る。ただし、Toに対する倍率が大きいと時間が経過して振動が減衰してしまうので、インクが吐出されたとしてもT=Toのときよりも吐出速度は小さい。一方、T=(Toの偶数倍)のときは、時刻t1に生じる固有振動と時刻t2に印加される正圧とが逆位相で重畳することになり、互いに打ち消し合ってインクは吐出されない。Toは、個別インク流路32内のインクにおける固有振動周期に依存する。本実施形態においては、インク中を副マニホールド流路51aの出口から吐出口8まで圧力波が伝播するのに要する時間ALとToが等しくなるように設計されている。
【0039】
図8(c)は、本実施形態において使用される電圧パルス信号Sa〜Scを示している。いずれもパルスの高さEは同じであるが、互いにパルス幅が異なっている。パルス幅については、電圧パルス信号SaはToより小さく、電圧パルス信号SbはToに等しく、電圧パルス信号ScはToより大きい。電圧パルス信号Sbは、ヘッド2や3からインクやプレコート液を吐出させる際に使用される。電圧パルス信号SaやScのパルス幅は、個別電極35に供給した際、吐出口8からインク等が吐出しないように調整されている。電圧パルス信号Sa又はScがどのような場合に使用されるかは後述する。
【0040】
以下、コントローラ100による制御について図9〜図13を参照しつつより詳細に説明する。コントローラ100は、印刷用の画像データに基づいて用紙P上に画像を形成させる画像記録制御と、ヘッド2及び3において吐出口8の吐出性能が低下したか否かを評価するための吐出性能評価制御と、吐出口8の吐出性能を回復させる回復動作制御とを実行する。
【0041】
画像記録制御においては、コントローラ100に設けられた画像記録制御部101が、印刷データ取得部110が取得した印刷用の画像データに基づいて、ヘッド2、3及び搬送ユニット521を制御する。これにより、画像データに対応した画像が用紙P上に形成されることは、上述のとおりである。
【0042】
吐出性能評価制御においては、以下のとおりである。コントローラ100は、図9に示すように、用紙P上に検査パターンを形成する検査パターン記録制御部104と、検査パターンに基づいて吐出不良に関する情報を取得する不吐出情報取得部102(性能低下情報取得手段)とを有している。検査パターンは、ヘッド2とヘッド3とで異なる。ヘッド2用の検査パターンには、図10に示すパターン121が用いられる。パターン121を用紙P上に形成するには、パターン131に示すように、プレコート液の液滴及びインク滴を用紙Pに着弾させる。パターン131において、白丸s1がプレコート液の液滴の着弾位置に対応し、黒丸s2がインク滴の着弾位置に対応している。パターン131において、主走査方向に沿って白丸s1と黒丸s2とが交互に並んだドット行131aが、副走査方向に繰り返し並んでいる。つまり、副走査方向に沿って白丸s1が並んだドット列131bと、副走査方向に関して黒丸s2が並んだドット列131cとが、主走査方向に交互に並んでいる。
【0043】
検査パターン記録制御部104は、以下のように、プレコート液の液滴とインク滴とをパターン131が示すドット位置へと吐出させる。まず、ヘッド2において、主走査方向に関して1つおきに並んだ吐出口8からなる吐出口群から、1本のドット行131aに含まれる各ドット位置s1へとプレコート液の液滴を吐出させる。そして、いずれかのヘッド3(例えば、ブラックのヘッド3)において、上記吐出口群の吐出口8とは主走査方向に関して互い違いに並んだ吐出口8からなる吐出口群から、ドット行131aに含まれる各ドット位置s2へとインク滴を吐出させる。例えば、図5に示すように、ヘッド2において左から奇数番目の各吐出口8からなる吐出口群8xからドット位置s1へとプレコート液の液滴を吐出させる。そして、ヘッド3において左から偶数番目の各吐出口8からなる吐出口群8yからドット位置s2へとインク滴を吐出させる。これにより、1本のドット行131aを用紙P上に形成させる。このようなドット行131aへの吐出を副走査方向に繰り返すことにより、パターン131に示す全てのドット位置s1及びs2へとプレコート液の液滴及びインク滴を着弾させる。これにより、用紙P上にパターン121が形成される。
【0044】
パターン121において、ドット列131cにはインク滴が着弾するため、用紙P上にはインク色のライン121cが形成される。ここで、プレコート液の液滴が適切に着弾したドット位置s1には、隣接するドット位置s2に着弾したインク滴が浸入しにくい。このため、ドット列131bの位置には、用紙Pの色がそのまま表れたライン121aが形成される。一方、プレコート液の液滴が適切に着弾しなかったドット位置s1には、隣接するドット位置s2に着弾したインク滴が浸入しやすい。このため、プレコート液が着弾しなかったドット列131bの位置には、隣接するドット位置s2からインクが滲んだライン121bが形成される。特に、主走査方向に両側からドット列131cに挟まれたドット列131bでは、ライン121bのように両側からインクが滲む。ライン121bは、ライン121aに比べて細くなるか、全体的に薄くインクの色を帯びる。このような両ライン121a、121b間の違いから、ヘッド2の吐出口8に吐出不良が発生していることがパターン121上に明瞭に表れる。
【0045】
次に、検査パターン記録制御部104は、パターン131とはドット位置s1とドット位置s2とを入れ替えたパターンを、用紙P上の別の位置(あるいは、別の用紙P)に形成する。例えば、初めに図5の吐出口群8x及び8yを用いてパターン121を形成した場合、次には、ヘッド2における吐出口群8x以外の吐出口8とヘッド3における吐出口群8y以外の吐出口8とを用いてパターンを形成する。これにより、残りの吐出口8においても吐出不良が発生しているか否かがパターン上に明瞭に表れる。
【0046】
ヘッド3用の検査パターンには、図11(a)及び図11(b)に示すパターン122又は123が用いられる。パターン122は、内部が塗りつぶされた長方形のパターンであり、いわゆるベタ画像のパターンである。パターン122は、1つのヘッド3における全ての吐出口8からインクを吐出させて主走査方向に沿ったラインを形成すると共に、このライン形成を副走査方向に繰り返すことにより形成される。図11(a)の白抜き矢印は、各アクチュエータユニット21と、そのアクチュエータユニット21に対応する吐出口8から吐出されたインクによるパターン形成部分との対応関係を示している。ヘッド3においていずれかのアクチュエータユニット21(例えば、図11(a)のアクチュエータユニット21a)に対応するいずれかの吐出口8に吐出不良が生じている場合、その吐出口8に相当する位置には、用紙Pの地色によるライン122aが表れる。パターン123は、主走査方向に沿った横ラインと副走査方向に沿った縦ラインとを規則正しく配列した煉瓦状模様のパターンである。パターン123は、いずれの吐出口8に吐出不良が発生したのかを、吐出不良に対応するライン123aと縦ラインとの位置関係に基づいて目視等により把握するのが容易である。
【0047】
用紙P上に検査パターンが形成されると、本実施の形態では、画像センサ71が検査パターンを逐次読み取っていき、読み取ったパターンに対応する読み取り画像データを不吐出情報取得部102へと出力する。不吐出情報取得部102では、この読み取り画像データに基づいて、ヘッド2又は3における吐出不良の有無を評価し、不良の吐出口8を特定する。吐出口8の特定は、パターン121〜123において、ライン121b、122a又は123aの主走査方向に関する位置を検出することによりなされる。不吐出情報取得部102は、主走査方向に関する位置と吐出口8との関係を示す情報を有しており、この情報と検出された位置とに基づいて吐出不良が生じている吐出口8を特定する。特に、不吐出情報取得部102は、ライン121bのようなインクの滲みが生じている部分において、滲みがどの程度であるかを評価する。この評価は、例えば、ライン121aなどの他のラインと比較したり、インクの濃淡がどの程度であるかを基準値と比較して評価したりすることによりなされる。
【0048】
吐出不良の原因は、(1)流路に接着剤等による詰まりが生じていること、(2)プレコート液やインクの粘度が増加していること、及び、(3)メニスカスが破壊されて個別インク流路32内に気泡が入り込んでいることの主に3つが存在する。このうち、(1)の原因による吐出不良は、恒常的な吐出不良であり、例えば装置の初期出荷の段階において抽出され、除去される。また、(2)の原因による吐出不良の場合、吐出動作を繰り返すことにより徐々に改善する。このため、検査パターンには、濃度が一定なライン121b、122a又は123aとは異なり、副走査方向に関して徐々に濃度が回復するような線が表れる。
【0049】
一方、(3)の原因による吐出不良は、図6の破線Qに示すように、吐出口8から気泡が入り込んで滞留し、メニスカスが流路の奥へと後退しているときに生じる。このような場合、通常の吐出動作を繰り返すだけでは、メニスカスが吐出口端に戻らないことが多い。したがって、(3)を原因とした吐出不良の場合、ライン121b、122a又は123aとして検査パターンに表れやすい。そこで、不吐出情報取得部102は、ラインに濃度の変化が生じているか否かに基づいて、吐出不良が(3)の原因によるものか否かを判定する。このとき、所定のライン長さの間で濃度変化がなければ(3)の原因による不良と判定し、濃度が単調に変化する傾向を示せば(2)の原因による不良と判定する。
【0050】
回復動作制御は以下のとおりである。コントローラ100は、ヘッド2、3及びメンテナンスユニット80に所定の回復動作処理を実行させる回復動作制御部103を有している。本実施形態の回復動作には以下の3種類がある。
【0051】
回復動作の1つ目は、上記(3)の原因による吐出不良が生じている吐出口8においてメニスカスを復元するメニスカス復元動作である。この動作では、まず、回復動作制御部103がメンテナンスユニット80を制御して、図2(b)に示すように、キャップ82で吐出面2aや3aを被覆する。そして、ポンプ85に内包空間84内の空気を吸引させ、内包空間84を減圧させる(内包空間84の圧力を大気圧に比べて負とする)。このとき、インクやプレコート液が漏れ出さない範囲で、内包空間84内はメニスカス耐圧に近い圧力まで減圧される。メニスカス耐圧は、吐出口8において、メニスカスが外気圧に抗して維持される最大圧力である。内包空間84内の圧力の管理は、内包空間84に対して圧力測定手段を設けて、メニスカスが破壊されないように減圧されても良い。あるいは、予めこのような圧力範囲に調整された駆動量でポンプ85が駆動されても良い。(3)の原因による吐出不良の場合、図6に示すように、吐出口8のメニスカスが破壊されて気泡が入り込んでいる。内包空間84の減圧により、個別インク流路32内部のメニスカスが吐出口8側へと引っ張り出される。この減圧に対して、吐出不良のない吐出口8では、メニスカスは吐出口8の開口に留まっている。
【0052】
ここで、個別インク流路32内のメニスカスは、部分29aまで引っ張り出されたとしても、以下の理由から、吐出口8の開口までは到達しにくい。減圧によってメニスカスに作用する力の大きさは、メニスカスの面積が小さくなるほど小さい。個別インク流路32は、図6に示すように、吐出口8の開口に向かって先細りになっている。つまり、開口端付近では、メニスカスに作用する力も小さくなり、メニスカスを移動させにくくなる。
【0053】
そこで、回復動作制御部103は、内包空間84を減圧した後、駆動制御部2b又は3bを制御して、吐出不良が生じていると特定された吐出口8に対応するアクチュエータを駆動させる。具体的には、駆動制御部2b又は3bから、特定された吐出口8に対応する個別電極35へと、図8(c)に示す電圧パルス信号Scを複数供給させる。電圧パルス信号Scのパルス幅Tは、1.5*To<T<2.5*Toを満たしていることが好ましい。このようなパルスの印加により、他の吐出口8からインク等が吐出されるのを確実に抑制しつつ、副マニホールド流路51aから問題の個別インク流路32へとインク等が供給され、メニスカスを吐出口8側へと押し出すことができる。これによって、吐出口8から外部へと気泡を押し出し、メニスカスを復元することができる。なお、電圧パルス信号Scをいくつか個別電極35に供給した直後に、メニスカスの振動を打ち消すような追加の電圧パルス信号Sを供給してもよい。
【0054】
なお、内包空間84内を減圧する際、正常なメニスカスを微小に振動させることが好ましい。メニスカスが微小に振動するとメニスカス耐圧が向上することが確認されている。つまり、メニスカスの微小振動により、内包空間84内が減圧されてもインク等の液体が正常な吐出口8から排出されにくくなる。具体的には、吐出不良が生じていない、つまり、正常な吐出口8に対応する個別電極35に、図8(c)に示す電圧パルス信号Saを連続して供給する。これにより、メニスカスが微小に振動する。
【0055】
回復動作の2つ目は、上記(2)の原因による吐出不良を回復するためのフラッシング動作である。この動作では、まず、回復動作制御部103がメンテナンスユニット80を制御して、図2(b)に示すように、キャップ82で吐出面2aや3aを被覆する。そして、吐出口8から強制的にインクやプレコート液を内包空間84へと吐出させる。具体的には、個別電極35へとT=Toとなる電圧パルス信号Sを多数供給したり、パルスの高さEが大きい電圧パルス信号Sを供給したりする。これにより、吐出口8から粘度が増加したインク等が排出され、吐出不良が解消する。
【0056】
回復動作の3つ目は、メニスカスを整えるワイパ動作である。この動作では、回復動作制御部103がメンテナンスユニット80を制御して、図2(a)に示すように、ワイパ81に吐出面2aや3aを払拭させる。これにより、各吐出口8においてメニスカスの状態が一様に整えられる。このとき、ワイパ81による払拭に先立って、各吐出口8から強制的にインク等を排出させる。インク等の排出は、アクチュエータの駆動によらず、例えば、インクの供給側から正圧を加えて行う。ヘッド2又は3のサイズが小さければ、上述のように、キャップ82で吐出面2aや3aを被覆し、ポンプ85でメニスカスを破壊するほどに内包空間84内を減圧しても良い。
【0057】
以下、プリンタ1が実行する動作の一連のステップを、図12を参照しつつ説明する。まず、コントローラ100が、ユーザにより吐出性能を検査するように指示があったか否かを判定する(ステップS1)。ユーザからの指示は、プリンタ1の操作パネルやプリンタ1と接続されたコンピュータ等から入力される。吐出性能を検査するように指示があった場合には(ステップS1、Yes)、コントローラ100は、給紙ユニット501b及び搬送ユニット521等を制御して、ヘッド2及び3へと検査用紙を搬送させる(ステップS2)。このとき、通常の記録用紙を検査用紙としても良いし、記録用紙と異なる専用紙を用いても良い。
【0058】
次に、ヘッド2からプレコート液を吐出させると共にヘッド3からインクを吐出させて用紙上にパターン121〜123を形成させる(ステップS3)。そして、画像センサ71が生成した検査パターン121〜123に関する画像データに基づいて、不吐出情報取得部102が吐出口8に吐出不良が生じているか否かを判定する(S4)。このとき、不吐出情報取得部102は、吐出不良が生じている吐出口8を特定すると共に、吐出不良の原因を評価する。この評価ステップでは、例えば、各ドット列131bに対応して色差が求められ、用紙P自体の色差と比較される。色差には、閾値が設けられており、この閾値に関して測定された色差が用紙P自体に近ければ吐出は良好とされ、ヘッド3の色インクに近ければ吐出不良とされる。
【0059】
吐出不良が生じていない場合には(ステップS4、No)、プリンタ1はステップS1の動作に戻る。吐出不良が生じている場合には(ステップS4、Yes)、プリンタ1はユーザに対してディスプレイ表示やアラーム等により警告を発する(ステップS5)。そして、吐出不良を解消させる回復動作を実行するか否かの指示をユーザから受け付け、指示があった場合には(ステップS6、Yes)、プリンタ1は回復動作を実行する(ステップS7)。指示がなかった場合には(ステップS6、No)、ステップS1の動作に戻る。回復動作ステップの詳細は後述する。
【0060】
ステップS1において検査の指示がなかった場合には(ステップS1、No)、前回の検査から所定の時間が経過したか否かをコントローラ100が判定する(ステップS8)。前回の検査から所定の時間が経過したとコントローラ100が判定した場合には(ステップS8、Yes)、プリンタ1はステップS2からの動作を実行する。つまり、検査の指示がない場合にも、前回の検査から所定の時間が経過した場合には、吐出性能の検査が実行される。前回の検査から所定の時間が経過していないと判定した場合には(ステップS8、No)、コントローラ100は、印刷ジョブがあるか否かを判定し(ステップS9)、印刷ジョブがあると判定した場合には(ステップS9,Yes)、印刷ジョブを実行する(ステップS10)。プリンタ1は、印刷ジョブが完了していない間は印刷ジョブを実行し続け(ステップS11、No→ステップS10)、印刷ジョブが完了した場合には(ステップS11、Yes)、ステップS1の動作に戻る。ステップS9において印刷ジョブがないと判定した場合には(ステップS9、No)、プリンタ1は印刷ジョブが発生するまで待機する。
【0061】
ステップS7の回復動作ステップについて、図13を参照しつつより詳細に説明する。まず、コントローラ100は、不吐出情報取得部102が評価した結果に基づいて、吐出不良の原因が上記(2)の粘度増加によるものであるか、上記(3)の気泡の混入によるものであるかを判定する(ステップS21)。吐出不良の原因が(2)によるものとコントローラ100が判定した場合には(ステップS21、粘度増加)、回復動作制御部103が、ヘッド2、3及びメンテナンスユニット80に上述のフラッシング動作を実行させる。この後、プリンタ1はステップS1の動作に戻る。一方、吐出不良の原因が(3)によるものとコントローラ100が判定した場合には(ステップS21、気泡混入)、回復動作制御部103が、ヘッド2、3及びメンテナンスユニット80に上述のメニスカス復元動作を実行させる(ステップS22)。ステップS24においては、回復動作制御部103が、メンテナンスユニット80に上述のワイパ動作を実行させる。そして、プリンタ1はステップS1の動作に戻る。
【0062】
以上説明した本実施形態によると、図6に示すようにメニスカスが破壊されて、吐出口8から流路内へと気泡が混入していることが検出された場合には、回復動作処理としてメニスカス復元動作を実行する。メニスカス復元動作によると、まず、内包空間84をメニスカスが破壊されない範囲でメニスカス耐圧付近まで減圧する。これにより、正常な吐出口8からインク等が吐出されるのを防止しつつ、流路内へと後退したメニスカスを吐出口8側へと引き出せる。
【0063】
次に、1.5*To<T<2.0*Toとなるような電圧パルス信号Sを、吐出不良が生じている吐出口8に対応する個別電極35に供給する。これにより、吐出口8からインク等が吐出されるのを防止しつつメニスカスを復元できる。ここで、T<Toとなるような電圧パルス信号Sを供給した場合には、最初の負圧の印加から短い時間で次の正圧を印加することとなるため、副マニホールド流路51aから個別インク流路32へと十分にインク等が供給されないおそれがある。これに対して、To<Tとすることで、副マニホールド流路51aから個別インク流路32へと十分にインク等が供給され、メニスカスを吐出口8側へと十分に移動させることができる。また、1.5*To<T<2.5*Toを満たす場合、パルス幅Tは、負圧と正圧とが打ち消し合う2*To付近の値となる。このため、吐出口8からインク等が吐出するのを確実に抑制できる。このように、本実施形態のメニスカス復元動作では、インク等を無駄に消費することなくメニスカスを復元できる。
【0064】
また、本実施形態においては、ヘッド2の吐出不良を検査するために図10のパターン121を用いている。これは、以下の理由による。吐出不良を検査するには、プレコート液が透明であるため、プレコート液単独の検査は非常に困難である。また、プレコート液の液滴とインク滴とを用紙P上の同じ位置に着弾させ、プレコート液が適切に着弾した位置と適切に着弾しなかった位置とにおけるインクの発色の違いを目視で検出することも考えられる。しかし、プレコート液の有無は発色の濃淡の違いとして表れる。つまり、同色のインク同士で濃淡の違いを判断しないといけないので、その違いを画像センサや目視で判断することは難しい。さらに、プレコート液の有無による発色の違いがそれほど顕著でない場合もある。したがって、これらの方法での検査には限界がある。一方、図10のパターン121を用いると、吐出口8の吐出不良は、ライン121aと121bとに示すように、用紙Pの色とインクの色との差として表れる。したがって、同色のインクにおける発色の濃淡の差として表れる他の検査パターンと比べてその差が顕著であるので、吐出口8の吐出不良を検査しやすい。
【0065】
また、パターン121によれば、主走査方向に両側のドット位置s2からドット位置s1へとインクが滲むため、ライン121bのようにライン121aとの違いがはっきり表れる。さらに、同じ吐出口8に対応するドット位置s1が並んだドット列121bと、同じ吐出口8に対応するドット位置s2が並んだドット列121cとが隣接している。このため、吐出口8に吐出不良がある場合には、ドット列121cに着弾したインクが列全体からドット列121bへと滲むので、ライン121bに示すように、ライン全体に亘ってライン121aとの違いがはっきり表れる。これらにより、吐出口8の吐出不良を検査しやすい。
【0066】
さらに、パターン121によれば、主走査方向に関してドット位置s1とドット位置s2とが交互に並んでおり、ドット位置s1にはそれぞれ異なる吐出口8から液滴が吐出される。この場合、ライン121bのようなインクの滲みが何番目のラインに表れるのかを把握すれば、どの吐出口8に吐出不良が生じているのかを把握できる。したがって、吐出不良が生じた吐出口8を特定しやすい。
【0067】
以下、本実施形態の各種変形例について説明する。第1の変形例は、図14に示すように、インクを流入させるポンプ91(液体流入手段)がヘッド2及びヘッド3ごとに設けられたものである。以下においては重複を避けるため、ヘッド3について説明し、ヘッド2については説明を省略する。ヘッド3の上部構造体の内部には、流路33が形成されている。流路33は複数の流路33aへと分岐しており、各流路33aは各インク供給口5xと連通している。ポンプ91は、タンク62のインクをヘッド3へと強制的に流入させる。流路33内へと流入したインクは、流路33a及びインク供給口5xを介してヘッド本体5内へと流れ込む。第1の変形例においては、メニスカス復元動作の際、内包空間84を減圧する代わりに、吐出口8からインクが吐出されない範囲の圧力でヘッド3内へとインクを流入させるように、回復動作制御部103がポンプ91を制御する。これによって、内包空間84の減圧と同様に、流路内へと後退したメニスカス(図6参照)を吐出口8側へと押し出すことができる。その他の動作については上述の実施形態と同様である。
【0068】
第2の変形例は、パターン131の代わりに用いられるパターン231に関する。パターン231では、図15(a)に示すように、白丸s1同士の間には3つの黒丸s2が配置されている。白丸s1のそれぞれは2つの黒丸s2によって主走査方向に挟まれている。このように形成されたドット行231aが、副走査方向に繰り返し並んでいる。第2の変形例では、ヘッド2の吐出口8が複数の吐出口群に区分されると共に、吐出口群ごとに、パターン231に応じた検査パターンが形成される。各吐出口群は、主走査方向に3つの吐出口8を置いて離隔した吐出口8からなる。図15(b)は吐出口群の具体例である。吐出口8は、図15(b)に示すように、全体的には2400dpiに対応する間隔で形成されている。一方、吐出口群8a〜8dのそれぞれにおいては、吐出口8が600dpiに対応する間隔で配列されている。そして、吐出口群8aからパターン231の各位置s1へとプレコート液が吐出される。また、ヘッド3からは、主走査方向に関して吐出口群8aの吐出口8同士に挟まれた吐出口8から位置s2へとインクが吐出される。これにより、パターン231に対応する1つの検査パターンが用紙P上に形成される。これと同様に、吐出口群8b〜8dのそれぞれに関して、パターン231に対応する1つの検査パターンが、用紙P上のそれぞれ別の位置(あるいは、別の用紙P上)に形成される。
【0069】
第2の変形例によると、各検査パターンにおいて、比較的広い間隔且つ一定間隔でプレコート液によるラインが形成されるので、プレコート液の吐出不良が生じた吐出口8が容易に判別可能である。また、2400dpiの吐出口8に対して600dpiでプレコート液によるラインが形成されるため、600dpiの低解像度の画像センサによって吐出不良を検出することが可能となる。
【0070】
第3の変形例に係るパターン331は、図16(a)に示すように、1つのドット位置s1の周囲に8個のドット位置s2が隣接しており、これらのドット位置s2がドット位置s1を取り囲んでいる。パターン331に基づいて検査パターンを形成すると、プレコート液の液滴がドット位置s1に適切に着弾した場合は、ドット位置s2からのインクの滲みが抑制される。このため、パターン332aに示すように、中心に用紙Pの地色がそのまま表れた検査パターンが、用紙P上に形成される。一方、プレコート液の液滴がs2の位置に着弾しなかった場合には、周囲のドット位置s2からインクが滲むため、パターン332bに示すように、中心がインクによって薄く塗りつぶされた検査パターンが、用紙P上に形成される。検査パターンが332a及び332bのいずれになるかを判別することにより、吐出口8における吐出不良を検出することができる。
【0071】
第4の変形例に係るパターン431は、図16(b)に示すように、単に1個のドット位置s1と1個のドット位置s2とを互いに隣接させたものである。このような場合にも、プレコート液の液滴がドット位置s1に適切に着弾したか否かによって、ドット位置s2からドット位置s1へとインクが滲む程度が変わるので、吐出口8の吐出不良を検査できる。しかしながら、ドット位置s1とs2を単に隣接させるだけよりは、第5の変形例に係る図16(c)のパターン532のように、ドット位置s1と隣接するドット位置s2がドット位置s1を挟んでいるパターンの方が、吐出口8の吐出不良の有無に応じてインクの滲む程度に生じる差が大きくなる。また、第6の変形例に係る図16(d)のパターン631のように、2つ以上のドット位置s2が互いに異なる方向に関してドット位置s1と隣接していてもよい。
【0072】
第7の変形例は、吐出不良の特定方法に関する。上述の実施形態では、吐出不良が生じている吐出口8を特定しているが、第7の実施例は、吐出不良が生じている吐出口群を判別するように構成されている。例えば、吐出口8をアクチュエータユニット21ごとに1つの吐出口群に区分し、いずれのアクチュエータユニット21に対応する吐出口群に吐出不良が生じているかを検査パターンから判別してもよい。図11の例では、アクチュエータユニット21aに対応する吐出口群に吐出不良が発生しているため、この吐出口群が、吐出不良が発生している吐出口群として判別される。そして、回復動作処理においては吐出口群単位で各種の回復動作が実行される。つまり、吐出不良が発生していると判別された吐出口群に属する全ての吐出口8についてメニスカス復元動作やフラッシング動作が実行されるが、その他の吐出口8については実行されない。第7の実施例によると、吐出口群単位で回復動作を実行するため、簡易な制御になると共に、吐出不良が生じていない吐出口群について回復動作を無駄に実行せずに済む。
【0073】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0074】
例えば、上述の実施形態では、図10の白丸s1にはプレコート液の液滴のみが着弾し、黒丸s2にはインク滴のみが着弾する場合が想定されている。しかし、黒丸s2の位置にプレコート液の液滴及びインク滴の両方が着弾してもよい。この場合、黒丸s2から白丸s1へのインクの滲みが若干弱くなるかもしれないが、白丸s1の位置にプレコート液の液滴が着弾しなかった場合にはやはり、黒丸s2から白丸s1へインクが滲みやすくなる。したがってこの場合も、吐出口8の吐出不良を検出可能である。
【0075】
上述の実施形態では、吐出口8の吐出不良としてインクやプレコート液が全く吐出されない場合が想定されている。しかし、吐出口8の吐出性能が低下することにより、吐出はするが、吐出量が規定量より小さくなっている場合が想定されてもよい。例えば、パターン131において、白丸s1の位置にプレコート液の液滴が全く着弾しなかった場合が想定されてもよいし、多少とも液滴が着弾するような場合が想定されてもよい。多少とも液滴が着弾するような場合も、適切に着弾する場合と比べて液滴の量が少ない場合にはインクが滲みやすくなるので、吐出口8に関する吐出性能の低下を検出できる。また、滲みの程度を正確に検出できれば、吐出口8の吐出性能がどの程度低いかを評価することもできる。
【0076】
上述の実施形態では、ヘッド3用の検査パターンとして、パターン122、123を用いている。このうち、パターン122に対しては、パターン形成後の読み取り性の向上の観点から、パターン形成領域に予めプレコート液のドットを検査パターンと同じパターンで形成しておいても良い。
【0077】
また、上述の実施形態では、画像センサ71が読み取った検査パターンの画像データに基づいて吐出口8の吐出不良を検出している。しかし、用紙P上に形成された検査パターンをユーザが肉眼観察し、吐出不良を示すライン122b、122a又は123aが生じていると認めれば、ユーザがプリンタ1に回復動作を実行するように指示してもよい。このとき、いずれの吐出口群又はいずれの吐出口8に吐出不良が生じているかまでユーザが判断し、吐出不良が生じていると判断した吐出口群又は吐出口8をユーザがプリンタ1に入力できるように構成してもよい。この場合、ユーザからの入力を受け付ける手段が、本発明における性能低下情報取得手段に対応する。
【符号の説明】
【0078】
S,Sa〜Sc 電圧パルス信号
s1,s2 ドット位置
121-123 検査パターン
1 インクジェットプリンタ(プリンタ)
2 プレコートヘッド(ヘッド)
2a 吐出面
3 インクジェットヘッド(ヘッド)
3a 吐出面
8 吐出口
10 圧力室
21 アクチュエータユニット
32 個別インク流路
35 個別電極
71 画像センサ
80 メンテナンスユニット
82 キャップ
84 内包空間
85 ポンプ
100 コントローラ
101 画像記録制御部
102 不吐出情報取得部
103 回復動作制御部
104 検査パターン記録制御部
110 印刷データ取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、前記吐出口へと液体を供給する液体流路と、前記液体流路の途中に設けられた圧力室と、前記圧力室の容積をV1からV1より大きいV2に変更した後、V1へと戻す容積変更動作を実行することにより前記吐出口から液体を吐出させるアクチュエータとを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記吐出口が開口した吐出面に当接して前記吐出口が形成された吐出領域を覆うキャッピング手段と、
前記キャッピング手段が前記吐出領域を覆った状態で、前記キャッピング手段と前記吐出面に囲まれる内包空間内の圧力を変更する圧力変更手段と、
前記圧力変更手段及びアクチュエータを制御して前記吐出口の吐出性能の回復動作処理を実行する回復動作制御手段とを備えており、
前記アクチュエータが、前記圧力室の容積をV1からV2に変更し始めてからV1に戻し始めるまでの時間Tに関して、T=To(To>0)となるように前記容積変更動作が実行されたときに、前記吐出口から吐出される液体の吐出速度が最大且つ極大となる特性を有しており、
前記回復動作処理が、
液体のメニスカスが形成されている前記吐出口から液体が排出されない範囲で前記内包空間内を減圧する圧力低下動作を前記圧力変更手段に実行させた後に、T>Toであり且つ前記吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を前記アクチュエータに実行させる処理を含んでいることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドが前記吐出口を複数有しており、
吐出性能が低下した前記吐出口を含む1又は複数の前記吐出口からなる吐出口群を判別する情報を取得する性能低下情報取得手段をさらに備えており、
前記回復動作処理において、前記性能低下情報取得手段が取得した情報に基づき、吐出不良が生じた前記吐出口群に対応する前記アクチュエータのみが、T>Toであり且つ当該吐出口群から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記性能低下情報取得手段が、吐出性能が低下した前記吐出口を特定する情報を取得し、
前記回復動作処理において、前記性能低下情報取得手段が取得した情報が特定する前記吐出口に対応する前記アクチュエータのみが、T>Toであり且つ当該吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を実行することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記回復動作処理において、
前記性能低下情報取得手段が取得した情報に基づき、吐出不良が生じた前記吐出口群以外の前記吐出口に対応する前記アクチュエータが、0<T<Toであり且つ当該吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を実行することを特徴とする請求項2又は3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記回復動作処理において、
前記アクチュエータが、1.5*To<T<2.5*Toとなるように前記容積変更動作を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記回復動作処理において、
前記圧力低下動作を前記圧力変更手段に実行させた後に、前記アクチュエータが複数回の前記容積変更動作を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記吐出口付近における吐出方向に直交する平面に沿った前記液体流路の断面が、前記吐出口に向かって小さくなるように変化していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
複数の前記吐出口が前記液体吐出ヘッドに形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録装置において、前記吐出口の吐出性能を回復する吐出性能回復方法であって、
前記記録装置が、前記複数の吐出口のそれぞれから記録媒体へと液体を吐出させて記録媒体上に検査パターンを形成するステップと、
前記記録媒体上に形成された前記検査パターンに基づいて、前記複数の吐出口のうち、吐出性能が低下したものを特定するステップと、
前記回復動作制御手段が、前記圧力低下動作を前記圧力変更手段に実行させた後に、吐出性能が低下したと特定された前記吐出口に対応する前記アクチュエータのみに、T>Toであり且つ当該吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を実行させるステップとを備えていることを特徴とする吐出性能回復方法。
【請求項9】
液体を吐出する吐出口と、前記吐出口へと液体を供給する液体流路と、前記液体流路の途中に設けられた圧力室と、前記圧力室の容積をV1からV1より大きいV2に変更した後、V1へと戻す容積変更動作を実行することにより前記吐出口から液体を吐出させるアクチュエータとを有する液体吐出ヘッドと、
液体を貯留する液体貯留手段と、
前記液体貯留手段内の液体を前記液体流路へと流入させる液体流入手段と、
前記液体流入手段及びアクチュエータを制御して前記吐出口の吐出性能の回復動作処理を実行する回復動作制御手段とを備えており、
前記アクチュエータが、前記圧力室の容積をV1からV2に変更し始めてからV1に戻し始めるまでの時間Tに関して、T=To(To>0)となるように前記容積変更動作が実行されたときに、前記吐出口から吐出される液体の吐出速度が最大且つ極大となる特性を有しており、
前記回復動作処理が、
前記液体流入手段に前記吐出口から液体が吐出されない範囲の圧力で前記液体流路へと液体を流入させた後に、T>Toであり且つ前記吐出口から液体が吐出されない範囲で前記容積変更動作を前記アクチュエータに実行させる処理を含んでいることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−111174(P2012−111174A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263493(P2010−263493)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】