説明

記録装置及び表示装置

【課題】光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体に、階調を変化させるべき位置のいずれに対しても、あらかじめ決められた量以上のエネルギー量の光を照射できるようにすること。
【解決手段】記録装置10は、光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体200に対して画像を記録する。記録装置10は、指示体30により指示された位置のそれぞれに対して、照射される光のエネルギー量があらかじめ決められた量以上になる場合と、検知が行われなくなる場合の少なくともいずれかを満たすまで光を照射する。記録装置10は、第1の期間に位置が連続的に検知され、かつ、第1の期間後であって第1の期間に連続しない第2の期間に位置が連続的に検知された場合に、第1の期間に検知された位置のうちのエネルギー量があらかじめ決められた量に満たない位置に対して第2の期間に光を照射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者が書き込んだ情報を表示する情報処理装置が知られている。特許文献1には、利用者の指定する位置を検出し、検出された位置情報に応じた情報をシート型表示装置に表示させる情報処理装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−206845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体に、階調を変化させるべき位置のいずれに対しても、あらかじめ決められた量以上のエネルギー量の光を照射できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る記録装置は、光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体に電圧を印加する電圧印加手段と、前記表示媒体において指示体により指示された位置を検知する検知手段と、前記電圧印加手段による前記表示媒体への電圧の印加に応じて、当該表示媒体において前記検知手段により検知された位置に、前記指示体が指示する側と反対の側から光を照射する照射手段と、前記検知手段により検知された位置のそれぞれに対して、照射される光のエネルギー量があらかじめ決められた量以上になる場合と、前記検知が行われなくなる場合の少なくともいずれかを満たすまで光が照射されるように、前記照射手段を制御する第1の制御手段と、前記検知手段により、第1の期間に位置が連続的に検知され、かつ、前記第1の期間後であって当該第1の期間に連続しない第2の期間に位置が連続的に検知された場合に、当該第1の期間に検知された位置のうちの前記エネルギー量が前記あらかじめ決められた量に満たない位置に対して前記第2の期間に光を照射させる第2の制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る記録装置は、前記制御手段は、前記検知手段により前記第1の期間に位置が検知された後、あらかじめ決められた期間以内に前記第2の期間が生じない場合と利用者による操作があった場合の少なくともいずれかに、当該第1の期間に検知された位置のうちの前記エネルギー量が前記あらかじめ決められた量に満たない位置に対して光を照射させることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る記録装置は、前記照射手段は、前記表示媒体のあらかじめ決められた領域に向けて光を照射する光源と、前記検知手段により検知され得る位置に対応して設けられ、各々が、前記光源により照射される光を前記あらかじめ決められた領域へと透過させ、又は遮る複数の調光素子とを有し、前記複数の調光素子の各々を制御することによって光の照射位置を制御し、前記検知手段により前記位置が検知されている期間があらかじめ決められた時間以上連続した場合に、前記照射手段による光の照射を一時的に中断する第3の制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る表示装置は、光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体を有する表示手段と、前記表示手段に電圧を印加する電圧印加手段と、前記表示媒体において指示体により指示された位置を検知する検知手段と、前記電圧印加手段による前記表示媒体への電圧の印加に応じて、当該表示媒体において前記検知手段により検知された位置に、前記指示体が指示する側と反対の側から光を照射する照射手段と、前記検知手段により位置が検知された位置のそれぞれ対して、照射される光のエネルギー量があらかじめ決められた量以上になる場合と、前記検知が行われなくなる場合の少なくともいずれかを満たすまで光が照射されるように、前記照射手段を制御する制御手段と、前記検知手段により、第1の期間に位置が連続的に検知され、かつ、前記第1の期間後であって当該第1の期間に連続しない第2の期間に位置が連続的に検知された場合に、当該第1の期間に検知された位置のうちの前記エネルギー量が前記あらかじめ決められた量に満たない位置に対して前記第2の期間に光を照射させる第2の制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、4に係る発明によれば、光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体に、階調を変化させるべき位置のいずれに対しても、あらかじめ決められた量以上のエネルギー量の光を照射できる。
請求項2に係る発明によれば、第2の期間が検知されない場合に、表示媒体の階調を変化させるいずれの位置に対しても、あらかじめ決められた量以上のエネルギー量の光を照射させることができる。
請求項3に係る発明によれば、光を透過させ、又は遮る複数の調光素子を有する照射手段が表示媒体に光を照射する場合であって、位置が検知されている期間があらかじめ決められた時間以上連続した場合に、電圧の印加を一時的に中断しない構成に比べて、階調を変化させるべき位置以外の位置における表示媒体の階調の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。
【図2】記録システムの模式図である。
【図3】表示システムおける表示媒体を含んだ断面を模式的に示す図である。
【図4】コレステリック液晶の配向変化を説明する図である。
【図5】漏れ光の液晶層への影響を説明するグラフである。
【図6】記録システムの記録動作を説明する図である。
【図7】記録装置が表示体に対して電圧を印加する動作を示すフローチャートである。
【図8】記録装置が表示体に対して光を照射する動作を示すフローチャートである。
【図9】配向変化前に電圧印加が停止された位置に対して記録装置が光を照射する動作を示すフローチャートである。
【図10】記録装置によって記録される画像の表示の一例を示す図である。
【図11】記録装置における各部の状態の一例を示すグラフである。
【図12】記録装置によって記録される画像の表示の一例を示す図である。
【図13】記録装置における各部の状態の一例を示すグラフである。
【図14】液晶層における液晶電圧の変化の一例を示す図である。
【図15】液晶電圧の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る記録システム100の構成を示すブロック図である。記録システム100は、記録装置10、表示体20、指示体30及び位置情報出力装置40を備える。表示体20は、光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体200を有する。表示体20は、本実施形態においては、コレステリック液晶を有する追記可能な電子ペーパである。表示体20は、本発明における表示手段の一例に相当する。指示体30は、利用者により操作される棒状の部材である。指示体30は、利用者の操作によって、表示媒体200の位置を指示する。位置情報出力装置40は、表示媒体200を覆って設置されている。位置情報出力装置40は、タッチスクリーン401と、図示せぬ出力部とを有する。タッチスクリーン401は、接触された位置を検出する。タッチスクリーン401は、検出した位置を示す信号を出力部に供給する。出力部は、信号を出力する機能により、供給された信号を、インターフェース130に出力する。位置情報出力装置40は、表示媒体200において指示体30により指示された位置(以下「指示位置」という。)を示す信号を、インターフェース130に出力する。
【0012】
記録装置10は、電圧印加部110、照射部120、インターフェース130、制御部140、記憶部150及び操作部160を備える。電圧印加部110は、電圧を発生させる電源部を有し、表示媒体200に対して電圧Vを印加する。電圧印加部110は、本発明における電圧印加手段の一例に相当する。照射部120は、照射される光を透過させ、又は遮る複数の調光素子を有する液晶パネル121と、光を照射する光源であるバックライト122とを有する。バックライト122は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等を有し、表示媒体200に向けて光を照射する。照射部120は、本発明における照射手段の一例に相当する。
【0013】
液晶パネル121は、2次元に配列されて画素を構成する複数の調光素子と、これらの調光素子を画素ごとに駆動させる駆動回路とを有する。駆動回路により駆動された調光素子は、画素単位で光の透過と遮断とを変化させる。制御部140は、複数の調光素子の各々を制御することによって光の照射位置を制御する。液晶パネル121は、画素単位でバックライト122の照射する光を透過させ、又は遮る。照射部120は、バックライト122から照射され、液晶パネル121を透過した光Lを、表示媒体200に対して照射する。ここにおいて、透過とは、透過率100%で透過させることに限るものではない。例えば、液晶パネル121は、液晶層210の配向を変化させる程度の光を透過させるが、全ての光を透過させることはできない場合がある。インターフェース130は、位置情報出力装置40と通信する機能を有する。インターフェース130は、配線等を介して接続した位置情報出力装置40と通信する。インターフェース130は、位置情報出力装置40が出力する信号を受信する。インターフェース130は、受信した信号を制御部140へ供給する。
【0014】
制御部140は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置とメモリ等の記憶手段とを備え、記録装置10の各部の動作を制御する。制御部140は、時刻を計測する機能により、経過する時間に基づいて各部を制御する。制御部140は、本発明における「第1の制御手段」、「第2の制御手段」及び「第3の制御手段」の一例に相当する。制御部140は、インターフェース130から供給された信号によって、表示媒体200において指示体30により指示された位置を検知する。本実施形態においては、制御部140とインターフェース130とが協働して、本発明における検知手段を実現する。記憶部150は、不揮発性メモリ等の記憶手段であって、制御部140によって検知された指示位置を示す情報等を記憶する。操作部160は、利用者が記録装置10に対して各種操作を行うためのタッチスクリーン、ボタン等の操作手段であって、操作を示す情報を制御部140に出力する。
【0015】
図2は、記録システム100の模式図である。図2(a)では、記録システム100の外観が模式的に示されている。記録装置10は、筐体101及び保持部102を備えている。筐体101は、プラスチック等で構成される直方体の部材である。筐体101は、設置面S101を有する。筐体101の設置面S101側には、表示体20が設置される。筐体101は、図示せぬ電圧印加部110、照射部120、インターフェース130、制御部140及び記憶部150を内部に収容する。筐体101は、設置面S101に露出する操作部160を備えている。筐体101の設置面S101側には、保持部102が設けられている。
【0016】
保持部102は、プラスチック等で構成される部材である。保持部102は、表示体20の端部を挟んで保持する。保持部102は、電圧印加部110と接続する図示せぬ電極を有する。保持部102が表示体20を保持した場合、この電極は、表示媒体200と接する。電圧印加部110は、保持部102を介して、表示媒体200に電圧を印加する。保持部102は、インターフェース130と接続する図示せぬ端子を有する。保持部102が表示体20を保持した場合、この端子は、図示せぬ位置情報出力装置40の出力部と接する。位置情報出力装置40は、保持部102を介して、インターフェース130に信号を出力する。
【0017】
図2(b)では、説明の便宜上、表示体20からタッチスクリーン401を外した状態が模式的に示されている。タッチスクリーン401は、透明な部材を有し、光を透過する。タッチスクリーン401は、表示媒体200を覆って設けられている。表示体20は、表示媒体200及びフレーム201を有する。フレーム201は、表示媒体200の周りを囲む部材である。表示媒体200は、タッチスクリーン401が設けられている側に、外部に露出する表示面S200を有する。指示体30は、タッチスクリーン401を介して表示面S200の位置を指示する。本実施形態においては、表示面S200上の位置が、本発明における「検知され得る位置」の一例に相当する。
【0018】
図3は、表示システム100における表示媒体200を含んだ断面を模式的に示す図である。筐体101の内部には、設置面S101から順に液晶パネル121及びバックライト122が設けられている。筐体101の設置面S101側は、光を透過する部材を含んで構成され、光を透過する。バックライト122は、表示体20が保持部102に保持されている状態において、表示媒体200のあらかじめ決められた領域である記録面R200に向けて光を照射する。液晶パネル121の調光素子は、表示面S200に対応して設けられ、画素を構成する。液晶パネル121が印加される電圧によって制御されると、調光素子の各々は、バックライト122により照射される光を透過させ、又は遮る。このように、液晶パネル121は、バックライト122により照射される光を、画素単位で選択的に透過させる。
【0019】
制御部140は、液晶パネル121及びバックライト122を制御して、表示媒体200において検知した指示位置に、指示体30が指示する側と反対の側から光を照射させる。液晶パネル121の画素を透過した光は、表示媒体200の記録面R200に入射する。記録面R200は、表示媒体200における表示面S200の反対側の面である。また、記録面R200は、表示面S200に対応して設けられている。本実施形態においては、記録面R200が、本発明における「あらかじめ決められた領域」の一例に相当する。
【0020】
表示媒体200は、表示面S200側から順に、保護層241、透明電極231、液晶層210、吸収層250、感光層220、透明電極232及び保護層242を積層して構成される。保護層241,242は、例えば、PET(PolyEthylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)樹脂を含んで構成される。保護層241,242は、表示媒体200の表面を保護する。
【0021】
透明電極231,232は、液晶層210及び感光層220に電圧を印加するための透明な電極である。透明電極231,232は、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide:酸化インジウム錫)で構成されている。透明電極231,232は、それぞれ、表示体20の外部に露出する図示せぬ電極を有する。これらの電極は、表示体20が保持部102に保持された場合、保持部102側の電極と接触する。電圧印加部110は、これらの電極を介して透明電極231,232に電圧を印加する。
【0022】
感光層220は、照射される光に応じて電気抵抗を変化させる層である。感光層220は、例えば、有機感光体を材料に含んで構成されている。感光層220は、材料の種類及びその組成によって定まる特定の波長帯の光を吸収する。感光層220は、光を吸収することにより、吸収前に比べて電気抵抗が減少する。吸収層250は、顔料又は染料等の光を吸収する材料を用いて組成される。吸収層250は、感光層220によって吸収された波長帯以外の波長帯の光を吸収する。吸収層250は、液晶層210が光を透過する場合に観察される。吸収層250は、材料の種類及びその組成によって定まる色で観察される。本実施形態では、吸収層250は、黒く観察される。
【0023】
液晶層210は、バインダー樹脂中にマイクロカプセル状のコレステリック液晶表示素子(以下「コレステリック液晶」という。)が複数分散されて構成されている。表示媒体200に電圧が印加されると、この電圧は、液晶層210、感光層220および吸収層250に分圧される。このとき、液晶層210に分圧される電圧を「液晶電圧」という。液晶層210は、液晶電圧により、内部に電界が発生する。コレステリック液晶は、この電界によって、配向状態を変化させる。コレステリック液晶は、いわゆる双安定性を有し、電界が発生していない状態においては、光を透過するフォーカルコニック配向、又は特定の波長の光を選択的に反射(ブラッグ反射)するプレーナ配向のいずれかを維持する。コレステリック液晶は、プレーナ配向の場合に高反射率の状態となり、本実施形態においては、白く観察される。なお、コレステリック液晶は、組成に応じた色の光を反射する。この場合、コレステリック液晶は、反射する光に応じた色で観察される。コレステリック液晶は、液晶層210内部の電界の強度に応じて、プレーナ配向からフォーカルコニック配向又はフォーカルコニック配向からホメオトロピック配向への変化を経て、プレーナ配向に配向状態を変化させる。
【0024】
図4は、コレステリック液晶の配向変化を説明する図である。図4のグラフは、液晶電圧とこの液晶電圧が所定の時間印加された場合における液晶層210の反射率との関係の一例を示す。図4のグラフの横軸は液晶電圧を示し、縦軸は液晶層210の反射率を示している。図4の例では、コレステリック液晶は、液晶電圧が閾値Th1未満である場合、元の配向状態を維持する。例えば、コレステリック液晶は、元がプレーナ配向であればプレーナ配向、元がフォーカルコニック配向であればフォーカルコニック配向を維持する。
【0025】
コレステリック液晶は、液晶電圧が閾値Th1以上で閾値Th2未満の場合、フォーカルコニック配向となる。この場合、コレステリック液晶は、元がプレーナ配向であればフォーカルコニック配向に変化し、元がフォーカルコニック配向であればフォーカルコニック配向を維持する。コレステリック液晶は、液晶電圧が閾値Th2以上になると、フォーカルコニック配向からホメオトロピック配向に変化する。コレステリック液晶は、ホメオトロピック配向の状態から液晶電圧を短時間で減少させると、プレーナ配向に変化する。また、コレステリック液晶は、ホメオトロピック配向の状態から液晶電圧をゆっくり減少させて閾値Th2よりも小さくすると、フォーカルコニック配向に変化する。
【0026】
このように、液晶層210は、液晶電圧に応じて反射率が変化することで、階調を変化させる。本実施形態においては、液晶層210は、表示媒体200に対して電圧の印加および光の照射がされる前の状態では、プレーナ配向となっている。また、表示面S200上において液晶層210がプレーナ配向となっている領域は、利用者によって白い領域と観察される。また、電圧の印加および光の照射によって液晶層210がフォーカルコニック配向となった表示面S200上の領域は、利用者によって黒い領域と観察される。
【0027】
制御部140は、検知した指示位置Pに対応する画素の光を透過させるように、液晶パネル121を制御する。液晶パネル121により透過された光は、記録面R200から表示媒体200に入射して、感光層220に吸収される。このため、液晶電圧が閾値Th1より大きくなり、液晶層210の配向がフォーカルコニック配向となる。制御部140が各部を制御することにより、指示位置Pにおいては、表示媒体200が黒くなる。利用者は、指示位置Pが黒くなることにより、画像を認識する。
【0028】
制御部140は、表示媒体200に光を照射させる前は液晶電圧が閾値Th1よりも小さくなり、光を照射させた後は液晶電圧が閾値Th1以上かつ閾値Th2よりも小さくなる電圧を印加するように電圧印加部110を制御する。表示媒体200にこの電圧が印加されている状態では、感光層220に照射された光のエネルギー量があるエネルギー量以上になると、液晶電圧が閾値Th1以上となる。液晶電圧が閾値Th1以上になると、コレステリック液晶の配向が、プレーナ配向からフォーカルコニック配向に変化する。
【0029】
このように、表示媒体200に電圧が印加された状態で、コレステリック液晶の配向をプレーナ配向からフォーカルコニック配向に変化させる光のエネルギー量の値を、「配向変化値」という。配向変化値は、表示媒体200に印加される電圧の大きさに応じてあらかじめ決められる。例えば、光の照射前の液晶電圧が閾値Th1に近い場合は、遠い場合と比べて、より少ない光のエネルギー量で液晶電圧が閾値Th1に達する。このため、光の照射前の液晶電圧が閾値Th1に近い場合は、遠い場合と比べて、配向変化値は小さい値となる。配向変化値は、本発明における「あらかじめ決められた量」の一例に相当する。
【0030】
ところで、液晶パネル121は、バックライト122から照射される光の全てを遮ることはできない場合がある。この場合、液晶パネル121のうち、光を遮る部分においても、光が透過してしまう。液晶パネル121が光を遮る状態においても透過する光を「漏れ光」という。感光層220は、漏れ光にさらされることにより、光のエネルギーを蓄積する。コレステリック液晶は、感光層220に照射される光のエネルギー量が配向変化値に近づくにつれて、少しずつ配向を変化させる。このため、コレステリック液晶は、漏れ光によっても少しずつ配向が変化する。
【0031】
図5は、漏れ光の液晶層210への影響を説明するグラフである。図5(a)は、時刻tにおける表示媒体200に印加される電圧の有無を示している。制御部140は、時刻t1から時刻t2まで、電圧印加部110を制御して表示媒体200に対して電圧を印加させる。制御部140は、電圧を印加させる間、照射部120を制御して表示媒体200に対して光を照射させる。このため、図5(b)に示すとおり、光を照射させている間、漏れ光が発生する。感光層220は、漏れ光を吸収して電気抵抗を変化させる。
【0032】
図5(c)は、時刻tにおける液晶電圧を示している。表示媒体200に対して電圧の印加が開始される前は、液晶電圧は0である。時刻t1に、液晶電圧は、電圧値Va1となる。電圧値Va1は、閾値Th1よりも小さい。時刻t1以後、徐々に液晶電圧が増加する。時刻t2に、液晶電圧は、電圧値Va2となる。コレステリック液晶は、電圧値Va2の液晶電圧によって部分的に配向が変化する場合がある。表示媒体200におけるこのコレステリック液晶を有する領域は、中間調(本実施形態においてはグレー)となる。
【0033】
図6は、記録システム100の記録動作を説明する図である。まず、制御部140は、利用者により指示された指示位置Pを検知する。図6において、軌跡Yは、利用者により連続して指示された軌跡を示している。指示位置Pを検知すると、制御部140は、電圧印加部110を制御して、表示媒体200に電圧を印加させる。続いて、制御部140は、軌跡Yに対応する画素を透過させた光Lを出射させるように、照射部120を制御する。光Lは、保護層242および透明電極232を透過して感光層220へ到達する。光Lが照射された位置においては、液晶電圧が増加し、コレステリック液晶の配向がフォーカルコニック配向となる。この結果、利用者によって指示された軌跡Yに画像が表示される。
【0034】
図7は、記録装置10が表示体20に対して電圧を印加する動作を示すフローチャートである。この動作は、記録装置10が表示体20に画像を記録する動作の一部である。図7に示すフローチャートに示される処理は、制御部140が記録動作の開始を指示する操作信号を取得したことを契機に開始される。また、記録動作の開始に際しては、表示体20が保持部102に保持されているものとする。まず、制御部140は、インターフェース130が指示位置を検知したか否かを判断する(ステップS110)。インターフェース130が指示位置を検知している場合(ステップS110:Yes)、制御部140は、電圧印加部110が表示媒体200に対して電圧を印加しているか否かを判断する(ステップS120)。電圧が印加されていない場合(ステップS120:No)、制御部140は、表示媒体200に対して電圧を印加させる(ステップS130)。そして、制御部140は、ステップS110の処理を実行する。ステップS120において、電圧印加部110が電圧を印加している場合、制御部140は、ステップS110の処理を実行する。
【0035】
ステップS110において、インターフェース130が位置を検知していない場合(ステップS110:No)、制御部140は、電圧印加部110による電圧の印加を停止させる(ステップS140)。続いて、制御部140は、インターフェース130が指示位置を検知したか否かを判断する(ステップS150)。インターフェース130が指示位置を検知している場合(ステップS150:Yes)、制御部140は、ステップS120の処理を実行する。インターフェース130が指示位置を検知していない場合(ステップS150:No)、制御部140は、動作停止の条件が満たされているか否かを判断する(ステップS160)。条件が満たされていない場合(ステップS160:No)、制御部140は、ステップS150の処理を実行する。ここで、動作停止の条件とは、本実施形態においては、操作部160から動作停止の指示があった場合である。なお、動作停止の条件は、インターフェース130が位置をあらかじめ決められた期間検知していない場合としてもよい。ステップS160において、動作停止の条件が満たされている場合(ステップS160:Yes)、制御部140は、動作を終了する。
【0036】
制御部140は、ステップS110からステップS160までの処理を、あらかじめ決められた時間(以下「単位処理時間」という。)で実行する。制御部140は、ステップの番号が小さい処理に戻る場合は、次の単位処理時間に実行する。単位処理時間は、演算装置の計測可能な時間の範囲であらかじめ決められる。
以上のように動作することで、制御部140は、インターフェース130が指示位置を検知する間、電圧印加部110を制御して表示媒体200に対して電圧を印加させる。
【0037】
図8は、記録装置10が表示体20に対して光を照射する動作を示すフローチャートである。制御部140は、液晶パネル121が有する画素ごとに、光を照射する動作の制御を行う。まず、制御部140は、指示位置が検知されたか否かを判断する(ステップS210)。指示位置が検知されていない場合(ステップS210:No)、制御部140は、ステップS210の処理を繰り返す。指示位置が検知された場合(ステップS210:Yes)、制御部140は、その指示位置に対応する画素を透過した光が感光層220に吸収されて蓄えられる光のエネルギー量の初期値を、記憶部150に記憶させる(ステップS220)。本実施形態においては、この初期値は、0とする。続いて、制御部140は、照射部120を制御して、この画素を透過する光を照射させる(ステップS230)。そして、制御部140は、この画素に対応するエネルギー量に単位エネルギー量を加算して記憶部150に記憶させる(ステップS240)。ここで、単位エネルギー量とは、単位処理時間にひとつの画素を透過した光によって、感光層220に蓄えられる光のエネルギー量を示す。本実施形態においては、記憶部150は、単位エネルギー量の値をあらかじめ記憶している。
【0038】
次に、制御部140は、電圧印加部110が表示媒体200に対して電圧を印加しているか否かを判断する(ステップS250)。電圧印加部110が電圧を印加している場合(ステップS250:Yes)、制御部140は、続けて、この画素に対応するエネルギー量が配向変化値よりも小さいか否かを判断する(ステップS260)。エネルギー量が配向変化値よりも小さい場合(ステップS260:Yes)、制御部140は、ステップS230へ戻って処理を繰り返す。以上の処理を繰り返すことにより、このように、連続する単位処理時間において指示位置が検知されていると、制御部140は、光を照射させ続ける。また、単位処理時間に指示位置が一度でも検知されないと、制御部140は、光の照射と電圧の印加とを停止させる。
【0039】
ステップS260において、エネルギー量が配向変化値以上である場合(ステップS260:No)、制御部140は、照射部120による光の照射を停止させ(ステップS270)、処理を終了する。ステップS250において、電圧印加部110が表示媒体200に対して電圧を印加していない場合(ステップS250:No)、制御部140は、照射部120による光の照射を停止させ(ステップS280)、ステップS310の処理を実行する。制御部140は、ステップS210からステップS270又はステップS280までの処理を、単位処理時間に実行する。また、制御部140は、ステップの番号が小さい処理に戻る場合は、次の単位処理時間に実行する。
【0040】
図9は、配向変化前に電圧印加が停止された画素に対して記録装置10が光を照射する動作を示すフローチャートである。まず、制御部140は、光照射を再開する条件が満たされたか否かを判断する(ステップS310)。本実施形態においては、制御部140は、あらかじめ決められた期間以内に指示位置を検知しない場合に、光照射を再開する。なお、光照射を再開する条件は、利用者による操作があった場合としてもよい。ステップS310において、条件が満たされない場合(ステップS310:No)、制御部140は、ステップS310の処理を繰り返す。ステップS310において、条件が満たされた場合(ステップS310:Yes)は、制御部140は、電圧印加部110を制御して表示媒体200に電圧を印加させる(ステップS320)。
【0041】
続いて、制御部140は、照射部120を制御して、記録面R200における配向変化前に電圧印加が停止された画素に対応する位置に対して、光を照射させる(ステップS330)。そして、制御部140は、この画素に対応するエネルギー量に単位エネルギー量を加算して記憶部150に記憶させる(ステップS340)。次に、制御部140は、この画素に対応するエネルギー量が配向変化値よりも小さいか否かを判断する(ステップS350)。エネルギー量が配向変化値よりも小さい場合(ステップS350:Yes)、制御部140は、ステップS330へ進み、ステップS330からステップS350までの処理を繰り返す。このように、制御部140は、この画素に対応するエネルギー量が配向変化値に達するまで、光を照射させる。制御部140は、以上の処理を実行することで、指示位置を検知している期間に、指示位置のそれぞれに対して、照射される光のエネルギー量があらかじめ決められた量以上になる時間の長さで光を照射させるように、照射部120を制御する。
【0042】
ステップS350において、エネルギー量が配向変化値以上となった場合(ステップS350:No)、制御部140は、照射部120を制御してこの画素を透過する光の照射を停止させる(ステップS360)。ここで、制御部140は、この画素以外のエネルギー量であって、配向変化値よりも小さいエネルギー量が記憶部150に記憶されているか否かを判断する(ステップS370)。配向変化値よりも小さいエネルギー量が記憶されていなければ(ステップS370:No)、制御部140は、電圧印加部110を制御して電圧の印加を停止させる(ステップS380)、処理を終了する。記憶されていれば(ステップS370:Yes)、制御部140は、そのまま処理を終了する。
【0043】
図10は、記録装置10によって記録される画像の表示の一例を示す図である。図10(a)においては、表示面S200上の軌跡Ya1,Ya2を破線で示す。図10(a)の例では、軌跡Ya1は、指示位置Pa1からPa8まで連続して指示された軌跡である。軌跡Ya2は、指示位置Pa9からPa12まで連続して指示された軌跡である。図10(b)は、軌跡Ya1,Ya2に画像が表示される様子を示す図である。図10(b)においては、軌跡Ya1,Ya2の指示位置Pa1,Pa2,・・・,Pa12を強調して示している。コレステリック液晶は、液晶層210にかかる電圧が増加してプレーナ配向からフォーカルコニック配向に変化する場合、ある程度の時間を必要とする。このため、これらの指示位置においては、指示された時点よりも配向が変化する時間遅れて黒く変化する。図10(b)の例では、指示位置Pa12まで指示された時点で、指示位置Pa1からPa5までは黒く変化しており、指示位置Pa6からPa12までは白いままである。
【0044】
図11は、記録装置10における各部の状態の一例を示すグラフである。図11の例では、図10に示される画像が記録される場合における、時系列に沿った各部の状態を示す。図11(a)は、時刻tにおいて、制御部140が指示位置を検知したか否かを示す。制御部140は、時刻t1に指示位置を検知し、時刻t2まで指示位置を連続的に検知する。制御部140は、時刻t2からt3まで指示位置を検知しない。制御部140は、時刻t3からt4まで指示位置を連続的に検知する。制御部140は、時刻ta10以降、指示位置を検知しない。図11(a)の例では、指示位置が連続的に検知される時刻t1からt2までの期間が、本発明における「第1の期間」の一例に相当する。また、時刻t1からt2までの期間(第1の期間)後であってこの期間に連続せず、指示位置が連続的に検知される時刻t3からt4までの期間が、本発明における「第2の期間」の一例に相当する。
【0045】
図11(b)は、時刻tにおいて、電圧印加部110による表示媒体200に対する電圧の印加があるか否かを示す。制御部140は、指示位置を検知している間、電圧印加部110を制御して表示媒体200に対して電圧を印加させる。図11(c)、(d)、(e)は、それぞれ図10における指示位置Pa2,Pa5,Pa10に対応する画素を透過した光が、照射されているか否かを示す。制御部140は、指示位置Pa2,Pa5,Pa10に対応する指示位置をそれぞれ時刻ta2,ta5,ta10に検知する。ここで、照射部120が時間X連続してこれらの指示位置に対応する画素を透過した光を照射した場合、この画素に対応するエネルギー量が配向変化値に達するものとする。
【0046】
制御部140は、時刻ta2から時刻(ta2+X)まで、照射部120を制御して、指示位置Pa2に対応する画素を透過させた光を照射させる。制御部140は、時刻ta5から、指示位置Pa5に対応する画素を透過させた光を照射させる。ここで、時刻ta5からt2までの期間は、時間Xよりも短いものとする。制御部140は、時刻t2に電圧の印加を停止させ、光の照射も停止させる。時刻t2の時点では、指示位置Pa5におけるエネルギー量は、配向変化値に達していない。制御部140は、再び指示位置を検知する時刻t3に、指示位置Pa5に対応する画素を透過させた光を再び照射させる。
【0047】
このように、制御部140は、時刻t1からt2までの期間(第1の期間に相当)に指示位置が連続的に検知され、かつ、この期間後であってこの期間に連続しない時刻t3から始まる期間(第2の期間に相当)に指示位置が連続的に検知された場合に、光を照射させる。この場合、制御部140は、第1の期間に検知した指示位置のうち、エネルギー量があらかじめ決められた量に満たない指示位置に対して、第2の期間に光を照射させる。制御部140は、時刻t2から時刻t3までの期間を除いて時刻ta5から時間Xが経過する時刻(ta5+(t3−t2)+X)に、光の照射を停止させる。
【0048】
制御部140は、時刻ta10から、指示位置Pa10に対応する画素を透過させた光を照射させる。ここで、時刻ta10からt4までの期間は、時間Xよりも短いものとする。制御部140は、時刻t4に電圧の印加を停止させ、光照射も停止させる。時刻t4の時点では、指示位置Pa10におけるエネルギー量は、配向変化値に達していない。制御部140は、時刻t4からあらかじめ決められた時間が経過した時刻t5に、表示媒体200に対する電圧の印加を開始させる。そして、制御部140は、指示位置Pa12に対応する画素を透過させた光を照射させる。制御部140は、時刻t4から時刻t5までの期間を除いて時刻ta10から時間Xが経過する時刻(ta10+(t5−t4)+X)に、光の照射および電圧の印加を停止させる。このように、制御部140は、時刻t3からt4までの期間(第1の期間に相当)に指示位置を検知した後、光照射を再開する条件が満たされた場合に、第1の期間に検知した指示位置のうちのエネルギー量の値が配向変化値に満たない指示位置に対して光を照射させる。
【0049】
図12は、記録装置10によって記録される画像の表示の一例を示す図である。図12の例では、軌跡Yb1は、指示位置Pb1からPb8まで連続して指示された軌跡である。軌跡Yb2は、指示位置Pb9からPb10まで連続して指示された軌跡である。軌跡Yb3は、指示位置Pb11からPb14まで連続して指示された軌跡である。図12の例は、軌跡Yb1,Yb2,Yb3に画像が表示される様子を示している。図12においては、指示位置Pb1,Pb2,・・・,Pb14を強調して示している。図12の例では、指示位置Pb14まで指示された時点では、指示位置Pb1からPb6までは黒く変化しており、指示位置Pb7からPb14までは白いままである。
【0050】
図13は、記録装置10における各部の状態の一例を示すグラフである。図13の例では、図12に示される画像が記録される場合における、時系列に沿った各部の状態を示す。図13(a)は、時刻tにおいて、制御部140が指示位置を検知したか否かを示す。制御部140は、時刻t1からt2と、時刻t3からt4と、時刻t5からt6とに指示位置を連続的に検知する。図13(a)の例では、時刻t1からt2までの期間が、本発明における「第1の期間」の一例に相当する。また、時刻t3からt4までの期間および時刻t5からt6までの期間が本発明における「第2の期間」の一例に相当する。
【0051】
図13(b)は、時刻tにおいて、電圧印加部110による表示媒体200に対する電圧の印加があるか否かを示す。制御部140は、指示位置を検知している間、電圧印加部110を制御して表示媒体200に対して電圧を印加させる。図13(c)は、図12における指示位置Pb6に対応する画素を透過した光が、照射されているか否かを示す。制御部140は、時刻tb6から、指示位置Pb6に対応する画素を透過させた光を照射させる。ここで、時刻tb6からt2までの期間と時刻t3からt4までの期間とを合わせた期間は、時間Xよりも短いものとする。
【0052】
制御部140は、時刻t2からt3までの期間と時刻t4からt5までの期間とに電圧の印加を停止させ、光照射も停止させる。時刻t3およびt5の時点では、指示位置Pb6におけるエネルギー量は、配向変化値に達していない。制御部140は、時刻t3およびt5に、指示位置Pb6に対応する画素を透過させた光を照射させる。制御部140は、時刻t2からt3までの期間と時刻t4からt5までの期間とを除いて時刻tb6から時間Xが経過する時刻(tb6+(t3−t2)+(t5−t4)+X)に指示位置Pb6への光照射を停止させる。以上のとおり、制御部140は、第2の期間が複数回に渡る場合でも、照射部120を制御して、各指示位置におけるエネルギー量の値が配向変化値以上になる時間の長さで、光を照射させる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな形態で実施可能である。
<変形例1>
制御部140は、時間Xを電圧の印加と光の照射とが停止されている期間の長さに応じて変化させてもよい。コレステリック液晶は、プレーナ配向からフォーカルコニック配向に徐々に変化するときに、電圧の印加と光の照射とが停止されると変化した配向が元に戻る場合がある。このため、制御部140は、光を照射する期間を長くして、コレステリック液晶の配向を変化させる。例えば、電圧の印加と光の照射とが停止されている期間の長さに適当な係数を乗じた値を、時間Xに加えるといった具合である。
【0054】
<変形例2>
制御部140は、指示位置を検知している期間があらかじめ決められた時間以上連続した場合に、光の照射を一時的に中断させるように各部を制御してもよい。例えば、制御部140は、あらかじめ決められた時間を時間Z、一時的に中断させる時間を時間Wとした場合、時間Wの経過後に再び光の照射を開始した際、時間Xに時間Wを加算して各部を制御する。光の照射が一時的に中断されると、感光層220は、漏れ光により蓄えた光のエネルギーを失う。これにより、再び光が照射されたときの液晶電圧は、光の照射が中断される前に比べて減少する。このため、漏れ光による液晶層210の配向変化が減少する。制御部140がこのように各部を制御すると、制御部140が光の照射を一時的に中断しない場合に比べて、表示される画像のコントラストの減少が抑制される。
【0055】
図14は、液晶層210における液晶電圧の変化の一例を示す図である。図14(a)は、時刻tにおいて、制御部140が指示位置を検知したか否かを示す。この例では、制御部140は、時刻tc1から時刻tc4まで、指示位置を連続的に検知している。ここで、時刻tc1から時刻tc4までの時間は、時間Zよりも長いものとする。図14(b)は、時刻tにおいて、電圧印加部110による表示媒体200に対する電圧の印加があるか否かを示す。この例では、制御部140は、電圧印加部110を制御して、時刻tc1から時間Zが経過した時刻tc2に、電圧の印加を停止させている。そして、制御部140は、時刻tc2から時間Wが経過した時刻tc3に、再び電圧を印加させている。この場合、制御部140は、指示位置に対応する画素を透過させた光の照射も、時刻tc2からtc3まで停止させるように照射部120を制御する。
【0056】
図14(c)は、時刻tにおける漏れ光の有無を示す図である。時刻tc2からtc3にかけては、光の照射が停止しているため、漏れ光は生じない。図14(d)は、表示媒体200の漏れ光が照射される位置における液晶電圧の変化を示す図である。時刻tc1における液晶電圧の値は、電圧値Vc1である。時刻tc1からtc2にかけては、漏れ光が感光層220に吸収されるため、液晶電圧は少しずつ増加する。時刻tc2に、制御部140が光の照射と電圧の印加とを停止させると、液晶電圧の値は、0となる。時刻tc3に、制御部140が光の照射と電圧の印加とを再開させると、感光層220が漏れ光により蓄積したエネルギーを失っているため、液晶電圧は電圧印加前の電圧値Vc1となる。このため、時刻tc2以降、光の照射と電圧の印加とを時刻tc1からtc4まで連続させた場合の液晶電圧の値Vc4と比べて、液晶電圧は小さくなり、液晶層210の配向の変化が抑えられる。
【0057】
ここで、感光層220は、照射部120による光の照射が停止した後、電気抵抗が光の照射前の状態になるまでに時間を要する。本変形例においては、この時間をτという。時間τは、感光層220が吸収した光のエネルギーを失うまでに要する時間である。また、時間τは、感光層220の組成によって決まる時間である。このため、液晶電圧は、照射部120による光の照射が停止した後、時間τが経過した後に光の照射前の状態に戻る。
【0058】
図15は、液晶電圧の変化の一例を示す図である。図15(a)は、各時刻における漏れ光の有無を示している。図15(a)の例では、時刻td1からtd2までと時刻td3からtd4までとに、漏れ光が表示媒体200に対して照射されている。図15(b)に示すように、表示媒体200において、漏れ光が照射されている位置の液晶電圧は、漏れ光の照射が停止する時刻td2から時間τ経過後に、漏れ光の照射前の電圧値Vd0となる。このため、制御部140は、時間τ以上の時間Wで光の照射を停止させることが望ましい。一方、表示媒体200に対する光の照射が停止されて時間が経過すると、配向を変化させるべき液晶層210の領域において、変化の途上にあるコレステリック液晶の配向が元に戻る場合がある。制御部140は、コレステリック液晶の配向が戻るのに要する時間と、時間τとに応じて光の照射を制御することが望ましい。
【0059】
<変形例3>
上述した実施形態においては、照射部120は、液晶パネル121とバックライト122とで構成されたが、画素毎に光を照射する自発光型の素子で構成されてもよい。例えば、照射部120は、有機EL(Electro Luminescence)で構成されてもよい。この場合、光を照射しない画素では光を発生させないため、漏れ光が発生しない。このため、制御部140が位置を検知する期間が長い場合であっても、指示位置以外の領域における液晶層210の配向の変化が抑制される。
【0060】
<変形例4>
本発明は、中間調を表示する場合、すなわち3以上の階調数で情報を表示する場合にも適用され得る。本発明は、例えば、コレステリック液晶の配向状態が変わる際の過渡状態を利用して中間値を表現してもよいし、階調に応じて照射する光の強度又は光を照射する期間を変えて記録することで中間値を表現してもよい。また、本発明は、いわゆるモノクロ表示に限定されるものではない。本発明は、例えば、青(400から500nm程度)、緑(500から580nm程度)、赤(575から700nm程度)のそれぞれの波長域の光を選択的に反射し、その他の波長域の光を透過する表示素子層を積層した表示媒体と、かかる表示媒体のそれぞれの表示素子層に独立に電圧を印加するように構成された記録装置とによる記録システムに適用されれば、カラー表示が実現される。
【0061】
<変形例5>
上述した実施形態においては、タッチスクリーンを用いて指示位置を検知したが、指示位置を検知することができるものであれば、他の公知の技術を用いてもよい。例えば、特開2007−241405号公報には、複数の縦コイルおよび複数の横コイルとLC共振回路との間で電磁誘導を生じさせてペン先位置を検出する技術が開示されている。また、この技術であれば、位置情報出力装置40を表示面S200から離して設置可能である。このため、記録装置10は、位置情報出力装置40を含んで構成されてもよい。例えば、位置情報出力装置40は、筐体101の内部で、バックライト122の液晶パネル121とは反対側に設置されてもよい。
【0062】
<変形例6>
上述した実施形態においては、記録装置10と表示体20とは分けて構成されていたが、記録装置10と表示体20とが一体で構成されてもよい。この場合、記録装置10と表示体20とは、一体となって表示面S200に画像を表示する表示装置として機能する。例えば、筐体101と表示体20とが一体となった構成である。この場合、表示体20は、液晶パネル121を挟んでバックライト122の反対側に設置すればよい。また、保持部102は不要となり、表示体20が有する電極と電圧印加部110とは、筐体101の内部で接続されていればよい。
【0063】
<変形例7>
上述した実施形態においては、制御部140は、指示位置が検知されている期間と表示媒体200に対して電圧を印加させる期間とを一致させるように制御したが、これらの期間は一致していなくともよい。例えば、制御部140は、指示位置が検知されてからあらかじめ決められた時間経過してから電圧を印加させてもよい。また、制御部140は、指示位置の検知の有無に関係なく、あらかじめ決められた期間ごとに、電圧の印加と電圧の印加の停止とを繰り返すように制御してもよい。この場合も、制御部140は、電圧を印加させる期間に合わせて光を照射させ、エネルギー量が配向変化値に達するまで光を照射するように、照射部120を制御する。このように制御部140が制御しても、定期的に電圧の印加が停止するため、漏れ光による配向の変化は抑制される。
【0064】
<変形例8>
上述した実施形態においては、制御部140は、エネルギー量が配向変化値に達していない画素に対しては、第2の期間の開始から光を照射させるように制御したが、第2の期間の開始と光の照射の開始とを一致させなくともよい。例えば、制御部140は、第2の期間が開始されてからあらかじめ決められた時間経過してから光を照射させてもよい。この場合でも、制御部140は、この画素に対応するエネルギー量が配向変化値に達するまで光を照射するように照射部120を制御する。
【0065】
<変形例9>
制御部140は、既にフォーカルコニック配向となっている位置を指示された場合、光の照射と電圧の印加を停止させてもよい。制御部140が光の照射と電圧の印加とを停止させると、感光層220は、吸収された漏れ光のエネルギーを失う。制御部140がこのように各部を制御することにより、既にフォーカルコニック配向となっている位置を指示された場合に光の照射と電圧の印加をする場合に比べて、漏れ光による配向の変化が抑制される。
【0066】
<変形例10>
上述した実施形態においては、制御部140は、表示媒体200に対して光を照射する期間と電圧を印加させる期間とを一致させるように制御したが、これらの期間は一致していなくともよい。例えば、制御部140は、電圧が印加されてからあらかじめ決められた時間経過してから光を照射させてもよい。制御部140は、電圧印加部110による電圧の印加に応じて、光を照射するように照射部120を制御すればよい。
【符号の説明】
【0067】
10…記録装置、20…表示体、30…指示体、40…位置情報出力装置、100…表示システム、101…筐体、102…保持部、110…電圧印加部、120…照射部、121…液晶パネル、122…バックライト、130…インターフェース、140…制御部、150…記憶部、160…操作部、200…表示媒体、201…フレーム、401…タッチスクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記表示媒体において指示体により指示された位置を検知する検知手段と、
前記電圧印加手段による前記表示媒体への電圧の印加に応じて、当該表示媒体において前記検知手段により検知された位置に、前記指示体が指示する側と反対の側から光を照射する照射手段と、
前記検知手段により検知された位置のそれぞれに対して、照射される光のエネルギー量があらかじめ決められた量以上になる場合と、前記検知が行われなくなる場合の少なくともいずれかを満たすまで光が照射されるように、前記照射手段を制御する第1の制御手段と、
前記検知手段により、第1の期間に位置が連続的に検知され、かつ、前記第1の期間後であって当該第1の期間に連続しない第2の期間に位置が連続的に検知された場合に、当該第1の期間に検知された位置のうちの前記エネルギー量が前記あらかじめ決められた量に満たない位置に対して前記第2の期間に光を照射させる第2の制御手段と
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記検知手段により前記第1の期間に位置が検知された後、あらかじめ決められた期間以内に前記第2の期間が生じない場合と利用者による操作があった場合の少なくともいずれかに、当該第1の期間に検知された位置のうちの前記エネルギー量が前記あらかじめ決められた量に満たない位置に対して光を照射させる
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記照射手段は、
前記表示媒体のあらかじめ決められた領域に向けて光を照射する光源と、前記検知手段により検知され得る位置に対応して設けられ、各々が、前記光源により照射される光を前記あらかじめ決められた領域へと透過させ、又は遮る複数の調光素子とを有し、
前記複数の調光素子の各々を制御することによって光の照射位置を制御し、前記検知手段により前記位置が検知されている期間があらかじめ決められた時間以上連続した場合に、前記照射手段による光の照射を一時的に中断する第3の制御手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
光の照射及び電圧の印加に応じて階調を変化させる表示媒体を有する表示手段と、
前記表示手段に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記表示媒体において指示体により指示された位置を検知する検知手段と、
前記電圧印加手段による前記表示媒体への電圧の印加に応じて、当該表示媒体において前記検知手段により検知された位置に、前記指示体が指示する側と反対の側から光を照射する照射手段と、
前記検知手段により位置が検知された位置のそれぞれ対して、照射される光のエネルギー量があらかじめ決められた量以上になる場合と、前記検知が行われなくなる場合の少なくともいずれかを満たすまで光が照射されるように、前記照射手段を制御する制御手段と、
前記検知手段により、第1の期間に位置が連続的に検知され、かつ、前記第1の期間後であって当該第1の期間に連続しない第2の期間に位置が連続的に検知された場合に、当該第1の期間に検知された位置のうちの前記エネルギー量が前記あらかじめ決められた量に満たない位置に対して前記第2の期間に光を照射させる第2の制御手段と
を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−197252(P2011−197252A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62584(P2010−62584)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】